説明

船舶における油槽内加熱管の配置構造

【課題】本発明は、バラストタンクの塗装の焼損を緩和でき、油槽内で作業車の通行に支障を来たさない油槽内加熱管の配置構造を得ることを目的とする。
【解決手段】油槽内加熱管の配置構造であって、船体横断面において中央側、または、船側側、つまり、油槽内で縦通隔壁側、または、船側壁側に寄せて、油槽内底面に油槽内加熱管を配置し、油槽内で船側側、または、中央側に作業車の通行路を確保するようにした。また、油槽内縦通隔壁、または、船側壁の上部に、船側方向、または、縦通隔壁に向けて上向きに角度のついた対流板を設けた。さらに、縦通隔壁面に沿わせて油槽内加熱管を配置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶における油槽内加熱管の配置構造に関するものであり、特に、二重船底内に形成されるバラストタンク内の塗装が焼損するのを緩和でき、船体建造時に、油槽内に作業車の通行路を確保することができる油槽内加熱配管の配置構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
タンカーにおいては油槽内で原油が固化することがあり、原油が固化した状態では荷役(陸揚げ時)ができないと云う不都合がある。このため、荷役にあたっては油槽内を加熱している。一般的な加熱方法としては、図4に示すように油槽1の底面2に加熱管3を配し、蒸気加熱している。この加熱管3は油槽1内の原油を50℃〜75℃程度まで加熱するため、底面2全域に張りめぐらされた状態であり、該加熱管3は底面2に多数個溶接付けされたサポート(図示せず)で支持固定されている。
【0003】
しかし、船体の二重底部分、つまり、船体外板4と内底板5との間にはバラストタンク6が形成されており、該バラストタンク6の内面には塗装が施されている。通常、船体は底部から上に向かってブロック建造されていくが、二重底部分のブロックが建造された段階で、油槽1には作業車が配置され高所作業が行われるので、このとき、加熱管3が配設されていると、作業車の走行に支障をきたすことになる。
【0004】
このため、前記加熱管3は作業車による作業が終わってから、配設するようにすればよいが、前記加熱管3を支持固定するサポートを油槽1の底面2に溶接するとき、この溶接熱が下層のバラストタンク6側にも侵入することになり、バラストタンク6内面の塗装に焼損を及ぼすことがある。そして、この焼損を補修する工程が必要になっていた。なお、7は縦通隔壁を示す。
【0005】
このことに対処して、加熱管を一定区画ごとの加熱管ユニットに分割して、支柱を有する支持台に取り付けるようし、支柱を溶接して取り付けるための分厚いパッドを、二重底部分のバラストタンク内の塗装を施す前にタンクトップに溶接しておくものも考案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この考案においても、加熱管ユニットが油槽内全域にわたって配置されている。
【0006】
そして、前述のごとく船体の建造時には、油槽1内には高所作業車などの作業車が通行するが、このとき、油槽の底面全域に分厚いパッドが配置されていると、作業車の通行に支障を来たすことになる。このため、作業車通行用のプラットフォームデッキやタラップを仮設するなどの対策を講じなければならなかった。
【0007】
【特許文献1】登録実用新案公報 第3048878号(第1頁、図1、図2、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述のごとき問題点を解決したものであり、バラストタンクの塗装の焼損を緩和でき、油槽内で作業車の通行に支障を来たさない油槽内加熱管の配置構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
油槽内加熱管の配置構造であって、船体横断面において中央側、または、船側側、つまり、油槽内で縦通隔壁側、または、船側壁側に寄せて、油槽内底面に油槽内加熱管を配置し、油槽内で船側側、または、中央側に作業車の通行路を確保するようにした。また、油槽内縦通隔壁、または、船側壁の上部に、船側方向、または、縦通隔壁に向けて上向きに角度のついた対流板を設けた。さらに、縦通隔壁面に沿わせて油槽内加熱管を配置するようにした。
【発明の効果】
【0010】
油槽内加熱管を中央側、または、側壁側に寄せて、あるいは、油槽内縦通隔壁面に沿わせて配置するようにし、油槽内加熱管を固定保持するサポートを二重底部のブロック製作時に取り付け、油槽内の底面に作業車の通行路を確保する構造としたので、二重底部に配置されたバラストタンク内の塗装の焼損を緩和することができると共に、船体建造時に作業車が油槽内を通行するのに支障を来たすことがなくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図示した本発明の最良の形態について説明する。図1は本発明による油槽内加熱管の配置を示す概要図、図2は油槽内加熱管と対流板とを設けた油槽内における原油の対流状態を示す図、図3は本発明の他の例を示す図である。
【0012】
油槽1内において、縦通隔壁7の側に寄せて油槽1内の底面2に油槽内加熱管3が配置されている。つまり、該加熱管3は船体横断面において中央側に寄せて配置されており、船側側には作業車8の通行路が確保されている。なお、図示していないが、該加熱管3は甲板上に配置されている主蒸気管に枝管を介して接続されており、蒸気の供給を受けて油槽1内を加熱する。加熱に使用された蒸気は、同様に設けられている戻り管(図示せず)を通して排出される。
【0013】
このように、油槽内加熱管3を縦通隔壁7の側に寄せて配置して、底面2の上面船側側に作業車8の通行路を確保したので、建造時に油槽1内で爾後の作業を行う作業車8を通行させるのに支障がなく、また、通行させるために特別な通行手段を講じる必要はない。
なお、上述の説明においては、油槽内加熱管3を縦通隔壁7の側に寄せて配置し、船側側に作業車8の通行路を確保しているが、反対に船側側に寄せて油槽内加熱管3を配置して、縦通隔壁7の側に作業車8の通行路を確保するようにしてもよい。
【0014】
図2において、油槽1内の上部には、縦通隔壁7に固定され、船側側に上向きの対流板9が取り付けられている。この対流板9によって、加熱時に油槽1内の対流が促進され、油槽1内の原油全体が加熱される。
図中の矢印は油槽1内の対流状態を示している。先ず、加熱管3によって加熱されて上昇流が生じ、この上昇流が対流板9により水平流となって船側側に移動し、船側内壁に沿って下降し、加熱管3の位置に還流してきて、さらに、加熱される動きが繰り返され、徐々に油槽1内全域が加熱されることになる。
【0015】
なお、油槽1内の加熱は、上述したように対流により加熱されるが、このとき、油槽内加熱管3からの伝導による加熱も生じている。
また、対流板9は図には表れていないが、複数の表裏貫通穴をもうけた穴開き構造になっており、この穴を通す流れも作って、対流板9の上方部で原油が滞留しないようにしてある。
【0016】
図3に示す構成は、縦通隔壁7の面に沿って油槽内加熱管3を配置したものである。このように油槽内加熱管3を縦の面で配置すれば、油槽1内の底面2を全面的に作業車8の通行路として使用でき、作業車8の通行の自由度が増すことになる。
この場合、油槽内加熱管3は、例えば、コルゲート板を使用した縦通隔壁7であれば、油槽1内に凸状となった面にサポート(図示せず)を取り付けて固定支持する。また、図示では油槽内加熱管3を上下方向に配管しているが、前後方向にして縦の面に配管してもよい。
【0017】
ところで、タンカーは所定の部分、部分をブロックとして工場で製造し、これらのブロックをドック内で繋ぎ合わせるブロック建造により建造されている、例えば、二重船底部分も図2におけるA部分とB部分はそれぞれ別のブロックとして造られ、ドック内で繋ぎ合わされることになる。
【0018】
したがって、工場でA部分を造るときに、前記油槽内加熱管3を固定支持するサポートをA部分の船底内面2になる面に、予め溶接付けして取り付けておけば、その後ブロックごとの塗装が施されるので、塗装に溶接熱が影響を与えることはない。
なお、ドック内でブロックAとBが接合されて、バラストタンク6が形成され、その内面に補修塗装が施されるとしても、サポートを取り付けるための溶接熱の侵入はなく、塗装の剥離を阻止することができる。
【0019】
したがって、油槽内加熱管3を縦通隔壁7側に寄せて配置するとした範囲としては、縦通隔壁7に接する二重底部分のブロック(図示A)の船底内面2に取り付けられるサポートで固定支持できる範囲になる。
なお、図3に示すように油槽内加熱管3を縦通隔壁7に沿って配置する例においては、サポートを取り付ける際、溶接熱がバラストタンク6内に侵入することはないので、縦通隔壁7をブロックとして工場で造るときに取り付けてもよく、また、ドックでブロックを接合してから取り付けるようにしてもよい。
【0020】
なお、前述のごとく、油槽内加熱管3を船側側に配置して、縦通隔壁の側に作業車8の通行路を確保する構成においては、対流板9は船側壁の上部に、縦通隔壁7に向かって上向きに取り付けられる。
また、この場合油槽内加熱管3を船側側に寄せて配置するとした範囲としては、図2に示す船側壁に接する二重底部分のブロック(図示B)の船底内面2に取り付けられるサポートで固定支持できる範囲になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による油槽内加熱管の配置を示す概要図。
【図2】加熱管と対流板とを設けた油槽内における原油の対流状態を示す図。
【図3】本発明の他の例を示す図。
【図4】従来の油槽内加熱管の配置を示す概略図。
【符号の説明】
【0022】
1 油槽 2 油槽内底面
3 油槽内加熱管 4 船体外板
5 船底内板 6 バラストタンク
7 縦通隔壁 8 作業車
9 対流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽内で縦通隔壁側に寄せて、油槽内底面に油槽内加熱管を配置し、油槽内で船側側に作業車の通行路を確保するようにしたことを特徴とする船舶における油槽内加熱管の配管構造。
【請求項2】
油槽内で船側側に寄せて、油槽内底面に油槽内加熱管を配置し、油槽内で縦通隔壁側に作業車の通行路を確保するようにしたことを特徴とする船舶における油槽内加熱管の配管構造。
【請求項3】
油槽内で縦通隔壁に沿わせて、油槽内加熱管を縦通隔壁に配置したことを特徴とする船舶における油槽内加熱管の配管構造。
【請求項4】
縦通隔壁の上部に、船側方向に向けて上向き角度のついた対流板を設けたことを特徴とする請求項1、請求項3記載の船舶における油槽内加熱管の配管構造。
【請求項5】
船側側壁の上部に、縦通隔壁方向に向けて上向き角度のついた対流板を設けたことを特徴とする請求項2記載の船舶における油槽内加熱管の配管構造。
【請求項6】
対流板を穴開き構造としたことを特徴とする請求項4、請求項5記載の船舶における油槽内加熱管の配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−238054(P2007−238054A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67445(P2006−67445)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(503218067)住友重機械マリンエンジニアリング株式会社 (55)