説明

舗装用透水性ブロックおよびその製造方法

【課題】 曲げ強度、透水係数などの特性に優れた舗装用透水性ブロックおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 ブロック本体が、表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材の一部または全部として多孔質状に焼結されたものである舗装用透水性ブロックと、粒径が5mm以下で表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材の少なくとも一部としてこれにバインダを添加混練し、この混練物を所定形状に加圧成形し、乾燥後1000℃〜1250℃の温度で焼成する舗装用透水性ブロックの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、舗装用ブロック、特に、電気炉製鋼時において多量に産出され、その処分に困っている電気炉スラグを特殊加工して得た小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材として用いた、曲げ強度、透水係数などの諸特性に優れた舗装用透水性ブロックおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】舗装用ブロックは、大量に使用されるところから、安定に生産、供給されることが必要であるとともに、特に低コストで生産されることが重要な課題とされているが、従来の舗装用ブロックに用いられている骨材は枯渇されてきたため、安価な安定供給が得られない。一方、製鉄所においては水砕スラグや電気炉スラグなどの鉄鋼スラグが多量に産出され、その処分に困っている現状にある。このような問題を解決するため、特開平9ー194268号公報には、タイルや碍子などのセラミック類の廃材を粉砕したセラミック粉砕物とともに、水砕スラグなどの鉄鋼スラグを骨材の主原料として用いることが記載されている。
【0003】しかしながら、水砕スラグなどの鉄鋼スラグをそのまま所要の粒度に篩分してこれを骨材とし、この骨材を無機バインダ、澱粉粉末、水とともに混練してその混練物を加圧成形後乾燥した成形生地を焼成して透水性のある舗装用ブロックを得ても、その曲げ強度はせいぜい60kg/cm2 前後であって、耐久性の点で不充分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとするところは、上記のような問題点を解決し、電気炉製鋼時において多量に産出され、その処分に困っている電気炉スラグをそのまま使用することなく、予め酸化風砕という特殊加工を施しておくことにより、電気炉スラグをそのまま骨材として用いた成形素地を焼成した場合に酸化によってブロック本体に生じる強度上や色調上の問題がなく、曲げ強度、透水係数などの諸特性に優れた舗装用透水性ブロックを提供することと、前記したような舗装用透水性ブロックを量産可能な舗装用透水性ブロックの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の問題を解決するためになされた本発明は、ブロック本体が、表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材の一部または全部として多孔質状に焼結されたものであることを特徴とする舗装用透水性ブロックと、この舗装用透水性ブロックの製造法、すなわち、粒径が5mm以下で表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材の少なくとも一部としてこれバインダを添加混練し、この混練物を所定形状に加圧成形し、乾燥後1000℃〜1250℃の温度で焼成することを特徴とする舗装用透水性ブロックの製造方法とよりなるものである。
【0006】また、本発明に係る舗装用透水性ブロックにおいて、骨材である小球状の電気炉酸化スラグ粒化物として、粒径が5mm以下の粒子のものを用いたものを請求項2に係る発明とし、この発明において、5〜2.5mmの範囲の粒子が50重量%未満、2.5〜1.2mmの範囲の粒子が10〜40重量%、1.2mm未満の範囲の粒子が40重量%以上である粒度分布のものを用いたものを請求項3に係る発明とし、さらに、前記した各発明において用いられる小球状の電気炉酸化スラグ粒化物のCaO 含有率を10〜30重量%のものとしたものが請求項4に係る発明であり、さらに、骨材として小球状の電気炉酸化スラグ粒化物とともにタイル廃材の細粒を用いたものを請求項5に係る発明とし、前記した全ての発明において、ブロック本体の表面に透水性セラミック化粧層を層着したものを請求項6に係る発明とし、ブロック本体として曲げ強度が80kg/cm2 以上で、透水係数が2×10-2cm/sec以上に限定したものを請求項7に係る発明とする。
【0007】さらに、前記した請求項8に係る舗装用透水性ブロックの製造方法において、バインダとして、ベントナイトの他に、釉かすとガラス粉と澱粉類のうちのいずれか1つ以上をを用いる製造法を請求項9に係る発明とする。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の好ましい実施形態を説明する。本発明に係る舗装用透水性ブロックは、焼結されたセラミック質のブロック本体の主要部を構成している骨材として、表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を少なくとも一部に用いた点にある。この電気炉酸化スラグ粒化物とは、電気炉製鋼過程で得られる電気炉酸化スラグを1500℃前後の溶融状態のまま、高速回転羽根付きドラムで破砕粒状化し、これを水ミスト雰囲気中で急冷処理することにより得られるもので、その一般的特徴としては、特に粒径が5mm以下のものはその殆どが略球形で、艶のある黒色を呈し、表面には微細な凹凸が形成されているもののひび割れなどの欠陥がない。また、主要な鉱物組成は、ウスタイト、マグネタイト、アイアンクロマイト、マグネシオフェライト及び非晶質珪酸塩からなり、ビッカース硬さで755、モース硬さ6程度で耐摩耗性に優れ、比重3.84、耐火度1100℃、融点1350℃程度で、耐酸、耐アルカリ性などの特性を備えている安定性のある物質であり、その化学組成は、重量%でCaO 10〜30%、SiO2 8〜22%、MnO 2〜7%、MgO 2〜8%、FeO 13〜32、Fe203 9〜45%、Al203 4〜16%、Cr2O3 1〜4%のほか、微量成分としてTi02、P205、Sなどを含む。また、高温急冷処理を施して得られているため、天然のもののように粘土や有機不純物や塩分を全く含んでいないことは勿論、不安定な遊離石灰や遊離マグネシアなども殆ど含んでいない。
【0009】そして、本発明では前記した小球状の電気炉酸化スラグ粒化物が骨材としてバインダと、必要に応じて用いるタイル廃材などの廃棄セラミック砕粒のような高温焼成に耐える他の骨材ととともに高温で焼結融着されていて、骨材相互間には無数の微細気孔が形成されている多孔質の断面構造のブロック本体とされている。なお、ブロック本体の総重量のうちに占める小球状の電気炉酸化スラグ粒化物の割合は、10〜20重量%を占めるバインダを除く90〜80重量%を占める全ての骨材のうち10%程度は使用しないと、電気炉酸化スラグ粒化物の特性が発揮されないので少なくとも10%を必須とするが、この電気炉酸化スラグ粒化物の占める比率が大きくなるほど曲げ強度および耐摩耗性に優れたものとなるので、ブロック本体のベースとなる部分では総骨材の2/1以上とすることが好ましい。また、この電気炉酸化スラグ粒化物の粒径は、5mmを超えると強度低下が見られるうえにブロック本体の体裁も損なわれるので、5mm以下、特に、5〜2.5mmの範囲の粒子が50重量%未満、2.5〜1.2mmの範囲の粒子が10〜40重量%、1.2mm未満の範囲の粒子が40重量%以上の粒度分布のものを用いることが曲げ強度および耐摩耗性ならびに透水係数の点から好ましい。なお、ブロック本体の空隙率は特に限定されることはないが、透水係数との関係上10%以上であることが好ましい。
【0010】しかして、このような舗装用透水性ブロックを製造するには、まず、電気炉製鋼過程で得られる電気炉酸化スラグを原料として、粒径が5mm以下で小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を製造し、これを必要に応じ使用する他の骨材とともに用意する。そして、この小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材として通常のセラミック質ブロックを製造する場合と同様の手段で成形・焼成すればよく、例えば、この骨材である小球状の電気炉酸化スラグ粒化物にバインダとして、ベントナイトの他に、釉かすやガラス粉と、コンスターチやデキストリンなどの澱粉類のうちの1種以上を添加混練し、この混練物を型に入れて油圧プレスなどを用いて所定形状に加圧成形すれば、小球状の電気炉酸化スラグ粒化物はその表面に微細な凹凸があるため、バインダによる付着力が増して成形強度に優れた成形素地が得られるから、これを脱型して乾燥後に1000℃〜1250℃の温度で焼成すれば、焼成時に小球状の電気炉酸化スラグ粒化物の接触部分でバインダが収縮してより結合が高められるとともに微細な空隙が形成されて前記したように曲げ強度および耐摩耗性ならびに透水係数の点で優れたものとなるうえに、電気炉急冷スラグをそのまま骨材とした場合のように焼成時において金属鉄が酸化されて焼成中に溶融噴出することがなく、表面が骨材による粗面を呈し滑り止め効果に優れた体裁のよい製品を容易に得ることができる。
【0011】なお、前記したような手段で得られる舗装用透水性ブロックは、主材としての骨材が小球状の電気炉酸化スラグ粒化物であるため黒色を呈しており、用途によっては装飾上問題が生じる場合もあるので、この場合にはブロック本体の表面に透水性セラミック化粧層を層着しておくことが好ましい。
【0012】
【実施例】次に本発明の実施例を説明する。
(実施例1)最大粒径が5mmで、5〜2.5mmの範囲の粒子が17重量%、2.5〜1.2mmの範囲の粒子が23重量%、1.2〜0.6mmの範囲の粒子が23重量%、0.6〜0.3mmの範囲の粒子が22重量%、0.3〜0mmの範囲の粒子が15重量%の粒度分布であり、表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物60重量部と、最大粒径が2mmで、平均粒径が1.5mmのタイル廃材30重量部との混合骨材に、バインダとしてのベントナイト7重量部、釉かす3重量部と、糊材であるデキストリン1重量部と、水とを加えてよく混練し、この混練物を油圧プレスにより300kg/cm2 の圧力で加圧成形して320mm×320mm×62mmの板状の成形素地とし、この成形素地を乾燥後1200℃にて焼成して320mm×320mm×60mmのブロック体を得た。このブロック体は、曲げ強度が121kg/cm2 、透水係数が17.4×10-2cm/secで、耐久性および透水性に優れ、しかも、全体が黒色ではあっても電気炉スラグをそのまま骨材として用いた場合のような焼成時における酸化でブロック体に生じる色調上の問題がないものであった。なお、このブロック体の比重は2.5、空隙率25%であった。
【0013】(実施例2)最大粒径が5mmで、5〜2.5mmの範囲の粒子が17重量%、2.5〜1.2mmの範囲の粒子が23重量%、1.2〜0.6mmの範囲の粒子が23重量%、0.6〜0.3mmの範囲の粒子が22重量%、0.3〜0mmの範囲の粒子が15重量%の粒度分布であり、表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物50重量部と、最大粒径が3mmで、平均粒径が2.0mmのタイル廃材50重量部との混合骨材に、バインダとしてのベントナイト7重量部、ガラス粉3重量部と、糊材であるコンスターチ1重量部と、水とを加えてよく混練し、この混練物を振動プレスにより0.6kg/cm2 の圧力で加圧成形して230mm×112mm×61mmの板状の成形素地とし、この成形素地を乾燥後1200℃にて焼成して230mm×112mm×60mmのブロック体を得た。このブロック体は、曲げ強度が86kg/cm2 、透水係数が29.8×10-2cm/secで、耐久性および透水性に優れ、しかも、実施例1と同様に電気炉スラグをそのまま骨材として用いた場合のような焼成時における酸化でブロック体に生じる色調上の問題もないものであった。
【0014】(実施例3)最大粒径が5mmで、5〜2.5mmの範囲の粒子が17重量%、2.5〜1.2mmの範囲の粒子が23重量%、1.2〜0.6mmの範囲の粒子が23重量%、0.6〜0.3mmの範囲の粒子が22重量%、0.3〜0mmの範囲の粒子が15重量%の粒度分布であり、表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物60重量部と、最大粒径が2mmで、平均粒径が1.5mmのタイル廃材30重量部との混合骨材に、バインダとしてのベントナイト5重量部、釉かす5重量部と、糊材であるコンスターチ1重量部と、水とを加えてよく混練してベースとなる混練物を得た。これと同時に前記した小球状の電気炉酸化スラグ粒化物20重量部と、最大粒径が2mmで、平均粒径が1.5mmの白色タイル廃材70重量部とよりなる混合骨材に、バインダとしてのベントナイト5重量部、釉かす5重量部と、糊材であるコンスターチ1重量部と、スピネル化した顔料1重量部と、水とを加えてよく混練して化粧層となる混練物を得た。そして、前記したベースとなる混練物上に化粧層となる混練物をベース層と化粧層の層厚比がおおよそ6:1となるようにして油圧プレスにより300kg/cmの圧力で加圧成形し、320mm×320mm×61mmの板状の成形素地とした。この成形素地を乾燥後1200℃にて焼成して320mm×320mm×60mmのブロック体を得た。このブロック体は、曲げ強度が100kg/cm2 、透水係数が12.5×10-2cm/secで、耐久性および透水性に優れ、しかも、ブロック体の表面に透水性セラミック化粧層が層着されているため、極めて体裁のよいものであった。
【0015】
【発明の効果】本発明の舗装用透水性ブロックは、前記説明から明らかなように、電気炉製鋼時において多量に産出され、その処分に困っている電気炉スラグをそのまま使用することなく、予め特殊加工を施しておくことにより、電気炉スラグをそのまま骨材として用いた成形素地を焼成した場合に酸化によってブロック本体に生じる強度上や色調上の問題のない、曲げ強度、透水係数などの諸特性に優れたものとなる。また、本発明の舗装用透水性ブロックの製造方法は前記した特性を有する舗装用透水性ブロックを用意に量産できる利点がある。従って、本発明は従来の問題点を解消した舗装用透水性ブロックおよびその製造方法として、その工業的価値は極めて大なるものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ブロック本体が、表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材の一部または全部として多孔質状に焼結されたものであることを特徴とする舗装用透水性ブロック。
【請求項2】 小球状の電気炉酸化スラグ粒化物として、粒径が5mm以下のものを用いている請求項1に記載の舗装用透水性ブロック。
【請求項3】 小球状の電気炉酸化スラグ粒化物として、5〜2.5mmの範囲の粒子が50重量%未満、2.5〜1.2mmの範囲の粒子が10〜40重量%、1.2mm未満の範囲の粒子が40重量%以上である粒度分布のものを用いている請求項2に記載の舗装用透水性ブロック。
【請求項4】 小球状の電気炉酸化スラグ粒化物として、CaO 含有率が10〜30重量%のものを用いている請求項1または2または3に記載の舗装用透水性ブロック。
【請求項5】 骨材として、小球状の電気炉酸化スラグ粒化物とともにタイル廃材の細粒を用いている請求項1または2または3または4に記載の舗装用透水性ブロック。
【請求項6】 ブロック本体の表面に透水性セラミック化粧層を層着してある請求項1または2または3または4または5に記載の舗装用透水性ブロック。
【請求項7】 ブロック本体は、曲げ強度が80kg/cm2 以上で、透水係数が2×10-2cm/sec以上のものである請求項1または2または3または4または5または6に記載の舗装用透水性ブロック。
【請求項8】 粒径が5mm以下で表面に微細な凹凸が形成されている小球状の電気炉酸化スラグ粒化物を骨材の少なくとも一部としてこれにバインダを添加混練し、この混練物を所定形状に加圧成形し、乾燥後1000℃〜1250℃の温度で焼成することを特徴とする舗装用透水性ブロックの製造方法。
【請求項9】 バインダとして、ベントナイトの他に、釉かすとガラス粉と澱粉類のうちのいずれか1つ以上を用いる請求項8に記載の舗装用透水性ブロックの製造方法。