説明

航空機内での使用に適した電子機器および動作方法

【課題】航空機内での使用に適した動作モードで動作する電子機器を提供する。
【解決手段】動作環境の気圧情報に基づいて電子機器が航空機内で動作しているか地上で動作しているかを判断する初期判断ステップ(107、109、111)を有する。動作環境の騒音情報に基づいて前記電子機器が航空機内で動作しているか地上で動作しているかを判断する追加判断ステップ(125)を有する。初期判断ステップと追加判断ステップの結果に基づいて電子機器が航空機内での使用に適した航空機モードで動作をするステップ(127)または地上での使用に適した地上モードで動作をするステップ(115)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に航空機内での使用に適した動作をさせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナル・コンピュータ(以下、ノートPC)やPDAなどの携帯式情報機器は、航空機内でも使用されることがある。航空機内では、無線通信が制限されたり室内が暗かったりしており、ノートPCの使用環境は地上とは異なる。航空機内で無線デバイスが実装されたノートPCを使用する場合に、ユーザは客室乗務員の指示にしたがって無線デバイスが動作しないように設定する必要がある。
【0003】
特許文献1は、周囲状況を検出するセンサ回路を備えた無線端末が、交通機関や病院などの無線通信が悪影響を及ぼす環境におかれたときに電源をオフにする技術を開示する。センサとしては、気圧センサおよび音波センサが例示されている。特許文献2は、携帯電話装置の移動、制止、移動変化などの利用状態を検出して利用モードを判定し、利用モードに応じた動作モードに移行させる技術を開示する。センサとしては振動センサおよび加速度センサが例示されている。
【特許文献1】特開2002−359870号公報
【特許文献2】特開2003−204390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノートPCには、WAN、LAN、および無線USBといったようなさまざまな無線デバイスが装備されている。そしてこれらの無線デバイスはモバイル環境でも動作する。またノートPCは、システム・オフ状態およびシステム・オン状態に加えて、起動までの時間を短縮するためのサスペンド状態およびハイバネーション状態などの複数の電源モードで動作する。そして、サスペンド状態やハイバネーション状態でも無線デバイスを動作させておいてアクセス・ポイントのサーチおよび接続を継続している場合がある。
【0005】
航空機内では離着陸時を除けばノートPCの利用はできるがノートPCに搭載されている無線デバイスの機能は停止するように求められる。しかし、操作に不慣れなユーザは航空機内で無線デバイスの機能停止を適切に行えない場合がある。特にサスペンド状態では、ノートPCの蓋が閉じられてシステムが停止しているのでユーザは無線デバイスも停止していると勘違いして鞄に入れたままにしておくこともある。航空機内に持ち込まれたノートPCは、ユーザが無線デバイスに対して適切な停止操作をしない場合においても、電波を発射しないように構成されていることが望ましい。さらに無線デバイスの電源がオフになる電源モードで動作する場合以外でも、また電源モード間のいずれの遷移のときでも無線デバイスから電波を発射しないようになっていることが望ましい。
【0006】
航空機の座席には、ノートPCに電力を供給するアウトレットが設けられており、ユーザはそれにAC/DCアダプタを接続して長時間ノートPCを使用することができる。ノートPCの最大消費電力はAC/DCアダプタの容量よりも小さいが、バッテリィの充電とシステムの高負荷動作が重なると、AC/DCアダプタの容量の限界までアウトレットから電力を受け取り、アウトレットの電力回路を遮断してしまうこともある。したがって、ノートPCはユーザが特別な注意を払わなくてもアウトレットに許容される電力の範囲で動作することが望ましい。
【0007】
航空機の室内は暗いため、ディスプレイの輝度を地上と同じように設定すると、ディスプレイがまぶしかったり周囲に迷惑をかけてしまったりするので輝度を低く設定する必要がある。このように航空機内にノートPCを持ち込むときには、航空機内での使用に適するようにさまざまな設定をしなければならない。航空機内は暗かったり座席が狭かったりしてユーザが着席後の短時間のうちに航空機内の使用に適するようにノートPCの設定を変更することは容易ではない。
【0008】
したがって、ノートPCはユーザが何ら操作をしないでも航空機内に持ち込まれたときは航空機内での使用に適するように自動的に動作し、航空機から離れて地上に持ち出されたときは地上での動作に適するように自動的に動作することが望ましい。しかし、自動的に動作させる場合は、ノートPCの動作環境を正確に検出しないと、結局ユーザはそのような機能を停止してしまうことになる。さらにノートPCは、バッテリィの消費を極力抑制する必要があるため、ノートPCの動作環境が航空機内か地上かを区別する回路もバッテリィをできるだけ消費しないことが望ましい。
【0009】
そこで本発明の目的は、動作環境が地上であるか航空機内であるかを正確に判断してそれぞれの環境に適した動作モードで動作する電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、ユーザが特別な設定や操作をすることなく地上または航空機内の使用に適した動作モードで動作する電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、複数の電源モードを備える電子機器のいずれの電源モードでもあるいは電源モード間のいずれの遷移でも航空機内での電波の発射を防ぐことができる電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような電子機器の動作方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる電子機器は、航空機内で動作するか地上で動作するかを判断して自動的にそれぞれの動作環境に適した動作モードで動作する。航空機モードは、航空機内での使用に適するようにコンピュータの各デバイスが動作する状態をいう。航空機モードは、たとえば、航空機の座席に用意されたAC/DCアダプタ用のアウトレットの容量以下で電子機器が動作するように消費電力を制御するアイテムを含む。航空機モードは、バッテリィ動作のときにAC/DCアダプタから電力の供給を受けて動作している場合よりも消費電力が小さくなるように電子機器の動作を制御するアイテムを含む。
【0011】
さらに航空機モードは、ディスプレイの輝度を地上で動作させるときよりも低下させたりキーボード・ライトを点灯させたりするアイテムも含む。さらに航空機モードは無線デバイスをディスエーブルに設定するアイテムを含む。航空機モードを構成するアイテムは電子機器が地上で動作するときにもユーザの操作により実行できるものであってもよいが、本発明においてはそれらのアイテムを初期判断と追加判断の双方において電子機器が航空機内で動作していると決定したときに実行する。制御部は、プロセッサやその他のデバイスとコンピュータ・プログラムにより構成することができる。制御部は、初期判断を行うデバイス、追加判断を行うデバイス、および航空機モードで動作させるデバイスなどのように複数のデバイスを含んで構成してもよいし、部分的に重複するデバイスを含んで構成してもよい。
【0012】
電子機器は気圧センサとマイクロフォンを備え、気圧情報を利用した初期判断と騒音情報を利用した追加判断との双方において電子機器が航空機内で動作していると決定したときに航空機モードで動作する。初期判断では、気圧情報が水平飛行中の航空機室内の気圧を示すときに電子機器が航空機内で動作していると決定することができる。また、初期判断では、時間当たりの気圧情報の変化率が上昇または下降する航空機内の気圧情報の時間当たりの変化率を示すときに電子機器が航空機内で動作していると決定することができる。
【0013】
さらに電子機器は加速度センサを備える、初期判断は、加速度センサが検出した加速度情報を利用した判断を含むことができる。電子機器は、気圧情報、気圧変化率、または加速度情報のいずれかに基づく初期判断と騒音情報に基づく追加判断の双方において電子機器が航空機内で動作していると決定したときに航空機モードで動作すれば、地上と航空機内を誤って認識する可能性を少なくすることができる。また、複数の初期判断は相互に補完し会って、航空機が滑走し始めてから着陸して停止するまでのさまざまな航空状態にも対応して動作環境を正確に認識することができる。
【0014】
制御部は初期判断に基づいて無線デバイスをディスエーブルに設定し、追加判断に基づいて、それ以降は、ディスエーブルの設定を維持して航空機モードで動作させたりイネーブルに設定して地上モードで動作させたりすることができる。ユーザが無線デバイスをディスエーブルに設定できるのは通常はシステム・オンの状態であるため、あらかじめ無線デバイスをディスエーブルに設定しないでシステムを起動すると、システム・オンになってユーザがディスエーブルの操作をする前に電波が発射される場合がある。本発明では、初期判断を電子機器がシステム・オフ状態からシステム・オン状態に移行するまでの間に行うことにより、ユーザが無線デバイスをディスエーブルに設定できない状態のときにも電波が発射されることを防ぐことができる。
【0015】
また電子機器は、サスペンド状態で動作している間に初期判断を実行して無線デバイスをディスエーブルに設定することができる。したがって、サスペンド状態で電波を発射するような電子機器をユーザがサスペンド状態にして航空機内に持ち込んだ場合でも初期条件が成立すると無線デバイスはディスエーブルに設定される。電子機器は、初期判断および追加判断またはそのいずれか一方において、電子機器が地上で動作していると決定したときに地上モードで動作する。したがって、初期判断において航空機内で動作していると決定されても、追加判断において地上で動作していると決定されれば電子機器は地上モードで動作するので、気圧条件や加速度条件が航空機内と類似した地上環境で使用する場合でも誤った動作モードを選択する可能性が低くなる。
【0016】
マイクロフォンによる騒音の検出は、初期判断において航空機内で動作していると決定したときにだけ行うようにすれば、地上で動作するときに定期的にマイクロフォンを動作させて騒音レベルを測定する必要がなくなり、バッテリィの消耗を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、動作環境が地上であるか航空機内であるかを正確に判断してそれぞれの環境に適した動作モードで動作する電子機器を提供することができた。さらに本発明により、ユーザが特別な設定や操作をすることなく地上または航空機内の使用に適した動作モードで動作する電子機器を提供することができた。さらに本発明により、複数の電源モードを備える電子機器のいずれの電源モードでもあるいは電源モード間のいずれの遷移でも航空機内での電波の発射を防ぐことができる電子機器を提供することができた。さらに本発明により、そのような電子機器の動作モードの動作方法およびプログラムを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態にかかるノートPC10の外形図である。ノートPC10は、本体側筐体11およびディスプレイ側筐体13を備える。本体側筐体11はキーボードおよびポインティング・デバイスを備えた入力部15を含み、ディスプレイ側筐体13は液晶ディスプレイ17を備える。さらに、本体側筐体11およびディスプレイ側筐体13は、それぞれの端部でヒンジ19によって連結され、これらの筐体を互いに開閉する方向に回動自在となっている。本体側筐体11およびディスプレイ側筐体13を互いに閉じた状態にすると、入力部15および液晶ディスプレイ17が内側に隠れ、カバーされた状態となる。
【0019】
また、ディスプレイ側筐体13の外縁には、ネットワークに接続するためのLANおよびWAN、マウスやキーボードなどに接続するためのブルーツース(Bluetooth)、およびノートPCと周辺機器を接続するための無線USBにそれぞれ対応した複数のアンテナが内蔵されている。ディスプレイ側筐体13の上部枠の中央部には、ディスプレイ側筐体13を開いたときにキーボードを照らすためのキーボード・ライト21が設けられている。キーボード・ライト21は、航空機内やその他の暗い室内でノートPC10を操作する際に、キーボードのキーを操作して点灯することができる。
【0020】
図2は、ノートPC10に実装されたハードウェアの構成を示す概略ブロック図である。CPU31は、ノートPC10の中枢機能を担う演算処理装置で、OS、BIOS、デバイス・ドライバ、あるいはアプリケーション・プログラムなどを実行する。CPU31は、CPUブリッジ33およびI/Oブリッジ41のチップ・セットにさまざまなバスを経由して接続された各デバイスを制御する。CPUブリッジ33は、メイン・メモリ35へのアクセス動作を制御するためのメモリ・コントローラ機能や、CPU31と他のデバイスとの間のデータ転送速度の差を吸収するためのデータ・バッファ機能などを含む。
【0021】
メイン・メモリ35は、CPU31が実行するプログラムの読み込み領域、処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。ビデオ・コントローラ39はCPUブリッジ33に接続され、グラフィック・アクセラレータおよびVRAMを有し、CPU31からの描画命令を受けて描画すべきイメージを生成しVRAMに書き込み、VRAMから読み出されたイメージを描画データとして液晶ディスプレイ装置17に送る。
【0022】
無線モジュール47は、たとえばIEEE802.11nに準拠した多入力多出力(MIMO)の無線通信に適合しており、PCI Express X1バスおよびそれとは別個に設けられたアクセス・ポイント検出専用のバスを介してI/Oブリッジ41に接続され、アンテナ48を介してWANやLANなどの無線ネットワークとの間でデータ通信を行う。また無線モジュール47は、I/Oブリッジ41からアクセス・ポイント検出専用バスを介して送信されたアクセス・ポイント検出コマンドを受け取って、接続可能なアクセス・ポイントを検出し接続を維持する機能を備える。
【0023】
オーディオ・コントローラ43は、PCI Express X1バスを介してI/Oブリッジ41に接続され、マイクロフォン45で検出された騒音を処理して騒音レベルを測定する。I/Oブリッジ41は、シリアルATAインターフェイスおよびUSBインターフェイスとしての機能も含み、シリアルATAを介してハードディスク・ドライブ(HDD)42に接続される。HDD42には、オペレーティング・システム(OS)、デバイス・ドライバ、アプリケーション・プログラムなどの周知のプログラムの他、本実施の形態にかかるユーティリティ・マネージャのプログラムが格納される。ユーティリティ・マネージャについては後に説明する。
【0024】
さらにI/Oブリッジ41は、PCIバスまたはLPCバス50を介して、従来からノートPC10に使用されているレガシー・デバイス、あるいは高速なデータ転送を要求しないデバイスに接続される。LPCバス50には、エンベデッド・コントローラ(EC)49、I/Oコントローラ65、およびBIOSを格納したフラッシュROM63などが接続されている。EC49は、8〜16ビットのCPU、ROM、RAMなどで構成されたマイクロ・コンピュータであり、さらに複数チャネルのA/D入力端子、D/A出力端子、タイマー、およびディジタル入出力端子を備えている。EC49には、それらの入出力端子を介して気圧センサ51、加速度センサ52および電源装置を制御するパワー・コントローラ53が接続されており、ノートPC10の内部の動作環境の管理にかかるプログラムをCPU31とは独立して実行させることができる。
【0025】
気圧センサ51は、ノートPC10が動作する周辺環境の気圧を測定してディジタル信号としてEC49に出力する。気圧センサ51は、1気圧〜0.8気圧程度の地上と航空機内の気圧範囲を測定できるものであればよい。EC49は、気圧センサ51から受け取った気圧情報および気圧情報から計算した気圧の時間的な変化率(これを気圧変化率という。)を内部のRAMに記憶する。気圧変化率は、航空機が離陸して水平飛行に入るまでの状態および水平飛行から着陸するまでの状態を検出する目的で計算される。EC49は、最初に電力が供給されたときは、一旦必ず無線モジュール47をディスエーブルに設定する。
【0026】
加速度センサ52は、ノートPC10が航空機で運ばれるときの加速度を検出してアナログ信号としてEC49に出力する。EC49は、加速度センサ52から受け取った加速度情報をディジタル信号に変換して内部のRAMに記憶する。EC49とパワー・コントローラ53との間は、専用のバスであるSPI(Serial Peripheral Interface)によって接続される。
【0027】
パワー・コントローラ53には、リッド・センサ54およびDC−DCコンバータ55が接続される。ディスプレイ側筐体13には永久磁石が埋め込まれており、ノートPC10が閉じられた状態で、永久磁石は本体側筐体11に設けられたリッド・センサ54に接近する。リッド・センサ54は、永久磁石からの磁力を感知することによりノートPC10が閉じられた状態か開かれた状態かを検出することができる。
【0028】
DC−DCコンバータ55は、AC/DCアダプタ61またはバッテリ57から供給される直流電力を、ノートPC10を動作させるために必要な複数の電圧に変換し、さらに電源モードに応じて定義された電力供給区分に基づいて、各々のデバイスに対して電力を供給する。AC/DCアダプタ61は一次側が商用電源や航空機の座席のアウトレットに接続されて交流電圧を直流電圧に変換し、二次側がノートPC10に対して着脱可能である。AC/DCアダプタ61はノートPC10に接続されると、バッテリィ57を充電する充電器59とDC−DCコンバータ55に電力を供給する。
【0029】
I/Oコントローラ65には、キーボードやマウスなどが接続される。フラッシュROM63は不揮発性で記憶内容を電気的に書き替え可能なメモリであり、システムの起動および管理に使われる基本プログラムであるシステムBIOS(SSO Shell Bios)、電源および筐体内の温度などを管理するソフトウェアである各種ユーティリティ、ノートPC10の起動時にハードウェアの試験や初期化を行うソフトウェアであるPOST(Power-On Self Test)などを格納する。
【0030】
EC49は、パワー・コントローラ53を介してDC−DCコンバータ55を制御して、ノートPC10の電源モードに応じて定義された4つの電力系統から各デバイスに電力を供給することができる。図3は、ノートPC10の4つの電源モードに対応する電力系統と電力の供給範囲を示す図である。図4は、ノートPC10における4つの電源モード間での状態遷移を示す状態遷移図である。ここでは、ノートPC10の電源モードとして、第1のシステム・オフ状態(第1のオフ状態)71、第2のシステム・オフ状態(第2のオフ状態)73、サスペンド状態75およびシステム・オン状態(オン状態)77が定義され、ノートPC10は航空機内および地上のいずれでもこれらの電源モードで動作する。なお、本明細書では、第1のオフ状態71、第2のオフ状態73、およびサスペンド状態75のようにノートPC10をユーザが使用する状態でない場合もノートPCは動作するという表現をする。
【0031】
そして図4には、各電源モードの間には遷移79a、79b、80a、80b、81a、81b、82a、82bが発生することが示されている。第1のオフ状態71は、システム・オフのときにAC/DCアダプタ61が接続されていない状態であり、ノートPC10は、起動時に電源を投入するパワー・コントローラ53にだけ電力を供給する。第1のオフ状態71は4つの電源モードの中で電力供給範囲が最も狭くなるように定義されて、システム・オフの状態におけるバッテリィの消耗を防いでいる。
【0032】
第2のオフ状態73は、システム・オフのときにAC/DCアダプタ61がノートPC10に電力を供給している状態であり、バッテリィ57を充電したり、無線モジュールを動作させたりするために第1のオフ状態よりは広い範囲に電力が供給される。システム・オフにする前に実行中のシステムの状態をHDD42に格納するハイバネーション状態(休止状態)は、第1のオフ状態71または第2のオフ状態73に相当する。サスペンド状態は、メイン・メモリ35の記憶を保持し、その後レジュームさせるのに必要な回路以外のへの電力供給を停止した状態である。オン状態は、すべてのデバイスに電力を供給し、アプリケーションまたはOSからの要求でいずれのデバイスも動作が可能な状態である。DC−DCコンバータ55は、これらの4つの電源モードに応じて必要なデバイスに対して電力を供給するために、第1〜第4の4つの電力系統で構成されている。
【0033】
第1の電力系統は、パワー・コントローラ53に電力を供給し、全ての電源モードでオンになる。パワー・コントローラ53は、第1の電力系統に接続されることによりすべての電源モードでDC/DCコンバータ55を制御することができ、ノートPC10の電源スイッチがオンになったときには、シーケンシャルに各デバイスに電源を供給することができるようになっている。
【0034】
第2の電力系統は、第1のオフ状態71を除く上位3つの電源モードでオンになる。第2の電力系統はEC49、I/Oブリッジ41、無線モジュール47、リッド・センサ54、気圧センサ51および加速度センサ52に電力を供給する。第3の電力系統は、サスペンド状態75およびオン状態77のときにオンになる。第3の電力系統はサスペンド状態75でも記憶内容を保持する必要があるメイン・メモリ35、およびメイン・メモリ35の記憶保持に必要なデバイスに電力を供給する。第4の電力系統は、ユーザがノートPC10を使用することができる状態であるオン状態77でのみ電力を供給する系統である。第4の電力系統はCPU31、HDD42、キーボード・ライト21、LCD17、およびマイクロフォン45などの第1〜第3の電力系統で電力が供給されないすべてのデバイスに電力を供給する。
【0035】
図2に戻って、パワー・コントローラ53は、電源モードに対応した電力の供給系統に関する情報をあらかじめ記憶しておきDC−DCコンバータ55を制御し動作モードに応じて電力供給区分を変更することができる。またパワー・コントローラ53は、電源モードを変更するイベントが発生した場合にそのイベントの内容を記録するレジスタを有する。
【0036】
EC49は、専用のバスであるSPIを介してパワー・コントローラ52に接続され、パワー・コントローラ52のレジスタの内容を読み取ることができる。たとえば第1のオフ状態から第2のオフ状態またはオン状態へ移行した場合は、それまで電力が供給されていなかったEC49に電力が供給される。電力が供給されて動作を開始したEC49は、レジスタの内容を読み取り、それによって自らが何のイベントで動作を開始したのかを知ることができる。また、EC49は、専用の制御線を通じて無線モジュール47に信号を送って無線モジュール47にアクセス・ポイントを検出させたり、無線モジュール47をイネーブルまたはディスエーブルに設定したりすることができる。
【0037】
I/Oブリッジ41および無線モジュール47は、第2の電力系統に接続されておりサスペンド状態75中にアクセス・ポイントを検出して無線LANとの接続ができるようになっている。したがってユーザは、ノートPC10をサスペンド状態75からオン状態77に移行させたとき(遷移81a)に、ただちに無線モジュール47を使用することができる。I/Oブリッジ41は、EC49から受け取ったアクセス・ポイントの検出コマンドを無線モジュール47に送る。検出コマンドを受け取った無線モジュール47は定期的にアクセス・ポイントをサーチして、接続可能なアクセス・ポイントに対する接続を行う。そして、第2のオフ状態73やサスペンド状態75において無線LANを通じて受け取ったマジック・パケットを、EC49に送りワイヤレスWOL(Wake On Lan)を実現する。ノートPC10はさらに、図2に示していない無線USBやブルートゥース(Bluetooth)などの無線デバイスやその他のデバイスを含んでいる。
【0038】
ノートPC10は図4にした、第1のオフ状態71、第2のオフ状態73、サスペンド状態75、およびオン状態77のいずれかの電源モードで動作することになっており、それに応じて各電力系統がオンまたはオフに制御される。また、ノートPC10は各電源モードにおいて地上または航空機内で動作する。地上は、0.8気圧程度になる高度2000m以下の高所での使用もカバーできるようになっている。以下、ノートPCが航空機での使用に適するようにデバイスが動作する状態を航空機モードといい、地上での使用に適するようにデバイスが動作する状態を地上モードということにする。ノートPC10は、いずれの電源モードにおいてもまた、いずれかの電源モードから他の電源モードに遷移するときにも、動作環境が地上か航空機内かを認識して、地上モードまたは航空機モードで動作することができる。
【0039】
図5は、ノートPC10を航空機モードまたは地上モードで動作させるユーティリティ・マネージャ91の構成を示す図である。ユーティリティ・マネージャ91は、OS上で動作するユーティリティ・プログラムで、HDD42に格納されており、オン状態77のときにメイン・メモリ35に読み出されてCPU31により実行される。航空機モード・テーブル93は、ノートPC10の航空機モードでの動作状態を定義するデータ構造である。ユーティリティ・マネージャ91は、ノートPC10が航空機内で動作することを認識したときには、地上モードに対して航空機モード・テーブルに定義されたアイテムの修正を加えてノートPC10を航空機モードで動作させる。ユーティリティ・マネージャ91は、ノートPC10が地上で動作することを認識したときには、航空機モード・テーブル93に定義されたアイテムの修正を加えないでノートPC10を地上モードで動作させる。
【0040】
航空機モード・テーブル93は、ノートPC10に実装されたすべての無線デバイスを航空機内ではディスエーブルに設定する第1のアイテムを含む。航空機モード・テーブル93は、ノートPC10が航空機内でAC/DCアダプタ61を使用できるときはAC/DCアダプタ61が受け取る電力を所定値以内に制限するようにノートPC10のデバイス・コントロールを行う第2のアイテムを含む。航空機モード・テーブル93は、ノートPC10が航空機内でAC/DCアダプタ61を使用できないときはバッテリィでの動作時間を延長するために、AC/DCアダプタ61を使用できるときよりも消費電力が小さくなるようにノートPC10のデバイス・コントロールを行う第3のアイテムを含む。
【0041】
第2のアイテムおよび第3のアイテムにおけるデバイス・コントロールの内容としては、CPU31の動作周波数の低減、LCD17の輝度やリフレッシュ・レートの低減、ビデオ・コントローラ39のVRAMやグラフィック・アクセラレータの周波数の低減、メイン・メモリ35のリフレッシュ・レートの低減などの周知の方法を採用することができる。航空機モード・テーブル93は、LCD17の輝度を地上モードで使用するときよりも下げて暗闇に適した設定にする第4のアイテムを含む。さらに航空機モード・テーブル93は、キーボード・ライト21を点灯させる第5のアイテムを含む。第1のアイテム〜第5のアイテムは、ノートPC10が地上で動作するときにもユーザの設定により実行可能であるが、本実施の形態ではノートPC10が自ら航空機内で動作することを認識したときに自動的に実行するようになっている。
【0042】
無線デバイスからの電波の発射はノートPC10がオン状態77以外の電源モードでも発生するが、第2〜第5のアイテムのすべてまたはいずれかはノートPC10がオン状態77のときにだけ発生する。また、航空機内で無線デバイスから電波を発射しないようにすることは重要な事項である。したがって、本実施の形態では、航空機モードを上記の第1〜第5のアイテムとして定義しているが、第1のアイテムの実行開始条件はその他のアイテムの実行開始条件とは異なる。ただし、図6で説明するように、第1のアイテムも最終的には第2〜第5のアイテムと同じ判断に基づいて実行されるので、航空機モードの一部を構成する。ユーティリティ・マネージャ91は、ノートPC10が航空機内で動作していることを認識したときは、ノートPC10に搭載されたすべての無線デバイスをディスエーブルに設定して電波の発射を停止し、さらに、ユーザによる操作でも無線デバイスをイネーブルにできない状態にする。
【0043】
なお、航空機が安定飛行中には、無線デバイスの使用が許可される可能性も考えられるが、そのような場合に対処するために、ノートPC10には使用する無線デバイスを一時的にイネーブルにする回路を設けてもよい。第2の電力系統がオンになっているときには無線モジュール47に電力が供給されるので、ノートPC10が航空機内で動作するときに、図4の第2のオフ状態73、サスペンド状態75、オン状態77、およびそれらに向かう遷移79a、81a、81b、80a、80b、82bで無線デバイスから電波が発射しないようになっている必要がある。
【0044】
航空機モード選択画面提供プログラム94は、航空機モードの各アイテムに関して選択可能なデバイス・コントロールの内容、キーボード・ライト21の点灯の有無、LCD輝度の設定などをユーザに選択させるための画面を提供する。また、航空機モード選択画面提供プログラム94は、航空機の座席に用意されたAC/DCアダプタ用のアウトレットの定格電力の設定画面を提供する。さらに、航空機モード選択画面提供プログラム94は、ノートPC10が航空機モードで動作したときにはLCD17にそのことを表示する。さらに航空機モード選択画面提供プログラム94は、ユーザが航空機モードと地上モードの自動切り替えをイネーブルまたはディスエーブルに設定する設定画面を提供する。航空機モード選択画面提供プログラム94に対してユーザが設定した内容は、航空機モード・テーブル93の内容に反映される。
【0045】
航空機モード判定プログラム95は、EC49から受け取ったイベントに基づいてマイクロフォン45による騒音レベルの測定を行い、ノートPC10が地上で動作するか航空機内で動作するかを決定する。最大電力管理プログラム96は、ユーザにより設定されたAC/DCアダプタ61が受け取ることができる最大電力に基づいてデバイス・コントロールを行う。バッテリィ動作管理プログラム97は、ノートPC10がバッテリィで動作しているときに、動作時間を延長するためにAC/DCアダプタ61が接続されているときよりも消費電力が低下した状態になるようにデバイス・コントロールをする。
【0046】
図6は、ノートPC10が第1のオフ状態71から遷移79aを経由してオン状態77に移行するときの動作を示すフローチャートである。航空機内ではノートPC10を第1のオフ状態71で動作させている限り無線モジュール47から電波が発射されることはない。しかし、ノートPC10の使用が許可されたときにユーザが誤った操作を行うと航空機内で無線モジュール47から電波が発射される可能性がある。ノートPC10は、動作環境が航空機内であることを判断すると、ユーザの誤った操作により無線モジュール47から電波が発射されることを防ぐとともに、航空機内での使用に適した動作を行う。
【0047】
ブロック101でユーザによりノートPC101の電源スイッチがオンに操作される。パワー・コントローラ53は所定の順番で第2の電力系統、第3の電力系統、および第4の電力系統をオンにしていく。第2の電力系統がオンになると、EC49は常に、ブロック103でノートPC10に搭載された無線モジュール47を含むすべての無線デバイスを一旦ディスエーブルに設定する。ノートPC10は、EC49が電源の供給を受けたときには必ずすべての無線デバイスを一旦ディスエーブルに設定することで、ノートPC10の電源モードが遷移する間に航空機内で不用意に電波が発射されることを防止することができる。
【0048】
特に電源モードが遷移する間はユーザが無線デバイスをディスエーブルに設定することができないため、あらかじめ無線デバイスをディスエーブルに設定しないで電源スイッチをオンにした場合は遷移中に電波が発射されてしまうので、EC49はこのような状態を防ぐことができる。なお、以後すべての無線デバイスを無線モジュール47で代表させて説明する。CPU31は、フラッシュROM63のBIOSを読み込んで、POSTを実行し各デバイスを認識して試験および初期化を行う。CPU31が無線モジュール47を初期化してもすでに無線モジュール47はディスエーブルに設定されているので電波を発射することはない。
【0049】
第2の電力系統がオンになるとブロック105で気圧センサ51および加速度センサ52が動作して、EC49は、気圧情報および加速度情報を定期的に内部のRAMに記憶する。EC49は、さらに気圧変化率を計算して定期的にRAMに記憶してブロック107、109、111に移行してノートPC10が航空機内で動作しているか地上で動作しているかの判断を行う。ブロック107、109、111の3つの条件のそれぞれを初期判断ということにし、初期判断の結果ノートPC10が航空機内で動作すると決定した場合を初期条件が成立したということにする。EC49は第2の電力系統がオンのときに定期的に3つの初期判断を行う。
【0050】
ブロック107では、EC49は気圧情報が所定の高度で水平飛行している航空機の室内気圧を示していると判断したときは初期条件が成立したと決定してブロック121に移行する。気圧情報がそれ以外を示していると判断したときはブロック113に移行する。ちなみに航空機室内は地上より低い0.8hPA程度に与圧されている。この気圧は地上では2000mの高度の気圧に相当する。本実施の形態では、気圧情報が0.8hPA近辺の場合はノートPC10が航空機内で動作していると決定すると2000m未満の地上と航空機内を区別することができる。
【0051】
ブロック109では、EC49は加速度が航空機の離着陸時の加速度を示していると判断したときは初期条件が成立したと決定してブロック121に移行する。加速度がそれ以外を示している場合は、ブロック113に移行する。地上でノートPC10が落下した場合には大きな加速度が発生するので、そのような加速度情報が生成されたときは地上で動作していると判断することが望ましい。また、加速度情報が地上の輸送機関の最高の加速度と航空機の最大の加速度の間を示しているときは、初期条件が成立したと決定することができる。航空機が離陸してから一定速度で巡航する状態に近づくに従って加速度は低下し、また一定速度から着陸するまでにマイナスの加速度は増大する。加速度情報を利用することで、離陸から一定高度までおよび一定高度から着陸までの飛行状態において航空機内と地上を区別することができる。
【0052】
ブロック111の初期判断では、EC49は気圧変化率が航空機の上昇中または下降中の変化率を示していると判断したときは初期条件が成立したと決定してブロック121に移行する。気圧変化率がそれ以外を示している場合は、ブロック113に移行する。ブロック107の初期判断では、気圧センサが測定した気圧情報が、所定の高度で飛行する航空機の室内の気圧に相当するか否かを判断しているが、気圧情報だけでは地上の高所と航空機内とを完全に区別することができない場合がある。特に、航空機の高度が低い間は気圧だけでは地上と航空機内とを区別することができない。ブロック109の初期判断では、航空機が離陸を開始してから一定速度に近づく前のプラスの加速度または着陸時のマイナスの加速度により地上と航空機内とを区別する。しかし、加速度情報では航空機が一定速度に近づいたときに航空機内と地上を区別することができない場合がある。
【0053】
ブロック111の初期判断では、航空機の上昇による時間当たりの気圧の低下率または下降による時間当たりの気圧の上昇率に基づいて、航空機が所定の高度に向けて航行する状態であるかあるいは着陸に向けて航行する状態であるか否かを判断する。このように、ブロック107では主として一定の巡航高度で飛行する状態、ブロック109では主として離着陸時の滑走状態、ブロック111では主として離着陸時の上昇または下降状態をそれぞれ検出することで、離陸から着陸までノートPC10が航空機内で動作しているか地上で動作しているかの初期判断をしている。
【0054】
そして3つの初期判断はさまざまな飛行状態の中で矛盾した決定をするが、本実施の形態では、3つの初期判断のいずれかにおいて初期条件が成立したと判断したときにブロック121に移行し、すべての初期判断において初期条件が成立しないときにブロック113に移行することにする。この方法に代えてブロック107の初期判断と他のいずれか1つの初期判断において初期条件が成立したときにブロック121に移行するようにしてもよい。
【0055】
ブロック121およびブロック113では、CPU31がメイン・メモリ35にOS、デバイス・ドライバ、アプリケーション・プログラムなどを読み出してノートPC10の起動が完了する。このとき、ユーティリティ・マネージャ91もメイン・メモリ35に読み込まれる。
【0056】
EC49は、ブロック107、109、111のいずれかの初期判断で初期条件が成立したと決定したときは、ブロック121でノートPC10の起動が完了した後に、ユーティリティ・マネージャ91にノートPC10が航空機内で動作していることを示すイベントを通知する。イベントを受け取ったユーティリティ・マネージャ91の航空機モード判定プログラム95は、ブロック123で、オーディオ・コントローラ43のドライバを制御してマイクロフォン45に周囲環境の騒音レベルを測定させる。
【0057】
マイクロフォン45は、航空機特有のエンジン音による室内の騒音レベルを測定する。マイクロフォン45による騒音の測定は、ブロック107、109、111におけるいずれかの初期判断の結果、初期条件が成立したときだけ行われる。初期条件が成立しないときは、EC49は騒音の測定を実施しないため、ノートPC10が地上で動作している場合にはCPU31がポーリングによりマイクロフォン45に騒音の測定をさせる場合に比べてバッテリィの消費を押さえることができる。
【0058】
オーディオ・コントローラ43が騒音レベルを測定してユーティリティ・マネージャ91に伝えると、ブロック125で航空機モード判定プログラム95は、騒音レベルに基づいてノートPC10が航空機内で動作しているか地上で動作しているかの追加判断をする。騒音レベルに加えて、航空機エンジンの音の周波数を判断基準に加えてもよい。騒音レベルが所定値以上の場合は、航空機モード判定プログラム95はノートPC10が航空機内で動作していると決定する。この場合を追加条件が成立したということにする。
【0059】
追加条件が成立するとブロック127に移行し、ユーティリティ・マネージャ91は航空機モード・テーブル93に定義された内容のアイテムに従ってノートPC10を動作させる。無線モジュール47はすでにディスエーブルに設定されているが、ブロック125で初期条件と追加条件が成立したことに基づいてディスエーブルの設定が維持され、航空機モードに設定されたことが確定する。その後ノートPC10の使用が終わると、ユーザはキーボードまたはマウスを操作してノートPC10を第1のオフ状態71(ブロック131)またはサスペンド状態75(ブロック129)に移行させる(遷移81b、79b)。
【0060】
ブロック125で追加条件が成立しないと決定した場合は、航空機モード判定プログラム95はノートPC10が地上で動作していると決定する。そして、ユーティリティ・マネージャ91はブロック114でEC49にイベントを送って無線モジュール47をイネーブルに設定させ、ブロック115でノートPC10を地上モードで動作させる。その後ノートPC10の使用が終わると、ユーザはキーボードまたはマウスを操作してノートPC10を第1のオフ状態71(ブロック131)またはサスペンド状態75(ブロック129)に移行させる(遷移81b、79b)。
【0061】
図6の手順によれば、ノートPC10は、気圧、加速度、および気圧変化率のいずれかと騒音レベルとを組み合わせて判断してノートPC10が地上で動作しているか航空機で動作しているかを判断するために、離陸開始から着陸までのさまざまな飛行状態において、航空機内と地上との動作環境を区別することができる。また、無線モジュール47は、EC49に電源が入ると同時に常にディフォルトでディスエーブルに設定されるため、POSTが完了した瞬間に無線モジュール47から電波が発射されることを確実に防ぐことができる。したがって、離陸から着陸までの間にノートPC10が図4の第1のオフ状態71から遷移79aを経由してオン状態77に移行する間に無線モジュール47から電波が発射されることはない。
【0062】
さらに、ノートPC10が地上で動作するときでも、初期判断がノートPC10の起動が完了するまでの間に行われるので、通常の地上での使用において動作の開始が遅延することはない。さらに、航空機への搭乗前および航空機から降りた後にユーザはノートPC10に対して動作モードを変更する操作を行う必要がない。EC49が3つの初期判断のいずれかにおいて誤って初期条件が成立したと判断しても、さらに航空機モード判定プログラム95が追加条件の成立を判断してからノートPC10は航空機モードまたは地上モードで動作するので、誤った動作をすることがなくなる。
【0063】
遷移82bにおいては、無線モジュール47の設定は第2の電力系統がオンになった時点で図6の手順と同様に行われる。遷移81b、80bでは、第2の電力系統はオンの状態が継続して、無線モジュール47には電力が供給され続けるが、EC49、気圧センサ51、加速度センサ52にも電力が供給されEC49は定期的に気圧情報、加速度情報、および気圧変化率を更新している。そして、EC49がいずれかの初期条件が成立したと決定している限り無線モジュール47はディスエーブルに設定された状態を継続する。遷移79b、82aでは、電源停止シーケンスの中で第2の電力系統がオフになるので、遷移中に航空機内で無線モジュール47から電波が発射されることはない。
【0064】
ノートPC10は、地上または航空機内においてオン状態77で動作する。ノートPC10が、オン状態77において地上モードで動作した後に遷移81bを経由してサスペンド状態75に移行する場合は、システム状態がメイン・メモリ35に記憶され、レジュームした後には地上モードで動作する。したがて、地上でサスペンド状態75に移行してから航空機内でレジュームした後にも、ノートPC10は航空機モードで動作する必要がある。また、サスペンド状態75では、第2の電力系統がオンになっているので、サスペンド状態75およびサスペンド状態75からオン状態77に遷移するときに無線モジュール47が適切に設定される必要がある。
【0065】
図7は、ノートPC10がサスペンド状態75からオン状態77に移行するときの動作を示すフローチャートである。ユーザは地上でノートPC10をサスペンド状態75で動作させて航空機内に持ち込み、遷移81aを経由してオン状態77に移行させることを想定している。サスペンド状態75では、第2の電力系統がオンになって無線モジュール47から電波が発射される。サスペンド状態75ではノートPC10の蓋が閉じられているので、ユーザは電源が切れていると判断してサスペンド状態75のままで離陸を迎えることも予想される。サスペンド状態75で動作するノートPC10に対して、ユーザが無線モジュール47の動作を適切にディスエーブルに設定できない場合も予想される。
【0066】
第2の電力系統がオンになっているノートPC10は、サスペンド状態75で動作する場合であっても、3つの初期判断と追加判断を行って、地上モードまたは航空機モードで動作し、さらに航空機内では無線モジュール47から電波が発射されることを防ぐことができる。ブロック201では、ノートPC10がサスペンド状態75で動作しており、イネーブルに設定された無線モジュール47から電波が発射されてアクセス・ポイントとの接続が維持されている。このような状態は図6のブロック115経由でブロック129に移行した場合に発生する。
【0067】
ブロック203、205、207の初期判断は、図6のブロック107、109、111に対応しており、いずれかの初期判断で初期条件が成立した場合はブロック209に移行してEC49は無線モジュール47をディスエーブルに設定する。すべての初期条件が成立しない場合はブロック231で無線モジュール47の動作は維持される。
【0068】
ブロック215、233では、ユーザがノートPC10のキーボードを操作してノートPC10をサスペンド状態に入る前のシステム・オン状態に復元(レジューム)する。以後、ブロック217、219、221、223、225、235は、図6のブロック123、125、127、129、131、115に対応した動作をする。図7の手順によれば、サスペンド状態75ではEC49は定期的に3つの初期条件を判断し、いずれかの初期条件が成立すると無線モジュール47をディスエーブルに設定するので、航空機が離陸を開始してから着陸するまでの間の無線モジュール47からの電波の発射を防ぐことができる。また、初期条件が成立した後は追加判断としての騒音レベルを判断して追加条件の成立または不成立により最終的に航空機内か地上かを決定して航空機モードまたは地上モードを確定するので、動作環境を誤って判断することが少なくなり、地上モードでの動作に支障をきたすこともなくなる。
【0069】
第2のオフ状態73でも第2の電力系統がオンになり無線モジュール47から電波が発射される。ユーザは、地上でノートPC10を第1のオフ状態71で動作させて航空機内に持ち込み、AC/DCアダプタ61を座席のアウトレットに差し込んで遷移82bを経由して第2のオフ状態73に移行させ、さらに遷移80aを経由してオン状態77に移行させることがある。そして、第1のオフ状態71でノートPC10を機内に持ち込んでAC/DCアダプタ61を座席のアウトレットに差し込んだユーザは、ノートPC10がシステム・オン状態77ではないので電波が発射することはないと判断することも予想される。
【0070】
遷移80aの場合も、ブロック201を第2のオフ状態73におきかえ、ブロック215およびブロック233をシステムの起動操作におきかえると、ノートPC10はサスペンド状態75からオン状態77に移行する場合と同様の手順で動作する。オン状態77でノートPC10が航空機内に持ち込まれてユーザが電源を停止しないときは、EC49がブロック203〜ブロック207のいずれかの初期条件が成立したと判断するとただちに無線モジュール47をディスエーブルに設定する。オン状態77で動作するときに地上でいずれかの初期条件が成立した場合は、ブロック219で航空機モード判定プログラム95が騒音レベルを測定して追加条件が成立しているか否かの追加判断を行う。追加条件が成立していない場合は、ユーティリティ・マネージャ91を実行するCPU31から指令を受けたEC49は、ブロック234で無線モジュール47をイネーブルに設定してノートPC10を地上モードで動作させる(ブロック235)。
【0071】
本来航空機内では客室乗務員の指示にしたがって、無線デバイスを停止したり電源を停止したりあるいはその確認を行ったりする必要が、本実施の形態によれば、ユーザが誤って適切な処理を怠ったような場合でも、電子機器から電波が発射される可能性を極めて低くすることができる。これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態にかかるノートPCの外形図である。
【図2】ノートPCに実装されたハードウェアの構成を示す概略ブロック図である。
【図3】ノートPCの4つの電源モードに対応する電力系統と電力の供給範囲を示す図である。
【図4】ノートPCにおける4つの電源モード間での状態遷移を示す状態遷移図である。
【図5】ユーティリティ・マネージャの構成を示す図である。
【図6】ノートPCが第1のオフ状態からオン状態に移行するときの動作を示すフローチャートである。
【図7】ノートPCがサスペンド状態からオン状態に移行するときの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
91…ユーティリティ・マネージャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上での使用に適した地上モードまたは航空機内での使用に適した航空機モードで動作する電子機器であって、
無線デバイスと、
気圧センサと、
マイクロフォンと、
前記気圧センサが検出した気圧情報を利用した初期判断と前記マイクロフォンが検出した騒音情報を利用した追加判断の双方において前記電子機器が航空機内で動作していると決定したときに前記電子機器を前記航空機モードで動作させる制御部と
を有する電子機器。
【請求項2】
前記初期判断は、前記気圧情報が水平飛行中の航空機内の気圧を示すときに前記電子機器が航空機内で動作していると決定する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記初期判断は、時間当たりの前記気圧情報の変化率が上昇または下降する航空機内の気圧情報の変化率を示すときに前記電子機器が航空機内で動作していると決定する請求項1または請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
加速度センサを有し、前記初期判断は前記加速度センサが検出した加速度情報を利用した判断を含む請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記制御部は前記初期判断において前記電子機器が航空機内で動作していると決定したときに前記無線デバイスをディスエーブルに設定し、前記追加判断において前記電子機器が航空機内で動作していると決定したときにディスエーブルに設定された前記無線デバイスの設定を維持する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記制御部は前記電子機器がシステム・オフ状態からシステム・オン状態に移行するまでの間に前記初期判断を実行する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記制御部は前記電子機器がサスペンド状態で動作している間に前記初期判断を実行する請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記制御部は前記初期判断および前記追加判断またはそのいずれか一方において前記電子機器が地上で動作していると決定したときに前記電子機器を地上モードで動作させる請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電子機器。
【請求項9】
前記電子機器はAC/DCアダプタに接続可能であり、前記航空機モードは前記電子機器が前記AC/DCアダプタから電力の供給を受けて動作している間に、前記AC/DCアダプタに電力を供給するアウトレットの容量以下で前記電子機器が動作するように消費電力を制御するアイテムを含む請求項1〜請求項8のいずれかに記載の電子機器。
【請求項10】
前記電子機器はバッテリィ動作が可能であり、前記航空機モードは前記電子機器が前記バッテリィから電力の供給を受けて動作している間に、前記電子機器の消費電力が前記AC/DCアダプタから電力の供給を受けて動作している場合よりも小さくなるように消費電力を制御するアイテムを含む請求項1〜請求項9のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
ディスプレイを含み、前記航空機モードは前記ディスプレイの輝度を前記電子機器が前記地上モードで動作する場合よりも低下させるアイテムを含む請求項1〜請求項10のいずれかに記載の電子機器。
【請求項12】
キーボード・ライトを含み、前記航空機モードは前記キーボード・ライトを点灯させるアイテムを含む請求項1〜請求項11のいずれかに記載の電子機器。
【請求項13】
前記制御部は前記初期判断において前記電子機器が航空機内で動作していると決定したときだけ前記マイクロフォンによる騒音レベルの測定を行う請求項1〜請求項12のいずれかに記載の電子機器。
【請求項14】
無線デバイスを備える電子機器が地上での使用に適した地上モードまたは航空機内での使用に適した航空機モードで動作する方法であって、
動作環境から検出した気圧情報に基づいて前記電子機器が航空機内で動作しているか地上で動作しているかを判断する初期判断ステップと、
動作環境から検出した騒音情報に基づいて前記電子機器が航空機内で動作しているか地上で動作しているかを判断する追加判断ステップと、
前記初期判断ステップと前記追加判断ステップの双方において前記電子機器が航空機内で動作していると決定したときに前記航空機モードで動作するステップと
を有する方法。
【請求項15】
前記初期判断ステップをシステム・オフ状態からシステム・オン状態に移行するまでの間に実行し、
前記初期判断ステップの結果に基づいて前記無線デバイスをディスエーブルに設定するステップと、
前記追加判断ステップの結果に基づいてディスエーブルに設定された前記無線デバイスの設定を維持するステップと
を有する請求項14に記載の制御方法。
【請求項16】
前記電子機器がサスペンド状態で動作するステップと、
前記サスペンド状態で動作する間に前記初期判断ステップを実行し前記初期判断ステップの結果に基づいて前記無線デバイスをディスエーブルに設定するステップと、
前記追加判断ステップの結果に基づいてディスエーブルに設定された前記無線デバイスをイネーブルに設定するステップと
を有する請求項14または請求項15に記載の動作方法。
【請求項17】
前記電子機器がシステム・オン状態で動作するステップと、
前記システム・オン状態で動作する間に前記初期判断ステップを実行し前記初期判断ステップの結果に基づいて前記無線デバイスをディスエーブルに設定するステップと、
前記追加判断ステップの結果に基づいてディスエーブルに設定された前記無線デバイスをイネーブルに設定するステップと
を有する請求項14〜請求項16のいずれかに記載の動作方法。
【請求項18】
コンピュータにオペレーティング・システムと協働して、
動作環境から検出した気圧情報に基づいて前記電子機器が航空機内で動作しているか否かを初期判断する機能と、
動作環境から検出した騒音情報に基づいて前記電子機器が航空機内で動作しているか否かを追加判断する機能と、
前記初期判断と前記追加判断の双方において前記電子機器が航空機内で動作していると決定したとき地上での動作より航空機内での動作に適した動作モードで動作する機能と
を実現させるプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−129305(P2009−129305A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305476(P2007−305476)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】