茎稈刈取作業機の補助分草装置
【課題】補助分草装置を簡易的に構成してコストダウンを図ると共に、慣性力による振動の発生を抑える。
【解決手段】茎稈の株元付近を分草するデバイダ8と、茎稈を引き起す引起装置9とを備えるコンバイン1の補助分草装置23であって、引起装置9の前方に、上下方向に沿って分草杆24を配置し、該分草杆24の下部を、引起装置9の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させる。
【解決手段】茎稈の株元付近を分草するデバイダ8と、茎稈を引き起す引起装置9とを備えるコンバイン1の補助分草装置23であって、引起装置9の前方に、上下方向に沿って分草杆24を配置し、該分草杆24の下部を、引起装置9の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン、バインダなどの茎稈刈取作業機の補助分草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の茎稈刈取作業機では、デバイダで分草された茎稈を引起装置で引き起すが、引起装置は、引起ケースから側方に突出する引起爪の上昇動作で茎稈を引き起すように構成されているため、走行方向に対して直交する方向に倒伏した茎稈を刈り取る場合には、引起作用や分草作用が不足するという問題がある。
【0003】
そこで、上記のような倒伏茎稈でも良好に分草や引き起しができる補助引起装置(補助分草装置)が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。この補助引起装置は、引起ケースの前方に上下方向に沿って取付けるものであって、補助引起ケースから前方に突出する引起爪の上昇動作で茎稈を引き起すように構成されているため、走行方向に対して直交する方向に倒伏した茎稈であっても、良好な分草及び引き起しが可能となる。
【特許文献1】特開2000−116225号公報
【特許文献2】特開平6−30632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される補助引起装置は、補助引起ケースに内装される駆動輪と従動輪との間に、複数の引起爪が起伏自在に枢着された引起チェンを懸回し、該引起チェンの上昇経路では、引起爪を起立させて補助引起ケースから前方に突出させる一方、下降経路では、引起爪を倒伏させて補助引起ケース内に収容するように構成されるため、構造が複雑で価格が高くなってしまうという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に示されるように、簡易的な補助分草装置も提案されているが、この補助分草装置は、引起装置の前面に堆積した藁屑や雑草を剥離除去し、地上に落すことを目的としたものであり、特許文献1に示す補助引起装置と同等の引起作用や分草作用は期待できない。つまり、特許文献2の補助分草装置は、杆状の分草具を小型の電動モータで前後駆動させるものであって、倒伏茎稈の引き起しに必要な駆動力を発生することは困難である。また、特許文献2の補助分草装置は、分草具の上部及び下部を揺動アームで支持し、いわゆる平行リンクを構成しているので、仮に連続駆動させたとすると、前後方向に交互に発生する慣性力によって、大きな振動源になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、茎稈の株元付近を分草するデバイダと、茎稈を引き起す引起装置とを備える茎稈刈取作業機の補助分草装置であって、前記引起装置の前方に、上下方向に沿って分草杆を配置し、該分草杆の下部を、引起装置の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆の上部を、左右方向に沿う駆動軸を中心として円運動させることを特徴とする。このようにすると、補助分草装置を簡易的に構成し、大幅なコストダウンが図れる。また、分草杆の上部を、左右方向に沿う駆動軸を中心として円運動させるので、単純な往復運動を行う場合に比べ、慣性力による振動の発生を抑えることができる。
また、前記分草杆の下部が、デバイダに形成した前後方向の長孔を介してデバイダフレームで支持されることを特徴とする。このようにすると、分草杆の下部を支持する揺動支持部がデバイダの裏側に隠れるので、揺動支持部の耐久性を向上できると共に、揺動支持部に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
また、前記分草杆の下部を支持する揺動支持部材が、上方揺動姿勢でもデバイダの下方に位置することを特徴とする。このようにすると、揺動支持部材を常にデバイダの裏側に隠すことができるので、揺動支持部材の耐久性を向上できると共に、揺動支持部材に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
また、前記円運動の方向を、分草杆の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定したことを特徴とする。このようにすると、茎稈に引起方向の力を作用させることができるので、簡易的な補助分草装置でありながら、倒伏茎稈を引き起すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2、刈取茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3、選別した穀粒を貯溜する穀粒タンク4、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5、オペレータが乗車する運転部6、左右一対のクローラ走行装置からなる走行部7などを備えて構成されている。
【0008】
図1〜図3に示すように、前処理部2は、未刈り茎稈の株元付近を分草するデバイダ8、茎稈を引き起す引起装置9、茎稈の株元付近を掻き込むスターホイル10及び掻込ベルト11、茎稈の株元を切断する刈刃12、刈取茎稈を集稈して後方へ搬送する株元搬送装置13、茎稈の扱深さを調節する扱深さ搬送装置14などを備えて構成され、搬送HST15から供給される動力で動作する。
【0009】
デバイダ8は、刈取条端及び刈取条間に位置するように、左右方向に所定の間隔を存して、前処理部2の前端部に複数設けられている。デバイダ8の個数は、刈取条数+1であり、例えば、4条刈りの前処理部2は、5つのデバイダ8を備える。デバイダ8は、嘴状に形成され、デバイダフレーム16の前端部に取り付けられる。デバイダ8の形状には大小があり、正面視において、引起装置9の爪突出側(合流経路側)に小さいデバイダ8が配置され、その反対側に大きいデバイダ8が配置される。
【0010】
引起装置9は、前処理部2の前部に上下方向に沿って配置される引起ケース17、引起ケース17の上部に設けられる駆動スプロケット18、引起ケース17の下部に設けられる従動スプロケット19、両スプロケット18、19間に懸回される引起チェン20、引起ケース17の正面を覆う引起カバー21などを備えて構成される。引起チェン20には、複数の引起爪22が所定間隔を存して起伏自在に枢着されており、引起チェン20の上昇経路では、引起爪22を起立させて引起ケース17から側方に突出させる一方、下降経路では、引起爪22を倒伏させて引起ケース17内に収容するようになっている。つまり、引起装置9は、引起ケース17から側方に突出する引起爪22の上昇動作で茎稈を引き起すように構成されている。引起装置9の個数は、刈取条数に一致しており、例えば、4条刈りの前処理部2は、4つの引起装置9を備える。この場合、左側2条分の刈り取り茎稈と、右側2条分の刈り取り茎稈をそれぞれ合流させる関係上、左側2条分の引起装置9は、左側合流経路に向けて引起爪22が突出するように配置され、右側2条分の引起装置9は、右側合流経路に向けて引起爪22が突出するように配置される。
【0011】
図1及び図2に示すように、引起装置9の前方には、補助分草装置23が設けられている。補助分草装置23の個数は、任意であるが、刈り取り茎稈の合流経路数と一致させることが好ましい。例えば、4条刈りの前処理部2では、2つの補助分草装置23を設ける。この場合、補助分草装置23の取付位置は、正面視において、左右の合流経路間(中央のデバイダ8上)と、未刈り地側端(左端のデバイダ8上)であり、ここで積極的な分草作用及び引起作用を行う。
【0012】
図4〜図10に示すように、補助分草装置23は、上下方向に沿って配置される分草杆24と、駆動アーム25を介して分草杆24の上部を支持する駆動ケース(上側支持部)26と、揺動アーム(揺動支持部材)27を介して分草杆24の下部を支持する下側支持部28とを備えて構成されている。
【0013】
揺動アーム27は、分草杆24の下部を、引起装置9の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、駆動アーム25は、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させる。つまり、分草杆24の上部を円運動させると、分草杆24が前後及び上下に変位し、茎稈に対して分草方向及び引起方向の力を作用させることが可能になる。これにより、補助分草装置23を簡易的に構成し、大幅なコストダウンが図れる。しかも、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させるので、単純な往復運動を行う場合に比べ、慣性力による振動の発生を抑えることができる。
【0014】
下側支持部28は、デバイダフレーム16に溶着された板材からなり、揺動アーム27を介して、分草杆24の下部を上下揺動自在に支持している。補助分草装置23の取付位置に設けられるデバイダ8には、前後方向の長孔8aが形成されており、この長孔8aに分草杆24が挿通されている。言い換えれば、分草杆24の下部は、デバイダ8に形成した前後方向の長孔8aを介してデバイダフレーム16で支持される。このようにすると、分草杆24の下部を支持する揺動支持部(揺動アーム27及び下側支持部28)がデバイダ8の裏側に隠れるので、揺動支持部の耐久性を向上できると共に、揺動支持部に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0015】
また、分草杆24の下部を支持する揺動アーム27は、上方揺動姿勢(上限位置)でもデバイダ8の下方に位置することが好ましい。このようにすると、揺動アーム27を常にデバイダ8の裏側に隠すことができるので、揺動アーム27の耐久性を向上できると共に、揺動アーム27に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0016】
駆動ケース26は、引起装置9の正面上部に取り付けられ、駆動アーム25を介して分草杆24の上部を支持している。本実施形態の駆動ケース26は、引起装置9の駆動スプロケット軸30から動力を取り出す入力軸31と、左右方向に沿う前述の駆動軸29と、入力軸31の動力を駆動軸29に伝動するベベルギヤ32とを備えて構成されている。
【0017】
駆動アーム25の回転方向、すなわち分草杆24の上部に係る円運動の方向は、分草杆24の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定することが好ましい。例えば、図4や図6に示す左側面図において、分草杆24の上部を時計回りに円運動させる。このようにすると、茎稈に引起方向の力を作用させることができるので、簡易的な補助分草装置23でありながら、倒伏茎稈を引き起すことが可能になる。
【0018】
また、分草杆24の上部を支持する駆動ケース26と、分草杆24の下部を支持する下側支持部28は、補強フレーム33を介して連結されている。例えば、パイプ材からなる補強フレーム33の上端部を、駆動ケース26のボルト34で共締めすると共に、補強フレーム33の下端部を、揺動アーム27の揺動支点軸35に固定する。このようにすると、駆動ケース26と下側支持部28の軸間距離を一定にし、分草杆24を円滑に駆動させることができる。また、分草杆24、駆動ケース26、下側支持部28及び補強フレーム33を予めアッシーとし、アッシーの状態で引起装置9に取り付けることができるので、補助分草装置23の取り付けが容易になる。
【0019】
また、補強フレーム33は、分草杆24の後方に配置し、正面視で分草杆24と重複させることが好ましい。このようにすると、補強フレーム33に対する茎稈の引っ掛かりを抑制することができる。
【0020】
次に、補助分草装置23の取り付け手順について、図10を参照して説明する。尚、本実施形態のデバイダフレーム16は、前処理フレームに一体化される固定フレーム16aと、該固定フレーム16aの前端部に挿入連結される着脱フレーム16bとからなり、デバイダ8及び下側支持部28は、着脱フレーム16bに設けられるものとする。
【0021】
本実施形態の補助分草装置23は、分草杆24、駆動ケース26、下側支持部28、補強フレーム33、デバイダ8及び着脱フレーム16bを予めアッシーAとし、アッシーAの状態で引起装置9に取り付けられる。このアッシーAを引起装置9に取り付ける場合は、まず、引起装置9の引起カバー21を外した状態で、引起ケース17に支持プレート36を3本のボルト37で固定し、その後、引起ケース17に引起カバー21を固定する。次に、着脱フレーム16bを固定フレーム16aに挿入すると共に、駆動ケース26の入力軸31を駆動スプロケット軸30に挿入する。その後、駆動ケース26を1本の固定ボルト38で支持プレート36に固定すると共に、着脱フレーム16bを1本のボルト39で固定フレーム16aに固定すれば、アッシーA(補助分草装置23及びデバイダ8)の取り付けが完了する。
【0022】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、茎稈の株元付近を分草するデバイダ8と、茎稈を引き起す引起装置9とを備えるコンバイン1の補助分草装置23であって、引起装置9の前方に、上下方向に沿って分草杆24を配置し、該分草杆24の下部を、引起装置9の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させるので、補助分草装置23を簡易的に構成し、大幅なコストダウンが図れる。また、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させるので、単純な往復運動を行う場合に比べ、慣性力による振動の発生を抑えることができる。
【0023】
また、分草杆24の下部が、デバイダ8に形成した前後方向の長孔8aを介してデバイダフレーム16で支持されるので、分草杆24の下部を支持する揺動支持部がデバイダ8の裏側に隠れることになり、その結果、揺動支持部の耐久性を向上できると共に、揺動支持部に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0024】
また、分草杆24の下部を支持する揺動アーム27が、上方揺動姿勢でもデバイダ8の下方に位置するので、揺動アーム27を常にデバイダ8の裏側に隠すことができる。これにより、揺動アーム27の耐久性を向上できると共に、揺動アーム27に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0025】
また、分草杆24の上部に係る円運動の方向を、分草杆24の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定したので、茎稈に引起方向の力を作用させることができる。その結果、簡易的な補助分草装置23でありながら、倒伏茎稈を引き起すことができる。
【0026】
次に、本発明の第二実施形態に係る補助分草装置23について、図11を参照して説明する。但し、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同一の符号を付けることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0027】
図11に示すように、第二実施形態の補助分草装置23は、分草杆24に抵抗体40を備える点が前記実施形態と相違している。抵抗体40は、分草杆24が茎稈に接触する際に、茎稈に前方上方への抵抗力を作用させるもので、積極的な分草及び引き起しが可能になる。ちなみに、本実施形態の抵抗体40は、前方に突出する三角形の凸部40aを、上下方向に所定間隔を存して複数形成した板材で構成されるが、茎稈に前方上方への抵抗力を作用させるものであれば、形状は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの全体左側面図である。
【図2】コンバインの全体正面図である。
【図3】前処理部の動力伝動系統図である。
【図4】補助分草装置の全体左側面図である。
【図5】補助分草装置の全体正面図である。
【図6】補助分草装置の上部左側面図である。
【図7】補助分草装置の上部正面図である。
【図8】補助分草装置の下部左側面図である。
【図9】補助分草装置の下部正面図である。
【図10】補助分草装置の分解斜視図である。
【図11】第二実施形態を示す補助分草装置の左側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 コンバイン
2 前処理部
8 デバイダ
8a 長孔
9 引起装置
16 デバイダフレーム
23 補助分草装置
24 分草杆
25 駆動アーム
26 駆動ケース
27 揺動アーム
28 下側支持部
29 駆動軸
33 補強フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン、バインダなどの茎稈刈取作業機の補助分草装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の茎稈刈取作業機では、デバイダで分草された茎稈を引起装置で引き起すが、引起装置は、引起ケースから側方に突出する引起爪の上昇動作で茎稈を引き起すように構成されているため、走行方向に対して直交する方向に倒伏した茎稈を刈り取る場合には、引起作用や分草作用が不足するという問題がある。
【0003】
そこで、上記のような倒伏茎稈でも良好に分草や引き起しができる補助引起装置(補助分草装置)が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。この補助引起装置は、引起ケースの前方に上下方向に沿って取付けるものであって、補助引起ケースから前方に突出する引起爪の上昇動作で茎稈を引き起すように構成されているため、走行方向に対して直交する方向に倒伏した茎稈であっても、良好な分草及び引き起しが可能となる。
【特許文献1】特開2000−116225号公報
【特許文献2】特開平6−30632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される補助引起装置は、補助引起ケースに内装される駆動輪と従動輪との間に、複数の引起爪が起伏自在に枢着された引起チェンを懸回し、該引起チェンの上昇経路では、引起爪を起立させて補助引起ケースから前方に突出させる一方、下降経路では、引起爪を倒伏させて補助引起ケース内に収容するように構成されるため、構造が複雑で価格が高くなってしまうという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に示されるように、簡易的な補助分草装置も提案されているが、この補助分草装置は、引起装置の前面に堆積した藁屑や雑草を剥離除去し、地上に落すことを目的としたものであり、特許文献1に示す補助引起装置と同等の引起作用や分草作用は期待できない。つまり、特許文献2の補助分草装置は、杆状の分草具を小型の電動モータで前後駆動させるものであって、倒伏茎稈の引き起しに必要な駆動力を発生することは困難である。また、特許文献2の補助分草装置は、分草具の上部及び下部を揺動アームで支持し、いわゆる平行リンクを構成しているので、仮に連続駆動させたとすると、前後方向に交互に発生する慣性力によって、大きな振動源になるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、茎稈の株元付近を分草するデバイダと、茎稈を引き起す引起装置とを備える茎稈刈取作業機の補助分草装置であって、前記引起装置の前方に、上下方向に沿って分草杆を配置し、該分草杆の下部を、引起装置の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆の上部を、左右方向に沿う駆動軸を中心として円運動させることを特徴とする。このようにすると、補助分草装置を簡易的に構成し、大幅なコストダウンが図れる。また、分草杆の上部を、左右方向に沿う駆動軸を中心として円運動させるので、単純な往復運動を行う場合に比べ、慣性力による振動の発生を抑えることができる。
また、前記分草杆の下部が、デバイダに形成した前後方向の長孔を介してデバイダフレームで支持されることを特徴とする。このようにすると、分草杆の下部を支持する揺動支持部がデバイダの裏側に隠れるので、揺動支持部の耐久性を向上できると共に、揺動支持部に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
また、前記分草杆の下部を支持する揺動支持部材が、上方揺動姿勢でもデバイダの下方に位置することを特徴とする。このようにすると、揺動支持部材を常にデバイダの裏側に隠すことができるので、揺動支持部材の耐久性を向上できると共に、揺動支持部材に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
また、前記円運動の方向を、分草杆の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定したことを特徴とする。このようにすると、茎稈に引起方向の力を作用させることができるので、簡易的な補助分草装置でありながら、倒伏茎稈を引き起すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2、刈取茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3、選別した穀粒を貯溜する穀粒タンク4、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部5、オペレータが乗車する運転部6、左右一対のクローラ走行装置からなる走行部7などを備えて構成されている。
【0008】
図1〜図3に示すように、前処理部2は、未刈り茎稈の株元付近を分草するデバイダ8、茎稈を引き起す引起装置9、茎稈の株元付近を掻き込むスターホイル10及び掻込ベルト11、茎稈の株元を切断する刈刃12、刈取茎稈を集稈して後方へ搬送する株元搬送装置13、茎稈の扱深さを調節する扱深さ搬送装置14などを備えて構成され、搬送HST15から供給される動力で動作する。
【0009】
デバイダ8は、刈取条端及び刈取条間に位置するように、左右方向に所定の間隔を存して、前処理部2の前端部に複数設けられている。デバイダ8の個数は、刈取条数+1であり、例えば、4条刈りの前処理部2は、5つのデバイダ8を備える。デバイダ8は、嘴状に形成され、デバイダフレーム16の前端部に取り付けられる。デバイダ8の形状には大小があり、正面視において、引起装置9の爪突出側(合流経路側)に小さいデバイダ8が配置され、その反対側に大きいデバイダ8が配置される。
【0010】
引起装置9は、前処理部2の前部に上下方向に沿って配置される引起ケース17、引起ケース17の上部に設けられる駆動スプロケット18、引起ケース17の下部に設けられる従動スプロケット19、両スプロケット18、19間に懸回される引起チェン20、引起ケース17の正面を覆う引起カバー21などを備えて構成される。引起チェン20には、複数の引起爪22が所定間隔を存して起伏自在に枢着されており、引起チェン20の上昇経路では、引起爪22を起立させて引起ケース17から側方に突出させる一方、下降経路では、引起爪22を倒伏させて引起ケース17内に収容するようになっている。つまり、引起装置9は、引起ケース17から側方に突出する引起爪22の上昇動作で茎稈を引き起すように構成されている。引起装置9の個数は、刈取条数に一致しており、例えば、4条刈りの前処理部2は、4つの引起装置9を備える。この場合、左側2条分の刈り取り茎稈と、右側2条分の刈り取り茎稈をそれぞれ合流させる関係上、左側2条分の引起装置9は、左側合流経路に向けて引起爪22が突出するように配置され、右側2条分の引起装置9は、右側合流経路に向けて引起爪22が突出するように配置される。
【0011】
図1及び図2に示すように、引起装置9の前方には、補助分草装置23が設けられている。補助分草装置23の個数は、任意であるが、刈り取り茎稈の合流経路数と一致させることが好ましい。例えば、4条刈りの前処理部2では、2つの補助分草装置23を設ける。この場合、補助分草装置23の取付位置は、正面視において、左右の合流経路間(中央のデバイダ8上)と、未刈り地側端(左端のデバイダ8上)であり、ここで積極的な分草作用及び引起作用を行う。
【0012】
図4〜図10に示すように、補助分草装置23は、上下方向に沿って配置される分草杆24と、駆動アーム25を介して分草杆24の上部を支持する駆動ケース(上側支持部)26と、揺動アーム(揺動支持部材)27を介して分草杆24の下部を支持する下側支持部28とを備えて構成されている。
【0013】
揺動アーム27は、分草杆24の下部を、引起装置9の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、駆動アーム25は、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させる。つまり、分草杆24の上部を円運動させると、分草杆24が前後及び上下に変位し、茎稈に対して分草方向及び引起方向の力を作用させることが可能になる。これにより、補助分草装置23を簡易的に構成し、大幅なコストダウンが図れる。しかも、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させるので、単純な往復運動を行う場合に比べ、慣性力による振動の発生を抑えることができる。
【0014】
下側支持部28は、デバイダフレーム16に溶着された板材からなり、揺動アーム27を介して、分草杆24の下部を上下揺動自在に支持している。補助分草装置23の取付位置に設けられるデバイダ8には、前後方向の長孔8aが形成されており、この長孔8aに分草杆24が挿通されている。言い換えれば、分草杆24の下部は、デバイダ8に形成した前後方向の長孔8aを介してデバイダフレーム16で支持される。このようにすると、分草杆24の下部を支持する揺動支持部(揺動アーム27及び下側支持部28)がデバイダ8の裏側に隠れるので、揺動支持部の耐久性を向上できると共に、揺動支持部に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0015】
また、分草杆24の下部を支持する揺動アーム27は、上方揺動姿勢(上限位置)でもデバイダ8の下方に位置することが好ましい。このようにすると、揺動アーム27を常にデバイダ8の裏側に隠すことができるので、揺動アーム27の耐久性を向上できると共に、揺動アーム27に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0016】
駆動ケース26は、引起装置9の正面上部に取り付けられ、駆動アーム25を介して分草杆24の上部を支持している。本実施形態の駆動ケース26は、引起装置9の駆動スプロケット軸30から動力を取り出す入力軸31と、左右方向に沿う前述の駆動軸29と、入力軸31の動力を駆動軸29に伝動するベベルギヤ32とを備えて構成されている。
【0017】
駆動アーム25の回転方向、すなわち分草杆24の上部に係る円運動の方向は、分草杆24の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定することが好ましい。例えば、図4や図6に示す左側面図において、分草杆24の上部を時計回りに円運動させる。このようにすると、茎稈に引起方向の力を作用させることができるので、簡易的な補助分草装置23でありながら、倒伏茎稈を引き起すことが可能になる。
【0018】
また、分草杆24の上部を支持する駆動ケース26と、分草杆24の下部を支持する下側支持部28は、補強フレーム33を介して連結されている。例えば、パイプ材からなる補強フレーム33の上端部を、駆動ケース26のボルト34で共締めすると共に、補強フレーム33の下端部を、揺動アーム27の揺動支点軸35に固定する。このようにすると、駆動ケース26と下側支持部28の軸間距離を一定にし、分草杆24を円滑に駆動させることができる。また、分草杆24、駆動ケース26、下側支持部28及び補強フレーム33を予めアッシーとし、アッシーの状態で引起装置9に取り付けることができるので、補助分草装置23の取り付けが容易になる。
【0019】
また、補強フレーム33は、分草杆24の後方に配置し、正面視で分草杆24と重複させることが好ましい。このようにすると、補強フレーム33に対する茎稈の引っ掛かりを抑制することができる。
【0020】
次に、補助分草装置23の取り付け手順について、図10を参照して説明する。尚、本実施形態のデバイダフレーム16は、前処理フレームに一体化される固定フレーム16aと、該固定フレーム16aの前端部に挿入連結される着脱フレーム16bとからなり、デバイダ8及び下側支持部28は、着脱フレーム16bに設けられるものとする。
【0021】
本実施形態の補助分草装置23は、分草杆24、駆動ケース26、下側支持部28、補強フレーム33、デバイダ8及び着脱フレーム16bを予めアッシーAとし、アッシーAの状態で引起装置9に取り付けられる。このアッシーAを引起装置9に取り付ける場合は、まず、引起装置9の引起カバー21を外した状態で、引起ケース17に支持プレート36を3本のボルト37で固定し、その後、引起ケース17に引起カバー21を固定する。次に、着脱フレーム16bを固定フレーム16aに挿入すると共に、駆動ケース26の入力軸31を駆動スプロケット軸30に挿入する。その後、駆動ケース26を1本の固定ボルト38で支持プレート36に固定すると共に、着脱フレーム16bを1本のボルト39で固定フレーム16aに固定すれば、アッシーA(補助分草装置23及びデバイダ8)の取り付けが完了する。
【0022】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、茎稈の株元付近を分草するデバイダ8と、茎稈を引き起す引起装置9とを備えるコンバイン1の補助分草装置23であって、引起装置9の前方に、上下方向に沿って分草杆24を配置し、該分草杆24の下部を、引起装置9の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させるので、補助分草装置23を簡易的に構成し、大幅なコストダウンが図れる。また、分草杆24の上部を、左右方向に沿う駆動軸29を中心として円運動させるので、単純な往復運動を行う場合に比べ、慣性力による振動の発生を抑えることができる。
【0023】
また、分草杆24の下部が、デバイダ8に形成した前後方向の長孔8aを介してデバイダフレーム16で支持されるので、分草杆24の下部を支持する揺動支持部がデバイダ8の裏側に隠れることになり、その結果、揺動支持部の耐久性を向上できると共に、揺動支持部に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0024】
また、分草杆24の下部を支持する揺動アーム27が、上方揺動姿勢でもデバイダ8の下方に位置するので、揺動アーム27を常にデバイダ8の裏側に隠すことができる。これにより、揺動アーム27の耐久性を向上できると共に、揺動アーム27に対する藁などの引っ掛かりも抑制することができる。
【0025】
また、分草杆24の上部に係る円運動の方向を、分草杆24の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定したので、茎稈に引起方向の力を作用させることができる。その結果、簡易的な補助分草装置23でありながら、倒伏茎稈を引き起すことができる。
【0026】
次に、本発明の第二実施形態に係る補助分草装置23について、図11を参照して説明する。但し、前記実施形態と共通の構成については、前記実施形態と同一の符号を付けることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0027】
図11に示すように、第二実施形態の補助分草装置23は、分草杆24に抵抗体40を備える点が前記実施形態と相違している。抵抗体40は、分草杆24が茎稈に接触する際に、茎稈に前方上方への抵抗力を作用させるもので、積極的な分草及び引き起しが可能になる。ちなみに、本実施形態の抵抗体40は、前方に突出する三角形の凸部40aを、上下方向に所定間隔を存して複数形成した板材で構成されるが、茎稈に前方上方への抵抗力を作用させるものであれば、形状は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】コンバインの全体左側面図である。
【図2】コンバインの全体正面図である。
【図3】前処理部の動力伝動系統図である。
【図4】補助分草装置の全体左側面図である。
【図5】補助分草装置の全体正面図である。
【図6】補助分草装置の上部左側面図である。
【図7】補助分草装置の上部正面図である。
【図8】補助分草装置の下部左側面図である。
【図9】補助分草装置の下部正面図である。
【図10】補助分草装置の分解斜視図である。
【図11】第二実施形態を示す補助分草装置の左側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 コンバイン
2 前処理部
8 デバイダ
8a 長孔
9 引起装置
16 デバイダフレーム
23 補助分草装置
24 分草杆
25 駆動アーム
26 駆動ケース
27 揺動アーム
28 下側支持部
29 駆動軸
33 補強フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茎稈の株元付近を分草するデバイダと、茎稈を引き起す引起装置とを備える茎稈刈取作業機の補助分草装置であって、
前記引起装置の前方に、上下方向に沿って分草杆を配置し、該分草杆の下部を、引起装置の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆の上部を、左右方向に沿う駆動軸を中心として円運動させることを特徴とする茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【請求項2】
前記分草杆の下部が、デバイダに形成した前後方向の長孔を介してデバイダフレームで支持されることを特徴とする請求項1記載の茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【請求項3】
前記分草杆の下部を支持する揺動支持部材が、上方揺動姿勢でもデバイダの下方に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【請求項4】
前記円運動の方向を、分草杆の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【請求項1】
茎稈の株元付近を分草するデバイダと、茎稈を引き起す引起装置とを備える茎稈刈取作業機の補助分草装置であって、
前記引起装置の前方に、上下方向に沿って分草杆を配置し、該分草杆の下部を、引起装置の前方下部で上下揺動自在に支持する一方、分草杆の上部を、左右方向に沿う駆動軸を中心として円運動させることを特徴とする茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【請求項2】
前記分草杆の下部が、デバイダに形成した前後方向の長孔を介してデバイダフレームで支持されることを特徴とする請求項1記載の茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【請求項3】
前記分草杆の下部を支持する揺動支持部材が、上方揺動姿勢でもデバイダの下方に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【請求項4】
前記円運動の方向を、分草杆の作用軌跡が後方下方から前方上方に遷移するように設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の茎稈刈取作業機の補助分草装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−130921(P2010−130921A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308388(P2008−308388)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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