説明

芳香組成物

【課題】蛍光発光性に優れ、かつ安定性が良好であり、保留性の高い芳香組成物を提供する。
【解決手段】特定の蓄光顔料と有機粘土複合体とを含有することを特徴とする芳香組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の蓄光顔料と有機粘土複合体とを含有する芳香組成物に関し、蛍光発光性に優れかつ安定性が良好であり、保留性の高い芳香組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ゲル状の芳香組成物としては、固形ワックスに香料を分散したものや、香料を可溶化し、水溶性高分子でゲル状としたものなどが製品化されていた。また、近年、蓄光顔料及び高吸水性ポリマーを配合することにより、発光作用と消臭作用とを兼ね備えたゲル状発光消臭剤も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来使用されてきた、硫化亜鉛、硫化カルシウム、硫化カドミウム亜鉛等に代表される畜光顔料には幾つかの問題点が存在していた。すなわち、硫化亜鉛については、耐光性といった化学的安定性に問題があることに加え、蛍光顔料としての蛍光輝度及び残光性が低く、製品価値を十分満たすほどの蛍光性を有していないものであった。また、硫化カルシウム系のものは、耐湿性が悪く、空気中で極めて耐久性に乏しいという欠点を有し、硫化カドミウム亜鉛系については、公害元素と呼ばれるカドミウムを含有しているため実用性が低いというのが現状であった。
【0004】一方、アルミン酸系蓄光顔料は、蛍光強輝度及び発光後の残光特性に優れているだけでなく、従来の夜光顔料に比較して耐光性、化学的安定性に優れ、長期間屋外に放置されても蛍光強度の低下、変色が生じにくく、また、放射性物質や有害物質を含まないため極めて人体に安全であるという特性を有している。しかしながら、本物質は水分若しくはアルカリの存在下では加水分解しやすいため、配合できる成分が限定されてしまう欠点を有する。また、比重が3.6と極めて大きいことに加え、輝度に対する粒径依存性が極めて高く、なるべく粒径を変化させることなく安定に系中に分散させる必要があった。これに対して、従来の水溶性高分子や粘土鉱物では、充分満足のゆく結果は得られなかった。したがって、発光作用及び消臭作用を有し、且つ安定性並びに香料の保留性に優れた芳香剤の開発が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究の結果、特定の蓄光顔料と有機粘土複合体とを配合することにより、発光作用及び消臭作用を有し、且つ安定性並びに香料の保留性に優れた芳香剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、特定のアルミン酸系蓄光顔料と、有機粘土複合体を含有することを特徴とする芳香剤である。以下、詳述する。
【0006】本発明で用いられる蓄光顔料は、下記一般式(1)で示されるものである。
【0007】
【化4】


【0008】[式中、Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素である。]
金属元素としては、特にストロンチウムが好ましい。市販品としては、例えば、ルミノーバG−300(根本特殊化学社製)等が挙げられる。
【0009】本発明で用いられる蓄光顔料の配合量としては、特に限定されないが、好ましくは、0.1〜20重量%(以下、単に「%」と記す)である。
【0010】有機粘土複合体としては、膨潤性層状ケイ酸塩の層間に、下記一般式(2)で示される第4級アンモニウムイオンを導入した有機粘土複合体が好適に用いることができる。
【0011】
【化5】


【0012】[式中、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なり、(CH2CH2O)nH(nは2以上)基又は炭素数1〜30のアルキル基を表すが、R1〜R4のうち1〜3個は(CH2CH2O)nH基であり、かつR1〜R4の少なくとも3個は(CH2CH2O)nH基または炭素数1〜30のアルキル基である。]
【0013】アルキル基は炭素数1〜30であり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチルオクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0014】ポリオキシエチレン基(CH2CHO)nHのnは、好ましくは2〜20であり、その付加縮合数は多い方がより好ましい。かつ複数のポリオキシエチレン基が置換している場合、それらのオキシエチレン単位の合計は4〜50であるが、10以上、特に15以上であることが好ましい。
【0015】一般式(1)の第4級アンモニウムイオンを導入するには、そのイオンを含む第4級アンモニウム塩が用いられるが、そのような塩としては、例えばCl、Br、NO3、OH、CH3COO等の、陰イオンとの塩を挙げることができる。
【0016】上記第4級アンモニウム塩の具体例としては、モノポリオキシエチレン・トリアルキルアンモニウムクロライド、モノポリオキシエチレン・トリアルキルアンモニウムブロマイド、ジ(ポリオキシエチレン)・ジアルキルアンモニウムクロライド、ジ(ポリオキシエチレン)・ジアルキルアンモニウムブロマイド、トリ(ポリオキシエチレン)・アルキルアンモニウムクロライド、トリ(ポリオキシエチレン)・アルキルアンモニウムブロマイド等を挙げることができる。
【0017】本発明の有機粘土複合体の原料として使用する膨潤性層状ケイ酸塩は、陽イオン交換能を有し、さらに層間に水を取り込んで膨潤する特異な性質を示す層状ケイ酸塩で、スメクタイト型粘土としては、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、モンモリロナイト、ノントロナイト、ベントナイト等の天然または化学的に合成したもの、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられ、バーミキュライト、フッ素バーミキュライト等も用いることができる。
【0018】これらのものを用いた有機粘土複合体を芳香組成物に配合することで効果は充分に得られ特には限定されないが、下記一般式(3)で示されるヘクトライト型粘土鉱物に類似した構造を有するケイ酸塩を用いると、安定性、良感触性、保留性等の効果に加えて、透明感が向上し、しかも原料臭が極めて少なく、芳香組成物の品質がより向上する。また、膨潤性層状ケイ酸塩のカチオン交換容量は、100gあたり70ミリ当量以上であり、特に好ましくは85〜130ミリ等量である。
【0019】
【化6】


【0020】[式中、0≦x<2、0≦y<2、0<x+y<2、0≦z<4であり、Mはアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンなどの1価陽イオンである。]
【0021】本発明に用いられる有機粘土複合体は、層間の陽イオン交換により得られるが、例えば、以下の方法で製造することができる。第1段階として膨潤性層状ケイ酸塩を水中に分散させ、その固体成分濃度は1〜15%が望ましいが、膨潤性層状ケイ酸塩が充分分散可能な範囲なら自由に設定することが可能である。この場合、予め凍結乾燥した膨潤性層状ケイ酸塩を用いれば、容易に製造することができるため有効である。次にこの膨潤性層状ケイ酸塩懸濁液に前述の第4級アンモニウム塩溶液を添加するか、逆に、前述の第4級アンモニウム塩溶液に膨潤性層状ケイ酸塩懸濁液を添加することによっても有機粘土複合体を製造することができる。
【0022】第4級アンモニウム塩の添加量は、第4級アンモニウムイオンとして、膨潤性層状ケイ酸塩の陽イオン効果容量と当量用いることが好ましいが、これより少ない量でも製造は可能である。また、陽イオン交換容量に対して過剰量添加しても差し支えない。その量はその粘土の陽イオン交換量の0.5〜1.5倍量(ミリ当量)、特に0.8〜1.4倍量であることが好ましい。
【0023】反応は室温で充分進行するが、加温してもよい。加温の最高温度は用いる第4級アンモニウム塩の耐熱性に支配され、その分解点以下であれば任意に設定が可能である。次いで固液を分離し、生成物を水洗浄して、副成電解質を充分に除去する。これを乾燥、必要に応じて粉砕して最終製品とする。
【0024】本発明における有機粘土複合体の含有量としては特に限定されないが、0.5〜10%が好ましい。
【0025】さらに、上記必須成分に加えて、アルコール及び香料を配合することが好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールのような低級アルコールが挙げられ、化粧料として使用する場合は、エタノールが好ましい。含有量としては、50〜98.5%が好ましい。また、香料にはテルペン系、芳香族系、多環系有機化合物等の合成香料や動・植物の特定部位の抽出や蒸留等で得られた天然香料、並びにそれらを任意に組み合わせた調合香料があるが、アルコールに溶解するものであれば香料としては、特に限定しない。含有量は1〜30%が好ましく、香りの強さや持続性に応じて適宜添加量を変えることができる。
【0026】本発明で用いられる蓄光顔料は、水分若しくはアルカリの存在下では加水分解しやすいため、水分量が10%以下であることが好ましい。また、蓄光顔料をポリメチルメタアクリレート(PMMA)等に練り込む処理を行えば、水分の影響を受けなくなるため、特に水分量の制約はない。
【0027】本発明の芳香組成物は、室内並びに車内芳香剤等として用いることができる。
【0028】本発明の芳香組成物では、上記の成分に加え、本発明の効果を妨げない範囲で通常の芳香組成物に使用される固体、半固体、液状の油剤、多価アルコール、溶剤、界面活性剤、粉体、樹脂、高分子、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤等を配合することができる。
【0029】
【実施例】次に本発明について実施例を挙げてさらに説明する。尚、これらは本発明を何等限定するものではない。
【0030】製造例 有機粘土複合体ヘクトライト(陽イオン交換容量110ミリ当量/100g)20gを水道水1000mlに懸濁させ、下記式(4)で示される第4級アンモニウム塩21.4gを溶解させた溶液300mlを前期ヘクトライト懸濁液に添加し、攪拌しながら反応させ、生成物を固液分離、洗浄した後、乾燥させ、有機粘土複合体を得た。
【0031】
【化7】


【0032】[式中、m+n=15である]
【0033】表1に示す芳香組成物を調製して、その蛍光強度、経時安定性並びに保留性を評価した。
【0034】
【表1】


【0035】(製造方法)成分1〜2及び6〜8を均一に混合した後、成分3〜5を加えて充分混合する。
【0036】評価方法1.蛍光強度ガラス瓶に充填した試料を蛍光燈下に1時間ほど放置した後、暗室にて蛍光強度を肉眼にて観察し、下記基準より評価した。


【0037】2.経時安定性(A)蛍光強度ガラス瓶に充填した試料を暗所、40℃の条件下に1ヶ月設置し、調製直後の試料と蛍光強度の変化を比較した。
(B)沈降ガラス瓶に充填した試料を暗所、40℃の条件下に1ヶ月設置し、蛍光顔料の沈降の有無を目視観察した。評価基準を下記に示す。


【0038】3.保留性7.3×11.3cm2、重さ2.85gの匂い紙に描いた同一の大きさの円内に、0.05gを均一に塗布し、恒温恒湿(温度25℃、湿度55%)中に開放条件下で放置した。放置後の観察時間は、0、2、4、8時間の4点とし、5名の調香専門パネルが香りのバランスを下記基準より評価した。


以上の評価方法により得られた結果を表2に示す。
【0039】得られた結果から明らかなように、本発明に係わる実施例1及び2の芳香組成物は、蛍光強度、経時安定性並びに保留性に優れたものであった。それに対し、比較例では全ての項目を満足し得るものは得られなかった。
【0040】
実施例3 ゲル状室内芳香組成物 (成分) (%)
1.香料 30.0 2.95%アルコール 残量 3.有機粘土複合体(製造例) 6.0 4.アルミン酸ストロンチウム(注2) 5.0 5.色素 適量 (注2):ルミノーバG−300(根本特殊化学社製)
【0041】(製造方法)成分1、2を均一に混合した後、成分3〜5を加えて充分混合する。
【0042】
【発明の効果】本発明の芳香組成物は、蛍光発光性に優れかつ安定性が良好であり、保留性の高いものである。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】下記一般式(1)で示される蓄光顔料及び有機粘土複合体を含有することを特徴とする芳香組成物。
【化1】


[式中、Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素である。]
【請求項2】有機粘土複合体が、膨潤性層状ケイ酸塩の層間に、下記一般式(2)で示される第4級アンモニウムイオンを導入した有機粘土複合体であることを特徴とする請求項1に記載の芳香組成物。
【化2】


[式中、R1、R2、R3、R4は、同一又は異なり、(CH2CH2O)nH(nは2以上)基又は炭素数1〜30のアルキル基を表すが、R1〜R4のうち1〜3個は(CH2CH2O)nH基であり、かつR1〜R4の少なくとも3個は(CH2CH2O)nH基または炭素数1〜30のアルキル基である。]
【請求項3】膨潤性層状ケイ酸塩が、下記一般式(3)で示される合成ヘクトライト型粘土鉱物に類似した構造を有するケイ酸塩であることを特徴とする請求項2記載の芳香組成物。
【化3】


[式中、0≦x<2、0≦y<2、0<x+y<2、0≦z<4であり、Mはアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、アミンなどの1価陽イオンである。]
【請求項4】請求項1〜3の成分に加え、さらに、香料1〜30重量%、低級アルコール50〜98.5重量%を含有することを特徴とする芳香組成物。

【公開番号】特開平10−330239
【公開日】平成10年(1998)12月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−150440
【出願日】平成9年(1997)5月23日
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)