説明

苗植機

【課題】雨水がマルチフィルム上に溜まっても作業が容易に行える苗植機を提供すること。
【解決手段】上下動機構21により所定の作動軌跡で上下動して圃場に苗を植え付ける苗植付け体20を配列し、該苗植付け体20の後方に覆土鎮圧輪37を設けた苗植機において、覆土鎮圧輪37の接地面に複数の針状の突起37aを設けた苗植機である。覆土鎮圧輪37の接地面に複数の針状の突起37aを設けたので、マルチフィルムが圃場面に敷き込まれていても、複数の針状の突起37aでマルチフィルムに複数穴を開けて、マルチフィルム上の水分が容易に圃場に移行して、マルチフィルム上の水分を除くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機体の前進に合わせて作動する苗植付け体により苗を植付ける苗植機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、マルチフィルムを敷設した圃場で苗植機を走行させる場合にはマルチフィルムが車輪の回転で弛んだり、破損したりしないように、マルチフィルムに接当させながら苗植付作業を行なう苗植機がある。
【特許文献1】特開2002−45012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載の苗植機で作業する場合に、雨水がマルチフィルム上に溜まって、作業がし難くなることがある。
そこで、本発明の課題は、雨水がマルチフィルム上に溜まっても作業が容易に行える苗植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、圃場に苗を植え付ける苗植付け体(20)を配列し、該苗植付け体(20)の後方に覆土鎮圧輪(37)を設けた苗植機において、覆土鎮圧輪(37)の接地面に複数の針状の突起(37a)を設けた苗植機である。
【0005】
請求項2記載の発明は、圃場に苗を植え付ける苗植付け体(20)を配列し、該苗植付け体(20)の後方に覆土鎮圧輪(37)を設けた苗植機において、上下動して下部を地面に押し付けることにより左右方向に排水溝を作る溝付け具(95)を設けた苗植機である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の本発明によると、各々覆土鎮圧輪(37)を設けた苗植機において、覆土鎮圧輪(37)の接地面に複数の針状の突起(37a)を設けたので、マルチフィルムが圃場面に敷き込まれていても、複数の針状の突起(37a)でマルチフィルムに複数穴を開けて、マルチフィルム上の水分が容易に圃場に移行して、マルチフィルム上の水分を除くことができる。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、上下動する溝付けバー(95)(図3)により、圃場に溝を作ることにより、溝内を水が流れやすくなり、排水性が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施の一形態の苗植機1を以下に説明する。図1には苗植機1の全体側面図を示し、図2には、苗植機1の全体平面図を示す。なお、以下の説明では、操縦ハンドル2を配置した側を後とし、その反対側、即ちエンジン3を配置した側を前とする。そして、機体前側に向かって右手側を右とし、左手側を左とする。
【0009】
この苗植機1は、機体を前進走行可能とする走行車体4と、該走行車体4の後部に設けた歩行操縦用の操縦ハンドル2と、圃場に苗を植付ける苗植付装置5と、該苗植付装置5に苗を供給する苗供給装置6を備えている。
【0010】
走行車体4は、図示例では、エンジン3と、該エンジン3の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の駆動車輪である後輪7と、該後輪7の前方に転動自在に支持した左右一対の前輪8とを備えている。
【0011】
エンジン3の後側にはミッションケース9を配置し、そのミッションケース9は、その左側部からエンジン3の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン3の左側部と連結している。このケース部分にエンジン3の出力軸が入り込んでミッションケース9内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース9の左右両側部には、前後に長い走行用の左右伝動ケース10の前部を回動自在に取り付けている。
【0012】
具体的には、走行用の伝動ケース10の前部の機体内側部に、該伝動ケース10と一体回転可能に設けたアクスルケース11(図2)を設け、このアクスルケース11をミッションケース9の左右両側部に回動自在に取付けて、走行用の左右伝動ケース10をミッションケース9の左右両側部に対して各々回動自在に取付けている。そして、この走行用の伝動ケース10の後部側方に突出させた駆動軸12に後輪7を装着している。伝動ケース10の前部の回動軸心位置には、ミッションケース9から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸の先端が入り込んで、ミッションケース9内の走行部系変速伝動部を経た走行用の動力が伝動ケース10内の伝動機構に伝達される。そして、走行用の動力は伝動ケース10内の伝動機構を介して、伝動ケース10の後端側の駆動軸12に伝動し、後輪7が駆動回転するようになっている。
【0013】
なお、ミッションケース9内に設けた左右それぞれのサイドクラッチ(図示せず)により、左右各々の後輪7の駆動を断つことができる構成になっている。従って、機体を旋回させるときには、前記サイドクラッチにより旋回内側となる左右一方の後輪7を非駆動状態にしてスム−ズに旋回できるようになっている。
【0014】
また、走行用の伝動ケース10には、該伝動ケース10の前部側を回動支点として後輪7を上下させるよう上下回動する駆動手段が連結している。具体的には、伝動ケース10のミッションケース9への取付部には、上方に延びるアーム13を一体的に取り付けていて、これがミッションケース9に固定された昇降用油圧シリンダA(図示せず)のピストンロッド先端に取り付けた連結体の左右両側部と連結している。左右一方側(右側)は、ロッドで連結し、他方側(左側)は、機体の傾斜に応じて伸縮作動可能な左右傾斜制御用油圧シリンダB(図示せず)で連結している。
【0015】
昇降用油圧シリンダAが作動してそのピストンロッドが機体後方に突出すると、左右の前記アーム13は前方に回動し、これに伴い伝動ケース10が下方に回動して、機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダAのピストンロッドが機体前方に移動してシリンダ内に引っ込むと、左右の前記アーム13は前方に回動し、これに伴い伝動ケース10が上方に回動して、機体が下降する。この昇降用油圧シリンダAは、畝面に接地して機体と畝面との上下間隔の変動にともなって動作するセンサー14によって作動する。センサー14の動作は機体に対する畝上面高さを検出する動作となり、そのセンサー14の検出動作に基づいて機体を畝上面高さに対して設定高さになるよう昇降用油圧シリンダAが作動するよう構成している。
【0016】
また、操縦ハンドル2近傍に配置した植付・昇降操作具15の人為操作によって機体を手動上昇或は下降させるよう昇降用油圧シリンダAが作動する構成ともしている。なお、この植付・昇降操作具15は、苗植付装置5及び苗供給装置6の駆動の入切も行える構成となっている。
【0017】
また、前記左右傾斜制御用油圧シリンダBが伸縮作動すると、その左右傾斜制御用油圧シリンダBと連結する左側のアーム13が回動して、左側の後輪7のみを上下動させ、機体を左右に傾斜させる。この左右傾斜制御用油圧シリンダBは、後述の畝面の左右傾斜を検出する左右傾斜センサCの検出結果に基づいて機体を畝面の左右傾斜に平行になるように作動する構成としている。
【0018】
前記左右前輪8は、エンジン3下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた横フレーム16の左右両側部に、上下に長い縦フレーム17を取付け、その下端部側方に固着した車軸18に回転自在に取り付けている。従って、左右前輪8は、機体の左右中央の前後方向の軸心周りにローリング動自在となっている。横フレーム16の左右両側部に対して縦フレーム17を上下調節可能に設けていて、前輪8の高さ調節をすることができるようになっている。
【0019】
前記操縦ハンドル2は、機体後部に設けていて、後輪7の駆動軸12より機体後側に位置している。具体的には、ミッションケース9に前端部を固定した機体フレーム19の後端部に取り付けている。機体フレーム19は、機体の左右中央で後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は、機体フレーム19の後端部から左右に後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2のグリップ部2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2aは、作業者がそのグリップ部2aを楽に手で握れるように適宜高さに調節できる構成となっている。なお、図例ではグリップ部2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部としても良い。
【0020】
また、上記走行車体4は、接地して駆動回転する走行駆動部を、前後車輪を備えた四輪式の走行駆動部の構成としたものであるが、図3に示すように前輪部と後輪部を共に平行型クローラ走行装置81,71とする構成、図4に示すように前輪部をソリ式の走行装置83とし、後輪部を側面視三角形状にクローラ走行装置72とする構成、図5に示すように前輪部をタイヤ式の車輪8とし、後輪部を側面視三角形状にクローラ走行装置72とする構成とすることもできる。
【0021】
図3に示すように前輪部にタイヤ式車輪8の代わりに前後一対のスプロケットで駆動する平行型クローラ走行装置81を取り付け、後輪部にもタイヤ式車輪7の代わりに前後一対のスプロケットで駆動する平行型クローラ走行装置71を取り付け、これらのクローラ71,81には泥よけカバー71a,81aと該カバー81a,71aにそれぞれステップ81a1,71a1を設けている。
【0022】
図3に示す後輪部の平行型クローラ71の前後一対のスプロケットの中間部にチェンケース10内のチェーン駆動軸12を配置すると、クローラ走行装置71とタイヤ式車輪7を取り替えが容易になるので、前記クローラ走行装置71とタイヤ式車輪8の取り替え作業性が良くなる。
【0023】
また、図3の二点鎖線で示すように、これらクローラ走行装置81,71の長手部分を縦方向に立てて使用することもできる構成としている。クローラ走行装置81,71の長手部分を縦方向に立てるためには、前後のクローラ走行装置81,71の回動支持軸81b,71bを機体に設置しており、その回動支持軸81b,71bはクローラ走行装置81,71の上辺部付近に設ける。
【0024】
このようにクローラ走行装置81,71の長手部分を縦方向に立てた場合には、クローラ走行装置81,71の接地幅が比較的少なくなるので、直進性が優れており、天候の良い時などには機体の直進性が優れたものとなる。その結果、クローラ走行装置81,71の長手部分を縦方向に立てた場合には路上走行性も良い。
このときクローラ走行装置81,71のクローラカバー81a,71aに、それぞれステップ81a1,71a1を設けることにより足場とすることができる。
【0025】
また、本発明の他の実施例の苗植機の前輪部には図4に示すようにタイヤ式車輪8の代わりにソリ83を取り付け、該ソリ83の迎い角を変えることができる構成とする。また、後輪部にもタイヤ式車輪7の代わりに側面視三角形状クローラ走行装置72を取り付ける。そして該クローラ走行装置72には泥よけカバー72aを設けておき、該カバー72aにステップ72a1を取り付け、該ステップ72a1を利用して人間が乗降し易くしている。また、図示していないが、前輪部にもタイヤ式車輪8の代わりに三角形状クローラ走行装置72を取り付けて、該クローラ走行装置72に泥よけカバーを設け、該カバーにステップを設けておくと、該ステップを利用して前側から人間が乗降し易くなる。
【0026】
図5に示す本発明の一実施例の苗植機では、前輪部はタイヤ式車輪8とし、後輪部を側面視三角形状クローラ走行装置72とすることもできる。この場合には、三角形状のクローラ走行装置72の接地部大きさが大、中、小と使い分けができるように、三角形状のクローラ走行装置72の各辺の大きさが異なってる。例えば、地面がぬかるんでいるときは図5(a)に示すように大辺を接地部として用い、通常作業時ときは図5(b)の中辺を接地部として用い、路上走行時や旋回時は図5(c)の小辺を接地部として用いる。なお、チェンケース10に設けられる駆動軸12は三角クローラ走行装置72の重心位置にある。
【0027】
上記各種の苗植機の前輪部又は後輪部に設けるタイヤ式の各車輪8,7として図7の正面図に示す2重構造のクローラタイプのタイヤ式車輪90,90を隣接配置した構成とし、隣接するタイヤ式車輪90,90は手動により互いの間隔を変更自在として、全体としてタイヤ式車輪90,90の幅を変えることができるようにした。
【0028】
また図6に示すように、後輪部の三角形クローラ走行装置72は、駆動輪72bと従動輪72c、72dを備え、その接地部側の2つのスプロケット(従動輪)72c,72dを連結している伸縮自在の2重円筒式の連結アーム73の間隔をアジャスタ74で調整可能にして、クローラ走行装置72の接地範囲を変更することができる構成としても良い。
【0029】
また、このクローラ走行装置72は圃場の状態などに対応できるように前後傾斜角度を次の構成により変更できる。
伝動ケース10の前端部にある回動軸部10a(伝動ケース10の回転中心)と一体の第一支持片36aと伝動ケース10の後部に設けた駆動軸12に立設した第二支持片36bとがリンク36cで連結しており、第一支持片36aと第二支持片36bとの間の長さを、リンク36cのアジャスタ36dで変更可能になっている。第二支持片36bは駆動輪72bと従動輪72cとの間を連結するクローラフレーム75と一体的に駆動軸12を中心として回動可能である。
【0030】
従って、第一支持片36aと第二支持片36bとの間にあるリンク36cの間隔がアジャスタ36dにより変更されると、第二支持片36bが駆動軸12を中心に揺動する。その結果クローラ走行装置72の前後方向の圃場面に対する傾斜角度が変更される。
【0031】
苗植付装置5は、先端が下方に向かうくちばし状の苗植付け体20と、該苗植付け体20の下端部が圃場面より上方となる位置と圃場面より下方となる位置とに苗植付け体20を上下動させる上下動機構21と、くちばし状の苗植付け体20の下端部が閉じて上方から苗を受け入れて内側に苗を収容可能にする閉状態と苗植付け体20の下端部が左右に開いて内側に収容した苗を下方に放出可能にする開状態とに苗植付け体20を開閉する開閉機構とを備えている。
【0032】
そして、苗供給装置6は、苗を上方から受け入れて内側に苗を収容する複数の苗収容体22と、該苗収容体22を苗植付け体20の上方を通過するように周回移動させる移動機構(スプロケット)23(図2)と、苗植付け体20の上方位置で苗収容体22の底部を開放して内側に収容した苗を落下させて苗植付け体20に苗を供給する苗落下供給機構となる開放機構24(図9)を備えている。
【0033】
苗植付装置5は、苗植付け体20を左右に略等間隔となる設定間隔で複数体並べて配備した複数条植の構成としている。本例では、苗植付け体20を左右に設定間隔で四体並べて配備した四条植えの構成としている。
【0034】
四体の苗植付け体20は、ミッションケース9から伝動される伝動ケース26の左右両側部に設けた上下動機構21に二体づつ装着している。なお、前記伝動ケース26は、機体フレーム19に下部を固定した取付部材25の上部に固着されている。前記上下動機構21は、伝動ケース26に対して前部を上下回動自在に装着し後部を苗植付け体20に連結した上側と下側の昇降リンクを備えている。そして、別途設けた駆動機構により伝動ケース26内からの動力で上下の昇降リンクを上下動させ、左右の苗植付け体20が上下動する構成となっている。そして、上昇位置では苗植付け体20の下端部が圃場面より上方に位置し、下降位置では苗植付け体20の下端部が圃場面より下方に位置する。苗植付け体20の開閉機構は、伝動ケース26内からの動力で作動し、上下動機構21の作動に連動して、苗植付け体20が下降下端位置に達すると該苗植付け体20の下部側を左右に開いて下方に開放状態とし、苗植付け体20が上昇上端位置に達すると該苗植付け体20の下部側を閉じて閉塞状態とする構成である。
【0035】
四体の苗植付け体20のうち、左右内側の苗植付け体20は左右外側の苗植付け体20より後側に位置している。また、左右の上下動機構21は、180度位相を異ならせて作動する構成となっており、左右一方の外側の苗植付け体20と左右他方の内側の苗植付け体20とが圃場において同じ前後位置に苗を植付けるようにしている。従って、この苗植機1は、千鳥状に4条の苗を植付ける構成となっている。
【0036】
苗供給装置6は、上下に開口する筒状体と該筒状体の下側の開口部を開閉する底蓋27(図9)とを有し互いにループ状に連結する複数の苗収容体22と、該苗収容体22を前記苗植付け体20の上方近傍を通過する状態で機体平面視左右に長い長円形状のループ状の軌跡で左回りに周回動させる移動機構23と、前記苗収容体22の底蓋27を苗植付け体20の上方位置で開放する開放機構24を設けた構成である。
【0037】
この苗供給装置6は、前記苗収容体22の外周に円筒外周部を形成し、該円筒外周部に外側から回動自在に係合する係合部(丸孔)を有して二つの苗収容体22を連結する連結体を複数設け、該連結体の係合部を苗収容体22の円筒外周部に回動自在に係合し該円筒外周部を回動軸として隣の苗収容体22が回動自在に連結する状態として複数の苗収容体22を互いに連結した構成としている。即ち、苗収容体22と連結体とで無端チェーンのように連結した構成である。これにより、苗収容体22は、直線的に移動する部分28(図2)でも円弧状に移動する部分29でも隣接する苗収容体22との間隔が変わらないので、苗収容体22から苗植付け体20に苗を供給する個所で苗収容体22が苗植付け体20に対して位置ズレが生じにくくなり苗供給が適正に行われて適確な苗の移植ができる。苗収容体22の個数と周回動する範囲を設定したうえで、苗収容体22の上側開口部を可能な限り広く形成できて、機体のコンパクト化を図りつつ苗収容体22への苗補給作業をできるだけ容易に行えるものとなる。
【0038】
苗供給装置6の移動機構23は、無端チェーンのように互いに連結する苗収容体22を左右に設けた移動機構としてのスプロケット23の外周の円弧状切欠部に係合させて巻き掛け、この左右のスプロケット23を伝動ケース26内から取り出した動力で駆動回転することにより、各苗収容体22を周回動させる構成としている。
【0039】
苗収容体22が周回する周回移動経路は、平面視で左右方向に延びる直線状部分28とスプロケット23により前記直線状部分28から前側又は後側に円弧状に曲がる円弧状部分29とを備えた長円状であり、左右の後輪7より機体内側に配置している。また、苗植付け体20は、後輪7の車軸12位置より後側に配置している。
【0040】
図9に示すように、苗供給装置6の開放機構24は、苗収容体22の周回軌跡下方で底蓋27が下方に回動しないように底蓋27を下方から支持する支持体30を設け、この支持体30を苗植付け体20の上方位置には設けないようにすることで、苗植付け体20の上方位置を苗収容体22が通過するとき、底蓋27が支持体30による支持状態が解かれて下方回動し苗収容体22内の苗が下方に落下可能になるように開放する構成としている。苗収容体22の底蓋27が開くタイミングは、苗植付け体20が苗収容体22の直下まで上昇したときとなるように調整しておく。また、上記構成に代えて、苗植付け体20が苗収容体22の直下まで上昇したときに、苗植付け体20に設けた開放作動部材が、苗植付け体20の上方に位置する苗収容体22の底蓋27が開くのを規制する規制手段を規制解除動作させる構成も採用できる。
苗供給装置6は、四体の苗植付け体20に対して苗収容体22が一回りで周回移動して苗を供給する構成としている。
【0041】
このように四体の苗植付け体20に対して苗収容体22が一回りで周回移動して苗を供給する構成とした場合は、各々の苗植付け体20に対応して落下供給する苗を収容する苗収容体22を各別に設けて、この各別の苗収容体22を各々1個づつ備えて周回移動経路で隣接させた4個の苗収容体22からなる苗収容ユニットを構成し、図8に底蓋27の突起35を、図9に底蓋27の突起35と支持軸の関係を示すように、落下供給位置31で苗収容体22の符号3を記した底蓋27が開き、落下供給位置32で苗収容体22の符号1を記した底蓋27が開き、落下供給位置33で苗収容体22の符号2を記した底蓋27が開き、落下供給位置34で苗収容体22の符号4を記した底蓋27が開く構成となっており、この符号1乃至4を記した底蓋27を有する4個の苗収容体22が1つの苗収容ユニットを構成し、該苗収容ユニットが連続して設けられて周回移動するループ状の苗収容ユニットが形成されている)、移動機構23により前記苗収容ユニットを同一の周回移動経路で複数組(6組)周回移動させる構成とし、計24個の苗収容体22を周回移動させる。
従って、四体の苗植付け体20に対応する4箇所の落下供給位置31,32,33,34を、苗収容体22の同一の周回移動経路上に設定している。
【0042】
また、左右一方側の二体の苗植付け体20が上下動機構21により上死点位置まで上動したとき、該苗植付け体20に落下供給する各々の苗収容体22が対応する落下供給位置に同時に到達する構成となっており、これから上下動機構21が半周期作動して左右他方側の二体の苗植付け体20が上死点位置まで上動したとき、該苗植付け体20に落下供給する各々の苗収容体22が対応する落下供給位置に同時に到達する構成となっている。
【0043】
なお、厳密には、苗植付け体20が上死点位置に到達する手前のタイミングで苗収容体22の底蓋27が開き始め、苗植付け体20が上死点位置に到達したときには前記底蓋27が確実に開いた状態となるよう設定しており、苗植付け体20への苗供給が適確に行われるようにしている。従って、苗植付装置5の上下動機構21の作動と移動機構23による苗収容ユニットの移動とは同じ周期で行われ、この半周期の作動で苗収容体22がその配列の2ピッチ分移動する構成となっている。
【0044】
これにより、苗収容体22が4箇所の落下供給位置31,32,33,34を直列的に通過しながら四体の苗植付け体20に対して苗供給漏れが生じることなく苗を供給でき、且つ4箇所の落下供給位置31,32,33,34を通過した後に苗を供給しなかった苗収容体22が生じないよう余すことなく苗植付け体20に対して苗を供給できるものとなり、苗供給作業が余裕をもって行え、且つ四体の苗植付け体20に対して確実に苗を供給できる。
【0045】
また、少なくとも、苗収容体22の周回移動方向下手側の苗植付け体20に落下供給する苗収容体22が、苗収容体22の周回移動方向上手側の苗植付け体20の上方を通過するときは、その苗収容体22については開放動作されないようにする開放機構24を設けている。
【0046】
この開放機構24について説明すると、苗収容体22の底蓋27に突起35を設け、この突起35を当該苗収容体22の落下供給位置32,33,34より周回移動方向上手側の落下供給位置31,32,33を通過するときに下方から支持する支持軸30を設けている。なお、前記底蓋27は、周回移動方向下手側の回動支点軸回りに回動して周回移動方向上手側から開く構成となっている。
【0047】
具体的には、図8に示すように、各々の落下供給位置31,32,33,34に対応する苗収容体22ごとに底蓋27の突起35の形状を異ならせており、この突起35は、苗収容体22の周回外側に短く突出するもの、苗収容体22の周回内側に短く突出するもの、苗収容体22の周回内側に長く突出するもの及び苗収容体22の周回外側に長く突出するものの4種類を落下供給位置31,32,33,34に対応して設定している。
【0048】
一方、支持軸30は、苗収容体29の周回移動経路に沿って延び、底蓋27の突起35の種類に対応して該突起35を支持するべく、苗収容体22の周回内側から外側まで位置を異ならせた4種類のもので構成される。
【0049】
従って、周回移動方向上手側(左側)から順に第一乃至第四の落下供給位置31,32,33,34と定義すると、第一の落下供給位置31では周回内側から3番目の支持軸30を欠如させ、第二の落下供給位置32では周回内側から2番目の支持軸30を欠如させ、第三の落下供給位置33では周回内側から1番目の支持軸30を欠如させ、第四の落下供給位置34では周回内側から4番目の支持軸30を欠如させている。なお、周回内側から3番目の支持軸30は第四の落下供給位置34でも欠如し、周回内側から2番目の支持軸30は第三の落下供給位置33でも欠如し、第三及び第四の落下供給位置33,34で前記2及び3番目の支持軸30が当該落下供給位置33,34で開くべき底蓋27の開放の支障にならないようにしている。
【0050】
なお、周回移動経路の前側の直線状部分28等、苗補給のために全ての底蓋27を閉じておく必要がある区域では、第一乃至第四番目の支持軸30を全て配置してもよいが、底蓋27の中央付近を支持する共通の支持軸30aを設けた構成とすれば、構成が簡単になる。
【0051】
第一乃至第四の落下供給位置31,32,33,34のうち、第二及び第三の落下供給位置32,33は周回移動経路の直線状部分28に位置し、第一及び第四の落下供給位置31,34は周回移動経路の円弧状部分29で第二及び第三の落下供給位置32,33が位置する直線状部分28とは前後反対側(前側)の直線状部分28に近い位置にある。
【0052】
これにより、隣接する落下供給位置31,32,33,34の前記周回移動経路に沿う互いの配列間隔を異ならせると共に、前記互いの配列間隔のうち狭い配列間隔が前記直線状部分28に位置し広い配列間隔の少なくとも一部が前記円弧状部分29に位置するように第一乃至第四の落下供給位置31,32,33,34が設定され、左右方向における第一乃至第四の落下供給位置31,32,33,34の互いの間隔が略同一となるよう設定されている。
【0053】
また、第二乃至第四の落下供給位置32,33,34において対応する苗植付け体20の上方位置で適確に苗を供給できるように、第一乃至第四の落下供給位置31,32,33,34を周回移動経路の左右中央に対して周回移動上手側に若干ずらせて設定している。
【0054】
この苗植機1は、苗植付け体20が植付けた苗に対して覆土鎮圧するための覆土鎮圧輪37を各苗植付け体20の苗植付け個所の各後方左右両側近傍位置に設けている。即ち、4つの苗植付け体20に対して左右方向に4組の覆土鎮圧輪37を並べて配置している。
【0055】
この覆土鎮圧輪37は転動輪である。その構成は、図10の覆土鎮圧輪の支持構成の要部の作用説明用平面図と、図11の覆土鎮圧輪の支持構成を示す要部の作用説明用側面図に示すように、機体に固定された取付部材25にパイプ材38aを固定し、その内部を貫通して回動自在に左右方向の回動支軸38を設けている。そして、最も右側の苗植付け体20に対する覆土鎮圧輪37は、回動支軸38に先端側を固定した右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39aに遊転自在に装着されている。また、他の3つの苗植付け体20に対する覆土鎮圧輪37は、回動支軸38に先端側を回動自在に装着した内覆土鎮圧輪支持フレ−ム39b,39cと左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dに各々遊転自在に装着されている。
【0056】
前記覆土鎮圧輪支持フレ−ム39は、平面視で前側(回動支点軸38側)が開放するようなU字型であり、パイプフレ−ムを適宜折り曲げて構成されている。この覆土鎮圧輪支持フレ−ム39の後端部には各植付条ごとに上下方向に延びるロッド40の下端を連結し、各植付条のロッド40(計4本)の上端を左右に延びるパイプ状の左右フレ−ム41の適宜位置で貫通させ、前後方向のピンで前記左右フレ−ム41に対してロッド40が左右方向に移動しないようにしている。
【0057】
そして、最も右側の苗植付け体20に対する覆土鎮圧輪37を装着した右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39aに固着された回動支軸38の左端部は、左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの左外側部まで延設されて後方に向けて設けた検出部材38cの基部が固着されている。
【0058】
一方、左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dには左外側方に向けて設けた板体39d’の基部が固着してあり、該板体39d’にインナーワイヤの先端を固着し、前記検出部材38cにアウターワイヤの先端を固着して圃場面(畝上面)の左右傾斜を検出するセンサワイヤSが設けられている。
【0059】
即ち、回動支軸38に固着された右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39aと検出部材38cとは上下方向に同じ動きをし、左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dは回動支軸38に回動自在に装着されているので、圃場面(畝上面)に左右傾斜があると検出部材38cと板体39d’との間隔Lが変動し、その変動をセンサワイヤSが検出する。このように、最も右側の苗植付け体20に対する覆土鎮圧輪37と最も左側の苗植付け体20に対する覆土鎮圧輪37を左右傾斜センサCとしての機能を持たせている。
【0060】
そして、センサワイヤSの他端は、図示しない前記左右傾斜制御用油圧シリンダBを伸縮作動させるローリング制御バルブに連携されており、例えば圃場面(畝上面)の右側が左側よりも高くなった場合には、右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39aに装着された覆土鎮圧輪37は圃場面(畝上面)に沿って上動するので、図11に示すように右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39aも上動し、回動支軸38を介して検出部材38cも上動回動して検出部材38cと板体39d’との間隔Lが所定値よりも広くなる方向に変動し、その変動にてセンサワイヤSのインナーワイヤが引かれてローリング制御バルブが左右傾斜制御用油圧シリンダBを縮小作動させる方向に切り替えられる。
【0061】
すると、左側の後輪7は上動するために機体は左側が低くなる方向に傾斜する。そして、圃場面(畝上面)に沿った状態まで機体が傾斜すると、検出部材38cと板体39d’との間隔Lが所定値に戻るので、センサワイヤSにてローリング制御バルブは中立になり、左右傾斜制御用油圧シリンダBの作動は停止する。
【0062】
逆に、圃場面(畝上面)の左側が右側よりも高くなった場合には、左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dに装着された覆土鎮圧輪37は圃場面(畝上面)に沿って上動するので、左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dも上動し、板体39d’も上動して検出部材38cと板体39d’との間隔Lが所定値よりも狭くなる方向に変動し、その変動にてセンサワイヤSのインナーワイヤが押されてローリング制御バルブが左右傾斜制御用油圧シリンダBを伸長作動させる方向に切り替えられる。
【0063】
すると、左側の後輪7は下動するために機体は左側が高くなる方向に傾斜する。そして、圃場面(畝上面)に沿った状態まで機体が傾斜すると、検出部材38cと板体39d’との間隔Lが所定値に戻るので、センサワイヤSにてローリング制御バルブは中立になり、左右傾斜制御用油圧シリンダBの作動は停止する。
【0064】
このように、左右両側の覆土鎮圧輪37の高さ変動により圃場面(畝上面)の傾斜を検出して、機体を圃場面(畝上面)の傾斜に沿うように制御する構成にすると、適正な圃場面(畝上面)の傾斜検出が行えて、圃場面(畝上面)に複数条(この実施例では4条)植付ける苗植機1でも、圃場面(畝上面)の傾斜状態に応じて各条の植付が適正に行なえ、良好な植付作業が行える。
【0065】
また、左右一端側の覆土鎮圧輪37を装着した右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39aに固着された回動支軸38を他の覆土鎮圧輪37を装着した内覆土鎮圧輪支持フレ−ム39b、39cと左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの回動支軸として利用し、回動支軸38を左右反対側の覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの外側部まで延設して、覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの外側部に傾斜を検出する検出部D(検出部材38c・板体39d’・センサワイヤS)を設けた構成としたので、簡潔な構成で覆土鎮圧輪37を利用した左右傾斜センサCができる。
【0066】
更に、最も外側に位置する覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの外側部に検出部D(検出部材38c・板体39d’・センサワイヤS)を配置しているので、機体側方から該検出部Dの調整やメンテナンスが行なえて作業性が良い。
【0067】
なお、上記の機体に前部を回動自在に支持した左右伝動ケース10の先端部に各々設けた左右駆動用後輪7と片方の左伝動ケース10を回動させて片方の左後輪7を上下移動させる左右傾斜制御用油圧シリンダBと左右傾斜センサCの検出に基づいて左右傾斜制御用油圧シリンダBを作動させるローリング制御バルブとによって、左右傾斜センサCによる苗植付け圃場面の左右方向の高低差の検出に基づいて左右最外側の苗植付け体20の圃場面に対する高さを所定の高さに制御する制御機構を構成している。
【0068】
本実施例の苗植機1の鎮圧輪37の回転体表面には複数の針状突起物37aを取り付け、マルチフィルフィルムの所々に穴を開けることができる構成にしている。そのためマルチフィル上に水留まりができない。
また、前輪部にも図示しないが前輪両脇に設けた一対の回転体の表面に針状突起物を取り付けて置くと前後の車輪部でマルチフィルムに穴を開けることができる。
【0069】
さらに、2つの苗植え付け体20の間にL字状の溝付けバー95(図3)を設ける。該バー95の圃場との接触部分は左右方向に延びているので圃場に左右方向の溝を付けることができる。その溝からマルチフィルム上の水がフィルムの両側に向けて流れ出易くなる。この溝付けバー95を上下移動調節できるようにしておくと、マルチフィルム上にできる溝の深さを変えることができる。
【0070】
また、鎮圧輪37に穴(図示せず)を開け、鎮圧輪37の中から外に向けて水を出す構成とすることで、鎮圧輪37の接地面に泥が付着することを防止することができる。
さらに、図13に鎮圧輪37の正面図を示すように、鎮圧輪37の厚みを広、狭変化させることで、鎮圧輪37の表面に泥が付着しないようにすることができる。
【0071】
また、エンジンから鎮圧輪37へ変速装置を介して伝動する構成で、鎮圧輪37の回転数を自在に変える事ができようにすると、鎮圧輪37の圃場面に対するスリップ率が変わるため、鎮圧力を変更できる効果がある。
【0072】
また、全ての左右覆土鎮圧輪37を各々独立して上下動自在に構成することにより、かまぼこ状の畝(畝上面が円弧状に形成された畝)でも適切に植付けた苗の鎮圧作業が適正に行なえて良好な苗の移植作業が行える。
【0073】
そして、前記左右フレ−ム41は、機体フレーム19に固着された左右方向の回動軸42回りに前後乃至上下に回動する回動ア−ム43に固着されている。なお、前記回動軸42は機体フレーム19から左右に延設され、該回動軸42の両端部に回動ア−ム43を左右それぞれ設け、左右それぞれの回動ア−ム43が左右フレ−ム41の適宜位置を支持した構成となっている。そして、左右の回動ア−ム43を繋ぐようにU字状の回動レバー44を固着して設けており、該回動レバー44が左右の回動ア−ム43と一体で回動するようになっている。従って、該回動レバー44を回動操作することにより、左右の回動ア−ム43を回動させて全ての植付条(計4条分)の覆土鎮圧輪37を同時に上下動させることもできる。よって、前記覆土鎮圧輪支持フレ−ム39、ロッド40、左右フレ−ム41、回動ア−ム43及び回動レバー44等により、覆土鎮圧輪支持機構を構成している。
【0074】
操縦ハンドル2近傍には機体を走行させずに苗植付装置5及び苗供給装置6のみを駆動させるための空苗植えレバ−45を設けており、該空苗植えレバ−45により苗植付装置5及び苗供給装置6のみを駆動させてこれらの装置5,6の作動の確認や点検が行える構成となっている。図1に示すように前記空苗植えレバ−45を下向きになるよう操作すると、空苗植え機能がオフとなって植付・昇降操作具15の操作で機体を走行させながら苗植付装置5及び苗供給装置6を作動させる通常の植付が行える状態となる。一方、前記空苗植えレバ−45を上向きになるよう操作すると、空苗植え機能がオンとなって走行停止状態で苗植付装置5及び苗供給装置6のみが作動する。
【0075】
この苗植機1は、苗供給装置6に苗を補給する作業者が乗車して苗補給作業が行えるよう、作業者が座る作業者用座席46を設けている。具体的には、苗供給装置6の前側となる機体左右中央位置に後向きに作業者用座席46を配置している。
【0076】
この座席46に座る作業者は、苗供給装置6の前側部に向って後側向き姿勢で着座して、苗供給装置6の前側部、特に苗収容体22の周回移動経路における前側の直線状部分28に対して苗補給作業を行う。また、本例の苗植機1は、畝溝を走行する後輪7の後側で機体後部に設けた操縦ハンドル2の左右方向外側に、作業者が立って前に歩きながら苗供給装置6の後側部に苗を補給する作業を可能とする作業空間Wを形成しており、この作業空間Wに立つ作業者から苗供給装置6の後側部に対して苗補給作業を行うことができる。
【0077】
なお、座席46を支持する略水平方向に延びる座席フレーム47を設け、座席46は前記座席フレーム47に対して後側の回動支点軸回りに後方へ回動できる構成となっており、前記座席フレーム47よりその近傍に位置する燃料タンクの給油キャップ48が低い位置にある。これにより、燃料タンクに燃料を補給するときは、座席46を後方へ回動させ、座席フレーム47に燃料を収容する補給タンク等を置いて、手動ポンプ等により容易に燃料タンクへ燃料を補給することができる。
【0078】
作業者用座席46の後側及び左右両側には、ステップ49を設けている。このステップ49は、機体側面視で作業者用座席46の下方位置から前輪8の上方位置すなわち機体前端近傍にわたって延設している。従って、作業者は、機体前方を介して該ステップ49に乗降することができる。後輪7は大径車輪で、前輪8は小径車輪であり、機体側面視で、この小径車輪の前輪8の上方にステップ49の前側部分が位置するように設けている。走行用の伝動ケース10を下方回動させて後輪7を下降させると、機体が前下がりに傾斜して前記ステップ49も前側に傾斜するため、作業者が機体前方と該ステップ49との間で容易に乗降することができる。また、後輪7を下降させても、機体前方の地面と該ステップ49との間の段差があまり大きくならないので、容易に乗降することができる。
【0079】
作業者用座席46の左右両側で機体側面視で後輪7の車軸12の上方位置に、苗供給装置6に補給する苗を収容可能な苗載台50を設けている。
苗供給装置6の上方部には前方が低くなるように傾斜して配置した後部苗載台51が配置されている。この後部苗載台51は支持フレーム52により苗供給装置6のフレーム部に固定支持されており、セルトレイTを長手方向が左右方向に向くようにして2個載置して少しスペースSPがある前後長さにした載置台部53と、セルトレイTの前後方向の脱落を防止する前後壁部54とから構成している。そして、載置台部53の後半部分53aは回動支軸64を回動支点として矢印イ−ロ方向に回動固定自在に構成されている。
【0080】
植付作業者が一人で作業者用座席46に着座して苗供給装置6に苗を補給する作業をする場合には、載置台部53の後半部分53aを図1の矢印イ方向に上動させた実線で示す状態にして、2個載置されたセルトレイTのうち手前側(下方側)に位置するセルトレイTから苗を取り出して苗供給装置6に苗を補給する。そして、手前側(下方側)に位置するセルトレイTの苗がなくなると、手前側(下方側)に位置するセルトレイTを後部苗載台51から取ると、上方にあるセルトレイTが自動的に下方に滑り落ちて来て、苗補給作業が容易な位置となる。よって、効率よく苗の移植作業が行える。
【0081】
また、植付作業者が二人若しくは三人で作業者用座席46に着座して苗供給装置6に苗を補給する作業をする作業者と畝溝を走行する後輪7の後側で機体後部に設けた操縦ハンドル2の左右方向外側の作業空間W(図2)に立って前に歩きながら苗供給装置6に苗を補給する作業者とがいる場合には、載置台部53の後半部分53aを図1の矢印ロ方向に下動させた点線の状態にすると、載置台部53の前半部分は前方が低くなるように傾斜した状態で後半部分は後方が低くなるように傾斜した状態となり、作業者用座席46に着座して苗供給装置6に苗を補給する作業をする作業者は載置台部53の前半部分の前方が低くなるように傾斜した状態に載置されたセルトレイTから苗を取り出して苗供給装置6に苗を補給し、作業空間Wに立って前に歩きながら苗供給装置6に苗を補給する作業者は後半部分の後方が低くなるように傾斜した状態に載置されたセルトレイTから苗を取り出して苗供給装置6に苗を補給すると、その作業性が非常に良くて効率よく苗の移植作業が行える。
【0082】
左右最外側の右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39a及び左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの左右外側部位には、各々左右サイドマーカ55(図2)が設けられている。この左右サイドマーカ55は、各々左右移動調節及び上下移動調節自在に構成されており、苗植付作業時に苗を植付けている畝の左右外側位置に合わせておき、作業者用座席46に着座して苗供給装置6に苗を補給する作業をする作業者が畝の左右外側位置に左右サイドマーカ55が位置しているか視認して、機体が畝に沿って走行しているか確認する。この時、左右サイドマーカ55は左右最外側の右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39a及び左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの左右外側部位に設けられているので、視認性が良くて作業性が非常に良い。
【0083】
また、畝の端で機体を旋回させる際に、回動レバー44を回動操作して全ての植付条の覆土鎮圧輪37を同時に上動させるが、この時、左右サイドマーカ55は左右最外側の右覆土鎮圧輪支持フレ−ム39a及び左覆土鎮圧輪支持フレ−ム39dの左右外側部位に設けられているので、左右サイドマーカ55も同時に上動して、旋回時の邪魔にならず旋回作業も良好に行なえて作業性が良い。
【0084】
以上のとおり、上記の苗植機1は、左右一対の前輪8と左右一対の後輪7が畝を跨いだ状態で前進走行しながら、苗植付け体20が圃場に千鳥状に4条に苗を植付ける。苗供給装置6は苗植付け体20に苗を供給する。作業者は、作業者用座席46に着座して苗供給装置6に苗を補給する作業を行うことができる。
【0085】
なお、苗収容体22の周回移動経路における第一〜第四の落下供給位置31,32,33,34の互いの間隔において、左右両外側部の各々の間隔をXピッチ、左右中央部の間隔をYピッチとすると、X=1+4n,Y=3+4m(n,mは0以上の整数とする)であれば、第一〜第四の落下供給位置31,32,33,34で各々対応する苗収容体22から苗植付け体20へ苗を供給する構成とすることができる。他に、X=2+4n,Y=3+4mの形態であっても、第一〜第四の落下供給位置31,32,33,34で各々対応する苗収容体22から苗植付け体20へ苗を供給する構成とすることができる。従って、苗収容体22の周回移動経路の左右中央部に円弧状部分が位置するとき等、前記周回移動経路に応じて所望の植付条間あるいは千鳥植えの場合は前後方向の千鳥間隔が得られるように、周回移動経路における第一〜第四の落下供給位置31,32,33,34の互いの間隔を設定すればよい。
【0086】
なお、上述では、左右二対づつの苗植付け体20が半周期位相をずらせて作動し、第一、第二の落下供給位置31,32と第三、第四の落下供給位置33,34とで落下する苗を供給する苗収容体22が到達するタイミングが異なる場合について説明したが、全ての苗植付け体20が同期して作動し全ての落下供給位置31,32,33,34に同時に苗を供給する構成としてもよい。このとき、落下供給位置31,32,33,34の互いの間隔は、X=2+4n,Y=1+4mの形態又はX=3+4n,Y=1+4mの形態とすればよい。
【0087】
また、上述では、底蓋27の突起35を、苗収容体22の周回外側に短く突出するもの、苗収容体22の周回内側に短く突出するもの、苗収容体22の周回内側に長く突出するもの及び苗収容体22の周回外側に長く突出するものの4種類を設定したものについて説明したが、この構成によると、各々の底蓋27が開放されるタイミングは周回移動において落下供給位置31,32,33,34での一回しかなく、その後第四の落下供給位置34に到達するまで底蓋27が閉じないので、歩行しながら周回移動経路の円弧状部分29や後側の直線状部分28で苗補給する際に、苗補給する必要のある苗収容体22を判別し易く、苗補給作業性が向上する。また、この構成によると、第2、第3の落下供給位置32,33では底蓋27が開かないように支持軸を追加し、且つ苗植付装置5の上下動機構21の作動に対して移動機構23の作動速度を2倍に増速すれば、第1、第4の落下供給位置31,34でのみ苗が供給されることになり、植付条間の広い2条植えを行うことができる。
【0088】
図12に苗植付け体20の高さ調節部の作用説明用側面図を示すように、4条植えの苗移植機においては、畝がかまぼこ状になっている関係で左右外側の植付深さが浅くなる傾向がある。そこで、内側2条の苗植付け体20に対して左右各外側1条の苗植付け体20を上下調節できる構成として、左右各外側1条の苗植付け体20を内側2条の苗植付け体20よりも下方に設定できる構成としている。
【0089】
即ち、内側の苗植付け体20と外側の苗植付け体20を連結する連結軸56は、各々高さ変更機構57を介して前記上下動機構21に支持されている。前記高さ変更機構57は、前記連結軸56に固着された機体背面視コの字型のプレートで構成される上下移動部材58と、該上下移動部材58を囲むように機体背面視コの字型のプレートで構成される基部材59と、前記上下移動部材58及び基部材59に上下に貫通する螺子軸60と、該螺子軸60の上端に該螺子軸60と一体で回転するトルクワイヤ61とを備えて構成される。なお、前記基部材59は、上下動機構21と連結されている。
【0090】
また、前記基部材59の上下各々の横プレート部分59aの上下間に前記上下移動部材58の上下各々の横プレート部分58aが位置し、上下移動部材58及び基部材59の前記横プレート部分58a,59bが機体平面視で重複している。そして、前記螺子軸60は、軸方向に移動しないように基部材59の上下各々の横プレート部分59aに回転自在に支持されると共に、上下移動部材58の上下各々の横プレート部分58aに固着したウエルドナット62に螺合している。
【0091】
従って、基部材59の上下各々の横プレート部分59aが螺子軸60を支持する軸支持部となり、上下移動部材58の上下各々の横プレート部分58aに固着したウエルドナット62が螺子軸60に螺合する螺合部となる。そして、前記トルクワイヤ61の他端を作業者用座席46の近傍に配置した操作ハンドル63に連結して、操作ハンドル63を回動操作するとトルクワイヤ61を介して螺子軸60が回動する構成となっている。
【0092】
よって、作業者が作業者用座席46の近傍に配置した操作ハンドル63を回動操作して螺子軸60を回転させることにより、基部材59に対して上下移動部材58が螺子軸60に沿って上下に移動し、連結軸56を上下に移動させて左右方向外側の苗植付け体20の高さを変更する構成となっている。なお、上下移動部材58は、該部材58の上下の横プレート部分58aが基部材59の上下各々の横プレート部分59aに当接することにより上下移動が規制され、所定範囲内でのみ上下移動可能に構成されている。この上下移動部材58の上下移動可能範囲は、左右方向外側の苗植付け体20が左右方向内側の苗植付け体20と略同じ高さから左右方向内側の苗植付け体20より低位となる高さまで上下移動できるように設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の苗植機の一実施例の全体側面図である。
【図2】図1の苗植機の全体平面図である。
【図3】本発明の苗植機の他の実施例の全体側面図である。
【図4】本発明の苗植機の他の実施例の全体側面図である。
【図5】本発明の苗植機の他の実施例の全体側面図(図5(a)とクローラ装置のその他の配置図(図5(b)、図5(c))である。
【図6】本発明の苗植機の一実施例の車輪部の側面図である。
【図7】本発明の苗植機の一実施例の車輪部の正面図である。
【図8】図1の苗植機の底蓋の突起を示す図である。
【図9】図1の苗植機の苗収容体の底蓋の突起と支持軸との関係を示す図である。
【図10】図1の苗植機の覆土鎮圧輪の支持構成を示す要部の作用説明用平面図である。
【図11】図1の苗植機の覆土鎮圧輪の支持構成を示す要部の作用説明用側面図である。
【図12】図1の苗植機の苗植付け体の高さ調節部を示す作用説明用側面図である。
【図13】本発明の苗植機の鎮圧輪の一実施例の正面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 苗植機 2 操縦ハンドル
3 エンジン 4 走行車体
5 苗植付装置 6 苗供給装置
7 後輪 8 前輪
9 ミッションケース 10 左右伝動ケース
11 アクスルケース 12 駆動軸
13 アーム 14 センサー
15 植付・昇降操作具 16 横フレーム
17 縦フレーム 18 車軸
19 機体フレーム 20 苗植付け体
21 上下動機構 22 苗収容体
23 移動機構(スプロケット) 24 開放機構
25 取付部材 26 伝動ケース
27 底蓋 28 直線的に移動する部分
29 円弧状に移動する部分 30,30a 支持軸
31,32,33,34 落下供給位置 35 突起
36a,36b 支持片 36c ロッド
36d アジャスタ 37 覆土鎮圧輪
37a 針状突起物 38 回動支軸
38a パイプ材 38c 検出部材
39a〜39d 覆土鎮圧輪支持フレ−ム 39d’板体
40 ロッド 41 左右フレ−ム
42 回動軸 43 回動ア−ム
44 回動レバー 45 空苗植えレバ−
46 作業者用座席 47 座席フレーム
48 給油キャップ 49 ステップ
50 苗載台 51 後部苗載台
52 支持フレーム 53 載置台部
54 前後壁部 53a 後半部分
55 左右サイドマーカ 56 連結軸
57 高さ変更機構 58 上下移動部材
58a 横プレート部分 59 基部材
59a 横プレート部分 60 螺子軸
61 トルクワイヤ 62 ウエルドナット
63 操作ハンドル 64 回動支軸
71,81 平行型クローラ走行装置 71a,81a 泥よけカバー
71a1,81a1 ステップ 71b,81b 回動支持軸
72 三角形状クローラ走行装置 72a 泥よけカバー
72a1 ステップ 72b 駆動輪
72c,72d 従動輪 73 連結アーム
74 アジャスタ 75 クローラフレーム
82 三角形状クローラ走行装置 83 ソリ
90,90 クローラタイプのタイヤ式車輪
95 溝付けバー C 左右傾斜センサ
D 検出部 S センサワイヤ
T セルトレイ SP スペース
W 作業空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に苗を植え付ける苗植付け体(20)を配列し、該苗植付け体(20)の後方に覆土鎮圧輪(37)を設けた苗植機において、覆土鎮圧輪(37)の接地面に複数の針状の突起(37a)を設けたことを特徴とする苗植機。
【請求項2】
圃場に苗を植え付ける苗植付け体(20)を配列し、該苗植付け体(20)の後方に覆土鎮圧輪(37)を設けた苗植機において、上下動して下部を地面に押し付けることにより左右方向に排水溝を作る溝付け具(95)を設けたことを特徴とする苗植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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