説明

苗移植機

【課題】本発明では、走行車体上から空の苗箱を降ろす作業が畦道から圃場に入ることなく行えるようにして、空苗箱の積み降ろし作業を楽に行えるようにすることを課題とする。
【解決手段】ステアリングハンドル23の後方に運転席20を設けた乗用型走行車体10の後部に苗植装置12を設けた苗移植機において、乗用型走行車体10の前側に張り出して走行車体10上から空苗箱7を挿入可能でかつ走行車体10の前側から該空苗箱7を取り出し可能な位置に空苗箱収納枠1を設けたことを特徴とする苗移植機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水稲苗やイグサ苗を圃場に移植する苗移植機で、空の苗箱を取り扱い易くする構成に関する。
【背景技術】
【0002】
苗移植機では、苗植装置の苗タンク上に載せたマット状の苗の他に予備の苗箱を多数走行車体に積載し、苗タンク上の苗が無くなると予備の苗箱から苗を苗タンクへ補給し、空の苗箱を走行車体の適宜位置に仮置きして、搭載した苗が無くなるまで圃場を走りながら移植作業を行い、苗が無くなると畦道に戻って苗と苗箱の補充を行っている。
【0003】
例えば、特開平8−116736号公報には、走行機体の前側左右に三段に予備苗台を設けた予備苗箱支持台を設け、この立設した予備苗箱支持台の内側に空の苗箱を上から差し込む空箱担持板を設けて、苗タンクへ苗の補給が済んだ空の苗箱を空箱担持板に保持して植付作業を続けるようにしている。
【0004】
また、特開2007−222113号公報には、走行機体の前側左右に立設した予備苗箱支持枠に設ける苗箱支持台を略水平にした使用状態と略垂直にした収納状態にするようにする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−116736号公報
【特許文献2】特開2007−222113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移植作業の途中に走行車体に積載した苗が無くなると、苗の補充のために畦道に近づいて停止し、走行車体上から空の苗箱を畦道に移し苗を苗タンク上に載せたり苗の載った苗箱を予備苗箱台に載せたりするが、空苗箱積載位置が畦道から離れていると、苗の補充のために畦道から圃場に入ったり出たりを繰り返さなければならない。
【0007】
そこで、本発明では、走行車体上から空の苗箱を降ろす作業が畦道から圃場に入ることなく行えるようにして、空苗箱の積み降ろし作業を楽に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、ステアリングハンドル23の後方に運転席20を設けた乗用型走行車体10の後部に苗植装置12を設けた苗移植機において、乗用型走行車体10の前側に張り出して走行車体10上から空苗箱7を挿入可能でかつ走行車体10の前側から該空苗箱7を取り出し可能な位置に空苗箱収納枠1を設けたことを特徴とする苗移植機とする。
【0009】
この構成で、走行車体10上で作業者が苗箱から苗タンクへ苗を移した後に空苗箱7を空苗箱収納枠1へ収納し、苗タンク上と予備苗箱の苗が無くなると、走行車体10を移動して走行車体10の前側を畦道に接近して停止し、畦道側の作業者が空苗箱収納枠1から空の苗箱を取り出し、苗を載せた苗箱を予備苗箱積載台へ載せて、再び苗の移植作業を続行する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、空箱の取出しが畦道に居る作業者が圃場へ入ることなく出来るために、苗の植え付け作業中の苗補充作業が楽になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】イグサ苗移植機の全体側面図である。
【図2】イグサ苗移植機の全体平面図である。
【図3】イグサ苗移植機の前側斜視図である。
【図4】空苗箱収納枠の取付部の斜視図である。
【図5】空苗箱収納枠の取付部の拡大斜視図である。
【図6】イグサ苗移植機の運転席側から見た斜視図である。
【図7】別実施例のイグサ苗移植機の全体側面図である。
【図8】繰出ベルト駆動部の拡大側面図と、その一部の断面図である。
【図9】カムアーム操作連動部の側面図である。
【図10】苗押え杆部の平面図と、その一部の拡大断面図である。
【図11】苗押え杆部の側面図である。
【図12】要部の平断面図である。
【図13】要部の側断面図である。
【図14】縦植付フレーム後部の平断面図である。
【図15】苗タンクの拡大平面図である。
【図16】苗タンクの拡大平断面図である。
【図17】苗植装置の側面図である。
【図18】苗植装置の平面図である。
【図19】別実施例の苗植装置の側面図である。
【図20】別実施例の苗タンクの上部側面図である。
【図21】別実施例の苗タンクの上部側面図である。
【図22】別実施例の苗タンクの上部側面図である。
【図23】苗取出ガイドの拡大平面図である。
【図24】苗箱への苗植付道具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい一つの実施形態について説明する。
図面は本発明を用いた一実施例のイグサ苗用の苗移植機であって、苗箱に入れた床土に縦横所定ピッチで一株分ずつのイグサ苗を挿して所定期間育苗したイグサマット状苗Nから一株を掻き取って圃場に移植するものである。
【0013】
乗用型走行車体10の後側に昇降リンク11を介して苗植装置12を連結する。この苗植装置12は、昇降リンク11の後端にロ−リング軸13周りに回動可能に連結される苗植フレーム14上に、苗を載せて繰出供給する繰出ベルト15を有した多条植形態の苗タンク16と、この各苗タンク16の後下端に繰り出される苗を分離して土壌面に挿植する苗植付爪17等を設ける。この縦植付フレーム14の下側には、土壌面を滑走しながら圃場面を均平する中央部のセンタフロート18、及び左右両側のサイドフロート19が設けられている。
【0014】
乗用型走行車体10中央部の運転席20を支持するエンジンカバー21の下には、エンジン22を搭載し、ステアリングハンドル23の旋回操作で操向される左右前輪24と左右後輪25を配置して、エンジン22の駆動にて走行する四輪駆動走行形態の構成としている。
【0015】
そして、運転席20の前方及び左右側方に配置したステップフロア26の前部左右側には支柱38を立設し、この支柱38に補給用苗箱載台27を六段に設けて、ステップフロア26に居る作業者が補給用苗箱載台27から苗箱を取り出して後方の苗タンク16へ苗Nを補給可能にしている。なお、補給用苗箱載台27は、樹脂製の板状体で、同一形状のものを片側六段に配置しているが、最下段の補給用苗箱載台27には、苗箱103を外側寄りに載せるように規制具を取り付けて、運転席20に座った作業者が補給用苗箱載台27に設けるスリットからサイドマーカを見ることが出来るようにしている。
【0016】
図3と図4に示す如く、最下段の補給用苗箱載台27の前側左右にパイプ6とフック5を設け、空苗箱収納枠1の支持枠2の縦杆3をパイプ6に差し込み横杆4をフック5に引っ掛けて取り付けている。パイプ6とフック5は、図5に示す如く、上下二段の補給用苗箱載台27を連結する補強プレート60に設け、補強プレート60はボルト杆61とナット62で補給用苗箱載台27に固定している。
【0017】
空苗箱収納枠1は、桟で上側と内側を解放した箱条に形成し、図6の如く空苗箱収納枠1を内のステアリングハンドル23側に向けて開口しているので、空苗箱7をステップフロア26側から積み重ねて載置出来るようになる。また、この空苗箱収納枠1は機体の前方へ張り出しているので、圃場で機体の前側を畦道に近づけて停止して苗を補給する時に畦道に居る作業者が圃場内へ立ち入ることなく、空苗箱7を空苗箱収納枠1から取り出せるようになる。空苗箱収納枠1の底部に滑り線109を設けて空苗箱7が滑り込み易くしている。
【0018】
図7に示す空苗箱収納枠1は、補給用苗箱載台27から前方へ張り出す支持アーム8の先端に下部を支軸9で前後に回動するように設け、機体側に向けて傾けてステップフロア26側から空苗箱7を空苗箱収納枠1に差し込み、畦道側に向けて傾けて空苗箱7を取り出すようにしている。
【0019】
前記昇降リンク11は平行リンク形態に構成されて、乗用型走行車体10との間に設けられるリフトシリンダ28の伸縮によって昇降する構成としている。車体10の後部にはPTO軸29を設けて、前記苗植装置12の苗植フレーム14に設けられるロ−リング軸13の軸芯上の入力軸30を連結して、苗植装置12の各連動部に動力を伝動する。
【0020】
前記苗植フレーム14には、3つの縦植付フレーム31を後方に向けて延出して設け、この3つの各縦植付フレーム31の各後端部に、駆動回転クランク17aと揺動クランク17bにて昇降駆動される苗植付爪17が装着されている。苗植フレーム14の上側には機体横方向に沿うリ−ドカム軸32や苗タンク16の横移動を案内支持する支持フレーム33、及び苗取出ガイド34を設け、このリ−ドカム軸32の伝動回転によって苗タンク16を苗植付条間隔にわたって左右往復移動させる。
【0021】
苗取出ガイド34には、図23に示す如く、苗取出口39の左右に鋸刃を形成した根切り刃107を取り付けて苗植付爪17による苗の掻き取り時に苗Nの根切りを行うようにしている。また、苗取出口39の奥に第二根切り刃108を設けるか苗取出口39自体に鋸刃を形成するのも良い。さらに、左右の根切り刃107と第二根切り刃108を一体にしたコ字状根切り刃にしても良い。
【0022】
6条植え形態に仕切られる苗タンク16の底部には、繰出ベルト15が下部の駆動軸35と上部の遊転軸36間に張設されて、ラチェット機構37を介して間欠的に駆動される。
【0023】
各縦植付フレーム31の後端部には、上記左右両側に駆動回転クランク17aの回転によって昇降駆動される一対の苗植付爪17が設けられ、この植付爪17を前記苗取出ガイド34に形成の苗取出口39と圃場との間で植付軌跡Aを描いて作動させることによって、各苗タンク16の繰出ベルト15によって繰り出される苗を分離保持して挿植することができる。
【0024】
ここで、各縦植付フレーム31の構成を図12と図13で説明する。基部が苗植フレーム14に固定されて後方に向けて片持ち状に延設された縦植付フレーム31は、左右のケ−ス体31a,31bをボルト45にて固定して構成されている。
【0025】
苗植フレーム14内に左右方向に設けた駆動軸46の第1駆動ベベルギヤ47と縦植付フレーム31の前部に縦方向に回転自在に支架した縦回転軸48の前部に設けた第1従動ベベルギヤ49とを噛合させて、駆動軸46の回転動力を縦回転軸48に伝動している。
【0026】
そして、縦回転軸48の後方に左右方向に設けた第1横軸50aと第2横軸50bとを回転自在に支架し、縦回転軸48の後部に設けた第2駆動ベベルギヤ51と第1横軸50aに設けた第2従動ベベルギヤ52とを噛合させ、第1横軸50aと第2横軸50bとに各々設けたギヤ53,54を噛合させて、第2横軸50bに動力を伝動する構成としている。そして、該第2横軸50bに設けた駆動スプロケット55と苗植付爪17の駆動軸56に設けた従動スプロケット57との間に伝動チェ−ン58を設けて、苗植付爪17の駆動軸56に回転動力を伝達する構成としている。
【0027】
前記駆動回転クランク17aは、該苗植付爪17の駆動軸56に固定されている。そして、揺動クランク17bは、縦植付フレーム31の後部に設けた回動支軸59に上端を回転自在に枢支し、下端を苗植付爪17の後部に回転自在に装着されている。従って、苗植付爪17は、駆動軸56の回転動力にて駆動回転クランク17aが回転して、該駆動回転クランク17aの回転により揺動クランク17bが前後方向に揺動して、苗植付爪17は苗タンク16に載置されたイグサマット状苗Nを苗取出ガイド34の苗取出口39から一株分ずつ取出して、圃場に植付ける作動軌跡Aを作動する構成としている。
【0028】
尚、駆動回転クランク17aには、駆動軸56の反対方向に向けて一体的にバランサ17cが設けられており、苗植付爪17が円滑に作動する構成となっている。そして、イグサ苗移植機の場合条間が21cmと狭いので(田植機の場合は条間が30cm)、隣接する苗植付爪17間の空間は狭くなっている。従って、該バランサ17cの揺動クランク17b下端が苗植付爪17の後部に回転自在に装着されている枢支部位に対応する部分を凹部としてあり、狭い隣接する苗植付爪17間の空間内にバランサ17cが配置できる構成となっている。
【0029】
尚、苗取出ガイド34の最下端部が図8に示すように縦植付フレーム31の左右のケ−ス体31a,31bをボルト45にて固定する部分の間に配置された構成となっており、苗取出ガイド34が更に低い位置になって、苗植付爪17が苗取出ガイド34の苗取出口39から一株分の苗を取出して圃場に植付けるまでの距離が短くなり、苗植付爪17による苗の植付けが適正に行なわれるようになっている。
【0030】
左右方向中央部の縦植付フレーム31の下側にはセンタフロート18を設け、左右外側の縦植付フレーム31の下側にはサイドフロート19が配置されている。これら各フロート18,19は、苗植フレーム14の下側を横方向に沿う支持軸40周りに上下回動調節可能に設けられる支持アーム41の後端に設けたフロート軸42によってその前部が上下揺動自在に支持される。センタフロート18、及びサイドフロート19には、後部上にブラケット43を取り付けて、このブラケット43を各フロート18,19毎に対応して設けられる支持アーム41にフロート軸42によって枢支する。これら各フロート軸42は、苗植付爪17の昇降作動位置近くに設けられ、各フロート18,19の前部上下揺動による苗植付爪17の支持高さの変化が少ないように構成している。
【0031】
このようにして、センタフロート18、サイドフロート19は、各別にフロート軸42周りに前部が上下揺動自在に支架されるが、このうちセンタフロート18の前部上下揺動によって、リンク機構44を介して、前記リフトシリンダ28の油圧回路の制御弁を作動させて、このセンタフロート18が大きく上動すると、このリフトシリンダ28を伸ばして苗植装置12を上昇し、又、センタフロート18が下動すると、リフトシリンダ28を縮少して苗植装置12を下降して、圃場の耕盤の深浅変化に拘らず略一定した苗植付深さを維持するように制御する構成としている。
【0032】
図17と図18には、圃場に植え付けた苗Nに苗植付爪17に付着した泥が付かないように、センタフロート18サイドフロート19に苗植付爪17と下方に向かうガイド杆63を設けた実施例を示している。このガイド杆63によって植付直後の苗Nを側方へガイドして苗植付爪17から泥が苗Nに付着するのを防いでいる。
【0033】
図19は、縦植付フレーム31の後部に設けた回動支軸59上を覆う植付けカバー64を設けた実施例を示し、苗植付爪17が苗の植え付け時に跳ねる泥が苗や回動支軸59に付着するのを防いでいる。
【0034】
次に、前記繰出ベルト15を間欠駆動するラチェット機構37の構成について、説明する。
苗タンク16がリ−ドカム軸32の回転によって左、右横端部に移動案内されたとき、このラチェット機構37を作動させて、駆動軸35を一定角度回動し、繰出ベルト15を一横株並列分だけ後下方の苗取出ガイド34側へ繰出すように構成するものである。
【0035】
前記駆動軸35上にラチェットホイル65と、揺動力ムアーム66を設け、この揺動力ムアーム66に設けられる駆動爪67を該ラチェットホイル65に押圧させて係合させる。このカムアーム66を、リ−ドカム軸32からアーム68、リンクロッド69を介して連動回動することにより、駆動爪67でラチェットホイル65を一定角度繰出側へ間欠的に回動することができる。このカムアーム66にはカム70が形成される。
【0036】
このラチェットホイル65の外周に弾発係合するストッパー用の従動爪71,72が、苗タンク16側部のブラケット73に枢支されている。カムアーム66によってラチェットホイル65を繰出側Kへ回動するときは、このカム70が従動爪72を外方へ押し外して、繰出側K方向の回動を許すように構成している。ラチェットホイル65が繰出側Kへ回動される毎に、これら従動爪71,72が係合して、このラチェットホイル65の回動を係上して、繰出ベルト15の繰出位置を固定し、正確な苗の分離及び苗の植付けを行わせる。
【0037】
このようなラチェット機構37において、このラチェットホイル65の回動角度を変更することによって繰出ベルト15の繰出側Kへの回動量を変えて、苗繰出量を多・少に変更可能に構成している。前記リンクロッド69先端の連動ピン74を、揺動力ムアーム66に形成の長穴75に係合させる。この長穴75は、カムアーム66の揺動軸心部である駆動軸35に対して略放射方向に向けて形成されて、この長穴75に沿って連動ピン74を移動して、この連動ピン74の駆動軸35の軸芯からのアーム長さを変更して位置決めすることができる。連動ピン74は、リンクロッド69を回動自在に連結すると共に、カムアーム66の長穴75に対する嵌合連結位置を移動可能にして、ナット76で締付けて位置決め固定することができる。
【0038】
前記苗移植機において、水稲苗移植機の仕様では、この連動ピン74の移動A3,B3によって、カムアーム66のアーム長比が変るため、水稲苗では苗繰出量が少なくなり、イグサ苗では多くなる。このようなリンクロッド69のアーム68に対する連結リンクピン77部は、スプリング78を介して弾発回動のアーム79が連結されて、前記カムアーム66を常時復帰側へ回動付勢している。これらラチェットホイル65と、揺動力ムアーム66、駆動爪67、及び各従動爪71,72等の関係構成、及び関係位置を変えることなくして、連動ピン74の長穴75に対する位置移動によって、苗繰出ベルト15の回動量を変更することができ、構成、及び操作を簡単化することができる。
【0039】
このような繰出ベルト15は、苗タンク16の運転席20側に向けて延設した操作レバー80の操作によって、リンクロッド81を介して前記揺動力ムアーム66を揺動回動するように連動構成している。運転者が運転席20側から操作レバー80操作しながら、繰出ベルト15を手動回動して苗補給することができ、苗植伝動が停止されている場合や、苗タンク16の横移動の途中位置等で苗補給するとき、苗補給を容易に行うことが出来る。
【0040】
前記苗タンク16の苗載部上方には、苗押え杆82を苗浮き上がり防止の苗押さえ状態と非作用状態とに上下回動可能に設けている。この苗押え杆82は、6条植形態の苗タンク16において、2条植毎の苗タンク16を一体にして3組に構成して、各組毎の苗押え杆82を回動可能にして、苗タンク16下端横側部の支持ステー83に対して支持軸84で枢支させる。各苗押え杆82の支持軸84の一側端にはストッパアーム85を設けて、支持ステー83の係上部86,87に係合させることができ、この苗押え杆82の起立位置、又は倒伏位置を係止する。
【0041】
この各支持軸84の左右端部を軸受するソケット88,89を各支持ステー83に取付ける。苗タンク16の左右両端部に取付けるソケット88は、一側端に鍔部90、及びボルト部91を形成して、支持ステー83に形成のソケット穴に嵌合させて、各支持ステー83の外側からナット92で締め付けて取り付ける。又、苗タンク16幅中間部の支持ステー83には、単なる円筒状のソケット89を一体に取付ける。左右両側の苗タンク16の支持軸84は、これらソケット88,89にわたって嵌合支持し、中間部の苗タンク16に取付けられる支持軸84は、両端部を同形態のソケット89間にわたって嵌合支持させる。従って、これら左右両側部はソケット88を共用して取付けることができると共に、中間部はソケット89を共用して取付けることができる。
【0042】
また、支持ステー83には、苗タンク16の苗取出口39部上方位置に、苗を苗植付爪17の作動軌跡Aから離れる方向に傾斜させる苗抵抗棒110が設けられている。該苗抵抗棒110は、蝶ボルト111にて固定及び回動自在の支持体112に固定されており、このイグサ苗移植機でイグサ苗を移植する時は、蝶ボルト111を緩めて苗抵抗棒110が案内溝113の上端に位置する状態とし、蝶ボルト111を締めて固定する。
【0043】
すると、硬いイグサ苗を少しだけ後方に傾斜させる状態となって、適正なイグサ苗の植付け作業が行える。そして、このイグサ苗移植機で水稲苗を移植する時は、蝶ボルト111を緩めて苗抵抗棒110が案内溝113の下端に位置する状態とし、蝶ボルト111を締めて固定する。すると、柔らかな水稲苗を大きく後方に傾斜させて苗の葉が苗植付爪17と干渉して傷むことを防止でき、適正な水稲苗の植付け作業が行える。
【0044】
次に、苗タンク16の繰出ベルト15の駆動を部分的に停止する各条クラッチ93の構成を説明する。
6条植え用のイグサ苗移植機であるから、苗タンク16は6つの苗載部16−1,16−2,16−3,16−4,16−5,16−6にて構成されており、各苗載部16−1〜16−6は仕切壁部16aにて仕切られた構成となっている。
【0045】
前記繰出ベルト15は、その駆動軸35に装着されて各条クラッチ93を介して回転されるベルト駆動ロ−ル94と上部の遊転軸36に外嵌合されたベルト従動ロ−ルとに巻き掛けて設けられ、ベルト駆動ロ−ル94の回転にてその上に載置されたイグサマット状苗Nを一株分の幅だけ下方に送る構成としている。
【0046】
そして、各条クラッチ93の従動クラッチ爪部93aが設けられた従動体95は、内部に従動クラッチ爪部93aが設けられ、その外形は円筒形状に構成されていて、前記ベルト駆動ロ−ル94の側端部の内部に嵌合して固定された構成となっている。そして、該従動体95は、仕切壁部16aの側方から嵌め込んで繰出ベルト15の下方部で仕切壁部16aにボルト96にて固定した鉄製のコ字状軸受け体97にて回転自在に支持する構成としている。尚、軸受け体97の仕切壁部16a側壁に接当する部位は、該仕切壁部16aと繰出ベルト15との間の空間部に配置された構成となっており、各条クラッチ93部の支持構成を狭い仕切壁部16aに構成できるものとなっている。
【0047】
一方、各条クラッチ93の駆動クラッチ爪部93bは、駆動軸35と一体回転するように該駆動軸35上でスライド自在に設けられた駆動体98の先端部に形成されている。そして、該駆動体98は、別途設けられた操作レバーの操作にて作動する操作ワイヤー99の先端部に連携された作動アーム100にて、軸方向に移動して駆動クラッチ爪部93bが従動クラッチ爪部93a部に係合する状態と離れる状態とに切換えられる構成となっている。従って、上記の操作レバーにて、各条クラッチ93は、各々独立して駆動状態と非駆動状態とに切換えられ、苗タンク16の各苗載部の繰出ベルト15は各別に苗送り作動状態と非作動状態とに切換えられる。
【0048】
図20は、苗タンク16の上端に幅の広い水平延長部16dを形成した実施例で、この水平延長部16dにイグサマット状苗Nを載せたり、苗箱103からイグサマット状苗Nを苗取り板105で掬い取る作業を行ったり出来る。
【0049】
図21は、苗タンク16の上端に苗箱103を載せ置き出来るようにした実施例で、苗押えブラケット101で屈曲した苗押え杆82を取り付け、この苗押え杆82の上に横長の苗箱受102を着脱可能に取り付けている。苗箱受102と苗タンク16上端の平面部16bにかけて苗箱103を載せ置いて、苗箱103からイグサマット状苗Nを取り出して苗タンク16に供給する作業を行うのである。
【0050】
図22は、苗タンク16の上端に苗取り板105を取り付けてイグサマット状苗Nを余分に載せられるようにした実施例で、苗タンク16の上端16cにスリット106を形成し、苗タンク16の裏面に止め具104を取り付けている。苗取り板105をスリット106に差し込んで苗タンク16を上方へ延長し、苗Nを多く載せられるようにしている。
【0051】
図24には、苗箱103に育苗用イグサ苗Nを植え付けるための道具を示している。
苗箱103は長い横桟114と短い縦桟115で四角の箱に形成している。この苗箱103の縦桟115と同じ長さの作条具116には、上面に取手片118を取り付け、下面に横桟114の外側に当てる規定片117と一定間隔で突起させる針状体119を設けている。そして、苗箱103に育苗土を入れて、作条具116で苗箱103の規定片117を横桟114に当てて上面を滑らせると、育苗土に多数の線が描かれるので、この線を基準に育苗用イグサ苗Nを植え付けるのである。その際に、線ピッチより幅のある苗Nは、斜めに挿す。また、苗箱103に入れる育苗土は苗箱103の上面まで入れ、給水してから苗Nを挿していくことで苗Nが安定する。
【0052】
育苗土は、粘土含有量が15〜30%の山土を乾燥後に粉砕して2mmの篩選別を行う。その後に、再び2mmの篩選別を行い、ベントナイトを重量比で0.5〜3.0%未満を混合し、さらに緩効性肥料を混合する。緩効性肥料は、NとPとKが0.1〜0.4g/土1kgとする。
【0053】
PHが5.5〜7.0で、ECが0.1〜0.5mS/cmで株挿しに適した育苗土となる。
【符号の説明】
【0054】
1 空苗箱収納枠
7 空苗箱
12 苗植装置
20 運転席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドル(23)の後方に運転席(20)を設けた乗用型走行車体(10)の後部に苗植装置(12)を設けた苗移植機において、乗用型走行車体(10)の前側に張り出して走行車体(10)上から空苗箱(7)を挿入可能でかつ走行車体(10)の前側から該空苗箱(7)を取り出し可能な位置に空苗箱収納枠(1)を設けたことを特徴とする苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−273555(P2010−273555A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126684(P2009−126684)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】