説明

苗植付け装置

【課題】 苗のせ台に対する縦送りベルトの組付けを容易にすることができるようにした苗植付け装置を提供する。
【解決手段】 前記縦送りベルト33は、駆動軸27に設けられた駆動ローラ28と、支軸31に設けられかつスプリング30により張力が付与されているテンションローラ32との間に巻掛けられている。前記支軸31を、前記駆動ローラ28側が開放しているガイド溝により前記張力方向に移動自在に支持する第1、第2の軸受部22、23を備え、前記第1の軸受部は、前記支軸31を軸方向の外側への移動を規制する規制部22aを一体的に成形し、前記第2の軸受部23は、前記支軸31を軸方向に貫通し得るように構成した。前記支軸31を苗のせ台20の横方向から前記テンションローラ32を串刺しするように組付けることにより、前記縦送りベルト33の組付けを容易にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用田植え機に昇降自在に連結される苗植付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一定ストロークで往復移動する苗のせ台と、苗のせ台に載置された苗を、苗のせ台のストローク端にて下方に送る縦送りベルトと、苗のせ台の下端から苗を掻取って植付ける植付け機構とを備えた苗植付け装置において、縦送りベルトを巻掛けるテンションローラの支軸を苗のせ台の下面から突設した軸受部にベルトの長手方向に移動可能に支持すると共に、苗のせ台の下面に支持軸の両端と近接対向するリブを突設して、支軸の軸心方向への移動を規制することにより、部品点数を削減し、コスト低減を図った苗の植付け装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−252号公報(段落番号「0018」、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来技術では、テンションローラに支軸を挿通する際、支軸を支持する軸受部より駆動軸側に所定の間隔でテンションローラを配列しておき、該テンションローラに支軸を挿通した後、該支軸を軸受部に移動する必要があり、該支軸を移動させて軸受部に組付ける際に、支軸の軸心方向に移動したテンションローラの位置の修正等が必要になり、苗のせ台に対する縦送りベルトの組付け作業が煩雑となることがある。
【0005】
前記の事情に鑑み、本発明は、縦送りベルトの苗のせ台への組付けを容易にすることができるようにした苗植付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、一定ストロークで往復移動する苗のせ台(20)と、該苗のせ台(20)に載置された苗を、前記苗のせ台(20)のストローク端にて下方に送る縦送りベルト(33)と、前記苗のせ台(20)の下端から苗を掻取って植付ける植付け機構(15)と、を備えた苗植付け装置(11)において、
前記縦送りベルト(33)は、駆動軸(27)に設けられた駆動ローラ(28)と、支軸(31)に設けられかつスプリング(30)により張力が付与されているテンションローラ(32)との間に巻掛けられ、
前記支軸(31)の少なくとも両端部分を、前記張力方向に移動自在にかつ前記駆動ローラ(28)側が開放しているガイド溝(22b、23b)を有する軸受部(22、23)にて支持し、
前記両端部分の一方を支持する軸受部(22)は、前記支軸(31)を軸方向の外側への移動を規制する規制部(22a)を一体的に成形した第1の軸受部(22)からなり、
前記両端部分の他方を支持する軸受部(23)は、前記支軸(31)を軸方向に貫通し得るように構成した第2軸受部(23)からなる、
ことを特徴とする苗植付け装置にある。
【0007】
請求項2に係る本発明は、前記苗のせ台(20)は、同じ条数からなる左右複数の苗のせ台ユニット(41、42)を連結して構成され、
前記苗のせ台ユニット(41、42)の左右一方は、連結部(41b)と前記第1の軸受部(22)と前記第2の軸受部(23)とを有する一体成形された原形状部材からなり、
前記苗のせ台ユニット(41、42)の左右他方は、前記原形状部材から前記連結部(41b)と前記第1の軸受部(41a)とを切除して構成されてなる、
請求項1記載の苗植付け装置にある。
【0008】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る本発明によると、左右両端部の他方の軸受部(第2の軸受部)が、支軸を軸方向に貫通し得るので、苗のせ台の各条にそれぞれ縦送りベルトを設置する際、苗のせ台に設けられた各孔部に、該ベルトを巻掛けた各テンションローラを仮置きした状態で、支軸を、前記他方(第2)の軸受部の外方から該軸受部を貫通して各テンションローラを串刺し状に通して設置することが可能となり、縦送りベルトの苗のせ台への組付けが容易となる。
【0010】
また、一方の軸受部(第1の軸受部)は、規制部が一体成形されているため、支軸を、ワッシャ及びピン等により一方の軸方向移動を規制すれば足り、支軸の軸方向移動を容易かつ確実に防止することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、例えば2条の苗のせ台ユニットを連結して4条の苗のせ台を形成する際、各苗のせ台ユニットを一体成形した同じ原形状部材から構成することができるので、例えば2条の苗のせ台と4条等のその整数倍の苗のせ台を同じ金型により形成することができ、製造原価を大幅に削減できるものでありながら、連結された苗のせ台の左右一方端のものは、第1の軸受部を有する苗のせ台ユニットからなり、左右他方端のものは、第1の軸受部を削除された第2の軸受部のみを有する苗のせ台ユニットからなり、上述した縦送りベルトの組付けの容易な苗のせ台を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1乃至図8は、本発明の第1の実施の形態を示すもので、図1は、本発明を適用した乗用田植え機の側面図、図2は、苗のせ台単体の背面を示す斜視図、図3は、苗のせ台の背面に形成された第1の軸受部の拡大斜視図、図4は、苗のせ台の背面に形成された第2の軸受部の拡大斜視図、図5は、苗のせ台の背面図、図6は、苗のせ台の側面図、図7は、第1の軸受部の拡大側面図、図8は、第2の軸受部の拡大背面図である。
【0014】
図1に示すように、乗用田植え機1は、前輪2及び後輪3に支持された走行機体5の後端に、油圧シリンダ6によって搖動駆動される昇降リンク機構7を介して、苗植付け装置11が昇降及びローリング自在に連結され、PTO軸8を介して動力が伝達されるように構成されている。
【0015】
前記苗植付け装置11は、前記昇降リンク機構7の後端にローリング自在に連結されるフレーム12と、該フレーム12から後方に向けて突出するように所定の間隔で配置された複数の伝動ケース13と、該伝動ケース13の後端に回転自在に支持され、苗の掻取りと植付けを行う植付け機構15と、前記伝動ケース13の下面に搖動自在に支持され、苗の植付けを行う圃上面を滑走するフローと16と、前記伝動ケース13に支持されたレール17及び前記フレーム12に支持された支柱18により横方向に摺動自在に支持された苗のせ台20等を有している。
【0016】
図2に示すように、前記苗のせ台20(図2は4条植えの苗のせ台を示す)は、合成樹脂で一体成形されている。前記苗のせ台20の背面には、補強のための多数のリブ21が形成されると共に、その上下方向の中央部には、下方に向けて開口する1個の第1の軸受部22と、複数(図2では4個)の第2の軸受部23が突設されている。また、前記苗のせ台20の下部にはH字状の複数(図2では4個)の孔25が形成されている。
【0017】
図3に示すように、前記第1の軸受部22には、前記苗のせ台20の側端部側に規制部22aと、下方に向けて開口するガイド溝22bが形成されている。また、図4に示すように、前記第2の軸受部23は、両側面が開放され、かつ下方に向けて開口するガイド溝23bが形成されている。
【0018】
図5に示すように、前記苗のせ台20(図5は、4条植えの苗のせ台を示す)の下部には、該苗のせ台20の下部に固定された複数(図5では5個、但し4個のみ図示してある)の軸受26に回転自在に支持された駆動軸27と、該駆動軸27に所定の間隔で固定された複数(図2では8個)の駆動ローラ28とが配置され、図示しない伝動機構により間欠的に回転駆動される。
【0019】
前記苗のせ台20の高さ方向の中央部には、懸垂支持された複数(図2では5個)のスプリング30に吊り下げられ、該スプリング30により上方への引上げ力が付与された支軸31と、該支軸31に回転自在に支持された複数(図2では8個、但し6個のみ図示してある)のテンションローラ32とが配置されている。
【0020】
前記駆動ローラ28とテンションローラ32には、複数(図2では4個、但し1個のみ図示してある)の縦送りベルト33が巻掛けられ、縦送り機構35を備えている。該縦送り機構35では、前記駆動ローラ28とテンションローラ32の一部が、前記苗のせ台20に形成された前記孔25から該苗のせ台20の上面に突出しており、前記縦送りベルト33は、その下降搬送側が前記苗のせ台20の上面の露出するように前記孔25を通して配置される。
【0021】
図6乃至図8に示すように、前記支軸31は、前記苗のせ台20の背面に、前記駆動軸22側(下方)が開口するように突出形成された第1の軸受部22と、複数(図2では4個)の第2の軸受部23に上下方向に移動可能に案内され、前記スプリング30の張力によって上方に引っ張られ、前記縦送りベルト33に所要の張力を付加している。
【0022】
前記支軸31の軸心方向の一方への移動は、前記第1の軸受部22の規制部22aによって規制されている。また、前記支軸31の軸心方向への他方への移動は、該支軸31の端部に組付けられたワッシャ36が前記第2の軸受部23に当接することで規制される。なお、前記ワッシャ36は、図8に示すように、前記支軸31に組付けられたピン37で移動を規制されている。
【0023】
前記苗植付け装置11で苗の植付け作業を行う場合、苗植付け装置11は、苗のせ台20を間欠的に横方向に移動させながら、植付け機構15を回転させ、この植付け機構15により、苗のせ台20上に載置されたマット状の苗から、植付け単位の苗を掻取って圃場に移植している。そして、苗のせ台20がその一方の移動端に到達すると、縦送り機構35が作動して、縦送りベルト33をマット状苗の1列分だけ移動させ、マット状苗をその掻取り位置へ確実に移動させると共に、苗のせ台20の移動方向を反転して苗の植付け作業を継続する。
【0024】
このような苗のせ台20において、苗のせ台20に縦送り機構35を組付ける場合、本発明による構成では、まず、苗のせ台20の孔25を通して、下降搬送側が苗のせ台20の上面側に位置するように縦送りベルト33を組付ける。次いで、駆動ローラ28を苗のせ台20の孔25に合せて縦送りベルト33が巻付くように配置した後、駆動軸27で駆動ローラ28を串刺しするように、駆動軸27を組付ける。
【0025】
同様に、テンションローら32を苗のせ台20の孔25に合せて縦送りベルト33が巻付くように配置した後、支軸31でテンションローラ32を串刺しするように、支軸31を組付ける。この時、支軸31は、図5で最も右側にある第2の軸受部23のガイド溝23b、ワッシャ36を通して横方向から挿通する。そして、支軸31の先端が第1の軸受部22の所定の位置に到達したら、支軸31にピン37を組付け、ワッシャ36の移動を規制する。次いで、スプリング30を支軸31に掛る。
【0026】
すると、スプリング30の張力により支軸31が引っ張られ、テンションローラ32を上方へ移動させると、駆動ローラ28とテンションローラ32の間に縦送りベルト33が巻掛けられた状態となり、かつ縦送りベルト33に所要のテンションが付加される。
【0027】
前記のように、駆動ローラ28やテンションローラ32、縦送りベルト33を予め所要の位置に配置して、駆動ローラ28を串刺しにするように駆動軸27を組付け、テンションローラ32を串刺しにするように支軸31を組付けるようにしたので、組付け作業中にテンションローラ32等が支軸31の軸方向に移動することがなく、縦送りベルト33の組付け作業を容易に行うことができる。
【0028】
また、第1の軸受部22は、規制部22aが一体成形されているため、支軸31の軸心方向への移動規制は、ワッシャ36及びピン37等により一方の軸心方向移動を規制すれば足り、支軸31の軸方向移動を容易かつ確実に防止することができる。
【0029】
図9、図10は、本発明の第2の実施の形態を示すもので、図9は、苗のせ台ユニットの原形状部材の背面図、第10図は、苗のせ台ユニットの連結側部材の背面図である。
【0030】
図9に示すように、原形状部材として構成された苗のせ台ユニット41(図9では2条上の苗のせ台ユニットを示す)には、その上下方向の中央部に、下方に向けて開口する1個の第1の軸受部22と、複数(図9では2個)の第2の軸受部23が突設されている。また、前記苗のせ台ユニット41の下部にはH字状の複数(図9では2個)の孔25が形成されている。
【0031】
また、前記苗のせ台ユニット41には、前記第1の軸受部22を含む領域で形成される第1の軸受部41aと、前記第2軸受部23を含む領域で形成される連結部41bが一体成形されている。
【0032】
図10に示すように、連結側部材として構成された苗のせ台ユニット42には、その上下方向の中央部に、下方に向けて開口する複数(図10では2個)の第2の軸受部23が突設されている。また、前記苗のせ台ユニット42の下部にはH字状の複数(図9では2個)の孔25が形成されている。
【0033】
即ち、前記苗のせ台ユニット42は、前記苗のせ台ユニット41の第1の軸受部41aと連結部41bを切除して構成される。
【0034】
図9に示す苗のせ台ユニット41のみを使用すれば、2条植えの苗植付け装置11用の苗のせ台20を構成することができる。また、図9に示す苗のせ台ユニット41に図10に示す苗のせ台ユニット42を1個連結すれば、前記図2に示す物と同じ4条植えの苗植付け装置11用の苗のせ台20を構成することができる。さらに、苗のせ台ユニット42の連結数を増やせば、更に6条植え、8条植え等の多条植えの苗植付け装置11用の苗のせ台20を構成することができる。
【0035】
前記のような構成とすることにより、例えば2条の苗のせ台ユニットを連結して4条の苗のせ台を形成する際、各苗のせ台ユニット41、42を一体成形した同じ原形状部材から構成することができるので、例えば2条の苗のせ台と4条等のその整数倍の苗のせ台を同じ金型により形成することができ、製造原価を大幅に削減でき、前記した縦送りベルト33の組付けの容易な苗のせ台を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した乗用田植え機の側面図である。
【図2】苗のせ台単体の背面を示す斜視図である。
【図3】苗のせ台の背面に形成された第1の軸受部の拡大斜視図である。
【図4】苗のせ台の背面に形成された第2の軸受部の拡大斜視図である。
【図5】苗のせ台の背面図である。
【図6】苗のせ台の側面図である。
【図7】第1の軸受部の拡大側面図である。
【図8】第2の軸受部の拡大背面図である。
【図9】苗のせ台ユニットの原形状部材の背面図である。
【図10】苗のせ台ユニットの連結側部材の背面図である。
【符号の説明】
【0037】
11 苗植付け装置
15 植付け機構
20 苗のせ台
22 第1の軸受部
22a 規制部
22b ガイド溝
23 第2の軸受部
23b ガイド溝
27 駆動軸
28 駆動ローラ
30 スプリング
31 支軸
32 テンションローラ
33 縦送りベルト
41 苗のせ台ユニット
41a 第1の軸受部
41b 連結部
42 苗のせ台ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定ストロークで往復移動する苗のせ台と、該苗のせ台に載置された苗を、前記苗のせ台のストローク端にて下方に送る縦送りベルトと、前記苗のせ台の下端から苗を掻取って植付ける植付け機構と、を備えた苗植付け装置において、
前記縦送りベルトは、駆動軸に設けられた駆動ローラと、支軸に設けられかつスプリングにより張力が付与されているテンションローラとの間に巻掛けられ、
前記支軸の少なくとも両端部分を、前記張力方向に移動自在にかつ前記駆動ローラ側が開放しているガイド溝を有する軸受部にて支持し、
前記両端部分の一方を支持する軸受部は、前記支軸を軸方向の外側への移動を規制する規制部を一体的に成形した第1の軸受部からなり、
前記両端部分の他方を支持する軸受部は、前記支軸を軸方向に貫通し得るように構成した第2軸受部からなる、
ことを特徴とする苗植付け装置。
【請求項2】
前記苗のせ台は、同じ条数からなる左右複数の苗のせ台ユニットを連結して構成され、
前記苗のせ台ユニットの左右一方は、連結部と前記第1の軸受部と前記第2の軸受部とを有する一体成形された原形状部材からなり、
前記苗のせ台ユニットの左右他方は、前記原形状部材から前記連結部と前記第1の軸受部とを切除して構成されてなる、
請求項1記載の苗植付け装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−174797(P2006−174797A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373806(P2004−373806)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】