説明

苗植付装置

【課題】本発明では、肥料や薬剤等の補助材を根の成長する苗下方へ残せるようにすると共に根が直接肥料や薬剤に接する肥料焼け等の障害を無くすることが出来るようにすることが課題である。
【解決手段】底部が開閉する苗植付体4に肥料や薬剤等の補助材を供給した後に野菜苗を供給すべくすると共に、該苗植付体4の底面20に溜まった補助材上側に粒状補助材を通過させる目合いの網或いは孔板からなり苗を受ける受体21a,21bを苗植付体4と共に開閉すべく張設した野菜苗植付装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜等の苗移植機における苗植付装置に関する
【背景技術】
【0002】
野菜苗移植機における苗植付装置は、例えば、特開2006−14662号公報に記載の如く、ポット苗を受け入れた嘴状の苗植付体が降下してその先端部を畝の土中に差込んだ後に先端部を開き苗を土中に残して苗植付体が上昇して一連の植付け動作をするようになっている。
【0003】
この苗植付装置の苗植付体は、内部が苗収納部と肥料や薬剤等の補助材収納部に分割されて、苗と補助材を離して土中に残すようにしている。
【特許文献1】特開2006−14662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の苗植付装置の苗植付体は、肥料や薬剤等の補助材が苗の根から少し離れた側部に置かれているので、苗の根が下方へ伸びる初期成長時に肥料効果や薬剤効果が効き難く、成長が不充分になり勝ちであった。
【0005】
そこで、本発明では、肥料や薬剤等の補助材を根の成長する苗下方へ残せるようにすると共に根が直接肥料や薬剤に接する肥料焼け等の障害を無くすることが出来るようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、底部が開閉する苗植付体4に肥料や薬剤等の補助材を供給した後に苗を供給すべく構成すると共に、該苗植付体4の底面20に溜まった補助材上側に粒状補助材を通過させる目合いの網或いは孔板からなり苗を受ける受体21a,21bを苗植付体4と共に開閉する構成とした苗植付装置とした。
【0007】
この構成で、苗植付体に供給される肥料や薬剤等の補助材が苗植付体4の底部に溜り苗が受体21a,21bの上に載るようになり、苗植付体を開くと苗の下側に補助材を埋め込める。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の受体21a,21bの中央側を凹ませて苗植付体4内に張設したことを特徴とする。
この構成で、受体21a,21bの中央凹み部に苗が載って直立姿勢が安定し、そのままの姿勢で土中へ埋められる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明では、まず先に苗植付体4に供給される粒状の肥料や薬剤等の補助材が受体を通過して苗植付体4の底面20上に溜り、その後に供給される苗が受体21a,21b上に落下供給されて、そのままの上下関係で土の中へ埋め込まれることで苗の真下に肥料や薬剤等の補助材が位置して肥料効果や薬剤効果が苗の成長時に有効に作用する。なお、受体21a,21bを苗植付体4の底面から充分離すことで補助材と苗の間に空間が出来れば、植付けの際に補助材と苗の底部との間に土が侵入して直接補助材と苗の根が接触することなく、肥料焼け等の障害を防ぐことになる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、受体21a,21b上に落下供給される苗が受体21a,21bの中央凹みに嵌って直立姿勢を保持して土中へ埋め込まれ植付け姿勢が良好になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施例を、以下に説明する。
図1は、本発明を実施した野菜移植機の全体側面図で、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に昇降駆動するリンク機構3に連結して昇降動作と開閉動作をする苗植付体4を備えた構成である。この苗植付体4は、下方に向かって尖った嘴状の形状をしている。
【0012】
走行装置1は、転動自在に支持した左右一対の前輪5とエンジン6の動力を伝動して駆動回転する左右一対の後輪7を備えている。
エンジン6の下後部にミッションケース8を装着し、このミッションケース8の左右側部に後方の車軸10に向けて伝動ケース9を装着し、エンジン6の出力軸から伝動ケース9内の伝動機構を介して車軸10に動力を伝動して、車軸10に装着した後輪7を駆動回転する。
【0013】
伝動ケース9は、水平油圧シリンダ11で機体に対して上下回動して機体の左右水平を維持するようにしている。
一対の前輪5,5は、エンジン6の前下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム12の左右両側部で下方に延びるアーム部の下端に固着した車軸13に回動自在に取り付けている。
【0014】
操縦ハンドル2は、ミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム14の後端部に取り付けている。この機体フレーム14は機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方へ延び、また、前後中間部から斜め上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム14の後端部から左右に延びてその後端部を後方へ延ばしてグリップ部15としている。この左右のグリップ部15は、歩行するオペレータが楽に手で握れる高さに設定している。グリップ部15の前側には、走行装置1の駆動断続を行う走行レバー28と苗植付体4の駆動断続を行う作業レバー29を設けている。
【0015】
リンク機構3は、ミッションケース8内から駆動動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付け伝動ケース16に装着している。このリンク機構3は、公知の構成であるので詳細な説明を省略するが、第一アーム17と第二アーム18で構成し、苗植付体4を側面視で上下に長い略楕円形状の軌跡Tを描いて動かすと共に前後に二分割した嘴部4a,4bを軌跡Tの下端部で前後に開口動作する。
【0016】
図2に示す如く、苗植付体4の嘴部4a,4b内には、底面20の下端から適宜上方に網或いは孔板からなる受体21a,21bをそれぞれ張設している。この受体21a,21bの網目或いは孔径は粒状の肥料や薬剤等の補助材を通過させる程度の目合で、前後中央の合せ部に向かって下り傾斜させている。このため、上から落下供給される肥料や薬剤の補助材は受体21a,21bを通過して嘴部4a,4bの先端底部20に溜り、その後に供給されるポット状の野菜苗が受体21a,21b上に安定して直立姿勢で保持される。そして、嘴部4a,4bが土中に差込まれて少し前後に開くと、まず、肥料や薬剤等の補助材が落下して嘴部4a,4b少し上昇することでその上に少しの土が覆い被さり、さらに大きく開いて野菜苗を落下させて、嘴部4a,4bが上昇して野菜苗を畝の土中に残すようになる。畝の野菜苗はその左右側部を転動するように設ける鎮圧輪22で土を押えられて倒れないようになる。
【0017】
苗植付体4の上方には、肥料や薬剤等の補助材を収納するホッパ23を設けて、その下端部に設ける操出部24を植付け伝動ケース16から駆動するロッド25で苗植付体4の上昇したタイミングに合わせて開口し、所定量の補助材をシュート26を通して苗植付体4内に供給する。その後に野菜苗を人手で苗植付体4内に供給する。
【0018】
ホッパ23の前側には野菜苗を戴置する苗置き台27を設けている。
野菜苗の植付作業は、走行レバー28を走行にして走行装置1を駆動し、作業レバー29を作業にして苗植付体4を駆動する。そして、この野菜苗移植機の側部に立ったオペレータが苗置き台27から取り出したポット苗を上死点にあって補助材が供給された後の苗植付体4に投入する。肥料などの補助材は苗植付体4が上死点に達するタイミングでホッパ23の操出部24から苗植付体4内へ所定量だけ投入されている。
【0019】
その後、走行装置1の進行に伴って、苗植付体4が降下して畝の土中へ嘴部4a,4bを差し込み、嘴部4a,4bを開き苗と補助材を土中へ残して苗植付体4が上昇する。土中の野菜苗の根元が鎮圧輪22で軽く固められて倒れなくなる。このようなサイクルを繰り返して野菜苗の植付を進行する。
【0020】
図3に示す野菜苗移植機は、肥料等の補助材を土中へ差し込む第一植込み体4aと苗を土中へ差し込む第二植込み体4bを前後に配置した構成で、全体の構成は、図1と同じである。この野菜苗移植機で植付作業を行うと、補助材が野菜苗の一定距離はなれた前側に埋め込まれることになる。
【0021】
この構成で、第一植込み体4aの嘴部4a,4bは第二植込み体4bの嘴部4a,4bよりも早く閉じて補助材を受け入れ、第一植込み体4aと第二植込み体4bの前後間隔を調節可能にして土中の補助材と苗の距離を変更出来るようにし、第一植込み体4aを第二植込み体4bより短くするか第一植込み体4aの降下距離を第二植込み体4bの降下距離より短くして、補助材を苗よりも浅く土に埋めるようにしても良い。
【0022】
図4、5に示す野菜苗移植機は、苗植付体4の上側にターンテーブル型の苗供給装置30を設けた構成で、補助材供給用の小径孔31と苗供給用の大径孔32が円周上等間隔で設けられ、苗植付体4の上で小径孔31と大径孔32の底蓋が開いて補助材と苗が交互に苗植付体4へ供給される。この供給中には苗植付体4は移動せずに待機するようにリンク機構3を構成している。この野菜苗移植機には図2と同じ内部に受体21a,21bを設けた苗植付体4を使用する。小径孔31に補助材を供給し大径孔32に苗を供給するようにすることでオペレータが手作業で供給しても間違わない。なお、ターンテーブル型の苗供給装置30の送り速度を遅くすると共に小径孔31を大径孔32と同じ供給孔の径に変更すると共に苗植付体4の植込みサイクルを速くして苗のみを植付けるようにしても良い。全体の構成は、図1と同じで、苗置き台27の下側へ予備タンク33を吊り下げている。
【0023】
図5と図6は、苗植付体4の別実施例を示している。嘴部4a,4bの外側に補助材導入管34a,34bを設けて、肥料等をこの補助材導入管34a,34bを通して先端の補助材受35に供給する。補助材受35の上には側面視貫通部36を形成して土中へ補助材を落下させた際に苗との間に土を導入して肥料等が直接苗の根に触れないようにしている。なお、この実施例では、受体21a,21bを網状にする必要はない。
【0024】
苗植付体4は、以上の実施例の他に、図7に示すように嘴部4a,4b内面に低反発ゴム36を貼って種芋を植付ける際に落下供給される種芋が中で転げないようにして芽の位置が上になるようにしたり、嘴部4a,4bの外周にゴム板を貼ったり、前後の嘴部4a,4bが開閉の際に当たる部分にゴムを設けて、嘴部4a,4bを閉じる際の音を小さくしたり、図8に示す如く嘴部4a,4bの苗の根より上側になる位置に土が侵入する開口部37を設けて、土中に落下させた苗の根に土が被さって浮き上がりを防ぐようにしたり、嘴部4a,4bの上昇速度を降下速度よりも遅くして苗の連れ出しを防ぐようにすることが良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】野菜移植機を示す側面図
【図2】野菜移植機の一部拡大側面図
【図3】別実施例の野菜移植機を示す側面図
【図4】さらに別実施例の野菜移植機を示す側面図
【図5】別実施例の野菜移植機の一部拡大正面図
【図6】別実施例の野菜移植機の一部拡大側面図
【図7】別実施例の野菜移植機の一部拡大側面図
【図8】別実施例の野菜移植機の一部拡大側面図
【符号の説明】
【0026】
4 苗植付体
4a,4b 嘴部
21a,21b 受体
20 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が開閉する苗植付体(4)に肥料や薬剤等の補助材を供給した後に苗を供給すべく構成すると共に、該苗植付体(4)の底面(20)に溜まった補助材上側に粒状補助材を通過させる目合いの網或いは孔板からなり苗を受ける受体(21a),(21b)を苗植付体(4)と共に開閉する構成とした苗植付装置。
【請求項2】
受体(21a),(21b)の中央側を凹ませて苗植付体(4)内に張設したことを特徴とする請求項1に記載の苗植付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−22207(P2009−22207A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188451(P2007−188451)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】