船舶等の推進方法、ならびに当該方法を用いた船舶等の推進装置
【課題】船舶等の海洋や河川における移動機関において、水中および水面の波力を利用し、無燃料で推進する方法を提供すること。
【解決手段】二重スリットが配された壁と、一重スリットが配された壁を、スリットの長さ方向を揃えて向かい合わせ、連結する。簡単のため、ここでは二重スリットと一重スリットの面積は等しいとする。連結して得られた系を水中に沈めると、二重スリットから入射する波の回折効果の方が、一重スリットから入射してくる波の回折効果よりも強くなる。このことは、二重スリットから入射し、内壁にぶつからずに一重スリットから出射してくる波力が、一重スリットから入射し、一度も内壁にぶつからずに二重スリットから出射してくる波力よりも小さいことを意味する。このバランスの崩れが、系に推進力として作用する。
【解決手段】二重スリットが配された壁と、一重スリットが配された壁を、スリットの長さ方向を揃えて向かい合わせ、連結する。簡単のため、ここでは二重スリットと一重スリットの面積は等しいとする。連結して得られた系を水中に沈めると、二重スリットから入射する波の回折効果の方が、一重スリットから入射してくる波の回折効果よりも強くなる。このことは、二重スリットから入射し、内壁にぶつからずに一重スリットから出射してくる波力が、一重スリットから入射し、一度も内壁にぶつからずに二重スリットから出射してくる波力よりも小さいことを意味する。このバランスの崩れが、系に推進力として作用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進方法に関し、より詳細には、水中および水面の波の性質を利用して、物体に非等方的な波力を生ぜしめる技術に関する。本発明はまた、前記推進方法を用いた推進装置に関し、特に水中で波のエネルギーを推進力に変え、かつ、原理的には、無燃料で機能する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の水上交通で用いられる主な推進力には、スクリューの回転によるもの、およびポンプジェットによるものがある。後者のポンプジェットによる推進は、海水を吸い上げ、これを後方に吐き出すことで推進するというものである。
また、一般的ではないが、マスト(帆)を備え風力で推進する技術や、電磁推進技術、および「波浪推進船」で用いられる技術が知られている。電磁推進技術の原理は、次のようになる。すなわち、水中に磁場とこれに直交する電流の流れる場を形成し、これによって水中にローレンツ力を生じせしめる。このとき、磁場や電流の形成元である船体にはローレンツ力の反作用を受ける。当該の反作用が推進力となる。超電導電磁気推進器により、世界で初めて海上航行実験に成功した実験船「ヤマト-1」等が知られる。
波浪推進船で用いられている推進技術は、船体下部に上下に動く翼を配し、船体が波動によって上下運動をした際に動翼が上下運動するようにし、推進力を生じせしめるというものである。
【0003】
前記のスクリューやポンプジェットを用いた推進方法、および電磁推進技術は、燃料を要すると言う課題がある。また、これらの技術では、水中の生物種を巻き込んでしまう危険性がある。マストを用いた風力による推進方法は、無燃料での推進が可能であるが、推進力が風向きや風力に依存するため、安定した推進状態を確保するのが困難である。波浪推進船の技術は、無燃料で機能するため有用であるが、当該技術に付加的に用いることができる無燃料の推進技術を用いることが望ましい。
【0004】
水上および水中の推進技術ではないが、空気を構成する気体分子の物質波(ド・ブロイ波)の回折と干渉の性質を利用し、推進する技術がある(特許文献1、および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−270578
【0006】
【特許文献2】特願2009−244997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来の水上および水中の主要な推進技術は、燃料を要するという課題がある。また、無燃料で機能する推進技術についても、効率的に機能しないことにより、普及していないのが実情である。
【0008】
本発明は、斯かる問題点を鑑みて成されたものであり、物体の形状をもって、無燃料で水中および水上を推進する仕組みを提案することを課題とする。本発明はまた、当該の仕組みを利用した推進装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が提案する前記課題の解決手段は、次の通りである。
すなわち、二重スリットが配された壁と、一重スリットが配された壁を、スリットの長さ方向を揃えて向かい合わせ、連結する。当該の系を水中に沈めると、波の回折効果によって、二重スリットから入射して壁に当たらずに一重スリットから抜ける波力が、一重スリットから入射して壁に当たらずに二重スリットから抜ける波力よりも小さくなる(なお、壁を小さくすると、大きく回折した波が壁に当たらずに連結部の隙間(スリットではない箇所)から出射してしまうので、この場合は一概にここで述べた大小関係が成り立つとは限らない。しかし、両壁に加えられる波力のバランスは崩れる)。このバランスの崩れにより、系には推進力が作用する。
【0010】
本発明が提案する解決手段の範囲においては、次の手段も含まれる。
スリットが配された壁を、スリットの無い壁と向かい合わせ、連結する。ここで連結の仕方についてであるが、壁間から壁面に垂直な方向に当該の系を脱出できるようにする。
当該の系を水中に沈めると、スリットから入射する波の入射方向が例え内壁にぶつかって同スリットから脱出する方向の入射であったとしても、波の回折効果のために同スリットから出射していくとは限らない。すなわち、同スリットではない、壁面に垂直な脱出部から出射していく可能性もあるのである。結果として、同スリットから入射する波が系に作用する力がの有効値は減ぜられることとなる。
他方、系に加えられるスリット部以外の部位に対して作用する波力は、少なくとも水平方向の面においては等方的である。よって、スリットの存在によって系に作用する波力の等方性が崩れ、系に推進力が作用する。
【0011】
本発明は、その実用方法の提案として、次の内容を含むものである。すなわち、当該の系を多数集積することにより、強力な推進力を実現できることを提案するものである。
【0012】
本発明では、上記の壁のスリットの長さと垂直な方向のサイズを、小さくすることで、系の水中の接水面積を減らすことも提案する。このようにすることで、ある集積子の推進力の源泉である「系に及ぼされなかった波力」が、他の集積子に当たり、系に波力を及ぼし集積体全体の推進力を弱めてしまう影響を、緩和することができる。
【0013】
以上において、スリットは、穴あるいは衝立に代えても良い。これを一般化し、本発明は、これらの向かい合わせられた構造物が、その幾何学的形状が互いに相違なることを特徴とするものとして提案する。これにより、一方から入射する波の回折効果の強さは、他方から入射する波の回折効果と異なり、系に作用する波力を異なるようにできる。
よって、スリットや穴を適宜組み合わせても良い。また、穴やスリットの数にも制限は無い。さらにまた、上記したように、形状の異なる衝立を向かい合わせても良い。
【0014】
本発明は、上記の技術を効率よく機能させるため、任意の時点で、水中の状況に応じて推進力を調節する方法も提供する。具体的には、上記の幾何学的構造を相似変形させるものである。
【0015】
本発明ではさらに、推進力を調整するために壁間距離や前記の幾何学的構造を個別に変形することも可能とする。ここでの変形とは、例えば配されていたスリットを閉じることによってスリットをなくしてしまい、これによって推進力を消滅させることも含まれる。
本発明ではまた、前記集積体において、その一部の構成子の方向を逆転させ、推進力を弱める技術も提案する。
【0016】
さらに本発明においては、上記のように波の回折の大小による系に及ぼされる波力のバランスの崩れを利用し、発電をすることも提案する。上記の技術により、当該の装置には推進力の反作用として水流が生じる。この水流にたタービンを配し、発電するのである。発電の程度を制御することにより、推進力の程度を調節することができるというものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無燃料で波力を推進力に変換することができ、省エネルギーに船舶を航行できる。このため、地球温暖化対策の緩和策として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明が提案する装置の代表的な実現形態を図示したものである。(実施例1)
【図2】図2は、本発明が提案する推進原理を説明するための図である。(実施例1)
【図3】図3は、本発明が提案する推進原理を説明するための図である。(実施例1)
【図4】図4は、5重スリットを用いることで、二重スリットの場合よりもさらに強い推進力が得られることを示した図である。(実施例2)
【図5】図5は、5重スリットを用いることで、二重スリットの場合よりもさらに強い推進力が得られることを示した図である。(実施例2)
【図6】図6は、スリットの配された壁とスリットの無い壁を向かい合わせて連結した実施例における、推進力の発生原理を示した図である。(実施例3)
【図7】図7は、衝立(およびスリット)によって本発明を実施する場合の装置の構成を示したものである。(実施例4)
【図8】図8は、衝立に外部領域から加わる波力が、装置全体として相殺されることを示した図である。(実施例4)
【図9】図9は、衝立の幾何学的構造に起因する回折効果の影響により、系全体に作用する波力の等方性が、崩れていることを示した図である。(実施例4)
【図10】図10は、5重スリットと一重スリットで構成された本発明を実施する装置を集積した例である。(実施例5)
【図11】図11は、本発明で提案された推進装置を用い、発電する仕組みを示した図である。(実施例7)
【図12】図12は、向かい合わされたスリットの面積が等しくない場合の本発明を実施するための構成例である。(実施例8)
【図13】図13は、実施例8において、系に外部から及ぼされるか、あるいは外部から直接及ぼされたとみなすことができるような波力の構成を示したものである。(実施例8)
【図14】図14は、実施例8において、左側から5重スリットに入射する波の波力の様子を、回折の影響も交えて示したものである。(実施例8)
【図15】図15は、実施例8において、図14に対応する、右側から入射する波の回折の様子を示したものである。(実施例8)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明が提案する装置の代表的な実現形態を図示したものである。二重スリットが配された壁と、一重スリットが配された壁を、スリットの長さ方向を揃えて向かい合わせ、連結する。本実施例においては、簡単のために二重スリットと一重スリットの面積は等しいとしている。
【0020】
連結して得られた系が水中に沈められると、波の回折効果により、二重スリットから入射して壁に当たらずに一重スリットから抜ける波力と、一重スリットから入射して壁に当たらずに二重スリットから抜ける波力にずれが生じる。図2および図3は、この様子を示したものである。なお、図2および図3に描かれている2つの壁は、互いに連結されているものと考える。
図2は、二重スリットから波が入射する場合を示したものである。2つの狭いスリットのそれぞれから波が入射し、強い回折効果が現われていることが分かる。
図3は、一重スリットから波が入射する場合を示したものである。スリット幅が二重スリットの場合よりも広いため、回折効果が小さく、壁1に及ぼす波力が小さいことが分かる。
このバランスの崩れが、当該の系に推進力として作用する。
【実施例2】
【0021】
実施例1では、二重スリットの場合を示したが、代わりに三重以上の狭いスリットを用いると、さらに大きな推進力を得られる。図4および図5は、五重スリットの例を示したものである。
【実施例3】
【0022】
次に、スリットが配された壁(以下、壁1と称する)と、スリット等の無い壁(以下、壁2と称する)を向かい合わせ、連結した場合の実施例を示す。なお、連結の際は、これらの壁と垂直な方向に排水部ができるようにする。図6は、この実施例を示した図である。
壁1と壁2には、周囲から等方的に波が打ち寄せている。このとき、壁1のスリットから入射した波は回折効果を示すため、この入射波が同じスリットから出射するとは限らない。例えば、図に示したように、排水部から出射していく可能性がある。
ここで、壁1の面積をS1、壁2の面積をS2とすると、回折効果のためにスリットから入射して排水部から出射していく波が、出射の直前に壁1にぶつかっている確率は、ほぼS1/(S1+S2)≒1/2である。また、出射の直前に壁2にぶつかっている確率はS2/(S1+S2)≒1/2である。よって、スリットから入射した波が壁2に及ぼす波力の有効値は、ほぼ半減していると考えられる。このようにして、系に及ぼされる波力のバランスが崩れ、壁2から壁1に向かう向きに推進力が働く。
【0023】
なお、ここでは排水部から入射してくる波がスリットから出射していく波の影響を考慮に入れていないが、これは問題にならない。その理由は、次のようになる。すなわち、上記の議論においては、「仮に回折効果が無いとした場合に、スリットから入射後、壁2に跳ね返って再びスリットから出射してくるような」方向でスリットから入射する波を、対象としていたからである。しかし、スリットから入射してくる波には、「仮に回折効果が無いとした場合においても、そもそもスリットからは出射していかない」ような波も存在する(例えば、壁1に垂直な方向からかなり乖離した方向から、スリットに入射してくる波)。このような波によって系に及ぼされる波力の影響と、排水部から入射してくる波によって系に及ぼされる波力の影響が、相殺するのである。
【実施例4】
【0024】
続いて、衝立を使用し、本発明を実施した場合を示す。装置の構成例として、ここでは図7に示すようなものと考える。図において、衝立1〜3は互いに連結されているものとする。
【0025】
簡単のため、この装置は、図の横方向については、衝立1と衝立2が晒している面積の和と、衝立3が晒している面積とが等しいようにしている。従って、衝立が外部方向から受ける波力を装置全体について足し合わせると、相殺して消える(図8を参照)。
しかし、スリット部分や側面に接する部分からの寄与は、回折効果により、全体として相殺しない。このことは、図9に示している。本実施例においては、図9を参照する限りにおいては、スリットの回折効果が大きいため、スリットから入射し、衝立3に及ぼされる波力が小さくなると予想される。結果として、装置には衝立3から衝立1に向かう向きに推進力が作用するものと考えられる。
【実施例5】
【0026】
図10は、上記の装置を集積した例を示したものである。ここでは、実施例2で示した五重スリットと一重スリットで構成された本発明を実現する装置の集積体を示している。図示した装置が、さらにz方向に向かって集積されているものとする。なお、紙面に平行な方向を水平面とし、紙面に垂直な上方向を鉛直上方としている。また、図中の矢印は水流を示している。
図10中の「α」でマーキングされた水流、および類似の全ての水流は、直接推進力には貢献していない。これらの水流は、推進力に寄与する装置がその反作用として生み出した水流が、他の構成子に当たり、推進力を弱めないようにしているのである。これらのαで示された水流は、深い部分から+z方向に吸い上げられてくるよう構成する。
【実施例6】
【0027】
図10において、推進力に直接貢献している構成子の一部の向きを逆向きにする(yz面に関する対象変換する)と、推進力を減ずることによるブレーキの効果が期待できる。このようにしてブレーキを実現することが可能である。
【実施例7】
【0028】
図11は、本発明で提案された推進装置によって発電を行なうための構成を示したものである。これは、本発明が提案する推進力の反作用として発生する水流でタービンを回転し、発電するというものである。なお、タービンは推進装置に連結されているものとする。すると、発電を実施する場合、正味の推進力は相殺される(どれだけ推進力が減ずるかは、発電の効率による)ことに注意が必要である。このようにして推進力を減ずることができるため、推進の際のブレーキとして用いることが可能である。また、発電に特化した設備として利用することも可能である。
【実施例8】
【0029】
以上の全ての実施例において、スリット(あるいは穴でも同じ)を向かい合わせる場合には、その面積を等しいとした。しかし、実際には、面積が等しい必要は無い。2つの壁のそれぞれにおいて、スリットによって発生する回折の程度が異なれば良いのである。最後に、向かい合ったスリットの面積が異なる場合にも推進力が発生する例を示す。
【0030】
図12は、ここで紹介する実施例の装置の構成である。5重スリット1を配した壁1と一重スリット2を配した壁2が向かい合って連結されている。5重スリットは、4つのスリット構成子で構成されている。また、図より分かるように、スリット1に比べ、スリット2の面積が大きいものとする。
【0031】
このとき、外部からの波が当該の装置の外側に当たり、波力が及ぼされる様子を図13に示した。なお、スリット2から入射している波の部分も一部示している。これは、スリットを通過した波の部分とは言え、回折がほとんど観測されないため、必ず五重スリットのスリット構成子にぶつかる波の要素を示したものである。そして、図13で示された波の影響は、全体としては相殺され、推進力をもたらさないことが分かる。
【0032】
続いて、もし「仮にスリットを通過しても回折しない」とした場合に、当該の装置にぶつからないような波に注目する。図14は、このような波のうち、左側の五重スリット1から入射してくる波の様子を示したものである。そして図15は、右側のスリット2から入射してくる波の様子を示したものである。
図14の通り、実際には回折が起こるため、スリット1から入射した波は、その多くが壁2にぶつかる。もちろん、壁2にぶつかった波は、いずれスリット1あるいはスリット2から出射してくるが、この2つのスリットのうちの面積が大きいスリット2から出てくる確率の方が高い。すなわち、スリット1とスリット2の面積が等しい場合よりも、推進力が小さくなる。しかし、ほとんど回折が起こらず、故にほとんど壁1にぶつからない様子が示された図15からも分かるように、確かに及ぼされる波力のバランスは崩れている。系には、壁1から壁2に向かう向きに推進力が発生するのである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
船舶の航行における、無燃料の推進方法として、新たに利用できるものである。当該方法を波浪推進技船の技術を組み合わせることで、より合理的な活用を図ることができる。また、必要に応じて発電をすることも可能なため、有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進方法に関し、より詳細には、水中および水面の波の性質を利用して、物体に非等方的な波力を生ぜしめる技術に関する。本発明はまた、前記推進方法を用いた推進装置に関し、特に水中で波のエネルギーを推進力に変え、かつ、原理的には、無燃料で機能する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の水上交通で用いられる主な推進力には、スクリューの回転によるもの、およびポンプジェットによるものがある。後者のポンプジェットによる推進は、海水を吸い上げ、これを後方に吐き出すことで推進するというものである。
また、一般的ではないが、マスト(帆)を備え風力で推進する技術や、電磁推進技術、および「波浪推進船」で用いられる技術が知られている。電磁推進技術の原理は、次のようになる。すなわち、水中に磁場とこれに直交する電流の流れる場を形成し、これによって水中にローレンツ力を生じせしめる。このとき、磁場や電流の形成元である船体にはローレンツ力の反作用を受ける。当該の反作用が推進力となる。超電導電磁気推進器により、世界で初めて海上航行実験に成功した実験船「ヤマト-1」等が知られる。
波浪推進船で用いられている推進技術は、船体下部に上下に動く翼を配し、船体が波動によって上下運動をした際に動翼が上下運動するようにし、推進力を生じせしめるというものである。
【0003】
前記のスクリューやポンプジェットを用いた推進方法、および電磁推進技術は、燃料を要すると言う課題がある。また、これらの技術では、水中の生物種を巻き込んでしまう危険性がある。マストを用いた風力による推進方法は、無燃料での推進が可能であるが、推進力が風向きや風力に依存するため、安定した推進状態を確保するのが困難である。波浪推進船の技術は、無燃料で機能するため有用であるが、当該技術に付加的に用いることができる無燃料の推進技術を用いることが望ましい。
【0004】
水上および水中の推進技術ではないが、空気を構成する気体分子の物質波(ド・ブロイ波)の回折と干渉の性質を利用し、推進する技術がある(特許文献1、および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−270578
【0006】
【特許文献2】特願2009−244997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来の水上および水中の主要な推進技術は、燃料を要するという課題がある。また、無燃料で機能する推進技術についても、効率的に機能しないことにより、普及していないのが実情である。
【0008】
本発明は、斯かる問題点を鑑みて成されたものであり、物体の形状をもって、無燃料で水中および水上を推進する仕組みを提案することを課題とする。本発明はまた、当該の仕組みを利用した推進装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明が提案する前記課題の解決手段は、次の通りである。
すなわち、二重スリットが配された壁と、一重スリットが配された壁を、スリットの長さ方向を揃えて向かい合わせ、連結する。当該の系を水中に沈めると、波の回折効果によって、二重スリットから入射して壁に当たらずに一重スリットから抜ける波力が、一重スリットから入射して壁に当たらずに二重スリットから抜ける波力よりも小さくなる(なお、壁を小さくすると、大きく回折した波が壁に当たらずに連結部の隙間(スリットではない箇所)から出射してしまうので、この場合は一概にここで述べた大小関係が成り立つとは限らない。しかし、両壁に加えられる波力のバランスは崩れる)。このバランスの崩れにより、系には推進力が作用する。
【0010】
本発明が提案する解決手段の範囲においては、次の手段も含まれる。
スリットが配された壁を、スリットの無い壁と向かい合わせ、連結する。ここで連結の仕方についてであるが、壁間から壁面に垂直な方向に当該の系を脱出できるようにする。
当該の系を水中に沈めると、スリットから入射する波の入射方向が例え内壁にぶつかって同スリットから脱出する方向の入射であったとしても、波の回折効果のために同スリットから出射していくとは限らない。すなわち、同スリットではない、壁面に垂直な脱出部から出射していく可能性もあるのである。結果として、同スリットから入射する波が系に作用する力がの有効値は減ぜられることとなる。
他方、系に加えられるスリット部以外の部位に対して作用する波力は、少なくとも水平方向の面においては等方的である。よって、スリットの存在によって系に作用する波力の等方性が崩れ、系に推進力が作用する。
【0011】
本発明は、その実用方法の提案として、次の内容を含むものである。すなわち、当該の系を多数集積することにより、強力な推進力を実現できることを提案するものである。
【0012】
本発明では、上記の壁のスリットの長さと垂直な方向のサイズを、小さくすることで、系の水中の接水面積を減らすことも提案する。このようにすることで、ある集積子の推進力の源泉である「系に及ぼされなかった波力」が、他の集積子に当たり、系に波力を及ぼし集積体全体の推進力を弱めてしまう影響を、緩和することができる。
【0013】
以上において、スリットは、穴あるいは衝立に代えても良い。これを一般化し、本発明は、これらの向かい合わせられた構造物が、その幾何学的形状が互いに相違なることを特徴とするものとして提案する。これにより、一方から入射する波の回折効果の強さは、他方から入射する波の回折効果と異なり、系に作用する波力を異なるようにできる。
よって、スリットや穴を適宜組み合わせても良い。また、穴やスリットの数にも制限は無い。さらにまた、上記したように、形状の異なる衝立を向かい合わせても良い。
【0014】
本発明は、上記の技術を効率よく機能させるため、任意の時点で、水中の状況に応じて推進力を調節する方法も提供する。具体的には、上記の幾何学的構造を相似変形させるものである。
【0015】
本発明ではさらに、推進力を調整するために壁間距離や前記の幾何学的構造を個別に変形することも可能とする。ここでの変形とは、例えば配されていたスリットを閉じることによってスリットをなくしてしまい、これによって推進力を消滅させることも含まれる。
本発明ではまた、前記集積体において、その一部の構成子の方向を逆転させ、推進力を弱める技術も提案する。
【0016】
さらに本発明においては、上記のように波の回折の大小による系に及ぼされる波力のバランスの崩れを利用し、発電をすることも提案する。上記の技術により、当該の装置には推進力の反作用として水流が生じる。この水流にたタービンを配し、発電するのである。発電の程度を制御することにより、推進力の程度を調節することができるというものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無燃料で波力を推進力に変換することができ、省エネルギーに船舶を航行できる。このため、地球温暖化対策の緩和策として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明が提案する装置の代表的な実現形態を図示したものである。(実施例1)
【図2】図2は、本発明が提案する推進原理を説明するための図である。(実施例1)
【図3】図3は、本発明が提案する推進原理を説明するための図である。(実施例1)
【図4】図4は、5重スリットを用いることで、二重スリットの場合よりもさらに強い推進力が得られることを示した図である。(実施例2)
【図5】図5は、5重スリットを用いることで、二重スリットの場合よりもさらに強い推進力が得られることを示した図である。(実施例2)
【図6】図6は、スリットの配された壁とスリットの無い壁を向かい合わせて連結した実施例における、推進力の発生原理を示した図である。(実施例3)
【図7】図7は、衝立(およびスリット)によって本発明を実施する場合の装置の構成を示したものである。(実施例4)
【図8】図8は、衝立に外部領域から加わる波力が、装置全体として相殺されることを示した図である。(実施例4)
【図9】図9は、衝立の幾何学的構造に起因する回折効果の影響により、系全体に作用する波力の等方性が、崩れていることを示した図である。(実施例4)
【図10】図10は、5重スリットと一重スリットで構成された本発明を実施する装置を集積した例である。(実施例5)
【図11】図11は、本発明で提案された推進装置を用い、発電する仕組みを示した図である。(実施例7)
【図12】図12は、向かい合わされたスリットの面積が等しくない場合の本発明を実施するための構成例である。(実施例8)
【図13】図13は、実施例8において、系に外部から及ぼされるか、あるいは外部から直接及ぼされたとみなすことができるような波力の構成を示したものである。(実施例8)
【図14】図14は、実施例8において、左側から5重スリットに入射する波の波力の様子を、回折の影響も交えて示したものである。(実施例8)
【図15】図15は、実施例8において、図14に対応する、右側から入射する波の回折の様子を示したものである。(実施例8)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0019】
図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明が提案する装置の代表的な実現形態を図示したものである。二重スリットが配された壁と、一重スリットが配された壁を、スリットの長さ方向を揃えて向かい合わせ、連結する。本実施例においては、簡単のために二重スリットと一重スリットの面積は等しいとしている。
【0020】
連結して得られた系が水中に沈められると、波の回折効果により、二重スリットから入射して壁に当たらずに一重スリットから抜ける波力と、一重スリットから入射して壁に当たらずに二重スリットから抜ける波力にずれが生じる。図2および図3は、この様子を示したものである。なお、図2および図3に描かれている2つの壁は、互いに連結されているものと考える。
図2は、二重スリットから波が入射する場合を示したものである。2つの狭いスリットのそれぞれから波が入射し、強い回折効果が現われていることが分かる。
図3は、一重スリットから波が入射する場合を示したものである。スリット幅が二重スリットの場合よりも広いため、回折効果が小さく、壁1に及ぼす波力が小さいことが分かる。
このバランスの崩れが、当該の系に推進力として作用する。
【実施例2】
【0021】
実施例1では、二重スリットの場合を示したが、代わりに三重以上の狭いスリットを用いると、さらに大きな推進力を得られる。図4および図5は、五重スリットの例を示したものである。
【実施例3】
【0022】
次に、スリットが配された壁(以下、壁1と称する)と、スリット等の無い壁(以下、壁2と称する)を向かい合わせ、連結した場合の実施例を示す。なお、連結の際は、これらの壁と垂直な方向に排水部ができるようにする。図6は、この実施例を示した図である。
壁1と壁2には、周囲から等方的に波が打ち寄せている。このとき、壁1のスリットから入射した波は回折効果を示すため、この入射波が同じスリットから出射するとは限らない。例えば、図に示したように、排水部から出射していく可能性がある。
ここで、壁1の面積をS1、壁2の面積をS2とすると、回折効果のためにスリットから入射して排水部から出射していく波が、出射の直前に壁1にぶつかっている確率は、ほぼS1/(S1+S2)≒1/2である。また、出射の直前に壁2にぶつかっている確率はS2/(S1+S2)≒1/2である。よって、スリットから入射した波が壁2に及ぼす波力の有効値は、ほぼ半減していると考えられる。このようにして、系に及ぼされる波力のバランスが崩れ、壁2から壁1に向かう向きに推進力が働く。
【0023】
なお、ここでは排水部から入射してくる波がスリットから出射していく波の影響を考慮に入れていないが、これは問題にならない。その理由は、次のようになる。すなわち、上記の議論においては、「仮に回折効果が無いとした場合に、スリットから入射後、壁2に跳ね返って再びスリットから出射してくるような」方向でスリットから入射する波を、対象としていたからである。しかし、スリットから入射してくる波には、「仮に回折効果が無いとした場合においても、そもそもスリットからは出射していかない」ような波も存在する(例えば、壁1に垂直な方向からかなり乖離した方向から、スリットに入射してくる波)。このような波によって系に及ぼされる波力の影響と、排水部から入射してくる波によって系に及ぼされる波力の影響が、相殺するのである。
【実施例4】
【0024】
続いて、衝立を使用し、本発明を実施した場合を示す。装置の構成例として、ここでは図7に示すようなものと考える。図において、衝立1〜3は互いに連結されているものとする。
【0025】
簡単のため、この装置は、図の横方向については、衝立1と衝立2が晒している面積の和と、衝立3が晒している面積とが等しいようにしている。従って、衝立が外部方向から受ける波力を装置全体について足し合わせると、相殺して消える(図8を参照)。
しかし、スリット部分や側面に接する部分からの寄与は、回折効果により、全体として相殺しない。このことは、図9に示している。本実施例においては、図9を参照する限りにおいては、スリットの回折効果が大きいため、スリットから入射し、衝立3に及ぼされる波力が小さくなると予想される。結果として、装置には衝立3から衝立1に向かう向きに推進力が作用するものと考えられる。
【実施例5】
【0026】
図10は、上記の装置を集積した例を示したものである。ここでは、実施例2で示した五重スリットと一重スリットで構成された本発明を実現する装置の集積体を示している。図示した装置が、さらにz方向に向かって集積されているものとする。なお、紙面に平行な方向を水平面とし、紙面に垂直な上方向を鉛直上方としている。また、図中の矢印は水流を示している。
図10中の「α」でマーキングされた水流、および類似の全ての水流は、直接推進力には貢献していない。これらの水流は、推進力に寄与する装置がその反作用として生み出した水流が、他の構成子に当たり、推進力を弱めないようにしているのである。これらのαで示された水流は、深い部分から+z方向に吸い上げられてくるよう構成する。
【実施例6】
【0027】
図10において、推進力に直接貢献している構成子の一部の向きを逆向きにする(yz面に関する対象変換する)と、推進力を減ずることによるブレーキの効果が期待できる。このようにしてブレーキを実現することが可能である。
【実施例7】
【0028】
図11は、本発明で提案された推進装置によって発電を行なうための構成を示したものである。これは、本発明が提案する推進力の反作用として発生する水流でタービンを回転し、発電するというものである。なお、タービンは推進装置に連結されているものとする。すると、発電を実施する場合、正味の推進力は相殺される(どれだけ推進力が減ずるかは、発電の効率による)ことに注意が必要である。このようにして推進力を減ずることができるため、推進の際のブレーキとして用いることが可能である。また、発電に特化した設備として利用することも可能である。
【実施例8】
【0029】
以上の全ての実施例において、スリット(あるいは穴でも同じ)を向かい合わせる場合には、その面積を等しいとした。しかし、実際には、面積が等しい必要は無い。2つの壁のそれぞれにおいて、スリットによって発生する回折の程度が異なれば良いのである。最後に、向かい合ったスリットの面積が異なる場合にも推進力が発生する例を示す。
【0030】
図12は、ここで紹介する実施例の装置の構成である。5重スリット1を配した壁1と一重スリット2を配した壁2が向かい合って連結されている。5重スリットは、4つのスリット構成子で構成されている。また、図より分かるように、スリット1に比べ、スリット2の面積が大きいものとする。
【0031】
このとき、外部からの波が当該の装置の外側に当たり、波力が及ぼされる様子を図13に示した。なお、スリット2から入射している波の部分も一部示している。これは、スリットを通過した波の部分とは言え、回折がほとんど観測されないため、必ず五重スリットのスリット構成子にぶつかる波の要素を示したものである。そして、図13で示された波の影響は、全体としては相殺され、推進力をもたらさないことが分かる。
【0032】
続いて、もし「仮にスリットを通過しても回折しない」とした場合に、当該の装置にぶつからないような波に注目する。図14は、このような波のうち、左側の五重スリット1から入射してくる波の様子を示したものである。そして図15は、右側のスリット2から入射してくる波の様子を示したものである。
図14の通り、実際には回折が起こるため、スリット1から入射した波は、その多くが壁2にぶつかる。もちろん、壁2にぶつかった波は、いずれスリット1あるいはスリット2から出射してくるが、この2つのスリットのうちの面積が大きいスリット2から出てくる確率の方が高い。すなわち、スリット1とスリット2の面積が等しい場合よりも、推進力が小さくなる。しかし、ほとんど回折が起こらず、故にほとんど壁1にぶつからない様子が示された図15からも分かるように、確かに及ぼされる波力のバランスは崩れている。系には、壁1から壁2に向かう向きに推進力が発生するのである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
船舶の航行における、無燃料の推進方法として、新たに利用できるものである。当該方法を波浪推進技船の技術を組み合わせることで、より合理的な活用を図ることができる。また、必要に応じて発電をすることも可能なため、有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水もしくはこれに準ずる溶液中、もしくはその表面上の推進方法であって、
推進対象に作用する波動に対し、該推進対象の形状に起因する回折効果を生じせしめることを特徴とし、
該回折効果によって該推進対象に作用する波力が非等方となるようにすることを特徴とし、
これによって該推進対象に推進力が作用するようにする、推進方法。
【請求項2】
請求項1記載の推進方法であって、
前記の推進対象の形状は、スリット1が配された一つの壁と、
該スリット1とは形状の相違なるスリット2が配された壁を向かい合わせて連結したことを特徴とする、
推進方法。
【請求項3】
請求項2の推進方法であって、
スリット1は、複数のスリットから構成される多重スリットであることを特徴とし、
スリット2は、スリット1よりも少ない数のスリットから構成される、単一もしくは多重のスリットであることを特徴とする、
推進方法。
【請求項4】
請求項3の推進方法であって、
スリット2は、単一スリットであることを特徴とする、推進方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項記載の推進方法であって、
スリット1とスリット2の面積が等しいことを特徴とする、推進方法
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の推進方法において、
スリット2を配さないことを特徴とし、
また、スリット1が配された壁に垂直な方向に向けて排水部を設けることを特徴とする、
推進方法。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項記載の推進方法であって、
スリットに代えて穴を用いたことを特徴とする、推進方法。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項記載の推進方法であって、
スリットと穴を組み合わせて用いたことを特徴とする、推進方法。
【請求項9】
請求項1記載の推進方法であって、
前記推進対象の形状が、
1本以上の衝立を並べた一群Aと、1本以上の衝立を並べた一群Bを向かい合わせて互いに連結したものであることを特徴とし、
特に、向かい合った互いの衝立群の幾何学的形状が互いに相違なることを特徴とする、
推進方法。
【請求項10】
請求項9記載の推進方法において、
前記衝立群Aは複数の衝立から成り、
前記衝立群Bは、1本以上から成り、かつこれは衝立群Aの本数よりも少ない本数であることを特徴とする、
推進方法
【請求項11】
請求項9または10記載の推進方法において、
前記衝立群Bの本数は、1本であることを特徴とする、
推進方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項記載の推進方法において、
複数の物体を向かい合わせ、連結する形態を特徴とし、
かつ、該物体とは、衝立もしくはスリットの配された壁もしくは穴の配された壁、もしくは穴およびスリットの無い壁を
適宜組み合わせたことを特徴とする、
推進方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項記載の推進方法において、
向かい合わせた構造物の間隔を調節することによって、推進力の強さおよび向きを可変とさせる方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項記載の推進方法において、
向かい合わされた各々の構造物の形状を可変とすることにより、推進力の強さおよび向きを可変とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の推進方法において、特にスリットもしくは穴のサイズを変化させることを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1から12記載の推進方法を実装した推進装置。
【請求項17】
請求項13から15記載の方法を実装した装置。
【請求項18】
請求項16記載の推進装置を多数集積することにより、大きな推進力を得る推進方法。
【請求項19】
請求項18記載の推進方法であって、推進の反作用として発生する水流をできる限り避けるために、
構成子毎にその壁を小さくすることを特徴とする、推進方法。
【請求項20】
請求項18または19記載の推進方法であって、
請求項16の推進装置か、もしくは請求項18または19記載の推進装置がもたらす推進力の
反作用としての水流によって、
集積体の任意の構成子がもたらす推進力の反作用としての水流を押し流し、
これによって水流が他の構成子に当たる度合を低めることを特徴とする、
推進方法。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか一項記載の推進方法において、
一部の構成子の向きを変化させることで、推進方向の向きの微調整、および推進に対するブレーキを実現する機能を備える
ことを特徴とする、推進方法
【請求項22】
請求項18から21のいずれか一項記載の推進方法を実現した、推進装置。
【請求項23】
請求項16、17、もしくは22で示された少なくとも一つの装置において、
推進力の反作用として生ずる水流によって、推進装置に取り付けられた発電機関によって発電することを特徴とする、
発電方法。
【請求項24】
請求項23記載の発電方法を備えることによって、推進力に対するブレーキとして利用することを特徴とする、
推進方法。
【請求項25】
請求項23記載の発電方法を用いたことを特徴とする、発電装置。
【請求項26】
請求項24記載の推進方法を実装した推進装置。
【請求項27】
請求項16、17、22、25、もしくは26に示された少なくとも一つの装置を備えたことを特徴とする、船。
【請求項1】
水もしくはこれに準ずる溶液中、もしくはその表面上の推進方法であって、
推進対象に作用する波動に対し、該推進対象の形状に起因する回折効果を生じせしめることを特徴とし、
該回折効果によって該推進対象に作用する波力が非等方となるようにすることを特徴とし、
これによって該推進対象に推進力が作用するようにする、推進方法。
【請求項2】
請求項1記載の推進方法であって、
前記の推進対象の形状は、スリット1が配された一つの壁と、
該スリット1とは形状の相違なるスリット2が配された壁を向かい合わせて連結したことを特徴とする、
推進方法。
【請求項3】
請求項2の推進方法であって、
スリット1は、複数のスリットから構成される多重スリットであることを特徴とし、
スリット2は、スリット1よりも少ない数のスリットから構成される、単一もしくは多重のスリットであることを特徴とする、
推進方法。
【請求項4】
請求項3の推進方法であって、
スリット2は、単一スリットであることを特徴とする、推進方法。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項記載の推進方法であって、
スリット1とスリット2の面積が等しいことを特徴とする、推進方法
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の推進方法において、
スリット2を配さないことを特徴とし、
また、スリット1が配された壁に垂直な方向に向けて排水部を設けることを特徴とする、
推進方法。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項記載の推進方法であって、
スリットに代えて穴を用いたことを特徴とする、推進方法。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか一項記載の推進方法であって、
スリットと穴を組み合わせて用いたことを特徴とする、推進方法。
【請求項9】
請求項1記載の推進方法であって、
前記推進対象の形状が、
1本以上の衝立を並べた一群Aと、1本以上の衝立を並べた一群Bを向かい合わせて互いに連結したものであることを特徴とし、
特に、向かい合った互いの衝立群の幾何学的形状が互いに相違なることを特徴とする、
推進方法。
【請求項10】
請求項9記載の推進方法において、
前記衝立群Aは複数の衝立から成り、
前記衝立群Bは、1本以上から成り、かつこれは衝立群Aの本数よりも少ない本数であることを特徴とする、
推進方法
【請求項11】
請求項9または10記載の推進方法において、
前記衝立群Bの本数は、1本であることを特徴とする、
推進方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項記載の推進方法において、
複数の物体を向かい合わせ、連結する形態を特徴とし、
かつ、該物体とは、衝立もしくはスリットの配された壁もしくは穴の配された壁、もしくは穴およびスリットの無い壁を
適宜組み合わせたことを特徴とする、
推進方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項記載の推進方法において、
向かい合わせた構造物の間隔を調節することによって、推進力の強さおよび向きを可変とさせる方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項記載の推進方法において、
向かい合わされた各々の構造物の形状を可変とすることにより、推進力の強さおよび向きを可変とする方法。
【請求項15】
請求項14記載の推進方法において、特にスリットもしくは穴のサイズを変化させることを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1から12記載の推進方法を実装した推進装置。
【請求項17】
請求項13から15記載の方法を実装した装置。
【請求項18】
請求項16記載の推進装置を多数集積することにより、大きな推進力を得る推進方法。
【請求項19】
請求項18記載の推進方法であって、推進の反作用として発生する水流をできる限り避けるために、
構成子毎にその壁を小さくすることを特徴とする、推進方法。
【請求項20】
請求項18または19記載の推進方法であって、
請求項16の推進装置か、もしくは請求項18または19記載の推進装置がもたらす推進力の
反作用としての水流によって、
集積体の任意の構成子がもたらす推進力の反作用としての水流を押し流し、
これによって水流が他の構成子に当たる度合を低めることを特徴とする、
推進方法。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか一項記載の推進方法において、
一部の構成子の向きを変化させることで、推進方向の向きの微調整、および推進に対するブレーキを実現する機能を備える
ことを特徴とする、推進方法
【請求項22】
請求項18から21のいずれか一項記載の推進方法を実現した、推進装置。
【請求項23】
請求項16、17、もしくは22で示された少なくとも一つの装置において、
推進力の反作用として生ずる水流によって、推進装置に取り付けられた発電機関によって発電することを特徴とする、
発電方法。
【請求項24】
請求項23記載の発電方法を備えることによって、推進力に対するブレーキとして利用することを特徴とする、
推進方法。
【請求項25】
請求項23記載の発電方法を用いたことを特徴とする、発電装置。
【請求項26】
請求項24記載の推進方法を実装した推進装置。
【請求項27】
請求項16、17、22、25、もしくは26に示された少なくとも一つの装置を備えたことを特徴とする、船。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−89781(P2010−89781A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−265796(P2009−265796)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【出願人】(509148131)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265796(P2009−265796)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【出願人】(509148131)
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