説明

芳香付与装置

【課題】 小型かつ簡便で、必要な芳香剤の供給が簡単に行え、例えば水洗トイレに流すなどの、水を使用する際にのみ、消臭剤を供給し得る装置を提供する。
【解決手段】 入水口8と出水口9を有する金属製の外装体1に、芳香剤を吸着させたシリカゲル粒15を充填したカートリッジ5を挿入して、用水の配管に設置する。カートリッジ5の内部を用水が通過する際に、香剤を用水の中に溶出させ、消臭効果を得る。この装置によれば、水が流されたときのみ、芳香剤が溶出するので、芳香剤を効率的に使用することが可能で、外装体1をネジ止めなどで構成することで、芳香剤が消費されつくした際のカートリッジの交換が簡単になる。また、シリカゲルは芳香剤の吸着を繰り返し行えるので、低コストで運用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香を発することで防臭に効果を奏し、小型で、例えば水洗トイレなどの用水の配管に挿入可能な、装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレの防臭は、換気扇などで臭気を外部に排出する方法の他に、防臭剤を用いることで、消臭を行う方法がある。後者の方法は、固形または液体の防臭剤をトイレの適当な位置に設置し、防臭に効果がある成分を昇華させたり、蒸発させたりするものである。
【0003】
そして、防臭剤には、悪臭の原因となる成分と化学的な反応を起こす薬剤や、芳香により悪臭を抑え込む薬剤があり、前者は、悪臭の原因となる成分が明らかな場合に効果的であるが、1種類の消臭剤で複数の悪臭成分に対応しきれないという欠点がある。後者は悪臭成分の種類が複数でも効果を奏するが、悪臭成分を根本的に消失できないので、効果が限定的なのが課題である。
【0004】
一方で前記のように、防臭剤を設置する他に、トイレに水を流す際のみに、防臭成分を放出するように構成した防臭装置がある。例えば特許文献1には、水洗トイレの水タンクを密閉構造として、水を流した直後に水タンクの内部が負圧になるようにして、臭気を吸引するとともに、水タンク内に防臭剤を設置して、悪臭成分を消失させ得ることを特徴とする水洗トイレ臭気除去装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、この装置においては、水タンクを密閉させることから、パッキンなどが必要となり、水タンクの構造が複雑になり、製造コストが上昇する可能性がある。また、防臭剤の供給に手数を要するという課題がある。
【0006】
また、特許文献2には浴室などで用いられるシャワーのシャワーヘッドに、水質改善を図ることを目的に、塩素除去フィルターと、芳香剤を挿入する装置が開示されている。しかしながら、この装置の場合は、シャワーヘッドのという、大きさが限られる部品に挿入することから、構造の複雑化や、塩素除去フィルターの交換及び芳香剤の供給の頻度が増加するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】 特開2001−279773号公報
【特許文献2】 特開1996−052456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、小型かつ簡便で、必要な芳香剤の供給が簡単に行え、例えば水洗トイレに流すなどの、水を使用する際にのみ、消臭剤を供給し得る装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の課題解決のため、多孔質材料に消臭剤を吸着させ、適当なカートリッジに充填することで、消臭剤の交換が簡単で、消臭効果が消失した多孔質材料に、再度消臭剤を吸着させれば、再生利用が可能になることに着目し、当該カートリッジの構造と配管への挿入方法を検討した結果なされたものである。
【0010】
即ち、本発明は、使用状態における下側に設けられた入水口と上側に設けられた出水口を有する金属製の外装体と、前記外装体の内部に配され、入水口と出水口を有し、内部に香料を吸収させた粒状の多孔質材料を充填したカートリッジを有する芳香付与装置において、前記カートリッジは、両端部に底面を備えた外筒と、前記外筒の内側に配された内筒を有し、前記内筒の内側の第一の空間と、前記外筒と前記内筒の間の第二の空間に区分され、前記第一の空間の底面には、前記入水口を経由して前記第一の空間へ水を導入する第一の貫通孔を備え、前記内筒の上端近傍には前記第一の空間から前記第二の空間へ水を導入する第二の貫通孔を備え、前記外筒の下端近傍には前記第二の空間からカートリッジ外部へ水を導出する第三の貫通孔を備え、前記出水口から外部へ水を排出し、水が前記カートリッジ内部を通過する際に、前記粒状の多孔質材料から前記香料が溶出することを特徴とする芳香付与装置で、前記粒状多孔質材料として、シリカゲルを使用できる。
【発明の効果】
【0011】
シリカゲルは、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)の水溶液から得られ、2〜30nmの大きさの空孔を有する構造であるため、吸着材やカラムクロマトグラフィーの担体などとして用いられている。そして前記の空孔に吸着された成分は、条件により空孔から放出されるので、被吸着成分として芳香剤を用いることにより、本発明の目的に適う吸着剤となる。
【0012】
つまり、芳香剤を吸着したシリカゲルの周囲の水に芳香剤が溶けていない状態では、濃度勾配が駆動力となって芳香剤が水の中に溶出し、飽和状態になれば芳香剤の溶出が停止する。そして、水が流されると、シリカゲルの周囲の水には芳香剤が溶けていない状態となることが繰り返され、水が流された際にのみ、芳香剤が溶出することになる。芳香剤が溶出されつくして、空孔が空になったシリカゲルを、芳香剤の中に浸漬することにより、再び芳香剤がシリカゲルに吸着されるので、再生使用が可能となる。
【0013】
また、本発明のカートリッジは、前記の構造を有するので、水の通過距離が延長され、それに伴い、水を流す際の水とシリカゲル表面との接触時間も長くなり、効率的に芳香剤を溶出できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明に係る芳香付与装置の一例を示す図、図1(a)は断面図、図1(b)はAA断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態を、図を参照しながら説明する。
【0016】
図1は本発明に係る芳香付与装置の一例を示す図で、図1(a)は断面図、図1(b)はAA断面図である。図1において、1は外装体、2は外装筒、3は外装筒上蓋、4は外装筒下蓋、5はカートリッジ、6はカートリッジ外筒、7はカートリッジ内筒、8は入水口、9は出水口、10は第一の空間、11は第二の空間、12aは第一の貫通孔、12bは第二の貫通孔、12cは第三の貫通孔、13は接続管、14は配管接続用部材、15はシリカゲル粒である。なお、図における矢印は、水の流れの方向を示す。
【0017】
本実施の形態で用いられる外装体1を構成する、外装筒2、外装筒上蓋3、外装筒下蓋4のそれぞれは、ネジ(図示せず)で接合され、材質としては、長期間の使用においても錆が発生しないように、ステンレスを用いるのが望ましく、クロムメッキを施してもよい。全体の大きさは、概ね外径が50mmで、高さが75mmである。
【0018】
また、カートリッジには、一般的なポリオレフィンであれば十分な耐薬品性や機械的な強度を具備しているので、ポリエチレンやポリプロピレンを用いることができる。
【0019】
図1に示したように、本実施の形態のカートリッジ5は、カートリッジ内筒7により、二つの空間に分割、用水は、第一の空間10の下面に設けられた第一の貫通孔12aから供給され、第一の空間10を満たした後、第二の貫通孔12bから第二の空間11に流入し、さらに貫通孔12cと、出水口9を経て、水を使用する機器へ供給される。
【0020】
そして第一の空間10及び第二の空間11には、香料を吸着した粒状の多孔質材料、つまり、シリカゲル粒15が充填され、シリカゲル粒15から放出される芳香剤が消臭機能を発現する。また、芳香剤を放出し終えたシリカゲル粒15は、芳香剤の液に浸漬することにより再生可能であることは、前記のとおりである。
【0021】
以上に説明したように本発明によれば、小型で簡便な芳香付与装置を提供できる。これによって、トイレなどの臭気を放つ場所の消臭が、低コストで行うことが可能となる。また、本装置は、単に水洗トイレに水を流す場合以外に、例えばウォッシュレット(登録商標)で使用する水や、浴室などのシャワーのような設備に用いることができるのは勿論である。
【0022】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 外装体
2 外装筒
3 外装筒上蓋
4 外装筒下蓋
5 カートリッジ
6 カートリッジ外筒
7 カートリッジ内筒
8 入水口
9 出水口
10 第一の空間
11 第二の空間
12a 第一の貫通孔
12b 第二の貫通孔
12c 第三の貫通孔
13 接続管
14 配管接続用部材
15 シリカゲル粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用状態における下側に設けられた入水口と上側に設けられた出水口を有する金属製の外装体と、前記外装体の内部に配され、入水口と出水口を有し、内部に香料を吸収させた粒状の多孔質材料を充填したカートリッジを有する芳香付与装置において、前記カートリッジは、両端部に底面を備えた外筒と、前記外筒の内側に配された内筒を有し、前記内筒の内側の第一の空間と、前記外筒と前記内筒の間の第二の空間に区分され、前記第一の空間の底面には、前記入水口を経由して前記第一の空間へ水を導入する第一の貫通孔を備え、前記内筒の上端近傍には前記第一の空間から前記第二の空間へ水を導入する第二の貫通孔を備え、前記外筒の下端近傍には前記第二の空間からカートリッジ外部へ水を導出する第三の貫通孔を備え、前記出水口から外部へ水を排出し、水が前記カートリッジ内部を通過する際に、前記粒状の多孔質材料から前記香料が溶出することを特徴とする芳香付与装置。
【請求項2】
前記粒状多孔質材料が、シリカゲルであることを特徴とする、請求項1に記載の芳香付与装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149500(P2012−149500A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24377(P2011−24377)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(509133458)有限会社高橋設備 (2)
【Fターム(参考)】