説明

苗植機

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、施肥装置を装備した苗植機に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
走行車体の後に苗植装置が装着されて苗植機が構成され、その苗植機に施肥装置を装備したものがあるが、多条植えの苗植機になると、左右幅の長い構成となる。
【0003】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、走行車体1に機体左右方向に長く配置した苗載台9を有する苗植装置3を装着すると共に、走行車体1の後部に施肥装置13の機体左右方向に長く配置したホッパー43と繰出部44を設けた苗植機において、苗載台9の横端の苗載台9bを中央部に対して着脱自在に設け、且つ、ホッパー43と繰出部44のうち機体外側にあるホッパー43と繰出部44を中央部のものの前方に向けて収納できる構成とした苗植機とした。従って、苗植機は、圃場を走行すると、苗植装置3が圃場に苗を移植すると同時に、施肥装置13にて圃場に施肥される。そして、移植作業を行なわない時には、苗載台9の横端の苗載台9bを中央部に対して取り外し、ホッパー43と繰出部44のうち機体外側にあるホッパー43と繰出部44を中央部のものの前方に向けて収納することができ、機体左右幅を短くすることができる。
【0004】
請求項2記載の発明は、苗載台9の横端の苗載台9bを中央部に対して取り外した後に、中央部のものの上方に配置して収納する請求項1記載の苗植機とした。従って、移植作業を行なわない時には、苗載台9の横端の苗載台9bを中央部に対して取り外して中央部のものの上方に配置してコンパクトに収納できる。
【0005】
【効果】
以上のように、この発明によると、移植作業時には、苗植装置3が圃場に苗を移植すると同時に、施肥装置13にて圃場に施肥することができ、非作業時には、苗載台9の横端の苗載台9bを中央部に対して取り外し、ホッパー43と繰出部44のうち機体外側にあるホッパー43と繰出部44を中央部のものの前方に向けて収納することができ、機体左右幅を簡潔な構成で短くすることができる。
【0006】
【実施例】
つぎに、この発明の実施例を説明する。図1のように、走行車体1の後にリンク2で苗植装置3が装着されて苗植機が構成されている。
走行車体1は、座席4の下の原動機(図示していない)の動力で回転するそれぞれ1対の前輪5と後輪6を備えている。
【0007】
苗植装置3は、リンク2の後端に前後方向のローリング軸7で取付けられた歯車箱8と、前上りに傾斜して歯車箱8の上で左右に往復移動する苗載台9と、苗載台9の後で旋回する苗植杆10と、歯車箱8の下に配置されて泥面を滑走するフロート11を備えている。
【0008】
走行車体1に取付けられたシリンダ12からピストンロッドが斜後上に伸び、その上端がリンク2の中間部に接続し、ピストンロッドが突出すると、リンク2の後端(苗植装置3)が上り、これが収納されると、苗植装置3が下るようになっている。
【0009】
施肥装置13が取付けられ、苗の移植を同時に肥料が散布されるようになっている。
図3のように、歯車箱8は、左右が壁8a,8bで塞がれている。伝動軸14がこの歯車箱8に横向に配置されて両端が外に突出している。入力軸15がこの歯車箱8に前後方向に配置され、その端に固定した傘歯車16が伝動軸14に固定した傘歯車17に咬み合って、原動機の動力が出力軸18(図1)で導入されるようになっている。
【0010】
回転軸19が伝動ケース20の後端で左右に突出し、それぞれの突端に回転ケース21が固定され(図2)、その回転ケース21の外側にそれぞれ1対の苗植杆10が取付けられ、回転軸19とともに回転ケース21が回転すると、苗植杆10が同じような姿勢を保って旋回するように出来ている。そして、この回転ケース21は、4個用いられている。
【0011】
左右がほぼ対称なため、左側の拡大図(図4)について説明すると、1つの伝動ケース20aは、突出した伝動軸14がその前部に差し込まれるようにして壁8aに接触し、図示していないボルトで着脱自在に取付けられている。固定クラッチ22が伝動ケース20a内で伝動軸14に固定され、可動クラッチ23の爪がばねで押されてその爪に咬んでいる。歯輪24が可動クラッチ23と1体に作られ、回転軸19に固定された歯輪(図示していない)とこの歯輪24とにチェンが巻き掛けられ、伝動軸14の回転が苗植杆10に伝達されるようになっている。
【0012】
なお、可動クラッチ23には、その外筒面に斜のカムが形成され、ピン25がばねで押し出されてその先が係合すると、可動クラッチ23がばねに抗して左に移動し、その爪が固定クラッチ23の爪から離れて一定の位置で動力の伝達が切断される。ピン25を引き上げると、ばねで押されてそれぞれの爪が咬み、動力が接続されるように出来ている。
【0013】
オイルシール26が壁8aと伝動軸14の間に設けられ、歯車箱8内の油が伝動ケース20a側に流れ出すのを封鎖している。なお、壁8b側にも同じように設けられる。
スリーブ27が伝動ケース20aの前部の左側にボルトで着脱自在に固定され、その外端に、外側の伝動ケース20b(図3)が固定されている。伝動軸14aが伝動ケース20bとスリーブ27内に配置され、軸継手28がその右端に固定されている。キー29が伝動軸14の左端に固定され、軸継手28が伝動軸14の左端に重合すると、キー29が軸継手28のキー溝に係合し、伝動軸14の回転が伝動軸14aに伝達されるようになっている。そして、伝動軸14の左端が伝動ケース20aの左の面よりも左に突出し、軸継手28の右端がスリーブ27の右の面よりも右に突出している。すなわち、互に係合する伝動軸14と軸継手28の突端が、それぞれを支えているケース20a,27の側面よりも突出していて、両者がたやすく係合出来るようになっている。なお、上記と同じようなクラッチ22,23が伝動軸14aにも設けられる。
【0014】
図2のように、苗載台9は、前後方向の支切壁9aを有し、8枚のマット苗が横並びに載せられるようになっている。そして、図1のように、歯車箱8から上に伸びる支柱30と伝動ケース20で上下が支えられて左右に移動し得るように出来ている。
【0015】
図4のように、変速軸31が伝動軸14と平行に配置され、これに回動自在に取付けられた4枚の変速歯車32が、伝動軸14に固定された4枚の歯車33に咬み合っている。爪34が変速軸31に摺動自在に設けられ、シフタによる移動で変速歯車32の1つに係合し、その変速歯車32の1つで伝動軸14の回動が変速軸31に回転数を選択して伝達されるように出来ている。中間歯車35がカム軸36の歯車37に咬み合っている。リードカム36aがカム軸36の外筒面に形成され、これが差し込まれた移動メタル38の爪39がそのリードカム36aに系合し、カム軸36が回転すると、移動メタル38が左右に往復駆動されるようになっている。横移動棒40が歯車箱8に摺動自在に取付けられ、上記の移動メタル38が固定されている。
【0016】
苗載台9の下腹部と横移動棒40の突端とが杆41で連結され、(図1)原動機の回転が入力軸15から伝動軸14に達すると、この苗載台9が左右に往復駆動される。苗受板42が苗載台9の下端部で伝動ケース20に固定され、苗載台9から突出した苗の端がこの上で左右に移動するようになっている。前記の8組の苗植杆10がそれぞれのマット苗に対応して配置され、その先端が苗受板42の苗取口を通って旋回し、マット苗を欠ぎ取って下の泥土に移植するようになっている。
【0017】
図2のように、マット苗1枚又は2枚分の横端の苗載台9bおよび苗受板42bは、中央のものに対して着脱自在に設けられている。そして、取外した苗載台9の1部9bは、図1R>1の鎖線のように、取外していない苗載台9の上に、これと平行に取付けられるようになっている。
【0018】
図1のように、施肥装置13は、そのホッパー43と繰出部44とが1体的に構成されて、座席4の後で走行車体1に取付けられている。8個の作溝器45がそれぞれの組の苗植杆10の横でフロート11に固定されている。繰出部44の下部と作溝器45の間にホース46が設けられ、繰出部44内の繰出ローラ44aが回転すると、ホッパー43内の肥料が繰り出され、ホース46内を通って作溝器45内に達し、苗の移植と同時に肥料が散布されるようになっている。
【0019】
図2のように、ホッパー43と繰出部44は、中央部の4個の外側にそれぞれ2個が配置され、上下方向のヒンジ47で外側のものが中央のものの前方に折りたたまれるようになっている。そして、図5のように、横向の伝動軸48と回動軸49の両横に伝動軸48aと回動軸49aが配置されていて、上記のヒンジ47による回動でそれぞれが軸継手48b,49bで接続されたり、切り離されたりするように出来ている。なお、伝動軸48,48aの回動は、それぞれのリンク50,50aを経てそれぞれの繰出ローラ44aに達する。回動軸49aの右端にハンドル51が設けられ、これで回動軸49aを回すと、回動軸49も回る。そして、これらの回動でそれぞれの繰出ローラ44aの繰出溝の横巾が調節され、肥料の散布量が調節出来るようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】苗植機の全体側面図である。
【図2】苗植機の後部平面図である。
【図3】苗植装置の伝動部の平面図である。
【図4】苗植装置の伝動部の一部拡大平断面図である。
【図5】要部の背面図である。
【符号の説明】
1 走行車体
3 苗植装置
9 苗載台
9b 横端の苗載台
13 施肥装置
43 ホッパー
44 繰出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体1に機体左右方向に長く配置した苗載台9を有する苗植装置3を装着すると共に、走行車体1の後部に施肥装置13の機体左右方向に長く配置したホッパー43と繰出部44を設けた苗植機において、苗載台9の横端の苗載台9bを中央部に対して着脱自在に設け、且つ、ホッパー43と繰出部44のうち機体外側にあるホッパー43と繰出部44を中央部のものの前方に向けて収納できる構成としたことを特徴とする苗植機。
【請求項2】
苗載台9の横端の苗載台9bを中央部に対して取り外した後に、中央部のものの上方に配置して収納することを特徴とする請求項1記載の苗植機。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate


【特許番号】特許第3565192号(P3565192)
【登録日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【発行日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−254477(P2001−254477)
【出願日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【分割の表示】特願平5−30184の分割
【原出願日】平成5年2月19日(1993.2.19)
【公開番号】特開2002−119112(P2002−119112A)
【公開日】平成14年4月23日(2002.4.23)
【審査請求日】平成13年8月24日(2001.8.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【参考文献】
【文献】特開平3−76505(JP,A)
【文献】特開平4−66008(JP,A)