苗移植機
【課題】 従来の苗載せタンクは、装填される複数枚のマット状苗毎に仕切部によって区画され、苗植付機構によって取り出される苗取出口まで完全に仕切られた構成になっている。これによると、左右の植付条間隔が一定の条間幅にしか設定できない課題がある。
【解決手段】 本発明は、装填される複数枚のマット状苗毎に仕切り構成された横移動可能な苗載せタンク(50)であって、該苗載せタンクの苗取出口(51a)側の一定範囲内は仕切部(49)をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続するように構成する。
【解決手段】 本発明は、装填される複数枚のマット状苗毎に仕切り構成された横移動可能な苗載せタンク(50)であって、該苗載せタンクの苗取出口(51a)側の一定範囲内は仕切部(49)をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗載せタンクに複数枚のマット状苗を横方向に並べて装填し、苗載せタンクを苗植付機構の苗植付作動に連動して横方向に往復移動させながらタンク内のマット状苗を一株分づつ取り出して圃場に植え付けていく苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の苗載せタンクは、装填される複数枚のマット状苗毎に仕切部によって区画され、苗植付機構によって取り出される苗取出口まで完全に仕切られた構成になっている。そして、苗載せタンクの苗取出口側には、一枚のマット状苗に対応して一個の苗植付機構が作用するように配設された構成になっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−266711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の苗タンク構造によると、左右の植付条間隔が一定の条間幅にしか設定できない課題があった。
本発明の課題は、苗植付条数の設定変更によって条間幅を任意に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、装填される複数枚のマット状苗毎に仕切り構成された横移動可能な苗載せタンク(50)を設け、該苗載せタンクの苗取出口(51a)側の一定範囲内は仕切部(49)をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続して載置できる構成としてあることを特徴とする苗移植機とする。
【0005】
苗載せタンク内に装填された数枚の各マット状苗は、苗取出口側近くの途中までは横づれしないように仕切部(49)によって規制案内されるが、苗取出口(51a)近くに達すると、この苗取出し側部分では仕切部がないため、隣接の各マット状苗が左右横方向にわたり連続状に連なった状態となり、苗植付機構(54)による植付条数の設定如何によっては左右横方向の条間幅を通常の条間幅より広くしたり狭くしたり任意に設定することができる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、前記苗載せタンク(50)の苗取出口側には、装填されるマット状苗の枚数とは異なる条数の苗植付機構(54)を配設できる構成としてあることを特徴とする請求項1記載の苗移植機とする。
【0007】
例えば、4枚のマット状苗を装填できる苗載せタンク(50)において、通常は4個の苗植付機構を配設して4条植えとするのに対し、5個の苗植付機構を配設することによって5条植えとした場合には、左右の植付条間隔(条間幅)は通常の条間幅より狭い条間幅に設定することができる。
【0008】
また、3個の苗植付機構の配設により、3条植えとした場合には、通常の条間幅より広い条間幅に設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明によれば、苗載せタンクの苗取出口側の一定範囲内は仕切部をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続状に連なった状態にすることにより、苗植付条数の設定如何によっては左右の条間幅を通常の条間幅より広く、又は狭く設定することができ、通常幅のマット状苗を使用するものでありながら、地域によって異なる希望の条間幅に設定して対応することができる。
【0010】
請求項2記載の本発明によれば、苗載せタンクの苗取出口側には、装填されるマット状苗の枚数とは異なる条数の苗植付機構を配設することによって、例えば、4枚のマット状苗に対応して植え付けする通常の4条植えに対し、1条分増加の5条植えとした場合には、通常の条間幅より狭い条間幅に設定することができる。従って、特に、通常の条間30cmに対する条間25cmの密植田植機を具現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、苗移植機の一例として多条植えの苗植付部を装備した乗用型田植機1を示すものであり、この走行車体2の略中央に駆動源であるエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス12内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪10及び後輪11とに伝えるようにしている。
【0012】
エンジンEは、メインフレーム15上に搭載されており、該エンジンの回転動力がエンジン出力軸20から第1ベルト伝動装置21、油圧ポンプ22の駆動軸22a、第2ベルト伝動装置23を介してミッションケース12のミッション入力軸12aに伝達されるようになっている。第2ベルト伝動装置23は、ベルト式変速装置として構成され、副変速レバー24の操作により高速伝動と低速伝動に切り替えられるようになっている。走行動力は一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10を駆動し、残りが後輪ギヤケース17に伝達されて後輪11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され,これより植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0013】
エンジンEの上部はエンジンカバー30で覆われており、その上方に運転席31が設置され、運転席31の前方には、フロントカバー32や操作ボックス33、前輪4,4を操舵するステアリングハンドル34が装備されている。また、運転席31の後方側には施肥装置5が設置されている。35は予備苗載せ台である。
【0014】
更に、走行車体2の後部には苗植付部4が昇降リンク機構3を介して装着され、この苗植付部4と車体2との間には苗植付部4を上下に昇降する油圧昇降シリンダ45が装備されている。前記昇降リンク機構3は、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備え、これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設したリンクベースフレーム42に回動自在に連結され、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0015】
苗植付部4は、本例では4枚の土付きマット状苗で5条植が可能な構成としている。つまり、仕切部49によってマット状苗毎に仕切られた苗載せ面に4枚のマット状苗が載置される苗載せタンク50、苗載せタンク上の苗を一株分づつ各条の苗取出口51a,…に供給する苗送りベルト52、苗取出口に供給された苗を圃場に植え付ける植付条数(5条)分の苗植付機構54…を有する植付装置53、圃場面上を滑走して整地するセンタフロート55c、サイドフロート55s等からなり、前記油圧昇降シリンダ45の伸縮によって昇降させ、非作業位置に上昇したり、対地作業位置(対地植付位置)に下降したりすることができる。
【0016】
苗載せタンク50は、前側が上位となるよう傾斜して設けられ、支持フレーム56及び支持レール57上に支持されていて、横送り機構により苗植付機構54の苗植付作動に連動して左右横方向に往復動するよう連動構成されている。苗載せタンクの下端側には、前記支持レール57と一体成形された苗受枠51が設けられ、5条分の苗取出口51aが開口されている。
【0017】
苗載せタンク50外側のフェンス部48,48間には、4枚のマット状苗N1,N2,N3,N4を装填するるが、各マット状苗N1,N2,N3,N4を仕切る仕切部49,49,49は、苗載せタンク50の苗取出口51a側の一定範囲内は仕切部を切除した構成とすることで、隣接する各マット状苗が互いに接触し合い左右横方向にわたって連続するようになっている。従って、各仕切部49はできるだけ薄いプレートで構成することが望ましい。
【0018】
各苗植付機構54は、一対の苗植付爪54a,54a…を備えるとともに、苗載せタンクに載置されているマット状苗から一株分のブロック苗を切断して取り出し、圃場面に下降搬送して植え付けていくように構成されている。
【0019】
図2に示すように、苗載せタンク内に並置された4枚のマット状苗幅が120cmの場合において、苗植付機構54を5個配設することによって5条植えとした場合には、各植付爪54a,54a間の苗植付条数幅は25cmとなり、通常の植付条数幅より狭い条数幅が得られる。なお、この場合の苗載せタンクの横移動範囲は20cmとする。なお、この植付条数幅25cmの仕様は、特に中国(中華民国)においての要望とされている。
【0020】
施肥装置5は、肥料ホッパ36に貯留されている粒状の肥料を繰出部37によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース38を介して施肥ガイド39まで導き、先端の作溝体39aによって苗植付条近傍に形成される施肥溝内に落し込むようになっている。
【0021】
次に苗載せタンクの別実施例について説明する。中国苗のような軟弱苗の場合は、苗がめくれて外側のフェンス部や内側の仕切部(フェンス)に乗り上がり、苗が真っ直ぐに案内補給することができない問題があった。これを防ぐため、図3〜図5に示すように、通常高さのフェンス部48及び仕切部49に対し、これらより上方に高く延長する延長フェンス部60及び延長仕切部61を設けて着脱自在に構成する。つまり、フェンス部48及び仕切部49には縦長の取付穴62を設けてあると共に、延長フェンス部60及び延長仕切部61には差し込み式リブ63を設けて、前記取付穴62に対して抜き差し自在に構成している。リブ63には抜け止め突起63aが形成されている。上記のように、延長フェンス部及び延長仕切部を取り付けた場合には軟弱な中国苗にあってもフェンス部や仕切部への乗り上がりを防ぐことができ、苗を適正に案内補給するることができ、苗取量も適正となる。
【0022】
図6〜図8に示す実施例では、苗載せタンクの仕切部(フェンス部48)49に苗の浮き上がりを阻止する苗抑え板64を設けた構成としている。苗抑え板64は、これと一体でステー67に支承された支持パイプ65を軸芯として回動自在に軸支され、図6に示すように、左右に拡げてマット苗両端の浮き上がりを阻止する苗抑え状態と、図7に示すように、上方に折り畳んで仕切部(フェンス部)を高くする収納状態とに切り替えできるようになっており、ロックピン66の上げ操作でロックを解除し、ロックピンの下げ操作で図6及び図7の状態にてロック(例えばロックピンの角軸部分が支持パイプの角穴部分に嵌合)する構成としている。
【0023】
また、図9及び図10に示す実施例では、苗載せタンクの上端側で左右両端部に苗補給ガイド板68を設けて、機体中央側の運転席側から苗補給が容易にできるように構成している。苗補給ガイド板68は、支点Q回りに回動可能で、スプリングにより外側に向けて付勢されており、図10(イ)状態から図10(ロ)状態に内向き回動するよう構成されている。そして、このガイド板の内向き回動時には、起伏可能なガイドローラ69が倒伏してストッパーとなるよう構成されている。
【0024】
図11に示すように、HSTレバー27の操作でHSTのトラニオン軸を回動操作するノッチ部70を通常の大ピッチギヤ71と、これより倍以上小刻みに形成された小ピッチギヤ72とからなるように構成し、特に、ニュートラル位置近くでは、大ピッチギヤ71から小ピッチギヤ72に切り替えることによって作業状況に応じた出力の微調整ができるようになっている。大ピッチギヤから小ピッチギヤへの切り替えは、HSTレバーのノブ部分を回転させることで、図12に示すように、ワイヤ73が引かれロッド74を押し出すことで、付勢スプリング75により付勢された小ピッチギヤ72が大ピッチギヤ71より外側に押し出されて作用するようになっている。
【0025】
図13に示す実施例では、ノッチ部におけるギヤの歯と歯のピッチが等分ではなく、ニュートラル附近で小ピッチに構成することで、ニュートラル附近での出力を微調整することができ、走行開始時、急速な走り出しがなくなり安全である。
【0026】
次に、ブレーキペダルによる主変速レバーの中立復帰構造について説明する。
従来は、図14に示すように、主変速レバー76に付いた主変速アーム77をブレーキペダル78と連動固定されている中立復帰プレート79に取り付けたローラ80の付いた上下二つの作動アーム81u,81dによって上下を挟み込んだ構成になっている。従って、ブレーキペダルを踏み込むと、二つの作動アームに付いたローラ80,80によって主変速アーム77を押し、前進若しくは後進側にあった主変速レバーが中立位置に復帰する。
【0027】
そこで、本例では、図15に示すように、上側の作動アーム81uを廃止し、この部分に付いていたローラを中立復帰プレート79に直接取り付ける。このローラと主変速アームの接触位置の調整は、主変速レバー位置を決める主変速ロッド82により主変速アーム77の位置を動かして決める。
【0028】
本例のような上記構成によれば、従来構成のものに比べて調整個所が少なく、また、部品点数も減少し、安価に実施することができる。
苗を植え付けながら同時に施肥していく施肥装置付き田植機において、従来は、苗の植付株数に関係なく、苗植付条近傍に形成される筋状の溝内に肥料を連続状に落し込むようにしている。本例では、図16に示すように、施肥装置5の繰出部37の繰出ロール回転と苗植付機構54の苗植付作動回転とを同期させ、苗植付作動毎に繰出ロールをタイミングよく回転させて肥料を繰出し、植付苗の隣接近傍だけに施肥するよう連動構成している。なお、かかる手段はモータでマイコン制御するようにしてもよい。このような構成によれば、肥料が少なくて済み、要所に施肥するので効きめも良好となる。
【0029】
図17〜図20に示す実施例は、水田車輪の泥落し機構をもつフロートを車輪駆動軸に取り付け、車輪の泥上げを阻止すると共に、機体の沈下を抑制する装置を示すものである。
【0030】
水田車輪(後輪)11の前後には、該車輪の水かき片85が通過する程度の穴86及び泥かき棒87を有した泥落しフロート88,88を配置して設け、車輪駆動軸84の軸芯P1回りに回動可能な回動アーム89に取り付け、押圧スプリング90によって前後のフロート88,88を常時田面方向に向けて押圧付勢した構成としている。また、泥落しフロート88,88は軸芯P2回りにも回動可能(回動範囲制限)な構成とし、車輪逆回転時の破損を防止するようにしている。車輪が回転し水かき片が上がってくると、それに沿って泥落し棒が移動しながら泥をかき落す。この時、後側のフロート泥によって持ち上げられる。これにより、前側のフロートが押し下げられ、田面に強く押し付けられることになって浮力が増大する。
【0031】
なお、図21に示すように、単一の泥落しフロート88を後輪ファイナルケース14に固定的に取り付け、定位置で作用するように構成することもできる。但し、この場合、フロートに過大負荷が加わると、一時的に回避できる構成にしておくことが望ましい。
【0032】
図22に示すように、農作業用のモニタパネル92には、車速や油温、油量、作業状態の表示の他にストップウォッチ93を装備して時間計測が行えるようにする。更に、その時間内での作業時間や作業状態を不揮発性メモリ付き演算回路94によってメモリ内に記録し、呼び出して平均車速、燃費などと共にモニタ出力できるようにする。加えて紙出力もできるようにプリンタ95を設置する。
【0033】
作業状態を認識するセンサを設ける。そして、計測開始から終了までの間の作業時間をメモリに記録する。同様に計測した車速や作業負荷、燃料消費量から作業効率(計測時間内の作業時間割合)や平均作業負荷(作業時間内における作業負荷の平均値)、燃費等を算出する。結果をモニタ出力し、プリンタで紙出力する。作業状況をデータとして残せるので、以後の農作業にも役立ち、大規模営農化に貢献することができる。また、作業負荷等も出力できるので、技術の伝承等の一助となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】田植機の側面図
【図2】苗載せタンクと苗植付機構との配置関係を示す平面図
【図3】別実施例の苗載せタンクの背面図及びその一部の斜視図
【図4】同上一部の斜視図
【図5】延長フェンス部の平面図
【図6】苗載せタンクの要部の背面図
【図7】苗載せタンクの要部の背面図
【図8】苗載せタンクの一部の平面図
【図9】苗載せタンクの背面図
【図10】苗補給ガイド板の作用状態(イ)(ロ)を示す背面図
【図11】HSTレバーのノッチ切替機構を示す斜視図
【図12】同上要部の側面図
【図13】別実施例のノッチ切替機構を示す斜視図
【図14】主変速レバーの中立復帰機構(従来)を示す側面図
【図15】主変速レバーの中立復帰機構(本例)を示す側面図
【図16】苗植付後の施肥状態と施肥装置との関係を示す説明図
【図17】泥落し機構を備えた水田車輪の側面図
【図18】同上要部の背面図
【図19】図17のS1−S1断面図
【図20】同上要部の側断面図
【図21】泥落し機構を備えた水田車輪の側面図
【図22】田植機の運転操作部の斜視図
【符号の説明】
【0035】
49 仕切部
50 苗載せタンク
51a 苗取出口
54 苗植付機構
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗載せタンクに複数枚のマット状苗を横方向に並べて装填し、苗載せタンクを苗植付機構の苗植付作動に連動して横方向に往復移動させながらタンク内のマット状苗を一株分づつ取り出して圃場に植え付けていく苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の苗載せタンクは、装填される複数枚のマット状苗毎に仕切部によって区画され、苗植付機構によって取り出される苗取出口まで完全に仕切られた構成になっている。そして、苗載せタンクの苗取出口側には、一枚のマット状苗に対応して一個の苗植付機構が作用するように配設された構成になっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−266711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の苗タンク構造によると、左右の植付条間隔が一定の条間幅にしか設定できない課題があった。
本発明の課題は、苗植付条数の設定変更によって条間幅を任意に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、装填される複数枚のマット状苗毎に仕切り構成された横移動可能な苗載せタンク(50)を設け、該苗載せタンクの苗取出口(51a)側の一定範囲内は仕切部(49)をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続して載置できる構成としてあることを特徴とする苗移植機とする。
【0005】
苗載せタンク内に装填された数枚の各マット状苗は、苗取出口側近くの途中までは横づれしないように仕切部(49)によって規制案内されるが、苗取出口(51a)近くに達すると、この苗取出し側部分では仕切部がないため、隣接の各マット状苗が左右横方向にわたり連続状に連なった状態となり、苗植付機構(54)による植付条数の設定如何によっては左右横方向の条間幅を通常の条間幅より広くしたり狭くしたり任意に設定することができる。
【0006】
請求項2記載の本発明は、前記苗載せタンク(50)の苗取出口側には、装填されるマット状苗の枚数とは異なる条数の苗植付機構(54)を配設できる構成としてあることを特徴とする請求項1記載の苗移植機とする。
【0007】
例えば、4枚のマット状苗を装填できる苗載せタンク(50)において、通常は4個の苗植付機構を配設して4条植えとするのに対し、5個の苗植付機構を配設することによって5条植えとした場合には、左右の植付条間隔(条間幅)は通常の条間幅より狭い条間幅に設定することができる。
【0008】
また、3個の苗植付機構の配設により、3条植えとした場合には、通常の条間幅より広い条間幅に設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明によれば、苗載せタンクの苗取出口側の一定範囲内は仕切部をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続状に連なった状態にすることにより、苗植付条数の設定如何によっては左右の条間幅を通常の条間幅より広く、又は狭く設定することができ、通常幅のマット状苗を使用するものでありながら、地域によって異なる希望の条間幅に設定して対応することができる。
【0010】
請求項2記載の本発明によれば、苗載せタンクの苗取出口側には、装填されるマット状苗の枚数とは異なる条数の苗植付機構を配設することによって、例えば、4枚のマット状苗に対応して植え付けする通常の4条植えに対し、1条分増加の5条植えとした場合には、通常の条間幅より狭い条間幅に設定することができる。従って、特に、通常の条間30cmに対する条間25cmの密植田植機を具現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、苗移植機の一例として多条植えの苗植付部を装備した乗用型田植機1を示すものであり、この走行車体2の略中央に駆動源であるエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス12内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪10及び後輪11とに伝えるようにしている。
【0012】
エンジンEは、メインフレーム15上に搭載されており、該エンジンの回転動力がエンジン出力軸20から第1ベルト伝動装置21、油圧ポンプ22の駆動軸22a、第2ベルト伝動装置23を介してミッションケース12のミッション入力軸12aに伝達されるようになっている。第2ベルト伝動装置23は、ベルト式変速装置として構成され、副変速レバー24の操作により高速伝動と低速伝動に切り替えられるようになっている。走行動力は一部が前輪ファイナルケース13に伝達されて前輪10を駆動し、残りが後輪ギヤケース17に伝達されて後輪11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され,これより植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。
【0013】
エンジンEの上部はエンジンカバー30で覆われており、その上方に運転席31が設置され、運転席31の前方には、フロントカバー32や操作ボックス33、前輪4,4を操舵するステアリングハンドル34が装備されている。また、運転席31の後方側には施肥装置5が設置されている。35は予備苗載せ台である。
【0014】
更に、走行車体2の後部には苗植付部4が昇降リンク機構3を介して装着され、この苗植付部4と車体2との間には苗植付部4を上下に昇降する油圧昇降シリンダ45が装備されている。前記昇降リンク機構3は、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備え、これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設したリンクベースフレーム42に回動自在に連結され、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。
【0015】
苗植付部4は、本例では4枚の土付きマット状苗で5条植が可能な構成としている。つまり、仕切部49によってマット状苗毎に仕切られた苗載せ面に4枚のマット状苗が載置される苗載せタンク50、苗載せタンク上の苗を一株分づつ各条の苗取出口51a,…に供給する苗送りベルト52、苗取出口に供給された苗を圃場に植え付ける植付条数(5条)分の苗植付機構54…を有する植付装置53、圃場面上を滑走して整地するセンタフロート55c、サイドフロート55s等からなり、前記油圧昇降シリンダ45の伸縮によって昇降させ、非作業位置に上昇したり、対地作業位置(対地植付位置)に下降したりすることができる。
【0016】
苗載せタンク50は、前側が上位となるよう傾斜して設けられ、支持フレーム56及び支持レール57上に支持されていて、横送り機構により苗植付機構54の苗植付作動に連動して左右横方向に往復動するよう連動構成されている。苗載せタンクの下端側には、前記支持レール57と一体成形された苗受枠51が設けられ、5条分の苗取出口51aが開口されている。
【0017】
苗載せタンク50外側のフェンス部48,48間には、4枚のマット状苗N1,N2,N3,N4を装填するるが、各マット状苗N1,N2,N3,N4を仕切る仕切部49,49,49は、苗載せタンク50の苗取出口51a側の一定範囲内は仕切部を切除した構成とすることで、隣接する各マット状苗が互いに接触し合い左右横方向にわたって連続するようになっている。従って、各仕切部49はできるだけ薄いプレートで構成することが望ましい。
【0018】
各苗植付機構54は、一対の苗植付爪54a,54a…を備えるとともに、苗載せタンクに載置されているマット状苗から一株分のブロック苗を切断して取り出し、圃場面に下降搬送して植え付けていくように構成されている。
【0019】
図2に示すように、苗載せタンク内に並置された4枚のマット状苗幅が120cmの場合において、苗植付機構54を5個配設することによって5条植えとした場合には、各植付爪54a,54a間の苗植付条数幅は25cmとなり、通常の植付条数幅より狭い条数幅が得られる。なお、この場合の苗載せタンクの横移動範囲は20cmとする。なお、この植付条数幅25cmの仕様は、特に中国(中華民国)においての要望とされている。
【0020】
施肥装置5は、肥料ホッパ36に貯留されている粒状の肥料を繰出部37によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース38を介して施肥ガイド39まで導き、先端の作溝体39aによって苗植付条近傍に形成される施肥溝内に落し込むようになっている。
【0021】
次に苗載せタンクの別実施例について説明する。中国苗のような軟弱苗の場合は、苗がめくれて外側のフェンス部や内側の仕切部(フェンス)に乗り上がり、苗が真っ直ぐに案内補給することができない問題があった。これを防ぐため、図3〜図5に示すように、通常高さのフェンス部48及び仕切部49に対し、これらより上方に高く延長する延長フェンス部60及び延長仕切部61を設けて着脱自在に構成する。つまり、フェンス部48及び仕切部49には縦長の取付穴62を設けてあると共に、延長フェンス部60及び延長仕切部61には差し込み式リブ63を設けて、前記取付穴62に対して抜き差し自在に構成している。リブ63には抜け止め突起63aが形成されている。上記のように、延長フェンス部及び延長仕切部を取り付けた場合には軟弱な中国苗にあってもフェンス部や仕切部への乗り上がりを防ぐことができ、苗を適正に案内補給するることができ、苗取量も適正となる。
【0022】
図6〜図8に示す実施例では、苗載せタンクの仕切部(フェンス部48)49に苗の浮き上がりを阻止する苗抑え板64を設けた構成としている。苗抑え板64は、これと一体でステー67に支承された支持パイプ65を軸芯として回動自在に軸支され、図6に示すように、左右に拡げてマット苗両端の浮き上がりを阻止する苗抑え状態と、図7に示すように、上方に折り畳んで仕切部(フェンス部)を高くする収納状態とに切り替えできるようになっており、ロックピン66の上げ操作でロックを解除し、ロックピンの下げ操作で図6及び図7の状態にてロック(例えばロックピンの角軸部分が支持パイプの角穴部分に嵌合)する構成としている。
【0023】
また、図9及び図10に示す実施例では、苗載せタンクの上端側で左右両端部に苗補給ガイド板68を設けて、機体中央側の運転席側から苗補給が容易にできるように構成している。苗補給ガイド板68は、支点Q回りに回動可能で、スプリングにより外側に向けて付勢されており、図10(イ)状態から図10(ロ)状態に内向き回動するよう構成されている。そして、このガイド板の内向き回動時には、起伏可能なガイドローラ69が倒伏してストッパーとなるよう構成されている。
【0024】
図11に示すように、HSTレバー27の操作でHSTのトラニオン軸を回動操作するノッチ部70を通常の大ピッチギヤ71と、これより倍以上小刻みに形成された小ピッチギヤ72とからなるように構成し、特に、ニュートラル位置近くでは、大ピッチギヤ71から小ピッチギヤ72に切り替えることによって作業状況に応じた出力の微調整ができるようになっている。大ピッチギヤから小ピッチギヤへの切り替えは、HSTレバーのノブ部分を回転させることで、図12に示すように、ワイヤ73が引かれロッド74を押し出すことで、付勢スプリング75により付勢された小ピッチギヤ72が大ピッチギヤ71より外側に押し出されて作用するようになっている。
【0025】
図13に示す実施例では、ノッチ部におけるギヤの歯と歯のピッチが等分ではなく、ニュートラル附近で小ピッチに構成することで、ニュートラル附近での出力を微調整することができ、走行開始時、急速な走り出しがなくなり安全である。
【0026】
次に、ブレーキペダルによる主変速レバーの中立復帰構造について説明する。
従来は、図14に示すように、主変速レバー76に付いた主変速アーム77をブレーキペダル78と連動固定されている中立復帰プレート79に取り付けたローラ80の付いた上下二つの作動アーム81u,81dによって上下を挟み込んだ構成になっている。従って、ブレーキペダルを踏み込むと、二つの作動アームに付いたローラ80,80によって主変速アーム77を押し、前進若しくは後進側にあった主変速レバーが中立位置に復帰する。
【0027】
そこで、本例では、図15に示すように、上側の作動アーム81uを廃止し、この部分に付いていたローラを中立復帰プレート79に直接取り付ける。このローラと主変速アームの接触位置の調整は、主変速レバー位置を決める主変速ロッド82により主変速アーム77の位置を動かして決める。
【0028】
本例のような上記構成によれば、従来構成のものに比べて調整個所が少なく、また、部品点数も減少し、安価に実施することができる。
苗を植え付けながら同時に施肥していく施肥装置付き田植機において、従来は、苗の植付株数に関係なく、苗植付条近傍に形成される筋状の溝内に肥料を連続状に落し込むようにしている。本例では、図16に示すように、施肥装置5の繰出部37の繰出ロール回転と苗植付機構54の苗植付作動回転とを同期させ、苗植付作動毎に繰出ロールをタイミングよく回転させて肥料を繰出し、植付苗の隣接近傍だけに施肥するよう連動構成している。なお、かかる手段はモータでマイコン制御するようにしてもよい。このような構成によれば、肥料が少なくて済み、要所に施肥するので効きめも良好となる。
【0029】
図17〜図20に示す実施例は、水田車輪の泥落し機構をもつフロートを車輪駆動軸に取り付け、車輪の泥上げを阻止すると共に、機体の沈下を抑制する装置を示すものである。
【0030】
水田車輪(後輪)11の前後には、該車輪の水かき片85が通過する程度の穴86及び泥かき棒87を有した泥落しフロート88,88を配置して設け、車輪駆動軸84の軸芯P1回りに回動可能な回動アーム89に取り付け、押圧スプリング90によって前後のフロート88,88を常時田面方向に向けて押圧付勢した構成としている。また、泥落しフロート88,88は軸芯P2回りにも回動可能(回動範囲制限)な構成とし、車輪逆回転時の破損を防止するようにしている。車輪が回転し水かき片が上がってくると、それに沿って泥落し棒が移動しながら泥をかき落す。この時、後側のフロート泥によって持ち上げられる。これにより、前側のフロートが押し下げられ、田面に強く押し付けられることになって浮力が増大する。
【0031】
なお、図21に示すように、単一の泥落しフロート88を後輪ファイナルケース14に固定的に取り付け、定位置で作用するように構成することもできる。但し、この場合、フロートに過大負荷が加わると、一時的に回避できる構成にしておくことが望ましい。
【0032】
図22に示すように、農作業用のモニタパネル92には、車速や油温、油量、作業状態の表示の他にストップウォッチ93を装備して時間計測が行えるようにする。更に、その時間内での作業時間や作業状態を不揮発性メモリ付き演算回路94によってメモリ内に記録し、呼び出して平均車速、燃費などと共にモニタ出力できるようにする。加えて紙出力もできるようにプリンタ95を設置する。
【0033】
作業状態を認識するセンサを設ける。そして、計測開始から終了までの間の作業時間をメモリに記録する。同様に計測した車速や作業負荷、燃料消費量から作業効率(計測時間内の作業時間割合)や平均作業負荷(作業時間内における作業負荷の平均値)、燃費等を算出する。結果をモニタ出力し、プリンタで紙出力する。作業状況をデータとして残せるので、以後の農作業にも役立ち、大規模営農化に貢献することができる。また、作業負荷等も出力できるので、技術の伝承等の一助となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】田植機の側面図
【図2】苗載せタンクと苗植付機構との配置関係を示す平面図
【図3】別実施例の苗載せタンクの背面図及びその一部の斜視図
【図4】同上一部の斜視図
【図5】延長フェンス部の平面図
【図6】苗載せタンクの要部の背面図
【図7】苗載せタンクの要部の背面図
【図8】苗載せタンクの一部の平面図
【図9】苗載せタンクの背面図
【図10】苗補給ガイド板の作用状態(イ)(ロ)を示す背面図
【図11】HSTレバーのノッチ切替機構を示す斜視図
【図12】同上要部の側面図
【図13】別実施例のノッチ切替機構を示す斜視図
【図14】主変速レバーの中立復帰機構(従来)を示す側面図
【図15】主変速レバーの中立復帰機構(本例)を示す側面図
【図16】苗植付後の施肥状態と施肥装置との関係を示す説明図
【図17】泥落し機構を備えた水田車輪の側面図
【図18】同上要部の背面図
【図19】図17のS1−S1断面図
【図20】同上要部の側断面図
【図21】泥落し機構を備えた水田車輪の側面図
【図22】田植機の運転操作部の斜視図
【符号の説明】
【0035】
49 仕切部
50 苗載せタンク
51a 苗取出口
54 苗植付機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装填される複数枚のマット状苗毎に仕切り構成された横移動可能な苗載せタンク(50)を設け、該苗載せタンクの苗取出口(51a)側の一定範囲内は仕切部(49)をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続して載置できる構成としてあることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記苗載せタンク(50)の苗取出口側には、装填されるマット状苗の枚数とは異なる条数の苗植付機構(54)を配設できる構成としてあることを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項1】
装填される複数枚のマット状苗毎に仕切り構成された横移動可能な苗載せタンク(50)を設け、該苗載せタンクの苗取出口(51a)側の一定範囲内は仕切部(49)をなくして各マット状苗が左右横方向にわたって連続して載置できる構成としてあることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記苗載せタンク(50)の苗取出口側には、装填されるマット状苗の枚数とは異なる条数の苗植付機構(54)を配設できる構成としてあることを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−99044(P2010−99044A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275604(P2008−275604)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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