説明

苗植付け装置

【課題】縦送りベルトが取り付けられる苗のせ台の一部分が取り外しできる苗植付け装置を提供することにある。
【解決手段】苗植付け装置は、苗が載置される苗載置面52cを有する苗のせ台52と、苗載置面52cから一部分を表出させて苗のせ台52の裏側に設けられ、苗載置面52cから表出した部分で苗を下方に送る縦送りベルト70と、を備えており、縦送りベルト70が取り付けられる苗のせ台52の一部分52Aが、縦送りベルト70とともに、他の部分52Bに対して着脱可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植え機に装備される苗植付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗植付け装置は、苗が載置される苗載置面を有する苗のせ台と、前記苗載置面から一部分を表出させて前記苗のせ台の裏側に設けられ、前記苗載置面から表出した部分で苗を下方に送る縦送りベルトと、を備えている(特許文献1,2)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−174797号公報
【特許文献2】特開2006−94744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の苗植付け装置は、縦送りベルトが苗のせ台の裏側に設けてあった。このため、苗のせ台に縦送りベルトを組み込みにくい問題があった。また、縦送りベルトのメンテナンス時に、メンテナンスを行うのが困難であった。
【0005】
本発明は、縦送りベルトが取り付けられる苗のせ台の一部分が取り外しできる苗植付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、
苗が載置される苗載置面(52c)を有する苗のせ台(52)と、
前記苗載置面(52c)から一部分を表出させて前記苗のせ台(52)の裏側に設けられ、前記苗載置面(52c)から表出した部分で苗を下方に送る縦送りベルト(70)と、を備えた苗植付け装置において、
前記縦送りベルト(70)が取り付けられる前記苗のせ台(52)の一部分(52A)が、前記縦送りベルト(70)とともに、他の部分(52B)に対して着脱可能である、ことを特徴とする苗植付け装置(30)である。
【0007】
請求項2に係る本発明は、
前記苗のせ台(52)の前記他の部分(52B)に、前記苗のせ台(52)の一部分(52A)を裏側から支持する支持部材(66)を設け、
前記支持部材(66)に前記縦送りベルト(70)の回転軸がスラスト方向へ移動するのを阻止する阻止部材(67)を設けた、
請求項1に記載の苗植付け装置(30)である。
【0008】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、縦送りベルトが取り付けられる苗のせ台の一部分が、縦送りベルトとともに、他の部分に対して着脱可能になっているので、縦送りベルトのメンテナンスが容易である。
【0010】
また、請求項1に係る発明によると、縦送りベルトを苗のせ台に取り付けるとき、縦送りベルトを苗のせ台の一部分に取り付けてから、苗のせ台の一部分を他の部分に取り付けることができるので、苗のせ台への縦送りベルトの組み込みを速やか、かつ簡単に行うことができる。
【0011】
請求項2に係る発明によると、支持部材に縦送りベルトの回転軸がスラスト方向へ移動するのを阻止する阻止部材を設けたので、一部分を他の部分から分離したとき、阻止部材が支持部材側に残り、回転軸を容易に抜き取ることができて、縦送りベルトの部品交換を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1乃至図10は、本発明の実施の形態を示すものである。図1は、本発明の実施形態の苗植付け装置を備えた田植え機の側面図である。図2は、図1の田植え機の平面図である。図3は、苗のせ台を取り除いた苗植付け装置を田植え機の後方から見た図である。図4は、苗のせ台を田植え機の後方から見た図である。図5は、図4のA−A矢視図であり、苗のせ台の側面図である。図6は、縦送りベルトを取り外した苗のせ台を田植え機の後方から見た図である。図7は、図6のB−B矢視図あり、苗のせ台の側面図である。図8は、苗のせ台の図である。(a)は、苗のせ台の側面図である。(b)は、(a)のC矢視図であり、苗のせ台を田植え機の前方から見た図である。図9は、縦送りベルトを取り外した苗のせ台の図である。(a)は、苗のせ台の側面図である。(b)は(a)のD矢視図であり、苗のせ台を田植え機の前方から見た図である。図10は、苗のせ台のリブを着脱できるリブにした場合の図であり、(a)は苗のせ台の平面図、(b)はE−E矢視断面図、(c)はリブの図である。
【0014】
図1、図2に示すように、田植え機1は、主に、走行車両10と、この走行車両10の後に連結されて、苗の植付け作業を行う苗植付け装置30とで構成された、乗用田植機である。
【0015】
走行車両10は、各一対の前輪11,11及び後輪12,12により支えられた走行機体13を備えている。この走行機体13の前部には、ボンネット15で覆われた不図示のエンジンが搭載されている。
【0016】
走行機体13のボンネット15の後方には、運転席16が配置され、この運転席16には、オペレータが着座する座席17が設けられている。運転席16には、ステアリングハンドル21をはじめ、田植え機1の運転操作に必要な各種レバー、スイッチ、ペダル類が配置されている。
【0017】
走行機体13の後部には、昇降リンク機構27を介して苗植付け装置30が左右方向に揺動自在に連結されている。昇降リンク機構27は、自由端(後端)が上下方向に揺動可能に配置されたアッパーリンク25及び一対のロアリンク26で構成されている。苗植付け装置30は、不図示のコントロールバルブによって駆動制御される油圧シリンダ28の伸縮により昇降するようになっている。
【0018】
苗植付け装置30は、昇降リンク機構27に接続された苗植付け装置フレーム43を備えている。苗植付け装置フレーム43は、左右方向に向けて配置された横フレーム41と、この横フレーム41に上下方向に延設するように一体に固定された複数の縦フレーム42とで構成されている。横フレーム41には、後方に向けて突出する複数のプランタケース45が配置され、各プランタケース45の後端部側面には、それぞれ苗の掻取りと植付けを行う苗植付け機構46が回転可能に配置されている。また、プランタケース45の下面には、フロート47が揺動可能に配置されている。
【0019】
プランタケース45の後部上方には、エプロン50が配置されている。エプロン50は、掻取り調節レバー48の操作により上下方向に移動可能な掻取り調節機構(図示せず)に上下方向に移動可能に支持されている。エプロン50には、苗植付け機構46の先端部の回転軌跡が通過する複数の切欠き51が形成されている。
【0020】
マット状の苗を苗載置面52cに載置して苗植付け機構46に苗を供給する苗のせ台52は、苗植付け装置フレーム43に、左右方向に往復移動可能に支持され、かつ掻取り調節機構により上下方向に移動され、苗植付け機構46で掻取る苗の量を調整できるようになっている。また、苗のせ台52には、この苗のせ台52上の苗の残量が所定量以下になったことを検知する苗切れセンサ53が設けられている。
【0021】
横フレーム41には、不図示のトランスミッションからPTO軸を介して動力が入力される植付け部入力ケース56(図3)が配置されている。植付け部入力ケース56から左右に突出する植付け伝動軸57は、各プランタケース45の内部機構を介して、各苗植付け機構46に動力を伝達して、この苗植付け機構46を回転駆動するようになっている。
【0022】
また、図3で右端に位置するプランタケース45の右側には、植付け伝動軸57を入力軸とする横送り変速機58が設けられている。この横送り変速機58も苗植付け装置フレーム43(図1)に設けられている。この横送り変速機58の出力は、苗のせ台52を左右方向に往復移動させる横送り装置60の横送り軸61に動力が伝達される。横送り軸61の回転により、スライドピース62が左右方向に移動して、苗のせ台52が左右方向に往復移動するようになっている。
【0023】
苗植付け装置フレーム43(図1)には、苗の植え込み深さを調節する植付け深さ調節レバー63(図3)と、後述する縦送りベルト70を駆動させて縦送りベルト70によって苗のせ台52に載置された苗を下方に移動させる縦送りレバー64とが設けられている。
【0024】
図1、図2、図4乃至図7において、苗のせ台52には、縦送りベルト70が設けられている。苗のせ台52は、縦送りベルト70が取り付けられる苗のせ台の一部分である被取付け部52Aと、縦送りベルト70とともに被取付け部52Aが苗載置面52c側から着脱される他の部分52Bとで構成されている。
【0025】
苗のせ台の他の部分52Bには、被取付け部52Aを裏側から支持する支持部材66が設けられている。支持部材66には、縦送りベルト70の回転軸としての後述する従動軸75がスラスト方向へ移動するのを阻止する阻止部材67と、下端部66aと、下向き突片65とが設けられている。下端部66aと、下向き突片65とには、ボルト68,69によって被取付け部52Aが着脱されるようになっている。なお、ボルト68は、苗を苗のせ台52に押圧する不図示の苗押さえを支持するブラケット78も縦送りベルト70とともに支持部材66の下端部66aに取り付けるようになっている。
【0026】
縦送りベルト70は、被取付け部52Aに設けられた駆動軸72と、駆動軸72に設けられた駆動プーリ73と、被取付け部52Aに設けられて下方(駆動軸72側)が開放した軸受74に支持された従動軸75と、従動軸75に設けられた従動プーリ76と、駆動プーリ73と従動プーリ76とに掛け渡したベルト71と、従動軸75を上方に牽引してベルト71のたるみを防止するスプリング77等で構成されている。
【0027】
駆動軸72は、不図示のPTO軸から不図示の動力伝達機構を経て回転力を受けて回転するようになっている。また、駆動軸72は、縦送りベルト70とともに苗のせ台52の被取付け部52Aを他の部分52Bから取り外したとき、上記動力伝達機構から分離できるようになっている。動力伝達機構からの分離には、歯車同士の噛合の解除、或いは動力伝達機構のベルトの取り外しがある。
【0028】
なお、本実施形態の縦送りベルト70は、1本の駆動軸72に設けた12個の駆動プーリ73と1本の従動軸75に設けた12個の従動プーリ76とに、12本のベルト71が掛け渡して形成されているが、駆動プーリ73と従動プーリ76とベルト71の数は12に限定されるものではない。
【0029】
以上の構成において、田植え機1は走行しながら、苗植付け機構46によって苗のせ台52上の苗を植付けていく。このとき、苗のせ台52は、苗植付け機構46の苗植付けにともなって左右方向の一方に移動する。苗のせ台52が左右方向の端まで移動すると、縦送りレバー64が作動して、縦送りベルト70の駆動軸72にPTO軸からの回転力が伝達される。すると、ベルト71は図5において右回転する。ベルト71は、苗のせ台52の被取付け部52Aに形成された開口部54(図4)から苗載置面52c上に表出しているため、右回転することによって、マット状の苗を下方に送る。その後、苗植付け機構46による苗のせ台52上の苗の植付けと、苗のせ台52の反対方向への移動とによって、苗の植付けが継続される。苗切れセンサ53によって、苗のせ台52上のマット状の苗が無くなったことが検知されると、田植え機1による苗の植付けが完了する。
【0030】
以上説明したように、苗植付け装置46は、縦送りベルト70が取り付けられる苗のせ台52の一部分である被取付け部52Aが、縦送りベルト70とともに、他の部分52Bに対して苗載置面52c側から着脱可能になっている。このため、苗植付け装置46は、縦送りベルト70のメンテナンスを容易に行えるようになっている。
【0031】
また、苗植付け装置46は、縦送りベルト70を苗のせ台52に取り付けるとき、縦送りベルト70を苗のせ台52の被取付け部52Aに取り付けてから、被取付け部52Aを他の部分52Bに取り付けることができるので、苗のせ台52への縦送りベルト70の組み込みを速やか、かつ簡単に行うことができる。
【0032】
さらに、苗植付け装置46は、苗のせ台52の他の部分52Bに、苗のせ台52の一部分で被取付け部52Aを裏側から支持する支持部材66を設け、支持部材66に縦送りベルト70の回転軸としての従動軸75がスラスト方向へ移動するのを阻止する阻止部材67を設けてある。このため、被取付け部52Aに設けられて下方(駆動軸72側)が開放した軸受74に支持された従動軸75のスラスト方向への移動を阻止して、縦送りベルトの作動を確実にすることができる。また、苗植付け装置46は、被取付け部52Aを他の部分52Bから分離したとき、阻止部材67が支持部材側に残り、従動軸75を容易に抜き取ることができて、縦送りベルト70の部品交換を容易に行うことができる。
【0033】
なお、図10に示すように、苗のせ台52に載置されたマット状の苗が滑り落ち易いようにする苗のせ台52上のリブを着脱自在なリブ80にしてもよい。このリブ80は、断面逆T字状に形成されて、突部80aが苗のせ台52に形成された縦スリット81に挿入されて、苗のせ台52の苗載置面52c上に突出している。リブ80の基部80bは、基部80bに形成された貫通孔80cに苗のせ台52の裏側に突設された突軸82を貫通させて、突軸82に装着した着脱自在な止め輪83によって、苗のせ台52に取り付けられている。
【0034】
このリブ80は、形状や高さの異なるリブが数種類あり、止め輪83を外すことによって、苗のせ台に載置したマット状の苗に適した、形状や高さのものに交換して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態の苗植付け装置を備えた田植え機の側面図である。
【図2】図1の田植え機の平面図である。
【図3】苗のせ台を取り除いた苗植付け装置を田植え機の後方から見た図である。
【図4】苗のせ台を田植え機の後方から見た図である。
【図5】図4のA−A矢視図であり、苗のせ台の側面図である。
【図6】縦送りベルトを取り外した苗のせ台を田植え機の後方から見た図である。
【図7】図6のB−B矢視図あり、苗のせ台の側面図である。
【図8】苗のせ台の図である。(a)は、苗のせ台の側面図である。(b)は、(a)のC矢視図であり、苗のせ台を田植え機の前方から見た図である。
【図9】縦送りベルトを取り外した苗のせ台の図である。(a)は、苗のせ台の側面図である。(b)は(a)のD矢視図であり、苗のせ台を田植え機の前方から見た図である。
【図10】苗のせ台のリブを着脱できるリブにした場合の図であり、(a)は苗のせ台の平面図、(b)はE−E矢視断面図、(c)はリブの図である。
【符号の説明】
【0036】
1 田植え機
10 走行車両
30 苗植付け装置
46 苗植付け機構
47 フロート
52 苗のせ台
52A 被取付け部(苗のせ台の一部分)
52B 苗のせ台の他の部分
52c 苗載置面
65 支持部材の下向き突片
66 支持部材
66a 支持部材の下端部
67 阻止部材
68 ボルト
69 ボルト
70 縦送りベルト
71 ベルト
72 駆動軸
73 駆動プーリ
74 軸受
75 従動軸(回転軸)
76 従動プーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗が載置される苗載置面を有する苗のせ台と、
前記苗載置面から一部分を表出させて前記苗のせ台の裏側に設けられ、前記苗載置面から表出した部分で苗を下方に送る縦送りベルトと、を備えた苗植付け装置において、
前記縦送りベルトが取り付けられる前記苗のせ台の一部分が、前記縦送りベルトとともに、他の部分に対して着脱可能である、
ことを特徴とする苗植付け装置。
【請求項2】
前記苗のせ台の前記他の部分に、前記苗のせ台の一部分を裏側から支持する支持部材を設け、
前記支持部材に前記縦送りベルトの回転軸がスラスト方向へ移動するのを阻止する阻止部材を設けた、
請求項1に記載の苗植付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−17804(P2009−17804A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181377(P2007−181377)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】