説明

苗移植機

【課題】苗載台の苗送りベルトの外周面には、苗の底面に係合するスパイク状小突起と横長い突条とが設けられており、載置された苗の保持及び送りを行うように構成している。然しながら、苗送りベルトの外周面に設けたスパイク状小突起や横長い突条だけでは、苗の生育条件や種類によっては、適切な苗の保持及び送りが行えないことがあった。
【解決手段】苗載台80の苗載部80−1〜7に載置された苗を移送する苗送りベルト102を駆動ローラ103と従動ローラ104とに掛け渡して設けた苗移植機において、駆動ローラ103の外周面には複数の駆動突起103a…を設け、苗送りベルト102には駆動ローラ103の駆動突起103a…が貫通する長孔102c…を設けて、駆動ローラ103の駆動突起103a…が苗送りベルト102の長孔102cを貫通して突出した状態で係合して苗送りベルト102を回転駆動する苗移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台に苗送りベルトを設けた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型田植機は、苗載台上の苗を苗取出口側へ送る苗送りベルトを駆動ローラと従動ローラとに掛け渡して、苗載台の左右移動と同期して間欠的に駆動ローラを回転させることにより苗送りベルトを回して、所定距離づつ苗送り作動する構成になっている。
【0003】
そして、この苗送りベルトの外周面には、苗の底面に係合するスパイク状小突起と横長い突条とが設けられており、載置された苗の保持及び送りを行うように構成している。
【特許文献1】特開平11−46533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の苗送りベルトの外周面に設けたスパイク状小突起や横長い突条だけでは、苗の生育条件や種類によっては、適切な苗の保持及び送りが行えないことがあり、苗の植付けが適切に行えない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、苗載台80の苗載部80−1〜7に載置された苗を移送する苗送りベルト102を駆動ローラ103と従動ローラ104とに掛け渡して設けた苗移植機において、該駆動ローラ103の外周面には複数の駆動突起103a…を設け、苗送りベルト102には駆動ローラ103の駆動突起103a…が貫通する長孔102c…を設けて、該駆動ローラ103の駆動突起103a…が苗送りベルト102の長孔102cを貫通して突出した状態で係合して苗送りベルト102を回転駆動する苗移植機としたものである。
【0006】
従って、駆動ローラ103の駆動突起103a…が苗送りベルト102の長孔102c…を貫通して突出した状態で係合し、確実に苗送りベルト102を回転駆動し、且つ、苗送りベルト102の長孔102c…を貫通して突出した駆動突起103a…が苗載台80の苗載部80−1〜7に載置された苗の裏面に係合して苗を保持して確実に苗送り作用をする。
【0007】
請求項2記載の発明は、苗送りベルト102の外周面に突起102a…を設けると共に、苗送りベルト102の貫通長孔102c…を貫通した駆動ローラ103の駆動突起103a…の苗送りベルト102外周面からの突出高さが、苗送りベルト102の突起102a…の高さよりも高くなるように構成した請求項1記載の苗移植機としたものである。
【0008】
従って、苗送りベルト102の外周面に設けた突起102a…と該苗送りベルト102の突起102a…の高さよりも高くなるように構成した苗送りベルト102の貫通長孔102c…を貫通した駆動ローラ103の駆動突起103a…とが、苗載台80の苗載部80−1〜7に載置された苗の裏面に係合して苗を保持して更に確実に苗送り作用をする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように苗移植機を構成することにより、苗載台80の各苗載部80−1〜7に載置された苗の送りが適正に行われるので、適切な苗移植作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
苗載台80の各苗載部80−1〜7に、苗載部の苗を移送する左右一対で1組の苗送りベルト102を設け、該苗送りベルト102は外周面部に載置された苗の裏面に係合して苗を保持して送るスパイク状小突起102a…と横長い突条102b…とが形成され、駆動ローラ103と従動ローラ104とに掛け渡されている。そして、駆動ローラ103の左右側端部の表面にスパイク状の駆動突起103a…を均等配置し、この駆動突起103a…が苗送りベルト102の左右側端部に設けられた貫通長孔102cを貫通して突出した状態で係合して、確実に苗送りベルト102を回転駆動する構成となっていると共に、この苗送りベルト102の左右側端部に設けられた貫通長孔102cを貫通して突出したスパイク状の駆動突起103a…が苗載台80の苗載面に載置された苗の裏面に係合して苗を保持して確実に苗送り作用をする(苗送りベルト102の貫通長孔102cを貫通したスパイク状の駆動突起103a…の苗送りベルト102外周面からの突出高さは、スパイク状小突起102a…と横長い突条102b…の高さよりも、高くなるように構成)。
【実施例1】
【0011】
苗移植機の一種である図示の田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して7条植えの苗植付部4が昇降可能に装着されている。
走行車体2は四輪駆動車両で、それぞれ駆動輪である各左右一対の前輪7,7及び後輪8,8を備えている。機体の前部に配したミッションケース10の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、その前輪ファイナルケースから外向きに突出する前輪車軸に前輪7,7が取り付けられている。また、ミッションケース10の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されていて、そのメインフレームの後端部に左右の後輪ギヤケース19,19がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケースから外向きに突出する後輪車軸に後輪8,8が取り付けられている。
【0012】
エンジン21は、メインフレーム15に固定して設けた水平状のエンジン台22の上に搭載されている。エンジン21の上側、前側及び左右両側はエンジンカバー28で覆われている。そして、そのエンジンカバー28の上に操縦席30が設置されている。また、機体前部の中央上側はフロントカバー42で覆われていて、その上方に前輪7,7を操向するハンドル43が設けられている。フロントカバー42には、各種作動状態を表示する表示パネル、操作用の各種レバー、ペダル類が設けられている。
【0013】
エンジンカバー28及びフロントカバー42の周囲は、操縦者が自由に歩行できる水平状のメインステップ44になっている。メインステップ44の後部44aは、後輪8,8と干渉しないように高くなっている。また、メインステップ44の下側には、機体左右側からステップ上に乗り降りするときに使用する左右昇降ステップ46,46が設けられている。
【0014】
機体の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく左右予備苗載台が設けられている(図示せず)。
昇降リンク装置3は、メインフレーム15の後端部に固定して設けたリンクベースフレーム50に回動自在に取り付けられた上リンク51及び下リンク52,52を備え、これら上下リンクの後端部に縦リンク53が連結されている。そして、縦リンク53の下端部から後方に突出する軸受部に苗植付部側に固着したローリング軸54が回転自在に挿入連結され、苗植付部4が進行方向に対して左右に回動自在に装着されている。
【0015】
メインフレーム15に基部側が枢支された昇降油圧シリンダ56が設けられ、そのピストンロッドが上リンク51の基部に一体に設けたスイングアーム57の下端部に連結されている。この昇降油圧シリンダ56を伸縮させると昇降リンク装置3が昇降作動し、苗植付部4が一定姿勢のまま昇降する。昇降油圧シリンダ56は苗植付部4に設けた油圧バルブ58によって制御される。後述するセンサフロート170(2)によって検出される圃場面の凹凸に基づき油圧バルブ58を切替え作動することにより苗の植付深さを一定に維持する。
【0016】
苗植付部4は7条植えの構成で、伝動機構を内蔵する苗植付部フレームFに、苗を載せておく苗載台80、該苗載台上の苗を圃場面に植え付ける7組の植付装置160、苗植付けに先行して泥面を整地する3体の整地用フロート170(1〜3)等が組み付けられている。
【0017】
苗植付部フレームFは、苗載台80の下方左右中央部から左右一方にずれた位置に配置されたセンターケース61と、該センターケース61の後方に左右並列に配置された4個の植付伝動ケース62(1〜4)と、センターケース61の左右側面と植付伝動ケース62(1,3)の前端部を互いに連結する連結パイプ65(1,2)と、植付伝動ケース62(3,4)の前端部を互いに連結する連結パイプ65(3)とで構成され、左から2番目の植付伝動ケース62(2)の前端部はセンターケース61の背面に固着されている。
【0018】
そして、植付伝動ケース62(1〜4)の後端部から左右側に突出する植付装置取付軸68(1〜4)の各突出部に苗植付装置160,…がそれぞれ装着されている。また、苗植付部フレームF前側に固着した連結枠F’の左右中央部から回転自在に支承された前記ローリング軸54が前方に突出しており、このローリング軸54を前記縦リンク33に連結することで苗植付部4を装着するようになっている。
【0019】
苗載台80は、前側が上位となるよう傾斜して設けられており、フェンス部81によって各植付条ごとの苗載部80−1〜7に区分されている。苗載台80は苗載面の裏側で左右動自在に支持されている。その支持構造は、苗載面の裏面側下部に左右方向に設けた横枠82に係合摺接部材84を固着し、該係合摺接部材84を植付伝動ケース62(1〜4)の上に設けた左右に長い支持レール83に左右に摺動自在に係合させていると共に、左右植付伝動ケース62(1,4)に基部が固着された左右苗載台支持フレーム85の上端部に取り付けたローラ86を苗載面の裏面上部に固着した左右方向の断面コ字状の上部レール87に係合させている。そして、下記の電動シリンダー72にて左右往復移動するロッド72aが横枠82に連結され、苗載台80は支持レール83に沿って左右往復動する。なお、各苗載面80の上端部には、延長苗載せ部89が苗載面側へ回動可能に取り付けられている。
【0020】
前記支持レール83は、係合摺接部材84が係合する断面長方形の部位83aと、苗載面上にある苗の下端面を受け止める断面L字状の部位(苗受板)83bとを一体成形したものであり、苗受板83bには各苗載面に対応させて7箇所にコ字状に切り欠かれた苗取出口90が形成されている。苗載台80が左右往復動することにより、苗載面下端部に位置する苗が1株分づつこの苗取出口90に順次供給される。植付装置160の植付具162がこの苗取出口90を通過し、苗を1株分に分割して取り出す。
【0021】
支持レール83は次のように支持されている。すなわち、植付伝動ケース62に固着のブラケット94に取り付けたガイドプレートに対し上下に摺動自在に支持レール取付部材96を設け、さらに該取付部材96に支持レール83を取り付けている。また、ブラケット94には左右方向の苗取り量調節パイプ97が回転自在に嵌合しており、該苗取り量調節パイプ97に固着したアーム98の先端部が支持レール取付部材96にピン99にて連結されている。図示を省略した苗取り量調節レバーを用いて苗取り量調節パイプ97を回転させると、支持レール取付部材96とそれに一体な支持レール83とが苗載台80と平行に上下移動し、それにより植付具162による苗取り量が調節される。
【0022】
一方、走行車体2から伝達される外部取出動力が、センターケース61に回転自在に支承された前後方向の第一入力軸70に入力される。そして、この第一入力軸70から縦送り伝動装置70aを介して、苗送りカム108が装着された伝動軸108’が回転駆動される。
【0023】
連結枠F’には苗載台80を左右往復移動させる電動シリンダー72が固定されており、該電動シリンダー72にて左右往復移動するロッド72aが苗載台80に連結されている。この電動シリンダー72により苗載台80が左右に往復動させられる。これにより、苗載台80上の苗が、苗載台の下側で苗を支える苗受板83bに形成された苗取出口90,…に順次供給される。そして、電動シリンダー72は制御装置の苗載台横送り制御手段にて制御され、ハンドル43の近傍に設けた操作レバーSの操作によって制御装置のPTOクラッチ作動手段にてPTOクラッチが入り作動してエンジン21の駆動力がPTOクラッチを介して第一入力軸70に伝動されて駆動された時のみ、電動シリンダー72は作動して、苗載台80を左右に往復動させる。この時、植付装置160の植付具162が苗取出口90を通過して苗を1株分に分割して取り出す時に、苗載台80を左右往復移動する速度が遅くなるように電動シリンダー72は制御装置の苗載台横送り制御手段にて制御されている。一般に、走行速度に対して植付装置160の植付具162の作動速度を変速して、植付け株間を変更するようになっているが、この植付け株間を変更するとその変更された植付装置160の植付具162の作動速度に対応して、制御装置の苗載台横送り制御手段にて常に植付装置160の植付具162が苗取出口90を通過して苗を1株分に分割して取り出す時に、苗載台80を左右往復移動する速度が遅くなるように電動シリンダー72は作動するように構成されている。従って、密植(非常に株間が狭い植付け)から疎植(非常に株間が広い植付け)までのどのような植付け株間の時も、植付装置160の植付具162は適正に苗を1株分に分割して綺麗に圃場に苗を植え付けることができ、適切な田植作業を行えることができる。
【0024】
上記のように、センターケース61を機体左右中心から左右一方にずれた位置に配置し、そのセンターケース61に1つの苗植付装置160が設けられた植付伝動ケース62(2)を設け、他の植付伝動ケース62(1,3,4)には2つの苗植付装置160を設けた構成として、奇数条植えの田植機の苗植付部4を構成したので、即ち、苗植付部4の左右中心に対して片側に3条分の苗植付装置160の植付伝動ケース62(1,2)とセンターケース61が配置され、反対側に4条分の苗植付装置160の植付伝動ケース62(3,4)が配置されることとなるので、左右の重量バランスが良く、苗植付部4の姿勢が安定し易くて、良好なる苗の移植作業が行える。
【0025】
各植付伝動ケース62(1〜4)内の植付装置取付軸68(1〜4)を駆動する駆動軸部には、植付装置の駆動を入り・切りするための植付畦クラッチ77(1〜4)がそれぞれ設けられている。各植付畦クラッチ77(1〜4)は、4つの畦クラッチレバー78(1〜4)で各々操作するようになっており、植付装置160の駆動を左から2条・1条・2条・2条単位で任意に入り・切りすることができる。即ち、畦クラッチレバー78(1〜4)を切り方向に操作すると、操作ワイヤ79(1〜4)が緩み、各操作ワイヤ79(1〜4)の先端に設けられたクラッチ操作ピン79a(1〜4)が圧縮ばね79b(1〜4)にて突出作動し、各植付畦クラッチ77(1〜4)のカム面に接当して、各植付畦クラッチ77(1〜4)を切り操作するようになっており、植付装置160の駆動を左から2条・1条・2条・2条単位で任意に入り・切りすることができる。
【0026】
苗載台80の各苗載部80−1〜7の裏面側下部には、苗載部の苗を苗取出口90側へ移送する苗送り手段である左右一対で1組の苗送りベルト102が各条ごとに設けられている。苗送りベルト102は外周面部に載置された苗の裏面に係合して苗を保持して送るスパイク状小突起102a…と横長い突条102b…とが形成された無端ベルトであって、駆動ローラ103と従動ローラ104とに張架されている。駆動ローラ103は左右方向の苗送り駆動軸105(1,2)の外周部に回転自在に嵌合しており、苗送り駆動軸105と駆動ローラ103とが苗送り畦クラッチ106(1〜4)を介して入り・切り可能に伝動連結されている。
【0027】
ここで、図7に基づいて、駆動ローラ103による苗送りベルト102の駆動構成を詳細に説明すると、駆動ローラ103の左右側端部の表面にはスパイク状の駆動突起103a…が均等配置されており、この駆動突起103a…が苗送りベルト102の左右側端部に設けられた貫通長孔102cを貫通して突出した状態で係合し、確実に苗送りベルト102を回転駆動する構成となっていると共に、この苗送りベルト102の左右側端部に設けられた貫通長孔102cを貫通して突出したスパイク状の駆動突起103a…が苗載台80の苗載面に載置された苗の裏面に係合して苗を保持して確実に苗送り作用をする(苗送りベルト102の貫通長孔102cを貫通したスパイク状の駆動突起103a…の苗送りベルト102外周面からの突出高さは、スパイク状小突起102a…と横長い突条102b…の高さよりも、高くなるように構成されている)。従って、苗載台80の各苗載部80−1〜7に載置された苗の送りが適正に行われるので、各植付装置160の植付具162は適正に苗を1株分に分割して綺麗に圃場に苗を植え付けることができ、適切な田植作業を行えることができる。
【0028】
また、苗載台80の苗載面の裏面側下部に左右方向に設けた横枠82は角パイプ状に形成されており、苗載台80の各苗載面に載置された苗の裏面に係合する係合針82a…を有する苗係合保持装置が設けられている。苗係合保持装置は、角パイプ状の横枠82内部に摺動自在に設けた作動体82b(横枠82の長手方向に長く形成された角材状の硬質樹脂部材)と作動体82bに基部が固着された多数の係合針82a…と係合針82a…が苗載面から引退する方向に作動体82bを付勢する圧縮ばね82cで構成されている。そして、下記の苗送り駆動軸105(1,2)を作動させるリンク111cと一体に押圧ピン82dが設けられており、該押圧ピン82dは苗送り駆動軸105(1,2)を作動させないとき(各植付装置160の植付具162が苗載台80の各苗載部80−1〜7に載置された苗から1株分の苗を分割しているとき)図5のように圧縮ばね82cの付勢力に抗して作動体82bを押した状態にあり、苗係合保持装置の係合針82a…が苗載台80の各苗載面に載置された苗の裏面に係合している。従って、各植付装置160の植付具162が苗載台80の各苗載部80−1〜7に載置された苗から1株分の苗を順次分割している苗載台80左右移動時には、苗載台80の各苗載面に載置された苗の裏面に苗係合保持装置の係合針82a…が突き刺さった状態で係合して、載置苗を保持するので、苗が下方にずり落ちることが防止されて、各植付装置160の植付具162は適正に苗を1株分に分割して綺麗に圃場に苗を植え付けることができ、適切な田植作業を行えることができる。尚、係合針82a…の横並びピッチを苗送りベルト102のスパイク状小突起102a…の横方向のピッチと同じにしておくと、苗載面に載置された苗の底面にスパイク状小突起102a…が作用した位置に係合針82a…が突き刺さるようになるので、係合針82a…の苗底面への係合がより容易となり、苗の保持がより確実になる。
【0029】
そして、苗載台80が左右移動端にきて、苗送り駆動軸105(1,2)が回転作動して苗送りをする時には、リンク111cと一体の押圧ピン82dは横枠82から外方に抜けるので、作動体82bは圧縮ばね82cにて付勢されて、係合針82a…は苗載面下方に引退するので、苗は適切に送られる。
【0030】
苗送り駆動軸105(1,2)は、3条分と4条分とに亘る長さで2分割されている。即ち、苗送り駆動軸105(1)は、苗載部80−1〜3の苗送りベルト102を駆動できる長さで回動自在に支持され、苗送り駆動軸105(2)は、苗載部80−4〜7の苗送りベルト102を駆動できる長さで回動自在に支持されている。
【0031】
苗送りベルト102の駆動機構は下記の構成となっている。すなわち、前記伝動軸108’には、先端部に苗送りカム108が取り付けられている。また、苗送り駆動軸105(1,2)の上側には左右方向の中継軸109が設けられ、それに苗送り駆動アーム110が取り付けられている。中継軸109と苗送り駆動軸105(1,2)とは、アーム111a,111b及びリンク111cとからなる2組のリンク機構111と苗送り方向にのみ回転が伝達される2つのワンウエイクラッチ111dにより伝動連結されている。
【0032】
苗載台80が左右行程の端部に到達すると、苗送りカム108が苗送り駆動アーム110に当接して、中継軸109を所定角度回転させる。その回転が2組のリンク機構111と2つのワンウエイクラッチ111dを介して苗送り駆動軸105(1,2)各々に伝達される。これにより、苗送り畦クラッチ106が入りの状態にあるときには、苗送りベルト102が所定量だけ作動する。苗送りカム108が苗送り駆動アーム110から離れると、スプリング112の張力によって中継軸109及び苗送り駆動軸105は駆動前の位置に戻る。
【0033】
このように苗送り駆動軸105(1,2)を左右で2分割して、各苗送りベルト102を駆動する構成にすることにより、多条植えであるにも拘らず苗送り駆動軸の長さを短く構成できるので、苗送り駆動軸の回転歪や撓み等が防止でき確実な苗送りベルト102の駆動を行うことができ、適切な苗の移植作業が行える。
【0034】
そして、左右2分割した苗送り駆動軸105(1,2)を回転駆動する駆動機構に駆動量を調節する駆動量調節装置Aが設けられている。即ち、アーム111bに溶接固定した接当体111eが中継軸109に基部が固定された規制アーム109aの上端に設けた戻りストッパー109bに接当して、左右2分割した苗送り駆動軸105(1,2)の回転駆動が停止するように構成し、戻りストッパー109bをボルトとナットよりなる調節式の構成とし、規制アーム109aから突出するボルトの突出量を変更することにより、戻りストッパー109bが接当体111eに接当してアーム111bの戻りを止めるその戻り位置を変更調節できる構成としている。即ち、規制アーム109aから突出するボルトの突出量を大きくするほど、早く戻りストッパー109bが接当体111eに接当して、左右2分割した苗送り駆動軸105(1,2)の回転駆動量が少なくなって、苗送り量が少なくなる。
【0035】
このように、苗送り駆動軸105(1,2)を左右で2分割して、各苗送りベルト102を駆動する構成にすることにより、多条植えであるにも拘らず苗送り駆動軸の長さを短く構成して、苗送り駆動軸の回転歪や撓み等を防止して確実な苗送りベルト102の駆動を行う構成としたものでありながら、その左右2分割した苗送り駆動軸105(1,2)を駆動する上手側に駆動量の調節装置を設けたので、1箇所の調節で左右2分割した苗送り駆動軸105(1,2)を共に調節できて、苗載台80全体の苗送り量が均一に調節できて、適切な苗植付け作業が行える。
【0036】
前記4つの畦クラッチレバー78(1〜4)を各々操作することにより、各植付畦クラッチ77(1〜4)による植付装置160の駆動の入り・切りに対応して、苗送り駆動も1ユニットで苗送り畦クラッチ106(1〜4)によって伝動が入り・切りされるようになっている。
【0037】
即ち、例えば、畦クラッチレバー78(1)を切り操作すると、操作ワイヤ79(1)が緩み、操作ワイヤ79(1)の先端に設けられたクラッチ操作ピン79a(1)が圧縮ばね79b(1)にて突出作動し、植付畦クラッチ77(1)のカム面に接当して、植付畦クラッチ77(1)が切り操作されて対応する2条の植付装置160の駆動が切れる。同時に、操作ワイヤ107(1)が緩み、操作ワイヤ107(1)の先端に連係された苗送り畦クラッチ作動アーム107a(1)が巻きばね107b(1)にてクラッチ切り方向に作動し、植付畦クラッチ77(1)が切られた2条の植付装置160に対応する苗載部80−1・80−2の苗送り畦クラッチ106(1)が切りになり、その苗送りベルト102の作動が停止する。同様に、畦クラッチレバー78(2)を切り操作すると、操作ワイヤ79(2)が緩み、植付畦クラッチ77(2)が切り操作されて対応する1条の植付装置160の駆動が切れ、同時に、操作ワイヤ107(2)が緩み、植付畦クラッチ77(2)が切られた1条の植付装置160に対応する苗載部80−3の苗送り畦クラッチ106(2)が切りになり、その苗送りベルト102の作動が停止する。そして、畦クラッチレバー78(3)を切り操作すると、操作ワイヤ79(3)が緩み、植付畦クラッチ77(3)が切り操作されて対応する2条の植付装置160の駆動が切れ、同時に、操作ワイヤ107(3)が緩み、植付畦クラッチ77(3)が切られた2条の植付装置160に対応する苗載部80−4・80−5の苗送り畦クラッチ106(3)が切りになり、その苗送りベルト102の作動が停止する。また、畦クラッチレバー78(4)を切り操作すると、操作ワイヤ79(4)が緩み、植付畦クラッチ77(4)が切り操作されて対応する2条の植付装置160の駆動が切れ、同時に、操作ワイヤ107(4)が緩み、植付畦クラッチ77(4)が切られた2条の植付装置160に対応する苗載部80−6・80−7の苗送り畦クラッチ106(4)が切りになり、その苗送りベルト102の作動が停止する。
【0038】
一方、最外側の苗載部80−7は、上下の固定部材88・88を緩めることにより、他の苗載部80−1〜6に対してフェンス部81の部分にて分離して回動させることができ、最外側の苗載部80−7は、隣接する苗載部80−6の上方位置に収納できる構成となっているが、前記中継軸109や2組のリンク機構111や2つのワンウエイクラッチ111dが最外側の苗載部80−7下方位置から離れた他の苗載部80−1〜6の下方位置に配置された構成となっているので、最外側の苗載部80−7を収納する機構が簡潔なものとなり、収納作業も容易に行えて作業性が良い。
【0039】
植付装置160は、前記植付装置取付軸68に連結された回転ケース161と、該回転ケースの両端側部に取り付けられた一対の植付具162,162とからなる。回転ケース161内の伝動機構により植付具162,162が回転ケース161の回転方向と逆方向に回転し、植付具に固定したフォーク状の苗分離具の先端が上下に変形楕円状の閉軌跡を描くよう作動する。これにより、植付具162の苗分離具が、苗取出口90に供給された苗載台80上の苗を分離して保持し、それを圃場面に植え付ける。
【0040】
各フロート170(1〜3)は、フロート支持アーム171の後端部に枢支軸172によって上下に揺動自在に取り付けられ、圃場の泥面に接地した状態では機体重量の一部がこの接地部で受けられる。フロートを接地させた状態で機体を進行させると、フロートが泥面を整地しつつ滑走する。フロート支持アーム171の前端部は左右方向に設けた植付深さ調節パイプ173に固着されており、この植付深さ調節パイプ173を植付深さ調節レバー(図示せず)を用いて回動させることにより、各フロート170(1〜3)の上下位置が変わり、苗の植付深さが調節される。
【0041】
中央のフロート170(2)は圃場面の凹凸を検出するセンサフロートであり、両フロートは一体に上下動するように設けられ、その上下動に応じて油圧バルブ58が作動するようになっている。すなわち、センサフロートが上動すると昇降油圧シリンダ56を伸ばす方向に油圧バルブ58が作動され、逆にセンサフロートが下動すると昇降油圧シリンダ56を縮める方向に油圧バルブ58が作動されるのである。
【0042】
最後に、ハンドル43の近傍に設けた操作レバーSの上方への操作によって、制御装置のバルブ制御手段により油圧バルブ58が切換え作動され、昇降油圧シリンダ56伸長作動して苗植付部4は強制上昇する。また、この苗植付部4が上昇した位置で、操作レバーSを下方へ1回操作すると、制御装置のバルブ制御手段により油圧バルブ58は自動制御状態になりセンサフロート170(2)が圃場面に接地するまで苗植付部4は下降する。そして、この下降状態で操作レバーSをもう1回下方へ操作すると、PTOクラッチ作動手段にてPTOクラッチが入り作動してエンジン21の駆動力がPTOクラッチを介して第一入力軸70に伝動されて7条植えの苗植付部4が駆動される。
【0043】
一方、縦リンク53の下端部から後方に突出する軸受部に苗植付部側に固着したローリング軸54を回転自在に挿入連結して、苗植付部4を進行方向に対して左右に回動自在に装着しているが、ローリング軸54に上方に向けてピン体を突出させ、縦リンク53の下端部にはローリングロック体を回動自在に設けて、ローリングロック体を電動シリンダーにて回動させる構成とし、ローリングロック体がピン体に係合した時には、苗植付部4の左右回動は固定される構成とし、苗植付部4を強制上昇すべく操作レバーSを上方へ操作すると、制御装置のローリングロック手段により電動シリンダーが作動してローリングロック体がピン体に係合して苗植付部4の左右回動が固定される構成にしている。
【0044】
このように、苗植付部4を強制上昇すべく操作レバーSを操作した時に、苗植付部4の左右回動が固定されると、苗植付部4が上昇するときに苗植付部4が左右回動しないので、苗植付部4に載置された苗が乱れることが防止でき、然も、苗植付部4が左右回動しないので機体の左右バランスも良くて、安全に能率よく良好なる作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、乗用型田植機以外に、歩行型田植機や他の野菜移植機・イ草移植機等の色々な苗移植機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】田植機の全体側面図である。(実施例1)
【図2】田植機の全体平面図である。(実施例1)
【図3】苗植付部の要部を示す展開一部断面図である。(実施例1)
【図4】苗載台下部の要部の正面断面図である。(実施例1)
【図5】苗載台下部の側部断面図である。(実施例1)
【図6】畦クラッチと苗送り畦クラッチの切替作用説明図である。(実施例1)
【図7】苗送りベルトの拡大平面図と右側面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0047】
1 田植機(苗移植機)
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 苗植付部
80 苗載台
80−1〜7 苗載部
90 苗取出口
102 苗送りベルト
102a 突起
102c 長孔
103 駆動ローラ
103a 駆動突起
104 従動ローラ
105 苗送り駆動軸
160 苗植付装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台80の苗載部80−1〜7に載置された苗を移送する苗送りベルト102を駆動ローラ103と従動ローラ104とに掛け渡して設けた苗移植機において、該駆動ローラ103の外周面には複数の駆動突起103a…を設け、苗送りベルト102には駆動ローラ103の駆動突起103a…が貫通する長孔102c…を設けて、該駆動ローラ103の駆動突起103a…が苗送りベルト102の長孔102cを貫通して突出した状態で係合して苗送りベルト102を回転駆動することを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
苗送りベルト102の外周面に突起102a…を設けると共に、苗送りベルト102の貫通長孔102c…を貫通した駆動ローラ103の駆動突起103a…の苗送りベルト102外周面からの突出高さが、苗送りベルト102の突起102a…の高さよりも高くなるように構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−121967(P2006−121967A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314123(P2004−314123)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】