説明

花色を改変したコチョウランの製造方法

【課題】 ラン科植物の育種には時間が掛かり、従来の交配育種法でコチョウランの花色を所望する色調に改変することは極めて困難であった。
本発明の目的は、コチョウランの花色を改変する方法、特に白色のコチョウランから赤色系統に改変されたコチョウランを製造する方法を提供することにある。

【解決手段】 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、少なくともフラバノン3―水酸化酵素、フラボノイド3'―水酸化酵素、ジヒドロフラボノール4−還元酵素及びアントシアニジン合成酵素の4つの酵素をコードする遺伝子をコチョウランに遺伝子導入すると赤いコチョウランが作出できることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換え技術を用いてコチョウランの花色を改変する方法に関する。より詳しくは、シアニジンの生合成系酵素をコードする遺伝子をコチョウランに導入し、赤い花色のコチョウランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鑑賞用植物において花の色は特に重要な形質として、古くから様々な色の花が交配育種により作出されてきた。しかし、偶然に頼る交配育種法で花の色のような特定の形質のみをある特定の品種に導入するためには戻し交雑を何世代も繰り返す必要があり、多大な労力と時間が必要である。さらに、植物によっては交配育種の期間が異なり、コチョウランのようなラン科植物の多くは、花をつけるまでに長い時間を要し、交配育種のみで望む形質の品種を作出することは実質上不可能であった。そのため、市場の要望にも拘らずコチョウランの花色を所望する色に改変することは極めて困難とされていた。
【0003】
近年、組換えDNA技術により種や属を越えた育種が可能となり、従来の交配育種では得られなかった色調を持つ新品種の育種に期待が持たれている。
花の色は主にアントシアニン、カロテノイド、ベタレインの3種の色素に起因する。その内、アントシアニンは赤色から青色を司る、極大吸収波長幅が最も広い色素である。アントシアニンはフラボノイドの一種で図1に示した代謝経路で生合成される。アントシアニンの色調は、その化学構造、特にB環の水酸基の数に大きく依存する。そのB環の水酸化は、フラボノイド3'−水酸化酵素(F3'H)およびフラボノイド3',5'−水酸化酵素(F3'5'H)によって触媒される。花弁細胞内にて、F3'H活性とF3'5'H活性がない場合にはペラルゴニジン(橙色)が合成され、F3'H活性がある場合はシアニジン(赤色)が合成され、F3'5'H活性がある場合はデルフィニジン(青色)が合成される。そのため、赤い花色の作出には、F3'Hが大きな役割を果たすと考えられてきた。
遺伝子を用いて花色を改変した事例としては、パンジーのF3'5'H遺伝子を用いて青い色のバラを製造する方法(特許文献1)がある。
一方、コチョウランに関しては、内在遺伝子の過剰発現によりピンク色の花色を赤紫色に改変した報告がある。(非特許文献1)
【0004】
【特許文献1】国際公開公報 WO 2005/017147
【非特許文献1】Su and Hsu, Biotechnology Letters (2003) 25: 1933-1939.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コチョウランの花色を改変するために必要な遺伝子を特定し、その遺伝子をコチョウランに導入し、発現させることにより、花色が赤く改変されたコチョウランを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、シアニジン生合成関連酵素の遺伝子導入の検討を行った結果、ナリンゲニンより下流の4つの酵素をコードする遺伝子を白いコチョウランの花弁細胞へ導入することにより、細胞内で赤色色素のシアニジンが生合成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、フラバノン3−水酸化酵素をコードする遺伝子、フラボノイド3'−水酸化酵素をコードする遺伝子、ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子並びにアントシアニジン合成酵素をコードする遺伝子をコチョウランに導入し、発現させることを特徴とする花色が改変されたコチョウランの製造方法に関する。
また、本発明は、上記の方法により得られる花色が改変されたコチョウラン若しくは、改変された花色と同じ性質を有するその子孫またはその組織に関する。
【0007】
本発明において「フラバノン3−水酸化酵素」(F3H)とは、ナリンゲニンからジヒドロケンフェロールを生成する反応を触媒する酵素をいう。また、「フラボノイド3'−水酸化酵素」(F3’H)とは、ジヒドロケンフェロールからジヒドロケルセチンを生成する反応を触媒する酵素をいい、「ジヒドロフラボノール4−還元酵素」(DFR)とは、ジヒドロケルセチンからロイコシアニジンを生成する反応を触媒する酵素をいい、「アントシアニジン合成酵素」(ANS)とは、ロイコシアニジンからシアニジンを生成する反応を触媒する酵素をいう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、花色以外の形質の優秀性を保持したまま、白いコチョウランからその花色がピンク色又は赤色などに改変された新品種の作出が可能となる。
【0009】
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されていることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは装飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、F3H,F3'H、DFR及びANSをコードする各遺伝子は、新規若しくは公知の遺伝子を用いることができる。公知の遺伝子としては、F3Hをコードする遺伝子としてGenBankに登録のあるもの(アクセッション番号:DQ394303、AY221246、AJ493133、AY641730、AF184270、AB078956、AB201760、AY669324、AF036093、AB211958、AB187027、AB234905)などが挙げられ、F3'Hをコードする遺伝子としてGenBankに登録のあるもの(AAG49298、ABA64468、BAE47004、BAE47005、BAE47006、BAE71221、BAE72874、CAI54278、NP_920627、Z17221)、DFRをコードする遺伝子としてGenBankに登録のあるもの(アクセッション番号:AB012924、AAB62873、AAC17843、AAD49343、AAQ83576、AAU93766、AAY32600、AAY32601、AAY32602、BAB40789、BAE79202、Z17221)、ANSをコードする遺伝子としてGenBankに登録のあるもの(アクセッション番号:AY585677、AY228485、AF015885、AY581048、U82432、AY695817、AB208689、AY997840、AY997842、AY382828、AY256380、AF026058、Y07955、AF384050、AB097216、AB087206、AB198869、AB044091、AY123768、AB234906)などが挙げられる。本明細書では、アクセッション番号Z17221及びAY997842で特定される配列から一定のプライマーを設計し、ガーベラのF3'Hをコードする遺伝子(配列番号:3)、DFRをコードする遺伝子(配列番号:7)及びANSをコードする遺伝子(配列番号:13)を単離し、またアクセッション番号AB057672及びAB012924で特定される配列から同様に、トレニアのF3'Hをコードする遺伝子(配列番号:87)及びDFRをコードする遺伝子(配列番号:5)を単離し、それぞれ実施例4及び5として記載しているが、他の公知の遺伝子も同様にして単離することができるので、それらを本発明に用いることができるのは明白である。また、本発明によって見出されたコチョウランのF3Hをコードする遺伝子(配列番号:9)、F3'Hをコードする遺伝子(配列番号:1)、DFRをコードする遺伝子(配列番号:15)及びANSをコードする遺伝子(配列番号:11)は、新規な遺伝子であるが、それらの遺伝子も用いることができる。
本発明の上記方法において、F3'Hをコードする遺伝子としてコチョウラン又はガーベラの遺伝子を、DFRをコードする遺伝子としてガーベラ又はトレニアの遺伝子を用いると、花色は更に濃い赤色を呈するので、好ましい。
【0011】
本明細書において、遺伝子という用語は、その最も広い意味で用いられ、該酵素のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、またはその配列に対して相補的なヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子をいう。この核酸分子には、アミノ酸配列をコードするエクソンのほか、イントロンや5'非翻訳配列、3'非翻訳配列が含まれていてもよい。
【0012】
本発明で示される、特定の植物由来の遺伝子とは、その植物由来としてGenBankに登録のあるもの等が挙げられる。また、該遺伝子にはその遺伝子から自然突然変異によって生じうる高い類似性を示す遺伝子、或いは人為的変異により生じる高い類似性を示す遺伝子も含まれる。高い類似性とは、両者の遺伝子にコードされるアミノ酸配列の相同性が、85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上のものが挙げられる。
【0013】
また、本発明において遺伝子は、その遺伝子を含む組換えベクター、特に発現ベクターを介してコチョウランに導入される。発現ベクターは該遺伝子を導入すべき宿主の種類に依存して発現制御領域、例えばプロモーターおよびターミネーター、複製起点等を含有する。プロモーターとしては、花弁細胞で遺伝子の発現を誘導するものが挙げられ、例えば、コチョウランのCHS遺伝子由来のプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S由来のプロモーターなどが挙げられる。又、ターミネーターとしては、例えば、コチョウランのCHS遺伝子由来のターミネーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S由来のターミネーターなどが挙げられる。
具体的には、各遺伝子は、プロモーター配列の3'下流に連結され、さらにその3'下流には、転写終結配列が付加されていることが望ましい。発現ベクターの作製は制限酵素、リガーゼ等を用いて常法に従って行うことができる。また、発現ベクターによる宿主の形質転換も常法に従って行うことができる。本発明における花弁細胞で遺伝子を発現させる方法としては、例えば、遺伝子銃法、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、PEG法、ウイルス法などが挙げられる。アグロバクテリウム法を用いてコチョウランの形質転換を行うためのベクターの一例を、図7及び図8に示す。
遺伝子の発現という用語は、その最も広い意味で用いられ、RNAの産生、またはRNAおよびタンパク質の両方の産生が含まれる。また、植物における遺伝子の発現は、構成的、あるいは発達的、またあるいは誘導的のいずれであってもよく、全身的、または組織特異的であってもよい。
【0014】
本発明において、形質転換可能な植物は、ラン科植物であり、好ましくはコチョウランであり、コチョウランには、Phalaenopsis属とDoritaenopsis属に属するものがある。
【0015】
本発明は、F3Hをコードする遺伝子、F3'Hをコードする遺伝子、DFRをコードする遺伝子並びにANSをコードする遺伝子をコチョウランに導入し、発現させることにより、花色を赤く改変させたコチョウランの製造方法に関するが、本発明のより好ましい実施の形態は以下のとおりである。
(1)F3'Hをコードする遺伝子がコチョウラン又はガーベラの遺伝子である。
(2)F3'Hをコードする遺伝子が配列番号1又は3の塩基配列で表される遺伝子である。
(3)DFRをコードする遺伝子がガーベラ又はトレニアの遺伝子である。
(4)DFRをコードする遺伝子が配列番号5又は7の塩基配列で表される遺伝子である。
(5)F3'Hをコードする遺伝子がコチョウラン又はガーベラの遺伝子であり、DFRをコードする遺伝子がガーベラ又はトレニアの遺伝子である。
(6)F3'Hをコードする遺伝子が配列番号1又は3の塩基配列で表される遺伝子であり、DFRをコードする遺伝子が配列番号5又は7の塩基配列で表される遺伝子である。
(7)F3Hをコードする遺伝子が配列番号9の塩基配列で表される遺伝子であり、F3'Hをコードする遺伝子が配列番号1又は3の塩基配列で表される遺伝子であり、DFRをコードする遺伝子が配列番号5又は7の塩基配列で表される遺伝子であり、ANSをコードする遺伝子が配列番号11又は13の塩基配列で表される遺伝子である。
【実施例】
【0016】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
なお、DNA の切断、連結、大腸菌の形質転換、遺伝子の塩基配列決定、PCR等一般の遺伝子組換えに必要な方法は、各操作に使用する市販の試薬、機械装置等に添付されている説明書や、実験書(例えば「Molecular Cloning: A Laboratory Manual
(Third Edition,Sambrook and Russell,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Press) 」)に基本的に従った。PCR反応には、GeneAmp PCR system 9700(PE Applied Biosystems)を使用した。機器の操作は、他に詳細に記載するもの以外は、機器に添付される説明書に記載される標準的な操作方法に従った。全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
【0017】
本発明において、新規に取得した遺伝子でコードされるアミノ酸配列と既知のアミノ酸配列との類似性を調べる相同性検索プログラムとしては、BLASTP 2.2.15(http://www.ddbj.nig.ac.jp/search/blast-j.html、文献:Altschul et al., Nucleic Acids Res. (1997) 25: 3389-3402.)を使用した。ここで言う相同性とは、配列全体に渡るアミノ酸の一致性であり、新規に取得した遺伝子にコードされるアミノ酸配列と既知のアミノ酸配列とを一致性が高い形で並べ、両者で一致したアミノ酸数を比較域のアミノ酸数で割って得た値である。なお、ここで言う一致性が高い形とは、上記BLASTPプログラムのパラメーターをデフォルトにした状態(ギャップ有、期待値10、フィルター有)で出力されたアライメント結果である。本実施例で記載した相同性は、解析時に上記相同性検索解析において最も高い相同性を示した既知アミノ酸配列について記載したものである。
【0018】
実施例1 コチョウラン花弁への遺伝子導入
本明細書の実施例に特に記述が無い場合は、以下に述べる遺伝子導入方法を用いて、コチョウラン花弁に各種遺伝子を導入し、その機能を評価した。全ての遺伝子は、5'側にプロモーターを、3'側にターミネーターを連結したDNA構造をとり、花弁細胞内で発現する形状で導入された。
コチョウランのつぼみを、1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液で5分間滅菌し、滅菌水で3回洗浄した後、このつぼみを分解して、ラテラルセパル、ドーサルセパル、ペタルをNDM塩(Tokuhara and Mii, Plant Cell Reports (1993) 13: 7-11.)と0.6%アガロースを含む寒天培地上に置床した。尚、つぼみは、白色コチョウランPhal. amabilisの長さ15mm程度のものを使用した。
導入するDNAはHi Speed Plasmid Midi Kit(QIAGEN)を用いて精製し、該遺伝子は遺伝子銃法にて遺伝子導入を行なった。尚、複数の遺伝子を同時導入する際は、該DNA溶液同士を均等に混ぜたものを用意し、導入用のDNA溶液とした。その際の金粒子とDNAの吸着は、以下の割合で行った。20μlのTE bufferに溶解したDNA(遺伝子が含まれるプラスミドDNA一種につき2μgを混ぜて溶解したもの)を50μlの金粒子混濁液(粒子直径は1.0μm、60mg/ml 50%グリセロール)と混ぜ、この混合液70μlに50μlの 2.5M塩化カルシウムと10μlの0.2Mスペルミジンを加えて懸濁し、DNAを金粒子に吸着させた。次に、遠心操作により、上清を除去し、70%エタノールと100%エタノールで粒子を洗浄した後、得られた該沈殿物に60μlの100%エタノールを加えた懸濁液を試料溶液とし、その10μlを一回の遺伝子導入に用いた。遺伝子銃は、IDERA GIE-III(TANAKA Co. Ltd.)を用いた。遺伝子導入条件は、銃口から試料までの距離12cm、−80kPaの減圧下、0.3MPaのヘリウムガス圧、0.025秒の噴射時間の条件下で行なった。
遺伝子導入後の花弁は、NDM塩寒天培地上に置床し、明暗サイクル下(光強度23μmol/m/秒、明期16時間、暗期8時間)、25℃で培養した。
【0019】
実施例2 遺伝子導入用の発現ベクター(pBS-P35T35)の作成
pBS-P35T35はpBluescriptIISK-(Stratagene)内にカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(Hohn et al., Current Topics in Microbiology and Immunology (1982) 96: 194-236.)と、タバコモザイクウイルスのオメガ配列(Gallie et al., Nucleic Acids Research (1987) 15: 3257-3273.)、制限酵素SwaIサイト、そしてカリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーターをこの順に有するプラスミドである(図2)。このpBS-P35T35と実質的に機能が同等であるプラスミドは、以下のように構築可能である。
オリゴヌクレオチドSAS-S(5'- CTAGCTAGCGGCGCGCCTGCAGGATATCATTTAAATCCCGGG -3';配列番号:17)とオリゴヌクレオチドSAS-AS(5'- CCCGGGATTTAAATGATATCCTGCAGGCGCGCCGCTAGCTAG -3';配列番号:18)を熱変性後、徐々に室温に戻したものをNheI処理し、pBluescriptIISK-(Stratagene)のXbaI−EcoRVサイトへ連結し、制限酵素サイトを改変したプラスミドDNAであるpBS-SASを作製した。カリフラワーモザイクウイルスのゲノムDNA(GenBank accession V00140)を鋳型として、プライマーT-CaMV35S-SseI-F(5'- AACCTGCAGGAAATCACCAGTCTCTCTCTA-3';配列番号:19)と、プライマーT-CaMV35S-AscI-R(5'- GGCGCGCCATCGATAAGGGGTTATTAG -3';配列番号:20)を用いたPCRによって増幅される領域を制限酵素Sse8387IとAscIによって処理した。この断片をpBS-SASのSse8387I−AscIサイトへ連結し、pBS-T35Sを作製した。pJD301(Leon et al., Plant Physiology (1991) 95: 968-972.)より、HindIIIとHincIIによって切り出されるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターとタバコモザイクウイルスのオメガ配列をpBS-T35SのHindIII−SmaIサイトに連結し発現ベクター(pBS-P35T35)を作製した。
【0020】
本実施例で使用した遺伝子の単離と、植物細胞内に導入したDNAの構築方法を以下に述べる。
【0021】
実施例3 コチョウランのCHS遺伝子、CHI遺伝子、F3H遺伝子、F3'H遺伝子、DFR遺伝子及びANS遺伝子の単離と発現ベクターの作製
(1)コチョウランのCHS遺伝子(PhCHS3)の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、コチョウラン(Dtps. Sogo Vivien×Dtps. Sogo Yenlin)開花直前の花弁より全RNAを抽出し、このRNAを鋳型として、SuperscriptII First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。PCR反応に用いたプライマーは、既知のコチョウランCHS遺伝子(PhCHS)の配列(GenBank accession No.:DQ089652)から設計したPhCHS3 F1(5'- AAGCTTGTGAGAGACGACGGA -3';配列番号:21)とPhCHS3 R1(5'- TGGCCCTAATCCTTCAAATT -3';配列番号:22)である。反応は、94℃を30秒、55℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。この反応液を鋳型に再度同条件で反応産物を増幅させた。得られた反応産物はpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし、p35PhCHS3を得た。次に、p35PhCHS3に含まれるコチョウランCHS遺伝子の全長塩基配列を決定した(PhCHS3、配列番号:23)。p35PhCHS3は、植物細胞内でコチョウランCHS遺伝子を発現するDNAである。
【0022】
(2)コチョウランのCHI遺伝子(PhCHI1)の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、コチョウラン(Dtps. Sogo Vivien×Dtps. Sogo Yenlin)開花直前の花弁より全RNAを抽出し、このRNAを鋳型として、SuperscriptII First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。CHI遺伝子は、様々な植物で報告があり(GenBank accession No.:AY700850, AY086088, DQ160231, AJ004902, AF474923, XM_470129, U03433, AB187026)、PCR反応に用いたプライマーは既知のCHI遺伝子の配列から設計したCHI-dgF1(5'- TTYCTCGSYGGBGCMGGYGWVMGVGG -3';配列番号:25)とCHI-dgR1(5'- CMGGIGAIACVSCRTKYTYICCRATVAT -3';配列番号:26)を用いた。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、68℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、プライマーCHI-dgF3(5'- TMIKYWCMGGISMITTYGARAARYT -3';配列番号:27)とプライマーCHI-dgR3(5'- TYICCRATVATIGWHTCCARIAYBGC -3';配列番号:28)を用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhCHIfrag16を得て、PhCHIfrag16に含まれる部分配列の塩基配列を決定した(PhCHI部分配列)。
PhCHI部分配列から3'下流側の配列と5'上流側の配列をRACE法にて解析した。
3'RACE法は、PhCHI部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhCHI-GSP F1(5'- ATGCTGCTGCCATTAACGGGTCA -3';配列番号:29)とGeneRacer 3'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、プライマーPhCHI-GSP F2(5'- TCCGAGAAGGTCTCCGGGAACT -3';配列番号:30)とGeneRacer 3' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhCHI3'RACE23を得て、PhCHI3'RACE23に含まれる3'下流側の配列の塩基配列を決定した(PhCHI 3'RACE配列)。
5'RACE法は、PhCHI部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhCHI-GSP R1(5'- GCATTCGTCAGCTTCTTGCTCTCT -3';配列番号:31)とGeneRacer 5'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、プライマーPhCHI-GSP R2(5'- ATCACATCAGTCTCAGCCACA -3';配列番号:32)とGeneRacer 5' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhCHI5'RACE54を得て、PhCHI5'RACE54に含まれる5'上流側の配列の塩基配列を決定した(PhCHI 5'RACE配列)。
PhCHI 3'RACE配列とPhCHI 5'RACE配列を基にコチョウランCHI遺伝子(PhCHI)の全長のクローニングを行った。上記のcDNAと、プライマーPhCHI init(5'- ATGGCAGAAACAGTGGCGACGCCCA -3';配列番号:33)とPhCHI term(5'- TCAAACGACTCCATCTTGCTC -3';配列番号:34)を用いてPCRを行った。反応は、94℃を30秒、65℃を30秒、72℃を1.5分のステップを45サイクル繰り返した。得られた反応産物はpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし、p35PhCHI1を得た。次に、p35PhCHI1に含まれる全長のコチョウランCHI遺伝子の塩基配列を決定した(PhCHI1、配列番号:35)。尚、コチョウランから見出された本配列の遺伝子は新規の遺伝子である。該塩基配列でコードされるアミノ酸配列は、相同性解析よりチャのCHI遺伝子がコードするアミノ酸配列(GenBank accession No.:DQ120521)と54%の相同性を有する。p35PhCHI1は、植物細胞内でコチョウランCHI遺伝子を発現するDNAである。
【0023】
(3)コチョウランのF3H遺伝子(PhF3H1)の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、コチョウラン(Dtps. Sogo Vivien×Dtps. Sogo Yenlin)開花直前の花弁より全RNAを抽出し、このRNAを鋳型として、SuperscriptII First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。F3H遺伝子は、様々な植物で報告があり(GenBank accession No.:DQ394303, AY221246, AJ493133, AY641730, AF184270, AB078956, AB201760, AY669324, AF036093, AB211958, AB187027, AB234905)、PCR反応に用いたプライマーは既知のF3H遺伝子の配列から設計したプライマーF3H-dgF1(5'- TIVGIGAYGARGABGARMGBCCIAA -3';配列番号:37)とプライマーF3H-dgR1(5'- ACBGCYYGRTGRTCHGCRTTCTTRAA -3';配列番号:38)を用いた。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、68℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、プライマーF3H-dgF3(5'- AARYTBRGKTTYGAYATGWCHGGIG -3';配列番号:39)とプライマーF3H-dgR3(5'- GGHWSRACVGTDATCCAIGWBTT -3';配列番号:40)を用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhF3Hfrag26を得て、PhF3Hfrag26に含まれる部分配列の塩基配列を決定した(PhF3H部分配列)。
PhF3H部分配列から3'下流側の配列と5'上流側の配列をRACE法にて解析した。
3'RACE法は、PhF3H部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhF3H-GSPF1(5'- TTCTCATACCCAATCGGGAG -3';配列番号:41)とGeneRacer 3'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応液と、プライマーPhF3H-GSPF2(5'- AATCGGGAGCCGCGATTACT -3';配列番号:42)とGeneRacer 3' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhF3H3'RACE33を得て、PhF3H3'RACE33に含まれる3'下流側の配列の塩基配列を決定した(PhF3H 3'RACE配列)。
5'RACE法は、PhF3H部分配列より設計できるオリゴヌクレオチドと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhF3H-GSPR1(5'- TCTGTGTGGCGCTTCAGGCC -3';配列番号:43)とGeneRacer 5'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応液と、PhF3H-GSPR2(5'- TGAGGTCCGGTTGCGGGCATTTT -3';配列番号:44)とGeneRacer 5' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhF3H5'RACE86を得て、PhF3H5'RACE86に含まれる5'上流側の配列の塩基配列を決定した(PhF3H 5'RACE配列)。
PhF3H 3'RACE配列とPhF3H 5'RACE配列を基にコチョウランF3H遺伝子の全長のクローニングを行った。上記のcDNAと、プライマーPhF3H init.(5'- ATGGCCCCAATACCATTCCTACCGA -3';配列番号:45)とPhF3H term.(5'- CCTTAAGCTAAAATCTCATTTAATGCCTTTGCTCC -3';配列番号:46)を用いてPCRを行った。反応は、94℃を30秒、65℃を30秒、72℃を1.5分のステップを40サイクル繰り返した。得られた反応産物はpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし、p35PhF3H1を得た。次に、p35PhF3H1に含まれる全長のコチョウランF3H遺伝子の塩基配列を決定した(PhF3H1、配列番号:9)。尚、コチョウランから見出された本配列の遺伝子は新規の遺伝子である。該塩基配列でコードされるアミノ酸配列は、相同性解析よりBromheadia finlaysonianaのF3H遺伝子がコードするアミノ酸配列(GenBank accession No.:X89199)と86%の相同性を有する。p35PhF3H1は、植物細胞内でコチョウランF3H遺伝子を発現するDNAである。
【0024】
(4)コチョウランのF3'H(PhF3'H)遺伝子の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて、コチョウラン(Dtps. Queen Beer 'Mantenkou')のツボミの花弁より全RNAを抽出した。このRNAを鋳型として、GeneRacer kit(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。F3'H遺伝子は、様々な植物で報告がある(AAG49298, ABA64468, BAE47004, BAE47005, BAE47006, BAE71221, BAE72874, CAI54278, NP_920627)。PCR反応に用いたプライマーは、前述のF3'H遺伝子の配列から設計したF3HDF3(5'- GCITAYAAYTAYCARGAYYTIGTNTT -3';配列番号:47)とF3HD-R4-2(5'- GCICKYTGIARIGTNARNCC -3';配列番号:48)を用いた。反応は、94℃を30秒、48℃を30秒、72℃を1分のステップを40サイクル繰り返した。得られた反応液と、プライマーF3HDF4(5'- GAYYTIGTNTTYGCICCNTAYGG -3';配列番号:49)とプライマーF3HD-R3-2(5'- DATICKICKICCIGCNCCRAANGG -3';配列番号:50)を用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、48℃を30秒、72℃を1分のステップを35サイクル繰り返した。得られた反応液と、プライマーF3HDF5(5'- GARTTYAARIIIATGGTIGTIGARYTNATG -3';配列番号:51)とプライマーF3HD-R1-3(5'- GGRTCICKNGCDATNGCCC -3';配列番号:52)を用いて再度Nested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、48℃を30秒、72℃を30秒のステップを35サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhF3'H-D/pCR4と命名した。PhF3'H-D/pCR4に含まれる部分配列の塩基配列を決定した(PhF3'H部分配列)。
上記PhF3'H部分配列から、3'下流側の配列と5'上流側の配列をRACE法にて解析した。
3'RACE法は、PhF3'H部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhF3dH-F7(5'- AGGGCGAAGTTAATGGTGGAGGCAGTGATA -3';配列番号:53)とGeneRacer 3'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を2分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、70℃を2分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、68℃を30秒、72℃を2分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応液と、プライマーPhF3dH-F8(5'- AAGTTAATGGTGGAGGCAGTGATATGCTGA -3';配列番号:54)、GeneRacer 3' Nested プライマーとを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、65℃を30秒、72℃を2分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhF3'H 3'RACE /pCR4と命名した。PhF3'H 3'RACE /pCR4に含まれる3'下流側の配列の塩基配列を決定した(PhF3'H3'RACE配列)。
5'RACE法は、PhF3'H部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhF3dH-R6(5'- CACTGCCTCCACCATTAACTTCGCCCTTCT -3';配列番号:55)とGeneRacer 5'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、68℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応液と、プライマーPhF3dH-R5(5'- CCTCCACCATTAACTTCGCCCTTCTCTATT -3';配列番号:56)とGeneRacer 5' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、65℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhF3'H 5'RACE/pCR4と命名した。PhF3'H 5'RACE/pCR4に含まれる5'上流側の配列の塩基配列を決定した(PhF3'H5'RACE配列)。
上記PhF3'H3'RACE配列とPhF3'H5'RACE配列を基にPhF3'H遺伝子の全長のクローニングを行った。上記のRNAと、ランダムヘキサマー、プライマーPhF3dH-F11E4(5'- AAGAAGCAAATGGCATTCTTAACCTACCTG -3';配列番号:57)とプライマーPhF3dH-R7G11(5'- TTATCACTGCCTCCACCATTAACTTCGCCC -3';配列番号:58)、そしてReady-To-Go You Prime First Strand Beads(Amersham Biosciences社)を用いて、RT-PCRを行った。反応は、98℃を10秒、68℃を30秒、72℃を1.5分のステップを35サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhF3'H/pCR4と命名した。PhF3'H/pCR4に含まれるPhF3'H遺伝子の塩基配列を決定した(PhF3'H;配列番号:1)。尚、コチョウランから見出された本配列の遺伝子は新規の遺伝子である。該塩基配列でコードされるアミノ酸配列は、相同性解析より Sorghum bicolor のF3'H遺伝子がコードするアミノ酸配列(GenBank accession No.:DQ787855)と59%の相同性を示した。PhF3'H/pCR4をEcoRIで切断してプラスミドからDNA断片を切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化した。このDNA断片を、pBS-P35T35をSwaIで切断して生じた部位に挿入して、センス方向にcDNAが挿入されたクローンを選抜し、pBS-35S-PhF3'Hを構築した。pBS-35S-PhF3'Hは、植物細胞内でコチョウランF3'H遺伝子を発現するDNAである。
【0025】
(5)コチョウランのDFR遺伝子(PhDFR)の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、コチョウラン(Dtps. Queen Beer 'Mantenkou')のツボミの花弁より全RNAを抽出し、このRNAを鋳型として、GeneRacer kit(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。DFR遺伝子は、様々な植物で報告がある(GenBank accession No.:AAB62873, AAC17843, AAD49343, AAQ83576, AAU93766, AAY32600, AAY32601, AAY32602, BAB40789, BAE79202)。PCR反応に用いたプライマーは、前述のDFR遺伝子の配列から設計したDFRD-F1(5'- TTYCAYGTIGCIACNCCNATG -3';配列番号:59)とDFRD-R1(5'- DATNGCRTCRTCRAACATYTC -3';配列番号:60)を用いた。反応は、94℃を30秒、48℃を30秒、72℃を1分のステップを40サイクル繰り返した。得られた反応液を鋳型にして、プライマーDFRD-F2(5'- ATGAAYTTYCARWSIRARGAYCC -3';配列番号:61)とプライマーDFRD-R2(5'- RCAIATRTAICKNCIRTTNGC -3';配列番号:62)を用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、48℃を30秒、72℃を1分のステップを40サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、プライマーDFRD-F3(5'- GARAAYGARGTNATHAARCC -3';配列番号:63)とプライマーDFRD-R3(5'- RTCRTCIARRTGNACRAAYTG -3';配列番号:64)を用いて再度Nested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、48℃を30秒、72℃を30秒のステップを40サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhDFR-D/pCR4を得て、PhDFR-D/pCR4に含まれる部分配列の塩基配列を決定した(PhDFR部分配列)。
PhDFR部分配列から3'下流側の配列と5'上流側の配列をRACE法にて解析した。
3'RACE法は、PhDFR部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhDFR-F1(5'- GGTCATGCAAAAGGTCGGGCAGCGTAA -3';配列番号:65)とGeneRacer 3'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、68℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、PhDFR-F2(5'- GTGATCTTCACATCTTCCGCAGGAACAGT -3';配列番号:66)とGeneRacer 3' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、65℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4/TOPO10(Invitrogen)にクローニングし、PhDFR 3'RACE/pCR4を得て、PhDFR 3'RACE/pCR4に含まれる3'下流側の配列の塩基配列を決定した(PhDFR3'RACE配列)。
5'RACE法は、PhDFR部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhDFR-R4(5'- ATGATTCATTAAAAATCCGAAAAAAAGACCACTACAA -3';配列番号:67)とGeneRacer 5'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、70℃を1分のステップを5サイクル繰り返し、続いて94℃を30秒、68℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、プライマーPhDFR-R3(5'- AACCATGCATAATAAAGCAGATGTGTAAAT -3';配列番号:68)とGeneRacer 5' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を30秒、65℃を30秒、72℃を1分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhDFR 5'RACE/pCR4を得、PhDFR 5'RACE/pCR4に含まれる5'上流側の配列の塩基配列を決定した(PhDFR 5'RACE配列)。
PhDFR 3'RACE配列とPhDFR 5'RACE配列を基にコチョウランDFR遺伝子の全長のクローニングを行った。上記のRNAと、プライマーPhDFR-F8A5(5'- AAAAAATGGAGGATGTGAGGAAGGGTCCTGTT -3';配列番号:69)とPhDFR-R5(5'- ACATGATTCATTAAAAATCCGAAAAAAAGACCA -3';配列番号:70)、そしてReady-To-Go You Prime First Strand Beads(Amersham Biosciences社)を用いて、RT-PCRを行った。反応は、98℃を30秒、68℃を30秒、72℃を1.5分のステップを35サイクル繰り返した。得られた反応産物はpBS-P35T35にクローニングし、p35PhDFRを得た。次に、p35PhDFRに含まれる全長のDFR遺伝子の塩基配列を決定した(PhDFR、配列番号:15)。尚、コチョウランから見出された本配列の遺伝子は新規の遺伝子である。該塩基配列でコードされるアミノ酸配列は、相同性解析よりBromheadia finlaysonianaのDFR遺伝子がコードするアミノ酸配列(GenBank accession No.:AF007096)と86%の相同性を有する。p35PhDFRは、植物細胞内でコチョウランDFR遺伝子を発現するDNAである。
【0026】
(6)コチョウランのANS遺伝子(PhANS1)の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、コチョウラン(Dtps.Sogo Vivien×Dtps.Sogo Yenlin)開花直前の花弁より全RNAを抽出し、このRNAを鋳型として、SuperscriptII First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。PCR反応に用いたプライマーは既知のANS遺伝子の配列から設計したANS-dgF2(5'- TICARGGBTAYGGIAGYARRYTIGCIRMYA -3';配列番号:71)とANS-dgR2(5'- GGYTCRCARAAIAYIRCCCAIGADA -3';配列番号:72)を用いた。反応は、94℃を30秒、60℃を30秒、72℃を1.5分のステップを40サイクル繰り返した。得られた反応液を鋳型に再度同じプライマーを用いて、94℃を30秒、56℃を30秒、72℃を1分のステップ30サイクルの反応を行った。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhANSfrag10を得て、PhANSfrag10に含まれる部分配列の塩基配列を決定した(PhANS部分配列)。
PhANS部分配列から3'下流側の配列と5'上流側の配列をRACE法にて解析した。
3'RACE法は、PhANS部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhANS3RACEGSP1(5'- GCCCACACCGACGTCAGCTCCCTCTCCT -3';配列番号:73)とGeneRacer 3'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1.5分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1.5分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、70℃を30秒、72℃を1.5分のステップを25サイクル繰り返した。更に、得られた反応液を鋳型にして、プライマーPhANS3RACEGSP2(5'- CGTCGGGGATGCGCTCGAGATCCTCAGC -3';配列番号:74)とGeneRacer 3' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を10秒、58℃を10秒、72℃を1分のステップを35サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhANS3'RACE37を得て、PhANS3'RACE37に含まれる3'下流側の配列の塩基配列を決定した(PhANS 3'RACE配列)。
5'RACE法は、PhANS部分配列より設計できるプライマーと、上記のRNA、そしてGeneRacer kit(Invitrogen)を用いて行った。PCR反応に用いたプライマーは、PhANS5RACEGSP1(5'- AGTCCGCGGGTTCAGTCGGCCAGATGGT -3';配列番号:75)とGeneRacer 5'プライマーである。反応は、94℃を30秒、72℃を1.5分のステップを5サイクル、94℃を30秒、70℃を1.5分のステップを5サイクル行った後、94℃を30秒、70℃を30秒、72℃を1.5分のステップを25サイクル繰り返した。得られた反応液と、プライマーPhANS5RACEGSP2(5'- CCGTCTTCTCCGGCGGGTAGACGAGGTG -3';配列番号:76)とGeneRacer 5' Nested プライマーを用いてNested PCRを行った。反応は、94℃を10秒、58℃を10秒、72℃を1分のステップを35サイクル繰り返した。得られた反応産物はpCR4-TOPO(Invitrogen)にクローニングし、PhANS5'RACE15を得て、PhANS5'RACE15に含まれる5'上流側の配列の塩基配列を決定した(PhANS 5'RACE配列)。
PhANS 3'RACE配列とPhANS 5'RACE配列を基にコチョウランANS遺伝子の全長のクローニングを行った。上記のcDNAと、プライマーPhANS init(5'- ATGGCCACCAAAGCAATCCCACC -3';配列番号:77)とPhANS term(5'- TCAATCCACAGGCGCCTTCT -3';配列番号:78)を用いてPCRを行った。反応は、94℃を30秒、69℃を30秒、72℃を1.5分のステップを35サイクル繰り返した。得られた反応産物はpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし、p35PhANS1を得た。次に、p35PhANS1に含まれる全長のANS遺伝子(PhANS1)の塩基配列を決定した(PhANS1、配列番号:11)。尚、コチョウランから見出された本配列の遺伝子は新規の遺伝子である。該塩基配列でコードされるアミノ酸配列は、相同性解析よりアンスリウムのANS遺伝子がコードするアミノ酸配列(GenBank accession No.:EF079869)と58%の相同性を有する。p35PhANS1は、植物細胞内でコチョウランANS遺伝子を発現するDNAである。
【0027】
実施例4 ガーベラのF3'H遺伝子、DFR遺伝子及びANS遺伝子の単離と発現ベクターの作製
(1)ガーベラのF3'H遺伝子(GerF3'H)の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、市販のガーベラハイブリッドのツボミの花弁より全RNAを抽出し、このRNAを鋳型として、SuperscriptII First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。PCR反応に用いたプライマーは、既知のガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)の配列(GenBank accession No.:Z17221)から設計したGerF3H-F(5'- ATGACGCCTTTAACGCTCCT -3';配列番号:79)とGerF3H-R(5'- CTAGACCTTAGTCGTCTCATATACATG -3';配列番号:80)である。反応は、98℃を10秒、55℃を10秒、72℃を1分30秒のステップを45サイクル繰り返した。得られた反応産物をpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし(p35GerF3'H)、ガーベラF3'H遺伝子を得た(配列番号:3)。p35GerF3'Hは、植物細胞内でガーベラF3'H遺伝子を発現するDNAである。
【0028】
(2)ガーベラのDFR遺伝子(GerDFR)の単離
上記実施例4(1)のcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。PCR反応に用いたプライマーは、既知のガーベラDFR遺伝子(GerDFR)の配列(GenBank accession No.:Z17221)から設計したGerDFR-F(5'- ATGGAAGAGGATTCTCCGGC -3';配列番号:81)とGerDFR-R(5'- CTATTGGCCTTCTTTTGAACAACAAA -3';配列番号:82)である。反応は、98℃を10秒、55℃を10秒、72℃を1分30秒のステップを45サイクル繰り返した。得られた反応産物をpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし(p35GerDFR)、ガーベラDFR遺伝子を得た(配列番号:7)。p35GerDFRは、植物細胞内でガーベラDFR遺伝子を発現するDNAである。
【0029】
(3)ガーベラANS遺伝子(GerANS)の単離
上記実施例4(1)のcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。PCR反応に用いたプライマーは、既知のガーベラANS遺伝子(GerANS)の配列(GenBank accession No.:AY997842)から設計したGerANS-F(5'- ATGGTGATTCAAGCAACCACA -3';配列番号:83)とGerANS-R(5'- CTAGTTTTGCATCACTTCGTCTTTAT -3';配列番号:84)である。反応は、94℃を30秒、56℃を30秒、72℃を1分10秒のステップを45サイクル繰り返した。得られた反応産物をpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし(p35GerANS)、ガーベラANS遺伝子を得た(配列番号:13)。p35GerANSは、植物細胞内でガーベラANS遺伝子を発現するDNAである。
【0030】
実施例5 トレニアのF3'H遺伝子及びDFR遺伝子の単離と発現ベクターの作製
(1)トレニアのF3'H遺伝子(TorF3'H)の単離
RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、市販のトレニア(Torenia fournieri)のツボミの花弁より全RNAを抽出し、このSuperscriptII First-Strand Synthesis System(Invitrogen)を用いてcDNAを調製した。次にこのcDNAを鋳型としてRT-PCRを行った。PCR反応に用いたプライマーは、既知のトレニアF3'H遺伝子(TorF3'H)の配列(GenBank accession AB057672)から設計したTorF3H1-F(5'- ATGAGTCCCTTAGCCTTGATGAT -3';配列番号:85)とTorF3H1-R(5'- TTAATAGACATGAGTGGCCAACC -3';配列番号:86)である。反応は、94℃を30秒、55℃を30秒、72℃を1分10秒のステップを45サイクル繰り返した。得られた反応産物をpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし(p35TorF3'H)、トレニアのF3'H遺伝子を得た(配列番号:87)。p35TorF3'Hは、植物細胞内でトレニアF3'H遺伝子を発現するDNAである。
【0031】
(2)トレニアのDFR遺伝子(TorDFR)の単離
上記実施例5(1)のcDNAを鋳型として、RT-PCRを行った。PCR反応に用いたプライマーは、既知のトレニアDFR遺伝子(TorDFR)の配列(GenBank accession AB012924)から設計したオリゴヌクレオチドTorDFR-F(5'- ATGAGCATGGAAGTAGTAGTACCA -3';配列番号:89)とTorDFR-R(5'- CTATTCTATCTTATGTTCTCCATGG -3';配列番号:90)である。反応は、94℃を30秒、56℃を30秒、72℃を1分10秒のステップを45サイクル繰り返した。得られた反応産物をpBS-P35T35のSwaIサイトにクローニングし(p35TorDFR)、トレニアのDFR遺伝子を得た(配列番号:5)。p35TorDFRは、植物細胞内でトレニアDFR遺伝子を発現するDNAである。
【0032】
実施例6 花弁細胞の着色の観察
花弁及び花弁細胞の着色は、実体顕微鏡SZX12(オリンパス)及び肉眼観察により行なった。花弁の着色程度の基準は、肉眼で確認可能なものを"III"、実体顕微鏡の倍率32倍以下にて確認可能なものを"II"、倍率32倍以上でないと確認できないものを"I"、着色が確認できないものを"−"とした。
【0033】
実施例7 白色コチョウランの花弁を赤色に改変するために必要な遺伝子の特定
実施例1の方法に従い白色コチョウラン(Phal. amabilis)の花弁に下記四種の遺伝子セットを導入した後、実施例6の方法により着色の程度を観察して、花色改変に必要な遺伝子を特定した。
(1)ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラDFR遺伝子(GerDFR)+ガーベラANS遺伝子(GerANS)
(2)コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラDFR遺伝子(GerDFR)+ガーベラANS遺伝子(GerANS)
(3)コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラDFR遺伝子(GerDFR)+ガーベラANS遺伝子(GerANS)
(4)コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラDFR遺伝子(GerDFR)+ガーベラANS遺伝子(GerANS)
上記遺伝子セットをPhal. amabilisの花弁に遺伝子導入し、それぞれの花弁細胞の着色を観察した結果、(1)以外の群で花弁に赤色の細胞が出現した(図3)。この結果より、花弁を赤色に改変するためにはF3'H遺伝子+DFR遺伝子+ANS遺伝子の導入では不十分であり、少なくともF3H遺伝子を加えた4種の遺伝子の導入が花色の改変には必要であることが分かった。
【0034】
最良のF3'H遺伝子、DFR遺伝子及びANS遺伝子の検討
白色コチョウランの赤色への改変に関して、最良のF3'H遺伝子、DFR遺伝子及びANS遺伝子を見出すべく植物由来の異なる遺伝子を導入し、比較検討した。
【0035】
実施例8 白色コチョウランの花弁におけるF3'H遺伝子の比較
白色のコチョウラン(Phal. amabilis)の花弁にF3'H遺伝子のみ異なる下記三種の遺伝子セットを導入し、着色の程度を観察した。
(1)コチョウランF3'H遺伝子(PhF3'H)+コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+トレニアDFR遺伝子(TorDFR) +コチョウランANS遺伝子(PhANS1)
(2)ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+トレニアDFR遺伝子(TorDFR) +コチョウランANS遺伝子(PhANS1)
(3)トレニアF3'H遺伝子(TorF3'H)+コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+トレニアDFR遺伝子(TorDFR) +コチョウランANS遺伝子(PhANS1)
その結果、全ての群の花弁で赤色の細胞が出現した。それぞれ10枚の花弁の着色の濃さを比較した結果を図4に示す。赤色の着色程度はコチョウラン(PhF3'H)、ガーベラ(GerF3'H)、トレニア(TorF3'H)の順で、濃い赤の花色を作出するには、コチョウランのF3'H遺伝子(PhF3'H)が適していると考えられる。
【0036】
実施例9 白色コチョウランの花弁におけるDFR遺伝子の比較
白色のコチョウラン(Phal. amabilis)の花弁にDFR遺伝子のみ異なる下記三種の遺伝子セットを導入し、着色の程度を観察した。
(1)コチョウランDFR遺伝子(PhDFR)+コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラANS遺伝子(GerANS)
(2)ガーベラDFR遺伝子(GerDFR)+コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラANS遺伝子(GerANS)
(3)トレニアDFR遺伝子(TorDFR) +コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラANS遺伝子(GerANS)
その結果、全ての群で赤色の細胞が出現した。それぞれ36枚の花弁の着色の濃さを比較した結果を図5に示す。赤色の着色程度は、トレニア(TorDFR)、ガーベラ(GerDFR)、コチョウラン(PhDFR)の順で、濃い赤の花色を実現するには、コチョウランの内在DFR遺伝子(PhDFR)よりも、好ましくはガーベラのDFR遺伝子(GerDFR)が、より好ましくはトレニアのDFR遺伝子(TorDFR)が適していると考えられる。
【0037】
実施例10 白色コチョウランの花弁におけるANS遺伝子の比較
白色のコチョウラン(Phal. amabilis)の花弁にANS遺伝子のみ異なる下記二種の遺伝子セットを導入し、着色の程度を観察した。
(1)コチョウランANS遺伝子(PhANS1)+コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラDFR遺伝子(GerDFR)
(2)ガーベラANS遺伝子(GerANS)+コチョウランCHS遺伝子(PhCHS3)+コチョウランCHI遺伝子(PhCHI1)+コチョウランF3H遺伝子(PhF3H1)+ガーベラF3'H遺伝子(GerF3'H)+ガーベラDFR遺伝子(GerDFR)
その結果、全ての試料で同程度の赤色の細胞が出現した。それぞれ16枚の花弁について出現した赤色の細胞の着色の濃さを比較した結果を図6に示す。
【0038】
実施例11 Phal. amabilis以外の白色コチョウランへの適用
市販の純白色の大型コチョウラン(Phal. White Lady)の長さ1.7cmのつぼみの花弁に、コチョウラン由来のCHS(PhCHS3)、CHI(PhCHI1)、F3H(PhF3H1)の各遺伝子と、そしてガーベラ由来のF3'H遺伝子(GerF3'H)、DFR遺伝子(GerDFR)並びにANS遺伝子(GerANS)を共導入したところ、花弁に赤色の細胞が多数出現した。
【0039】
実施例12 アグロバクテリウム法によるコチョウラン形質転換用DNAの作製
遺伝子銃法だけでなく、アグロバクテリウム法を用いてもコチョウランの形質転換は可能である(Belarmino and Mii, Plant Cell Reports (2000) 19:435-442.、Mishiba et al., Plant Cell Reports (2005) 24: 297-303.)。これらの方法に従って遺伝子組換え体を得るために形質転換用DNAの構築を行った。それぞれのプラスミドの地図と作製手順を図7と図8に示す。
(1)pBI-SAS1の構築
国際出願番号PCT/JP02/12268に記載されるpBI-RHLをNotIとHindIIIで切断した部位へ、実施例2のpBS-SASをNotIとHindIIIで切断して生じる短い断片をサブクローニングし、pBI-SAS1を構築した。pBI-SAS1は、アグロバクテリウムを用いて植物の形質転換を行い、植物にハイグロマイシン耐性を付与できるプラスミドである。
(2)pBS-35S-FTの構築
コチョウランは花が咲くまでに1年以上の期間を要するため、花芽誘導遺伝子FT (Kobayashi et al., Science (1999) 286: 1960-1962.)をコチョウランで発現させるDNAを構築した。
FTcDNAはシロイヌナズナ全植物体から調整した全RNAからRT-PCRにより増幅して調製した。PCRにはAtFT 2nd-F(5'- GAAACCACCTGTTTGTTCAAGA -3';配列番号:91)とAtFT 2nd-R(5'- TCAATTGGTTATAAAGGAAGAAGC -3';配列番号:92)をプライマーに用い、分離できたFT cDNAをpBS-P35T35をSwaIで切断して生じた部位に挿入して、センス方向にcDNAが挿入されたクローンを選抜し、pBS-P35S-FTを構築した。pBS-35S-FTはCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35SターミネーターでFTの転写が制御されるプラスミドである。
【0040】
(3)pBS-35S-mPhF3'Hの構築
PhF3'H cDNA内にある2箇所のSphI切断部位にアミノ酸置換を伴わない塩基置換を導入して、SphIで切断されないcDNAを作成し、pBS-P35T35に挿入した。塩基置換にはPhF3dH-367F (5'- CGGTGCGCGGTGGCGTATGCTGAGGCGT -3';配列番号:93)とPhF3dH-394R (5'- ACGCCTCAGCATACGCCACCGCGCACCG -3';配列番号:94)をプライマーに用い、pBS-35S-PhF3'Hを鋳型としてPCRを行った。得られたPCR産物はKlenow断片で処理して環状化した。この環状化DNAを鋳型とし、PhF3dH-F11E4 (配列番号:57)とPhF3dH-R7G12 (5'- CACCCTTTGCATAAATTTATGACATCAAGC -3';配列番号:95)をプライマーとして用いてPCRを行なった。得られたPCR産物をpBS-P35T35をSwaIで切断して生じた部位に挿入して、センス方向にcDNAが挿入されたクローンを選抜し、pBS-35S-mPhF3'Hを構築した。
(4)pBS-35S-mPhCHS3の構築
PhCHS3 cDNA内にあるSphI切断部位にアミノ酸置換を伴わない塩基置換を導入して、SphIで切断されないcDNAを作成した。塩基置換はPhCHS3-1038F (5'- GTAACATGTCGAGCGCTTGCGTTCTTTTCATACTCG -3';配列番号:96)とPhCHS3-1073R (5'- CGAGTATGAAAAGAACGCAAGCGCTCGACATGTTAC -3';配列番号:97)をプライマーとして用い、p35PhCHS3を鋳型にしてPyrobest(タカラバイオ)を用いてDNA合成を行なった。その後、DpnI処理によって鋳型プラスミドを消化し、pBS-35S-mPhCHS3を構築した。
(5)pBS-35S-UP1の構築
p35PhCHI1をAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、p35PhF3H1をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-UP1を構築した。pBS-35S-UP1はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがPhCHI1、PhF3H1の順に連結されたプラスミドである。
【0041】
(6)pBS-35S-Cya1の構築
p35GerANSをAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、p35GerDFRをXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Cya1を構築した。pBS-35S-Cya1はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがGerANS、GerDFRの順に連結されたプラスミドである。
(7)pBS-35S-Cya2の構築
p35GerF3'HをAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBS-35S-Cya1をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Cya2を構築した。pBS-35S-Cya2はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがGerF3'H 、GerANS、GerDFRの順に連結されたプラスミドである。
(8)pBS-35S-Cya3の構築
pBS-35S-Cya2をAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBS-35S-UP1をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Cya3を構築した。pBS-35S-Cya3はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがGerF3'H 、GerANS、GerDFR、PhCHI、PhF3Hの順に連結されたプラスミドである。
(9)pBS-35S-Cya4の構築
pBS-35S-Cya3をAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBS-35S-mPhCHS3をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Cya4を構築した。pBS-35S-Cya4はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがGerF3'H 、GerANS、GerDFR、PhCHI、PhF3H、mPhCHS3の順に連結されたプラスミドである。
(10)pBS-35S-Cya10の構築
pBS-35S-mPhF3'HをAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBS-35S-FTをXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Cya10を構築した。pBS-35S-Cya10はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがmPhF3'H、FTの順に連結されたプラスミドである。
【0042】
(11)pBS-35S-Del16の構築
p35TorDFRをAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、p35PhANS1をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Del16を構築した。pBS-35S-Del16はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがTorDFR、PhANS1の順に連結されたプラスミドである。
(12)pBS-35S-UP4の構築
pBS-35S-Del16をAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBS-35S-UP1をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-UP4を構築した。pBS-35S-UP4はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがTorDFR、PhANS1 、PhCHI1、PhF3H1の順に連結されたプラスミドである。
(13)pBS-35S-Cya11の構築
pBS-35S-mPhF3'HをAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBS-35S-UP4をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Cya11を構築した。pBS-35S-Cya11はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがmPhF3'H、TorDER、PhANS 、PhCHI、PhF3Hの順に連結されたプラスミドである
(14)pBS-35S-Cya12の構築
pBS-35S-Cya10をAscIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBS-35S-UP4をXbaIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにSphIで切断して生じた部位に挿入してpBS-35S-Cya12を構築した。pBS-35S-Cya12はCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがmPhF3'H、FT、TorDER、PhANS 、PhCHI、PhF3Hの順に連結されたプラスミドである。
(15)pBIH-35S-Cya3の構築
pBS-35S-Cya3をSphIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにAscIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBI-SAS1をAscIとSwaIで切断して生じた部位に挿入してpBIH-35S-Cya3を構築した。pBIH-35S-Cya3は選抜マーカーであるHPTとCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがGerF3'H 、GerANS、GerDFR、PhCHI、PhF3Hの順に連結されたT-DNA領域を持つバイナリーベクターである。
【0043】
(16)pBIH-35S-Cya4の構築
pBS-35S-Cya4をSphIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにAscIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBI-SAS1をAscIとSwaIで切断して生じた部位に挿入してpBIH-35S-Cya4を構築した。pBIH-35S-Cya4は選抜マーカーであるHPTとCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがGerF3'H 、GerANS、GerDFR、PhCHI、PhF3H、mPhCHS3の順に連結されたT-DNA領域を持つバイナリーベクターである。
(17)pBIH-35S-Cya11の構築
pBS-35S-Cya11をSphIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにAscIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBI-SAS1をAscIとSwaIで切断して生じた部位に挿入してpBIH-35S-Cya11を構築した。pBIH-35S-Cya11は選抜マーカーであるHPTとCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがmPhF3'H、TorDER、PhANS 、PhCHI、PhF3Hの順に連結されたT-DNA領域を持つバイナリーベクターである。
(18)pBIH-35S-Cya12の構築
pBS-35S-Cya12をSphIで切断後、Klenow断片で突出末端を平滑化し、さらにAscIで切断してプラスミドからDNA断片を切り出した。このDNA断片を、pBI-SAS1をAscIとSwaIで切断して生じた部位に挿入してpBIH-35S-Cya12を構築した。pBIH-35S-Cya12は選抜マーカーであるHPTとCaMV 35Sプロモーター、CaMV 35Sターミネーターで転写が制御される各cDNAがmPhF3'H、FT、TorDER、PhANS 、PhCHI、PhF3Hの順に連結されたT-DNA領域を持つバイナリーベクターである。
【0044】
実施例13 形質転換コチョウランの作出
バイナリベクターに構築された実施例12のDNA(pBIH-35S-Cya3、pBIH-35S-Cya4、pBIH-35S-Cya11、そしてpBIH-35S-Cya12)とアグロバクテリウムEHA101株を用いて作製された形質転換コチョウランは、50mg/mlのハイグロマイシンで選抜される。その結果、実施例12で示した遺伝子が染色体上に組み込まれたコチョウランを得ることができる。
得られた形質転換コチョウランからは、花茎の腋芽など植物体の一部を利用してPLBを誘導し、クローン増殖が可能である。得られた形質転換コチョウランを交配親に用いて、交配育種を行い、導入遺伝子を有する後代を得ることができる。

以上のようにF3H、F3'H、DFR、ANSの各遺伝子を共導入した白いコチョウランから、赤色の花弁を持つ新しい品種を作出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】アントシアニンの合成経路。
【図2】花弁への遺伝子導入に用いるプラスミドベクター。P-CaMV35Sは、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを示す。Ωは、タバコモザイクウイルスのオメガ配列を示す。Tは、カリフラワーモザイクウイルス由来の転写終結配列を示す。
【図3】白色コチョウラン花弁の赤色改変のために必要な遺伝子の特定。
【図4】植物由来の異なるF3'H遺伝子のPhal. amabilisの花弁への遺伝子導入。
【図5】植物由来の異なるDFR遺伝子のPhal. amabilisの花弁への遺伝子導入。
【図6】植物由来の異なるANS遺伝子のPhal. amabilisの花弁への遺伝子導入。
【図7】コチョウランの形質転換を行うDNAの構築手順の概略。
【図8】同上。
【配列表フリーテキスト】
【0046】
SEQ ID NO: 1, Nucleotide sequence encoding Doritaenopsis hybrid cultivar flavonoid 3'-hydroxylase
SEQ ID NO: 2, Amino acid sequence of Doritaenopsis hybrid cultivar flavonoid 3'-hydroxylase
SEQ ID NO: 3, Nucleotide sequence encoding Gerbera hybrid cultivar flavonoid 3'-hydroxylase
SEQ ID NO: 4, Amino acid sequence of Gerbera hybrid cultivar flavonoid 3'-hydroxylase
SEQ ID NO: 5, Nucleotide sequence encoding Torenia fournieri dihydroflavonol 4-reductase
SEQ ID NO: 6, Amino acid sequence of Torenia fournieri dihydroflavonol 4-reductase
SEQ ID NO: 7, Nucleotide sequence encoding Gerbera hybrid cultivar dihydroflavonol 4-reductase
SEQ ID NO: 8, Amino acid sequence of Gerbera hybrid cultivar dihydroflavonol 4-reductase
SEQ ID NO: 9, Nucleotide sequence encoding Doritaenopsis hybrid cultivar flavanone 3-hydroxylase
SEQ ID NO: 10, Amino acid sequence of Doritaenopsis hybrid cultivar flavanone 3-hydroxylase
SEQ ID NO: 11, Nucleotide sequence encoding Doritaenopsis hybrid cultivar anthocyanidin synthase
SEQ ID NO: 12, Amino acid sequence of Doritaenopsis hybrid cultivar anthocyanidin synthase
SEQ ID NO: 13, Nucleotide sequence encoding Gerbera hybrid cultivar anthocyanidin synthase
SEQ ID NO: 14, Amino acid sequence of Gerbera hybrid cultivar anthocyanidin synthase
SEQ ID NO: 15, Nucleotide sequence encoding Doritaenopsis hybrid cultivar dihydroflavonol 4-reductase
SEQ ID NO: 16, Amino acid sequence of Doritaenopsis hybrid cultivar dihydroflavonol 4-reductase
SEQ ID NO: 17, Oligonucleotide SAS-S
SEQ ID NO: 18, Oligonucleotide SAS-AS
SEQ ID NO: 19, Primer T-CaMV35S-SseI-F
SEQ ID NO: 20, Primer T-CaMV35S-AscI-R
SEQ ID NO: 21, Primer PhCHS3 F1
SEQ ID NO: 22, Primer PhCHS3 R1
SEQ ID NO: 23, Nucleotide sequence encoding Doritaenopsis hybrid cultivar chalcone synthase
SEQ ID NO: 24, Amino acid sequence of Doritaenopsis hybrid cultivar chalcone synthase
SEQ ID NO: 25, Primer CHI-dgF1
SEQ ID NO: 26, Primer CHI-dgR1
SEQ ID NO: 27, Primer CHI-dgF3
SEQ ID NO: 28, Primer CHI-dgR3
SEQ ID NO: 29, Primer PhCHI-GSP F1
SEQ ID NO: 30, Primer PhCHI-GSP F2
SEQ ID NO: 31, Primer PhCHI-GSP R1
SEQ ID NO: 32, Primer PhCHI-GSP R2
SEQ ID NO: 33, Primer PhCHI init
SEQ ID NO: 34, Primer PhCHI term
SEQ ID NO: 35, Nucleotide sequence encoding Doritaenopsis hybrid cultivar chalcone isomerase
SEQ ID NO: 36, Amino acid sequence of Doritaenopsis hybrid cultivar chalcone isomerase
SEQ ID NO: 37, Primer F3H-dgF1
SEQ ID NO: 38, Primer F3H-dgR1
SEQ ID NO: 39, Primer F3H-dgF3
SEQ ID NO: 40, Primer F3H-dgR3
SEQ ID NO: 41, Primer PhF3H-GSPF1
SEQ ID NO: 42, Primer PhF3H-GSPF2
SEQ ID NO: 43, Primer PhF3H-GSPR1
SEQ ID NO: 44, Primer PhF3H-GSPR2
SEQ ID NO: 45, Primer PhF3H init.
SEQ ID NO: 46, Primer PhF3H term.
SEQ ID NO: 47, Primer F3HDF3
SEQ ID NO: 48, Primer F3HD-R4-2
SEQ ID NO: 49, Primer F3HDF4
SEQ ID NO: 50, Primer F3HD-R3-2
SEQ ID NO: 51, Primer F3HDF5
SEQ ID NO: 52, Primer F3HD-R1-3
SEQ ID NO: 53, Primer PhF3dH-F7
SEQ ID NO: 54, Primer PhF3dH-F8
SEQ ID NO: 55, Primer PhF3dH-R6
SEQ ID NO: 56, Primer PhF3dH-R5
SEQ ID NO: 57, Primer PhF3dH-F11E4
SEQ ID NO: 58, Primer PhF3dH-R7G11
SEQ ID NO: 59, Primer DFRD-F1
SEQ ID NO: 60, Primer DFRD-R1
SEQ ID NO: 61, Primer DFRD-F2
SEQ ID NO: 62, Primer DFRD-R2
SEQ ID NO: 63, Primer DFRD-F3
SEQ ID NO: 64, Primer DFRD-R3
SEQ ID NO: 65, Primer PhDFR-F1
SEQ ID NO: 66, Primer PhDFR-F2
SEQ ID NO: 67, Primer PhDFR-R4
SEQ ID NO: 68, Primer PhDFR-R3
SEQ ID NO: 69, Primer PhDFR-F8A5
SEQ ID NO: 70, Primer PhDFR-R5
SEQ ID NO: 71, Primer ANS-dgF2
SEQ ID NO: 72, Primer ANS-dgR2
SEQ ID NO: 73, Primer PhANS3RACEGSP1
SEQ ID NO: 74, Primer PhANS3RACEGSP2
SEQ ID NO: 75, Primer PhANS5RACEGSP1
SEQ ID NO: 76, Primer PhANS5RACEGSP2
SEQ ID NO: 77, Primer PhANS init
SEQ ID NO: 78, Primer PhANS term
SEQ ID NO: 79, Primer GerF3H-F
SEQ ID NO: 80, Primer GerF3H-R
SEQ ID NO: 81, Primer GerDFR-F
SEQ ID NO: 82, Primer GerDFR-R
SEQ ID NO: 83, Primer GerANS-F
SEQ ID NO: 84, Primer GerANS-R
SEQ ID NO: 85, Primer TorF3H1-F
SEQ ID NO: 86, Primer TorF3H1-R
SEQ ID NO: 87, Nucleotide sequence encoding Torenia fournieri flavonoid 3'-hydroxylase
SEQ ID NO: 88, Amino acid sequence of Torenia fournieri flavonoid 3'-hydroxylase
SEQ ID NO: 89, Primer TorDFR-F
SEQ ID NO: 90, Primer TorDFR-R
SEQ ID NO: 91, Primer AtFT 2nd-F
SEQ ID NO: 92, Primer AtFT 2nd-R
SEQ ID NO: 93, Primer PhF3dH-367F
SEQ ID NO: 94, Primer PhF3dH-394R
SEQ ID NO: 95, Primer PhF3dH-R7G12
SEQ ID NO: 96, Primer PhCHS3-1038F
SEQ ID NO: 97, Primer PhCHS3-1073R

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラバノン3−水酸化酵素をコードする遺伝子、フラボノイド3'−水酸化酵素をコードする遺伝子、ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子並びにアントシアニジン合成酵素をコードする遺伝子をコチョウランに導入し、発現させることを特徴とする花色が改変されたコチョウランの製造方法。
【請求項2】
フラボノイド3'−水酸化酵素をコードする遺伝子がコチョウラン又はガーベラの遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フラボノイド3'−水酸化酵素をコードする遺伝子が配列番号1又は3の塩基配列で表される遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子がガーベラ又はトレニアの遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子が配列番号5又は7の塩基配列で表される遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
フラボノイド3'−水酸化酵素をコードする遺伝子がコチョウラン又はガーベラの遺伝子であり、ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子がガーベラ又はトレニアの遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フラボノイド3'−水酸化酵素をコードする遺伝子が配列番号1又は3の塩基配列で表される遺伝子であり、ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子が配列番号5又は7の塩基配列で表される遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フラバノン3−水酸化酵素をコードする遺伝子が配列番号9の塩基配列で表される遺伝子であり、フラボノイド3'−水酸化酵素をコードする遺伝子が配列番号1又は3の塩基配列で表される遺伝子であり、ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子が配列番号5又は7の塩基配列で表される遺伝子であり、アントシアニン合成酵素をコードする遺伝子が配列番号11又は13の塩基配列で表される遺伝子である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1の方法により得られる花色改変コチョウラン若しくは、改変された花色と同じ性質を有するその子孫またはその組織。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−289471(P2008−289471A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96714(P2008−96714)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】