説明

船底整流部材、格納タンク、および格納タンクの取り付け方法

【課題】水中探知用送受波器を出し入れする船底の開口部に取り付けられ、船の高速化に伴う開口部内への水流の巻き込みを抑制することができる船底整流部材と、その船底整流部材を備えた格納タンク、およびその格納タンクの取り付け方法を提供する。
【解決手段】船底整流部材1は、船底に密接状態で取り付け可能に形成された取付け部17と、取付け部の内側に配置され、船底の開口部55に一致した穴形状の貫通穴18と、取付け部の外側に配置され、船首側から貫通穴の開口部を通過して船尾に進行する水流を貫通穴の開口部において整流化する整流化部10と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中探知用送受波器を出し入れする船底の開口部に取り付けられ、開口部付近での水流を整流化する船底整流部材と、その船底整流部材を備えた格納タンク、およびその格納タンクの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、魚の探索などに水中探知用送受波器が用いられている。水中探知用送受波器は、未使用時において船内に設けられた格納タンクに格納されており、使用する際に船底に形成された開口部から出し入れされる。例えば、特許文献1には、回転ローラを利用した上下装置によって、船底に形成された開口部から送受波器を出し入れする水中探知用送受波器が開示されている。
【0003】
ところで、格納タンクに格納された水中探知用送受波器は船が水上を移動する際、船底の開口部付近には巻込み流が発生し、不規則な流体力が送受波器に作用することがある。この場合、水中探知用送受波器には、振動などの大きな負荷が掛かってしまう問題があった。
【0004】
そこで、従来では、水流を整流化する船底整流部材を各造船所などで作製し、それを船底に取り付けて対応していた。また、船底における水流を整流化する部材としては、特許文献2に、船底のソナードームと船体外板との間にフェアリングプレートを設けた取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−15080号公報
【特許文献2】実開昭62−134084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各造船所などで船底整流部材を作製した場合、最適設計が確立されていないために、各造船所内での技術に頼ることが多くなる。そのため、上手く整流化できれば良いが、整流化できない場合も多かった。さらに、小型魚船やプレジャー船などの高速化に伴い、現在では30kt以上の速度で船を移動させることがあり、水中探知用送受波器に作用する巻き込み流による流体力は以前よりも大きくなっており、振動によって送受波器が破損したり、船内への漏水などの不具合が発生したりする問題があった。
【0007】
また、特許文献2に開示されたフェアリングプレートは、船底から海中に突出して設けられたソナードームに用いられるものであり、水中探知用送受波器を出し入れする開口部に取り付けることは不可能である。さらに、このフェアリングプレートにおいても、船の高速化を見越した設計ではないため、船の高速化に伴う巻き込み流の発生を防ぐことは困難である。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、水中探知用送受波器を出し入れする船底の開口部に取り付けられ、船の高速化に伴う開口部内への水流の巻き込みを抑制することができる船底整流部材と、その船底整流部材を備えた格納タンク、およびその格納タンクの取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の船底整流部材は、船底に密接状態で取り付け可能に形成された取付け部と、前記取付け部の内側に配置され、前記船底の開口部に一致した穴形状の貫通穴と、前記取付け部の外側に配置され、船首側から前記貫通穴の開口部を通過して船尾に進行する水流を前記貫通穴の開口部において整流化する整流化部と、を有する。
【0010】
上記の構成によれば、船底の開口部に一致する貫通穴を通過する船首側からの水流は、整流化部によって整流化される。これにより、開口部内への水流の巻き込みを抑制することができる。
【0011】
また、本発明の船底整流部材において、前記整流化部は、船首側における前記取付け部の外側から内側にかけて設けられ、当該船首側から前記貫通穴の開口部の周縁にかけて下向きの傾斜形状に形成された前方部と、船尾側における前記取付け部の内側から外側にかけて設けられ、前記前方部よりも薄い湾曲面を有する後方部と、を有してもよい。
【0012】
上記の構成によれば、船首側からの水流は、前方部の傾斜に沿って導かれ、やがて開口部を飛び越えて後方部へと到達し、船尾側へと流れていく。このように、船底整流部材によって、水流が開口部を飛び越えていくため、開口部内への水流の巻き込みを抑制することができる。さらに、後方部は湾曲面を有しているため、開口部を飛び越えた水流が開口部のエッジなどによって乱れ、開口部内に巻き込まれてしまうことを抑制することができる。
【0013】
また、本発明の船底整流部材において、前記取付け部、前記貫通穴、および前記整流化部は、一体型に成形されていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、船底整流部材は、取付け部、貫通穴、および整流化部が一体型に成形されているため、船底の開口部に夫々の部品を個別に備え付けるよりも、容易に船底整流部材を備え付けることができる。
【0015】
また、本発明の格納タンクは、水中探知用送受波器を格納する格納タンクであって、船底の開口部に船底側から挿入可能な筒型形状の下格納部と、当該下格納部と同径の筒型形状で、当該下格納部の上方に接着される上格納部と、を有し、前記下格納部の船底側の一端には、上記に記載の前記船底整流部材からなるつば部が設けられている。
【0016】
上記の構成によれば、下格納部に設けられたつば部と船底とを接着しながら下格納部を船底側から挿入し、その上に上格納部を接着することで格納タンクを備え付けることができる。これにより、従来のように筒型形状の格納タンクの下縁部と船底の開口部周縁とを接着するよりも、より強固に格納タンクを固定することができる。さらに、つば部を形成する船底整流部材によって、開口部内への水流の巻き込みを抑制することができる。
【0017】
また、本発明の格納タンクの取り付け方法は、船底外側から、上記の前記下格納部を船底の開口部に挿入する工程と、上記の前記上格納部を前記下格納部の上縁へ当接する工程と、前記下格納部と前記上格納部との当接部を接着する工程と、船底内側から、前記接着された下格納部及び上格納部を船底に接着する工程と、を有する。
【0018】
上記の取り付け方法によれば、つば部が設けられた下格納部と上格納部とを当接部で接着することによって、船底の開口部に格納タンクを備え付けることができる。これにより、下格納部に設けられたつば部と船底とを接着することができるため、より強固に格納タンクを固定することができる。さらに、つば部を形成する船底整流部材によって、開口部内への水流の巻き込みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の船底整流部材によると、船底の開口部に一致する貫通穴を通過する船首側からの水流は、整流化部によって整流化され、開口部内への水流の巻き込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)本実施形態に係る船底整流部材を船底に取り付けた状態を示す断面図である。(b)船底側から視た本実施形態に係る船底整流部材の外観図である。
【図2】(a)本実施形態に係る船底整流部材の設計図である。(b)図2(a)に示す船底整流部材におけるA−A´矢視断面図である。
【図3】(a)本実施形態に係る格納タンクおよびその取り付け方法を示す図である。(b)本実施形態に係る格納タンクおよびその取り付け方法を示す図である。
【図4】本実施形態に係る格納タンクを示す図である。
【図5】(a)従来の格納タンクの取り付け方法を示す図である。(b)従来の格納タンクの取り付け方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(船底整流部材)
図1(a)に示すように、本実施形態に係る船底整流部材1は、船底50に形成された開口部55の周縁に取り付けられる。この開口部55は、魚の探索などに用いられる水中探知用送受波器60が上下移動機構65によって出し入れされるようになっている。船が水上を移動する際は、開口部55付近から巻き込み流が発生するが、この船底整流部材1を取り付けることによって、船首側からの水流90を整流化して、開口部55内への巻き込み流を抑制することができるようになっている。
【0023】
船底整流部材1は、図1、2に示すように、船底50に密接状態で取り付け可能に形成された取付け部17と、取付け部17の内側に配置され、船底50の開口部55に一致した穴形状の貫通穴18と、取付け部17の外側に配置され、船首側から貫通穴18の開口部を通過して船尾に進行する水流90を貫通穴18の開口部において整流化する整流化部10と、を有している。そして、取付け部17、貫通穴18、および整流化部10は、繊維強化プラスチック(FRP)によって一体型に成形されている。
【0024】
取付け部17は、平面視すると、図2(a)に示すように、卵形の形状をしている。取付け部17の内側に形成された貫通穴18は、取付け部17の中心よりも少し横方向に移動した箇所に形成されており、円形状をしている。具体的には、卵形の形状を有する取付け部17の曲率が小さい側の近くに貫通穴18は設けられている。このような取付け部17は、図1(b)に示すように、曲率が大きい側を船首側に位置し、曲率が小さい側を船尾側に位置して船底50に密接状態に取り付けられ、船が高速で移動した際でも、振動で船底整流部材1全体が外れないようになっている。また、取付け部17の貫通穴18は、船底50の開口部55と形状および寸法が一致しており、水中探知用送受波器60が開口部55から出し入れされた場合でも、衝突することがないようにできている。
【0025】
整流化部10は、船首側における取付け部17の外側から内側にかけて設けられ、船首側から貫通穴18の開口部の周縁にかけて下向きの傾斜形状に形成された前方部10aと、船尾側における取付け部17の内側から外側にかけて設けられ、前方部10aよりも薄い湾曲面を有する後方部10bと、を有している。
【0026】
前方部10aは、図2(a)に示すように、貫通穴18の中心を通る縦線Sを境目として、取付け部17の曲率が大きい側に配置されている。つまり、前方部10aは、船底整流部材1が取り付けられる船底50の船首側に位置している。また、図2(b)に示すように、前方部10aは、取付け部17の船首側の外側から内側にかけて設けられ、船首側から貫通穴18の開口部の周縁にかけて下向きの傾斜形状に形成されている。なお、ここで言及する下向きとは、船底整流部材1を船底50に取り付けた際の海中側に向いた方向である。
【0027】
また、前方部10aが最も厚みを有する位置は、貫通穴18の開口部の周縁である。つまり、前方部10aは、取付け部17の外側から、徐々に緩やかな傾斜と共に厚みを増して貫通穴18の開口部の周縁において最も厚みのある状態になっている。このように、前方部10aは、船首側から船尾側に向けて下向きに逆反りした形状を有しているため、図1(a)に示すように、船首側からの水流90を海中に向けて導き、船底50の開口部55を飛び越えさせることができるようになっている。また、前方部10aは、船首側における開口部55の周縁の前半分を覆うようにして設けられ、かつある程度の高さを有するものであるため、前方のみならず斜めからの水流90に対しても整流化することができるようになっている。
【0028】
後方部10bは、図2(a)に示すように、貫通穴18の中心を通る縦線Sを境目として、取付け部17の曲率が小さい側に配置されている。つまり、後方部10bは、船底整流部材1が取り付けられる船底50の船尾側に位置している。また、図2(b)に示すように、後方部10bは、取付け部17の船尾側の外側から内側にかけて設けられ、前方部10aにおける最も厚みのある部位(貫通穴18の開口部の周縁)の厚さよりも薄い湾曲面を有している。前方部10aにおける最も厚みのある部位の厚さと、後方部10bの厚さの差が小さくなると、前方部10aによって開口部55を飛び越えた船首側からの水流90が後方部10bのエッジに当たり、水流90が乱れてしまう恐れがある。そのため、前方部10aと後方部10bとの厚さの差は、大きくとることが好ましい。なお、前方部10aおよび後方部10bの寸法が大きくなったり小さくなったりした場合、前方部10aにおける最も厚みのある部位の厚さと、後方部10bの湾曲面の厚さは相似して拡縮されるため、前方部10aと後方部10bとの厚さの差もそれに相似して拡縮される。
【0029】
また、船底整流部材1のA−A´断面を視ると、後方部10bが有する湾曲面によって、取付け部17の貫通穴18における船尾側のエッジが丸みを帯びるようになる。これにより、船底50の開口部55における船尾側のエッジも丸みを帯びるようになっている。つまり、船底整流部材1を取り付けない場合、船底50の表面と開口部55との境目には、ほぼ直角のエッジが存在するが、船底整流部材1を取り付けることによって、船底50の表面と開口部55との境目に丸みを帯びた湾曲面を設けることができる。これにより、船首側からの水流90が開口部55のエッジに当たって水流90が乱れることを防ぐことができるようになっている。
【0030】
上記のような構成を有する船底整流部材1を、図1(a)、(b)に示すように船首側に前方部10a、船尾側に後方部10bが位置するように船底50に取り付けることにより、船底50の開口部55に一致する貫通穴18を通過する船首側からの水流90は、整流化部10によって整流化される。これにより、開口部55内への水流90の巻き込みを抑制することができる。
【0031】
より詳細に、船首側からの水流90は、前方部10aの傾斜に沿って導かれ、やがて開口部55を飛び越えて後方部10bへと到達し、船尾側へと流れていく。このように、船底整流部材1によって、水流90が開口部55を飛び越えていくため、開口部55内への水流90の巻き込みを抑制することができる。さらに、後方部10bは湾曲面を有しているため、開口部55を飛び越えた水流90が開口部55のエッジなどによって乱れ、開口部55内に巻き込まれてしまうことを抑制することができる。
【0032】
また、取付け部17、貫通穴18、および整流化部10は、一体型に成形されているため、船底50の開口部55に夫々の部品を個別に備え付けるよりも、容易に船底整流部材1を備え付けることができる。
【0033】
なお、本実施形態に係る船底整流部材1は、図2に示す形状および寸法に必ずしも限定される必要はない。例えば、貫通穴18は、必ずしも円形である必要がなく、楕円形であってもよく、船底50の開口部55に合わせて設計される。また、各部材の寸法もこれより大きくなったり、小さくなったりしてもよい。しかしながら、前方部10aにおける最も厚みのある部位の厚さと、後方部10bの湾曲面の厚さは、各部材に寸法に相似して拡縮される必要がある。
【0034】
以上、本実施形態に係る船底整流部材1を船底50に取り付けることにより、水流90が開口部55を飛び越えていくため、開口部55内への水流90の巻き込みを抑制することができる。さらに、開口部55を飛び越えた水流90が開口部55のエッジなどによって乱れ、開口部55内に巻き込まれてしまうことを抑制することができる。
【0035】
(格納タンク)
次に、本実施形態に係る船底整流部材1を備えた格納タンク100について説明する。本実施形態に係る格納タンク100は、図3、4に示すように水中探知用送受波器60を格納する格納タンクであって、船底50の開口部55に船底50側から挿入可能な筒型形状の下格納部15と、下格納部15と同径の筒型形状で、下格納部の上方に接着される上格納部25と、を有し、下格納部15の船底50側の一端には、本実施形態に係る船底整流部材1からなるつば部が設けられている。
【0036】
下格納部15は、船底整流部材1からなるつば部に、貫通穴18と同径の穴を有する下格納筒体部12が設けられている。上格納部25は、水中探知用送受波器60が格納される上格納筒体部20と、上格納筒体部20の上縁に設けられた蓋体部22と、から構成される。下格納部15は、図4に示すように、船底50の開口部55に船底50側から挿入され、つば部の面と船底50とが接着剤32で接着されている。そして、開口部55から船内に突出した下格納筒体部12の上縁と、上格納部25における上格納筒体部20の下縁とが当接状態に接着剤30で接着されている。
【0037】
上記のようにして船内に設けられた格納タンク100内において、水中探知用送受波器60が上下移動機構65によって上下移動されるようになっている。
【0038】
(格納タンクの取り付け方法)
次に、本実施形態に係る格納タンク100の取り付け方法について説明する。本実施形態に係る格納タンク100の取り付け方法は、図3に示すように、船底50側から、下格納部15を船底50の開口部55に挿入する工程と、上格納部25を下格納部15の上縁へ当接する工程と、下格納部15と上格納部25との当接部を接着する工程と、船底内側から、接着された下格納部及び上格納部を船底に接着する工程とを有している。
【0039】
具体的に、先ず、図3(a)に示すように、下格納部15を船底50の開口部55に向けて船底50側から挿入する。この時、下格納部15における船底整流部材1からなるつば部は、船底50と密着状態となるため、この部分に繊維強化プラスチック(FRP)からなる接着剤32を用いてつば部と船底50とを接着する。なお、接着剤32は、繊維強化プラスチック(FRP)に限定する必要はなく、他の接着剤を用いてもよい。上記のようにして、船底50側から下格納部15を挿入すると、船内には、下格納部15の下格納筒体部12が突出するようになる。
【0040】
次に、図3(b)に示すように、船内に突出した下格納部15の下格納筒体部12の上縁に合わすようにして上格納部25の上格納筒体部20を当接する。そして、図4に示すように、繊維強化プラスチック(FRP)からなる接着剤30を用いて、下格納部15と上格納部25の当接部を接着する。続いて、接着剤31を用いて、船底内側から、接着された下格納部15及び上格納部25を船底50に接着する。なお、接着剤30、31は、繊維強化プラスチック(FRP)に限定する必要はなく、他の接着剤を用いてもよい。
【0041】
ここで、図5は、従来における格納タンクの取り付け方法を示している。図5(a)に示すように、従来では、船底50の開口部55の周縁に合わせて上格納部25の上格納筒体部20の下縁を当接している。そして、図5(b)に示すように、繊維強化プラスチック(FRP)からなる接着剤35を用いて、開口部55と上格納筒体部20との当接部を接着している。しかしながら、このような従来の格納タンクの取り付け方法の場合、筒形状の上格納筒体部20における下縁と開口部55の周縁とを合わせることが非常に難しく、作業性が悪い。また、格納タンクと開口部55との接着部分は、上格納筒体部20の周縁(開口部55の周縁)のみであるため、充分な接着強度を確保することが困難である。この点、本実施形態に係る格納タンクの取り付け方法の場合、下格納部15に設けられた船底整流部材1からつば部と船底50とを接着することができるため、より強固に格納タンク100を固定することができ、また、船底50の開口部55から船内に突出した下格納部15における下格納筒体部12の上縁と上格納部25における上格納筒体部20の下縁とを当接するので、当接する標的が定まりやすい。
【0042】
以上、本実施形態に係る格納タンク100によれば、下格納部15に設けられた船底整流部材1からなるつば部と船底50とを接着しながら下格納部15を船底50側から挿入し、その上に上格納部25を接着することで格納タンク100を備え付けることができる。これにより、従来のように筒型形状の格納タンクの下縁部と船底50の開口部55周縁とを接着するよりも、より強固に格納タンク100を固定することができる。さらに、つば部を形成する船底整流部材1によって、開口部55内への水流90の巻き込みを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る格納タンク100の取り付け方法によれば、船底整流部材1からなるつば部が設けられた下格納部15と上格納部25とを当接部で接着することによって、船底50の開口部55に格納タンク100を備え付けることができる。これにより、下格納部15に設けられたつば部と船底50とを接着することができるため、より強固に格納タンク100を固定することができ、また備え付ける作業性も良い。さらに、つば部を形成する船底整流部材1によって、開口部55内への水流90の巻き込みを抑制することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0045】
例えば、上記実施形態では、船底50が水平な構造をした船の水平部分に本発明に係る格納タンク100を取り付けた場合(キール上装備)について述べたが、これに限らず、船体断面形状がV型をした船底を持つ船の傾斜部分に本発明に係る格納タンク100を取り付ける場合(オフキール装備)でも実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、水中探知用送受波器を出し入れする船底の開口部に取り付けられ、開口部付近での水流を整流化する船底整流部材、格納タンク、および格納タンクの取り付け方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 船底整流部材
10 整流化部
10a 前方部
10b 後方部
17 取付け部
18 貫通穴
50 船底
55 開口部
60 水中探知用送受波器
65 上下移動機構
90 水流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船底に密接状態で取り付け可能に形成された取付け部と、
前記取付け部の内側に配置され、前記船底の開口部に一致した穴形状の貫通穴と、
前記取付け部の外側に配置され、船首側から前記貫通穴の開口部を通過して船尾に進行する水流を前記貫通穴の開口部において整流化する整流化部と、
を有することを特徴とする船底整流部材。
【請求項2】
前記整流化部は、
船首側における前記取付け部の外側から内側にかけて設けられ、当該船首側から前記貫通穴の開口部の周縁にかけて下向きの傾斜形状に形成された前方部と、
船尾側における前記取付け部の内側から外側にかけて設けられ、前記前方部よりも薄い湾曲面を有する後方部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の船底整流部材。
【請求項3】
前記取付け部、前記貫通穴、および前記整流化部は、一体型に成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の船底整流部材。
【請求項4】
水中探知用送受波器を格納する格納タンクであって、
船底の開口部に船底側から挿入可能な筒型形状の下格納部と、
当該下格納部と同径の筒型形状で、当該下格納部の上方に接着される上格納部と、
を有し、
前記下格納部の船底側の一端には、請求項1ないし3の何れか1項に記載の前記船底整流部材からなるつば部が設けられていることを特徴とする格納タンク。
【請求項5】
船底外側から、請求項4に記載の前記下格納部を船底の開口部に挿入する工程と、
請求項4に記載の前記上格納部を前記下格納部の上縁へ当接する工程と、
前記下格納部と前記上格納部との当接部を接着する工程と、
船底内側から、前記接着された下格納部及び上格納部を船底に接着する工程と、
を有することを特徴とする格納タンクの取り付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−236452(P2012−236452A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105311(P2011−105311)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)