説明

舗装用アスファルトおよびその製造方法

【課題】耐流動性および耐ひび割れ性に優れた舗装用アスファルトを提供する。
【解決手段】(1)25℃における針入度(1/10mm)が200以上、軟化点が20〜50℃、120℃における動粘度が100〜400mm/sの性状を有するストレートアスファルト50〜70質量%、(2)原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも一つを含む残油を、原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分を接触改質して得られるライトリフォーメートを溶剤として抽出処理して得られる、軟化点が100〜200℃、アスファルテン含有量が40〜80質量%の性状を有する溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)20〜40質量%、および(3)流動接触分解装置(FCC)から得られる残油であって、引火点が80〜190℃、50℃における動粘度が20〜100mm/s、芳香族分が10〜60質量%の性状を有するクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%からなる舗装用アスファルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装の長期供用性に優れた舗装用アスファルトおよびその製造方法に関するものである。具体的には、耐流動性や耐ひび割れ性に優れた舗装用アスファルトおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舗装用アスファルトには、原油を蒸留して製造した25℃における針入度(1/10mm)が40〜100のストレートアスファルトが一般的に使われているが、アスファルト舗装を取り巻く状況の変化として、アスファルト舗装のストック増大とコスト縮減の要求から舗装供用寿命を出来るだけ長く延ばすため、耐流動性や耐ひび割れ性に優れた舗装用アスファルトが要求されている。
特許文献1(特開2001−262157号公報)には、アスファルト舗装の破損原因であるわだち掘れ、疲労ひびわれ、低温ひび割れを起こさない良好な供用可能温度を有することを目的として、特殊な原油混合物を減圧蒸留して得た残油を含む、25℃における針入度(1/10mm)が45以上71以下、かつ180℃における動粘度が90mm/s以下となるように調整したストレートアスファルトの製造方法が開示されている。
また、わだち掘れを改善するため、原油を蒸留して得られた減圧残油を、更に200〜300℃の加熱下で空気を数時間吹き込んで製造する、いわゆるセミブローンアスファルトが提案されている(非特許文献1参照)。
しかしながら、これらの製造方法は特殊な原油を使用する、あるいは蒸留操作に加えて煩雑なブローイング操作(減圧残油を200〜300℃の加熱下で、空気を数時間吹き込む操作)が必要という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−262157号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】多田、伊藤,「アスファルト」,(社)日本アスファルト協会,1979年,Vol.23,No.157,p.41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、セミブローニング等の煩雑な操作を行わず、アスファルテン含有量の高い溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ) を25℃における針入度(1/10mm)が200以上のストレートアスファルトにブレンドすることで、耐流動性および耐ひび割れ性に優れた、25℃における針入度が10〜100の舗装用アスファルトを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、前記課題を解決するため、舗装用アスファルトおよびその製造方法について鋭意検討した結果、特定の性状を有する3種の基材を混合することにより、耐流動性および耐ひび割れ性に優れた、25℃における針入度が10〜100のアスファルトの製造方法を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、[1](1)25℃における針入度(1/10mm)が200以上、軟化点が20〜50℃、120℃における動粘度が100〜400mm/sの性状を有するストレートアスファルト50〜70質量%、(2)原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも一つを含む残油を、原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分を接触改質して得られるライトリフォーメートを溶剤として抽出処理して得られる、軟化点が100〜200℃、アスファルテン含有量が40〜80質量%の性状を有する溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)20〜40質量%、および(3)流動接触分解装置(FCC)から得られる残油であって、引火点が80〜190℃、50℃における動粘度が20〜100mm/s、芳香族分が10〜60質量%の性状を有するクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%からなることを特徴とする舗装用アスファルトに関する。
【0008】
また本発明は、[2]25℃における針入度(1/10mm)が10〜100、軟化点が44〜50℃、60℃における粘度が150Pa・s以上の性状を有する前記[1]に記載の舗装用アスファルトに関する。
【0009】
また本発明は、[3]前記[1]に記載のストレートアスファルト50〜70質量%および前記[1]に記載のクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%を混合して25℃における針入度(1/10mm)が250以上、120℃における動粘度が100〜250mm/sの混合基材を得、ついで該混合基材に前記[1]に記載の溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)20〜40質量%を混合することを特徴とする舗装用アスファルトの製造方法に関する。
【0010】
また本発明は、[4]前記[1]に記載の溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)20〜40質量%および前記[1]に記載のクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%を混合して200℃における粘度が200〜600mPa・sの混合基材を得、ついで該混合基材に前記[1]に記載のストレートアスファルト50〜70質量%を混合することを特徴とする舗装用アスファルトの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定の性状を有するストレートアスファルト、所定の性状を有する脱れきピッチ(SDAピッチ) 、および所定の性状を有するクラリファイドオイルを所定量混合することで、耐流動性および耐ひび割れ性に優れた25℃における針入度が10〜100の舗装用アスファルトを提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の舗装用アスファルト係るストレートアスファルトは、25℃における針入度(1/10mm)が200以上、好ましくは250以上、軟化点が20〜50℃、好ましくは25〜35℃、120℃における動粘度が100〜400mm/s、好ましくは150〜300mm/sの性状を有するものである。
ストレートアスファルトの25℃における針入度が上記範囲を逸脱する場合は、舗装用アスファルトの耐流動が低下するため好ましくない。軟化点が上記範囲を逸脱する場合は、舗装用アスファルトの耐ひび割れ性が劣るため好ましくない。120℃における動粘度が上記範囲を逸脱する場合は、舗装用アスファルトの耐流動性が低下するため好ましくない。
なお、ここでいう25℃における針入度(1/10mm)、軟化点、120℃における動粘度は、JIS K2207「石油アスファルト」に基づき求められる値である。
【0013】
本発明に用いられるストレートアスファルトは、原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油等から製造することができる。
当該ストレートアスファルトを得るための原油としては、前述の性状を有するストレートアスファルトが得られればどんな種類の原油でもよい。具体的には、パラフィン基原油とナフテン基原油の中間に位置する中間基原油およびナフテン基原油が好ましく、例えばアラビアンライト原油、イスムス原油、イラニアンヘビー原油、イラニアンライト原油、バチャケロ原油、ディアファナ原油、フート原油、クウェート原油、ラタウェー原油、アルライアン原油、エオシン原油、ソリューシュ原油が挙げられ、これらの原油は、単独でも、混合して用いることもできる。
また、前記所定のストレートアスファル性状を満足しさえすれば残油以外の他のアスファルト基材を配合して本発明に係るストレートアスファルトとしても良い。
【0014】
本発明の舗装用アスファルトを得るためには、舗装用アスファルト全量基準で、ストレートアスファルトを50〜70質量%、好ましくは55〜65質量%、より好ましくは50〜60質量%配合する。ストレートアスファルトの配合量が50質量%未満の場合は、CLO配合量が増加し施工時発煙する等の点で好ましくない。一方、70質量%を越える場合は、SDAピッチ配合量が低下することにより耐流動性の点で好ましくない。
【0015】
本発明に用いられる溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)は、軟化点が100〜200℃、好ましくは120〜180℃、アスファルテン含有量が40〜80質量%、好ましくは50〜75質量%の性状を有するものである。
当該SDAピッチの軟化点が上記範囲を逸脱する場合は、舗装用アスファルトの耐流動性が低下するため好ましくない。また、SDAピッチ中のアスファルテン含有量が上記範囲を逸脱する場合は、舗装用アスファルトの耐流動性が低下するため好ましくない。
なお、ここでいう軟化点とは、JIS K2207「石油アスファルト‐軟化点試験方法(環球法)」により測定した値である。また、アスファルテンは、石油学会規格JPI−5S−22−83「アスファルトのカラムクロマトグラフィ−による組成分析法」により測定した値である。
【0016】
本発明に係る溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)は、原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも一つを含む残油を、原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分を接触改質して得られるライトリフォーメートを溶剤として抽出処理することによって得られる。
前述の残油は、原油の精製工程において用いられる常圧蒸留装置によって原油を常圧蒸留することにより分離された常圧蒸留残油、および/または、当該常圧蒸留残油をさらに減圧蒸留装置によって減圧蒸留することにより分離された減圧蒸留残油を用いる。なお、本発明に係る残油は、常圧蒸留残油であってもよいし、減圧蒸留残油であってもよいし、常圧蒸留残油と減圧蒸留残油との混合物であってもよい。
【0017】
前述のライトリフォーメートは、以下の方法で製造されることが好ましい。まず、原油を常圧蒸留装置によって分留して、ナフサ留分(主に30〜230℃の留分)を得る。ナフサ留分は、常圧蒸留装置によって軽質ナフサ留分(例えば沸点30〜90℃相当)と重質ナフサ留分(例えば沸点80〜180℃相当)とに予め分留して、その後水素化精製(水素化脱硫処理)しても良いし、水素化精製(水素化脱硫処理)装置でナフサ留分を処理した後、軽質ナフサと重質ナフサに分留しても良い。続いて、接触改質装置によって重質ナフサ(主として沸点80〜180℃)を改質して芳香族系炭化水素を主体とするリフォーメートとする。その後、精留装置によってリフォーメートを、炭素数5の炭化水素を主成分とするライトリフォーメートと、C6+留分とに分離する。C6+留分は、炭素数6以上の芳香族系炭化水素を主成分とするものであり、他に炭素数6以上の飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、及びナフテン系炭化水素などの成分を含むものである。ライトリフォーメート及びC6+留分に含まれる各成分は、例えば、GC(ガスクロマトグラフ)分析(JIS K2536「石油製品‐成分試験方法」)などにより求めることができる。ライトリフォーメートとC6+留分との分離条件は、ライトリフォーメート中にベンゼンが含まれないように分離できれば特に限定されるものではないが、例えばライトリフォーメート中のC6+留分が30容量%以下となるように適宜調整される。このようにして得られたライトリフォーメートは、ブタンを6〜12容量%、ペンタンを60〜70容量%、ヘキサンを10〜30容量%含むものである。なお、ここでいうブタン、ペンタン、ヘキサンとは、各々炭素数4、5、6のノルマルパラフィンとイソパラフィンの混合物であってもよい。
【0018】
本発明に係る溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)は、前述の残油を前述のライトリフォーメートを溶剤として抽出処理することにより得られる。抽出処理する際には、溶剤抽出装置のミキサーなどの混合装置によって、残油と溶剤とを混合してから、溶剤の臨界圧力以上で臨界温度以下の一定の条件に保たれている溶剤抽出装置のアスファルテン分離槽に供給される。アスファルテン分離槽内では、残油に含まれるアスファルトが沈殿し、沈殿物はアスファルテン分離槽の底部から連続的に抜出され、ストリッパーによってわずかに含まれる溶剤が除去されて、溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)とされる。なお、アスファルテン分離槽の上部から抜き出された油は脱れき油(DAO:Deasphalted Oil)として利用される。
【0019】
ライトリフォーメートを溶剤として残油を抽出処理する際には、抽出温度を150℃〜200℃とし、溶剤と残油との流量比(溶剤/残油)を5/1〜8/1として行うことが好ましい。残油の抽出温度は、残油の性状に応じて適宜決定されるものであって、溶剤脱れきピッチの軟化点が一定となるように調整される。抽出温度が150℃未満であると、溶剤脱れきピッチの軟化点が200℃を超え、溶剤抽出装置内から溶剤脱れきピッチを取り出すことが困難となり、溶剤脱れきピッチの生産性が低下する。抽出温度が200℃を超えると、溶剤脱れきピッチの軟化点が100℃未満となり、SDAピッチ中のアスファルテン分が低下し好ましくない。また、溶剤と残油との流量比(溶剤/残油)が5/1未満であると、溶剤が少ないため、アスファルテン分離槽での抽出効率が低下し、SDAピッチ中のアスファルテン分が低下し好ましくない。溶剤と残油との比(溶剤/残油)が8/1を超えると、必要以上の溶剤を循環させることで、溶剤抽出装置のエネルギー消費量が増大し、非経済的な運転となり好ましくない。このようにして軟化点が100〜200℃、アスファルテンが40〜80質量%である溶剤脱れきピッチを得ることができる。
【0020】
本発明の舗装用アスファルトを得るためには、舗装用アスファルト全量基準で、溶剤脱れきピッチを20〜40質量%、好ましくは20〜35質量%、より好ましくは20〜30質量%配合する。溶剤脱れきピッチの配合量が20質量%未満の場合は、耐流動性の点で好ましくない。一方、配合量が40質量%を超える場合は、ひび割れ性の点で好ましくない。
【0021】
本発明に用いられるクラリファイドオイル(CLO)は、流動接触分解装置(FCC)にて、原油の精製工程において得られる重質軽油、減圧軽油、脱アスファルト油、熱分解油、常圧残油などの高沸点留分を原料として固体酸触媒を用いて分解し、LPG、接触分解ガソリン、接触分解灯油、接触分解軽油などの軽質油に分留した後の残油として得られる。原料および流動接触分解装置(FCC)の運転条件によりCLOの性状は異なるが、本発明に係るクラリファイドオイル(CLO)は、引火点は80〜190℃、好ましくは85〜185℃、50℃における動粘度は20〜100mm/s、好ましくは25〜90mm/s、芳香族分は10〜60質量%、好ましくは20〜55質量%の性状を有するものである。
【0022】
CLOの引火点が、上記範囲を逸脱する場合は、舗装工事の軽質留分が蒸発し引火の危険があるため好ましくない。また、50℃における動粘度が上記範囲を逸脱する場合は、ブレンド性が低下するため好ましくない。さらに、芳香族分が上記範囲を逸脱する場合は、SDAピッチの相溶性が低下するため好ましくない。
なお、ここでいう引火点とは、JIS K2265−4「引火点の求め方‐第4部:クリーブランド開放法」に基づき求められる値であり、50℃における動粘度とは、JIS K2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に基づき求められる値であり、芳香族分とはJPI−5S−22−83「アスファルトのカラムクロマトグラフィーによる組成分析」に基づき求められる値である。
【0023】
本発明の舗装用アスファルトを得るためには、舗装用アスファルト全量基準で、クラリファイドオイル(CLO)を5〜15質量%、好ましくは5〜12質量%、より好ましくは5〜10質量%配合する。クラリファイドオイルの配合量が5質量%未満の場合は、SDAピッチの相溶性の点で好ましくない。一方、配合量が15質量%を超える場合は、施工時の発煙性の点で好ましくない。
【0024】
本発明の舗装用アスファルトは、好ましくは25℃における針入度(1/10mm)が10〜100、より好ましくは60〜100であり、軟化点は好ましくは44〜50℃であり、60℃における粘度は好ましくは150Pa・s以上の性状を有する。25℃における針入度(1/10mm)、軟化点および60℃における粘度が所定の範囲を満たすことにより、耐流動性および耐ひび割れ性に優れた舗装用アスファルトを得ることができる。
なお、ここでいう25℃における針入度(1/10mm)、軟化点、120℃における動粘度は、JIS K2207「石油アスファルト」に基づき求められる値である。
【0025】
本発明の舗装用アスファルトの製造方法については、所定の舗装用アスファルトが得られる限りは、上記3成分の配合、混合の方法は適宜に慣用の手段を採用することができる。
【0026】
例えば、上述の所定のストレートアスファルトを50〜70質量%(舗装用アスファルト全量基準)と上述の所定のクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%(舗装用アスファルト全量基準)を混合して、25℃における針入度(1/10mm)が250以上、120℃における動粘度が100〜250mm/sの混合基材を得た後、当該混合基材に上述の所定の溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ) 20〜40質量%(舗装用アスファルト全量基準)を混合して、舗装用アスファルトを製造することが好ましい。ストレートアスファルトとクラリファイドオイル(CLO)をまず混合し、所定の性状を有する混合基材とした後、該混合基材に溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)を混合するので、所望の性状を有する舗装用アスファルトを得るために溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)の混合量を調整することができ、本発明の舗装用アスファルトの製造が容易となる。
なお、ここでいう25℃における針入度(1/10mm)、120℃における動粘度は、JIS K2207「石油アスファルト」に基づき求められる値である。
【0027】
また、上述の所定の溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ) 20〜40質量%(舗装用アスファルト全量基準)および上述の所定のクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%(舗装用アスファルト全量基準)を混合して、200℃における粘度が200〜600mPa・sの混合基材を得た後、当該混合基材に上述の所定のストレートアスファルト50〜70質量%(舗装用アスファルト全量基準)を混合して、舗装用アスファルトを製造することも好ましい。溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)とクラリファイドオイル(CLO)をまず混合し、所定の性状を有する混合基材とした後、該混合基材にストレートアスファルトを混合するので、所望の性状を有する舗装用アスファルトを得るためにストレートアスファルトの混合量を調整することができ、本発明の舗装用アスファルトの製造が容易となる。
なお、ここでいう200℃における粘度は、石油学会法 JPI−5S−54−99「アスファルト−回転粘度計による粘度試験方法」に基づき求められる値である。
【0028】
前述の舗装用アスファルトの製造方法以外に、ストレートアスファルト、溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)、クラリファイドオイル(CLO)を一緒に混合して、舗装用アスファルトを製造してもよいし、ストレートアスファルトと溶剤脱れきピッチを混合して混合基材とした後、当該混合基材にCLOを混合して舗装用アスファルトを製造してもよい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0030】
(基材)
基材として、表1記載の減圧蒸留残油からなるストレートアスファルト1〜6、減圧蒸留残油をライトリフォーメートで抽出処理して得られるSDAピッチ1〜9、流動接触分解装置(FCC)の残油であるCLO1〜6を用意した。なお、基材の性状は、処理油の種類、処理条件の変更等で調整した。
【0031】
【表1】

【0032】
(実施例1)
ストレートアスファルト1、SDAピッチ1、CLO1を混合して舗装用アスファルト1を得て、当該舗装アスファルト1の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0033】
(実施例2)
ストレートアスファルト2、SDAピッチ2、CLO2を混合して舗装用アスファルト2を得て、当該舗装アスファルト2の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0034】
(実施例3)
ストレートアスファルト3、SDAピッチ3、CLO3を混合して舗装用アスファルト3を得て、当該舗装アスファルト3の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0035】
(実施例4)
ストレートアスファルト4とCLO4を混合し、25℃における針入度400、軟化点20℃、120℃における動粘度130mm/sの混合基材を得、ついでSDAピッチ4を混合基材に混合して舗装用アスファルト4を得て、当該舗装アスファルト4の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0036】
(実施例5)
ストレートアスファルト5とCLO5を混合し、25℃における針入度400、軟化点25℃、120℃における動粘度160mm/sの混合基材を得、ついでSDAピッチ5を混合基材に混合して舗装用アスファルト5を得て、当該舗装アスファルト5の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0037】
(実施例6)
ストレートアスファルト4とCLO6を混合し、25℃における針入度350、軟化点30℃、120℃における動粘度190mm/sの混合基材を得、ついでSDAピッチ6を混合基材に混合して舗装用アスファルト6を得て、当該舗装アスファルト6の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0038】
(実施例7)
SDAピッチ3とCLO3を混合し、25℃における針入度18、軟化点95℃、200℃における粘度が470mPa・sの混合基材を得、ついでストレートアスファルト3を混合基材に混合して舗装用アスファルト7を得て、当該舗装アスファルト7の耐流動性および耐ひび割れ性を後述の試験法にて評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0039】
(実施例8)
SDAピッチ5とCLO5を混合し、25℃における針入度10、軟化点90℃、200℃における粘度が420mPa・sの混合基材を得、ついでストレートアスファルト3を混合基材に混合して舗装用アスファルト8を得て、当該舗装アスファルト8の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0040】
(実施例9)
SDAピッチ1とCLO1を混合し、25℃における針入度20、軟化点85℃、200℃における粘度が360mPa・sの混合基材を得、ついでストレートアスファルト1を混合基材に混合して舗装用アスファルト9を得て、当該舗装アスファルト9の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表2に示す。
【0041】
実施例1〜9のいずれの舗装用アスファルトも、耐流動性および耐ひび割れ性において優れた特性を示した。
【0042】
【表2】

【0043】
(比較例1)
針入度が小さく、120℃における動粘度が大きいストレートアスファルト6、軟化点が高く、アスファルテン含有量が多いSDAピッチ7、CLO5を混合して舗装用アスファルト10を得て、当該舗装アスファルト10の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表3に示す。舗装用アスファルトの性状は実施例と同等であっても、舗装用アスファルト10の耐流動性および耐ひび割れ性のいずれにおいても、不十分な性能であった。
【0044】
(比較例2)
ストレートアスファルト4、軟化点が低く、アスファルテン含有量が少ないSDAピッチ8、CLO4を混合して舗装用アスファルト11を得て、当該舗装アスファルト11の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表3に示す。舗装用アスファルトの性状は実施例と同等であっても、舗装用アスファルト11の耐流動性および耐ひび割れ性のいずれにおいても、不十分な性能であった。
【0045】
(比較例3)
ストレートアスファルトを用いずに、SDAピッチ9およびCLO4のみを混合して舗装用アスファルト12を得て、当該舗装アスファルト12の耐流動性および耐ひび割れ性を評価した。各基材の混合割合、舗装用アスファルトの性状、および評価結果を表3に示す。舗装用アスファルトの性状は実施例と同等であっても、舗装用アスファルト12は耐ひび割れ性において不十分な性能であった。
【0046】
【表3】

【0047】
なお、本願実施例及び比較例の耐流動性はホイールトラッキング試験による動的安定度により評価し、耐ひび割れ性は曲げ試験により評価した。
ホイールトラッキング試験および曲げ試験は、それぞれ、社団法人 日本道路協会「舗装試験法便覧」の3−7−3「ホイールトラッキング試験方法」、同3−7−5「曲げ試験方法」に記載の方法で行った。以下に試験法の概略を記す。
【0048】
(ホイールトラッキング試験)
アスファルトと骨材を加熱混合したアスファルト混合物を所定の型枠(300×300×50mm)に入れ整形した供試体を60℃の恒温室で規定荷重(686±10N)の小型車輪を往復させ、45分および60分における変形量(わだち掘れ量)を測定し、動的安定度(回/mm)を求め、混合物のわだち掘れに対する抵抗性を評価する。
動的安定度(DS:Dynamic Stability)の値は大きいほど、高温時における加熱アスファルト混合物の耐流動性の良いことを示す。一般的には、わだち掘れが起こらないためには動的安定度が500以上である必要がある。
【0049】
(曲げ試験)
アスファルトと骨材を加熱混合したアスファルト混合物を所定の型枠(300×300×50mm)に入れ、整形した後、300×100×50mmの形状の供試体を切り出して供試体を作製し、−10℃で養生後、供試体を載荷試験機にセットし、載荷速度50mm/minで中央部に集中載荷する。最大荷重を示して供試体が破断するまで載荷を行い、荷重と変形量を求め、破断時(最大荷重時)の曲げ強度および破断時のひずみを求める。
一般的に、破断時の曲げ強度およびひずみの値は大きいほど、ひび割れに対する耐久性が良いことを示す。
【0050】
(評価)
ホイールトラッキング試験結果より、動的安定度が500(回/mm)以上である場合は、「わだち掘れがおこらない:○」と評価した。
さらに、曲げ試験結果より、「ひび割れが無し:○」、「場合によってはひび割れする:△」、「ひび割れ有り:×」と評価した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により耐流動性および耐ひび割れ性に優れた舗装用アスファルトが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)25℃における針入度(1/10mm)が200以上、軟化点が20〜50℃、120℃における動粘度が100〜400mm/sの性状を有するストレートアスファルト50〜70質量%、(2)原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも一つを含む残油を、原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分を接触改質して得られるライトリフォーメートを溶剤として抽出処理して得られる、軟化点が100〜200℃、アスファルテン含有量が40〜80質量%の性状を有する溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)20〜40質量%、および(3)流動接触分解装置(FCC)から得られる残油であって、引火点が80〜190℃、50℃における動粘度が20〜100mm/s、芳香族分が10〜60質量%の性状を有するクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%からなることを特徴とする舗装用アスファルト。
【請求項2】
25℃における針入度(1/10mm)が10〜100、軟化点が44〜50℃、60℃における粘度が150Pa・s以上の性状を有することを特徴とする請求項1記載の舗装用アスファルト。
【請求項3】
請求項1に記載のストレートアスファルト50〜70質量%および請求項1に記載のクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%を混合して25℃における針入度(1/10mm)が250以上、120℃における動粘度が100〜250mm/sの混合基材を得、ついで該混合基材に請求項1に記載の溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)20〜40質量%を混合することを特徴とする舗装用アスファルトの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)20〜40質量%および請求項1に記載のクラリファイドオイル(CLO)5〜15質量%を混合して200℃における粘度が200〜600mPa・sの混合基材を得、ついで該混合基材に請求項1に記載のストレートアスファルト50〜70質量%を混合することを特徴とする舗装用アスファルトの製造方法。

【公開番号】特開2012−7063(P2012−7063A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143550(P2010−143550)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】