説明

航空機に対する気象の位置を予測するシステム及び方法

【課題】気象異常が航空機の予定されている航空路といつ交差するのかを予測するシステム及び方法を提供する。
【解決手段】プロセッサ42が、少なくとも1つの気象異常に関する移動方向及び速度情報を、レーダ・システム40から受け取る。航空機20とこの少なくとも1つの気象異常とが交差することが予測される交差点を、受け取られた位置、移動方向及び速度情報と、航空機の位置情報と現在の速さ情報とに基づいて決定される。こうして、交差点に基づく第1のインジケータが、表示装置44に表示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
航空機のパイロットは、潜在的危険性を有する気象の位置に関する情報を用いて、目的地への経路決定について判断する。この情報は、飛行前の気象解説、地上に設置された気象レーダ・データ又は航空機搭載の気象レーダなど、複数のソースに由来する場合がある。パイロットは、この情報を用いて、予定されている経路からの迂回が気象のために必要になるかどうかを判断する。一般的には、この情報は、現時点での気象の位置や、気象データの遅延に応じて現時点よりも以前の気象の位置を、提供する。気象は水平方向に移動している場合が多いため、気象の位置情報は、航空機が当該気象によって影響を受けるほど近接しているときには、その位置に対応しない可能性がある。
【0002】
危険な気象の追跡に関しては、多数の団体によって、非常に多くの仕事がなされてきた。追跡は、典型的に、一定の時間周期にわたって認識可能な特徴を識別し、そのような特徴の移動を観察することによって行われる。これらの特徴は、レーダを用いて検出されるのが典型的である。対流気象はレーダの反射率に著しい変動を示し、更にまた、パイロットが回避することを望む気象に関する危険の多くの原因であり、従って、対流は、追跡することができる識別可能な特徴を、より容易に生じさせる。対流セルの位置変化を一定の時間経過にわたって観察することにより、セル速度ベクトルを概算することができる。
【0003】
セル追跡は、地上に設置された気候レーダ・データに適用される場合が多い。その目的は、危険な荒天が、その結果として損害を被る可能性のある企業、家屋、農場などの方向に移動しているかどうかを判断することである。平面ディスプレイの上でのセルの移動に関する情報を伝えることには、現在のセル位置から移動方向に延長するベクトルを描くことが含まれる。このベクトルの長さは、セルが一定の時間の間に移動することが予測される距離を示す。この情報のユーザは、表示されているセルの移動と関心対象である資産の位置(通常は位置が固定されている)とを比較する。対流が関心対象の位置に向かって移動するのが見える場合には、セルから当該関心対象の位置までの距離をセル速度で除算すれば、気象の予想到着時刻が得られる。
【0004】
航空機のパイロットにとって、セル・トラック情報の利用には、対流セルのために予定ルートからの迂回が必要になるかどうかを判断することが含まれる。この判断は、航空機が移動しつつあるという事実のために複雑になる。従って、パイロットは、航空機が当該地点にある又は当該地点に接近する時点において、セルが予定ルートと交差するかどうかを判断しなければならない。そのためには、航空機の速さ及び方向と対流の速さ及び方向とを考慮することにより、パイロットの側で時間を要する計算を行った上で、迂回を予期すべきかどうかを判断することが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、気象異常(例えば、対流セル)が航空機といつ交差するかを予測するシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な方法では、プロセッサが、少なくとも1つの気象異常に関する位置、移動方向及び速度情報を、レーダ・システムから受け取る。当該少なくとも1つの気象異常の交差点が、受け取られた位置、移動方向及び速度情報と、航空機の位置及び現在の速さ情報とに基づいて決定される。すると、決定された交差点に基づく第1のインジケータが、表示装置に表示される。
【0007】
本願発明のある態様では、交差点と関連する気象異常とを関連付ける第2のインジケータが表示される。第2のインジケータには、気象異常と第1のインジケータとの間に接続された直線が含まれる。
【0008】
本願発明の別の態様では、決定された交差点が航空機の予め定められた飛行経路からのスレショルド距離の範囲内にある場合に、第1のインジケータが表示される。
本願発明の更に別の態様では、決定された交差点が航空機の予め定められた飛行経路まで最も接近している所定の数の交差点の中の1つである場合に、第1のインジケータが表示される。
【0009】
本願発明の好適な及び代替的な実施例は、以下の図面を参照して詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願発明のある実施例に従って形成された例示的なレーダ・システムを図解している。
【図2】航空機と気象セルとの間の幾何学的関係を示す図解である。
【図3】本願発明のある実施例に従って形成された平面気象レーダ・ディスプレイのスクリーン・ショットを図解している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、気象異常(例えば、対流セル)が航空機20といつ交差するかを予測する例示的なシステム30を図解している。システム30は、気象レーダ・システム40と、表示プロセッサ42と、メモリ43と、表示装置44と、表示プロセッサ42に結合されたユーザ・インターフェース48とを含むレーダ表示システム38を含む。航空機20は更に航空データ・コンピュータ(ADC)などそれ以外の航空機システム46を含んでおり、航空機システム46は気象レーダ・システム40及びレーダ表示システム38との間で信号を相互に通信する関係にある。表示プロセッサ42は、レーダ・システム40と、表示装置44と、ADCと、メモリ43とに電気的に結合されている。レーダ・システム40は、レーダ・コントローラ50と、送信機52と、受信機54と、アンテナ56と、アンテナ・コントローラ61とを含む。レーダ・コントローラ50は、選択されたレーダ・モードと、ユーザ・インターフェース48から受け取られた他のパイロット入力と、ADC46と飛行管理システム(FMS)と慣性航法システム(INS)及び/又はグローバル・ポジショニング・システム(GPS)(図示せず)とから受け取られた航空機データ(すなわち、高度、速さ、位置、機種方位、回転、ヨー、ピッチ等)とに基づいて、アンテナ56を介して信号を送信及び受信する送信機52及び受信機54を制御する。ADC46は、様々な航空機飛行システムから受け取られる信号に基づき、航空データを生成する。
【0012】
レーダ・システム40は、レーダ信号を送信機52から送信し、アンテナ56を空間の中のアンテナ・コントローラ61によって決定される方向に向け、目標60が存在し受信機に向けてエネルギを散乱させて返す場合にはリターン信号を検出する。好ましくは、レーダ・システム40は、リターン信号(すなわち、反射率データ又は乱流データ)をデジタル化し、デジタル化された信号を表示プロセッサ42に送る。表示プロセッサ42は、メモリ43の中の多次元バッファに記憶するために、受け取ったリターン信号を変換する。表示プロセッサ42は、次に、ユーザ・インターフェース48から送られた任意の制御信号に基づいて、又は、(予測ウィンドシア・アラートなどの)レーダ・システム40からの信号に基づいて、表示装置44の上に提示するための2次元画像を生成する。
【0013】
表示プロセッサ42が対流セルの移動についての表示を表示装置44に生成することによって、パイロットは、その対流セルによって予定ルートからの迂回が正当化されるかどうかを直ちに判断することができる。生成された表示は、航空機が現在の速さを維持し移動しつつあるセルと交差の時刻において交差することになる方向を調整する場合に、航空機と交差する時刻におけるセルの予想位置を示す。従って、パイロットは、交差点と現在の経路とを比較することで、セルを十分に避けて安全な飛行を継続できるのか、迂回を予定すべきなのかを判断することができる。
【0014】
交差点は、以下のようにして計算される。ここで、対流セルは、プロセッサ42によって実行される追跡機能によって追跡されていると仮定する。追跡機能は、地球に固定された水平面におけるフィルタリングされたセル位置と速度とを提供する。追跡機能には、時間経過にわたるセル位置のノイズを含む測定値の取得と、実際のセル位置及び速度の概算とが含まれる。追跡・プロセスから得られたセル位置は、ノイズを含む測定値を単に取得する場合よりも、より正確な(フィルタリングがなされた)位置であると考えられる。また、追跡機能は、測定の間の時間間隔の間のセル位置を外挿することができる。
【0015】
図2は、セルの位置と速さベクトルVTを有するセルの運動方向とを示す。現在の航空機位置と現在のセル位置との間の距離は、距離Rである。航空機の速さは、交差点へのベクトルVTとして示されている。速さベクトルVTは、現在の航空機の速度ベクトルであることは意図されておらず、現在の航空機の速さと等しい大きさを有し、現在の航空機位置から交差点への方向を有する速さベクトルVTである。従って、パイロットがセルと交差することを望む場合には、ベクトルVTが、航空機が飛行する必要がある方向である。
【0016】
交差点を見つけるために、交差点への時間が計算される。従って、次の数式1が成り立つ。
【0017】
【数1】

【0018】
数式1において、Tは交差点までの時間である。式1をTについて解くと、次の数式2が得られる。
【0019】
【数2】

【0020】
Rの値は、共に既知であるセルの位置と航空機の位置とを用いて、容易に計算することができる。数式2の右辺の分母の最初の項は、次の数式3の内積から計算することができる。
【0021】
【数3】

【0022】
数式3の内積の
【0023】
【数4】

【0024】
は航空機位置に対するセルの方向を有する単位ベクトルであり、
【0025】
【数5】

【0026】
はセル速度ベクトルである。分母の第2の項は、次の式4のように計算することができる。
【0027】
【数6】

【0028】
sinβ=Vsinαという関係を用いると、式4は、次の数式5のように書くことができる。
【0029】
【数7】

【0030】
数式2において、式3及び式5の結果を用いると、交差点までの時間(T)の計算が可能になる。従って、交差点は、次の式6によって与えられる。
【0031】
【数8】

【0032】
セルの移動の表示には、交差点を示すことと、どの対流セルが当該交差点まで移動することが予測されるかを示すことが含まれる。図3に例が示されている。航空機(アイコン100)の飛行計画/経路は航空機の正面にある直線経路であると仮定する。2つの対流セル102、104が、平面気象ディスプレイに示されている。これらのセルは、どちらも飛行計画/経路(航空機アイコン100から延びている点線として示されている)からおおよそ等距離にあり、飛行計画に向かってほぼ同じ速さで移動している。予測される交差点108、110は、黒い十字記号(クロス)で示されている。黒い破線112、114は、それぞれの交差点108、110へのセル102、104の経路を示している。
【0033】
セルの将来位置が有する脅威のレベルに応じて、十字記号を別に与えることができる。例えば、交差点108の十字記号は黄色や点滅状態で表示するが、交差点110の十字記号はそうではなく表示するなどである。
【0034】
セル102、104は同じ速さを有するので、遠い方にあるセル104は、航空機が接近するまでにより長い距離を移動することになる。この追加的な時間のため、セル104は、航空機アイコン100の前方にある飛行計画/経路と既に交差してしまっていて、航空機の経路には干渉しないことになる。他方で、航空機アイコン100が近い方のセル102に接近するにはより短時間ですむため、セル102が交差点108に到達するまでに移動する距離は、より短い。結果的に、交差点108は飛行経路に非常に近いことが予測され、従って、迂回が正当化される。
【0035】
ある実施例では、航空機の飛行経路/計画からスレショルド距離の範囲内にある交差点だけが、表示装置44に示される。
別の実施例では、複数の活動中のセルが航空機の予め定められた近傍に存在する場合には、所定の数の交差点だけが表示される。例えば、航空機の飛行経路/計画に最も近い5つの交差点だけが、表示装置44に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(20)に搭載されたレーダ・システムによって実行される方法であって、
少なくとも1つの気象異常に関する位置、移動方向及び速度情報を受け取るステップと、
前記受け取られた位置、移動方向及び速度情報と、前記航空機の位置及び現在の速さ情報とに基づいて、前記少なくとも1つの気象異常に関する交差点を決定するステップと、
前記交差点を表示装置(44)において第1のインジケータとして表示するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記交差点を関連する気象異常と関連させる第2のインジケータを更に表示するステップを更に含み、前記第2のインジケータは前記気象異常と前記第1のインジケータとの間で接続された直線を含み、決定された交差点が前記航空機の予め定められた飛行経路からスレショルド距離の範囲内にあるか、又は、決定された交差点が前記航空機の予め定められた飛行経路に最も近接している所定個の交差点の中の1つである場合には、前記表示するステップは第1のインジケータを表示するステップを含む、方法。
【請求項3】
航空機に配置されたシステム(30)であって、
反射率データを受け取るように構成されたレーダ・コンポーネント(40)と、
前記反射率データに基づいて少なくとも1つの気象異常に関する位置、移動方向及び速度情報を決定し、前記航空機に関して受け取られた位置、移動方向及び速度情報と位置及び現在の速さ情報とに基づいて前記少なくとも1つの気象異常に関する交差点を決定し、前記決定された交差点に基づいて第1のインジケータを生成するように構成されたプロセッサ(42)と、
前記第1のインジケータを表示するように構成された表示装置(44)と、
を備え、
前記プロセッサは、更に、前記交差点を関連する気象異常と関連付ける第2のインジケータを生成するように構成され、前記表示装置は更に前記第2のインジケータを表示するように構成され、前記第2のインジケータは前記気象異常と前記第1のインジケータとの間に接続された直線を含み、
前記プロセッサは、決定された交差点が前記航空機の予め定められた飛行経路からスレショルド距離の範囲内にあるか、又は、決定された交差点が前記航空機の予め定められた飛行経路に最も近接している所定個の交差点の中の1つである場合には、第1のインジケータを表示するように構成されている、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−126394(P2012−126394A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−274462(P2011−274462)
【出願日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】