説明

茎切断装置

【課題】 作物の茎の上部を先行して切断し、下部を後行して切断できるようにする。
【解決手段】 移動機体2に装着されたフレーム3に、下回転刃4を回転して根菜作物Sの茎S1の下部を切断する下切断機構5と、上回転刃6を下回転刃4と同方向に回転して茎S1の上部を切断する上切断機構7と、原動機8から動力で上下切断機構5、7を駆動する駆動機構9とを備える。前記上切断機構7の上回転刃6を下切断機構5の下回転刃4より移動機体2進行方向において前上方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植生されている根菜類の農作物の茎を切断する茎切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に植生されている根菜作物を処理する従来技術においては、特許文献1に開示されているように、挟持ベルトで根菜作物を畝から引き抜いて、搬送しながら茎を回転刃で切断し、根を収穫すると共に、茎を側方へ放出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−32823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、ニンニク、ユリ、チューリップ等の、茎が細く弱小の作物の収穫には適用できるが、例えば、キャッサバ等の茎が太く頑強な作物の場合には、茎が障害になって根菜作物を収穫することが困難であり、挟持ベルトでは頑強な茎を搬送することが困難である。
そこで、根菜作物を収穫する前に頑強な茎を予め切断しておくことが要求され、また、その茎の一部を種茎として回収し易くしておくことが要求される。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しかつ要求に応えられるようにした茎切断装置を提供することを目的とする。
本発明は、作物の茎の上部を先行して切断し、下部を後行して切断できるようにした茎切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
第1に、移動機体2に装着されたフレーム3に、下回転刃4を回転して根菜作物Sの茎S1の下部を切断する下切断機構5と、上回転刃6を下回転刃4と同方向に回転して茎S1の上部を切断する上切断機構7と、原動機8から動力で上下切断機構5、7を駆動する駆動機構9とを備えており、
前記上切断機構7の上回転刃6を下切断機構5の下回転刃4より移動機体2進行方向において前上方に配置していることを特徴とする。
【0007】
これによれば、植生されている作物Sの茎S1を上部と中途部とに分けて上から順に切断できる。また、作物Sの上に広がった茎S1の上部分から切断することになり、効率よく横放出できる。
第2に、前記駆動機構9は原動機8から動力を伝達して下切断機構5を駆動する下駆動手段11と、この下駆動手段11から上切断機構7へ動力を伝達して上切断機構7を駆動する上駆動手段12とを有していることを特徴とする。
【0008】
これによれば、装置全体重心を低く抑えることができると共に、安価で効率的な伝動機構が得られる。
第3に、前記上駆動手段12は下駆動手段11から上方へ延設した伝動軸15と、この伝動軸15の上部から前方の上回転刃6へ動力を伝達する上伝動手段16とを有することを特徴とする。
【0009】
これによれば、上伝動手段16への伝動手段のための配置空間が前後方向に小さくでき、移動機体2から前方に大きく出っ張らないで配置することができる。
第4に、前記上切断機構7は平面視において下回転軸13の前方でかつ同一方向に回転する左右一対の上回転軸14にそれぞれ上回転刃6を設けていることを特徴とする。
これによれば、幅広い面積での切断が行なえるため上に向かって広がった茎S1の切断に適しており、枝分かれしている茎S1の上部を確実に切断し、かつ切断しながらその上部切断箇所より上の茎S1を上回転刃6で側方へ放出できる。
【0010】
第5に、前記下切断機構5は1本の下回転軸13に下回転刃4を設けていることを特徴
とする。
これによれば、1本の下回転軸13の下回転刃4で、茎S1の下部を確実かつ効率よく切断でき横側方へ放出できる。
第6に、前記下回転刃4の切断方向前方側となる下回転軸13の側方に前記原動機8を配置し、この原動機8の移動機体進行方向前面側を覆いかつ切断後の茎S1の放出を案内するガイド部材20を前記フレーム3に設けていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、下回転軸13の空いた側方に原動機8を設置して、装置の前後幅を可及的に小さくでき、この原動機8を覆うガイド部材20で、原動機8側への茎S1の侵入を防止でき、かつ切断後の茎S1の放出を案内することができる。
第7に、前記下切断機構5は同一方向に回転する左右一対の下回転軸13にそれぞれ下回転刃4を設けていることを特徴とする。
【0012】
これによれば、作物Sが千鳥状に植生されていても、移動機体2を大きく操舵することなく、茎S1の下部を確実に切断でき、かつ切断しながら下部切断箇所より上の茎S1中間を左右下回転刃4で強力に横側方へ放出できる。
第8に、前記下回転刃4よりも移動機体進行方向前方に突出しかつ下回転刃4の切断方向と反対側から下回転刃4へ茎S1を案内するデバイダ22を有することを特徴とする。
【0013】
これによれば、移動機体2進行方向前方でかつ下回転刃4の切断方向と反対側から下回転刃4へ茎S1を案内でき、側方にはみ出した枝葉の切断も可能となる。
第9に、前記フレーム3の下方でかつ下切断機構5より後方に、根菜作物Sの左右に植生する草を刈る左右一対のモア機構23を中央間隔を開けて配置し、左右各モア機構23の左右外側に前記原動機8から動力を伝達する補助伝動手段24を設けていることを特徴とする。
【0014】
これによれば、左右モア機構23で根菜作物Sの左右に植生する草を刈ることができ、作物Sの堀取り作業においてつまりを発生するような余分な雑草を、茎切断、放出と同時に除去処理することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、植生されている作物の茎を上部と中途部とに分けて上から順に切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態を示す全体側面図である。
【図2】同全体平面図である。
【図3】同正面図である。
【図4】同左側面図である。
【図5】下切断機構の断面側面図である。
【図6】下切断機構の正面図である。
【図7】下切断機構の平面図である。
【図8】上切断機構の断面側面図である。
【図9】上切断機構の平面図である。
【図10】第2実施形態を示す左側面図である。
【図11】下切断機構及びモア機構の一部正面図である。
【図12】第3実施形態を示す全体側面図ある。
【図13】同全体平面図である。
【図14】同上下切断機構及びモア機構の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜9に示す第1実施形態において、根菜作物Sの茎S1を切断する茎切断装置1Aはトラクタ等の移動機体2に昇降自在に装着されている。移動機体2にはブーム28が装着され、ブーム28の先端に茎切断装置1Aが装着され、ブーム28とフロントガード29との間に設けられたブームシリンダ30によって、茎切断装置1Aは高さ調整自在になっている。
【0018】
ブーム28の左右の先端に左右一対の装着具31がそれぞれ縦ピン32を介して連結され、この装着具31に茎切断装置1Aのフレーム3の底板3aの背面に設けた左右一対の連結具33がそれぞれ2本の横ピン34を介して連結されている。
前記装着具31には横ピン34が挿通される孔31aが上下方向複数配列され、前記連結具33には、図1、4、5に示すように、横ピン34が挿通される孔33aが上下方向円弧状に複数配列され、両孔31a、33aの内、上下方向中央の孔とその他の一致した孔に横ピン34を挿通することにより、連結具33は選択した孔によって決まる傾斜角度で装着具31に対して連結される。
【0019】
前記連結具33は両孔31a、33aの内の中央孔に横ピン34のみを挿通することにより前後傾動させることができ、ブーム28の先端の高さに応じて連結具33を垂直姿勢にし、その状態で中央孔以外の合致する孔31a、33aに第2の横ピン34を挿入して装着具31に連結する。
茎切断装置1Aの高さは、作物Sを植生している畝の高さに対応して、また、茎S1の切断したい高さに対向して変更され、茎切断装置1Aが目的高さになるようにブーム28の先端の高さを決定し、その高さで茎切断装置1Aを圃場に対して略垂直姿勢になるように装着具31との角度を設定する。
【0020】
前記茎切断装置1Aは作物Sの茎S1を上下2段で切断可能であり、フレーム3上に、茎S1の下部を切断する下切断機構5と、茎S1の上部を切断する上切断機構7と、原動機8から動力で上下切断機構5、7を駆動する駆動機構9とを備え、上切断機構7の上回転刃6を下切断機構5の下回転刃4より移動機体2進行方向に対して前上方に配置している。
【0021】
フレーム3の底板3a上には左右方向中央にギヤケース35が固定され、このギヤケース35の左右一側方(実施形態では移動機体2の進行方向右側)にはエンジン又は油圧モータ等の原動機8が配置され、原動機8とギヤケース35の入力軸35aとの間には下ベルト伝動手段37が設けられ、入力軸35aと下回転軸13との間には噛合している一対のベベルギヤ36が設けられ、これらによって下駆動手段11が構成されている。
【0022】
前記原動機8は駆動機構9のギヤケース35と左右に並べて配置されているので、フレーム3の底板3a上で前後方向のスペースを占有することがなく、茎切断装置1Aの前後寸法を短くできるようにしている。
前記下切断機構5は、フレーム3の左右方向中央に設けたギヤケース35に1本の下回転軸13を垂直に配置し、ギヤケース35から下方へ突出した下回転軸13の下端にフランジ板38が固着され、このフランジ板38の下面に下刃取付円板39がボルト固定され、この下刃取付円板39の下面に周方向複数枚(図2、7では5枚)の下回転刃4がボルト固定されている。
【0023】
下回転刃4は長方形板の回転方向前後縁及び径内外縁に刃部が形成されており、下刃取付円板39に対して径内外方向に取り付け勝手を変更することにより、前後両縁の刃部を切断用に使用できる。
原動機8からの動力は、入力軸35aから一対のベベルギヤ36を介して下回転軸13に伝達され、下回転刃4は図2、7では平面視時計方向に回転駆動される。
【0024】
前記ギヤケース35の上部には支持筒21が立設され、この支持筒21に下回転軸13の上部及び伝動軸15が支持されかつ覆われている。伝動軸15は下回転軸13の上端に同心状に連結され、この伝動軸15の上部は支持筒21の上部に回転自在に支持されている。
図8、9において、前記支持筒21の上部には伝動ケース40の後部が固定されている。この伝動ケース40は支持筒21に固定の後部から左右前方へ平面視略V字形状に広がっており、伝動ケース40の左右先端側にはそれぞれ上回転軸14が回転自在に支持され、1本の下回転軸13と前方の左右上回転軸14とは平面視三角配置されている。
【0025】
伝動ケース40内において、伝動軸15の上部と左右上回転軸14の上部との間には、ベルト伝動手段で形成された上伝動手段16が設けられており、左右上回転刃6を下回転刃4と同方向(平面視時計方向)に回転駆動する。前記伝動軸15と上伝動手段16とで
上切断機構7を駆動する上駆動手段12が構成されている。
前記各上回転軸14の下端には上刃取付円板41が着脱自在に固定され、この上刃取付円板41の下面には周方向複数枚(図2では3枚)の上回転刃6がボルト固定されている。従って、上切断機構7の上回転刃6は下切断機構5の下回転刃4より移動機体2進行方向に対して前上方に配置されている。
【0026】
左右上回転刃6は左右上回転軸14間で反対方向の回転となるので、左右の上刃取付円板41は上下にずらされていて、左右上回転刃6が干渉することはない。
前記伝動ケース40の左右前部の下部には、上回転刃6の前方及び左右外方を覆う刃カバー43が設けられている。この刃カバー43は伝動ケース40に固定の円弧形状の固定カバー43Aと、この固定カバー43Aに円弧方向位置調整自在に設けられた可動カバー43Bとを有する。
【0027】
前記可動カバー43Bは、切断作業時は固定カバー43Aに重合させて上回転刃6の前方を開放し、非切断作業時は固定カバー43Aから突出して上回転刃6の前方を閉鎖する。右側可動カバー43Bは、切断作業時に右上回転刃6の移動機体2進行方向前方だけでなく、右側方、即ち、上回転刃6の切断方向前方も開放し、切断した茎S1の放出を妨害しないようになっている。
【0028】
前記支持筒21の上部には伝動ケース40の前後中途部を支持する平面視略V字形状の支持部材44が設けられ、支持筒21の上下方向中途部には前面側にデバイダ22が設けられている。
このデバイダ22は図1、2に示すように、パイプ材、棒材等で形成されており、支持筒21から前方でかつ左右外側(左側)へ下向き傾斜した主杆22Aと、この主杆22Aの前部から後方であって主杆22Aより上方でかつ左右中央側へ延設されたガイド杆22Bとを有しており、移動機体2進行方向前方でかつ下回転刃4の切断方向と反対側から下回転刃4及び上回転刃6へ茎S1を案内可能にしている。
【0029】
図1〜4において、前記フレーム3には底板3aの左右側部からそれぞれ前後支柱部材3bが立設され、底板3a及び前後支柱部材3bを利用して、切断後の茎S1の放出を案内するガイド部材20と、土石の飛散を防ぐ防御部材45とが設けられている。
前記ガイド部材20は、上下3本の横パイプ材を複数本の縦パイプ材で連結してガイド枠20aを形成し、このガイド枠20aに網材20bを取り付けて構成されている。
【0030】
ガイド部材20は底板3a及び前支柱部材3bに取り付けられていて、上下回転刃4、6間に配置されており、平面視略コの字形状であって、原動機8及び駆動機構9の前方及び左右側方を覆って、茎S1の侵入を防止しながら切断後の茎S1が側方へ放出されるように案内する。
ガイド部材20は平面視略Lの字形状に形成して底板3aの左右端部に取り付けてもよく、少なくとも切断後の茎S1の放出を案内すべく、下回転刃4の切断方向前方側に配置されておればよい。
【0031】
防御部材45は後支柱部材3bに取り付けられて茎切断装置1Aの背面に配置されており、側面視ヘの字形状であって、特に上回転刃6から移動機体2へ切断茎S1が飛散するのを防止している。この防御部材45はパイプ材製の枠体45aの上部及び中途部に網材45bを取り付けて構成されている。
次に、前記第1実施形態の茎切断装置1Aによる茎切断作業を説明する。
【0032】
圃場の畝に植生された根菜作物Sの茎S1に対して、ブームシリンダ30を介して茎切断装置1Aを最適な高さに配置し、原動機8及び駆動機構9で上下切断機構5、7を駆動しながら移動機体2を前進させる。
デバイダ22で茎S1を移動機体2の進行方向左側に傾倒している茎S1を中央へ寄せながら、進行方向最先端に位置する左右上回転刃6が、下回転刃4に先行して作物Sの枝分かれしている茎S1の上部を順次切断し、切断箇所より上側の切断茎S1を左右上回転刃6の切断方向前方(移動機体進行方向右方向)へ放出する。放出された切断茎S1は畝間溝に集められる。
【0033】
上部が切断された作物Sの茎S1は、次に下切断機構5の下回転刃4を打ち当たること
になり、この下回転刃4によって枝分かれしている茎S1の下部が切断され、切断箇所より上側の切断茎S1を下回転刃4の切断方向前方(上回転刃6と同一の右方向)へ放出する。切断茎S1は原動機8の移動機体進行方向前面側を覆うガイド部材20によって案内され、放出された切断茎S1は畝間溝に集められる。
【0034】
この上下切断箇所の間の茎S1は、移植用の種茎として利用でき、茎S1が下部まで切断された残りの作物Sは、後処理として堀取り機によって根菜とともに掘り取られる。この堀取り機は、移動機体2の後方に連結装着することもでき、移動機体2に堀取り機を装着すると、作物Sの茎Sの切断処理から根菜の掘り取りまで同時に作業できる。
図10、11に示す第2実施形態において、茎切断装置1Bは、フレーム3の底板3aの下方でかつ下切断機構5より後方に、作物Sの左右に植生する草を刈る左右一対のモア機構23を中央間隔を開けて配置している。
【0035】
フレーム3の底板3aの左右端部には補助ケース47が固定され、この補助ケース47の後下部にモア機構23のモア軸48が回転自在に支持されており、モア軸48は補助ケース47内の補助伝動手段24によって原動機8から動力が伝達される。
モア軸48は補助ケース47に支持された端部軸48Aに筒体48Bを固定し、この筒体48Bの外周に周方向及び軸方向に間隔をおいて多数本のタイン48Cが設けられている。
【0036】
茎切断装置1Bの駆動機構9は、底板3a上のギヤケース35が横長に形成され、伝動軸15から左右方向に離れた位置に、原動機8から下ベベル伝動手段37を介して動力が伝達される入力軸35aが設けられている。
ギヤケース35には、伝動軸15から一方の補助ケース47に至る第1水平軸49Aと、伝動軸15から他方の補助ケース47に至る第2水平軸49Bと、入力軸35aと第1水平軸49Aとの間の正逆切換伝動手段50とが設けられている。
【0037】
前記正逆切換伝動手段50は、入力軸35aに設けたベベルギヤ50aと、第1水平軸49Aに相対回転自在に嵌合しかつ前記ベベルギヤ50aと同時噛合している正逆ベベルギヤ50b、50cと、この正逆ベベルギヤ50b、50cを第1水平軸49Aに択一的に結合するシフタ部材50dと、シフタ部材50dを摺動操作するシフトレバー50eとを有し、入力軸35aからの動力を正転又は逆転して左右の補助伝動手段24に伝達可能にしている。
【0038】
左右補助伝動手段24の一方には逆転ギヤ51が設けられており、左右モア軸48を同一方向に回転するように構成されている。
前記第1、第2水平軸49A、49Bの対向端部にはベベルピニオン52が形成されており、両ベベルピニオン52は伝動軸15に設けられたベベルギヤ36と同時噛合しており、第1水平軸49Aの動力はベベルギヤ36を介して伝動軸15と第2水平軸49Bとに伝達される。
【0039】
原動機8の動力は入力軸35aから正逆切換伝動手段50を介して第1水平軸49Aに伝達され、第1水平軸49Aから左右一方の補助伝動手段24を介して同側のモア軸48に伝達され、これと同時にベベルギヤ36を介して第2水平軸49Bに伝達され、第2水平軸49Bから左右他方の補助伝動手段24を介して同側のモア軸48に伝達され、左右モア軸48を同一方向に回転させ、左右多数本のタイン48Cで草を刈る。
【0040】
そして、前記ベベルギヤ36の回転によって伝動軸15が駆動され、伝動軸15の下端の下回転軸13を駆動し、伝動軸15の上部から上伝動手段16を介して左右上回転軸14を駆動する。
前記茎切断装置1Bは、作物Sの茎S1の上下2箇所の切断と同時に作物Sの左右側の除草ができ、しかも正逆切換伝動手段50によって切断茎S1の放出方向を左右に切り換えることができる。
【0041】
前記下回転刃4及び上回転刃6は、回転方向前後縁及び径内外縁に刃部が形成されており、切断方向を正逆どちら回転にしても切断できる。
図12〜14に示す第3実施形態において、茎切断装置1Cは、下切断機構5が同一方向に回転する左右一対の下回転軸13A、13Bにそれぞれ下回転刃4を設けて構成され
、原動機8が下切断機構5の後方に配置され、また、第2実施形態と同様に左右一対のモア機構23を備えている。
【0042】
上切断機構7は第1実施形態と同様に上回転刃6が左右一対配置されているが、上駆動手段12は左右一対あって、左右それぞれの下回転軸13A、13Bから上回転軸14A、14Bへ動力を伝達する構造となっている。伝動ケース40は別個に形成することもできるが、共通形状になっている。
フレーム3の底板3aの後部に原動機8が搭載され、この底板3aの前上部に左右ブラケット55を介して駆動機構9のギヤケース35が支持され、このギヤケース35の左右両端にモア機構23の補助ケース47が連結されている。
【0043】
前記茎切断装置1Cのギヤケース35は中央ギヤケース35Aと左右ギヤケース35B、35Cとを左右方向に連結しており、中央ギヤケース35Aには入力軸35aと中央水平軸56とが支持され、入力軸35aと中央水平軸56との間に第2実施形態と同様の正逆切換伝動手段50が設けられている。
前記左右各ギヤケース35B、35Cには、左右下回転軸13A、13Bがそれぞれ上下方向に貫通し、この各回転軸13A、13Bを挟んで中央水平軸56の各端部と、左右各外端が左右各補助伝動手段24の入力軸となる第1、第2水平軸49A、49Bの各内端とが配置され、各回転軸13A、13Bにベベルギヤ36A、36Bが設けられ、このベベルギヤ36A、36Bにそれぞれ中央水平軸56の両端のベベルギヤ56aと第1、第2水平軸49A、49Bのベベルピニオン52とがそれぞれ噛合している。
【0044】
原動機8の動力は入力軸35aから正逆切換伝動手段50を介して中央水平軸56に伝達され、中央水平軸56からベベルギヤ36Aを介して第1水平軸49Aに伝達され、第1水平軸49Aから逆転ギヤ51及び補助伝動手段24を介して同側(左側)のモア軸48に伝達され、これと同時に中央水平軸56からベベルギヤ36Bを介して第2水平軸49Bに伝達され、第2水平軸49Bから左右他方の補助伝動手段24を介して同側(右側)のモア軸48に伝達され、左右モア軸48を同一方向に回転させ、左右多数本のタイン48Cで草を刈る。
【0045】
そして、前記ベベルギヤ36A、36Bの回転によって左右下回転軸13A、13Bが同一回転方向(図13の平面図において時計方向)に駆動され、左右下回転刃4による切断動作が行われ、これと同時に左右伝動軸15A、15Bが同一回転方向に駆動され、伝動軸15A、15Bの上部から上伝動手段16を介して左右上回転軸14が駆動され、左右下回転刃4の上方で先行して左右上回転刃6による切断動作が行われる。
【0046】
前記茎切断装置1Cは、作物Sの茎S1の上下2箇所の切断と同時に作物Sの周囲の除草ができ、しかも正逆切換伝動手段50によって切断茎S1の放出方向を左右に切り換えることができる。
なお、本発明は前記実施形態における各部材の形状及びそれぞれの前後・左右・上下の位置関係は、図1〜14に示すように構成することが最良である。しかし、前記各実施形態に限定されるものではなく、部材、構成を種々変形したり、組み合わせを変更したりすることもできる。
【0047】
例えば、下切断機構5の下回転軸13を1本にしかつ上切断機構7の上回転軸14を1本にして、左右中央に配置したり、上切断機構7を上下複数段に設けて、下段より上段を次第に前方に配置し、茎S1を3箇所以上で切断するように構成したりしてもよい。
また、駆動機構9は、伝動軸15を割愛して、原動機8又は下ベルト伝動手段37から上伝動手段16へ動力を伝達するようにしたり、下ベルト伝動手段37の代わりに正逆転切換え可能なギヤ伝動手段を設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 茎切断装置
2 移動機体
3 フレーム
4 下回転刃
5 下切断機構
6 上回転刃
7 上切断機構
8 原動機
9 駆動機構
11 下駆動手段
12 上駆動手段
13 下回転軸
14 上回転軸
15 伝動軸
16 上伝動手段
20 ガイド部材
21 支持筒
22 デバイダ
23 モア機構
24 補助伝動手段
S 根菜作物
S1 茎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機体(2)に装着されたフレーム(3)に、下回転刃(4)を回転して根菜作物(S)の茎(S1)の下部を切断する下切断機構(5)と、上回転刃(6)を下回転刃(4)と同方向に回転して茎(S1)の上部を切断する上切断機構(7)と、原動機(8)から動力で上下切断機構(5、7)を駆動する駆動機構(9)とを備えており、
前記上切断機構(7)の上回転刃(6)を下切断機構(5)の下回転刃(4)より移動機体(2)進行方向において前上方に配置していることを特徴とする茎切断装置。
【請求項2】
前記駆動機構(9)は原動機(8)から動力を伝達して下切断機構(5)を駆動する下駆動手段(11)と、この下駆動手段(11)から上切断機構(7)へ動力を伝達して上切断機構(7)を駆動する上駆動手段(12)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の茎切断装置。
【請求項3】
前記上駆動手段(12)は下駆動手段(11)から上方へ延設した伝動軸(15)と、この伝動軸(15)の上部から前方の上回転刃(6)へ動力を伝達する上伝動手段(16)とを有することを特徴とする請求項2に記載の茎切断装置。
【請求項4】
前記上切断機構(7)は平面視において下回転軸(13)の前方でかつ同一方向に回転する左右一対の上回転軸(14)にそれぞれ上回転刃(6)を設けていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の茎切断装置。
【請求項5】
前記下切断機構(5)は1本の下回転軸(13)に下回転刃(4)を設けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の茎切断装置。
【請求項6】
前記下回転刃(4)の切断方向前方側となる下回転軸(13)の側方に前記原動機(8)を配置し、この原動機(8)の移動機体進行方向前面側を覆いかつ切断後の茎(S1)の放出を案内するガイド部材(20)を前記フレーム(3)に設けていることを特徴とする請求項5に記載の茎切断装置。
【請求項7】
前記下切断機構(5)は同一方向に回転する左右一対の下回転軸(13)にそれぞれ下回転刃(4)を設けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の茎切断装置。
【請求項8】
前記下回転刃(4)よりも移動機体進行方向前方に突出しかつ下回転刃(4)の切断方向と反対側から下回転刃(4)へ茎(S1)を案内するデバイダ(22)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の茎切断装置。
【請求項9】
前記フレーム(3)の下方でかつ下切断機構(5)より後方に、根菜作物(S)の左右に植生する草を刈る左右一対のモア機構(23)を中央間隔を開けて配置し、左右各モア機構(23)の左右外側に前記原動機(8)から動力を伝達する補助伝動手段(24)を設けていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の茎切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−57(P2012−57A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138346(P2010−138346)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】