説明

自転車

【課題】操縦安定性に優れた駆動輪兼操舵輪を備えた自転車の提供
【解決手段】中間歯車80は、操舵軸66を回転軸として回転可能にされている。駆動輪軸84は、操舵軸66に回転可能に支持されている。従動歯車82は、駆動輪軸84の一端に固定されている。駆動輪50は、駆動輪軸84の他端に固定されている。中間歯車80と従動歯車82とが噛み合って、操舵軸66を回転軸とする回転を、駆動輪軸84を回転軸とする回転に変換している。この中間歯車90の有効径の半径R1と、従動歯車82の有効径の半径R2と、駆動輪50が操舵軸66を中心として回転する回転半径R3と、駆動輪50の半径R4とが下記関係式を満たしている。
0.7 ≦ ((R1)・(R4))/((R2)・(R3)) ≦ 1.3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪兼操舵輪を備えた自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵輪である前輪を駆動輪とした自転車がある。その操舵輪の前輪は360°回転可能とされている。これにより、360°の任意の向きに駆動力を伝えることができる。この自転車では、後ろ向き及び斜め後方向きへの移動等、操舵の自由度が大きい。
【0003】
図4は、操舵輪である前輪を駆動輪とした従来の自転車2の正面図である。この自転車2が特開2002−337781号公報に記載されている。この自転車2は、主フレーム4の前方にヘッドラック6を備えている。ヘッドラック6は、ハンドルを備えた操舵軸8を360°回転可能に保持している。このヘッドラック6は、第一伝動チェーン10の駆動力を第二伝動チェーン12に伝える駆動伝達機構14を備えている。操舵軸8の下方先端には、前輪16が回転可能に取り付けられている。
【0004】
運転者がクランク18を漕ぐと、第一チェーンギア20が回転する。第一チェーンギア20の回転は、第一伝動チェーン10を介して駆動伝達機構14に伝えられる。駆動伝達機構14は、この駆動力をヘッドラック6の下方に往復の直線運動で伝える。ヘッドラック6の下方でこの直線運動を回転運動に変換して、第二伝動チェーン12に伝える。駆動力は、第二伝動チェーン12を介してフリーホイール22に伝えられる。フリーホイール22に伝えられた駆動力で、前輪16が回転させられている。
【0005】
この自転車2の駆動伝達機構14は、ヘッドラック6の内部に往復の直線運動をする部分を備えている。この自転車2は、この往復運動によりヘッドラック6の振動が発生しやすい。この自転車2は、凹凸のある路面ではハンドルが取られやすく操縦安定性に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−337781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5は、図4の自転車の駆動伝達機構14を改良した駆動伝達機構の部分断面が示された側面図である。この駆動伝達機構では、第一伝動チェーン10の駆動力を回転運動として前輪24に伝える。この自転車26では、駆動伝達機構14の往復直線運動する部分に代えて、回転運動として駆動力を伝える機構を備えている。主フレームは、前方にヘッドパイプ28を備えている。このヘッドパイプ28は、ハンドルを備えた操舵軸30を360°回転可能に保持している。この操舵軸30の下端には、前輪24と一体に回転する前輪軸32を回転可能に支持している。前輪軸32は、その軸線を回転軸として回転可能に支持されている。ハンドルにより操舵軸30がきられると、その方向に前輪軸32がきられて進行方向が変えられる。
【0008】
この駆動伝達機構は、第一伝動チェーン10の駆動力をギア34に伝える。このギア34は、かさ歯車36と一体とされ、ヘッドパイプ28に対して回転可能に支持されている。この駆動力は、ギア34と一体に回転するかさ歯車36から、かさ歯車38に伝えられる。このかさ歯車38は、かさ歯車40とパイプ42と一体にされている。かさ歯車38、かさ歯車40及びパイプ42は、操舵軸30に操舵軸30の軸線を回転軸として回転可能に支持されている。かさ歯車38からかさ歯車40に伝えられた駆動力は、かさ歯車44に伝えられる。このかさ歯車44は、前輪24と一体に固定されている。かさ歯車44が回転することで、前輪24が回転させられる。
【0009】
この駆動伝達機構では、従来技術で示された駆動伝達機構14の往復直線運動する部分に代えて、かさ歯車38、かさ歯車40及びパイプ42からなる縦回転体により、駆動力が前輪24に伝えられている。この駆動伝達機構は、往復直線運動をする部分を含まない。ヘッドパイプ28には、振動が発生しない。この駆動伝達装置を備えた自転車26は、操縦安定性に優れている。駆動伝達機構の構造がシンプルであり、この自転車26は、車体重量を軽量化され得る。
【0010】
この駆動伝達機構では、かさ歯車38、かさ歯車40及びパイプ42は、操舵軸30の軸線を回転軸として回転する。操舵軸30は、ハンドルの操舵によりその軸線を回転軸として回転し、進行方向が変更される。この自転車26では、かさ歯車40からかさ歯車44に駆動力が伝えられることに起因して、前輪軸32が操舵軸30を回転させる力が働く。特に静止状態から動力を加えられたときに操舵軸30を回転させる力が働きやすい。このため、ハンドルがしっかり握られていない状態で、クランクを漕ぎ出すとハンドルが、かさ歯車40の回転方向に取られる現象が生じる。この駆動伝達機構は、始動時の操縦安定性に改良の余地がある。
【0011】
本発明の目的は、操縦安定性に優れた駆動輪兼操舵輪を備えた自転車の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る自転車は、主フレーム、操舵軸、中間歯車、駆動輪軸、従動歯車及び駆動輪を備えている。この操舵軸は、その軸線を回転軸として回転可能に主フレームに支持されている。この中間歯車は、操舵軸を回転軸として回転可能にされている。この駆動輪軸は、操舵軸に支持されている。駆動輪軸は、操舵軸の軸線に垂直に交わる軸線を回転軸として回転可能にされている。この従動歯車が駆動輪軸の一端に駆動輪軸と共に回転するように固定されている。この駆動輪は、駆動輪軸の他端に駆動輪軸と共に回転するように固定されている。この中間歯車と従動歯車が噛み合って、操舵軸を回転軸とする回転を駆動輪軸の回転に変換している。この中間歯車の有効径の半径R1と、従動歯車の有効径の半径R2と、駆動輪が操舵軸を中心として回転する回転半径R3と、駆動輪の半径R4とは、下記関係式を満たしている。
0.7 ≦ ((R1)・(R4))/((R2)・(R3)) ≦ 1.3
【0013】
好ましくは、この自転車は、従動輪を備えている。この従動輪は、駆動輪軸の一端に取り付けられている。この従動輪は、駆動輪軸に対して回転可能にされている。この従動輪の接地面の上下方向位置と駆動輪の接地面の上下方向位置とは、一致させられている。好ましくは、この自伝車では、上記駆動輪が前輪とされている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る自転車では、駆動力に起因した操舵軸の回転が抑制されている。駆動伝達機構の回転により、操舵軸が回転させられることが抑制されている。この自転車は操縦安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る自転車が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の自転車の前輪と、操舵部及び駆動装置の一部分の断面とが示された側面図である。
【図3】図3(a)は図2のIII(a)矢視の模式図であり、図3(b)は図2のIII(b)矢視の模式図である。
【図4】図4は、操舵輪兼駆動輪を備えた従来の自転車が示された正面図である。
【図5】図5は、図4の自転車の駆動伝達機構を改良した駆動伝達機構の部分断面が示された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る自転車46の正面図である。図1の右向きが、この自転車46の前方向きである。図1の左向きが、自転車46の後方向きである。図1の紙面に垂直方向が、この自転車46の左右方向である。図1の上下方向がこの自転車46の上下方向である。この自転車46は、主フレーム48と、駆動輪としての前輪50と、従動輪としての前輪52と、一対の後輪54と、操舵部56と、駆動装置58とを備えている。前輪50及び前輪52は、操舵輪とされている。
【0018】
それぞれの後輪54は、主フレーム48の後方に取り付けられている。この後輪54は、主フレーム48に回転可能に取り付けられている。一方の後輪54は、主フレーム48の右側面に位置させられている。他方の後輪54は、主フレーム48の左側面に位置させられている。主フレーム48は、上方にサドル60を備えている。主フレーム48の前方には、ヘッドパイプ62が備えられている。ヘッドパイプ62は、その内部が空洞であり、円筒状である。
【0019】
操舵部56は、ハンドル64及び操舵軸66を備えている。ハンドル64は、U状の形状をしている。ハンドル64の中央部が左右方向に延びている。ハンドル64の両端部は、上方に向かって起立している。このハンドル64の両端にグリップが形成されている。操舵軸66は、丸棒状の形状をしている。ハンドル64の中央部が、操舵軸66の上方端部に固定されている。
【0020】
図2は、図1の自転車46の前輪50、52と、操舵部56及び駆動装置58の一部分の断面とが示された側面図である。操舵軸66は、図示されないベアリングを介してヘッドパイプ62に支持されている。操舵軸66は、その軸線を回転軸として回転可能とされている。図1、図2に示されるように、駆動装置58は、駆動機構68及び駆動力伝達手段69を備えている。駆動力伝達手段69は、一対のクランク70、駆動ギア72、チェーン74、従動ギア76及び駆動歯車としてのかさ歯車78を備えている。
【0021】
図1に示されるように、一方のクランク70は、主フレーム48の右側に回転可能に取り付けられている。他方のクランク70は、主フレーム48の左側に回転可能に取り付けられている。駆動ギア72が、主フレーム48に対して回転可能に取り付けられている。クランク70の回転軸と駆動ギア72との回転軸は、水平方向であり同軸である。チェーン74は、駆動ギア72と従動ギア76とに架け渡されている。
【0022】
図2に示されるように、従動ギア76及びかさ歯車78は、ヘッドパイプ62に支持されている。従動ギア76及びかさ歯車78は、水平方向を回転軸にして回転可能に支持されている。従動ギア76及びかさ歯車78とは、その回転中心を同軸にして一体とされている。従動ギア76及びかさ歯車78の回転軸は、操舵軸66の軸線に垂直に交差している。
【0023】
駆動機構68は、中間歯車80、従動歯車としてのかさ歯車82及び駆動輪軸84を備えている。この中間歯車80は、かさ歯車86、パイプ88及びかさ歯車90を備えている。このかさ歯車86、パイプ88及びかさ歯車90は、一体とされている。パイプ88の上方には、かさ歯車86が固定されている。パイプ88の下方には、かさ歯車90が固定されている。かさ歯車86は、かさ歯車78の下方に位置している。かさ歯車86は、かさ歯車78と噛み合っている。このパイプ88の中空には操舵軸66が通されている。この中間歯車80は、操舵軸66に支持されている。中間歯車80は、操舵軸66を回転軸にして回転可能にされている。
【0024】
駆動輪軸84は、操舵軸66の下端に支持されている。操舵軸66は、駆動輪軸84の両端の間を支持している。かさ歯車82は、駆動輪軸84の一端に固定されている。かさ歯車82及び駆動輪軸84は、駆動輪軸84の軸線を回転軸として回転可能とされている。このかさ歯車82は、かさ歯車90と噛み合っている。
【0025】
図1に示されるように、前輪50は、ホイール92及びタイヤ94を備えている。このホイール92は、駆動輪軸84の他端に固定されている。このホイール92及びタイヤ94は、駆動輪軸84と共に、駆動輪軸84の軸線を回転軸として回転可能とされている。
【0026】
図2に示されるように、この自転車46は、従動輪としての前輪52、従動輪軸96及びベアリングケース98を備えている。前輪52は、図示されないが、前輪50と同様にホイール及びタイヤを備えている。前輪52のホイールは、従動輪軸96の一端に固定されている。従動輪軸96の他端は、ベアリングケース98にベアリングを介して取り付けられている。ベアリングケース98は、駆動輪軸84の一端に固定されている。
【0027】
この駆動輪軸84と従動輪軸96との軸線は一直線上に位置している。前輪52及び従動輪軸96は、従動輪軸96の軸線を回転軸として回転可能されている。この自転車46では、前輪50の外径と前輪52の外径は等しくされている。この従動輪の接地面の上下方向位置と駆動輪の接地面の上下方向位置とは、一致している。左右方向において、操舵軸66は、前輪50と前輪52との中央に位置している。
【0028】
図2の両矢印R1は、かさ歯車90のピッチ円の半径である。両矢印R2は、かさ歯車82のピッチ円の半径である。自転車46では、かさ歯車90の歯と歯車82の歯との間で実際に噛み合いにあずかる歯のタケ、即ち有効歯タケが定まっている。図2の点P2は、この有効歯タケの歯タケ方向の中点が示されている。かさ歯車90の有効径は、この中点P2からかさ歯車90の回転中心までを半径、即ちR1を半径とする径として求められる。同様にして、かさ歯車82の有効径は、中点P2からかさ歯車82の回転中心までを半径、即ちR2を半径とする径として求められる。このかさ歯車90及びかさ歯車82では、ピッチ円の径が歯車の有効径である。
【0029】
点P1は、前輪50の接地点を示している。この両矢印R3は、操舵軸66の軸線から点P1までの距離を表している。両矢印R3は、前輪50が操舵軸66を中心として回転する半径である。両矢印R4は、操舵軸66の軸線から点P1までの距離を表している。両矢印R4は、前輪50の回転中心から点P1までの距離を表している。この両矢印R4は、前輪50の半径である。この前輪50が左右方向に幅をもって接地する場合には、接地する左右方向幅の中点が点P1とされる。この前輪50が前後方向に幅をもって接地する場合には、接地する前後方向幅の中点が点P1とされる。
【0030】
この自転車46では、かさ歯車90のピッチ円半径R1と、かさ歯車82のピッチ円半径R2と、前輪50の操舵軸66を中心とする回転半径R3と、前輪50の半径R4とが以下の関係式を満たすように構成されている。
(R1)・(R4)=(R2)・(R3)
【0031】
この自転車46では、前輪52の操舵軸66を中心とする回転半径は、前輪50の操舵軸66を中心とする回転半径R3と等しくされている。前輪52の外径は、前輪50の半径R4と同じにされている。この自転車46では、前輪52の接地面の前後方向位置と前輪50の接地面の前後方向位置との中点が、操舵軸66の軸線上に位置している。
【0032】
図1の自転車46で、クランク70が運転者により漕がれる。クランク70が回転させられる。クランク70の回転により、駆動ギア72が回転させられる。駆動ギア72の回転は、チェーン74により、従動ギア76に伝えられる。図2に示されるように、従動ギア76はフリーホイール100を備えている。このフリーホイール100は、ラチェット構造を備えている。このフリーホイール100により、従動ギア76の回転は一方の回転向きのみがかさ歯車78に伝えられる。他方の回転向きは、かさ歯車78に伝えられない。
【0033】
この従動ギア76が一方の回転向きに回転させられると、かさ歯車78が水平方向を回転軸として回転させられる。このかさ歯車78の回転により、かさ歯車86が回転させられる。かさ歯車86が回転すると、一体のパイプ88及びかさ歯車90が回転させられる。かさ歯車86、パイプ88及びかさ歯車90からなる中間歯車80は、操舵軸66を回転軸として回転させられる。
【0034】
図3(a)は、図2のIII(a)矢視の模式図である。図3(a)の点Q1は、操舵軸66の回転中心を示している。かさ歯車90が点Q1を回転中心として回転する。矢印F1は、かさ歯車90がかさ歯車82に伝える回転接線方向の力を示している。この歯車90の回転により生じるモーメントM1は、以下の式で表される。
(M1) = (F1)・(R1)
【0035】
図3(b)は、図2のIII(b)矢視の模式図である。図3(b)の点Q2は、駆動輪軸84の回転中心を示している。かさ歯車90から力F1で回転させられて、駆動輪軸84に発生する回転モーメントM2は、以下の式で表される。
(M2) = (F1)・(R2)
このかさ歯車82の回転モーメントM2により、駆動輪軸84及び前輪50が回転させられる。
【0036】
この回転モーメントM1の大きさと回転モーメントM2の大きさとの間に、以下の式の関係が成り立っている。
(M1) = ((R1)/(R2))・(M2)
【0037】
図3(a)の矢印F2は、点Q1を回転中心とする回転接線方向の力を示している。この力F2は、前輪50が回転することにより、前輪50が地面から受ける力である。点P1において、この回転モーメントM2は、以下の式で表される。
(M2) = (F2)・(R4)
このとき、前輪50が駆動輪軸84を回転させる方向に働く回転モーメントM3は、以下の式で表される。
(M3) = (F2)・(R3)
回転モーメントM3の大きさと回転モーメントM2との大きさとの間に、以下の式の関係が成り立っている。
(M3) = ((R3)/(R4))・(M2)
【0038】
この自転車46では、前述のように、以下の式を満たしている。
(R1)・(R4)=(R2)・(R3)
この式は、以下の式で表される。
(R1)/(R2)=(R3)/(R4)
即ち、前述の回転モーメントM1の大きさと、回転モーメントM3の大きさとは等しい。
【0039】
かさ歯車82が駆動輪軸84の一端に固定され、前輪50が駆動輪軸84の他端に固定されている。この駆動輪軸84は、かさ歯車82と前輪50との間の部分を操舵軸66に支持されている。これにより、回転モーメントM1の回転向きと回転モーメントM3の回転向きとは逆向きである。この自転車46では、回転モーメントM1と回転モーメントM3とが釣り合っている。この自転車46では、操舵軸66を作用する回転モーメントM1とM3とが互いに打ち消し合っている。
【0040】
これにより、駆動輪軸84が回転させられることが抑制されている。静止状態から駆動力を伝えられたときに、駆動輪軸84が回転させられることが抑制されている。これにより、駆動力に起因して操舵軸66が回転させられることが抑制されている。以下の式を満たすことで、駆動力に起因する操舵軸66の回転を抑制する効果が得られる。
0.7 ≦ ((R1)・(R4))/((R2)・(R3)) ≦ 1.3
この操舵軸66の回転を抑制する観点から、以下の式を満たすことが好ましい。
0.8 ≦ ((R1)・(R4))/((R2)・(R3)) ≦ 1.2
更に、以下の式を満たすことがより好ましい。
0.9 ≦ ((R1)・(R4))/((R2)・(R3)) ≦ 1.1
【0041】
図1のハンドル64が、運転者によりきられる。ハンドル64の回転にともなって、操舵軸66が回転する。操舵軸66の回転により、前輪50及び前輪52の進行方向が変えられる。これにより、自転車46は走行向きが変えられる。この自転車46では、駆動力を加えられたときに操舵軸66が回転させられることが抑制されている。ハンドル64を握る力が弱くても、ハンドル64がとられることが抑制されている。この自転車46は、ハンドル64を握る力が軽減されている。
【0042】
この自転車46では、前輪50が駆動輪兼操舵輪である。ハンドル64をまわして、前輪50及び前輪52の進行向きが直進向きから斜め前方に変えられると、自転車46は前進しながら旋回させられる。前輪50及び前輪52の進行向きが直進向きから斜め後方に変えられると、自転車46は後退しながら旋回させられる。前輪50及び前輪52の進行向きが直進向きから180°変えられると、自転車46は後退させられる。この様にこの自転車46は小回りに適している。この自転車46の操舵及び駆動の構成は、身障者及び高齢者のための車椅子にも適している。本発明に係る自転車には車椅子も含まれる。
【0043】
フリーホイール100は、従動ギア76の一方の回転向きの回転のみを、かさ歯車78に伝える。従動ギア76の他方の回転向きの回転は、フリーホイール100によりかさ歯車78に伝えられないように構成されている。これにより、前輪50が回転中にギア72及びクランク70を静止させた状態で、自転車46が走行させられる。
【0044】
自転車46では、互いに回転軸が直交する回転の伝達手段として、かさ歯車が用いられている。互いに回転軸が直交する回転の伝達手段であれば、かさ歯車に限られない。平歯車が用いられてもよい。かさ歯車では、すぐばかさ歯車、はすばかさ歯車、まがりばかさ歯車及びハイポイドギアのいずれであってもよい。まがりばかさ歯車は、高速度で静かな回転運動が可能であり、好ましい。
【0045】
この自転車46では、前輪50及び前輪52が接地する。左右方向において、操舵軸66は、前輪50と前輪52との中央に位置してしているので、自転車46は操縦安定性に優れる。図1の自転車46では、前輪50が駆動輪兼操舵輪とされている。後輪54を駆動輪兼操舵輪としてもよい。後輪54を操舵輪とする自転車では、前方のハンドル64の操舵を後方の操舵輪に伝える操舵力伝達機構が設けられる。
【0046】
図1の自転車46は、クランク70により駆動する。このクランク70は、足で回転させられる。クランクは、主フレーム48の上方に設置されて手動クランクとしてもよい。人力の駆動に代えてクランクがモータにより駆動されてもよい。モータは、駆動力伝達手段69に駆動力を与える。このモータの軸に取り付けられたギアが中間歯車80に噛み合って駆動力を伝えてもよい。また、このモータが直接に中間歯車80を回転駆動してもよい。
【0047】
図示されないが、自転車の主フレームの前方左右及び後方左右の4箇所にキャスターを備えて、この駆動輪兼操舵輪を設けてもよい。キャスターは、進行方向が自由に変えられる車輪である。例えば、主フレームの前方左右のキャスターと後方左右のキャスターとの中間に駆動輪兼操舵輪を設けてもよい。この自転車は、主フレームの前後方向の向きに関わらず、どの方向へも移動できる。前方左右のキャスターと後方左右のキャスターとの中央に駆動輪兼操舵輪を設けた自転車では、駆動輪兼操舵輪の進行方向に360°いずれの方向にも直線的な移動が可能である。この自転車は更に小回りが効き、車椅子に好適である。
【0048】
この実施形態で示されるように、本発明に係る自転車では、図5の駆動伝達機構を備えた自転車に比べ、操縦安定性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上説明されたこの駆動輪兼操舵輪は、車椅子を含む自転車に適用されうる。
【符号の説明】
【0050】
46・・・自転車
48・・・主フレーム
50・・・前輪
52・・・前輪
54・・・後輪
56・・・操舵部
58・・・駆動装置
60・・・サドル
62・・・ヘッドパイプ
64・・・ハンドル
66・・・操舵軸
68・・・駆動機構
69・・・駆動力伝達手段
70・・・クランク
72・・・駆動ギア
74・・・チェーン
76・・・従動ギア
78・・・かさ歯車
80・・・中間歯車
82・・・かさ歯車
84・・・駆動輪軸
86・・・かさ歯車
88・・・パイプ
90・・・かさ歯車
92・・・ホイール
94・・・タイヤ
96・・・従動輪軸
98・・・ベアリングケース
100・・・フリーホイール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主フレーム、操舵軸、中間歯車、駆動輪軸、従動歯車及び駆動輪を備えており、
この操舵軸がその軸線を回転軸として回転可能に主フレームに支持されており、
この中間歯車が操舵軸を回転軸として回転可能にされており、
この駆動輪軸が操舵軸に支持されて操舵軸の軸線に垂直に交わる軸線を回転軸として回転可能にされており、
この従動歯車が駆動輪軸に駆動輪軸と共に回転するように固定されており、
この駆動輪が駆動輪軸に駆動輪軸と共に回転するように固定されており、
この駆動輪軸が従動歯車と駆動輪との間で操舵軸に支持されており、
この中間歯車と従動歯車が噛み合って、操舵軸を回転軸とする回転を駆動輪軸の回転に変換しており、
この中間歯車の有効径の半径R1と、従動歯車の有効径の半径R2と、駆動輪が操舵軸を中心として回転する回転半径R3と、駆動輪の半径R4とが下記関係式を満たしている自転車。
0.7 ≦ ((R1)・(R4))/((R2)・(R3)) ≦ 1.3
【請求項2】
従動輪を備えており、
この従動輪が上記駆動輪軸の一端に取り付けられており、この駆動輪軸に対して回転可能にされており、
この従動輪の接地面の上下方向位置と駆動輪の接地面の上下方向位置とが一致させられている請求項1に記載の自転車。
【請求項3】
上記駆動輪が前輪とされている請求項1又は2に記載の自転車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−254241(P2010−254241A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109639(P2009−109639)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(500444243)日本ロボティクス株式会社 (5)
【出願人】(598026851)株式会社カワムラサイクル (42)