説明

航法データ共有システム及び航法機器

【課題】障害等に対して耐性のある航法データ共有システムを提供する。
【解決手段】航法データ共有システムは、LANに接続された複数の航法機器と、LANに接続され、航法機器が利用する情報を検出する複数のセンサと、を備える。航法機器は、切替制御部65と、通信制御部68と、代表センサ決定部64と、を備える。切替制御部65は、自機が親機として動作するか、子機として動作するか、を切り替える。通信制御部68は、親機として動作する場合に、代表センサを決定するための代表センサ決定関連情報を、子機に対して、LANを介して配信する。代表センサ決定部64は、親機から受信した代表センサ決定関連情報に基づいて、代表センサを決定する。なお、航法機器のうち1台のみが親機として動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、複数の航法機器間で航法データを共有する航法データ共有システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶には、レーダ、魚群探知器、及びGPS受信機のような各種のセンサ及び航法機器が搭載されることがある。これらの機器は、ローカルエリアネットワーク等のネットワークを介して接続され、システム化が行われることが多い。特許文献1は、この種の舶用機器ネットワークシステムを開示する。
【0003】
特許文献1が開示する舶用機器ネットワークシステムは、主要な構成として、サーバ機能を有するサーバ装置と、同一の対象を検出する複数のセンサと、このセンサが検出したデータを表示する複数のディスプレイユニットと、を備えている。
【0004】
サーバ装置は、複数のセンサから1つを選定し、この選定されたセンサの検出値を複数のディスプレイユニットで共有させている。特に、この舶用機器ネットワークシステムは複数の通信網を有しており、複数の通信網間でセンサの検出値を共有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−58246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成は、サーバ機能を有するサーバ装置のみの指示によって共有化処理が行われるため、このサーバ装置に不具合が生じると、それだけでセンサの検出値の共有化が維持できなくなり、この点で改善の余地があった。
【0007】
また、特許文献1の構成は、サーバ装置が直接接続される通信網と、センサが直接接続される通信網と、が異なるシステムであるため、以下の課題を指摘することができる。
【0008】
即ち、センサの検出値は、異なる通信網同士を接続するネットワーク機器を経由する必要があるため、タイムラグが生じることがある。また、ネットワーク機器に不具合が生じた場合、このネットワーク機器に接続されるセンサ等をシステムで利用することができない。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、障害等に耐性のある航法データ共有システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の航法データ共有システムが提供される。即ち、この航法データ共有システムは、ネットワークに接続された複数の航法機器と、前記ネットワークに接続され、前記航法機器が利用する情報を検出する複数のセンサと、を備える。前記航法機器は、切替制御部と、配信部と、代表センサ決定部と、を備える。前記切替制御部は、自機が親機として動作するか、子機として動作するか、を切り替える。前記配信部は、親機として動作する場合に、複数の前記センサのうちどの前記センサを使用するかに関する情報である代表センサ決定関連情報を、子機として動作する前記航法機器に対して、前記ネットワークを介して配信する。前記代表センサ決定部は、子機として動作する場合に、親機として動作する前記航法機器から受信した前記代表センサ決定関連情報に基づいて、使用する前記センサを決定する。なお、前記航法機器のうち1台のみが親機として動作する。
【0012】
これにより、全ての航法機器間で、同一の航法データを利用することができる。また、親機として動作する航法機器を切り替えることができるため、親機として動作している航法機器に不具合が生じても、他の航法機器を親機として動作させることで、航法データの共有を維持することができる。
【0013】
前記の航法データ共有システムにおいて、前記航法機器は、前記代表センサ決定関連情報として、使用する前記センサを決定するためのアルゴリズムを用いることが好ましい。
【0014】
これにより、親機として動作する航法機器と子機として動作する航法機器とは、同一のアルゴリズムを用いて決定されたセンサを使用するため、同一の航法データを利用することができる。また、子機として動作する航法機器は、親機として動作する航法機器との接続に不具合が生じたときにも、親機から受信した最新のアルゴリズムを用いることにより、適切なセンサを決定することができる。
【0015】
前記の航法データ共有システムにおいて、前記航法機器は、前記代表センサ決定関連情報として、使用する前記センサを特定する情報が配信されることが好ましい。
【0016】
これにより、アルゴリズムを配信する構成に比べて、配信するデータのサイズを小さくすることができる。また、子機として動作する航法機器が代表センサを決定する処理を行わないため、演算量を低減できる。
【0017】
前記の航法データ共有システムにおいては、前記センサのうち、少なくとも2つは、検出する対象が同一であることが好ましい。
【0018】
これにより、あるセンサの検出精度が低下しても、このセンサに代えて、検出する対象が同一である他のセンサを使用することができる。従って、安定性が高く、かつ利用される航法データの精度に優れたシステムを実現できる。
【0019】
前記の航法データ共有システムにおいては、親機として動作する航法機器が備える前記配信部は、前記代表センサ決定関連情報が更新された場合に、当該代表センサ決定関連情報を、子機として動作する航法機器に向けて配信することが好ましい。
【0020】
これにより、親機として動作する航法機器の設定が変更された場合に、その変更を、子機として動作する航法機器に反映させることができる。
【0021】
前記の航法データ共有システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この航法データ共有システムは、航法データ変換装置を備える。前記航法データ変換装置は、第1接続部と、第2接続部と、代表センサ決定部と、を備える。前記第1接続部は、前記ネットワークに接続される。前記第2接続部には、前記ネットワークに直接接続できない装置が接続される。前記代表センサ決定部は、親機として動作する前記航法機器から受信した前記代表センサ決定関連情報に基づいて、前記第2接続部に接続される装置が使用する前記センサを決定可能である。
【0022】
これにより、第2接続部に接続される装置が航法データを利用可能である場合は、航法データ変換装置の代表センサ決定部が決定したセンサの航法データをこの装置に利用させることができる。つまり、ネットワークに接続される航法機器と、ネットワークに直接接続できない装置と、で利用する航法データを共有できる。また、第2接続部に接続される装置としてセンサを用いることで、ネットワークに接続される航法機器がこのセンサを使用できる。
【0023】
前記の航法データ共有システムにおいて、前記航法機器は、船舶用の航法機器であることが好ましい。
【0024】
即ち、船舶においては、センサ及び航法機器が多量に接続され、センサが検出した航法データが多くの航法機器で利用される。従って、本発明の効果を特に有効に発揮することができる。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の航法機器が提供される。即ち、この航法機器は、切替制御部と、代表センサ決定部と、配信部と、を備える。前記切替制御部は、自機が親機として動作するか、子機として動作するか、を切り替える。前記代表センサ決定部は、ネットワークを介して接続されたセンサのうちどの前記センサを使用するかに関する情報である代表センサ決定関連情報に基づいて、使用するセンサを決定する。前記配信部は、親機として動作する場合に、前記代表センサ決定関連情報を、子機として動作する航法機器に対して、前記ネットワークを介して配信する。
【0026】
これにより、自機が利用する航法データを、他の航法機器に利用させることができる。また、親機及び子機を切り替えることができるので、自機に不具合が生じても航法データを共有し続けることが可能なネットワークを構築することができる。
【0027】
前記の航法機器においては、前記代表センサ決定部は、子機として動作する場合に、配信された前記代表センサ決定関連情報に基づいて、使用する前記センサを決定することが好ましい。
【0028】
これにより、親機として動作する航法機器と、同一の航法データを利用することができる。
【0029】
前記の航法機器は、船舶で使用されることが好ましい。
【0030】
即ち、船舶においては、センサ及び航法機器が多量に接続され、センサが検出した航法データが多くの航法機器で利用される。従って、本発明の効果を特に有効に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る航法データ共有システムの全体的な構成を示すブロック図。
【図2】航法機器の構成を示すブロック図。
【図3】航法データ変換装置の機能を説明するブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る航法データ共有システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【0033】
図1に示す航法データ共有システム1は、機器間の相互通信を可能とする有線のLAN(ネットワーク)10を有している。航法データ共有システム1は、このLAN10に様々なセンサ及び航法機器等が接続されたシステムとして構成される。なお、航法データ共有システム1の有するネットワークはLANに限られず、様々なネットワークを航法データ共有システム1に適用することができる。
【0034】
センサは、航法機器で利用する情報を検出し、検出した情報を航法データとして航法機器に出力する。そして、本実施形態の航法データ共有システム1は、航法データを利用する航法機器間で、同一の航法データを利用することができる。以下、航法データ共有システム1に接続されるセンサ及び航法機器等について、具体的に説明する。
【0035】
図1に示すように、航法データ共有システム1には、センサとして、第1GPS受信機31と、第2GPS受信機32と、第1方位計33と、第2方位計34と、第1速度計35と、第2速度計36と、が接続されている。また、航法データ共有システム1には、航法機器として、GPSプロッタ21と、ECDIS22と、レーダ装置23と、が接続されている。なお、航法データ共有システム1には、上記の他にも、航法データ変換装置40が接続されている。
【0036】
第1GPS受信機31及び第2GPS受信機32は、図略のGPSアンテナから測位信号を受信して自船の位置(詳細には、第1GPS受信機31又は第2GPS受信機32の位置)の現在の位置情報を検出する。また、第1GPS受信機31及び第2GPS受信機32は、LAN10に接続可能に構成されている。
【0037】
第1方位計33は、自船に固定された複数のGPSアンテナを備えており、GPSアンテナの相対的な位置関係から船首方位を検出することができる。また、第1方位計33は、LAN10に接続可能に構成されている。
【0038】
第2方位計34は、ジャイロスコープを利用して船首方位を検出するための装置である。そのため、第2方位計34が検出する方位は地磁気の影響を受けることがない。また、本実施形態の第2方位計34は、直接LAN10に接続することができず、後述の航法データ変換装置40を介してLAN10に接続されている。
【0039】
第1速度計35及び第2速度計36は、自船の速度(対地船速)を検出するための装置である。第1速度計35及び第2速度計36には、第1GPS受信機31又は第2GPS受信機32から自船の位置情報が入力されており、自らが備える時計又は他の機器が備える時計から時間情報を取得している。これにより、第1速度計35及び第2速度計36は、所定の時間の間に位置がどれだけ変化したかを求めることにより、対地船速を算出している。また、第1速度計35は直接LAN10に接続されている。一方、第2速度計36は直接LAN10に接続することができず、後述の航法データ変換装置40を介してLAN10に接続されている。
【0040】
また、第1速度計35及び第2速度計36が算出した対地船速は、ECDIS22等の機器に表示される。つまり、本明細書におけるセンサには、第1速度計35及び第2速度計36のように、航法データを出力するとともに、他のセンサが出力した航法データを利用する構成も含まれるものとする。
【0041】
以上のように、本実施形態の航法データ共有システム1には、検出する対象が同一であるセンサが複数接続されている。具体的には、第1GPS受信機31と第2GPS受信機32とは、検出する対象が共に自船の位置である。また、第1方位計33と第2方位計34とは、検出方法が異なっているが、検出する対象は共に船首方位である。第1速度計35と第2速度計36とは、検出する対象が共に対地船速である。なお、以下の説明において、検出する対象が同一であるセンサを総括して「同種のセンサ群」と称することがある。
【0042】
GPSプロッタ21は、第1GPS受信機31又は第2GPS受信機32から取得した位置情報に基づいて、自船の位置を画面の地図上に表示するための装置である。そして、自船が移動した航跡を描いたり、画面の地図上にマークをつけて特定の位置を記憶させたりすることができる。また、GPSプロッタ21は、LAN10に接続可能に構成されている。
【0043】
ECDIS(Electronic Chart Display and Information System、電子海図情報表示システム)22は、第1GPS受信機31又は第2GPS受信機32によって自船位置を取得するとともに、予め用意された電子海図情報に基づいて、自船周囲の海図を画面に自動的に表示する装置である。
【0044】
このECDIS22は、海図情報に加えて、各種の追加情報を画面に表示し、航路計画及び航行監視において操船者を支援することができるように構成されている。この追加情報としては、レーダ装置23から出力される物標データ(具体的には、付近を航行中の他船の位置等)や、第1速度計35又は第2速度計36から出力される対地船速等の情報がある。また、ECDIS22は、LAN10に接続可能に構成されている。
【0045】
レーダ装置23は、回転するアンテナによってマイクロ波の送信を行うとともに、物標からの反射波を受信して、当該反射に適宜の演算を行うことで物標の位置を検出する装置である。また、レーダ装置23は、図略のAIS(船舶自動識別装置)から他船の位置情報(AIS情報)を取得して、前記物標とともに表示することができる。また、本実施形態のレーダ装置23は、LAN10に接続可能に構成されている。
【0046】
航法データ変換装置40は、LAN10に直接接続できない第2方位計34及び第2速度計36とシリアル接続しており第2方位計34及び第2速度計36が出力する航法データを、中継して送信することができる。また、第2速度計36が必要な航法データ等を、中継して取得することができる。
【0047】
次に、航法データを共有するために航法機器が備える構成について、図2を参照して説明する。図2は、航法機器としてのGPSプロッタ21、ECDIS22、及びレーダ装置23の構成を示すブロック図である。
【0048】
初めに、利用する航法データを共有する構成の概要について説明する。本実施形態の航法データ共有システム1では、航法機器は、親機又は子機として動作する。航法データ共有システム1において親機として動作する航法機器は1台であり、他の航法機器は、子機として動作する。また、航法データ共有システム1には、常に子機として動作する機器(航法データ変換装置40)も接続されている。そして、親機及び子機は、同種のセンサ群から使用するセンサ(代表センサ)を決定するためのアルゴリズム(代表センサ決定関連情報)を有しており、このアルゴリズムに従って、代表センサを決定する。そして、親機が有するアルゴリズムと子機が有するアルゴリズムとを常に一致させることで、親機と子機が決定する代表センサは常に同一となり、この結果、利用する航法データを常時共有することができる。なお、以下の説明において、「親機として動作する航法機器」を単に「親機」と、「子機として動作する航法機器等」を単に「子機」と、それぞれ称することがある。
【0049】
航法機器は、図2に示すように、表示部61と、機能部62と、操作部63と、代表センサ決定部64と、切替制御部65と、通信制御部(配信部)68と、LAN接続部67と、を備える。機能部62とは、航法機器としての機能を有する部分であり、具体的には、GPSプロッタ21の機能部62は自船が移動した航跡を描く機能等を有しており、ECDIS22の機能部62は自船周囲の海図を画面に自動的に表示する機能等を有しており、レーダ装置23の機能部62は物標からの反射波を受信して、当該反射に適宜の演算を行うことで物標の位置を検出する機能を有している。なお、レーダ装置23は、GPSプロッタ21やECDIS22にレーダ装置23で検出した物標データ(具体的には、付近を航行中の他船の位置等)を出力するセンサとして機能することもある。
【0050】
また、航法機器は、LAN10及びLAN接続部67を介して、様々なデータをやり取りすることができる。例えば、航法データ共有システム1に新しく接続された航法機器及びセンサのID及びIPアドレスを取得したり、センサが出力した航法データを取得したり、また、自機が親機として動作するときは前記アルゴリズムを配信したり、等の動作を行うことができる。また、他の航法機器及びセンサから受信したデータは、初めに通信制御部68が受信する。そして、通信制御部68は、このデータを適切に各構成に出力する。例えば、通信制御部68は、代表センサの航法データを機能部62に出力したり、代表センサを決定するために必要なデータを代表センサ決定部64に出力したりしている。
【0051】
代表センサ決定部64は、前記アルゴリズムに基づいて、同種のセンサ群から代表センサを決定している。代表センサ決定部64が用いるアルゴリズムには、様々な種類があるが、例えば以下のような方法に基づいたアルゴリズムを使用することができる。
【0052】
単純な方法としては、予め各センサに優先順位を設定しておき、この順位に従って代表センサを決定するアルゴリズムが考えられる。つまり、通常は優先順位の一番高いセンサを代表センサとして決定し、この代表センサから所定時間以上航法データが取得できないときに、次に優先順位の高いセンサを代表センサとして決定する方法である。
【0053】
あるいは、以下の方法を用いても良い。即ち、代表センサ決定部64は、通信制御部68を介して、同種のセンサの全てから航法データを取得する。そして、代表センサ決定部64は、センサから取得した複数の航法データについて平均値を計算し、得られた平均値からのズレ量(乖離)が最も少ない航法データを選定する。そして、選定された航法データを出力したセンサを代表センサとして決定する。ただし、このアルゴリズムを用いる場合、航法データが2つだけでは平均値からのズレ量が互いに等しくなってしまうので、少なくとも3つのセンサから航法データを取得する必要がある。
【0054】
他にも、優先順位を設定する方法と、平均値からのズレ量を検出する方法と、を組み合わせて以下のような方法を用いても良い。即ち、原則として、優先順位の一番高いセンサを代表センサとして決定する。ただし、現在の代表センサの平均値からのズレ量が所定の閾値を超えている場合は、ズレ量が当該閾値以下である他のセンサのうち優先順位が最も高いセンサを代表センサとして決定する。
【0055】
また、代表センサを決定するためのアルゴリズムとして、上記の他に適宜の方法を用いることができる。また、状況に応じて複数のアルゴリズムを使い分けても良い。また、親機及び子機は、代表センサを決定する処理を所定時間毎に行っており、決定された代表センサの航法データを機能部62が利用して各種の処理を行う。
【0056】
なお、代表センサを決定する処理は、検出対象が同一のセンサ毎に行われる。例えば、ECDIS22が自船の位置情報と船首方位の両方の航法データを利用する場合、ECDIS22は、利用する自船の位置情報を検出するための代表センサの決定と、利用する船首方位を選択するための代表センサの決定と、を個別に行う。
【0057】
更には、親機が子機に送信する代表センサ決定関連情報として、アルゴリズムではなく代表センサを特定する情報を送信しても良い。この場合においても、親機は、上記のアルゴリズムによって代表センサを決定する。そして、親機は、決定された代表センサのID又はIPアドレス等を子機に対して送信する。子機は、受信したID等に基づいた代表センサの航法データを利用する。
【0058】
また、代表センサ決定部64が使用するアルゴリズムの選択や、前記ズレ量の閾値の設定は、表示部61の表示に従って操作部63を操作することにより行うことができる。また、本実施形態では、親機の代表センサ決定部64が使用するアルゴリズムが更新されると同時に、子機の代表センサ決定部64,44に対して、更新後のアルゴリズムが配信される。これにより、親機と子機とで常に同一のアルゴリズムを用いることになるため、同一のセンサが代表センサとして決定される。従って、複数のセンサを利用して冗長性を確保する一方で、利用される航法データの生成源であるセンサが複数の航法機器間で統一されるため、システム全体において航法機器の動作の一貫性を維持することができる。
【0059】
なお、親機の代表センサ決定部64が使用するアルゴリズムが更新された場合以外でも、親機と子機とは通信確認信号等の送受信を行っている。そして、この通信確認によって、子機と親機との通信が行えないことを当該子機が知った場合であって、必要な航法データを取得できているときは、子機の有する最新のアルゴリズムに基づいて、代表センサの決定及び航法データの取得を行う。この場合、子機は、「親機の使用するアルゴリズムと違うアルゴリズムを用いた可能性がある旨」(あるいは、親機が利用しているものとは異なるセンサの航法データに基づいて動作している可能性がある旨)を表示部61に表示させる。
【0060】
また、切替制御部65は、自機が親機として動作するか子機として動作するかを切り替える制御を行っている。通常は、親機として動作する航法機器が切り替わることは無いが、ユーザが操作部63に適宜の入力を行ったときや、親機として動作する航法機器がダウンしたりLAN10に接続できなくなったりしたときに、親機として動作する航法機器が切り替わるように構成されている。
【0061】
例えば、GPSプロッタ21が親機として動作していたが、当該GPSプロッタ21のメンテナンス等のために、ECDIS22を親機として動作させる必要が生じたとする。この場合、ユーザはGPSプロッタ21の操作部63を操作し、適宜の指示を行う。これにより、GPSプロッタ21の切替制御部65は、次に親機として動作するECDIS22にその旨を通知する。
【0062】
そして、予め設定された適宜のタイミングで、親機として動作する航法機器がGPSプロッタ21からECDIS22へ変更される。また、ECDIS22は、親機として動作する航法機器が切り替わった旨を、子機(GPSプロッタ21、レーダ装置23及び航法データ変換装置40)に配信する。
【0063】
また、GPSプロッタ21が親機として動作していたが、当該GPSプロッタ21がダウンしたときは、例えば以下のようにして、親機として動作する航法機器を入れ替える。即ち、親機として動作可能な航法機器には予め優先順位が付けられており、GPSプロッタ21の次に優先順位の高い航法機器がECDIS22であったとする。
【0064】
この場合、ECDIS22は、GPSプロッタ21に対して所定時間毎に通信確認信号を送信する。GPSプロッタ21は通常、この通信確認信号に対する返信を行う。しかし、GPSプロッタ21又はECDIS22がダウンしている場合(又は接続不良の場合)は、ECDIS22は、通信確認信号に対する返信を受信することができない。
【0065】
そして、ECDIS22は、通信確認信号が所定時間以上受信できず、かつ自機の接続が正常である場合は、GPSプロッタ21がダウンしていると判断する。そしてECDIS22の切替制御部65は、自機(ECDIS22)を親機として動作させる。その後、ECDIS22は、親機として動作する航法機器が切り替わった旨を、子機に配信する。
【0066】
上記のような処理例を行うことにより、親機として動作する航法機器を切り替えることができる。また、上記以外の処理によって、親機として動作する航法機器を切り替えることもできる。
【0067】
次に、LAN10に直接接続できない第2方位計34及び第2速度計36を、航法データ共有システム1の構成要素として機能させるための構成について、図3を参照して説明する。図3は、航法データ変換装置40の機能を説明するブロック図である。
【0068】
前述のように、第2方位計34及び第2速度計36は、直接LAN10に接続できないため、航法データ変換装置40を介してLAN10に接続される。この航法データ変換装置40は、代表センサ決定部44と、シリアル接続部46,47と、通信制御部48と、LAN接続部49と、を備えている。
【0069】
航法データ変換装置40は常に子機として動作し、親機として動作する航法機器が送信したアルゴリズムを受信しており、当該アルゴリズムに基づいて、代表センサの決定を行っている。そして、通信制御部48は、決定された代表センサから取得した航法データを第2速度計36に対して(LAN接続部49等を介して)送信している。
【0070】
第2速度計36は、シリアル接続部87を介してこの航法データを受信する。第2速度計36が備える機能部82は、GPSアンテナで受信した位置情報に対して適宜の処理を行って対地船速を求めて、表示部81に表示させることができる。
【0071】
また、第2速度計36が取得した対地船速は、航法データ変換装置40を介してLAN10に接続される航法機器に送信することができる。同様に、第2方位計34が取得した船首方位もLAN10に接続される航法機器に送信することができる。このように、航法データ変換装置40を用いることで、LAN接続できない装置を航法データ共有システム1に組み込むことができる。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態の航法データ共有システム1は、LAN10に接続された複数の航法機器と、LAN10に接続され、航法機器が利用する情報を検出する複数のセンサと、を備える。航法機器は、切替制御部65と、通信制御部68と、代表センサ決定部64と、を備える。切替制御部65は、自機が親機として動作するか、子機として動作するか、を切り替える。通信制御部68は、親機として動作する場合に、代表センサを決定するための代表センサ決定関連情報を、子機に対して、LAN10を介して配信する。代表センサ決定部64は、親機から受信した代表センサ決定関連情報に基づいて、代表センサを決定する。なお、航法機器のうち1台のみが親機として動作する。
【0073】
これにより、全ての航法機器間で、同一の航法データを利用することができる。また、親機として動作する航法機器を切り替えることができるため、親機として動作している航法機器に不具合が生じても、他の航法機器を親機として設定することで、航法データの共有を維持することができる。
【0074】
また、本実施形態の航法データ共有システム1において、代表センサ決定関連情報として、代表センサを決定するためのアルゴリズムを用いる。
【0075】
これにより、親機及び子機は同一のアルゴリズムを用いて決定された同一のセンサの航法データを使用するため、航法データを共有することができる。また、子機は、親機との接続に不具合が生じたときにも、親機から受信した最新のアルゴリズムを用いることにより、適切なセンサを決定することができる。
【0076】
また、本実施形態の航法データ共有システム1では、代表センサ決定関連情報として、代表センサを特定する情報(例えば前記IDやIPアドレス)を用いることもできる。
【0077】
これにより、代表センサを決定するためのアルゴリズムそのものを配信する構成に比べて、配信するデータのサイズを小さくすることができる。また、子機が代表センサを決定する処理を行わないため、演算量を低減できる。
【0078】
また、本実施形態の航法データ共有システム1では、センサのうち、少なくとも2つ(例えば第1GPS受信機31と第2GPS受信機32)は、その検出する対象が同一になっている。
【0079】
これにより、例えば、代表センサとして使用していた第1GPS受信機31の検出精度が低下した場合に、代表センサを第2GPS受信機32に切り替えることができる。従って、安定性が高く、かつ利用される航法データの精度に優れたシステムを実現できる。
【0080】
また、本実施形態の航法データ共有システム1において、親機として動作する航法機器が備える通信制御部68は、代表センサ決定関連情報が更新された場合に、当該代表センサ決定関連情報を、子機に向けて配信する。
【0081】
これにより、親機として動作する航法機器の設定が変更された場合に、その変更を、子機に反映させることができる。
【0082】
また、本実施形態の航法データ共有システム1は、航法データ変換装置40を備える。航法データ変換装置40は、LAN接続部49と、シリアル接続部46,47と、代表センサ決定部44と、を備える。LAN接続部49は、LAN10に接続される。シリアル接続部46,47には、LAN10に直接接続できない第2方位計34及び第2速度計36が接続される。代表センサ決定部44は、親機から受信した代表センサ決定関連情報に基づいて、第2速度計36が使用する代表センサを決定する。
【0083】
これにより、第2速度計36が、航法データ変換装置40を介して、代表センサの航法データを用いることができる。また、第2方位計34が検出した船首方位を、GPSプロッタ21、ECDIS22及びレーダ装置23が利用することができる。従って、LAN接続できない第2方位計34及び第2速度計36を航法データ共有システム1に組み込むことができる。
【0084】
また、本実施形態の航法機器(GPSプロッタ21、ECDIS22及びレーダ装置23)は、切替制御部65と、代表センサ決定部64と、LAN接続部67と、を備える。切替制御部65は、自機が親機として動作するか、子機として動作するか、を切り替える。代表センサ決定部64は、代表センサを決定する。通信制御部68は、代表センサ決定関連情報を、子機に対してLAN10を介して配信する。
【0085】
これにより、自機が利用する航法データを、他の航法機器及び第2速度計36等に利用させることができる。また、親機及び子機を切り替えることができるので、自機に不具合が生じても航法データを共有し続けることが可能な航法データ共有システム1を実現している。
【0086】
また、本実施形態の航法機器においては、子機として動作する場合に、配信された代表センサ決定関連情報に基づいて、代表センサを決定する。
【0087】
これにより、親機と同一の航法データを利用することができる。
【0088】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0089】
上記で示した航法データ共有システム1は一例であり、本実施形態の航法機器及びセンサに代えて又は加えて他の舶用機器を接続させても良い。例えばセンサ(及び検出する航法データ)としては、例えば、音響測深機等の深度計(深度データ)、水温計(水温データ)、風速計(風速データ)、潮流計(潮流データ)、スキャニングソナー(探知画像データ)を挙げることができる。上記の他にも、センサとして、AIS、回頭角速度計、オートパイロット、ラダー制御装置、スラスタ制御装置、エンジン制御装置、NAVTEX(Navigation Telex)受信機等を用いることもできる。
【0090】
本実施形態では、LANとして有線のLANを用いたが、無線のLANを用いても良い。また、使用するLANの規格は適宜のものを用いることができる。
【0091】
航法データ変換装置40がLANと接続できない装置と接続を行うシリアル接続部46,47は、当該装置が有する形式と合致した適宜の接続部に変更することができる。
【0092】
本発明の構成は船舶に搭載される機器間のネットワークに限られず、例えば航空機に搭載される機器間のネットワーク等、様々な種類のネットワークに適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 航法データ共有システム(航法データ共有システム)
10 LAN(ネットワーク)
21 GPSプロッタ(航法機器)
22 ECDIS(航法機器)
23 レーダ装置(航法機器)
31 第1GPS受信機(センサ)
32 第2GPS受信機(センサ)
33 第1方位計(センサ)
34 第2方位計(センサ)
35 第1速度計(センサ)
36 第2速度計(センサ)
40 航法データ変換装置
64 代表センサ決定部
65 切替制御部
68 通信制御部(配信部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続された複数の航法機器と、
前記ネットワークに接続され、前記航法機器が利用する情報を検出する複数のセンサと、
を備え、
前記航法機器は、
自機が親機として動作するか、子機として動作するか、を切り替える切替制御部と、
親機として動作する場合に、複数の前記センサのうちどの前記センサを使用するかに関する情報である代表センサ決定関連情報を、子機として動作する前記航法機器に対して、前記ネットワークを介して配信する配信部と、
子機として動作する場合に、親機として動作する前記航法機器から受信した前記代表センサ決定関連情報に基づいて、使用する前記センサを決定する代表センサ決定部と、
を備え、
前記航法機器のうち1台のみが親機として動作することを特徴とする航法データ共有システム。
【請求項2】
請求項1に記載の航法データ共有システムであって、
前記航法機器は、前記代表センサ決定関連情報として、使用する前記センサを決定するためのアルゴリズムを用いることを特徴とする航法データ共有システム。
【請求項3】
請求項1に記載の航法データ共有システムであって、
前記航法機器は、前記代表センサ決定関連情報として、使用する前記センサを特定する情報を用いることを特徴とする航法データ共有システム。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の航法データ共有システムであって、
前記センサのうち、少なくとも2つは、検出する対象が同一であることを特徴とする航法データ共有システム。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の航法データ共有システムであって、
親機として動作する前記航法機器が備える前記配信部は、前記代表センサ決定関連情報が更新された場合に、当該代表センサ決定関連情報を、子機として動作する前記航法機器に向けて配信することを特徴とする航法データ共有システム。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の航法データ共有システムであって、
航法データ変換装置を備え、
前記航法データ変換装置は、
前記ネットワークに接続される第1接続部と、
前記ネットワークに直接接続できない装置が接続される第2接続部と、
親機として動作する前記航法機器から受信した前記代表センサ決定関連情報に基づいて、前記第2接続部に接続される装置が使用する前記センサを決定可能な代表センサ決定部と、
を備えることを特徴とする航法データ共有システム。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の航法データ共有システムであって、
前記航法機器は、船舶用の航法機器であることを特徴とする航法データ共有システム。
【請求項8】
自機が親機として動作するか、子機として動作するか、を切り替える切替制御部と、
ネットワークを介して接続されたセンサのうちどの前記センサを使用するかに関する情報である代表センサ決定関連情報に基づいて、使用するセンサを決定する代表センサ決定部と、
親機として動作する場合に、前記代表センサ決定関連情報を、子機として動作する航法機器に対して、前記ネットワークを介して配信する配信部と、
を備えることを特徴とする航法機器。
【請求項9】
請求項8に記載の航法機器であって、
前記代表センサ決定部は、子機として動作する場合に、配信された前記代表センサ決定関連情報に基づいて、使用する前記センサを決定することを特徴とする航法機器。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の航法機器であって、
前記航法機器は、船舶で使用されることを特徴とする航法機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6512(P2012−6512A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145001(P2010−145001)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】