説明

自転車の荷台へのかご取付構造

【課題】自転車の荷台に容易に着脱できるかご取付けにおいて、持運びのために軽量化を重視する家庭用かごや特に店舗用買物かごは、ニーズがあるにも拘らず、かごの厚みが薄くてその底面部が振動によって無視できない程に変位するため、自転車の荷台に容易に着脱できる取付けができないという問題があった。
【解決手段】自転車の荷台に取付けた中継台にかごを容易に着脱する取付構造で、中継台の左右の位置に引掛け枠を備え、対応するかごの底面の左右の位置に中継台の引掛け枠を引掛けるための引掛け片を備えて、中継台の引掛け枠の前方端部近傍にストッパー部材を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物かごを自転車の荷台に容易に着脱できる取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と特許文献2に記載されている自転車の荷物かごの取付構造は荷物かごを自転車の荷台に容易に着脱できるものである。
【0003】
特許文献1に記載されている技術(特許文献1の図1〜図5または図7,図10)は、かごが荷台に対して前後または左右方向に挿入係合され、かつ摺動案内されると共に上下方向移動が拘束される係合手段を構成する係合案内レールと係止片を有する摺動案内係合部とを設け、荷台に対してかごが移動しないように位置決め固定される後退阻止用ストッパーを有するロック部材を設けてかごを保持するものである。
【0004】
特許文献2に記載されている技術(特許文献2の図1、2、6参照)は、基本的には特許文献1と同様で、荷物かごの底部に係合片を突設し、二輪車のキャリヤ上に取付けた荷台の上面を平面上に形成すると共に係合片を上方から係合するための係合穴を形成し、係合片を係合穴へ嵌合した後、水平後方向に移動して、荷物かごの底部に位置するロック機構によって前述の移動と反対方向の動きを阻止し、荷物かごを保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−354178
【特許文献2】特開平8−230737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているかごの取付構造では、ロック部材が荷台の中央前方にあって、ロック部材の後退阻止用ストッパーをかご底部のストッパー嵌入係合孔を通して起立させ、ストッパー係止片に係止させることによってかごの後方への動きを阻止している。かごの底面の前後方向に延びた支軸となる左右係合部から等距離に位置する中央線付近においては、かご底面の中央部は振動によるかご底面の撓み、つまり上下方向の変位が一番大きく、前方部または後方部は補強のためのかご底部の縁枠があるとはいっても左右係合部から離れているため、かごと荷台の間の相対的な撓みはかご底面が薄ければ無視できない。その対策として、自転車用のかごでは係止部分の高さ寸法を充分確保したり、かご底面の撓みを小さくするために底面の厚み寸法を確保して、ストッパーが外れないように(かごが離脱しないように)している。
特許文献2に記載されている荷物かごの取付構造についても、特許文献1と同様である。
【0007】
以上のことが、自転車用の着脱式かごが特にその底面が頑丈な構造で重くなってしまうことの理由であり、また逆に、持運びのために軽量化を重視する家庭用かごや特に店舗用買物かごは、ニーズがあるにも拘らず、かごの厚みが薄くてその底面部が振動によって無視できない程に変位するため、自転車の荷台に容易に着脱できる取付けができないという問題があった。 図1にかごの底面の前後方向に延びた支軸となる左右の摺動案内係合部(引掛け片)が、自転車の荷台(上の中継台)の係合案内レール(引掛け枠)に係合し、取付けられた軽量かごが振動で撓む状態を示す。
【0008】
本発明はこの問題を解決するもので、家庭用かごや店舗用買物かごのように底面がそれほど丈夫にできていない軽量の荷物かごを自転車の荷台に容易に着脱できるかご取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の構成上の特徴と作用を示す。請求項1の発明は、自転車の荷台に取付けた中継台にかごを容易に着脱するための取付構造であって、中継台の左右の位置に前後方向に連続または間欠して延びる引掛け枠を備えており、対応するかごの底面の左右の位置に中継台の引掛け枠を引掛けるための、前後方向に連続または間欠して延びる引掛け片を備えており、中継台の引掛け枠の一方の端部側、または他方の端部側に対応するかごの引掛け片の端部側の少なくともいずれか一方にはストッパー部を有し、さらに中継台の引掛け枠の前記他方の端部近傍にストッパー部材を備え、対応するかご側に係止部を有するように構成されている。
中継台の引掛け枠とかごの引掛け片が上方から見て重ならない位置で、かごを上方から下げていき、かごの引掛け片が中継台の引掛け枠に差込まれる高さになった時にかごを前後方向に移動させてかごの引掛け片を中継台の引掛け枠に差込み、引掛け片が引掛け枠のストッパー部に当たるまで、または引掛け片のストッパー部が引掛け枠に当たるまで差込んで、かごの上下方向と差込み移動方向の動きを拘束した後、ストッパー部材の変位によってかごの引掛け片が引き抜かれる方向の動きを阻止するように作用する。
【0010】
かごの引掛け片が中継台の引掛け枠に差込まれる部分は、中継台の左右の位置(かごの底面の左右の位置)で前後方向に延びるものであり、かご固定の支軸になっている。振動によるかご底面の中央線上の撓みが大きくても、支軸近くの撓みは小さいため(かごと中継台の間の相対的な変位が無いため)、ストッパー部材を支軸近くに備えると、かごの引掛け片が引き抜かれる方向の動きを阻止するストッパー部材は、引掛け片を係止する部分の寸法が小さくても引掛け片の動きを確実に阻止するように作用する。
【0011】
また、前後方向に延びて、かごの引掛け片に差込まれる中継台の引掛け枠は、かごの底部の強度ある縁枠の近くに設けると、振動による撓みがほとんど無いために、ストッパー部材は、引掛け片を係止する部分の寸法が小さくても引掛け片の動きを確実に阻止するように作用する。
【0012】
前後左右の方向を示す表現は、中継台もしくはかごを基準にする表現であって、かごと中継台を自転車の荷台に対して90度左右に変位して取付ける場合も適用できるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自転車の荷台へのかご取付構造によれば、家庭用かごや店舗用買物かごのように底面がそれほど頑丈でない軽量の荷物かごを自転車の荷台に容易に着脱取付できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】中継台に取付けた軽量かご(店舗用買物かご等)の撓みを示す。
【図2】実施例の、軽量かご取付けのための中継台の構成を示す。
【図3】実施例の、中継台への軽量かご取付構造を示す。
【図4】実施例の、中継台への軽量かご取付部の詳細を示す。
【図5】中継台のストッパー部材の別例を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
実施例を図2〜図5に基づいて説明する。図2は軽量かご取付けのための中継台の構成を示す。図2の中継台3は、特願2011−203900で出願された(前方取付金具2aと後方取付金具2bで構成される)着脱可能な方法で自転車の荷台1に取付けられているが、従来から一般的である取付板と螺子による固定方法で荷台1に取付けるものであってもよい。
中継台3の左右の縁には、図3に示すかご4の引掛け片4cを差し込むための2つずつの引掛け枠3aが前後方向に間をおいて延びており、左右それぞれに設けられている。各引掛け枠3aの後端側にはストッパー部3bを有しており、左右とも前方側の引掛け枠3aの前端側近傍にはストッパー部材31が設けられている。
【0016】
図3は中継台への軽量かご取付構造を示し、図4は中継台への軽量かご取付部の詳細を示す。図3において、かご4の底面の左右縁枠4bの近くで、中継台3の引掛け枠3aに対応する位置にかご4の引掛け片4cが前後方向に間をおいて延びており、左右それぞれに設けられている。
図4において、中継台3の前方側の引掛け枠3aの前端側近傍に設けられているストッパー部材31は軸支部31bを中心に円弧上を変位するが、中継台3の受け部3cの膨らみによる抵抗を乗り越えて留め部31aを押し込むことによってかご4の引掛け片4cが外れる方向の動きを阻止する位置に強固に固定されることになる。またストッパー部材31の留め部31aを受け部3cから膨らみによる抵抗に抗して外した時は、軸支部31bが少しずれていることによる復元力が働くので、留め部31aが受け部3cの位置に戻らなくてもストッパー部材31は非定置の(ぶらぶら)状態にはならない。
【0017】
かご4を中継台3に取付ける手順は次の通りである。かご4を中継台3の上方で前方寄りにして、中継台3の引掛け枠3aとかご4の引掛け片4cが上方から見て重ならない位置でかご4を下げていき、かご4の引掛け片4cが中継台3の引掛け枠3aに差込まれる高さになった時にかご4を後方向に移動させてかご4の引掛け片4cを中継台3の引掛け枠3aに差込み、引掛け片4cが引掛け枠3aのストッパー部3bに当たるまで差込む。
このようにして、かご4の上下方向と差込み移動方向の動きを拘束した後、ストッパー部材31を軸支部31bを中心とする円弧上を変位させて中継台3の受け部3cに留め部31aを押し込んで固定すると、ストッパー部材31がかご4の引掛け片4cの係止部4dの前に位置して、引掛け片4cが引き抜かれる方向の動きを阻止することができる。係止部4dは引掛け片4cと直角の面になっているが、引掛け片4cの切り口のままでも良い。
また引掛け枠3aのストッパー部3bは、代わりに引掛け枠3aの他方の端部側に対応するかご4の引掛け片4cの端部に設けたストッパー部4fでも良い。この引掛け片4cの端部に設けたストッパー部4fは、前記の直角の面を有する係止片4dが兼ねることができる。
【0018】
図5は中継台のストッパー部材の別例を示す。中継台3の前方側の引掛け枠3aの前端側近傍に設けられているストッパー部材32は、ストッパー32aと留め金32bで構成されている。中継台3の側面から内部にストッパー32aをその係合爪32aaが凹部3dで係止されるまで挿入すると、引抜く方向の動きが阻止されることになる。またこの時、留め金32bの留め金ストッパー部32baが、ストッパー32aの後端面に当たっていると、これ以上挿入することもできないロック状態になる。この状態の時は、ストッパー32aの先端部32abは中継台3の側面から突出しており、ストッパー32aの先端部の側面がかご4の引掛け片4cの係止部4dの前に位置して、引掛け片4cが引き抜かれる方向の動きを阻止できることになる。
【0019】
留め金32bを、軸支部32bbを中心とする円弧上を変位させて留め金ストッパー部32baをストッパー32aの後端面から外し、ストッパー32aの後端面が補強リブのストッパー面3eに当たるまで押し込むことによって、ストッパー32aの先端部32abを中継台3の側面に一致させることができ、かご4の引掛け片4cの引き抜かれる方向の動きが可能となる。
【0020】
以上のように図4では、ストッパー部材31がかご4の引掛け片4cの係止部4dの前に位置して引掛け片4cが引抜かれる方向の動きを阻止し、図5では、ストッパー32aの先端部32abの側面がかご4の引掛け片4cの係止部4dの前に位置して引掛け片4cが引抜かれる方向の動きを阻止するものである。
振動によるかごの中央部撓み4aa、前方部撓み4abが大きくても、かご4の引掛け片4cが中継台3の引掛け枠3bに差込まれて、前後方向に延びる部分はかご取付けの支軸であり、かご4と中継台3の相対的変位のない部分であるため、かご4の引掛け片4cの係止部4dの前に位置するこのストッパー部材31やストッパー32aの部分が小さな寸法でも、引掛け片4cが引抜かれる方向の動きを充分に阻止でき、かご4は強固に固定されるといえる。
【0021】
振動によるかご4の底面4aの上下方向の撓みについて、上方向の撓みは中継台3の引掛け枠3aに差込まれたかごの引掛け片4cがより強く引掛かる方向に作用するものである。一方、下方向の撓みは引掛け片4cを外す方向に作用するものであるが、下方向の撓みに対しては中継台3とかご4の底面4aが補強のための底面リブ4eを含めて接するようになっていれば撓みが発生しないことになる。
【0022】
前後左右の方向を示す表現は、中継台もしくはかごを基準にする表現であって、かごと中継台を自転車の荷台に対して90度左右に変位して取付ける場合も適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、自転車の荷台へのかご取付構造及びかごを製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0024】
1 荷台
2a 前方取付金具
2b 後方取付金具
3 中継台
3a 引掛け枠
3b ストッパー部
3c 受け部
3d 凹部
3e 補強リブのストッパー面
31 ストッパー部材
31a 留め部
31b 軸支部
32 ストッパー部材
32a ストッパー
32aa 係合爪
32ab 先端部
32ac 操作部
32b 留め金
32ba 留め金ストッパー部
32bb 軸支部
4 かご
4a かご底面
4aa 中央部撓み
4ab 前方部撓み
4b 縁枠
4c 引掛け片
4d 係止部
4e 底面リブ
4f ストッパー部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の荷台に取付けた中継台にかごを容易に着脱するための取付構造であって、中継台の左右の位置に前後方向に連続または間欠して延びる引掛け枠を備えており、対応するかごの底面の左右の位置に中継台の引掛け枠を引掛けるための、前後方向に連続または間欠して延びる引掛け片を備えており、中継台の引掛け枠の一方の端部側、または他方の端部側に対応するかごの引掛け片の端部側の少なくともいずれか一方にはストッパー部を有し、さらに中継台の引掛け枠の前記他方の端部近傍にストッパー部材を備え、対応するかご側に係止部を有するように構成されて、
中継台の引掛け枠とかごの引掛け片が上方から見て重ならない位置で、かごを上方から下げていき、かごの引掛け片が中継台の引掛け枠に差込まれる高さになった時にかごを前後方向に移動させてかごの引掛け片を中継台の引掛け枠に差込み、引掛け片が引掛け枠のストッパー部に当たるまで、または引掛け片のストッパー部が引掛け枠に当たるまで差込んで、かごの上下方向と差込み移動方向の動きを拘束した後、ストッパー部材の変位によってかごの引掛け片が引き抜かれる方向の動きを阻止することを特徴とする自転車の荷台へのかごの取付構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107409(P2013−107409A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247439(P2011−247439)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(596085922)