説明

舗装用アスファルトバインダーの粒状再生添加剤組成物

【課題】 タック性が低くブロッキングし難い組成の添加剤組成物により、ペレット化を可能にして小粒化し、ハンドリングに優れ、アスファルト合材プラントで速やかに均一分散することを可能とする排水性舗装用の再生添加剤組成物を提供する。
【解決手段】 引火点が240℃以上、芳香族分(%CA)10〜30%CAの重質油100重量部に対して、スチレン含量が5〜50重量%、MFR(200℃,5kg)が40以下の熱可塑性エラストマー10〜150重量部および分子量800〜5000の合成ワックス10〜40重量部を配合し加熱混合して、粒径50mm以下のペレット状に成型加工した排水性舗装の使用される劣化アスファルト用の再生添加剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト舗装発生材の再生添加剤に関する。詳細には、一般舗装発生材および/または排水性舗装発生材、新骨材および新アスファルトバインダーを用いて排水性舗装用アスファルト混合物を製造する際に、発生材に付着している劣化アスファルトを再生するために適した再生添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、骨材資源の問題、廃棄物処理の問題あるいは自然保護の観点から舗装発生材の有効利用が推進されている。舗装発生材のリサイクルは、その多くが再生骨材に石油系重質油単体を添加することによってストレートアスファルト混合物へと再生するのが一般的である。
一方、石油系重質油と熱可塑性エラストマーを構成成分として含有することを特徴とし、劣化したアスファルトバインダーを排水性舗装用高粘度アスファルトバインダーへと再生するための再生添加剤が提案されている(特許文献1)。
上記の提案は舗装発生材を排水性舗装用混合物へと再生利用する方法として有用である。
【特許文献1】特開2003−003071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1記載の方法は、添加する再生添加剤が石油系重質油と熱可塑性エラストマーからなる組成物であるため、得られる再生添加剤組成物は常温で半固体状あるいは固体であってもタック性がありブロッキングするため、ペレット化することが困難であった。そのため、塊状あるいは板状(300グラム乃至は500グラム程度に小分けした板状)にしてポリエチレン製などの袋に入れ、小分けして使用せざるを得なかった。したがって、発生材を使用してアスファルト混合物を製造する際、再生添加剤は人手により合材プラントに投入しなければ成らず、いわゆるハンドリング性が悪かった。
【0004】
さらに、アスファルト混合物製造時のアスファルトバインダーと骨材との混合時間は通常40秒ないし2分程度と短時間であり、このような短時間の混合では、塊状または板状と単位容量が大きい再生添加剤の形状では、短時間の溶解性が悪く混合不十分となる。そのため、前記の再生添加剤を使用する場合は、混合時間を長くしなければならず、その結果アスファルト合材の製造に時間がかかり生産性を低下させる恐れがあった。
そのため、従来はこれを避けるために、再生添加剤を別途加熱釜等に先に投入するなどして、予めこれを加熱しその粘性を低くしておいて短時間での混合性を確保するなどの操作が行われていた。このため、生産性や作業性が悪かった。
それ故、従来の再生添加剤については生産性や作業性の改善が要望されている。
ここで、アスファルト合材の生産性、作業性を確保するためには、短時間で均一に分散混合する技術が重要である。したがって、ハンドリング性がよく、かつ劣化アスファルトバインダーや骨材との混合性が良好な再生添加剤が求められていた。
すなわち、再生添加剤をペレット化し小粒径化することによりこれが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の再生添加剤の欠点・難点を解決するためには、再生添加剤のタック性を低減し、同時に形状を小粒化することが不可欠である。
すなわち、再生添加剤のタック性を低くすることによりペレット化することが可能となり、これにより小粒化されてアスファルト合材プラントでの劣化アスファルトバインダーとの相溶・混合性が改善され、品質の良好な排水性舗装用の再生アスファルト混合物を製造することが可能となる。さらに、これら一連の作業においてハンドリング性が改善される。
以上の課題を解決するために、本発明の再生添加剤組成物は、配合材として石油系重質油と熱可塑性エラストマーに加えて、合成ワックスを必須の構成成分として配合することにより、タック性を低減し、その結果ペレット化を可能にしたものである。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、石油系重質油と熱可塑性エラストマーおよび合成系ワックスを構成成分として含有することを特徴とする、舗装発生材を排水性舗装用アスファルト混合物へと再生するための再生添加剤組成物である。
合成系ワックスを配合することにより再生添加剤は抗ブロック性を発揮し、ハンドリング性が改善されると共にペレット化が可能となる。
本発明の第2は、本発明の第1において、石油系重質油100重量部に対して熱可塑性エラストマーを10〜150重量部および合成系ワックスを10〜40重量部含有することを特徴とする再生添加剤組成物である。
抗ブロック性を奏するにはかかる配合量が好ましい。
本発明の第3は、本発明の第1または第2において、合成系ワックスの重量平均分子量(Mw)が800〜5000であることを特徴とする再生添加剤組成物である。
抗ブロック性を奏するにはかかる重量平均分子量(Mw)の合成ワックスが好ましい。
本発明の第4は、本発明の第1から第3のいずれかの再生添加剤組成物からなる成型された径が1〜50mmのペレットである。
ハンドリング性も含めて、アスファルト合材プラントでの混合には、上記範囲の大きさのペレットが適当である。
本発明の第5は、舗装発生材としての再生骨材に付着している劣化アスファルトバインダー100重量部に対して、本発明の第1から第3のいずれかの再生添加剤組成物の1〜30重量部が加熱・混合されてなる再生された排水性舗装用アスファルト混合物である。
再生骨材に付着している劣化アスファルトバインダーを実用的な範囲に再生、回復させるには、再生添加剤は上記範囲を配合するのが適当である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の再生添加剤組成物は、抗ブロッキング性を有するところからペレット状に成型加工することが可能であり、貯蔵・搬送時にブロッキングすることなく、ハンドリングに優れる。また再生排水性舗装用アスファルト混合物の製造時に合材プラントのミキサーで速やかに均一分散させることが可能である。
そして本発明の再生添加剤組成物を添加することにより、舗装発生材から得た再生骨材に付着した劣化アスファルトバインダーを、新規な排水性舗装用のアスファルトバインダーとしての改質アスファルトと実質的に同等の物性へと回復、再生させることが可能となる。
これにより大量に発生する劣化舗装発生材の有効利用が達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳述する。
本発明の再生添加剤組成物は、後記所定の性状を有する石油系重質油100重量部に対し、後記所定の性状を有する熱可塑性エラストマー10〜150重量部、好ましくは15〜120重量部、および後記所定の性状を有する合成ワックス10〜40重量部、好ましくは15〜35重量部を配合してなるものである。
石油系重質油100重量部に対して熱可塑性エラストマーの配合量が10重量部未満の場合、再生添加剤組成物中の石油系重質油の割合が高くなり得られる組成物のタック性が高くなってペレット化できないか、ペレット化が出来てもブロッキングし易くなるため好ましくない。
一方、熱可塑性エラストマーの配合量が150重量部を超えた場合、再生添加剤組成物中の石油系重質油の割合が低くなり、舗装発生材中の、劣化により硬化したアスファルトバインダーを軟化する効果が小さくなるので好ましくない。
また、石油系重質油100重量部に対して合成ワックスの配合量が10重量部未満の場合、得られる再生添加剤組成物がブロッキングし易くなりペレット化できないため好ましくない。一方、合成ワックスの配合量が40重量部を超える場合、劣化アスファルトバインダーおよび新規アスファルトバインダーとの相溶性が悪くなるため好ましくない。
【0009】
本発明の再生添加剤組成物に用いる石油系重質油は、引火点が240℃以上であることが必要である。引火点が240℃未満であると、アスファルト合材製造時に再生添加剤成分が蒸発損失し易くなりまたその蒸気により白煙を伴うため好ましくない。かかる理由から引火点は、250℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましい。
なお、本発明の再生添加剤組成物に用いる石油系重質油は、環境への影響及び人体に対する安全性の観点から、含有する縮合多環芳香族(PCA)が3質量%未満であることが好ましい。ここでいう縮合多環芳香族分(PCA)とは、”The Institute of Petroleum”のIP346/92 ”Determination of polycyclic aromatics in unused lubricating base oils and asphaltene free petroleum fractions − Dimethyl sulphoxide extraction refractive index method”の方法に準拠して測定される多環芳香族炭化水素化合物の含有量(質量%)を意味する。
【0010】
また、本発明の再生添加剤組成物に用いる石油系重質油の芳香族分(%CA)は10〜30%CAであることが必要である。芳香族分の下限は、石油系重質油への熱可塑性エラストマーの溶解性・分散性の点から10%CA以上であることが必要であり、好ましくは12%CA以上、さらに15%CA以上がより好ましい。一方、上限は、熱可塑性エラストマーの石油系重質油中への溶解性が増すことによりその改質効果が低下することにより、30%CA以下であることが必要であり、25%CA以下が好ましい。
なお、ここでいう芳香族分(%CA)とは、ASTM D3238“Standard Test Method for Calculation of Carbon Distribution and Structural Group Analysis of Petroleum Oils by the n−d−M Method”により測定される全炭素数に対する芳香族環炭素数の百分率(%)を意味する。
【0011】
本発明の再生添加剤組成物に用いる石油系重質油の種類は、上述の性状を満たす限りは特に限定されない。たとえば、本発明の再生添加剤組成物に用いる石油系重質油を製造する際に用いる原油は求められる石油系重質油の種類にあわせて選択されるが、ペンシルベニヤ原油、ミナス原油、大慶原油等のパラフィン基原油、カリフォルニア原油、テキサス原油、ベネズエラ原油等のナフテン基原油、ミッドコンチネント原油、アラビア原油、ガッチサラン原油、カフジ原油、マヤ原油、ニュートラルゾーンスペシャル原油、フート原油、クェート原油、ラタウェー原油、アルライアン原油、エオシン原油、ソリューシュ原油等の混合基原油等が好ましく使用できる。
特に、常圧蒸留残油を減圧蒸留して得られる留出油のフルフラールラフィネート、及びそれをさらに水素化精製および/またはMEK脱ろう処理をして得られる精製フルフラールラフィネート、減圧蒸留残油のプロパン脱れきにより得られるPDAエキストラクト、さらにPDAエキストラクトをフルフラール抽出して得られるPDAフルフラールエキストラクト、また同時に得られるPDAフルフラールラフィネート等をMEK脱ろうおよび/または水素化精製処理して得られる精製高粘度留分(ブライトストック)など、それらの精製した石油系重質油の1種または2種以上を混合した石油系重質油が好適に用いられる。なかでもナフテン基原油を処理して得られるナフテン系の石油系重質油が好ましい。
【0012】
本発明の再生添加剤組成物に用いる熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ブロックとしてのスチレンブロックと、エラストマーブロックとしての他のモノマーのブロックからなるブロック共重合体からなり、後述のスチレン含有量およびメルトフローレート(MFR)の規定を満たす限りは、いずれのものも使用される。これらには例えば熱可塑性ブロックを一つ有するジブロック共重合体、または二つ有するトリブロック共重合体などがある。好ましくはスチレン−ブタジエン−スチレンのブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンのブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンのブロック共重合体(SEBS)などの熱可塑性エラストマーが好適に使用でき、これら熱可塑性エラストマーを1種もしくは2種以上を組み合わせて適宜配合することが可能である。なかでもスチレン−ブタジエンのブロック共重合体、さらに詳しくはスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体(SB)またはこれらの混合物がより好ましく使用される。
【0013】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン含有量が5〜50質量%を満たすことが必要である。熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が5質量%未満であると再生骨材中の劣化アスファルトに対して相溶性が低下し、排水性舗装用改質アスファルトへの再生効果が期待できなくなることから、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。一方、上限は劣化アスファルトに対して再生添加剤の相溶性が増し、排水性舗装用高粘度改質アスファルトとしての性状、特に60℃粘度が得られなくなるため、50質量%以下が必要であり、好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR:ASTM D1238に準拠。200℃,5kgにて測定)は、40以下が好ましい。40を越えると劣化アスファルトバインダーの排水性舗装用の高粘度改質アスファルトへの再生効果が期待できないことから、そのメルトフローレートは35以下がさら好ましく、30以下がより好ましい。
熱可塑性エラストマーは高分子量であるほど好ましく、それゆえメルトフローレートの下限値は特に限定されないが、再生添加剤の各成分に相溶する範囲で選択される。
【0014】
本発明の再生添加剤組成物に用いる合成ワックスの重量平均分子量(Mw)は、800〜5000であることが必要である。重量平均分子量の下限は、ペレット状に成形加工した再生添加剤組成物のブロッキング防止の点から、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましい。一方、上限は石油系重質油および熱可塑性エラストマーへの溶解性が低下することから5000以下であることが必要であり、4000以下が好ましく、3500以下がより好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)により求められる重量平均分子量(Mw)の値を指す。
本発明の再生添加剤組成物に用いる合成ワックスの種類は、上述の性状を満たす限りは特に限定されないが、通常の重合・合成型、変性型、分解型等の製造法により得られるポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)合成により得られるフィッシャー・トロプシュ合成ワックス(FT合成ワックス)等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスは、例えば、主として1種または2種以上のオレフィンモノマーを原料とし、ラジカル触媒、チーグラーナッタ系触媒、メタロセン触媒等で重合させる重合方法、これらポリマーを分解して製造する分解方法等で得ることができる。代表的なものとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン−プロピレン共重合ワックス等が挙げられる。これらポリオレフィンワックスをポリマーの相溶性を向上するために化学的、物理的手段で加工もしくは変性させた変性型ポリオレフィンワックス等も好ましく使用できる。
FT合成ワックスは、例えば、天然ガスや石油系重質残油のガス化分解等により生成した合成ガスからFT触媒を用いて合成(FT合成)することで製造できる。
【0015】
また、前記した本発明の再生添加剤組成物には、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴムおよび天然ゴム等のゴム、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのエチレン系共重合体、あるいは脂肪族炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂および芳香族炭化水素樹脂等の石油樹脂類を混合してもよい。この場合の混合割合は、熱可塑性エラストマー100重量部に対してこれらエチレン共重合体や石油樹脂類を100重量部以下とするのが好ましい。さらに、従来から公知のアミン系、リン酸エステル系あるいは両性の骨材剥離防止剤を必要に応じて添加してもよい。
【0016】
本発明の再生添加剤組成物の製造方法は、その配合割合、性状等が上記範囲を満足する限り、特に限定されるものではない。通常は、加熱溶融釜、高せん断ミキサー、バンバリーミキサー、ヘンシルミキサーなどの混合機を用いて、原材料を加熱・溶融・混合し、次いでペレタイザー、押出成形機、加工成形機、プレス成形機などで成形加工することができる。
なお、本発明の再生添加剤組成物の形状は特に限定されるものではなく、任意の形状で使用できる。たとえばペレット状、板状、棒状、ブロック状などがあげられるが、プラントでの混合性を考慮した場合、好ましくはペレット状である。この形状は棒状であってもよく、それ故ここでいうペレットには小粒形の棒状形状も含まれる。
再生添加剤組成物のペレット化は、たとえば所定量の石油系重質油、熱可塑性エラストマー、合成ワックスを150〜180℃で3〜10分ニーダーで加熱混合した後、ペレタイザーを用いて棒状に押出し裁断加工することにより達成できる。この際、当該組成物は押出成型機から水中に押し出され冷却しながら所定のサイズにカットすることができる。冷却水は常温の水でよいが30℃以下に制御するとさらに成型が良好である。
また、要すれば、ペレットのブロッキングを防止するために冷却水にシリコン系のエマルジョンを添加しペレットの表面処理をしてもよい。さらに、別途成型したペレット表面に、石粉あるいは炭酸カルシウムなど通常に用いられる付着防止剤をまぶしてもよい。なお本発明の再生添加剤はタック性をまったく有しないかまたは一定レベル以下であるので、付着防止剤の使用が不要かまたはたとえこれら付着防止剤を併用するとしてもその使用量は少なくすることができる。
ペレットの径は1〜50mm、好ましくは1〜20mm、さらに好ましくは1〜10mmであり、かかる大きさにより再生骨材を含むアスファルト合材と速やかに溶融分散することが可能となる。棒状形状のときは、上記径は棒長さまたはその径を示す。
【0017】
本発明の再生添加剤は、劣化アスファルトバインダーの劣化の程度にもよるが、再生骨材に付着している劣化アスファルトバインダー100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは5〜20重量部を添加することにより再生、回復が可能となる。なお以降においては、再生添加剤の混合により再生された劣化アスファルトバインダーを再生アスファルトバインダーと称することがある。
この再生アスファルトバインダーは単体だけでも使用可能であるが、劣化アスファルトバインダーの劣化の程度により排水性舗装用の新規の高粘度改質アスファルトを初め、一般に舗装用として使用されるアスファルト類(ストレートアスファルト、改質アスファルト、セミブローンアスファルト)を添加して使用することもできる。新規の高粘度改質アスファルトあるいは上記アスファルト類の混合割合は、再生アスファルトバインダー100重量部に対して、900重量部以下が好ましい。
【0018】
本発明の再生添加剤の使用方法は、アスファルト合材プラントに於いて再生骨材を用いて再生排水性舗装用アスファルト混合物を製造する際に、舗装発生材からの劣化アスファルトバインダーが付着した再生骨材に同時に添加し混合して使用するものである。
すなわち、合材プラントのミキサーに所定配合・所定量の再生骨材と必要に応じて新骨材を加えて150〜200℃に加熱・投入し、20〜30秒程度予混合した後、本発明の再生添加剤と必要に応じて上記アスファルト類を所定量添加して160〜190℃で、通常40秒〜2分程度混合することにより再生排水性舗装用アスファルト混合物を得るものである。
本発明の再生添加剤は、劣化した舗装発生材を、排水性舗装用アスファルト混合物へ再生、回復させるものであるが、再生対象の舗装発生材は、一般舗装の舗装発生材を適宜に選択できる。しかしながら、好ましくは劣化した排水性舗装からの舗装発生材を再生、回復させて再生排水性舗装用のアスファルト混合物となし、これを再度、排水性舗装に舗装することが好ましい。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
使用した重質鉱油、熱可塑性エラストマー(以下、TPEと略記する)および合成ワックスは次のとおりである。
(重質油)
重質油は、留分の異なる精製フルフラールラフィネート、精製フルフラールエキストラクト、PDAフルフラールエキストラクトおよびブライトストックを適宜混合して次の性状の3種を調整し使用した。これら重質油は、ナフテン基油から得られ、またそのPCAは3質量%未満である。
重質油−A:引火点242℃、%CA15%
重質油−B:引火点244℃、%CA 6%
重質油−C:引火点230℃、%CA16%
【0020】
(TPE)
TPEは、性状の異なる以下の4種類のSBSを用いた。
TPE−A:スチレン含量25重量%、MFR7
TPE−B:スチレン含量 3重量%、MFR1以下
TPE−C:スチレン含量50重量%、MFR25
TPE−D:スチレン含量20重量%、MFR70
【0021】
(合成ワックス)
合成ワックスは、以下の分子量の異なる3種類の重合型ポリエチレンワックスの変性タイプを使用した。
合成ワックス−A:重量平均分子量(Mw) 2100
合成ワックス−B:重量平均分子量(Mw) 700
合成ワックス−C:重量平均分子量(Mw) 6000
【0022】
(再生添加剤の製造)
再生添加剤は、各配合材を各配合割合でニーダーに投入し、160℃で2時間加熱溶融・混合攪拌し、ペレタイザーで冷水中に押し出し、水中でカットすることにより直径3mm、長さ4mmのペレット状に裁断加工して製造した。
このものを各種試験に使用するほか、後記の再生添加剤の耐ブロッキング性試験にも使用した。
【0023】
試験用模擬劣化アスファルトの調整方法、実施例および比較例で用いた各種試験法は以下のとおりである。
模擬劣化アスファルトバインダーの調整方法:
再生骨材に付着する実際の劣化アスファルトバインダーを模擬するため、市販の排水性舗装用の高粘度改質アスファルトに薄膜加熱試験を実施し、さらに加圧促進劣化試験を実施することにより、促進劣化させた、試験用の模擬劣化アスファルトバインダーを得た。
再生アスファルトバインダーの調整方法:
上で得た、試験用の模擬劣化アスファルトバインダーに、別途製造した再生添加剤を10重量%添加し、180℃で5分撹拌して再生高粘度改質アスファルトを調整した。
なお、再生添加剤の実際の使用は、上述のように、劣化アスファルトが付着した再生骨材に再生添加剤を加えて使用されるのであるが、実際の再生骨材は付着しているアスファルトの劣化の度合いが一定しないので、性能の比較試験用に、上記のように試験用の模擬劣化アスファルトを得て、これを用いて試験をした。
そして、試験用の模擬劣化アスファルトに再生添加剤を加えて、これを高粘度改質アスファルトへと回復、再生させ、その高粘度改質アスファルトとしての物性を測定し、別途(社団法人)日本改質アスファルト協会の定める高粘度改質アスファルトの規格値と比較して、回復、再生の度合いを試験した。
さらに、アスファルト合材の混合性としては、後記のように再生骨材に再生添加剤を添加、混合しそのマーシャル安定度試験の安定度により評価した。
【0024】
(1)薄膜加熱試験:
JIS K2207に記載の「薄膜加熱試験方法」に準じた。
(2)加圧促進劣化試験:
「舗装試験法便覧別冊」(社団法人日本道路協会編)に記載の「加圧劣化容器を用いた舗装用バインダーの促進劣化試験方法」に準じた。
(3)針入度:
JIS K2207に準じた。
(4)軟化点:
JIS K2207に準じた。
(5)伸度:
JIS K2207に準じた。
(6)60℃粘度:
「舗装試験法便覧別冊」(社団法人日本道路協会編)に記載の「60℃粘度試験方法」に準じた。
(7)タフネス,テナシティー:
「舗装試験法便覧」(社団法人日本道路協会編)に記載の「タフネステナシティ試験法」に準じた。
(8)耐ブロッキング性:
再生添加剤を1リッターのビーカーに500g採取し、40℃で24時間放置した。室温に冷却した後、再生添加剤をビーカーから取り出しブロッキングしているかどうかを手の感触により観察した。
手で簡単にばらける状態を“○”と評価し、ペレット同士が固着している状態を“×”と評価した。なお、ペレットが成型不能の場合は、“××”とした。
(9)再生アスファルトバインダーの均質性:
試験用の模擬劣化アスファルトバインダーに再生添加剤を10重量%添加し、180℃で5分撹拌し、冷却固化後その表面を目視により観察した。
その表面が滑らかで均一な状態を“○”、不均一の状態を“×”と評価した。
(10)アスファルト合材の混合性:
再生骨材100重量部、新規骨材100重量部、市販の高粘度改質アスファルト5重量部および再生添加剤を再生骨材中の劣化アスファルトバインダーに対して10重量%添加し、パグミルミキサーを用いて、180℃にて2分撹拌混合し、マーシャル試験用供試体を作製した。
アスファルト合材の混合性は、マーシャル安定度試験の安定度により評価した。
(11)マーシャル安定度試験:
「舗装試験法便覧」(社団法人日本道路協会編)に記載の「マーシャル安定度試験法」に準じた。
【0025】
[実施例1〜4及び比較例1〜2、実験例1〜2]
表1に示す配合割合で実施例1〜4および比較例1〜2、実験例1〜2の再生添加剤を調整し、耐ブロッキング性および再生アスファルトバインダーの性状を評価した。
実施例1〜4の再生添加剤は、耐ブロッキング性は良好で、また再生アスファルトバインダーの性状は全て日本改質アスファルト協会規格の高粘度改質アスファルトの規格値を満たしている。
比較例1は、重質油−A100重量部に対してTPE−Aを20重量部配合したもので、合成ワックスは配合していないため、この配合物は粘着性が高くペレタイザーによる成型加工が不能であり、耐ブロッキング性すら測定できなかった。比較例2は、比較例1よりTPE−Aを増量したものの合成ワックスを配合していないため、ペレット化は出来たものの、耐ブロッキング性が不良であった。
実験例1は、TPE−Aの配合量が少ないため耐ブロッキング性が悪く、また再生アスファルトバインダーの性状も日本改質アスファルト協会の高粘度改質アスファルトの規格値を満足することが出来なかった。実験例2は、TPE−Aの配合量が多いため、対ブロッキング性は良好なものの、均質性が悪く、さらに日本改質アスファルト協会の高粘度改質アスファルトの規格値を満足することが出来なかった。
【0026】
表2に示す配合割合で実験例3〜5の再生添加剤を調整し、劣化アスファルトバインダーに10重量%添加して再生アスファルトバインダーの性状を評価した。
実験例3の再生添加剤は、再生アスファルトバインダーを調整した場合、均質性は良好で、引火点、薄膜加熱試験質量変化率および60℃粘度のいずれも高粘度改質アスファルトの規格値を満たしている。実験例4は、配合材の重質油の%CAが低いために、再生アスファルトバインダーの均質性が悪い。また、実験例5は、配合材の引火点が低いために、再生アスファルトバインダーの引火点、薄膜加熱試験質量変化率および60℃粘度が規格値を満足していない。
【0027】
表3に示す配合割合で実験例6〜9の再生添加剤を調整し、劣化アスファルトバインダーに10重量%添加して再生アスファルトバインダーの性状を評価した。実験例6の再生添加剤は、再生アスファルトバインダーを調整した場合、均質性は良好で、高粘度改質アスファルトの60℃粘度の規格値を満たしている。一方、実験例7は、TPEのスチレン含量が低いため再生アスファルトバインダーの均質性が悪く、また60℃粘度は測定不能であった。実験例8は、TPEのスチレン含量が高いために60℃粘度が低く、規格値を満足していない。実験例9は、TPEのMFRが大きいために60℃粘度が低く、規格値を満足していない。
【0028】
表4に示す配合割合で実験例10〜12の再生添加剤を調整し、再生添加剤の耐ブロッキング性を評価した。また、劣化アスファルトバインダーに10重量%添加して再生アスファルトバインダーの均質性を評価した。実験例10の再生添加剤は、耐ブロッキング性は良好で、再生アスファルトバインダーの均質性も良好である。一方、実験例11は、合成ワックスの分子量が小さくいため、耐ブロッキング性が不良であった。実験例12は、合成ワックスは分子量が大きいため、耐ブロッキング性は良好なものの再生アスファルトバインダーの均質性が不良であった。
【0029】
表5に示す配合割合で形状の異なる実験例13〜16の再生添加剤を試製した。この添加剤によりパグミルミキサーを用いて、再生高粘度改質アスファルト混合物を作製し、マーシャル安定度試験用供試体を作製した。アスファルト混合物の混合性をマーシャル試験の安定度により評価した。実験例13および実験例14は、再生添加剤の形状をそれぞれ直径0.3mmx長さ0.4mmおよび直径3mmx長さ4mmのペレットとした。この再生添加剤を使用した供試体のマーシャル安定度は良好な結果が得られ、アスファルト混合物が十分に混合されていることが確認された。一方、実験例15および実験例16は、再生添加剤の形状が大きいため、アスファルト混合物が十分に混合されず、マーシャル安定度が不良であった。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0035】
上記の再生添加剤は、重質油100重量部に対して、熱可塑性エラストマーとしてスチレン含量が5〜50重量%、MFR(200℃,5kg)が40以下のSBS10〜150重量部および合成ワックスとして分子量800〜5000のポリエチレンワックスを10〜40重量部を配合し、加熱混合して、粒径50mm以下のペレット状に成型加工することができる。
荷姿は、薄手ポリエチレン製袋に500g〜1kgに小分けして製品とすることができる。この様な小分けはポリエチレン製の袋ごとアスファルト合材プラントに投入することができるので便利である。また、大量に使用する場合は、荷姿をドラム缶としてもよく、この場合はエアーリフトなどにより、アスファルト合材プラントにおいて、自動投入が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油系重質油と熱可塑性エラストマーおよび合成系ワックスを構成成分として含有することを特徴とする、舗装発生材を排水性舗装用アスファルト混合物へと再生するための再生添加剤組成物。
【請求項2】
石油系重質油100重量部に対して熱可塑性エラストマーを10〜150重量部および合成系ワックスを10〜40重量部含有することを特徴とする請求項1に記載の再生添加剤組成物。
【請求項3】
合成系ワックスの重量平均分子量(Mw)が800〜5000であることを特徴とする請求項1または2に記載の再生添加剤組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の再生添加剤組成物からなる成型された径が1〜50mmのペレット。
【請求項5】
舗装発生材としての再生骨材に付着している劣化アスファルトバインダー100重量部に対して、請求項1から3のいずれかに記載の再生添加剤組成物の1〜30重量部が加熱・混合されてなる再生された排水性舗装用アスファルト混合物。