自立性紙容器
【目的】底部の密封性が高く,平坦面に置いたときの安定性が高い紙容器を提供する。
【構成】自立性紙容器2Aは,底面部30と,底面部30の正面がわおよび背面がわからそれぞれ立上る正面部10および背面部20と,底面部30の両側がわからそれぞれ立上る側面立上り片40A,40Bと,正面部10の両側から連続して延びる第1の側面片11A,11Bと,背面部20の両側から連続して延びる第2の側面片21A,21Bを備えている。容器2Aの左右の両側面において,第1の側面片11A,11Bと第2の側面片21A,21Bとが相互に重合う部分で接着される。側面立上り片40A,40Bは第2の側面片21A,21Bと接着されている。第1の側面片11A,11Bには底面よりも下方に突出する突出脚部12A,12Bが設けられており,これらの脚部12A,12Bによって紙容器2Aは立設した状態で支持される。
【構成】自立性紙容器2Aは,底面部30と,底面部30の正面がわおよび背面がわからそれぞれ立上る正面部10および背面部20と,底面部30の両側がわからそれぞれ立上る側面立上り片40A,40Bと,正面部10の両側から連続して延びる第1の側面片11A,11Bと,背面部20の両側から連続して延びる第2の側面片21A,21Bを備えている。容器2Aの左右の両側面において,第1の側面片11A,11Bと第2の側面片21A,21Bとが相互に重合う部分で接着される。側面立上り片40A,40Bは第2の側面片21A,21Bと接着されている。第1の側面片11A,11Bには底面よりも下方に突出する突出脚部12A,12Bが設けられており,これらの脚部12A,12Bによって紙容器2Aは立設した状態で支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,自立性(または自立機能付)紙容器に関し,特に食品用の紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として,フライドポテト等の食品,その他の物品を収容する紙製容器は,1枚の厚紙(ブランク)でコップ状に形成したものが多い。たとえば次の特許文献1を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3137061号公報
【0004】
この文献に記載の紙容器(ワンタッチカートン)の基本的構造は,方形状(やや楕円形に近い)の底面部と,この底面部の前後から立上る前,後壁部と,前壁部の両側縁から延び後壁部の両側縁にそれぞれ接着される左右側壁部とを備えているものであり,簡素な構造となっている。しかしながら,左右側壁部は前壁部から連続して延び後壁部に接着されているだけであるから,底面部とのつながりがなく,それらの間にはすき間がある。したがって,容器底部に密封性がなく,内部に収容された食品から液体(たとえば油)が流れ落ちる場合がある。
【0005】
そこで密封性を高めるために,図23,図24に示すように,底面部113 に連続して設けた前,後壁部111,112を起立させ(前,後壁部は側面部も含んでいる),それらの両側部分を互いに接着するとともに,底面部113の両側縁に側面立上り片114を連続的に設け,この側面立上り片114 を前,後壁部111,112の左右両側部分にその外側から接着する構造の紙容器が案出されている。
【0006】
この構造によると,側面立上り片114が前,後壁部111,112の左右両側部分と底面部113とのすき間を塞ぐから容器底部の密封性が高まる。同時に前,後壁部111,112の両側部分相互の接着に加えて,側面立上り片114 が前,後壁部111,112の両側部に接着されるから,紙容器の下半分がかなり強固になる。紙容器の下半分が強固になると,紙の持つ若干の弾性により底面部が下方に向って突出する方向に湾曲する傾向がある(図24を参照)。そうすると,底面部の中心部が最も下方に突出することになるから,紙容器を平坦な面に置いたときに不安定となり,倒れやすいという問題が生じる。
【発明の開示】
【0007】
この発明は,容器底部の密封性を高めることを目指した構造の紙容器において,平坦面に置いたときの安定性を高め(換言すると,自立性を高める,自立機能を持たせる)倒れにくい,紙容器を提供することを目的とする。
【0008】
この発明はまた,底面部またはその近傍の構造を工夫して,液体溜り(液体受部)を形成し,流体の流出防止機能を向上した紙容器を提供するものである。
【0009】
この発明による自立性紙容器は,底面部と該底面部の正面がわおよび背面がわからそれぞれ立上る正面部および背面部と,該底面部の両側がわからそれぞれ立上る側面立上り片と,該正面部の両側から連続して延びる第1の側面片と,該背面部の両側から連続して延びる第2の側面片とを備え,該紙容器の左右の両側面において,該第1の側面片と該第2の側面片とが相互に重なり合う部分で接着され,該第1の側面片,該第2の側面片の少なくともいずれか一方が,該紙容器の背面がわ,正面がわの少なくともいずれか一方において,その近傍の底面よりも下方に突出する脚部を有し,該側面立上り片は,該突出脚部を有する側面片よりも内側にあることを特徴とする。
【0010】
第1の側面片および第2の側面片のいずれか一方にのみ該突出脚部を設けてもよいし,両方に該突出脚部を設けてもよい。第1の側面片と第2の側面片の重なり合う部分の一部において接着すれば足り,側面立上り片についても同様に重なり合う側面片と必要な範囲で接着していればよい。該突出脚部の下方への突出の程度は,後述するように底面部に液体溜めを形成してその部分を脚として利用する場合を除いて,底面部が紙容器の置かれる平坦面(網や格子である場合もありうる)と接しない程度でよい。側面片は正面部または背面部まで回り込んでその一部に接着されていてもよい。
【0011】
この発明の紙容器によると,紙容器の背面または正面の少なくとも一方において,その近傍の底面よりも下方に突出する脚部が設けられ,これらの脚部,または脚部と紙容器の他の部分とによって紙容器は立設した状態に支持されるので,安定性が高まる。仮に,底面部が下方に向って湾曲していたとしても,この湾曲下面が平坦面に接して紙容器を不安定とすることがない。
【0012】
また,底面部の両側からそれぞれ立上る側面立上り片が設けられているから,紙容器下部における密封性が確保される。上記側面立上り片を上記側面立上り片に重なり合う側面片と接着することで,紙容器下部における密封性をさらに高めるようにしてもよい。この側面立上り片は該突出脚部を有する側面片の内側に存在するから,側面片からその突出脚部が下方に突出するのを邪魔することはない。
【0013】
必要に応じて紙容器の内側において,底面部を変形することにより液体溜めの窪みが形成される。この窪みは内部に収容した物品から出る少量の液体(たとえば食品の油)を溜めるものであるから,紙容器からその外側に液体が漏れることが防止される。外からみると,この窪みの部分において底面部は下方に突出しているから,この部分をもう一つの脚部として利用することができる。
【0014】
この発明による紙容器は好ましくは1枚の厚紙により形成される。厚紙とは,植物性繊維を材料とするもののみならず,合成繊維を材料の一部または全部とするもの,表面(または両面)に合成樹脂膜をコーティングしたもの等,合成樹脂による厚紙のシート等を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例における紙容器の展開図である。
【図2】第1実施例における紙容器の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】第1実施例における紙容器を底面からみた斜視図である。
【図5】変形例を示す図3相当の縦断面図である。
【図6】さらに他の変形例を示す図3相当の縦断面図である。
【図7】さらに他の変形例を示す図3相当の縦断面図である。
【図8】第2実施例における紙容器の展開図である。
【図9】図3に相当する第2実施例の縦断面図である。
【図10】第2実施例における紙容器を底面からみた斜視図である。
【図11】第3実施例における紙容器の展開図である。
【図12】第3実施例における紙容器を底面からみた斜視図である。
【図13】第3実施例における紙容器の正面図である。
【図14】変形例を示すもので,紙容器を底面からみた斜視図である。
【図15】さらに他の変形例を示すもので,紙容器を底面からみた斜視図である。
【図16】さらに他の変形例を示す紙容器の展開図である。
【図17】上記変形例を示すもので,紙容器を底面からみた斜視図である。
【図18】上記変形例を示すもので,紙容器の正面図である。
【図19】さらに他の変形例を示す紙容器の展開図である。
【図20】上記変形例を示す紙容器の斜視図である。
【図21】図20のXXI−XXI線に沿う縦断面図である。
【図22】上記変形例の紙容器の背面図である。
【図23】従来例を示す紙容器の斜視図である。
【図24】図23に示す紙容器の縦断面図である。
【実施例】
【0016】
第1実施例
図1〜図4は第1実施例による自立性紙容器を示している。この実施例による自立性紙容器2A(図2)は,1枚の厚紙により作られる。図1は紙容器2Aを形成する厚紙(ブランク)1Aの展開図であり,紙容器2Aの内側となる面を見たものである。一点鎖線は紙容器2Aを作るときに谷折りにされる折り線を示している。好ましくは,折り曲げを容易にするために,この一点鎖線に沿って折り線加工または折罫加工が施される。図2は図1に示す型取り(型抜き)された型紙(ブランク)1Aを折り曲げかつ後述する必要箇所を接着(糊付け)することにより完成した自立性紙容器2Aを示している。図3は図2の III−III 線に沿う縦断面図であり,図4は図2に示す紙容器2Aを底面から見た斜視図である。
【0017】
まず図1において,自立性紙容器2Aのブランク1Aは,方形の底面部30を備えている。この底面部30の前,後(正面,背面)がわにあたる境界(一点鎖線で示される折り線)から正面部10および背面部20がそれぞれ連続して互いに反対方向に延びている。これらの正面部10および背面部20は底面部30から遠ざかるにしたがってその幅が広がっており(正面部10の方が広がりの程度が大きい),紙容器2Aに形成されたときに上方が大きく口を開くようになっている。正面部10の上端にはへこみが形成され,背面部20の上端は上方に突出する円弧を描いている。
【0018】
正面部10の左右両側には第1の側面片11A,11Bが正面部10から連続的に形成されている。これらの側面片11A,11Bの幅は紙容器の下部に相当する部分で最も広く,上部にいくにしたがって狭くなっている。側面片11A,11Bの最下部の幅は,底面部30の幅(前後方向の長さ,ないしは奥行)とほぼ同程度か,やや小さい程度である。側面片11A,11Bの最下部に突出脚部12A,12Bが設けられている(二点鎖線のハッチングで示す)。突出脚部12A,12Bは側面片11A,11Bの外方に向うほどその高さが高くなっている(幅が大きくなっている)。
【0019】
背面部20の左右両側には第2の側面片21A,21Bが背面部20から連続して形成されている。これらの第2の側面片21A,21Bの幅は紙容器の上下方向においてほぼ同じである。また第2の側面片21A,21Bの上端は上方に突出する円弧に形成されている。
【0020】
底面部30の両側面がわの境界からは側面立上り片40A,40Bが一体的に延びている。この側面立上り片40A,40Bは紙容器の底部の密封性を高めるためのものであるから,紙容器の底部のみを覆う高さがあればよい。側面立上り片40A,40Bは第1,第2の側面片11A,11B,21A,21Bとは切り離されており,その上端は中央が最も突出する形になっている。
【0021】
上述した底面部30,正面部10,背面部20,第1の側面片11A,11B,第2の側面片21A,21B,側面立上り片40A,40Bの形状,幅,高さ等は,紙容器についての所望のデザインに応じて定めることができる。たとえば,底面部30は楕円形に近い形状にすることもできるし,正面部,背面部,側面片,側面立上り片もそれに応じて変形することもできるし,幅,高さなども変更可能である。
【0022】
上記のように型取り(型抜き)された厚紙(ブランク)1Aは,その折り線(一点鎖線)に沿って折り曲げられ,かつ所望箇所が接着されて図2ないし図4に示す形の自立性紙容器2Aが作成される。
【0023】
すなわち,第1の側面片11A,11Bを正面部10に対してほぼ直角に折り曲げ,同様に第2の側面片21A,21Bを背面部20に対してほぼ直角に折り曲げる。正面部10および背面部20を底面部30に対してほぼ直角に起立させる。また側面立上り片40A,40Bも底面部30に対してほぼ直角に起立させる。この実施例では第1の側面片11A,11Bが最も外側に位置し,その内側に第2の側面片21A,21Bが入り,側面立上り片40A,40Bは第2の側面片21A,21Bの内側に位置する。側面立上り片40A,40Bの外面が第2の側面片21A,21Bの内面にそれぞれ接着され(糊付けされ),第2の側面片21A,21Bの外面が第1の側面片11A,11Bの内面にそれぞれ接着(糊付け)される。接着はこれらの各片が重なっている部分の一部のみで充分である。
【0024】
このように自立性紙容器2Aが組立てられた状態において,第1の側面片11A,11Bの下端部に設けられている突出脚部12A,12Bが底面部30よりも下方に突出している。したがって,紙容器2Aを平坦な面(図3のP)に置いて立てたときに,紙容器2Aは正面部10の下端縁(正面部10と底面部30との境界)と,突出脚部12A,12Bの下端縁において(図4に太い線で示す),平坦面Pと接する。したがって,仮に,底面部30が湾曲してその中央部が下方に突出したとしても,この突出した底面部30が平坦面Pに接することは無いので,紙容器2Aは安定し,倒れにくい。突出脚部12A,12Bの突出量は予想される底面部30の湾曲の程度,紙容器2Aの全体的な安定性等を考慮して定めればよい。突出脚部12A,12Bの長さは,底面部30の幅(正面部10と背面部20との間隙)と同程度が好ましいが,底面部30の幅よりも長くてももちろん良いし,短くてもよい(底面部30の幅の半分以上であればよい)。
【0025】
また,側面立上り片40A,40Bが底面部30に連続的に設けられ,この側面立上り片40A,40Bが側面片11A,11B,21A,21Bによって形成される側面部の内側に沿いかつ接着されるので,紙容器下部における密封性が確保される。
【0026】
上述した紙容器の組立て(折り曲げ,接着)は手作業で行うこともできるが,従来通りに機械作業によって行うことができるのはいうまでもない。
【0027】
側面立上り片40A,40Bは底面部30に連続して設けられており,底面部30に対してほぼ直角に折り曲げられるので,紙の弾性(反発力)によって第2の側面片21A,21Bに向けて付勢される。したがって,側面立上り片40A,40Bを側面部(第2の側面片21A,21B)に接着せずとも,紙容器下部における密封性を確保することができる。もちろん,紙容器下部における密封性を確実なものとするためには,上述のように側面立上り片40A,40Bを側面部に接着するとよい。このことは,以下の変形例および他の実施例でも同様である。
【0028】
図5は変形例を示すものである。この変形例においては,側面立上り片40B(40A)が,第1の側面片11B(11A)と第2の側面片21B(21A)との間に挟まれ,その両面においてこれらの両側面片に接着されている。もちろん,他の部分においては,第1の側面片11B(11A)と第2の側面片21B(21A)も互いに接着される。
【0029】
図6はさらに他の変形例を示している。ここでは,側面立上り片40B(40A)が最も内側に位置し,第2の側面片21B(21A)が最も外側に位置し,第1の側面片11B(11A)がこれらの側面立上り片40B(40A)と第2の側面片21B(21A)との間に挟まれ,かつその突出脚部12B(12A)が底面部30よりも下方に突出している。各片は重なっている部分の少なくとも一部で接着されているのはいうまでもない。
【0030】
このように,側面立上り片40A,40Bは突出脚部12A,12Bを有する第1の側面片11A,11Bよりも内側にあれば,突出脚部12A,12Bを底面部30よりも下方に突出させることが可能である。第2の側面片21A,21Bの下端部に突出脚部を設けることもできるし,次に示す実施例のように,第1および第2の側面片の両方に突出脚部(第1実施例のような,細長いほぼ三角形状のものでもよい)を設けることも可能である。さらに,紙容器の左右側面部において,側面立上り片40A,40Bと第1の側面片11A,11Bと第2の側面片21A,21Bの重なりの順序が異なっていてもよい。たとえば,紙容器の左側面部は図3に示す順序の重なりであり,右側面部は図5または図6に示す順序の重なりでもよい。以上の変形例は,後述する他の実施例およびその変形例についてもあてはまる。
【0031】
図7はさらに他の変形例を示している。ここでは突出脚部12Bの下端が弧状に切欠かれている(符号12bで示す)(左側の突出脚部12Aについても同じ)。このような形状とすることにより,突出脚部12B(12A)は,背面部20側の先端部においてのみ平坦面Pと接することになり,平坦面Pに若干の凹凸があっても紙容器の安定性が損なわれにくいものとなっている。
【0032】
第2実施例
図8から図10は第2実施例を示している。これらの図において,第1実施例に示したものと同一物には同一符号を付し,重複説明を避ける。そして,第1実施例の自立性紙容器と異なる点についてのみ説明する。
【0033】
第2実施例は,2つの点で第1実施例と異なっている。第1は,組立てた状態において,底面部30の4隅の近傍にそれぞれ,合計4つの突出脚部が設けられている点である。第2は,底面部30に積極的に液体溜り(液体受部)を形成した点である。これにより,紙容器内に食品を収納したときに食品から出る油などの液体が紙容器から漏れるのを充分に防ぐことができる。
【0034】
第1の点について説明すると,紙容器のブランク1Bの展開図(図8)において第1の側面片11A,11Bの紙容器の下部に当る部分の最も外側に,紙容器を組立てたときに下方に突出する突出脚部13A,13Bが一体的に設けられている。第2の側面片21A,21Bにも同じように突出脚部23A,23Bが一体的に形成されている。紙容器2Bを組立てた状態においては,上記突出脚部13A,13B,23A,23Bは底面部30の4隅から下部に突出し,この4つの脚部によって紙容器2Bは平坦面P上に立つことができる(図9,図10)。
【0035】
第2の点について述べると,展開図(図8)において,特に符号31,41を用いて示すように,底面部30と側面立上り片40A,40Bとの境界部分に,弧状の折罫31,41が形成されている。底面部30側の折罫31は底面部30の内方に突出する形の弧を描き,側面立上り片40A,40B側の折罫41は側面立上り片40A,40Bの先端方向に突出する形の弧を描いている。これらの折罫31,41は紙容器2Aの組立て時に谷折り(紙容器の内面からみて)に折り曲げられるので,底面部30が,特に図9の縦断面に示されているように,その中央部が最も下方に突出するように弧状になり(前後方向にみて弧状)窪みが形成される。この窪みが液体溜り(液体受部)である。側面立上り片40A,40Bと底面部30とは,折罫31,41によって囲まれた斜めの部分31A,31Bを経て連続する。
【0036】
上記のように底面部30が下方に向って湾曲し,液体溜りが形成されているが,突出脚部13A,13B,23A,23Bは底面部30の最も低い部分よりも下方に突出しているので,底面部30が平坦面Pに接することなく,紙容器2Bは4つの突出脚部13A,13B,23A,23Bによって安定に自立する。
【0037】
第3実施例
図11から図13は第3実施例を示している。第3実施例の特徴は,液体溜めを形成するために底面部を下方に突出させる構造とし,この下方に突出した底面部の部分(液体溜めの最も深い部分)を紙容器が自立するための脚部として利用するものである。
【0038】
図11に示す展開図において,正面部10に2つの折罫14が入れられ,第1の側面片11A,11Bと正面部10との間に,部分10A,10Bが設けられ,第1の側面片11A,11Bと正面部10とが滑らかに湾曲ないしは折曲されるようになっている(図12においては正面部10,部分10A,10Bはそれぞれ平面に描かれているが,これらの正面部10,部分10A,10Bを湾曲させてもよい)。
【0039】
正面部10の下部に水平な折罫32Eが入れられている。また,底面部は,左右の中央であってやや前側(正面側)の点Cを頂点として,底面部が下方に四角錐状に突出できるように,4本の折罫32A,32B,32C,32Dが点Cから底面部の4隅の角に向って形成されている。底面部と側面立上り片40A,40Bとの境界の折罫を符号42で,底面部と背面部20との境界の折罫を符号23で示す。これらの折罫32A〜32E,42,23によって囲まれる底面部の部分を符号30A,30B,30C,30Dで示す。部分30A,30B,30Cはほぼ平坦であるが,部分30Dは正面から底面に向って外方に突出する方向に湾曲する。
【0040】
背面部20にも,折罫22によって第2の側面片21A,21Bとの間に,滑らかに屈曲するように部分20A,20Bが設けられている。
【0041】
下方に突出する突出脚部12A,12Bは第1実施例に示すものと同じである。
【0042】
この展開図(図11)に示されたブランク1Cを上述した各折罫で折り曲げ,かつ第1実施例と同じように必要箇所を接着することにより,図12および図13に示す自立性紙容器2Cが完成する。この紙容器2Cの内部においては,底面部に頂点Cで最も深くなる四角錐状の窪み(液体溜め)が形成されている。紙容器2Cの外側からみると,頂点Cが最も下方に突出し,紙容器2Cを支持する脚部となる。突出脚部12A,12Bの背面側の部分(図12にA,Bで示す)も紙容器2Cを支持する。すなわち,紙容器は平坦面P上に立てられたときに,3点A,B,Cで自立することになり,最も安定な形態で立つことになる。
【0043】
図14は変形例を示している。図12に示す底面部の部分30Dの中心に頂点Cを通って正面部10に向かうもう一本の折罫32Fが形成されている。この折罫32Fは他の折罫とは反対に,紙容器の内側からみて山折り(外側からみて谷折り)のものであり,部分30Dが2つの部分30Daと30Dbとに分けられている。外面からみて折罫32Fに沿ってややへこんだ形になり,ブランクの無理のない折曲が可能となる。この変形例においても自立性紙容器2Dは点A,B,Cによる3点支持である。
【0044】
図15はさらに他の変形例の自立性紙容器2Eを示し,1本の折罫32Fに代えて,底面部の部分30D(図12)に,互いに少し離れた2本の折罫32G,32Hが形成されている。この折罫32G,32Hも,紙容器2Eの内部からみると山折り,外部からみると谷折りで,この折罫32G,32Hの部分が外からみて少しへこんでいる。また正面部10と,第1の側面片11A,11Bとの間の2つの折罫が正面部10の上端と第1の側面片11A,11Bの高さ方向の中央を結ぶように入れられている。他の構成は上述した図14に示す変形例と同じである。
【0045】
図16ないし図18はさらに他の変形例を示している。
【0046】
図16の展開図を参照して,底面部30において,正面部10と底面部30との境界を示す折罫33Cが底面部30の方に少し入り込んだ形で形成されている。折罫33Cは,正面部10の左下端,右下端から斜めに底面部30の方向に延びた折罫部分33Ca,33Cbを直線(折罫25に平行)でつなぐ形になっている。底面部30において,折罫33Cの両端から,折罫25の両端に向って斜めに折罫33A,33Bが形成されている。また,正面部10において,折罫33Cの両端から正面部10の上端に向って2本の折罫13A,13Bが途中まで延びている。
【0047】
このようなブランク1Gを折曲しかつ接着して組立てると,図17,図18に示されるような紙容器2Gとなる。正面部10の符号10Cで示す下部は湾曲して底面部30に連続し,底面部30は前方に向ってやや下方に傾き,折罫33Cの位置で最も低くなる。
【0048】
したがって,紙容器2G内においては,底面のやや前方の折罫33Cの部分で最も深くなる窪み(液体溜め)が形成される。紙容器2Gは,この折罫33Cと突出脚部12A,12BのA,Bの部分によって支持されて安定に自立することになる(太い線と黒丸で示す)。
【0049】
図19ないし図22はさらに他の変形例を示している。この変形例では,図19に示すように,背面部20と底面部30との境界に形成される折罫が,符号34A,34Bで示すように,背面部20からやや底面部30の方向に入り込んだ形に形成されている。底面部30側に最も入り込んだ位置(2つの直線折罫34A,34Bの交点)を点Eとする。また,突出脚部26A,26Bは背面部20の両側に一体的に形成された第2の側面片21A,21Bの下端部に形成されている。
【0050】
図19に示すブランク1Hを組立てると図20ないし図22に示す紙容器2Hが完成する。底面部30は点Eにおいて最も低くなり,ここに窪み(液体溜め)が形成される。突出脚部26A,26Bの最も下方に突出する部分A,Bは正面側の両側下端の位置にあるから,底面部30は正面側において最も高くなる。紙容器2Hは図21に最もよく示されているように,やや背面側に傾いた形態でA,B,Eの3点支持により,自立する。
【0051】
第3実施例においても,第2実施例(図8〜図10)に示すような一部でのみ突出した形の突出脚部を用いることができる。上記実施例では底面部はほぼ長方形であるが,角に丸みをもたせたり,楕円形に近い形状にするなど,種々の変形が考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B,1C,1G,1H ブランク
2A,2B,2C,2D,2E,2G,2H 自立性紙容器
10 正面部
11A,11B 第1の側面片
12A,12B,13A,13B,23A,23B,26A,26B 突出脚部
20 背面部
21A,21B 第2の側面片
30 底面部
40A,40B 側面立上り片
【技術分野】
【0001】
この発明は,自立性(または自立機能付)紙容器に関し,特に食品用の紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として,フライドポテト等の食品,その他の物品を収容する紙製容器は,1枚の厚紙(ブランク)でコップ状に形成したものが多い。たとえば次の特許文献1を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3137061号公報
【0004】
この文献に記載の紙容器(ワンタッチカートン)の基本的構造は,方形状(やや楕円形に近い)の底面部と,この底面部の前後から立上る前,後壁部と,前壁部の両側縁から延び後壁部の両側縁にそれぞれ接着される左右側壁部とを備えているものであり,簡素な構造となっている。しかしながら,左右側壁部は前壁部から連続して延び後壁部に接着されているだけであるから,底面部とのつながりがなく,それらの間にはすき間がある。したがって,容器底部に密封性がなく,内部に収容された食品から液体(たとえば油)が流れ落ちる場合がある。
【0005】
そこで密封性を高めるために,図23,図24に示すように,底面部113 に連続して設けた前,後壁部111,112を起立させ(前,後壁部は側面部も含んでいる),それらの両側部分を互いに接着するとともに,底面部113の両側縁に側面立上り片114を連続的に設け,この側面立上り片114 を前,後壁部111,112の左右両側部分にその外側から接着する構造の紙容器が案出されている。
【0006】
この構造によると,側面立上り片114が前,後壁部111,112の左右両側部分と底面部113とのすき間を塞ぐから容器底部の密封性が高まる。同時に前,後壁部111,112の両側部分相互の接着に加えて,側面立上り片114 が前,後壁部111,112の両側部に接着されるから,紙容器の下半分がかなり強固になる。紙容器の下半分が強固になると,紙の持つ若干の弾性により底面部が下方に向って突出する方向に湾曲する傾向がある(図24を参照)。そうすると,底面部の中心部が最も下方に突出することになるから,紙容器を平坦な面に置いたときに不安定となり,倒れやすいという問題が生じる。
【発明の開示】
【0007】
この発明は,容器底部の密封性を高めることを目指した構造の紙容器において,平坦面に置いたときの安定性を高め(換言すると,自立性を高める,自立機能を持たせる)倒れにくい,紙容器を提供することを目的とする。
【0008】
この発明はまた,底面部またはその近傍の構造を工夫して,液体溜り(液体受部)を形成し,流体の流出防止機能を向上した紙容器を提供するものである。
【0009】
この発明による自立性紙容器は,底面部と該底面部の正面がわおよび背面がわからそれぞれ立上る正面部および背面部と,該底面部の両側がわからそれぞれ立上る側面立上り片と,該正面部の両側から連続して延びる第1の側面片と,該背面部の両側から連続して延びる第2の側面片とを備え,該紙容器の左右の両側面において,該第1の側面片と該第2の側面片とが相互に重なり合う部分で接着され,該第1の側面片,該第2の側面片の少なくともいずれか一方が,該紙容器の背面がわ,正面がわの少なくともいずれか一方において,その近傍の底面よりも下方に突出する脚部を有し,該側面立上り片は,該突出脚部を有する側面片よりも内側にあることを特徴とする。
【0010】
第1の側面片および第2の側面片のいずれか一方にのみ該突出脚部を設けてもよいし,両方に該突出脚部を設けてもよい。第1の側面片と第2の側面片の重なり合う部分の一部において接着すれば足り,側面立上り片についても同様に重なり合う側面片と必要な範囲で接着していればよい。該突出脚部の下方への突出の程度は,後述するように底面部に液体溜めを形成してその部分を脚として利用する場合を除いて,底面部が紙容器の置かれる平坦面(網や格子である場合もありうる)と接しない程度でよい。側面片は正面部または背面部まで回り込んでその一部に接着されていてもよい。
【0011】
この発明の紙容器によると,紙容器の背面または正面の少なくとも一方において,その近傍の底面よりも下方に突出する脚部が設けられ,これらの脚部,または脚部と紙容器の他の部分とによって紙容器は立設した状態に支持されるので,安定性が高まる。仮に,底面部が下方に向って湾曲していたとしても,この湾曲下面が平坦面に接して紙容器を不安定とすることがない。
【0012】
また,底面部の両側からそれぞれ立上る側面立上り片が設けられているから,紙容器下部における密封性が確保される。上記側面立上り片を上記側面立上り片に重なり合う側面片と接着することで,紙容器下部における密封性をさらに高めるようにしてもよい。この側面立上り片は該突出脚部を有する側面片の内側に存在するから,側面片からその突出脚部が下方に突出するのを邪魔することはない。
【0013】
必要に応じて紙容器の内側において,底面部を変形することにより液体溜めの窪みが形成される。この窪みは内部に収容した物品から出る少量の液体(たとえば食品の油)を溜めるものであるから,紙容器からその外側に液体が漏れることが防止される。外からみると,この窪みの部分において底面部は下方に突出しているから,この部分をもう一つの脚部として利用することができる。
【0014】
この発明による紙容器は好ましくは1枚の厚紙により形成される。厚紙とは,植物性繊維を材料とするもののみならず,合成繊維を材料の一部または全部とするもの,表面(または両面)に合成樹脂膜をコーティングしたもの等,合成樹脂による厚紙のシート等を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施例における紙容器の展開図である。
【図2】第1実施例における紙容器の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】第1実施例における紙容器を底面からみた斜視図である。
【図5】変形例を示す図3相当の縦断面図である。
【図6】さらに他の変形例を示す図3相当の縦断面図である。
【図7】さらに他の変形例を示す図3相当の縦断面図である。
【図8】第2実施例における紙容器の展開図である。
【図9】図3に相当する第2実施例の縦断面図である。
【図10】第2実施例における紙容器を底面からみた斜視図である。
【図11】第3実施例における紙容器の展開図である。
【図12】第3実施例における紙容器を底面からみた斜視図である。
【図13】第3実施例における紙容器の正面図である。
【図14】変形例を示すもので,紙容器を底面からみた斜視図である。
【図15】さらに他の変形例を示すもので,紙容器を底面からみた斜視図である。
【図16】さらに他の変形例を示す紙容器の展開図である。
【図17】上記変形例を示すもので,紙容器を底面からみた斜視図である。
【図18】上記変形例を示すもので,紙容器の正面図である。
【図19】さらに他の変形例を示す紙容器の展開図である。
【図20】上記変形例を示す紙容器の斜視図である。
【図21】図20のXXI−XXI線に沿う縦断面図である。
【図22】上記変形例の紙容器の背面図である。
【図23】従来例を示す紙容器の斜視図である。
【図24】図23に示す紙容器の縦断面図である。
【実施例】
【0016】
第1実施例
図1〜図4は第1実施例による自立性紙容器を示している。この実施例による自立性紙容器2A(図2)は,1枚の厚紙により作られる。図1は紙容器2Aを形成する厚紙(ブランク)1Aの展開図であり,紙容器2Aの内側となる面を見たものである。一点鎖線は紙容器2Aを作るときに谷折りにされる折り線を示している。好ましくは,折り曲げを容易にするために,この一点鎖線に沿って折り線加工または折罫加工が施される。図2は図1に示す型取り(型抜き)された型紙(ブランク)1Aを折り曲げかつ後述する必要箇所を接着(糊付け)することにより完成した自立性紙容器2Aを示している。図3は図2の III−III 線に沿う縦断面図であり,図4は図2に示す紙容器2Aを底面から見た斜視図である。
【0017】
まず図1において,自立性紙容器2Aのブランク1Aは,方形の底面部30を備えている。この底面部30の前,後(正面,背面)がわにあたる境界(一点鎖線で示される折り線)から正面部10および背面部20がそれぞれ連続して互いに反対方向に延びている。これらの正面部10および背面部20は底面部30から遠ざかるにしたがってその幅が広がっており(正面部10の方が広がりの程度が大きい),紙容器2Aに形成されたときに上方が大きく口を開くようになっている。正面部10の上端にはへこみが形成され,背面部20の上端は上方に突出する円弧を描いている。
【0018】
正面部10の左右両側には第1の側面片11A,11Bが正面部10から連続的に形成されている。これらの側面片11A,11Bの幅は紙容器の下部に相当する部分で最も広く,上部にいくにしたがって狭くなっている。側面片11A,11Bの最下部の幅は,底面部30の幅(前後方向の長さ,ないしは奥行)とほぼ同程度か,やや小さい程度である。側面片11A,11Bの最下部に突出脚部12A,12Bが設けられている(二点鎖線のハッチングで示す)。突出脚部12A,12Bは側面片11A,11Bの外方に向うほどその高さが高くなっている(幅が大きくなっている)。
【0019】
背面部20の左右両側には第2の側面片21A,21Bが背面部20から連続して形成されている。これらの第2の側面片21A,21Bの幅は紙容器の上下方向においてほぼ同じである。また第2の側面片21A,21Bの上端は上方に突出する円弧に形成されている。
【0020】
底面部30の両側面がわの境界からは側面立上り片40A,40Bが一体的に延びている。この側面立上り片40A,40Bは紙容器の底部の密封性を高めるためのものであるから,紙容器の底部のみを覆う高さがあればよい。側面立上り片40A,40Bは第1,第2の側面片11A,11B,21A,21Bとは切り離されており,その上端は中央が最も突出する形になっている。
【0021】
上述した底面部30,正面部10,背面部20,第1の側面片11A,11B,第2の側面片21A,21B,側面立上り片40A,40Bの形状,幅,高さ等は,紙容器についての所望のデザインに応じて定めることができる。たとえば,底面部30は楕円形に近い形状にすることもできるし,正面部,背面部,側面片,側面立上り片もそれに応じて変形することもできるし,幅,高さなども変更可能である。
【0022】
上記のように型取り(型抜き)された厚紙(ブランク)1Aは,その折り線(一点鎖線)に沿って折り曲げられ,かつ所望箇所が接着されて図2ないし図4に示す形の自立性紙容器2Aが作成される。
【0023】
すなわち,第1の側面片11A,11Bを正面部10に対してほぼ直角に折り曲げ,同様に第2の側面片21A,21Bを背面部20に対してほぼ直角に折り曲げる。正面部10および背面部20を底面部30に対してほぼ直角に起立させる。また側面立上り片40A,40Bも底面部30に対してほぼ直角に起立させる。この実施例では第1の側面片11A,11Bが最も外側に位置し,その内側に第2の側面片21A,21Bが入り,側面立上り片40A,40Bは第2の側面片21A,21Bの内側に位置する。側面立上り片40A,40Bの外面が第2の側面片21A,21Bの内面にそれぞれ接着され(糊付けされ),第2の側面片21A,21Bの外面が第1の側面片11A,11Bの内面にそれぞれ接着(糊付け)される。接着はこれらの各片が重なっている部分の一部のみで充分である。
【0024】
このように自立性紙容器2Aが組立てられた状態において,第1の側面片11A,11Bの下端部に設けられている突出脚部12A,12Bが底面部30よりも下方に突出している。したがって,紙容器2Aを平坦な面(図3のP)に置いて立てたときに,紙容器2Aは正面部10の下端縁(正面部10と底面部30との境界)と,突出脚部12A,12Bの下端縁において(図4に太い線で示す),平坦面Pと接する。したがって,仮に,底面部30が湾曲してその中央部が下方に突出したとしても,この突出した底面部30が平坦面Pに接することは無いので,紙容器2Aは安定し,倒れにくい。突出脚部12A,12Bの突出量は予想される底面部30の湾曲の程度,紙容器2Aの全体的な安定性等を考慮して定めればよい。突出脚部12A,12Bの長さは,底面部30の幅(正面部10と背面部20との間隙)と同程度が好ましいが,底面部30の幅よりも長くてももちろん良いし,短くてもよい(底面部30の幅の半分以上であればよい)。
【0025】
また,側面立上り片40A,40Bが底面部30に連続的に設けられ,この側面立上り片40A,40Bが側面片11A,11B,21A,21Bによって形成される側面部の内側に沿いかつ接着されるので,紙容器下部における密封性が確保される。
【0026】
上述した紙容器の組立て(折り曲げ,接着)は手作業で行うこともできるが,従来通りに機械作業によって行うことができるのはいうまでもない。
【0027】
側面立上り片40A,40Bは底面部30に連続して設けられており,底面部30に対してほぼ直角に折り曲げられるので,紙の弾性(反発力)によって第2の側面片21A,21Bに向けて付勢される。したがって,側面立上り片40A,40Bを側面部(第2の側面片21A,21B)に接着せずとも,紙容器下部における密封性を確保することができる。もちろん,紙容器下部における密封性を確実なものとするためには,上述のように側面立上り片40A,40Bを側面部に接着するとよい。このことは,以下の変形例および他の実施例でも同様である。
【0028】
図5は変形例を示すものである。この変形例においては,側面立上り片40B(40A)が,第1の側面片11B(11A)と第2の側面片21B(21A)との間に挟まれ,その両面においてこれらの両側面片に接着されている。もちろん,他の部分においては,第1の側面片11B(11A)と第2の側面片21B(21A)も互いに接着される。
【0029】
図6はさらに他の変形例を示している。ここでは,側面立上り片40B(40A)が最も内側に位置し,第2の側面片21B(21A)が最も外側に位置し,第1の側面片11B(11A)がこれらの側面立上り片40B(40A)と第2の側面片21B(21A)との間に挟まれ,かつその突出脚部12B(12A)が底面部30よりも下方に突出している。各片は重なっている部分の少なくとも一部で接着されているのはいうまでもない。
【0030】
このように,側面立上り片40A,40Bは突出脚部12A,12Bを有する第1の側面片11A,11Bよりも内側にあれば,突出脚部12A,12Bを底面部30よりも下方に突出させることが可能である。第2の側面片21A,21Bの下端部に突出脚部を設けることもできるし,次に示す実施例のように,第1および第2の側面片の両方に突出脚部(第1実施例のような,細長いほぼ三角形状のものでもよい)を設けることも可能である。さらに,紙容器の左右側面部において,側面立上り片40A,40Bと第1の側面片11A,11Bと第2の側面片21A,21Bの重なりの順序が異なっていてもよい。たとえば,紙容器の左側面部は図3に示す順序の重なりであり,右側面部は図5または図6に示す順序の重なりでもよい。以上の変形例は,後述する他の実施例およびその変形例についてもあてはまる。
【0031】
図7はさらに他の変形例を示している。ここでは突出脚部12Bの下端が弧状に切欠かれている(符号12bで示す)(左側の突出脚部12Aについても同じ)。このような形状とすることにより,突出脚部12B(12A)は,背面部20側の先端部においてのみ平坦面Pと接することになり,平坦面Pに若干の凹凸があっても紙容器の安定性が損なわれにくいものとなっている。
【0032】
第2実施例
図8から図10は第2実施例を示している。これらの図において,第1実施例に示したものと同一物には同一符号を付し,重複説明を避ける。そして,第1実施例の自立性紙容器と異なる点についてのみ説明する。
【0033】
第2実施例は,2つの点で第1実施例と異なっている。第1は,組立てた状態において,底面部30の4隅の近傍にそれぞれ,合計4つの突出脚部が設けられている点である。第2は,底面部30に積極的に液体溜り(液体受部)を形成した点である。これにより,紙容器内に食品を収納したときに食品から出る油などの液体が紙容器から漏れるのを充分に防ぐことができる。
【0034】
第1の点について説明すると,紙容器のブランク1Bの展開図(図8)において第1の側面片11A,11Bの紙容器の下部に当る部分の最も外側に,紙容器を組立てたときに下方に突出する突出脚部13A,13Bが一体的に設けられている。第2の側面片21A,21Bにも同じように突出脚部23A,23Bが一体的に形成されている。紙容器2Bを組立てた状態においては,上記突出脚部13A,13B,23A,23Bは底面部30の4隅から下部に突出し,この4つの脚部によって紙容器2Bは平坦面P上に立つことができる(図9,図10)。
【0035】
第2の点について述べると,展開図(図8)において,特に符号31,41を用いて示すように,底面部30と側面立上り片40A,40Bとの境界部分に,弧状の折罫31,41が形成されている。底面部30側の折罫31は底面部30の内方に突出する形の弧を描き,側面立上り片40A,40B側の折罫41は側面立上り片40A,40Bの先端方向に突出する形の弧を描いている。これらの折罫31,41は紙容器2Aの組立て時に谷折り(紙容器の内面からみて)に折り曲げられるので,底面部30が,特に図9の縦断面に示されているように,その中央部が最も下方に突出するように弧状になり(前後方向にみて弧状)窪みが形成される。この窪みが液体溜り(液体受部)である。側面立上り片40A,40Bと底面部30とは,折罫31,41によって囲まれた斜めの部分31A,31Bを経て連続する。
【0036】
上記のように底面部30が下方に向って湾曲し,液体溜りが形成されているが,突出脚部13A,13B,23A,23Bは底面部30の最も低い部分よりも下方に突出しているので,底面部30が平坦面Pに接することなく,紙容器2Bは4つの突出脚部13A,13B,23A,23Bによって安定に自立する。
【0037】
第3実施例
図11から図13は第3実施例を示している。第3実施例の特徴は,液体溜めを形成するために底面部を下方に突出させる構造とし,この下方に突出した底面部の部分(液体溜めの最も深い部分)を紙容器が自立するための脚部として利用するものである。
【0038】
図11に示す展開図において,正面部10に2つの折罫14が入れられ,第1の側面片11A,11Bと正面部10との間に,部分10A,10Bが設けられ,第1の側面片11A,11Bと正面部10とが滑らかに湾曲ないしは折曲されるようになっている(図12においては正面部10,部分10A,10Bはそれぞれ平面に描かれているが,これらの正面部10,部分10A,10Bを湾曲させてもよい)。
【0039】
正面部10の下部に水平な折罫32Eが入れられている。また,底面部は,左右の中央であってやや前側(正面側)の点Cを頂点として,底面部が下方に四角錐状に突出できるように,4本の折罫32A,32B,32C,32Dが点Cから底面部の4隅の角に向って形成されている。底面部と側面立上り片40A,40Bとの境界の折罫を符号42で,底面部と背面部20との境界の折罫を符号23で示す。これらの折罫32A〜32E,42,23によって囲まれる底面部の部分を符号30A,30B,30C,30Dで示す。部分30A,30B,30Cはほぼ平坦であるが,部分30Dは正面から底面に向って外方に突出する方向に湾曲する。
【0040】
背面部20にも,折罫22によって第2の側面片21A,21Bとの間に,滑らかに屈曲するように部分20A,20Bが設けられている。
【0041】
下方に突出する突出脚部12A,12Bは第1実施例に示すものと同じである。
【0042】
この展開図(図11)に示されたブランク1Cを上述した各折罫で折り曲げ,かつ第1実施例と同じように必要箇所を接着することにより,図12および図13に示す自立性紙容器2Cが完成する。この紙容器2Cの内部においては,底面部に頂点Cで最も深くなる四角錐状の窪み(液体溜め)が形成されている。紙容器2Cの外側からみると,頂点Cが最も下方に突出し,紙容器2Cを支持する脚部となる。突出脚部12A,12Bの背面側の部分(図12にA,Bで示す)も紙容器2Cを支持する。すなわち,紙容器は平坦面P上に立てられたときに,3点A,B,Cで自立することになり,最も安定な形態で立つことになる。
【0043】
図14は変形例を示している。図12に示す底面部の部分30Dの中心に頂点Cを通って正面部10に向かうもう一本の折罫32Fが形成されている。この折罫32Fは他の折罫とは反対に,紙容器の内側からみて山折り(外側からみて谷折り)のものであり,部分30Dが2つの部分30Daと30Dbとに分けられている。外面からみて折罫32Fに沿ってややへこんだ形になり,ブランクの無理のない折曲が可能となる。この変形例においても自立性紙容器2Dは点A,B,Cによる3点支持である。
【0044】
図15はさらに他の変形例の自立性紙容器2Eを示し,1本の折罫32Fに代えて,底面部の部分30D(図12)に,互いに少し離れた2本の折罫32G,32Hが形成されている。この折罫32G,32Hも,紙容器2Eの内部からみると山折り,外部からみると谷折りで,この折罫32G,32Hの部分が外からみて少しへこんでいる。また正面部10と,第1の側面片11A,11Bとの間の2つの折罫が正面部10の上端と第1の側面片11A,11Bの高さ方向の中央を結ぶように入れられている。他の構成は上述した図14に示す変形例と同じである。
【0045】
図16ないし図18はさらに他の変形例を示している。
【0046】
図16の展開図を参照して,底面部30において,正面部10と底面部30との境界を示す折罫33Cが底面部30の方に少し入り込んだ形で形成されている。折罫33Cは,正面部10の左下端,右下端から斜めに底面部30の方向に延びた折罫部分33Ca,33Cbを直線(折罫25に平行)でつなぐ形になっている。底面部30において,折罫33Cの両端から,折罫25の両端に向って斜めに折罫33A,33Bが形成されている。また,正面部10において,折罫33Cの両端から正面部10の上端に向って2本の折罫13A,13Bが途中まで延びている。
【0047】
このようなブランク1Gを折曲しかつ接着して組立てると,図17,図18に示されるような紙容器2Gとなる。正面部10の符号10Cで示す下部は湾曲して底面部30に連続し,底面部30は前方に向ってやや下方に傾き,折罫33Cの位置で最も低くなる。
【0048】
したがって,紙容器2G内においては,底面のやや前方の折罫33Cの部分で最も深くなる窪み(液体溜め)が形成される。紙容器2Gは,この折罫33Cと突出脚部12A,12BのA,Bの部分によって支持されて安定に自立することになる(太い線と黒丸で示す)。
【0049】
図19ないし図22はさらに他の変形例を示している。この変形例では,図19に示すように,背面部20と底面部30との境界に形成される折罫が,符号34A,34Bで示すように,背面部20からやや底面部30の方向に入り込んだ形に形成されている。底面部30側に最も入り込んだ位置(2つの直線折罫34A,34Bの交点)を点Eとする。また,突出脚部26A,26Bは背面部20の両側に一体的に形成された第2の側面片21A,21Bの下端部に形成されている。
【0050】
図19に示すブランク1Hを組立てると図20ないし図22に示す紙容器2Hが完成する。底面部30は点Eにおいて最も低くなり,ここに窪み(液体溜め)が形成される。突出脚部26A,26Bの最も下方に突出する部分A,Bは正面側の両側下端の位置にあるから,底面部30は正面側において最も高くなる。紙容器2Hは図21に最もよく示されているように,やや背面側に傾いた形態でA,B,Eの3点支持により,自立する。
【0051】
第3実施例においても,第2実施例(図8〜図10)に示すような一部でのみ突出した形の突出脚部を用いることができる。上記実施例では底面部はほぼ長方形であるが,角に丸みをもたせたり,楕円形に近い形状にするなど,種々の変形が考えられる。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B,1C,1G,1H ブランク
2A,2B,2C,2D,2E,2G,2H 自立性紙容器
10 正面部
11A,11B 第1の側面片
12A,12B,13A,13B,23A,23B,26A,26B 突出脚部
20 背面部
21A,21B 第2の側面片
30 底面部
40A,40B 側面立上り片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙容器の底面部と,
該底面部の正面がわおよび背面がわからそれぞれ立上る正面部および背面部と,
該底面部の両側がわからそれぞれ立上る側面立上り片と,
該正面部の両側から連続して延びる第1の側面片と,
該背面部の両側から連続して延びる第2の側面片とを備え,
該紙容器の左右の両側面において,該第1の側面片と該第2の側面片とが相互に重なり合う部分で接着され,
該第1の側面片,該第2の側面片の少なくともいずれか一方が,該紙容器の背面がわ,正面がわの少なくともいずれか一方において,その近傍の底面よりも下方に突出する脚部を有し,
該側面立上り片は,該突出脚部を有する側面片よりも内側にあることを特徴とする,
自立性紙容器。
【請求項2】
該第1の側面片および該第2の側面片のいずれか一方にのみ該突出脚部が設けられている,請求項1に記載の自立性紙容器。
【請求項3】
該第1の側面片および該第2の側面片の両方に該突出脚部が設けられている,請求項1に記載の自立性紙容器。
【請求項4】
該底面部に液体溜めの窪みが,該底面部を含む紙容器下部の厚紙の変形により形成され,該突出脚部が該窪み最下部よりも下方に突出している,請求項1から3のいずれか一項に記載の自立性紙容器。
【請求項5】
該突出脚部が該正面部がわまたは該背面部がわの一方に設けられ,他方には,該底面部に液体溜めの窪みを形成するように該底面部を含む紙容器下部の厚紙が変形されて下方に突出し,該突出脚部と該液体溜めによる下方突出部とによって紙容器が支持されている,請求項1に記載の自立性紙容器。
【請求項6】
1枚の厚紙の型抜き,折曲,接着により作られている,請求項1から5のいずれか一項に記載の自立性紙容器。
【請求項1】
紙容器の底面部と,
該底面部の正面がわおよび背面がわからそれぞれ立上る正面部および背面部と,
該底面部の両側がわからそれぞれ立上る側面立上り片と,
該正面部の両側から連続して延びる第1の側面片と,
該背面部の両側から連続して延びる第2の側面片とを備え,
該紙容器の左右の両側面において,該第1の側面片と該第2の側面片とが相互に重なり合う部分で接着され,
該第1の側面片,該第2の側面片の少なくともいずれか一方が,該紙容器の背面がわ,正面がわの少なくともいずれか一方において,その近傍の底面よりも下方に突出する脚部を有し,
該側面立上り片は,該突出脚部を有する側面片よりも内側にあることを特徴とする,
自立性紙容器。
【請求項2】
該第1の側面片および該第2の側面片のいずれか一方にのみ該突出脚部が設けられている,請求項1に記載の自立性紙容器。
【請求項3】
該第1の側面片および該第2の側面片の両方に該突出脚部が設けられている,請求項1に記載の自立性紙容器。
【請求項4】
該底面部に液体溜めの窪みが,該底面部を含む紙容器下部の厚紙の変形により形成され,該突出脚部が該窪み最下部よりも下方に突出している,請求項1から3のいずれか一項に記載の自立性紙容器。
【請求項5】
該突出脚部が該正面部がわまたは該背面部がわの一方に設けられ,他方には,該底面部に液体溜めの窪みを形成するように該底面部を含む紙容器下部の厚紙が変形されて下方に突出し,該突出脚部と該液体溜めによる下方突出部とによって紙容器が支持されている,請求項1に記載の自立性紙容器。
【請求項6】
1枚の厚紙の型抜き,折曲,接着により作られている,請求項1から5のいずれか一項に記載の自立性紙容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−218775(P2012−218775A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86379(P2011−86379)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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