説明

船舶機関室通風システム

【課題】通風システムを必要最小限の動力で運転し得るようにして無駄なエネルギー消費の削減を図る。
【解決手段】船舶の機関室へ主機関9の燃焼空気として外気を送り込む船舶機関室通風システムに関し、給気ファン1をモータ2で駆動し得るようにした複数台の給気通風機3と、主機関9の掃気圧を該主機関9の負荷として検出する圧力センサ10(負荷検出手段)と、該圧力センサ10により検出された負荷に基づき該負荷に見合う通風量を実現し得るよう前記各給気通風機3のモータ2の回転数制御を行う制御ユニット11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の機関室へ主機関の燃焼空気を供給するための船舶機関室通風システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、大型の船舶等においては、通風機により外気を取り入れて機関室に通風し得るようにした通風システムが採用されており、この通風システムによって機関室内における主機関の燃焼に必要な空気が確保されるようになっている。
【0003】
図3に示す如く、この種の通風システムでは、運航状態(主機関の負荷)に応じて変化する必要空気量を制御するために、給気ファン1をモータ2で駆動し得るようにした給気通風機3が複数台装備されており、機関部員4が主機関(図示せず)の負荷を確認しつつ操作盤5を手動操作して運転台数を決定するようにしている。
【0004】
ただし、給気通風機3の台数制御では、厳密な流量制御を行うことができないため、排気ファン6をモータ7で駆動し得るようにした排気通風機8を備え、該排気通風機8により必要に応じて余剰空気を機関室から排出するようにもなっている。
【0005】
尚、船舶の機関室に採用された通風システムに関連する先行技術文献情報としては、例えば下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−254470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した如き従来の通風システムにおいては、主機関の必要空気量が負荷に応じて細かく変化するのに対し、給気通風機3の台数制御でしか対応できなかったため、機関室への通風量を主機関の必要空気量の増減に良好に追従させることができず、機関室への通風量が必要空気量を上回っている場合には、その差分の通風機動力のために無駄なエネルギー消費が生じるという問題があり、しかも、余剰空気を排気通風機8を駆動して機関室から排出しなければならないことにも余分なエネルギー消費が生じてしまっていた。
【0008】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、通風システムを必要最小限の動力で運転し得るようにして無駄なエネルギー消費の削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、船舶の機関室へ主機関の燃焼空気として外気を送り込む船舶機関室通風システムであって、給気ファンをモータで駆動し得るようにした複数台の給気通風機と、主機関の負荷を検出する負荷検出手段と、該負荷検出手段により検出された負荷に基づき該負荷に見合う通風量を実現し得るよう前記各給気通風機のモータの回転数制御を行う制御ユニットとを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
而して、このようにすれば、主機関の負荷が負荷検出手段により検出され、その検出された負荷に基づき前記各給気通風機のモータが制御ユニットにより回転数制御されるので、主機関の負荷に見合う過不足のない通風量が実現され、主機関の負荷に応じて変化する必要空気量に通風量を良好に追従させることが可能となる。
【0011】
この結果、機関室への通風量が必要空気量を大きく上回って余剰してしまうような事態が防止されるので、その差分の通風機動力のために無駄なエネルギー消費が生じることがなくなり、しかも、余剰空気を機関室から排出しなくて済むことによってもエネルギー消費の削減が図られることになる。
【0012】
更に、機関部員が主機関の負荷を確認しつつ操作盤を手動操作する手間が不要となるため、機関部員の労力負担が大幅に軽減されると共に、機関部員のオペレーション技術の巧拙が通風システムの運転に影響を及ぼす虞れが回避される。
【0013】
また、本発明をより具体的に実施するに際しては、主機関の掃気圧を該主機関の負荷として検出する圧力センサにより負荷検出手段を構成し、該圧力センサからの検出信号を入力して現在の主機関の負荷に見合う通風量を実現するための各給気通風機における給気ファンの回転数を算出する制御器と、該制御器での算出値に基づき前記各給気通風機のモータに与える電源周波数を変更するインバータとにより制御ユニットを構成することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明の船舶機関室通風システムによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0015】
(I)主機関の負荷に見合う過不足のない通風量を実現し、主機関の負荷に応じて変化する必要空気量に通風量を良好に追従させることができるので、通風システムを必要最小限の動力で運転することができて無駄なエネルギー消費の削減を図ることができ、これによって、船舶内の電力を賄う発電機エンジンの燃料コスト及びCO2の発生量を大幅に削減することができる。
【0016】
(II)従来の如き機関部員による手動操作を不要とすることができるので、機関部員の労力負担を大幅に軽減することができると共に、機関部員のオペレーション技術の巧拙による通風システムの運転への影響を除外することができ、該通風システムの運転を安定して適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】主機関の負荷と通風量との関係を示すグラフである。
【図3】従来例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0020】
図1に図示している通り、本形態例においては、先に説明した図3の通風システムに関し、機関部員4(図3参照)が操作盤5を手動操作して各給気通風機3の台数制御を実施していたことに代えて、主機関9に該主機関9の掃気圧を負荷として検出する圧力センサ10(負荷検出手段)を備えると共に、前記各給気通風機3にモータ2の回転数制御を行う制御ユニット11を備え、前記圧力センサ10により検出された掃気圧に基づき該掃気圧に見合う通風量を各給気通風機3に実現せしめる自動制御が実施されるようにしてある。
【0021】
より具体的には、圧力センサ10からの検出信号を入力して現在の主機関9の負荷に見合う通風量を実現するための各給気通風機3における給気ファン1の回転数を算出する制御器12と、該制御器12での算出値に基づき前記各給気通風機3のモータ2に与える電源周波数を変更するインバータ13とにより制御ユニット11が構成されるようになっている。
【0022】
ここで、各給気通風機3における給気ファン1の最適な回転数を制御器12で算出するにあたり、主機関9の負荷と通風量とは、図2に示す如き関係を有するようになっているため、これを主機関9の掃気圧と各給気ファン1の回転数に置き換えて、主機関9の掃気圧から回転数を一義的に決定するテーブルを作成し、このテーブルを制御器12内に備えておき、該テーブルから圧力センサ10により計測される主機関9の掃気圧に基づいて最適な回転数を読み出すようにすれば良く、更には、これに加えて掃気圧と回転数に関する過去のデータ及びその時の決定回転数・実電力を蓄積しつつ過去のデータにて最低となった回転数を選択して回転数を決定するような手法を採用しても良い。
【0023】
また、ファジー理論を組合せた曖昧制御を用いて随時回転数を可変制御しながら最低電力値を追求してゆく手法を採用することも可能であり、更には、このような手法を前述の過去のデータに照らして回転数を決定する手法と組み合わせて行うようにしても良い。
【0024】
而して、このように通風システムを構成すれば、主機関9の掃気圧が圧力センサ10により検出され、その検出された掃気圧に基づき前記各給気通風機3のモータ2が制御ユニット11により回転数制御されるので、主機関9の負荷に見合う過不足のない通風量が実現され、主機関9の負荷に応じて変化する必要空気量に通風量を良好に追従させることが可能となる。
【0025】
この結果、機関室への通風量が必要空気量を大きく上回って余剰してしまうような事態が防止されるので、その差分の通風機動力のために無駄なエネルギー消費が生じることがなくなり、しかも、余剰空気を機関室から排出しなくて済むことによってもエネルギー消費の削減が図られることになる。
【0026】
更に、機関部員4が主機関9の負荷を確認しつつ操作盤を手動操作する手間が不要となるため、機関部員4の労力負担が大幅に軽減されると共に、機関部員4のオペレーション技術の巧拙が通風システムの運転に影響を及ぼす虞れが回避される。
【0027】
従って、上記形態例によれば、主機関9の負荷に見合う過不足のない通風量を実現し、主機関9の負荷に応じて変化する必要空気量に通風量を良好に追従させることができるので、通風システムを必要最小限の動力で運転することができて無駄なエネルギー消費の削減を図ることができ、これによって、船舶内の電力を賄う発電機エンジンの燃料コスト及びCO2の発生量を大幅に削減することができる。
【0028】
また、従来の如き機関部員4による手動操作を不要とすることができるので、機関部員4の労力負担を大幅に軽減することができると共に、機関部員4のオペレーション技術の巧拙による通風システムの運転への影響を除外することができ、該通風システムの運転を安定して適切に行うことができる。
【0029】
尚、本発明の船舶機関室通風システムは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、主機関の掃気圧を該主機関の負荷として検出する圧力センサを負荷検出手段として採用した場合を一例として説明したが、主機関の軸馬力や過給機回転数、ラック目盛(主機関出力を表示する目盛)等を主機関の負荷として検出する検出器を負荷検出手段として採用しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 給気ファン
2 モータ
3 給気通風機
9 主機関
10 圧力センサ(負荷検出手段)
11 制御ユニット
12 制御器
13 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の機関室へ主機関の燃焼空気として外気を送り込む船舶機関室通風システムであって、給気ファンをモータで駆動し得るようにした複数台の給気通風機と、主機関の負荷を検出する負荷検出手段と、該負荷検出手段により検出された負荷に基づき該負荷に見合う通風量を実現し得るよう前記各給気通風機のモータの回転数制御を行う制御ユニットとを備えたことを特徴とする船舶機関室通風システム。
【請求項2】
主機関の掃気圧を該主機関の負荷として検出する圧力センサにより負荷検出手段を構成し、該圧力センサからの検出信号を入力して現在の主機関の負荷に見合う通風量を実現するための各給気通風機における給気ファンの回転数を算出する制御器と、該制御器での算出値に基づき前記各給気通風機のモータに与える電源周波数を変更するインバータとにより制御ユニットを構成したことを特徴とする請求項1に記載の船舶機関室通風システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−31835(P2011−31835A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182334(P2009−182334)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)