自立支援補助具
【課題】障害者の生活を補助する者の負担を軽減し、彼ら自身の自立を補助することができる道具を提供する。
【解決手段】外力が加わる部位に、ヒステリシスロス率が50%未満であって、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下である弾性材料を用いたことを特徴とする自立支援補助具であって、より好ましくは指孔と把持物孔とが形成され、該指孔を拡げて親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、該把持物孔を拡げて把持対象物を通して、該把持対象物の把持を補助するものであって、前記指孔が形成された指孔形成部と、前記把持物孔が形成された把持物孔形成部と、前記指孔形成部と前記把持物孔形成部とを繋ぐ連結部とを備え、前記指孔形成部、前記把持物孔形成部、および前記連結部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなる。
【解決手段】外力が加わる部位に、ヒステリシスロス率が50%未満であって、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下である弾性材料を用いたことを特徴とする自立支援補助具であって、より好ましくは指孔と把持物孔とが形成され、該指孔を拡げて親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、該把持物孔を拡げて把持対象物を通して、該把持対象物の把持を補助するものであって、前記指孔が形成された指孔形成部と、前記把持物孔が形成された把持物孔形成部と、前記指孔形成部と前記把持物孔形成部とを繋ぐ連結部とを備え、前記指孔形成部、前記把持物孔形成部、および前記連結部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害者等の自立を支援するための道具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、障害者自立支援法が制定される等して、身体障害、知的障害又は精神障害(以下、「障害」と総称する場合がある)がある者(以下、「障害者」と称する場合がある)の日常生活で受ける制限を軽減させ、障害者等を自立に導くということが注目され、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜3および非特許文献1等参照)。しかし、障害の程度は千差万別であり、画一的に効果的な手法を提案することは困難である。
【0003】
また、障害者と認定されていない者であっても日常生活で制限を受ける者がいる。例えば、幼少期の成長が遅く筆記具などの道具がうまく使えないにもかかわらず、強引にそれらの道具を使用したためにおかしな癖がついてしまうことがある。道具をうまく使うためには一度この癖を矯正しなくてはならないが、その労を惜しんでそのまま矯正せずに道具類をうまく使えないままの者がいる。他にも、年齢による筋肉の衰えによって上記道具類をうまく使えなくなる者もいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−22242号公報
【特許文献2】特開2003−169730号公報
【特許文献3】実開平6−12091号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“録音・再生&1スイッチタイプ ビッグマック・リトルマック”、[online]、パシフィックサプライ株式会社、[平成22年1月7日検索]、インターネット< URL :http://www.p-supply.co.jp/comaid/voca/mac/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、学校の教育現場等における自立支援活動を円滑に行うことができるようにし、障害者等の自立の機会を増やすことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1自立支援補助具は、
外力が加わる部位に、ヒステリシスロス率が50%未満であって、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下である弾性材料を用いたことを特徴とする。
【0008】
ヒステリシスロス率が50%未満だと、変形しても確実に元の形状に戻ろうとする力が生じ、この力によって摩擦力が生じる。したがってこの第1自立支援補助具によれば、道具をつかむ部分や、土台の部分などの外力が加わる部分に上記弾性材料を用いることで、道具にかかる力を効率的に利用することができる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、様々な変形に対応することができ、例えば障害者が使用に際し過度な引っ張りをした場合であっても耐えることができる。
【0009】
ここで、上記第1自立支援補助具は、
指孔と把持物孔とが形成され、その指孔を拡げて親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、その把持物孔を拡げて把持対象物を通して、その把持対象物の把持を補助するものであって、
上記指孔が形成された指孔形成部と、
上記把持物孔が形成された把持物孔形成部と、
上記指孔形成部と上記把持物孔形成部とを繋ぐ連結部とを備える第2自立支援補助具であってもよい。
【0010】
この第2自立支援補助具において、上記指孔形成部、上記把持物孔形成部、および上記連結部は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0011】
ここで、上記指孔形成部、上記把持物孔形成部、および上記連結部は、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が0°以上15°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0012】
この第2自立支援補助具によれば、筆記具等を力まずに把持する持ち方を学習することができる。この持ち方をすることで、文字を書くとすぐに疲れてしまい集中力が低下することを防止でき、学習を効果的に行うことができる。また、上記第2自立支援補助具は弾性材料からなるものであるため、様々な形状の筆記具等を把持することができる。
【0013】
また、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔形成部が、環状であり、
上記把持物孔形成部も、環状であり、
上記連結部が、上記指孔形成部の一部であり、かつ上記把持物孔形成部の一部である共有部であり、
上記指孔形成部の外周と上記把持物孔形成部の外周との間にくびれが形成されたものであることが好ましい。
【0014】
この第2自立支援補助具によれば、指孔形成部および把持物孔形成部が環状になっているため、指や筆記具等を容易に装着することができる。また、くびれが形成されているため、手のサイズに合わせて筆記具等を把持する角度を容易に変えることができる。
【0015】
さらに、上記第2自立支援補助具は、
上記連結部が、上記共有部を補強する補強部を備えたものであることが好ましい。
【0016】
この第2自立支援補助具によれば、ねじれが生じる部位を補強してより多くの使用に耐えることができる。
【0017】
さらにまた、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔形成部が、外縁が面取りされたものであり
上記把持物孔形成部も、外縁が面取りされたものであることが好ましい。
【0018】
この第2自立支援補助具によれば、面取りして切れやすい角をなくしたことにより、より多くの使用に耐えることができる。
【0019】
加えて、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔形成部が、上記把持物孔形成部によって形成された把持物孔よりも大きい孔が上記指孔として形成されたものであることが好ましい。
【0020】
この第2自立支援補助具によれば、様々な太さの筆記具等に対応することができる。
【0021】
さらに加えて、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔の中心と上記把持物孔の中心との距離が、その指孔の半径に対して2倍以上4倍以下であってもよく、2倍以上3倍以下が好ましく、2倍以上2.5倍以下がより好ましい。
【0022】
この第2自立支援補助具によれば、手のサイズにあった位置で筆記具等を把持することができる。
【0023】
また、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔に親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、上記把持物孔に把持対象物を通して、その対象物を把持した状態で、少なくとも薬指または小指のいずれか一方の指で握ることができる把持補助部を備えた第3自立支援補助具であってもよい。
【0024】
ここで上記把持補助部は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が15°より大きいことが好ましく、30°以上であることがさらに好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0025】
この第3自立支援補助具によれば、薬指や小指で把持補助部を握ってこれらの指を安定した状態にすることにより、筆記具等を安定して把持することができる。
【0026】
さらに、上記第3自立支援補助具は、
上記把持補助部が、棒状であることが好ましい。
【0027】
この第3自立支援補助具によれば、コストを低く抑えることができ、かつ、把持補助部を握りやすくすることができる。
【0028】
さらにまた、上記第3自立支援補助具は、
上記把持補助部が、上記把持物孔形成部から延在したものであることが好ましい。
【0029】
この第3自立支援補助具によれば、把持補助部をより握りやすい位置に設けることができる。
【0030】
加えて、上記第3自立支援補助具は、
上記把持補助部が、上記把持物孔形成部よりも硬いものであることが好ましい。
【0031】
この第3自立支援補助具によれば、上記把持補助部をより力を入れて握ることができるため、筆記具等をより安定して把持することができる。
【0032】
また、上記第1自立支援補助具は、
操作面が所定の荷重を受けて沈み込むあるいは傾くことによってオンするスイッチに装着され、その操作面にその所定の荷重をかける操作を補助する、その荷重未満のものであって、
上記操作面に対して垂直方向に延在する延在部を有する操作体と、
上記操作体の一端を上記操作面に着脱自在に固定する固定部とを有する第4自立支援補助具であってもよい。
【0033】
この第4自立支援補助具において、上記延在部は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0034】
ここで上記固定部は、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が0°以上40°以下のものであることが好ましく、上記操作体は、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が50°以上70°以下のものであることが好ましい。すなわち、上記操作体は、上記固定部より硬度が高いものであることが好ましい。操作体は、加えられた操作力を上記操作面に確実に伝えるためにある程度の硬さが必要であるのに対し、固定部は、上記操作面の形状に追従しやすくするためある程度の柔らかさが必要である。また、第4自立支援補助具の弾性は、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0035】
この第4自立支援補助具を、市販の押しボタン式の入力装置に装着することによって、この入力装置を様々な方向からの力で操作することができる。また、着脱が容易であるため、同様の入力装置に使いまわすことができる。さらに、消極的な子供などに対しては、興味のあるキャラクタを象ることで操作してもらうように働きかけることができる。さらに、弾性を有するものであるため、操作の際に怪我をしにくい。
【0036】
さらに、上記第4自立支援補助具は、
上記操作体の、上記一端に対する他端側に、上記垂直方向に交わる方向に拡がる頭部を有するものであることが好ましい。
【0037】
この第4自立支援補助具によれば、重心が頭部側に偏るため、軽い力で操作することができる。さらに頭部の太さが操作部の太さよりも太くなるため、操作しやすい。
【0038】
ここで上記頭部は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が50°以上70°以下であることが好ましい。
【0039】
また、上記第1自立支援補助具は、
椅子の着座面に敷かれ、その着座面に腰掛けた姿勢を維持できるように補助するものであって、
複数の溝が形成されたおもて面と、
複数の穴が設けられた裏面とを有する第5自立支援補助具であってもよい。
【0040】
この第5自立支援補助具において、上記おもて面および上記裏面は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0041】
ここで上記おもて面および裏面は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が0°以上15°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0042】
この第5自立支援補助具によれば、座った時におもて面の溝を空気が通るため蒸れない。また、この溝の縁に、使用者の臀部にまとった衣類がひっかかり、滑ってしまうことが防止される。さらに、裏面に設けられた穴と椅子の座面との間に空気の部屋ができるため、柔軟性を有し快適な座り心地を提供することができる。なお、上記溝は平行に形成されたものであってもよく、上記穴は規則的に配置されたものであってもよい。
【0043】
さらに、上記第5自立支援補助具は、
厚さが100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0044】
この第5自立支援補助具によれば、椅子に敷いても座面の高さ位置があまり変化しないため、椅子の高さを座る人に合わせて再調整する必要がない。
【0045】
さらにまた、上記第5自立支援補助具は、
上記おもて面が、断面V字状の溝が平行に複数形成された面であることが好ましい。
【0046】
この第5自立支援補助具によれば、コストを低く抑えることができる。
【0047】
加えて、上記第5自立支援補助具は、
上記裏面が、多角形の穴が隙間なく形成された面であることが好ましい。
【0048】
この第5自立支援補助具によれば、材料を少なくしてコストダウンすることができるとともに、柔軟性を得ることができる。
【0049】
さらに加えて、上記第5自立支援補助具は、
上記裏面が、上記おもて面側へ向かうほど狭くなる穴が複数形成された面であることが好ましい。
【0050】
この第5自立支援補助具によれば、荷重が大きくなるにしたがって荷重を支える弾性材の面積が増えるため、荷重に応じた柔軟性を得ることができる。
【0051】
また、上記第1自立支援補助具は、
筆記具を用いて線を引くことを補助するものであって、
筆記具があてがわれる縁と、
裏面に設けられた滑り止め部と、
おもて面に設けられ、上記縁側を向いた指先の腹を象った凹み部とを有し、
上記凹み部は、開口の大きさが異なる2種類以上の凹みを有するものである第6自立支援補助具であってもよい。
【0052】
この第6自立支援補助具において、上記滑り止め部は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0053】
上記凹み部は、複数の凹み部を有するものであり、上記縁側が先細になった凹みを有するものであってもよい。この先細の凹みが複数あることによって、上記第6自立支援補助具に対して自然な向きで指をあてがうことができる。また、凹んでいる深さが異なる2種類以上の凹みを有するものであってもよい。
【0054】
ここで上記滑り止め部は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が5°以上40°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0055】
この第6自立支援補助具によれば、滑り止めを設けているため補助具自体がずれにくく、線を引きやすくすることができる。さらに、凹み部を使用すれば押さえることが容易になるだけでなく、自然な向きに上記縁を向けて線を引くことができる。
【0056】
さらに、上記第6自立支援補助具は、
上記縁が、黒色の背景に白色の目盛が設けられたものであることが好ましい。
【0057】
この第6自立支援補助具によれば、目盛が見やすくなり引きたい長さの線をより正確に引くことができる。また、正確な長さの測定にも使用することができる。
【0058】
さらにまた、上記第6自立支援補助具は、
上記裏面に設けられた支点部分と、
この自立支援補助具を載置する載置面とは非接触な部分であって、押さえることで上記支点部分を支点にして上記縁が持ち上がる非接触部分を有することが好ましい。
【0059】
この第6自立支援補助具によれば、上記非接触部分を押さえることで持ち上がる上記縁をつかむことができ、載置面から第6自立支援補助具を取ることが容易になる。
【0060】
加えて、上記第6自立支援補助具は、
上記支点部分が、上記滑り止め部に設けられたものであることが好ましい。
【0061】
この第6自立支援補助具によれば、上記非接触部分を押さえて持ち上げても滑らずに持ち上げることができる。
【0062】
また、上記第1自立支援補助具は、
載置面に用紙を置いてその用紙に筆記する際に、その載置面とその用紙の間に敷かれる第7自立支援補助具であってもよい。
【0063】
この第7自立支援補助具は、所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0064】
ここで、この第7自立支援補助具は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が25°以上75°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0065】
また、上記第7自立支援補助具は、
厚さが、0.1mm以上30mm以下であることが好ましく、0.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0066】
さらに、上記第7自立支援補助具は、
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、所定の用紙の大きさについての規格に応じた大きさの枠が設けられていることが好ましい。
【0067】
また、上記第7自立支援補助具は、
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、目盛りが設けられていることも好ましい。
【0068】
なお、上記枠よりも内側に目盛りが設けられていてもよいし、外側に目盛りが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明の自立支援補助具によれば、障害者の生活を補助する者の負担が軽減され、彼ら自身の自立を補助することができる道具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】鉛筆の持ち方を示す図である。
【図2】本発明の自立支援補助具の第1実施形態である第1持ち方補助具を示す図である。
【図3】(a)は、左利きの者が図2に示す第1持ち方補助具を装着した様子を示す図であり、(b)は、第1持ち方補助具を用いて鉛筆を把持している様子を示す図であり、(c)は、3点支持の持ち方を訓練している様子を示す図である。
【図4】第2持ち方補助具を示す図である。
【図5】第2持ち方補助具を装着している様子を示す図である。
【図6】(a)は、把持補助部を手の大きさに合わせて調整した第2持ち方補助具を装着し、鉛筆を把持物孔に通した様子を示す図であり、(b)は、(a)の状態から鉛筆を把持した様子を示す図であり、(c)は、持ち方を訓練している様子を示す図である。
【図7】押しボタン補助具が装着される押しボタンスイッチを示す図である。
【図8】(a)は、押しボタン補助具を示す図であり、(b)は、押しボタン補助具を使用している様子を示す図である。
【図9】(a)は、押しボタン型スイッチの操作面中央に押しボタン補助具を装着した様子を示す図であり、(b)は、押しボタン型スイッチの操作面周辺部に押しボタン補助具を装着した様子を示す図である。
【図10】(a)は、図9(a)に示す押しボタン補助具が倒れる方向に力を加えてている様子を示す図であり、(b)は、図9(a)に示す押しボタン補助具を真上から押下している様子を示す図である。
【図11】図9および図10に示した押しボタン型スイッチよりも小さい押しボタン型スイッチに、押しボタン補助具を装着した様子を示す図である。
【図12】押しボタン補助具を分解した様子を示す図である。
【図13】座り方補助シートを示す図である。
【図14】子供が椅子に腰掛けている様子を示す図である。
【図15】(a)は本実施形態の作図補助具を示す図であり、(b)は(a)のB−B’における断面図であり、(c)は作図補助具を平面に載置した様子を示す図である。
【図16】(a)は作図補助具を手で押さえた様子を示す図であり、(b)は作図補助具を使用して線を引いている様子を示す図である。
【図17】本実施形態の筆記補助マットを示す図である。
【図18】(a)は、筆記補助マットを使用して学習している様子を示す図であり、(b)は、筆記補助マットと消しゴムを使用している様子を示す図であり、(c)は、筆記補助マットとコンパスを使用して円を描く様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、図面を参照して本発明の自立支援補助具の実施の形態を説明する。
【0072】
最初に、本発明の第2自立支援補助具の実施形態である第1持ち方補助具について説明する。
【0073】
筆記具のような道具を上手に持つには、各指の力加減をコントロールできることが重要である。この各指の力加減をコントロールできることを分離性あるいは独立性と称することがあり、以下では分離性と称して説明を続ける。この分離性が不十分だと、例えば親指、人差し指、および中指で筆記具を持つときに、これら3本の指につられて薬指と小指にも力が入ってしまい、筆記具をうまく持つことができない場合がある。以下、鉛筆を持つ場合を例に説明する。
【0074】
図1は、鉛筆の持ち方を示す図である。
【0075】
図1(a)および(b)に示されている持ち方は、上記の分離性が不十分な者による持ち方の一例である。図1(a)では鉛筆Pを持つ指先に必要以上に力がかかっている。また、図1(b)では、鉛筆Pを掌で握り込んでいる。上述したように分離性が不十分だと、ある指を動かす際に他の指がつられて動いしまうため、図1(a)および(b)に示すような鉛筆Pを固定する持ち方になりがちである。このような持ち方では、鉛筆Pが固定されているため、鉛筆Pを滑らかに動かすことが困難である。したがって、字をうまく書くことができない、字を書くのに時間がかかる、文字を書いていてもすぐに疲れてしまい授業に集中できない、等の問題がある。また、後に分離性を獲得した者であっても、既に上記のような持ち方が癖になってしまい矯正が容易ではないという問題もある。
【0076】
図1(c)には、第1持ち方補助具を使用することにより習得が期待される持ち方(以下、正しい持ち方と称する。)が示されている。この図において、鉛筆Pは、親指THの付け根と人差し指IFの付け根との間に跨る部分FW(図に示す点線で囲まれた部分、以下、ファーストウェブと称する。)、親指TH、および中指MFの3点で支持されている。なお、このとき人差し指IFは鉛筆Pに軽く添えられている。この図1(c)に示されている正しい持ち方の場合、上記3点で鉛筆Pを安定して支えることができるため、図1(a)および(b)の持ち方をした場合の力と比較して軽い力で鉛筆Pを把持した状態で字を書くことができる。本実施形態の第1持ち方補助具は図1(c)に示す正しい持ち方を習得することを目的とするものである。
【0077】
図2は、本発明の第2自立支援補助具の実施形態である第1持ち方補助具100を示す図である。
【0078】
図2(a)には、本実施形態の第1持ち方補助具100が三面図で示されており、図2(b)には、この第1持ち方補助具100が斜視図で示されている。この図2(a)および(b)に示す第1持ち方補助具100はシリコーンゴムで形成されたものであり、2つの孔H1,H2が形成されている。これらの孔のうち大きい方の孔H1は指を通すための指孔H1であり、小さい方の孔H2は対象物を保持するための把持物孔H2である。以降、この指孔H1を形成する部分を指孔形成部101と称し、把持物孔H2を形成する部分を把持物孔形成部102と称する。
【0079】
上記第1持ち方補助具の指孔H1は半径が7.5mmであり、成人の親指の平均的な太さよりも細い。この指孔H1を拡げて親指THを通すとシリコーンゴムの復元力によって指に密着し、指孔形成部101と親指THとの間に摩擦力が生ずる。この摩擦力によって第1持ち方補助具100が親指THから外れにくい状態になる。なお、指孔H1の半径に特に制限はなく、指孔形成部101が使用する者の指に密着するような大きさであればよく、子供用のものであれば、指孔H1の半径は7.5mmよりも小さくなる。
【0080】
上記把持物孔H2は半径が4.0mmであり、一般的な筆記具の太さよりも細い。この把持物孔H2を拡げて鉛筆Pを通すと、上記指孔H1に親指THを通した場合と同様に、把持物孔形成部102が鉛筆Pに密着して摩擦力が生ずる。この摩擦力によって、鉛筆Pが第1持ち方補助具100から外れにくい状態になる。なお、把持物孔H2の半径には特に制限はなく、把持物孔形成部102が把持対象物に密着するような大きさであればよい。ここで、把持対象物は鉛筆Pに限らず、例えば、鉛筆Pよりも径の大きい油性ペンや、スプーンおよびフォークといった食器類等がある。
【0081】
すなわち、指孔H1に親指を通し、把持物孔H2に鉛筆Pを通して、この鉛筆Pを親指に留めることができ、上記3点支持による持ち方の訓練を容易に行うことができる。ここで、指孔H1の中心と把持物孔H2の中心を結ぶ直線距離は、指孔H1の半径に対して2倍以上4倍以下であり、2倍以上3倍以下が好ましく、2倍以上2.5倍以下であることがより好ましい。このような数値範囲をとることによって第1持ち方補助具を指のサイズに合わせたものとすることができる。また、ここで上限値を規定しているのは、上記直線距離が長くなればなるほど、鉛筆Pが、ファーストウェブFWにのらなくなり、人差し指IF側に倒れ込んでしまい、正しい持ち方を習得することができなくなってしまうからである。
【0082】
また、この第1持ち方補助具100の内周縁1031や外周縁1032はR状に面取りされている。面取りがされていない場合、面取りした場合に比べて縁(1031,1032)には亀裂が生じやすくなり、亀裂が生じたまま指孔形成部101や把持物孔形成部102を伸ばすと第1持ち方補助具100が切れてしまうという問題がある。この問題を解決するため、この第1持ち方補助具100では、内周縁1031と外周縁1032をR状に面取りし、切れにくくしている。
【0083】
図2(c)は、第1持ち方補助具100の各部を示す、図2(a)のA−A’における断面図である。
【0084】
この図2(c)には、指孔形成部101と把持物孔形成部102とが一部を共有している様子が示されている。指孔形成部101と把持物孔形成部102はそれぞれ環状であり、図中のクロスハッチングで示された共有部104は指孔形成部101と把持物孔形成部102とを繋いでいる。さらに、この共有部104がねじれて切れてしまうことを防止するための補強部105が左下がりのハッチングで示されている。この共有部104と補強部105が、本発明の第2自立支援補助具における連結部分の一例に相当する。
【0085】
この第1持ち方補助具100には、指孔形成部101と把持物孔形成部102のそれぞれの外周が繋がる部分にくびれNが形成されており、指孔形成部101と把持物孔形成部102とをひねることによって親指THに対する鉛筆Pの角度を容易に変えることができる。このため、筆記具等を使用するために親指THが動いても鉛筆PをファーストウェブFWに乗せておくことができる。
【0086】
以下図3を用いて、図2に示す持ち方補助具100の使用方法について説明する。
【0087】
図3(a)は、左利きの者が図2に示す第1持ち方補助具100を装着した様子を示す図である。この図3(a)では、第1持ち方補助具100の指孔H1に使用者の親指を通している様子が示されている。このとき、把持物孔H2が親指THと人差し指IFとの間にくるように第1持ち方補助具100を装着する。この把持物孔H2に筆記具等を通すことで、筆記具等がファーストウェブFWに乗った状態になる(同図(c)参照)。後は、指先で筆記具等を把持をするだけで、親指TH、中指MF、およびファーストウェブFWによる3点により容易に筆記具等を支持することができる。
【0088】
図3(b)では、図2に示す第1持ち方補助具100を用いて鉛筆Pを把持している。この第1持ち方補助具100によって鉛筆Pは親指THに留められているため、鉛筆Pを上記3点支持(ファーストウェブFW、親指TH、および中指MFによる支持)で持つ場合に鉛筆Pを落とさないように補助することができる。このため、各指を独立して動かすことができない者であっても、第1持ち方補助具100を使用して上記3点支持の持ち方を訓練することができる。
【0089】
図3(c)は、上記3点支持の持ち方を訓練している様子を示す図であり、この図では、図2に示す第1持ち方補助具100を使用して正しい持ち方で鉛筆Pを把持するとともに、その鉛筆Pを使用している様子が示されている。なお、この図3(c)の第1持ち方補助具100の使用者は図3(a)および(b)の使用者とは異なり、右利きの者である。このように、第1持ち方補助具100は利き手の如何にかかわらず、正しい持ち方を訓練することができる。
【0090】
なお、本実施形態では鉛筆Pを把持する場合について説明したが、把持対象物は鉛筆Pに限られない。例えば、鉛筆Pよりも径の大きい油性ペンや、スプーンおよびフォークといった食器類であってもよい。また、本実施形態では図1(c)の持ち方を目標として説明したが、上記指孔H1に人差し指IFを通して上記ファーストウェブFWの、より人差し指IF側で支える持ち方を学習することも可能である。また、素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム等)であってもよい。
【0091】
上記持ち方補助具100は使用者の手の大きさに合わせることが好ましい。手が大きくなると、それに合わせて指の太さが太くなる。さらに、筆記具等を把持する場合、親指THとその筆記具との距離も大きくなる。したがって、上記指孔H1の中心と上記把持物孔H2の中心との距離が、その指孔H1の半径に対して2倍以上2.5倍以下であることが好ましい。この比率の持ち方補助具100であれば、手のサイズにあった位置で筆記具等を把持することができる。
【0092】
本実施形態の第1持ち方補助具100では、外力が加わる部位である指孔形成部101,把持物孔形成部102,共有部104,および補強部105に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上15°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0093】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、一般的に把持される対象物の大きさに対応でき、障害者が使用に際し過度な引っ張りをした場合であっても耐えることができる。
【0094】
次に、本発明の第3自立支援補助具の実施形態である第2持ち方補助具について説明する。
【0095】
ここで説明する第2持ち方補助具は、上述の第1持ち方補助具を用いても持ち方を習得することが困難な者を対象とするものである。上述の分離性の習得には個人差があり、第1持ち方補助具を使用してもなかなか持ち方を習得できない者も存在する。例えば、第1持ち方補助具を使用して上述した3点支持の持ち方を維持しようと試みても、薬指と小指には何も握られていない不安定な状態であるため、これらの指の状態につられて筆記具を持つ3本の指が不安定になってしまうことがある。そのような者に学習を継続させるのは困難であるだけでなく、学習者にとっては苦痛となることもある。本実施形態の第2持ち方補助具は、少なくともこのように低い分離性を、第1持ち方補助具で練習ができる程度の分離性まで高めることを目的とするものである。
【0096】
図4は、第2持ち方補助具200を示す図である。同図(a)は、第2持ち方補助具200を3方向から示す図であり、同図(b)は、第2持ち方補助具200の斜視図である。
【0097】
この図4に示す第2持ち方補助具200は、図2に示す第1持ち方補助具100の、把持物孔形成部102に相当する部分に把持補助部201が接合部202を介して接着されているものである。この把持補助部201は、第1持ち方補助具100よりも硬いシリコーンゴム製の棒状の部材である。なお、図2に示す第1持ち方補助具100と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。なお、図4に示す第2持ち方補助具200にもくびれNが設けられている。この第2持ち方補助具200では、接着された把持補助部201の形状に沿うように形状が変更されているため、くびれNのくびれ具合が第1持ち方補助具100単体の場合と比較して小さくなっているが、くびれNによって、筆記具等を使用するために親指THが動いても筆記具等をファーストウェブFWに乗せておくことができる。
【0098】
この第2持ち方補助具200では、第1持ち方補助具100と把持補助部201とは硬度が異なる。そのため、第2持ち方補助具200は、第1持ち方補助具100と把持補助部201それぞれを成形した後、それぞれの接触部分を接合部202で覆って接着することによって造られる。但し、第2持ち方補助具200は、上記方法で製造されるものに限定されず、例えば一体成形によって第1持ち方補助具100の部分と把持補助部201の部分とで硬度を異ならせて造られるものであってもよい。なお、第1持ち方補助具100と把持補助部201は同一の硬度であってもよい。
【0099】
また、把持補助部201は角柱状のものの他、円柱状のもの、さらには、握りやすいように膨らみを付けたものであってもよい。
【0100】
次に図5および図6を用いて、上記第2持ち方補助具200の使用方法について説明する。
【0101】
図5(a)は、第2持ち方補助具200を装着している様子を示す図である。この図5(a)には、第1持ち方補助具100と同様に、第2持ち方補助具200の指孔H1に親指を通し、把持補助部201を中指MF、薬指RF、および小指SFで握っている様子が示されている。この把持補助部201は手の大きい者でも握ることができるように長めに作ってある。すなわち、把持補助部201は、使用者が少なくとも小指か薬指のいずれか一方の指でこの把持補助部201を把持した場合に、その使用者の掌からはみ出る長さであって、かつ切断可能なものである。このため、図5(a)に示すように手の大きさによって把持補助部201が掌からはみ出ることになる。このはみ出た部分については図5(b)に示すようにカッター等で容易に切り落とすことができる。このように把持補助部201を手の大きさに合わせて調整することができる。
【0102】
図6(a)は、把持補助部201を手の大きさに合わせて調整した第2持ち方補助具200を装着し、鉛筆Pを把持物孔H2に通した様子を示す図である。この図6(a)に示すように把持補助部201が掌を横切る位置になるように指孔H1に親指を通すことにより、鉛筆Pを把持しつつ把持補助部201を薬指や小指で握ることができる。
【0103】
図6(b)は、図6(a)の状態から鉛筆Pを把持した様子を示す図である。この図6(b)に示す第2持ち方補助具200の使用者は、何もしないと総ての指を独立してうまく動かすことができない。この図6に示す使用者の場合、薬指RFおよび小指SFで把持補助部201を握ると、親指THおよび人差し指IFは独立して動かすことができるようになる。しかし、中指MFは、薬指RFおよび小指SFの動きにつられて把持補助部201を握ってしまう。ここで、急に中指MFを独立して動かすことは困難であるため、まず、親指THおよび人差し指IFで正しい持ち方を訓練する。この訓練の様子が図6(c)に示されている。
【0104】
図6(b)および(c)に示すように中指MFを独立して動かすことができないと、親指TH、人差し指IF、および中指MFのそれぞれを完全に独立して動かすことができないことになる。そのため、正しい持ち方にはならないが、第2持ち方補助具200によっておおむね正しい持ち方に近い状態の持ち方をすることができる。したがって、特に問題のあるところを集中的に訓練することで、正しい持ち方を効果的に習得することができる。図6(b)および(c)の場合は特に中指MFに集中して訓練することが考えられる。
【0105】
上記説明したように把持補助部201は第1持ち方補助具100よりも硬いものであり握りやすくなっている。また、ここで説明した把持補助部201は、把持物孔形成部102から延在したものであり、把持補助部201が握りやすい位置に設けられている。
【0106】
把持補助部201を薬指および小指で握ると、その握った指が安定するため、鉛筆Pを持つ際に薬指および小指の動きに他の指がつられないようにすることができる。換言すると、まだ指を独立して動かすことができない者であっても薬指および小指を安定した状態にすることで鉛筆Pを持つ3本の指に集中して訓練することができ、正しい持ち方を学習することができる。この第2持ち方補助具200は、指の分離性の発達が遅れている者や、脳性まひ、発達性強調運動障害、頚髄損傷等の原因により手指機能が劣っている者に対して特に効果的である。ただし、第2持ち方補助具200の対象者は障害者には限られない。この第2持ち方補助具を利用して分離性が得られた場合には上述の第1持ち方補助具で練習を行えばよい。将来的にこれらの補助具なしに鉛筆等を握ることができるように促すことができる。なお、第2持ち方補助具の把持補助部201は着脱可能なものであってもよい。また、第2持ち方補助具の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)等であってもよい。
【0107】
本実施形態の第2持ち方補助具200は、第1持ち方補助具100を利用しており、第1持ち方補助具100の場合と同様に、第1持ち方補助具100の外力が加わる部位である指孔形成部101,把持物孔形成部102,共有部104,および補強部105に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上15°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下の材料を用いることがより好ましい。
【0108】
また、本実施形態の第2持ち方補助具200の把持補助部201は、弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が15°より大きなものであることが好ましく、30°以上であることがより好ましい。また、ヒステリシスロス率は50%未満であり、かつ切断時伸び率は100%以上1200%以下であることが好ましい。
【0109】
3つ目に、本発明の第4自立支援補助具の実施形態である押しボタン補助具について説明する。
【0110】
図7は、押しボタン補助具が装着される押しボタン型スイッチ800を示す図である。
【0111】
図7(a)には、押しボタン型スイッチ800の外観が示されている。この押しボタン型スイッチ800は障害者が意思表示をするために用いられるものであり、このような押しボタンスイッチが施設、病院等で多く使用されている。
【0112】
図7(b)には、図7(a)に示す押しボタンスイッチの一部を簡略化した断面図が示されている。この図7(b)では、押しボタン型スイッチ800が、操作面801、スイッチ本体部802、およびストッパー803を備えている様子が示されている。この押しボタン型スイッチ800は、操作面801に所定の荷重がかかることによってスイッチ本体部802が押下され、信号を出力する。図7(c)には、中央に荷重(図に示す矢印参照)がかけられて沈み込んだ操作面801と、その操作面801によって押下されたスイッチ本体部802が示されている。また、図7(d)には、周辺部に荷重(図に示す矢印参照)がかけられて傾いた操作面801と、その操作面801によって押下されたスイッチ本体部802が示されている。この押しボタン型スイッチ800は、操作面801の周辺部にストッパー803を設けて周辺部の上下可動域を制限している。したがって、操作面801の周辺部に荷重がかけられた場合、荷重がかけられた部分とは反対側のストッパー803が支点となり、中央部にあるスイッチ本体部802を押下させることができる。
【0113】
この押しボタン型スイッチ800は、手で使用されるとは限らず、障害者によっては動かせる部位(例えば足、頭部など)で使用することがある。そのため、図7(c)および(d)に示すように、中央部だけでなく周辺部に荷重がかけられても操作できるように作られている。
【0114】
しかし、押しボタン型スイッチ800が机や床の上などにそのまま置かれているような場合、操作の仕方によっては押しボタン型スイッチ800が滑ってしまい、うまく操作できないことがある。したがって、扱いやすい場所に固定されることが望ましいが、固定する時間および労力が必要になる。さらに、障害の程度は多様であるため、ある者にとっては操作しやすい場所が、他の者にとっては操作が困難になる場所である可能性がある。また、上述したように、押しボタン型スイッチ800は操作面801の一部に荷重をかけるだけで反応するように作られているものの、押しボタンの設置方向によっては操作が困難となる場合がある。
【0115】
本実施形態の押しボタン補助具は、図7(a)に示す押しボタン型スイッチ800の操作性を簡単に向上させることを目的とするものである。
【0116】
図8(a)は、本発明の第4自立支援補助具の実施形態である押しボタン補助具300を示す図である。この押しボタン補助具300はシリコーンゴム製であって、押しボタン型スイッチ800の操作に必要な荷重よりも軽いものであり、支え部301、操作体302、および頭部303を備えている。支え部301は吸盤になっており、操作面801への着脱が容易になっている。この支え部301が本発明の固定部の一例に相当する。操作体302は、支え部301が操作面801に吸着したときに、押しボタン型スイッチ800の操作面801に対して垂直方向に延在する向きに形成されている延在部3021を有する。操作体302はシリコーンゴムの特性である弾性を有するものであるため、容易に撓ませることができる。頭部303は、操作体302の支え部301と接しない方の端に備えられている。この頭部303は円盤状の部材であり、操作面801と平行な状態で操作体302と接している。
【0117】
この頭部303の上面を押下すれば、操作面801を押下して押しボタン型スイッチ800を操作することができる。また、頭部303を左右に動かしても、操作面801を傾けて押しボタン型スイッチ800を操作することができる。
【0118】
図8(b)は、押しボタン補助具300を使用している様子を示す図である。この図では頭部303が図の右方向に動かされて、操作面801を傾かせる力が働いている様子が示されている(図に示す矢印参照。)。この押しボタン補助具300を使用すれば、押しボタン型スイッチ800を足や頭でも簡単に操作でき、固定していない場合でも容易に操作することができる。また、弾性材であるため、力の加減が困難な者が操作の際に勢い余って押しボタン補助具300にぶつかって怪我してしまうこと防止することができる。さらに、必要に応じての着脱が容易であるため、設置者・監督者の負担が軽減される。なお、押しボタン補助具300の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)等であってもよい。
【0119】
以下、図9、図10、および図11を用いて、押しボタン補助具300の使用態様を説明する。
【0120】
図9(a)は、押しボタン型スイッチ800の操作面801中央に押しボタン補助具300を装着した様子を示す図である。また、図9(b)は、押しボタン型スイッチ800の操作面801周辺部に押しボタン補助具300を装着した様子を示す図である。これらの図に示すように、押しボタン補助具300の装着位置は操作面801の中央に限られず、押しボタン型スイッチ800がオンしっぱなしにならなければ、周辺部であってもよい。
【0121】
図10(a)は、図9(a)に示す押しボタン補助具300が倒れる方向に力を加えてている様子を示す図である。また、図10(b)は、図9(a)に示す押しボタン補助具300を真上から押下している様子を示す図である。図8(b)で説明したように、これらの図10(a)および図10(b)に示されたどちらの操作方法でも押しボタン型スイッチ800を操作することができる。
【0122】
図11は、図9および図10に示した押しボタン型スイッチよりも小さい押しボタン型スイッチ800に、押しボタン補助具300を装着した様子を示す図である。この図11に示すように、押しボタン型スイッチ800の大きさは特に限定されるものではなく、押しボタン補助具300が装着できる大きさのものであればよい。
【0123】
図12は押しボタン補助具300を分解した様子を示す図である。この図に示すように押しボタン補助具300は上部300aと下部300bとに分解できるものであってもよい。このように構成すれば、図12に示す上部300aの他に、使用者が使用しやすい大きさのものや、子供が興味を持つような装飾がされたものなどを用意しておき、必要に応じて付け替えることができる。上部300aは、操作体302(延在部3021)の外周壁および頭部303を構成するものであり、下部300bは、操作体302(延在部3021)の軸心部分および支え部301を構成するものである。
【0124】
本実施形態の押しボタン補助具300では、外力が加わる部位である上記操作体302に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上70°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0125】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、操作を確実に押しボタン型スイッチ800に伝えることができる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、一般的に把持される対象物の大きさに対応でき、障害者が使用に際し過度な力で押しボタン補助具300に接触しても耐えることができ、また、使用者自身も怪我をしなくてすむ。
【0126】
より詳細に説明すれば、図12に示す下部300b(支え部301を含む部材)は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上40°以下(例えば30°)のものであることが好ましく、上部300a(頭部303を含む部材)は、硬度(JIS K6249に準拠)が50°以上70°以下(例えば60°)のものであることが好ましい。このように上部300aを下部300bよりも硬くしておくことで、頭部303を押す力を押しボタン型スイッチ800の操作面801に確実に伝えることができ、下部300bを上部300aよりも柔らかくしておくことで、吸盤である支え部301が操作面801の形状により追従しやすく、この押しボタン補助具300の、押しボタン型スイッチ800への装着が容易になる。
【0127】
以上説明した押しボタン補助具300は、脳性まひ、発達障害、その他運動や認知障害により図7に示す押しボタン型スイッチ800などを利用できない者に対して特に効果的である。ただし、この押しボタン補助具300の対象者も障害者には限られない。
【0128】
4つ目に、本発明の第5自立支援補助具の実施形態である座り方補助具について説明する。
【0129】
正しい姿勢を維持することは、集中力を維持したり両手を自由に使えたりすることに繋がるため、学習をする上で重要なことである。ここでいう正しい姿勢とは、両側の坐骨で体重を支えつつ、背筋を伸ばした状態のことである。
【0130】
学校で使用される椅子は、その多くが座面が木製のものである。このような椅子は座面が硬く臀部が痛くなる場合があり、正しい姿勢を長時間維持することができずに姿勢を悪化させる場合がある。この場合、座る位置を変えたりして対処するものの、座面が滑りやすいためにさらに姿勢が悪化する場合がある。例えば背もたれによりかかるような姿勢になると、臀部が前に滑って仙骨に近い位置で体重を支持する姿勢になってしまうことがある。このような姿勢の悪い状態で集中力を維持することは困難である。加えて、体重の支持に手を使ったりすると字が書きにくくなるため、より学習効率が低くなる可能性がある。さらに、このような姿勢が癖になると、座りやすい椅子を使うなどしても座る姿勢を改善することが困難になる。
【0131】
本実施形態の座り方補助具は、上記木製の椅子などに使用して、上記の正しい姿勢を長時間維持できるようにすることを目的とするものである。
【0132】
図13は本発明の第5自立支援補助具の実施形態である座り方補助シート400を示す図である。
【0133】
この図13(a)には、座り方補助シート400のおもて面401と裏面402が半分づつ示されている。図13(a)の上半分がおもて面401を示したものであり、図の下半分が裏面402を示したものである。図13(b)は、座り方補助シート400を示す断面図およびその断面図の一部分の拡大図である。
【0134】
この座り方補助シート400は、全体がシリコーンゴムで形成されたものであり、その厚さは5mmである。なお、この厚さは100mm以下のものであってもよく、10mm以下であることが好ましい。図13(a)には、おもて面401に溝403が複数形成された様子が示されており、図13(b)にはこれらの溝403の断面がV字状である様子が示されている。また、図13(a)には、裏面402に六角形の穴404が規則的に設けられている様子が示されており、図13(b)にはこれらの穴404がおもて面側(奥)にいくほど狭くなっている様子が示されている。すなわち、裏面402には、多角形の穴が複数設けられている。また、図13(c)には、V字状の溝403をさらに拡大した様子が示されている。この図13(c)に示すように、V字状の溝403を形成する傾斜壁4031は、隣り合う溝403を形成する傾斜壁4031と平坦面4032で結ばれている。すなわち、隣り合う溝403と溝403は平坦面4032で結ばれており、この平坦面4032によって、使用者の臀部が痛くならないようになっている。
【0135】
ここで図14を用いて、座り方補助シート400の使用態様について説明する。図14(a)は、子供が椅子Cに腰掛けている様子を示す図である。この椅子Cは座面が木製で表面が滑りやすく、背もたれによりかかると臀部が座面上を滑ってしまって正しい姿勢を維持することが困難なものである。上述の座り方補助シート400は、図14(b)に示すように、このような椅子Cの座面に敷いて使用するものである。
【0136】
この座り方補助シート400を硬く滑りやすい座面に敷くことで、臀部が滑りにくくなるため、臀部が滑って姿勢が崩れてしまうことを防止することができる。座り方補助シート400の厚さは5mmであるため、座面に敷いても座る高さが大きく変わることはない。したがって、使用者の座る高さに合わせて設計された椅子であっても、そのまま座面に敷いて使用できる。なお、座り方補助具400の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)等であってもよい。
【0137】
座り方補助シート400のおもて面401に形成された溝403は汗を発散させることができるため、臀部が蒸れて注意力が殺がれることを防ぐ。また、この溝403の縁に、使用者の臀部にまとった衣類がひっかかり、滑ってしまうことがより一層防止される。
【0138】
また、V字状の溝403の深さは1mm程度あり、この溝403はクッション性に寄与している。
【0139】
さらに、空気を通さない座面にこの座り方補助シート400を使用すると、使用者が座ることによって裏面の穴404の縁と椅子の座面とが密着する。このとき、各穴内に空気が保持され、保持された空気がクッションの役割を果たして座り心地が良くなる。この結果、痛みによって長時間正しい姿勢を維持できなくなることを防止できる。この座り方補助シート400は素材が弾性材料であるため、荷重の増加に伴って穴404がつぶれ、穴404を画定する内周壁が座面に接触するようになる。ここで、図13(b)の断面図(より詳細には丸で囲んだ拡大図を参照)に示すように、裏面402の穴404はおもて面側(奥側)にいくほど段階的に狭くなっており、穴404を画定する内周壁は階段状になっている。なお、穴404はおもて面側にいくほど漸次狭くなるものであってもよい。穴404は座り方補助シート400にかかる荷重が増加するにつれて座面方向に押し潰され、その結果、穴404を画定する内周壁と座面との接触面積が大きくなり荷重をしっかりと支え、体圧分散が効率的に行われる。この結果、荷重が増加した場合、穴404がおもて面側にいくほど狭くなっていない場合と比較して、快適な座り心地を提供することができる。さらに裏面402は正六角形の穴が規則的に並んだ所謂ハニカム構造になっているため、少ない素材で大きな荷重を支えることができるだけでなく、材料にかかるコストも低減することができる。また、このハニカム構造によって体圧分散がよりしっかりと行われる。この座り方補助シート400によって、学習時の集中力を長時間維持し、学習効率を高めることが期待できる。
【0140】
本実施形態の座り方補助具400では、外力が加わる部位である上記おもて面401および裏面402に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上15°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0141】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、椅子から滑り落ちにくくすることができる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、より大きな荷重に対してもクッション性を発揮して長時間の正しい姿勢の維持に寄与する。
【0142】
以上説明した座り方補助具400は、脳性まひ、学習障害、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動障害、その他座位姿勢が崩れやすい者に対して特に効果的である。ただし、この座り方補助具400の対象者も障害者には限られない。
【0143】
5つ目に、本発明の第6自立支援補助具の実施形態である作図補助具について説明する。
【0144】
定規を用いて線を引く場合、利き手で筆記具を持ち、利き手ではない方の手で定規を押さえる。このとき、例えば両手が交差した状態では線を描きにくくなるため、描きやすい向きで定規を配置するのが普通である。しかし、知的障害などにより、描きやすさではなく、描かれる図形に合わせて定規を配置する者がいる。例えば四角形を描く場合に、その四つの辺に対して四角形の外周側に定規を配置してしまう者の場合、四角形の上辺を描くときには定規を上下逆さまに配置したり、左右の辺を描くときに両腕が不自然な姿勢になったりして、うまく四角形を描くことができない。
【0145】
本実施形態の作図補助具は、定規等を使いやすい向きで使用できるようになることを目的とするものである。
【0146】
図15(a)は、本実施形態の作図補助具500を示す図である。この図15(a)に示す作図補助具500は、筆記具があてがわれる縁510に目盛501が設けられた長方形の定規である。この作図補助具500は、プラスチック製の定規部51とシリコーンゴム製の装着部52を有する。定規部51には白色の目盛501が設けられ、背景を黒色にすることで目盛501が見やすくなっている。また、装着部52のおもて側の中央部には凹み部502が設けられている。凹み部502には、目盛501側の縁510を向いた人差し指、中指、および薬指の3本の指先それぞれの腹を象った凹みが設けられており、以下、人指し指の指先を象った凹みを人差し指凹み511と称し、中指の指先を象った凹みを中指凹み512と称し、薬指の指先を象った凹みを薬指凹み513と称する。これら3つの指凹み511〜513はいずれも、目盛501側の縁510側が先細になったものである。この作図補助具500によれば、目盛501側の縁510に指先を向けて凹み部502に人差し指、中指、および薬指それぞれを合わせ、定規部51を押さえることが容易にできるようになっている。なお、凹み部502を一段高く設けた突部にすると、凹み部502をより目立たせることができる。また、この突部は持ち手としても利用することができる。
【0147】
これら3つの指凹み511〜513のうち、人差し指凹み511と薬指凹み513は、指の腹の大きさとほぼ同じ大きさの凹みである。このため、人差し指の腹と薬指の腹を人差し指凹み511と薬指凹み513に合わせて収めることができる。また、中指凹み512は指の腹の大きさよりもある程度大きい凹みである。ある程度大きめにすることで、人差し指および薬指と、中指との長さの違いに影響されずに、中指を中指凹み512にあてがうことができる。このように人差し指、中指、および薬指を3つの指凹み511〜513にあてがって、作図補助具500を押さえる。
【0148】
なお、上記3つの指凹み511〜513は、窪んでいる深さをあてがわれる指に合わせて異ならせてもよい。
【0149】
凹み部502を利用して作図補助具500を押さえると、押さえている指に対する作図補助具500の向きが制限される。したがって、凹み部502を設けておくことによって線を描きやすい向きで作図補助具500を押さえることが期待できる。また、人差し指の腹と薬指の腹は、それぞれ人差し指凹み511と薬指凹み513にほぼぴったり収まる。このため、作図補助具500の向きを変える力を伝えやすく、指を凹み部502にあてがったままでも作図補助具500の向きを容易に変えることができる。
【0150】
図15(b)は、図15(a)のB−B’における断面図である。装着部52は、断面コ字状のものであり、定規部51を挟み込むようにして定規部51に着脱自在に装着される。なお、定規部51に装着部52を接着して着脱不能にしてもよい。この装着部52は、作図中に載置面と接して摩擦力を生じる接触面504を裏面側に有し、この接触面504によって描線中に作図補助具500がずれないようになっている。接触面504は、本発明にいう滑り止め部の一例に相当する。
【0151】
また、この装着部52の接触面504は、目盛501側の縁510に向かって漸次上方に傾斜している。このため、この作図補助具500を平らな面に載置すると、図15(c)に示す姿勢になり、目盛501側の縁510、すなわち線を引くところにより荷重がかかり、作図補助具500がよりずれにくくなる。
【0152】
さらに、この装着部52は、目盛501側の縁510とは反対側の縁部において、裏面からおもて面に向かって徐々に裏面から離れるように傾斜している(図15(b)では右肩上がりの傾斜)傾斜面505も有する。この傾斜面505は描線中に載置面とは接触しない非接触部分である。ここで、上記接触面504と傾斜面505の境界を持ち上げ支点506と称する。
【0153】
上記傾斜面505をおもて面側から裏面側に押し下げれば、上記持ち上げ支点506を支点にして上記目盛501が設けられた縁510が持ち上がり、作図補助具500を簡単に手に取ることができる。なお、装着部52の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)であってもよい。また、作図補助具500は長方形の定規であるが、例えば三角定規のように他の定規であってもよい。また、縁510は直線に限られず、曲線であってもよい。
【0154】
ここで図16を用いて、作図補助具500の使用態様について説明する。図16(a)は作図補助具500を手で押さえた様子を示す図である。この図16(a)では、上記説明したように使用者が凹み部502に指を合わせている様子が示されており、この凹み部502を利用することで作図補助具を軽い力で押さえた状態にすることができる。また、凹み部502によって手の向きが決まり、作図補助具500が手で押さえやすい位置におかれるようになることが期待できる。すなわち、この凹み部502で押さえるように障害者等に教えることで、線を引きにくい不自然な位置に作図補助具500を配置しないようにすることが期待できる。図16(b)は作図補助具500を使用して線を引いている様子を示す図である。この図に示すように、作図補助具500が手で押さえやすい位置にあるため、線を無理なく引くことができる。
【0155】
本実施形態の作図補助具500では、外力が加わる部位である上記装着部52に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が5°以上40°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0156】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、作図補助具500をより滑りにくくすることができる。また、凹み部502も滑りにくいため、定規部51をしっかりと押さえることができる。
【0157】
以上説明した作図補助具500は、脳性まひ、学習障害、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動障害、広汎性発達障害、その他上肢機能障害者や、脳卒中後片麻痺、失調症を患っている者、弱視の者等に対して特に効果的である。ただし、この作図補助具500の対象者も障害者には限られない。
【0158】
最後に、本発明の第7自立支援補助具の実施形態である筆記補助マットについて説明する。
【0159】
机の上に置いた用紙に文字等を書くときや、鉛筆で書いた文字等を消しゴムで消すときに、用紙が机上を滑ってしまってうまく書いたり消したりできない場合がある。このような場合、用紙を手で押さえて滑らないようにすればよいのだが、障害等によって用紙を押さえようとしてもうまく押さえられない者がおり、彼等にとっては用紙を滑らないようにすることが困難であるという問題がある。また、コンパスを使用して円を描くときに、机の硬さによってはコンパスの針が刺さりにくい場合がある。この場合、上記の障害者にとってはさらに困難であるのはもちろんのこと、健常者であってもコンパスをあまり使用したことのない者にとっては、円を描くことが困難であるという問題もある。
【0160】
これらの問題に対して、従来よりある文鎮や学習マットを使用することが考えられる。しかし、これらの道具は、例えば、用紙をある程度使用者が押さえることができる、といったことを前提としたものである。したがってこれらの道具を使用しても、用紙を押さえることが難しい障害者等にとっては、十分に用紙を固定することが困難である。
【0161】
本実施形態の筆記補助マットは、用紙を手で押さえなくても滑らないようにして、他者の補助なく筆記ができるようにすることを目的とするものである。
【0162】
図17は、本実施形態の筆記補助マット600を示す図である。この筆記補助マット600には、A4用紙(JIS P−0138)の大きさの長方形の枠601と、15cmまで1mmごとに設けられた目盛602とが記されている。ここでは枠601も目盛602も、印刷によって記されたものであるが、彫り込んだものであってもよい。長方形の枠601はA4用紙を配置するためのガイドである。この枠601があることによって、弱視の者であっても授業で配布される資料等を置く位置が明確になる。この筆記補助マット600の素材はシリコーンゴムであり、高い滑り止め効果がある。これにより、筆記具や消しゴムの使用時に用紙が滑りにくくなり、用紙を押さえずに消しゴムを使用しても用紙が滑らないようになっている。図18(a)には、筆記補助マット600を使用して学習している様子が示されている。また、図18(b)には、筆記補助マット600と消しゴムを使用している様子が示されている。
【0163】
この筆記補助マット600は、厚さは1.8mm程度のものであり、コンパスの針を容易に刺すことができる。このため、用紙を貫通したコンパスの針がずれることなく円を描くことができる。図18(c)には、筆記補助マット600とコンパスを使用して円を描く様子が示されている。さらに、筆記補助マット600に設けられた目盛602を使用すれば、筆記補助マット600に用紙を配置する前にコンパスの針を筆記補助マット600に刺して固定した状態で、描きたい円の半径になるようにコンパスの開き具合を調整することができる。また、厚さが薄いため、丸めて持ち運ぶことも容易である。なお、本実施形態の筆記補助マットは厚さは、0.1mm以上30mm以下であってもよく、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0164】
図17には、筆記補助マット600の一面が示されているが、おもて面、裏面ともに同じデザインである。このため、使用時にいずれの面に用紙を配置するのかを気にしなくてもよい。なお、同じデザインでなくてもよく、おもて面と裏面とで用紙配置用の枠の大きさを異なせてもよい。例えば、おもて面にはA4サイズの枠、裏面にはB5サイズの枠を設けてもよい。また、裏面のB5サイズの枠の外に上記目盛を設け、筆記補助マット600にB5サイズの用紙を配置しても、目盛を使用することができるようにしてもよい。ただし、弱視の者にとってはガイドの大きさが重要であるため、弱視であってもおもて面と裏面とを区別できるように、例えば両方の面で配色を異ならせることが好ましい。この筆記補助マット600によれば、学習等における筆記の際の制限を軽減することで、学習に集中でき、学習効果が向上することが期待できる。
【0165】
本実施形態の作図補助シート600では、外力が加わる部位である上記装着部52に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が25°以上75°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0166】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、筆記補助マット600をより滑りにくくすることができる。
【0167】
以上説明した筆記補助マット600は、脳性まひ、学習障害、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動障害、広汎性発達障害、その他上肢機能障害者や、脳卒中後片麻痺、失調症を患っている者等に対して特に効果的である。ただし、この作図補助具500の対象者も障害者には限られない。
【0168】
これまで説明した実施形態は全て本発明の第1自立支援補助具の実施形態でもある。これらの実施形態の第1自立支援補助具によれば、広汎性発達障害等の障害を負った者等が様々な場面で受ける制限を軽減し、保護をうけなくても自立できる機会を得ることが期待できる。また、健常者にも適用することができる。
【0169】
以上説明した、各種の自立支援補助具に用いることができるシリコーンゴムの詳しい物性値を、最後に表1を用いて説明する。
【0170】
【表1】
各試験はJIS規格に準拠して行った。かっこ内の数値は好ましい値を示す。
【0171】
なお、これまで説明した各種の自立支援補助具(第1持ち方補助具100,第2持ち方補助具200,押しボタン補助具300,座り方補助シート400,作図補助具500,
筆記補助マット600)は、物性値を含む材料特性に特徴があったが、形状および構造にも大きな特徴があり、その材料特性を切り離して形状および構造のみによっても発明は成立する。
【符号の説明】
【0172】
100 第1持ち方補助具
101 指孔形成部
102 把持物孔形成部
103 縁
104 共有部
105 補強部
200 第2持ち方補助具
201 把持補助部
300 押しボタン補助具
301 支え部
302 操作体
3021 延在部
303 頭部
400 座り方補助シート
401 おもて面
402 裏面
403 溝
404 穴
500 作図補助具
51 定規部
501 目盛
52 装着部
502 凹み部
511 人差し指凹み
512 中指凹み
513 薬指凹み
504 接触面
505 傾斜面
506 支点
510 縁
600 筆記補助マット
601 枠
602 目盛
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害者等の自立を支援するための道具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、障害者自立支援法が制定される等して、身体障害、知的障害又は精神障害(以下、「障害」と総称する場合がある)がある者(以下、「障害者」と称する場合がある)の日常生活で受ける制限を軽減させ、障害者等を自立に導くということが注目され、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜3および非特許文献1等参照)。しかし、障害の程度は千差万別であり、画一的に効果的な手法を提案することは困難である。
【0003】
また、障害者と認定されていない者であっても日常生活で制限を受ける者がいる。例えば、幼少期の成長が遅く筆記具などの道具がうまく使えないにもかかわらず、強引にそれらの道具を使用したためにおかしな癖がついてしまうことがある。道具をうまく使うためには一度この癖を矯正しなくてはならないが、その労を惜しんでそのまま矯正せずに道具類をうまく使えないままの者がいる。他にも、年齢による筋肉の衰えによって上記道具類をうまく使えなくなる者もいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−22242号公報
【特許文献2】特開2003−169730号公報
【特許文献3】実開平6−12091号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“録音・再生&1スイッチタイプ ビッグマック・リトルマック”、[online]、パシフィックサプライ株式会社、[平成22年1月7日検索]、インターネット< URL :http://www.p-supply.co.jp/comaid/voca/mac/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、学校の教育現場等における自立支援活動を円滑に行うことができるようにし、障害者等の自立の機会を増やすことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1自立支援補助具は、
外力が加わる部位に、ヒステリシスロス率が50%未満であって、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下である弾性材料を用いたことを特徴とする。
【0008】
ヒステリシスロス率が50%未満だと、変形しても確実に元の形状に戻ろうとする力が生じ、この力によって摩擦力が生じる。したがってこの第1自立支援補助具によれば、道具をつかむ部分や、土台の部分などの外力が加わる部分に上記弾性材料を用いることで、道具にかかる力を効率的に利用することができる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、様々な変形に対応することができ、例えば障害者が使用に際し過度な引っ張りをした場合であっても耐えることができる。
【0009】
ここで、上記第1自立支援補助具は、
指孔と把持物孔とが形成され、その指孔を拡げて親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、その把持物孔を拡げて把持対象物を通して、その把持対象物の把持を補助するものであって、
上記指孔が形成された指孔形成部と、
上記把持物孔が形成された把持物孔形成部と、
上記指孔形成部と上記把持物孔形成部とを繋ぐ連結部とを備える第2自立支援補助具であってもよい。
【0010】
この第2自立支援補助具において、上記指孔形成部、上記把持物孔形成部、および上記連結部は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0011】
ここで、上記指孔形成部、上記把持物孔形成部、および上記連結部は、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が0°以上15°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0012】
この第2自立支援補助具によれば、筆記具等を力まずに把持する持ち方を学習することができる。この持ち方をすることで、文字を書くとすぐに疲れてしまい集中力が低下することを防止でき、学習を効果的に行うことができる。また、上記第2自立支援補助具は弾性材料からなるものであるため、様々な形状の筆記具等を把持することができる。
【0013】
また、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔形成部が、環状であり、
上記把持物孔形成部も、環状であり、
上記連結部が、上記指孔形成部の一部であり、かつ上記把持物孔形成部の一部である共有部であり、
上記指孔形成部の外周と上記把持物孔形成部の外周との間にくびれが形成されたものであることが好ましい。
【0014】
この第2自立支援補助具によれば、指孔形成部および把持物孔形成部が環状になっているため、指や筆記具等を容易に装着することができる。また、くびれが形成されているため、手のサイズに合わせて筆記具等を把持する角度を容易に変えることができる。
【0015】
さらに、上記第2自立支援補助具は、
上記連結部が、上記共有部を補強する補強部を備えたものであることが好ましい。
【0016】
この第2自立支援補助具によれば、ねじれが生じる部位を補強してより多くの使用に耐えることができる。
【0017】
さらにまた、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔形成部が、外縁が面取りされたものであり
上記把持物孔形成部も、外縁が面取りされたものであることが好ましい。
【0018】
この第2自立支援補助具によれば、面取りして切れやすい角をなくしたことにより、より多くの使用に耐えることができる。
【0019】
加えて、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔形成部が、上記把持物孔形成部によって形成された把持物孔よりも大きい孔が上記指孔として形成されたものであることが好ましい。
【0020】
この第2自立支援補助具によれば、様々な太さの筆記具等に対応することができる。
【0021】
さらに加えて、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔の中心と上記把持物孔の中心との距離が、その指孔の半径に対して2倍以上4倍以下であってもよく、2倍以上3倍以下が好ましく、2倍以上2.5倍以下がより好ましい。
【0022】
この第2自立支援補助具によれば、手のサイズにあった位置で筆記具等を把持することができる。
【0023】
また、上記第2自立支援補助具は、
上記指孔に親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、上記把持物孔に把持対象物を通して、その対象物を把持した状態で、少なくとも薬指または小指のいずれか一方の指で握ることができる把持補助部を備えた第3自立支援補助具であってもよい。
【0024】
ここで上記把持補助部は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が15°より大きいことが好ましく、30°以上であることがさらに好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0025】
この第3自立支援補助具によれば、薬指や小指で把持補助部を握ってこれらの指を安定した状態にすることにより、筆記具等を安定して把持することができる。
【0026】
さらに、上記第3自立支援補助具は、
上記把持補助部が、棒状であることが好ましい。
【0027】
この第3自立支援補助具によれば、コストを低く抑えることができ、かつ、把持補助部を握りやすくすることができる。
【0028】
さらにまた、上記第3自立支援補助具は、
上記把持補助部が、上記把持物孔形成部から延在したものであることが好ましい。
【0029】
この第3自立支援補助具によれば、把持補助部をより握りやすい位置に設けることができる。
【0030】
加えて、上記第3自立支援補助具は、
上記把持補助部が、上記把持物孔形成部よりも硬いものであることが好ましい。
【0031】
この第3自立支援補助具によれば、上記把持補助部をより力を入れて握ることができるため、筆記具等をより安定して把持することができる。
【0032】
また、上記第1自立支援補助具は、
操作面が所定の荷重を受けて沈み込むあるいは傾くことによってオンするスイッチに装着され、その操作面にその所定の荷重をかける操作を補助する、その荷重未満のものであって、
上記操作面に対して垂直方向に延在する延在部を有する操作体と、
上記操作体の一端を上記操作面に着脱自在に固定する固定部とを有する第4自立支援補助具であってもよい。
【0033】
この第4自立支援補助具において、上記延在部は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0034】
ここで上記固定部は、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が0°以上40°以下のものであることが好ましく、上記操作体は、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が50°以上70°以下のものであることが好ましい。すなわち、上記操作体は、上記固定部より硬度が高いものであることが好ましい。操作体は、加えられた操作力を上記操作面に確実に伝えるためにある程度の硬さが必要であるのに対し、固定部は、上記操作面の形状に追従しやすくするためある程度の柔らかさが必要である。また、第4自立支援補助具の弾性は、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0035】
この第4自立支援補助具を、市販の押しボタン式の入力装置に装着することによって、この入力装置を様々な方向からの力で操作することができる。また、着脱が容易であるため、同様の入力装置に使いまわすことができる。さらに、消極的な子供などに対しては、興味のあるキャラクタを象ることで操作してもらうように働きかけることができる。さらに、弾性を有するものであるため、操作の際に怪我をしにくい。
【0036】
さらに、上記第4自立支援補助具は、
上記操作体の、上記一端に対する他端側に、上記垂直方向に交わる方向に拡がる頭部を有するものであることが好ましい。
【0037】
この第4自立支援補助具によれば、重心が頭部側に偏るため、軽い力で操作することができる。さらに頭部の太さが操作部の太さよりも太くなるため、操作しやすい。
【0038】
ここで上記頭部は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が50°以上70°以下であることが好ましい。
【0039】
また、上記第1自立支援補助具は、
椅子の着座面に敷かれ、その着座面に腰掛けた姿勢を維持できるように補助するものであって、
複数の溝が形成されたおもて面と、
複数の穴が設けられた裏面とを有する第5自立支援補助具であってもよい。
【0040】
この第5自立支援補助具において、上記おもて面および上記裏面は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0041】
ここで上記おもて面および裏面は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が0°以上15°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0042】
この第5自立支援補助具によれば、座った時におもて面の溝を空気が通るため蒸れない。また、この溝の縁に、使用者の臀部にまとった衣類がひっかかり、滑ってしまうことが防止される。さらに、裏面に設けられた穴と椅子の座面との間に空気の部屋ができるため、柔軟性を有し快適な座り心地を提供することができる。なお、上記溝は平行に形成されたものであってもよく、上記穴は規則的に配置されたものであってもよい。
【0043】
さらに、上記第5自立支援補助具は、
厚さが100mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0044】
この第5自立支援補助具によれば、椅子に敷いても座面の高さ位置があまり変化しないため、椅子の高さを座る人に合わせて再調整する必要がない。
【0045】
さらにまた、上記第5自立支援補助具は、
上記おもて面が、断面V字状の溝が平行に複数形成された面であることが好ましい。
【0046】
この第5自立支援補助具によれば、コストを低く抑えることができる。
【0047】
加えて、上記第5自立支援補助具は、
上記裏面が、多角形の穴が隙間なく形成された面であることが好ましい。
【0048】
この第5自立支援補助具によれば、材料を少なくしてコストダウンすることができるとともに、柔軟性を得ることができる。
【0049】
さらに加えて、上記第5自立支援補助具は、
上記裏面が、上記おもて面側へ向かうほど狭くなる穴が複数形成された面であることが好ましい。
【0050】
この第5自立支援補助具によれば、荷重が大きくなるにしたがって荷重を支える弾性材の面積が増えるため、荷重に応じた柔軟性を得ることができる。
【0051】
また、上記第1自立支援補助具は、
筆記具を用いて線を引くことを補助するものであって、
筆記具があてがわれる縁と、
裏面に設けられた滑り止め部と、
おもて面に設けられ、上記縁側を向いた指先の腹を象った凹み部とを有し、
上記凹み部は、開口の大きさが異なる2種類以上の凹みを有するものである第6自立支援補助具であってもよい。
【0052】
この第6自立支援補助具において、上記滑り止め部は、外力が加わる部位であって所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0053】
上記凹み部は、複数の凹み部を有するものであり、上記縁側が先細になった凹みを有するものであってもよい。この先細の凹みが複数あることによって、上記第6自立支援補助具に対して自然な向きで指をあてがうことができる。また、凹んでいる深さが異なる2種類以上の凹みを有するものであってもよい。
【0054】
ここで上記滑り止め部は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が5°以上40°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0055】
この第6自立支援補助具によれば、滑り止めを設けているため補助具自体がずれにくく、線を引きやすくすることができる。さらに、凹み部を使用すれば押さえることが容易になるだけでなく、自然な向きに上記縁を向けて線を引くことができる。
【0056】
さらに、上記第6自立支援補助具は、
上記縁が、黒色の背景に白色の目盛が設けられたものであることが好ましい。
【0057】
この第6自立支援補助具によれば、目盛が見やすくなり引きたい長さの線をより正確に引くことができる。また、正確な長さの測定にも使用することができる。
【0058】
さらにまた、上記第6自立支援補助具は、
上記裏面に設けられた支点部分と、
この自立支援補助具を載置する載置面とは非接触な部分であって、押さえることで上記支点部分を支点にして上記縁が持ち上がる非接触部分を有することが好ましい。
【0059】
この第6自立支援補助具によれば、上記非接触部分を押さえることで持ち上がる上記縁をつかむことができ、載置面から第6自立支援補助具を取ることが容易になる。
【0060】
加えて、上記第6自立支援補助具は、
上記支点部分が、上記滑り止め部に設けられたものであることが好ましい。
【0061】
この第6自立支援補助具によれば、上記非接触部分を押さえて持ち上げても滑らずに持ち上げることができる。
【0062】
また、上記第1自立支援補助具は、
載置面に用紙を置いてその用紙に筆記する際に、その載置面とその用紙の間に敷かれる第7自立支援補助具であってもよい。
【0063】
この第7自立支援補助具は、所定の弾性を有する弾性材料からなるものであってもよい。
【0064】
ここで、この第7自立支援補助具は、その弾性が、例えば、硬度(JIS K6253およびK6249に準拠)が25°以上75°以下であることが好ましく、上記弾性材料の性質を有する弾性であることがより好ましい。
【0065】
また、上記第7自立支援補助具は、
厚さが、0.1mm以上30mm以下であることが好ましく、0.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0066】
さらに、上記第7自立支援補助具は、
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、所定の用紙の大きさについての規格に応じた大きさの枠が設けられていることが好ましい。
【0067】
また、上記第7自立支援補助具は、
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、目盛りが設けられていることも好ましい。
【0068】
なお、上記枠よりも内側に目盛りが設けられていてもよいし、外側に目盛りが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明の自立支援補助具によれば、障害者の生活を補助する者の負担が軽減され、彼ら自身の自立を補助することができる道具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】鉛筆の持ち方を示す図である。
【図2】本発明の自立支援補助具の第1実施形態である第1持ち方補助具を示す図である。
【図3】(a)は、左利きの者が図2に示す第1持ち方補助具を装着した様子を示す図であり、(b)は、第1持ち方補助具を用いて鉛筆を把持している様子を示す図であり、(c)は、3点支持の持ち方を訓練している様子を示す図である。
【図4】第2持ち方補助具を示す図である。
【図5】第2持ち方補助具を装着している様子を示す図である。
【図6】(a)は、把持補助部を手の大きさに合わせて調整した第2持ち方補助具を装着し、鉛筆を把持物孔に通した様子を示す図であり、(b)は、(a)の状態から鉛筆を把持した様子を示す図であり、(c)は、持ち方を訓練している様子を示す図である。
【図7】押しボタン補助具が装着される押しボタンスイッチを示す図である。
【図8】(a)は、押しボタン補助具を示す図であり、(b)は、押しボタン補助具を使用している様子を示す図である。
【図9】(a)は、押しボタン型スイッチの操作面中央に押しボタン補助具を装着した様子を示す図であり、(b)は、押しボタン型スイッチの操作面周辺部に押しボタン補助具を装着した様子を示す図である。
【図10】(a)は、図9(a)に示す押しボタン補助具が倒れる方向に力を加えてている様子を示す図であり、(b)は、図9(a)に示す押しボタン補助具を真上から押下している様子を示す図である。
【図11】図9および図10に示した押しボタン型スイッチよりも小さい押しボタン型スイッチに、押しボタン補助具を装着した様子を示す図である。
【図12】押しボタン補助具を分解した様子を示す図である。
【図13】座り方補助シートを示す図である。
【図14】子供が椅子に腰掛けている様子を示す図である。
【図15】(a)は本実施形態の作図補助具を示す図であり、(b)は(a)のB−B’における断面図であり、(c)は作図補助具を平面に載置した様子を示す図である。
【図16】(a)は作図補助具を手で押さえた様子を示す図であり、(b)は作図補助具を使用して線を引いている様子を示す図である。
【図17】本実施形態の筆記補助マットを示す図である。
【図18】(a)は、筆記補助マットを使用して学習している様子を示す図であり、(b)は、筆記補助マットと消しゴムを使用している様子を示す図であり、(c)は、筆記補助マットとコンパスを使用して円を描く様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、図面を参照して本発明の自立支援補助具の実施の形態を説明する。
【0072】
最初に、本発明の第2自立支援補助具の実施形態である第1持ち方補助具について説明する。
【0073】
筆記具のような道具を上手に持つには、各指の力加減をコントロールできることが重要である。この各指の力加減をコントロールできることを分離性あるいは独立性と称することがあり、以下では分離性と称して説明を続ける。この分離性が不十分だと、例えば親指、人差し指、および中指で筆記具を持つときに、これら3本の指につられて薬指と小指にも力が入ってしまい、筆記具をうまく持つことができない場合がある。以下、鉛筆を持つ場合を例に説明する。
【0074】
図1は、鉛筆の持ち方を示す図である。
【0075】
図1(a)および(b)に示されている持ち方は、上記の分離性が不十分な者による持ち方の一例である。図1(a)では鉛筆Pを持つ指先に必要以上に力がかかっている。また、図1(b)では、鉛筆Pを掌で握り込んでいる。上述したように分離性が不十分だと、ある指を動かす際に他の指がつられて動いしまうため、図1(a)および(b)に示すような鉛筆Pを固定する持ち方になりがちである。このような持ち方では、鉛筆Pが固定されているため、鉛筆Pを滑らかに動かすことが困難である。したがって、字をうまく書くことができない、字を書くのに時間がかかる、文字を書いていてもすぐに疲れてしまい授業に集中できない、等の問題がある。また、後に分離性を獲得した者であっても、既に上記のような持ち方が癖になってしまい矯正が容易ではないという問題もある。
【0076】
図1(c)には、第1持ち方補助具を使用することにより習得が期待される持ち方(以下、正しい持ち方と称する。)が示されている。この図において、鉛筆Pは、親指THの付け根と人差し指IFの付け根との間に跨る部分FW(図に示す点線で囲まれた部分、以下、ファーストウェブと称する。)、親指TH、および中指MFの3点で支持されている。なお、このとき人差し指IFは鉛筆Pに軽く添えられている。この図1(c)に示されている正しい持ち方の場合、上記3点で鉛筆Pを安定して支えることができるため、図1(a)および(b)の持ち方をした場合の力と比較して軽い力で鉛筆Pを把持した状態で字を書くことができる。本実施形態の第1持ち方補助具は図1(c)に示す正しい持ち方を習得することを目的とするものである。
【0077】
図2は、本発明の第2自立支援補助具の実施形態である第1持ち方補助具100を示す図である。
【0078】
図2(a)には、本実施形態の第1持ち方補助具100が三面図で示されており、図2(b)には、この第1持ち方補助具100が斜視図で示されている。この図2(a)および(b)に示す第1持ち方補助具100はシリコーンゴムで形成されたものであり、2つの孔H1,H2が形成されている。これらの孔のうち大きい方の孔H1は指を通すための指孔H1であり、小さい方の孔H2は対象物を保持するための把持物孔H2である。以降、この指孔H1を形成する部分を指孔形成部101と称し、把持物孔H2を形成する部分を把持物孔形成部102と称する。
【0079】
上記第1持ち方補助具の指孔H1は半径が7.5mmであり、成人の親指の平均的な太さよりも細い。この指孔H1を拡げて親指THを通すとシリコーンゴムの復元力によって指に密着し、指孔形成部101と親指THとの間に摩擦力が生ずる。この摩擦力によって第1持ち方補助具100が親指THから外れにくい状態になる。なお、指孔H1の半径に特に制限はなく、指孔形成部101が使用する者の指に密着するような大きさであればよく、子供用のものであれば、指孔H1の半径は7.5mmよりも小さくなる。
【0080】
上記把持物孔H2は半径が4.0mmであり、一般的な筆記具の太さよりも細い。この把持物孔H2を拡げて鉛筆Pを通すと、上記指孔H1に親指THを通した場合と同様に、把持物孔形成部102が鉛筆Pに密着して摩擦力が生ずる。この摩擦力によって、鉛筆Pが第1持ち方補助具100から外れにくい状態になる。なお、把持物孔H2の半径には特に制限はなく、把持物孔形成部102が把持対象物に密着するような大きさであればよい。ここで、把持対象物は鉛筆Pに限らず、例えば、鉛筆Pよりも径の大きい油性ペンや、スプーンおよびフォークといった食器類等がある。
【0081】
すなわち、指孔H1に親指を通し、把持物孔H2に鉛筆Pを通して、この鉛筆Pを親指に留めることができ、上記3点支持による持ち方の訓練を容易に行うことができる。ここで、指孔H1の中心と把持物孔H2の中心を結ぶ直線距離は、指孔H1の半径に対して2倍以上4倍以下であり、2倍以上3倍以下が好ましく、2倍以上2.5倍以下であることがより好ましい。このような数値範囲をとることによって第1持ち方補助具を指のサイズに合わせたものとすることができる。また、ここで上限値を規定しているのは、上記直線距離が長くなればなるほど、鉛筆Pが、ファーストウェブFWにのらなくなり、人差し指IF側に倒れ込んでしまい、正しい持ち方を習得することができなくなってしまうからである。
【0082】
また、この第1持ち方補助具100の内周縁1031や外周縁1032はR状に面取りされている。面取りがされていない場合、面取りした場合に比べて縁(1031,1032)には亀裂が生じやすくなり、亀裂が生じたまま指孔形成部101や把持物孔形成部102を伸ばすと第1持ち方補助具100が切れてしまうという問題がある。この問題を解決するため、この第1持ち方補助具100では、内周縁1031と外周縁1032をR状に面取りし、切れにくくしている。
【0083】
図2(c)は、第1持ち方補助具100の各部を示す、図2(a)のA−A’における断面図である。
【0084】
この図2(c)には、指孔形成部101と把持物孔形成部102とが一部を共有している様子が示されている。指孔形成部101と把持物孔形成部102はそれぞれ環状であり、図中のクロスハッチングで示された共有部104は指孔形成部101と把持物孔形成部102とを繋いでいる。さらに、この共有部104がねじれて切れてしまうことを防止するための補強部105が左下がりのハッチングで示されている。この共有部104と補強部105が、本発明の第2自立支援補助具における連結部分の一例に相当する。
【0085】
この第1持ち方補助具100には、指孔形成部101と把持物孔形成部102のそれぞれの外周が繋がる部分にくびれNが形成されており、指孔形成部101と把持物孔形成部102とをひねることによって親指THに対する鉛筆Pの角度を容易に変えることができる。このため、筆記具等を使用するために親指THが動いても鉛筆PをファーストウェブFWに乗せておくことができる。
【0086】
以下図3を用いて、図2に示す持ち方補助具100の使用方法について説明する。
【0087】
図3(a)は、左利きの者が図2に示す第1持ち方補助具100を装着した様子を示す図である。この図3(a)では、第1持ち方補助具100の指孔H1に使用者の親指を通している様子が示されている。このとき、把持物孔H2が親指THと人差し指IFとの間にくるように第1持ち方補助具100を装着する。この把持物孔H2に筆記具等を通すことで、筆記具等がファーストウェブFWに乗った状態になる(同図(c)参照)。後は、指先で筆記具等を把持をするだけで、親指TH、中指MF、およびファーストウェブFWによる3点により容易に筆記具等を支持することができる。
【0088】
図3(b)では、図2に示す第1持ち方補助具100を用いて鉛筆Pを把持している。この第1持ち方補助具100によって鉛筆Pは親指THに留められているため、鉛筆Pを上記3点支持(ファーストウェブFW、親指TH、および中指MFによる支持)で持つ場合に鉛筆Pを落とさないように補助することができる。このため、各指を独立して動かすことができない者であっても、第1持ち方補助具100を使用して上記3点支持の持ち方を訓練することができる。
【0089】
図3(c)は、上記3点支持の持ち方を訓練している様子を示す図であり、この図では、図2に示す第1持ち方補助具100を使用して正しい持ち方で鉛筆Pを把持するとともに、その鉛筆Pを使用している様子が示されている。なお、この図3(c)の第1持ち方補助具100の使用者は図3(a)および(b)の使用者とは異なり、右利きの者である。このように、第1持ち方補助具100は利き手の如何にかかわらず、正しい持ち方を訓練することができる。
【0090】
なお、本実施形態では鉛筆Pを把持する場合について説明したが、把持対象物は鉛筆Pに限られない。例えば、鉛筆Pよりも径の大きい油性ペンや、スプーンおよびフォークといった食器類であってもよい。また、本実施形態では図1(c)の持ち方を目標として説明したが、上記指孔H1に人差し指IFを通して上記ファーストウェブFWの、より人差し指IF側で支える持ち方を学習することも可能である。また、素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム等)であってもよい。
【0091】
上記持ち方補助具100は使用者の手の大きさに合わせることが好ましい。手が大きくなると、それに合わせて指の太さが太くなる。さらに、筆記具等を把持する場合、親指THとその筆記具との距離も大きくなる。したがって、上記指孔H1の中心と上記把持物孔H2の中心との距離が、その指孔H1の半径に対して2倍以上2.5倍以下であることが好ましい。この比率の持ち方補助具100であれば、手のサイズにあった位置で筆記具等を把持することができる。
【0092】
本実施形態の第1持ち方補助具100では、外力が加わる部位である指孔形成部101,把持物孔形成部102,共有部104,および補強部105に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上15°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0093】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、一般的に把持される対象物の大きさに対応でき、障害者が使用に際し過度な引っ張りをした場合であっても耐えることができる。
【0094】
次に、本発明の第3自立支援補助具の実施形態である第2持ち方補助具について説明する。
【0095】
ここで説明する第2持ち方補助具は、上述の第1持ち方補助具を用いても持ち方を習得することが困難な者を対象とするものである。上述の分離性の習得には個人差があり、第1持ち方補助具を使用してもなかなか持ち方を習得できない者も存在する。例えば、第1持ち方補助具を使用して上述した3点支持の持ち方を維持しようと試みても、薬指と小指には何も握られていない不安定な状態であるため、これらの指の状態につられて筆記具を持つ3本の指が不安定になってしまうことがある。そのような者に学習を継続させるのは困難であるだけでなく、学習者にとっては苦痛となることもある。本実施形態の第2持ち方補助具は、少なくともこのように低い分離性を、第1持ち方補助具で練習ができる程度の分離性まで高めることを目的とするものである。
【0096】
図4は、第2持ち方補助具200を示す図である。同図(a)は、第2持ち方補助具200を3方向から示す図であり、同図(b)は、第2持ち方補助具200の斜視図である。
【0097】
この図4に示す第2持ち方補助具200は、図2に示す第1持ち方補助具100の、把持物孔形成部102に相当する部分に把持補助部201が接合部202を介して接着されているものである。この把持補助部201は、第1持ち方補助具100よりも硬いシリコーンゴム製の棒状の部材である。なお、図2に示す第1持ち方補助具100と同じ部分については同一の符号を付して説明を省略する。なお、図4に示す第2持ち方補助具200にもくびれNが設けられている。この第2持ち方補助具200では、接着された把持補助部201の形状に沿うように形状が変更されているため、くびれNのくびれ具合が第1持ち方補助具100単体の場合と比較して小さくなっているが、くびれNによって、筆記具等を使用するために親指THが動いても筆記具等をファーストウェブFWに乗せておくことができる。
【0098】
この第2持ち方補助具200では、第1持ち方補助具100と把持補助部201とは硬度が異なる。そのため、第2持ち方補助具200は、第1持ち方補助具100と把持補助部201それぞれを成形した後、それぞれの接触部分を接合部202で覆って接着することによって造られる。但し、第2持ち方補助具200は、上記方法で製造されるものに限定されず、例えば一体成形によって第1持ち方補助具100の部分と把持補助部201の部分とで硬度を異ならせて造られるものであってもよい。なお、第1持ち方補助具100と把持補助部201は同一の硬度であってもよい。
【0099】
また、把持補助部201は角柱状のものの他、円柱状のもの、さらには、握りやすいように膨らみを付けたものであってもよい。
【0100】
次に図5および図6を用いて、上記第2持ち方補助具200の使用方法について説明する。
【0101】
図5(a)は、第2持ち方補助具200を装着している様子を示す図である。この図5(a)には、第1持ち方補助具100と同様に、第2持ち方補助具200の指孔H1に親指を通し、把持補助部201を中指MF、薬指RF、および小指SFで握っている様子が示されている。この把持補助部201は手の大きい者でも握ることができるように長めに作ってある。すなわち、把持補助部201は、使用者が少なくとも小指か薬指のいずれか一方の指でこの把持補助部201を把持した場合に、その使用者の掌からはみ出る長さであって、かつ切断可能なものである。このため、図5(a)に示すように手の大きさによって把持補助部201が掌からはみ出ることになる。このはみ出た部分については図5(b)に示すようにカッター等で容易に切り落とすことができる。このように把持補助部201を手の大きさに合わせて調整することができる。
【0102】
図6(a)は、把持補助部201を手の大きさに合わせて調整した第2持ち方補助具200を装着し、鉛筆Pを把持物孔H2に通した様子を示す図である。この図6(a)に示すように把持補助部201が掌を横切る位置になるように指孔H1に親指を通すことにより、鉛筆Pを把持しつつ把持補助部201を薬指や小指で握ることができる。
【0103】
図6(b)は、図6(a)の状態から鉛筆Pを把持した様子を示す図である。この図6(b)に示す第2持ち方補助具200の使用者は、何もしないと総ての指を独立してうまく動かすことができない。この図6に示す使用者の場合、薬指RFおよび小指SFで把持補助部201を握ると、親指THおよび人差し指IFは独立して動かすことができるようになる。しかし、中指MFは、薬指RFおよび小指SFの動きにつられて把持補助部201を握ってしまう。ここで、急に中指MFを独立して動かすことは困難であるため、まず、親指THおよび人差し指IFで正しい持ち方を訓練する。この訓練の様子が図6(c)に示されている。
【0104】
図6(b)および(c)に示すように中指MFを独立して動かすことができないと、親指TH、人差し指IF、および中指MFのそれぞれを完全に独立して動かすことができないことになる。そのため、正しい持ち方にはならないが、第2持ち方補助具200によっておおむね正しい持ち方に近い状態の持ち方をすることができる。したがって、特に問題のあるところを集中的に訓練することで、正しい持ち方を効果的に習得することができる。図6(b)および(c)の場合は特に中指MFに集中して訓練することが考えられる。
【0105】
上記説明したように把持補助部201は第1持ち方補助具100よりも硬いものであり握りやすくなっている。また、ここで説明した把持補助部201は、把持物孔形成部102から延在したものであり、把持補助部201が握りやすい位置に設けられている。
【0106】
把持補助部201を薬指および小指で握ると、その握った指が安定するため、鉛筆Pを持つ際に薬指および小指の動きに他の指がつられないようにすることができる。換言すると、まだ指を独立して動かすことができない者であっても薬指および小指を安定した状態にすることで鉛筆Pを持つ3本の指に集中して訓練することができ、正しい持ち方を学習することができる。この第2持ち方補助具200は、指の分離性の発達が遅れている者や、脳性まひ、発達性強調運動障害、頚髄損傷等の原因により手指機能が劣っている者に対して特に効果的である。ただし、第2持ち方補助具200の対象者は障害者には限られない。この第2持ち方補助具を利用して分離性が得られた場合には上述の第1持ち方補助具で練習を行えばよい。将来的にこれらの補助具なしに鉛筆等を握ることができるように促すことができる。なお、第2持ち方補助具の把持補助部201は着脱可能なものであってもよい。また、第2持ち方補助具の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)等であってもよい。
【0107】
本実施形態の第2持ち方補助具200は、第1持ち方補助具100を利用しており、第1持ち方補助具100の場合と同様に、第1持ち方補助具100の外力が加わる部位である指孔形成部101,把持物孔形成部102,共有部104,および補強部105に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上15°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下の材料を用いることがより好ましい。
【0108】
また、本実施形態の第2持ち方補助具200の把持補助部201は、弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が15°より大きなものであることが好ましく、30°以上であることがより好ましい。また、ヒステリシスロス率は50%未満であり、かつ切断時伸び率は100%以上1200%以下であることが好ましい。
【0109】
3つ目に、本発明の第4自立支援補助具の実施形態である押しボタン補助具について説明する。
【0110】
図7は、押しボタン補助具が装着される押しボタン型スイッチ800を示す図である。
【0111】
図7(a)には、押しボタン型スイッチ800の外観が示されている。この押しボタン型スイッチ800は障害者が意思表示をするために用いられるものであり、このような押しボタンスイッチが施設、病院等で多く使用されている。
【0112】
図7(b)には、図7(a)に示す押しボタンスイッチの一部を簡略化した断面図が示されている。この図7(b)では、押しボタン型スイッチ800が、操作面801、スイッチ本体部802、およびストッパー803を備えている様子が示されている。この押しボタン型スイッチ800は、操作面801に所定の荷重がかかることによってスイッチ本体部802が押下され、信号を出力する。図7(c)には、中央に荷重(図に示す矢印参照)がかけられて沈み込んだ操作面801と、その操作面801によって押下されたスイッチ本体部802が示されている。また、図7(d)には、周辺部に荷重(図に示す矢印参照)がかけられて傾いた操作面801と、その操作面801によって押下されたスイッチ本体部802が示されている。この押しボタン型スイッチ800は、操作面801の周辺部にストッパー803を設けて周辺部の上下可動域を制限している。したがって、操作面801の周辺部に荷重がかけられた場合、荷重がかけられた部分とは反対側のストッパー803が支点となり、中央部にあるスイッチ本体部802を押下させることができる。
【0113】
この押しボタン型スイッチ800は、手で使用されるとは限らず、障害者によっては動かせる部位(例えば足、頭部など)で使用することがある。そのため、図7(c)および(d)に示すように、中央部だけでなく周辺部に荷重がかけられても操作できるように作られている。
【0114】
しかし、押しボタン型スイッチ800が机や床の上などにそのまま置かれているような場合、操作の仕方によっては押しボタン型スイッチ800が滑ってしまい、うまく操作できないことがある。したがって、扱いやすい場所に固定されることが望ましいが、固定する時間および労力が必要になる。さらに、障害の程度は多様であるため、ある者にとっては操作しやすい場所が、他の者にとっては操作が困難になる場所である可能性がある。また、上述したように、押しボタン型スイッチ800は操作面801の一部に荷重をかけるだけで反応するように作られているものの、押しボタンの設置方向によっては操作が困難となる場合がある。
【0115】
本実施形態の押しボタン補助具は、図7(a)に示す押しボタン型スイッチ800の操作性を簡単に向上させることを目的とするものである。
【0116】
図8(a)は、本発明の第4自立支援補助具の実施形態である押しボタン補助具300を示す図である。この押しボタン補助具300はシリコーンゴム製であって、押しボタン型スイッチ800の操作に必要な荷重よりも軽いものであり、支え部301、操作体302、および頭部303を備えている。支え部301は吸盤になっており、操作面801への着脱が容易になっている。この支え部301が本発明の固定部の一例に相当する。操作体302は、支え部301が操作面801に吸着したときに、押しボタン型スイッチ800の操作面801に対して垂直方向に延在する向きに形成されている延在部3021を有する。操作体302はシリコーンゴムの特性である弾性を有するものであるため、容易に撓ませることができる。頭部303は、操作体302の支え部301と接しない方の端に備えられている。この頭部303は円盤状の部材であり、操作面801と平行な状態で操作体302と接している。
【0117】
この頭部303の上面を押下すれば、操作面801を押下して押しボタン型スイッチ800を操作することができる。また、頭部303を左右に動かしても、操作面801を傾けて押しボタン型スイッチ800を操作することができる。
【0118】
図8(b)は、押しボタン補助具300を使用している様子を示す図である。この図では頭部303が図の右方向に動かされて、操作面801を傾かせる力が働いている様子が示されている(図に示す矢印参照。)。この押しボタン補助具300を使用すれば、押しボタン型スイッチ800を足や頭でも簡単に操作でき、固定していない場合でも容易に操作することができる。また、弾性材であるため、力の加減が困難な者が操作の際に勢い余って押しボタン補助具300にぶつかって怪我してしまうこと防止することができる。さらに、必要に応じての着脱が容易であるため、設置者・監督者の負担が軽減される。なお、押しボタン補助具300の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)等であってもよい。
【0119】
以下、図9、図10、および図11を用いて、押しボタン補助具300の使用態様を説明する。
【0120】
図9(a)は、押しボタン型スイッチ800の操作面801中央に押しボタン補助具300を装着した様子を示す図である。また、図9(b)は、押しボタン型スイッチ800の操作面801周辺部に押しボタン補助具300を装着した様子を示す図である。これらの図に示すように、押しボタン補助具300の装着位置は操作面801の中央に限られず、押しボタン型スイッチ800がオンしっぱなしにならなければ、周辺部であってもよい。
【0121】
図10(a)は、図9(a)に示す押しボタン補助具300が倒れる方向に力を加えてている様子を示す図である。また、図10(b)は、図9(a)に示す押しボタン補助具300を真上から押下している様子を示す図である。図8(b)で説明したように、これらの図10(a)および図10(b)に示されたどちらの操作方法でも押しボタン型スイッチ800を操作することができる。
【0122】
図11は、図9および図10に示した押しボタン型スイッチよりも小さい押しボタン型スイッチ800に、押しボタン補助具300を装着した様子を示す図である。この図11に示すように、押しボタン型スイッチ800の大きさは特に限定されるものではなく、押しボタン補助具300が装着できる大きさのものであればよい。
【0123】
図12は押しボタン補助具300を分解した様子を示す図である。この図に示すように押しボタン補助具300は上部300aと下部300bとに分解できるものであってもよい。このように構成すれば、図12に示す上部300aの他に、使用者が使用しやすい大きさのものや、子供が興味を持つような装飾がされたものなどを用意しておき、必要に応じて付け替えることができる。上部300aは、操作体302(延在部3021)の外周壁および頭部303を構成するものであり、下部300bは、操作体302(延在部3021)の軸心部分および支え部301を構成するものである。
【0124】
本実施形態の押しボタン補助具300では、外力が加わる部位である上記操作体302に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上70°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0125】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、操作を確実に押しボタン型スイッチ800に伝えることができる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、一般的に把持される対象物の大きさに対応でき、障害者が使用に際し過度な力で押しボタン補助具300に接触しても耐えることができ、また、使用者自身も怪我をしなくてすむ。
【0126】
より詳細に説明すれば、図12に示す下部300b(支え部301を含む部材)は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上40°以下(例えば30°)のものであることが好ましく、上部300a(頭部303を含む部材)は、硬度(JIS K6249に準拠)が50°以上70°以下(例えば60°)のものであることが好ましい。このように上部300aを下部300bよりも硬くしておくことで、頭部303を押す力を押しボタン型スイッチ800の操作面801に確実に伝えることができ、下部300bを上部300aよりも柔らかくしておくことで、吸盤である支え部301が操作面801の形状により追従しやすく、この押しボタン補助具300の、押しボタン型スイッチ800への装着が容易になる。
【0127】
以上説明した押しボタン補助具300は、脳性まひ、発達障害、その他運動や認知障害により図7に示す押しボタン型スイッチ800などを利用できない者に対して特に効果的である。ただし、この押しボタン補助具300の対象者も障害者には限られない。
【0128】
4つ目に、本発明の第5自立支援補助具の実施形態である座り方補助具について説明する。
【0129】
正しい姿勢を維持することは、集中力を維持したり両手を自由に使えたりすることに繋がるため、学習をする上で重要なことである。ここでいう正しい姿勢とは、両側の坐骨で体重を支えつつ、背筋を伸ばした状態のことである。
【0130】
学校で使用される椅子は、その多くが座面が木製のものである。このような椅子は座面が硬く臀部が痛くなる場合があり、正しい姿勢を長時間維持することができずに姿勢を悪化させる場合がある。この場合、座る位置を変えたりして対処するものの、座面が滑りやすいためにさらに姿勢が悪化する場合がある。例えば背もたれによりかかるような姿勢になると、臀部が前に滑って仙骨に近い位置で体重を支持する姿勢になってしまうことがある。このような姿勢の悪い状態で集中力を維持することは困難である。加えて、体重の支持に手を使ったりすると字が書きにくくなるため、より学習効率が低くなる可能性がある。さらに、このような姿勢が癖になると、座りやすい椅子を使うなどしても座る姿勢を改善することが困難になる。
【0131】
本実施形態の座り方補助具は、上記木製の椅子などに使用して、上記の正しい姿勢を長時間維持できるようにすることを目的とするものである。
【0132】
図13は本発明の第5自立支援補助具の実施形態である座り方補助シート400を示す図である。
【0133】
この図13(a)には、座り方補助シート400のおもて面401と裏面402が半分づつ示されている。図13(a)の上半分がおもて面401を示したものであり、図の下半分が裏面402を示したものである。図13(b)は、座り方補助シート400を示す断面図およびその断面図の一部分の拡大図である。
【0134】
この座り方補助シート400は、全体がシリコーンゴムで形成されたものであり、その厚さは5mmである。なお、この厚さは100mm以下のものであってもよく、10mm以下であることが好ましい。図13(a)には、おもて面401に溝403が複数形成された様子が示されており、図13(b)にはこれらの溝403の断面がV字状である様子が示されている。また、図13(a)には、裏面402に六角形の穴404が規則的に設けられている様子が示されており、図13(b)にはこれらの穴404がおもて面側(奥)にいくほど狭くなっている様子が示されている。すなわち、裏面402には、多角形の穴が複数設けられている。また、図13(c)には、V字状の溝403をさらに拡大した様子が示されている。この図13(c)に示すように、V字状の溝403を形成する傾斜壁4031は、隣り合う溝403を形成する傾斜壁4031と平坦面4032で結ばれている。すなわち、隣り合う溝403と溝403は平坦面4032で結ばれており、この平坦面4032によって、使用者の臀部が痛くならないようになっている。
【0135】
ここで図14を用いて、座り方補助シート400の使用態様について説明する。図14(a)は、子供が椅子Cに腰掛けている様子を示す図である。この椅子Cは座面が木製で表面が滑りやすく、背もたれによりかかると臀部が座面上を滑ってしまって正しい姿勢を維持することが困難なものである。上述の座り方補助シート400は、図14(b)に示すように、このような椅子Cの座面に敷いて使用するものである。
【0136】
この座り方補助シート400を硬く滑りやすい座面に敷くことで、臀部が滑りにくくなるため、臀部が滑って姿勢が崩れてしまうことを防止することができる。座り方補助シート400の厚さは5mmであるため、座面に敷いても座る高さが大きく変わることはない。したがって、使用者の座る高さに合わせて設計された椅子であっても、そのまま座面に敷いて使用できる。なお、座り方補助具400の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)等であってもよい。
【0137】
座り方補助シート400のおもて面401に形成された溝403は汗を発散させることができるため、臀部が蒸れて注意力が殺がれることを防ぐ。また、この溝403の縁に、使用者の臀部にまとった衣類がひっかかり、滑ってしまうことがより一層防止される。
【0138】
また、V字状の溝403の深さは1mm程度あり、この溝403はクッション性に寄与している。
【0139】
さらに、空気を通さない座面にこの座り方補助シート400を使用すると、使用者が座ることによって裏面の穴404の縁と椅子の座面とが密着する。このとき、各穴内に空気が保持され、保持された空気がクッションの役割を果たして座り心地が良くなる。この結果、痛みによって長時間正しい姿勢を維持できなくなることを防止できる。この座り方補助シート400は素材が弾性材料であるため、荷重の増加に伴って穴404がつぶれ、穴404を画定する内周壁が座面に接触するようになる。ここで、図13(b)の断面図(より詳細には丸で囲んだ拡大図を参照)に示すように、裏面402の穴404はおもて面側(奥側)にいくほど段階的に狭くなっており、穴404を画定する内周壁は階段状になっている。なお、穴404はおもて面側にいくほど漸次狭くなるものであってもよい。穴404は座り方補助シート400にかかる荷重が増加するにつれて座面方向に押し潰され、その結果、穴404を画定する内周壁と座面との接触面積が大きくなり荷重をしっかりと支え、体圧分散が効率的に行われる。この結果、荷重が増加した場合、穴404がおもて面側にいくほど狭くなっていない場合と比較して、快適な座り心地を提供することができる。さらに裏面402は正六角形の穴が規則的に並んだ所謂ハニカム構造になっているため、少ない素材で大きな荷重を支えることができるだけでなく、材料にかかるコストも低減することができる。また、このハニカム構造によって体圧分散がよりしっかりと行われる。この座り方補助シート400によって、学習時の集中力を長時間維持し、学習効率を高めることが期待できる。
【0140】
本実施形態の座り方補助具400では、外力が加わる部位である上記おもて面401および裏面402に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が0°以上15°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0141】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、椅子から滑り落ちにくくすることができる。また、切断時伸び率が100%以上1200%以下であれば、より大きな荷重に対してもクッション性を発揮して長時間の正しい姿勢の維持に寄与する。
【0142】
以上説明した座り方補助具400は、脳性まひ、学習障害、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動障害、その他座位姿勢が崩れやすい者に対して特に効果的である。ただし、この座り方補助具400の対象者も障害者には限られない。
【0143】
5つ目に、本発明の第6自立支援補助具の実施形態である作図補助具について説明する。
【0144】
定規を用いて線を引く場合、利き手で筆記具を持ち、利き手ではない方の手で定規を押さえる。このとき、例えば両手が交差した状態では線を描きにくくなるため、描きやすい向きで定規を配置するのが普通である。しかし、知的障害などにより、描きやすさではなく、描かれる図形に合わせて定規を配置する者がいる。例えば四角形を描く場合に、その四つの辺に対して四角形の外周側に定規を配置してしまう者の場合、四角形の上辺を描くときには定規を上下逆さまに配置したり、左右の辺を描くときに両腕が不自然な姿勢になったりして、うまく四角形を描くことができない。
【0145】
本実施形態の作図補助具は、定規等を使いやすい向きで使用できるようになることを目的とするものである。
【0146】
図15(a)は、本実施形態の作図補助具500を示す図である。この図15(a)に示す作図補助具500は、筆記具があてがわれる縁510に目盛501が設けられた長方形の定規である。この作図補助具500は、プラスチック製の定規部51とシリコーンゴム製の装着部52を有する。定規部51には白色の目盛501が設けられ、背景を黒色にすることで目盛501が見やすくなっている。また、装着部52のおもて側の中央部には凹み部502が設けられている。凹み部502には、目盛501側の縁510を向いた人差し指、中指、および薬指の3本の指先それぞれの腹を象った凹みが設けられており、以下、人指し指の指先を象った凹みを人差し指凹み511と称し、中指の指先を象った凹みを中指凹み512と称し、薬指の指先を象った凹みを薬指凹み513と称する。これら3つの指凹み511〜513はいずれも、目盛501側の縁510側が先細になったものである。この作図補助具500によれば、目盛501側の縁510に指先を向けて凹み部502に人差し指、中指、および薬指それぞれを合わせ、定規部51を押さえることが容易にできるようになっている。なお、凹み部502を一段高く設けた突部にすると、凹み部502をより目立たせることができる。また、この突部は持ち手としても利用することができる。
【0147】
これら3つの指凹み511〜513のうち、人差し指凹み511と薬指凹み513は、指の腹の大きさとほぼ同じ大きさの凹みである。このため、人差し指の腹と薬指の腹を人差し指凹み511と薬指凹み513に合わせて収めることができる。また、中指凹み512は指の腹の大きさよりもある程度大きい凹みである。ある程度大きめにすることで、人差し指および薬指と、中指との長さの違いに影響されずに、中指を中指凹み512にあてがうことができる。このように人差し指、中指、および薬指を3つの指凹み511〜513にあてがって、作図補助具500を押さえる。
【0148】
なお、上記3つの指凹み511〜513は、窪んでいる深さをあてがわれる指に合わせて異ならせてもよい。
【0149】
凹み部502を利用して作図補助具500を押さえると、押さえている指に対する作図補助具500の向きが制限される。したがって、凹み部502を設けておくことによって線を描きやすい向きで作図補助具500を押さえることが期待できる。また、人差し指の腹と薬指の腹は、それぞれ人差し指凹み511と薬指凹み513にほぼぴったり収まる。このため、作図補助具500の向きを変える力を伝えやすく、指を凹み部502にあてがったままでも作図補助具500の向きを容易に変えることができる。
【0150】
図15(b)は、図15(a)のB−B’における断面図である。装着部52は、断面コ字状のものであり、定規部51を挟み込むようにして定規部51に着脱自在に装着される。なお、定規部51に装着部52を接着して着脱不能にしてもよい。この装着部52は、作図中に載置面と接して摩擦力を生じる接触面504を裏面側に有し、この接触面504によって描線中に作図補助具500がずれないようになっている。接触面504は、本発明にいう滑り止め部の一例に相当する。
【0151】
また、この装着部52の接触面504は、目盛501側の縁510に向かって漸次上方に傾斜している。このため、この作図補助具500を平らな面に載置すると、図15(c)に示す姿勢になり、目盛501側の縁510、すなわち線を引くところにより荷重がかかり、作図補助具500がよりずれにくくなる。
【0152】
さらに、この装着部52は、目盛501側の縁510とは反対側の縁部において、裏面からおもて面に向かって徐々に裏面から離れるように傾斜している(図15(b)では右肩上がりの傾斜)傾斜面505も有する。この傾斜面505は描線中に載置面とは接触しない非接触部分である。ここで、上記接触面504と傾斜面505の境界を持ち上げ支点506と称する。
【0153】
上記傾斜面505をおもて面側から裏面側に押し下げれば、上記持ち上げ支点506を支点にして上記目盛501が設けられた縁510が持ち上がり、作図補助具500を簡単に手に取ることができる。なお、装着部52の素材はシリコーンゴム以外の弾性材料(例えばエラストマー(熱可塑性エラストマー)、加硫ゴム、ポリウレタンフォーム)であってもよい。また、作図補助具500は長方形の定規であるが、例えば三角定規のように他の定規であってもよい。また、縁510は直線に限られず、曲線であってもよい。
【0154】
ここで図16を用いて、作図補助具500の使用態様について説明する。図16(a)は作図補助具500を手で押さえた様子を示す図である。この図16(a)では、上記説明したように使用者が凹み部502に指を合わせている様子が示されており、この凹み部502を利用することで作図補助具を軽い力で押さえた状態にすることができる。また、凹み部502によって手の向きが決まり、作図補助具500が手で押さえやすい位置におかれるようになることが期待できる。すなわち、この凹み部502で押さえるように障害者等に教えることで、線を引きにくい不自然な位置に作図補助具500を配置しないようにすることが期待できる。図16(b)は作図補助具500を使用して線を引いている様子を示す図である。この図に示すように、作図補助具500が手で押さえやすい位置にあるため、線を無理なく引くことができる。
【0155】
本実施形態の作図補助具500では、外力が加わる部位である上記装着部52に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が5°以上40°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0156】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、作図補助具500をより滑りにくくすることができる。また、凹み部502も滑りにくいため、定規部51をしっかりと押さえることができる。
【0157】
以上説明した作図補助具500は、脳性まひ、学習障害、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動障害、広汎性発達障害、その他上肢機能障害者や、脳卒中後片麻痺、失調症を患っている者、弱視の者等に対して特に効果的である。ただし、この作図補助具500の対象者も障害者には限られない。
【0158】
最後に、本発明の第7自立支援補助具の実施形態である筆記補助マットについて説明する。
【0159】
机の上に置いた用紙に文字等を書くときや、鉛筆で書いた文字等を消しゴムで消すときに、用紙が机上を滑ってしまってうまく書いたり消したりできない場合がある。このような場合、用紙を手で押さえて滑らないようにすればよいのだが、障害等によって用紙を押さえようとしてもうまく押さえられない者がおり、彼等にとっては用紙を滑らないようにすることが困難であるという問題がある。また、コンパスを使用して円を描くときに、机の硬さによってはコンパスの針が刺さりにくい場合がある。この場合、上記の障害者にとってはさらに困難であるのはもちろんのこと、健常者であってもコンパスをあまり使用したことのない者にとっては、円を描くことが困難であるという問題もある。
【0160】
これらの問題に対して、従来よりある文鎮や学習マットを使用することが考えられる。しかし、これらの道具は、例えば、用紙をある程度使用者が押さえることができる、といったことを前提としたものである。したがってこれらの道具を使用しても、用紙を押さえることが難しい障害者等にとっては、十分に用紙を固定することが困難である。
【0161】
本実施形態の筆記補助マットは、用紙を手で押さえなくても滑らないようにして、他者の補助なく筆記ができるようにすることを目的とするものである。
【0162】
図17は、本実施形態の筆記補助マット600を示す図である。この筆記補助マット600には、A4用紙(JIS P−0138)の大きさの長方形の枠601と、15cmまで1mmごとに設けられた目盛602とが記されている。ここでは枠601も目盛602も、印刷によって記されたものであるが、彫り込んだものであってもよい。長方形の枠601はA4用紙を配置するためのガイドである。この枠601があることによって、弱視の者であっても授業で配布される資料等を置く位置が明確になる。この筆記補助マット600の素材はシリコーンゴムであり、高い滑り止め効果がある。これにより、筆記具や消しゴムの使用時に用紙が滑りにくくなり、用紙を押さえずに消しゴムを使用しても用紙が滑らないようになっている。図18(a)には、筆記補助マット600を使用して学習している様子が示されている。また、図18(b)には、筆記補助マット600と消しゴムを使用している様子が示されている。
【0163】
この筆記補助マット600は、厚さは1.8mm程度のものであり、コンパスの針を容易に刺すことができる。このため、用紙を貫通したコンパスの針がずれることなく円を描くことができる。図18(c)には、筆記補助マット600とコンパスを使用して円を描く様子が示されている。さらに、筆記補助マット600に設けられた目盛602を使用すれば、筆記補助マット600に用紙を配置する前にコンパスの針を筆記補助マット600に刺して固定した状態で、描きたい円の半径になるようにコンパスの開き具合を調整することができる。また、厚さが薄いため、丸めて持ち運ぶことも容易である。なお、本実施形態の筆記補助マットは厚さは、0.1mm以上30mm以下であってもよく、0.5mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0164】
図17には、筆記補助マット600の一面が示されているが、おもて面、裏面ともに同じデザインである。このため、使用時にいずれの面に用紙を配置するのかを気にしなくてもよい。なお、同じデザインでなくてもよく、おもて面と裏面とで用紙配置用の枠の大きさを異なせてもよい。例えば、おもて面にはA4サイズの枠、裏面にはB5サイズの枠を設けてもよい。また、裏面のB5サイズの枠の外に上記目盛を設け、筆記補助マット600にB5サイズの用紙を配置しても、目盛を使用することができるようにしてもよい。ただし、弱視の者にとってはガイドの大きさが重要であるため、弱視であってもおもて面と裏面とを区別できるように、例えば両方の面で配色を異ならせることが好ましい。この筆記補助マット600によれば、学習等における筆記の際の制限を軽減することで、学習に集中でき、学習効果が向上することが期待できる。
【0165】
本実施形態の作図補助シート600では、外力が加わる部位である上記装着部52に弾性材料であるシリコーンゴムを用いたが、この弾性材料は、硬度(JIS K6249に準拠)が25°以上75°以下のものであることが好ましく、ヒステリシスロス率が50%未満のものであり、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下のものであることがより好ましい。
【0166】
ヒステリシスロス率が低いほど、変形しても確実に元の形状に戻ろうとすることによって摩擦力が生じるため、筆記補助マット600をより滑りにくくすることができる。
【0167】
以上説明した筆記補助マット600は、脳性まひ、学習障害、注意欠陥多動性障害、発達性協調運動障害、広汎性発達障害、その他上肢機能障害者や、脳卒中後片麻痺、失調症を患っている者等に対して特に効果的である。ただし、この作図補助具500の対象者も障害者には限られない。
【0168】
これまで説明した実施形態は全て本発明の第1自立支援補助具の実施形態でもある。これらの実施形態の第1自立支援補助具によれば、広汎性発達障害等の障害を負った者等が様々な場面で受ける制限を軽減し、保護をうけなくても自立できる機会を得ることが期待できる。また、健常者にも適用することができる。
【0169】
以上説明した、各種の自立支援補助具に用いることができるシリコーンゴムの詳しい物性値を、最後に表1を用いて説明する。
【0170】
【表1】
各試験はJIS規格に準拠して行った。かっこ内の数値は好ましい値を示す。
【0171】
なお、これまで説明した各種の自立支援補助具(第1持ち方補助具100,第2持ち方補助具200,押しボタン補助具300,座り方補助シート400,作図補助具500,
筆記補助マット600)は、物性値を含む材料特性に特徴があったが、形状および構造にも大きな特徴があり、その材料特性を切り離して形状および構造のみによっても発明は成立する。
【符号の説明】
【0172】
100 第1持ち方補助具
101 指孔形成部
102 把持物孔形成部
103 縁
104 共有部
105 補強部
200 第2持ち方補助具
201 把持補助部
300 押しボタン補助具
301 支え部
302 操作体
3021 延在部
303 頭部
400 座り方補助シート
401 おもて面
402 裏面
403 溝
404 穴
500 作図補助具
51 定規部
501 目盛
52 装着部
502 凹み部
511 人差し指凹み
512 中指凹み
513 薬指凹み
504 接触面
505 傾斜面
506 支点
510 縁
600 筆記補助マット
601 枠
602 目盛
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力が加わる部位に、ヒステリシスロス率が50%未満であって、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下である弾性材料を用いたことを特徴とする自立支援補助具。
【請求項2】
指孔と把持物孔とが形成され、該指孔を拡げて親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、該把持物孔を拡げて把持対象物を通して、該把持対象物の把持を補助する自立支援補助具であって、
前記指孔が形成された指孔形成部と、
前記把持物孔が形成された把持物孔形成部と、
前記指孔形成部と前記把持物孔形成部とを繋ぐ連結部とを備え
前記指孔形成部、前記把持物孔形成部、および前記連結部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項3】
前記指孔形成部が、環状であり、
前記把持物孔形成部も、環状であり、
前記連結部が、前記指孔形成部の一部であり、かつ前記把持物孔形成部の一部である共有部であり、
前記指孔形成部の外周と前記把持物孔形成部の外周との間にくびれが形成されたものであることを特徴とする請求項2記載の自立支援補助具。
【請求項4】
前記連結部が、前記共有部を補強する補強部を備えたものであることを特徴とする請求項3記載の自立支援補助具。
【請求項5】
前記指孔形成部は、外縁が面取りされたものであり
前記把持物孔形成部は、外縁が面取りされたものであることを特徴とする請求項3または4記載の自立支援補助具。
【請求項6】
前記指孔形成部は、前記把持物孔形成部によって形成された把持物孔よりも大きい孔が前記指孔として形成されたものであることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項7】
前記指孔の中心と前記把持物孔の中心との距離が、該指孔の半径に対して2倍以上4倍以下であることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項8】
前記指孔に親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、前記把持物孔に把持対象物を通して、該対象物を把持した状態で、少なくとも薬指または小指のいずれか一方の指で握ることができる把持補助部を備えたことを特徴とする請求項2から7のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項9】
前記把持補助部が、棒状であることを特徴とする請求項8記載の自立支援補助具。
【請求項10】
前記把持補助部が、前記把持物孔形成部よりも硬いものであることを特徴とする請求項8または9記載の自立支援補助具。
【請求項11】
操作面が所定の荷重を受けて沈み込むあるいは傾くことによってオンするスイッチに装着され、該操作面に該所定の荷重をかける操作を補助する、該荷重未満の自立支援補助具であって、
前記操作面に対して垂直方向に延在する延在部を有する操作体と、
前記操作体の一端を前記操作面に着脱自在に固定する固定部とを有し、
前記延在部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項12】
前記操作体の、前記一端に対する他端側に、前記垂直方向に交わる方向に拡がる頭部を有することを特徴とする請求項11記載の自立支援補助具。
【請求項13】
椅子の着座面に敷かれ、該着座面に腰掛けた姿勢を維持できるように補助する自立支援補助具であって、
複数の溝が形成されたおもて面と、
複数の穴が設けられた裏面とを有し、
前記おもて面および前記裏面は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項14】
厚さが100mm以下であることを特徴とする請求項13記載の自立支援補助具。
【請求項15】
前記おもて面は、断面V字状の溝が平行に複数形成された面であることを特徴とする請求項13または14記載の自立支援補助具。
【請求項16】
前記裏面が、多角形の穴が隙間なく形成された面であることを特徴とする請求項13から15のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項17】
前記裏面は、前記おもて面側へ向かうほど狭くなる穴が複数形成された面であることを特徴とする請求項13から16のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項18】
筆記具を用いて線を引くことを補助する自立支援補助具であって、
筆記具があてがわれる縁と、
裏面に設けられた滑り止め部と、
おもて面に設けられ、前記縁側を向いた指先の腹を象った凹み部とを有し、
前記凹み部は、開口の大きさが異なる2種類以上の凹みを有するものであり、
前記滑り止め部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項19】
前記縁は、黒色の背景に白色の目盛が設けられたものであることを特徴とする請求項18記載の自立支援補助具。
【請求項20】
前記裏面に設けられた支点部分と、
この自立支援補助具が載置される載置面とは非接触な部分であって、押さえることで前記支点部分を支点にして前記縁が持ち上がる非接触部分とを有することを特徴とする請求項18または19記載の自立支援補助具。
【請求項21】
前記支点部分が、前記滑り止め部に設けられたものであることを特徴とする請求項20記載の自立支援補助具。
【請求項22】
載置面に用紙を置いて該用紙に筆記する際に、該載置面と該用紙の間に敷かれる自立支援補助具であって、
前記自立支援補助具は、前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項23】
厚さが0.1mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項22記載の自立支援補助具。
【請求項24】
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、所定の用紙の大きさについての規格に応じた大きさの枠が設けられていることを特徴とする請求項22または23記載の自立支援補助具。
【請求項25】
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、目盛りが設けられていることを特徴とする請求項22から24のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項1】
外力が加わる部位に、ヒステリシスロス率が50%未満であって、かつ切断時伸び率が100%以上1200%以下である弾性材料を用いたことを特徴とする自立支援補助具。
【請求項2】
指孔と把持物孔とが形成され、該指孔を拡げて親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、該把持物孔を拡げて把持対象物を通して、該把持対象物の把持を補助する自立支援補助具であって、
前記指孔が形成された指孔形成部と、
前記把持物孔が形成された把持物孔形成部と、
前記指孔形成部と前記把持物孔形成部とを繋ぐ連結部とを備え
前記指孔形成部、前記把持物孔形成部、および前記連結部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項3】
前記指孔形成部が、環状であり、
前記把持物孔形成部も、環状であり、
前記連結部が、前記指孔形成部の一部であり、かつ前記把持物孔形成部の一部である共有部であり、
前記指孔形成部の外周と前記把持物孔形成部の外周との間にくびれが形成されたものであることを特徴とする請求項2記載の自立支援補助具。
【請求項4】
前記連結部が、前記共有部を補強する補強部を備えたものであることを特徴とする請求項3記載の自立支援補助具。
【請求項5】
前記指孔形成部は、外縁が面取りされたものであり
前記把持物孔形成部は、外縁が面取りされたものであることを特徴とする請求項3または4記載の自立支援補助具。
【請求項6】
前記指孔形成部は、前記把持物孔形成部によって形成された把持物孔よりも大きい孔が前記指孔として形成されたものであることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項7】
前記指孔の中心と前記把持物孔の中心との距離が、該指孔の半径に対して2倍以上4倍以下であることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項8】
前記指孔に親指又は人差し指のいずれか一方の指を通し、前記把持物孔に把持対象物を通して、該対象物を把持した状態で、少なくとも薬指または小指のいずれか一方の指で握ることができる把持補助部を備えたことを特徴とする請求項2から7のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項9】
前記把持補助部が、棒状であることを特徴とする請求項8記載の自立支援補助具。
【請求項10】
前記把持補助部が、前記把持物孔形成部よりも硬いものであることを特徴とする請求項8または9記載の自立支援補助具。
【請求項11】
操作面が所定の荷重を受けて沈み込むあるいは傾くことによってオンするスイッチに装着され、該操作面に該所定の荷重をかける操作を補助する、該荷重未満の自立支援補助具であって、
前記操作面に対して垂直方向に延在する延在部を有する操作体と、
前記操作体の一端を前記操作面に着脱自在に固定する固定部とを有し、
前記延在部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項12】
前記操作体の、前記一端に対する他端側に、前記垂直方向に交わる方向に拡がる頭部を有することを特徴とする請求項11記載の自立支援補助具。
【請求項13】
椅子の着座面に敷かれ、該着座面に腰掛けた姿勢を維持できるように補助する自立支援補助具であって、
複数の溝が形成されたおもて面と、
複数の穴が設けられた裏面とを有し、
前記おもて面および前記裏面は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項14】
厚さが100mm以下であることを特徴とする請求項13記載の自立支援補助具。
【請求項15】
前記おもて面は、断面V字状の溝が平行に複数形成された面であることを特徴とする請求項13または14記載の自立支援補助具。
【請求項16】
前記裏面が、多角形の穴が隙間なく形成された面であることを特徴とする請求項13から15のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項17】
前記裏面は、前記おもて面側へ向かうほど狭くなる穴が複数形成された面であることを特徴とする請求項13から16のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【請求項18】
筆記具を用いて線を引くことを補助する自立支援補助具であって、
筆記具があてがわれる縁と、
裏面に設けられた滑り止め部と、
おもて面に設けられ、前記縁側を向いた指先の腹を象った凹み部とを有し、
前記凹み部は、開口の大きさが異なる2種類以上の凹みを有するものであり、
前記滑り止め部は、外力が加わる部位であって前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項19】
前記縁は、黒色の背景に白色の目盛が設けられたものであることを特徴とする請求項18記載の自立支援補助具。
【請求項20】
前記裏面に設けられた支点部分と、
この自立支援補助具が載置される載置面とは非接触な部分であって、押さえることで前記支点部分を支点にして前記縁が持ち上がる非接触部分とを有することを特徴とする請求項18または19記載の自立支援補助具。
【請求項21】
前記支点部分が、前記滑り止め部に設けられたものであることを特徴とする請求項20記載の自立支援補助具。
【請求項22】
載置面に用紙を置いて該用紙に筆記する際に、該載置面と該用紙の間に敷かれる自立支援補助具であって、
前記自立支援補助具は、前記弾性材料からなるものであることを特徴とする請求項1記載の自立支援補助具。
【請求項23】
厚さが0.1mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項22記載の自立支援補助具。
【請求項24】
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、所定の用紙の大きさについての規格に応じた大きさの枠が設けられていることを特徴とする請求項22または23記載の自立支援補助具。
【請求項25】
おもて面または裏面のうちの少なくともいずれか一方の面に、目盛りが設けられていることを特徴とする請求項22から24のいずれか1項記載の自立支援補助具。
【図2】
【図4】
【図8】
【図12】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図8】
【図12】
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−175073(P2011−175073A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38671(P2010−38671)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(509267661)地方独立行政法人静岡県立病院機構 (1)
【出願人】(508212510)株式会社ゴムQ (1)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(509267661)地方独立行政法人静岡県立病院機構 (1)
【出願人】(508212510)株式会社ゴムQ (1)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
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