茶園用寒冷紗巻取り装置
【課題】 本発明は、作業者を重労働から解放するため、茶樹上に被覆した寒冷紗を巻き取る装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の茶園用寒冷紗巻取り装置の第1手段は、寒冷紗を巻取るために横架した回転軸と、該回転軸の駆動手段とより構成するとともに、乗用型茶園作業機に着脱自在とする。
【解決手段】本発明の茶園用寒冷紗巻取り装置の第1手段は、寒冷紗を巻取るために横架した回転軸と、該回転軸の駆動手段とより構成するとともに、乗用型茶園作業機に着脱自在とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉を摘採する前に、茶樹の上に被覆した寒冷紗を巻き取る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶樹の新芽は、成長中に遮光することによって葉緑素が増え、葉色が鮮緑色になると同時に、テアニンなどのアミノ酸類が増加し、苦渋味の成分であるタンニンは減少する。このため、昔から、てん茶、玉露、かぶせ茶などが製造されてきたが、近年では、一般的な煎茶の場合でも、品質向上のために簡易被覆(低い遮光率で、短期間)を行うことが増加傾向にある。この簡易的な被覆材として寒冷紗を用い、その被覆方法としては、寒冷紗を被覆する棚を作る方法や、茶樹の上に直接被覆する方法などがあるが、茶樹の上に直接被覆することが多い。
【0003】
茶園用の寒冷紗は、茶畝にあわせた約180〜230センチメートルの幅で、約50メートルの長さである。保管時は、約180〜230センチメートルの幅で巻いてある状態で保管してあり、被覆時には、茶畝の一端で茶樹と寒冷紗を固定し、巻いてある寒冷紗を作業者が手で広げ、茶樹の上に被覆していた。そして、茶葉を摘採する直前に、この茶樹の上に張ってある寒冷紗を巻き取る必要があり、被覆する時同様、作業者が手作業で寒冷紗を巻き取っていた。巻き取った寒冷紗は約15キログラムあり、重く、巻取り作業には茶畝の両側に作業員が一人ずつ必要だった。そして、巻き取った寒冷紗を茶樹の上に載せると、茶樹の新芽が傷つき、摘採後の茶製品の品質が低下してしまうため、茶樹の上に荷重がかからないように、保持する必要があった。重い寒冷紗を持って茶園内を移動し、茶園全体で何十回もこの作業を繰り返す必要があり、大変な重労働だった。
【0004】
そこで、近年では、この寒冷紗を巻き取る作業を機械化しようとしており、特許文献1、2が発明されていた。
【0005】
茶園では、以前は、作業者が手ではさみを持って、茶園内を移動しながら茶葉を摘採していたが、近年では、特許文献3のような乗用型茶葉摘採機や、特許文献4のような乗用型茶園管理機が発明され、普及してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−171844号公報
【特許文献2】特開2004−298141号公報
【特許文献3】特開2001−258361号公報
【特許文献4】特開2009−106170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1のような装置は、巻き取る作業は機械化され、作業者の負担は減ったが、巻き取った寒冷紗が重く、重労働には変わりない。上記の特許文献2のような装置は、巻き取った寒冷紗を持つ必要はないが、作業台車を含めて専用機となり、導入コストが高くなり、保管スペースも必要となる。
【0008】
巻き取った寒冷紗の巻取り径は約40センチメートルになり(寒冷紗の厚みによって異なる)、巻取りはじめと巻取り完了間際では巻取り径が異なり、巻取り効率が異なる。特許文献1のように作業者自身が巻き取る場合や、特許文献2のように作業者が台車の移動をさせたり、巻取りを操作したりする場合は、人為的に調整をすることができるが、これを機械化する場合は、これを調整する必要がある。
【0009】
本発明は、作業者を重労働から解放するため、茶樹上に被覆した寒冷紗を巻き取る装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の茶園用寒冷紗巻取り装置の第1手段は、寒冷紗を巻取るために横架した回転軸と、該回転軸の駆動手段とより構成するとともに、乗用型茶園作業機に着脱自在とする。第2手段は、上記第1手段において、テンションアームを、回動自在に軸支し、巻取る手前の寒冷紗の上にのせ、テンションアームの位置を計測して、巻取る手前の寒冷紗の張り具合を計測し、張り具合が一定となるように前記回転軸の回転数を調整する。第3手段は、上記第1または2手段において、前記テンションアームをポテンショメータで計測する。第4手段は、上記1、2または3手段において、前記乗用型茶園作業機を巻取り時とは逆に走行し、前記回転軸に巻取ってある寒冷紗を送り出して、茶樹に被覆する。第5手段は、上記1、2、3または4手段において、前記乗用型茶園作業機は乗用型茶葉摘採機または乗用型茶園管理機であり、アタッチメント取付部に装着する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、作業者は茶樹上に張られた寒冷紗を巻き取るという重労働から解放される。また、請求項2により、乗用型茶園作業機が一定速度で走行するため、地形、圃場条件にあわせた安全な走行、作業ができる。つまり、テンションアームにより寒冷紗の張り具合を計測することで、寒冷紗の巻取り速度を計測し、回転軸の回転数により巻取り速度を調整することで、乗用型茶園作業機が一定速度で走行することができる。請求項3により、正確に寒冷紗の張り具合を計測することができる。請求項4により、本発明の装置によって、寒冷紗の被覆も行なうことができる。請求項5により、作業者が保有している乗用型茶葉摘採機または乗用型茶園管理機に取付けることができ、汎用的に利用ができる。更に、乗用型茶葉摘採機を用いれば、寒冷紗を巻き取った後、そのまま茶葉の摘採を行うこともでき、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は乗用型茶葉摘採機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付けた説明図である。(前方から見た図)
【図2】図2は乗用型茶葉摘採機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付けた説明図である。(後方から見た図)
【図3】図3は乗用型茶葉摘採機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付ける説明図である。(側面から見た一部断面図)
【図4】図4は茶園用寒冷紗巻取り装置の説明図である。(後方から見た図)
【図5】図5はテンションアームを計測する部分の説明図である。
【図6】図6はテンションアームの動きを示した説明図である。
【図7】図7は寒冷紗の張り具合と茶園用寒冷紗巻取り装置の回転軸の回転数、乗用型茶葉摘採機の走行速度の関係を示した図である。
【図8】図8は乗用型茶園管理機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付けた説明図である。(前方から見た図)
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、乗用型茶葉摘採機Aについて説明する。機体1は茶樹Dを跨ぐ門型の形状となっており、茶樹の両脇に走行装置2を備えて機体1を走行させる。この走行装置2はエンジン3、油圧ポンプ4などの駆動源により駆動され、走行する。本実施例ではバリカン型の刈刃5を備えており、この刈刃5の少し手前には、摘採した茶葉を吹き飛ばす送風管6を設け、フレキシブルホース(寒冷紗を巻き取るときには不要であり、図示しない)によって接続したブロア8から風を送る。刈刃5の後方には摘採した茶葉を収容する茶袋を保持するための茶袋保持板9が接続されている。この茶袋保持板9の後部には、アタッチメント取付部10を設けてある。これらの刈刃5、送風管6、茶袋保持板7、アタッチメント取付部10は一体となっており、茶樹Dの高さに合わせて、上下に昇降可動となっている。ステップ11は作業者が乗り、シート12は作業者が座る部分であり、作業者は走行ハンドルや刈刃スイッチなどの操作部13を操作して、乗用型茶葉摘採機Aを走行させながら、摘採を行なう。
【0014】
次に、茶園用寒冷紗巻取り装置Bについて説明する。回転軸は駆動手段21であるモータ22によって回転する。モータ22の電源スイッチは、遠隔操作が可能としてある。回転軸21の両端には巻取りガイド23を備え、寒冷紗32をキレイに巻き取るようになっている。回転軸21に巻き取る手前の寒冷紗32の上にのるように、テンションアーム24を回転軸21の上方に軸支する。テンションアーム24を軸支する位置は、本実施例では上方であるが、後方でもよく、巻き取る手前の寒冷紗の張り具合を計測することができればよい。テンションアーム24を寒冷紗32の上にのせ、寒冷紗32が上がってくると、寒冷紗32の上のテンションアーム24が持ち上がってくるように設置し、このテンションアーム24がどれくらい持ち上げられたかをポテンショメータ26で計測する。テンションアーム24が持ち上げられてくるのをポテンショメータ26で計測すると、モータ22の回転数を変更して、回転軸21の回転を遅くする。
【0015】
茶園用寒冷紗巻取り装置Bの左側のフレーム27をヒンジ28により開閉自在の扉29とする。巻取り時には扉29を閉鎖して、固定具30で固定し、巻き取った寒冷紗32を取外すときには、固定具30の固定を解除し、扉29を開き、寒冷紗32を抜き取る。この時、寒冷紗32は回転軸21ごと抜くことが可能である。(回転軸21のみ残して、寒冷紗32のみ抜くことも可能である)
【0016】
次に、茶園用寒冷紗巻取り装置Bを乗用型茶葉摘採機Aに取付ける。茶園用寒冷紗巻取り装置Bのフレーム27には取付部31を備えており、乗用型茶葉摘採機Aのアタッチメント取付部10に引っ掛けて取付ける形状となっている。これにより、工具不要で着脱自在である。
【0017】
上記のような装置により、茶樹Dの上に被覆してある寒冷紗32を巻き取る作業を説明する。まず、作業者が巻き取る寒冷紗32の一端を回転軸21に固定する。そして、作業者はシート12に座り、茶園用寒冷紗巻取り装置Bのモータ22の電源スイッチを入れ、乗用型茶葉摘採機Aを後方へ走行させる。すると、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21に寒冷紗32を巻き取りながら、乗用型茶葉摘採機Aは後方へ走行していく。寒冷紗32の巻取りが進むと、巻き取った寒冷紗の巻取り径が徐々に増加していき、回転軸21の1回転あたりの寒冷紗32の巻取り長さが長く、つまり巻取り速度が速くなり、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度より巻取り速度が速くなり、寒冷紗32の張り具合が強くなる。更に、寒冷紗32が強く引かれるようになると、寒冷紗32が茶樹Dの上を引きずられるようになるため、それを防ぐため、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度を上げる、または、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を下げて、巻取り速度を下げる必要がある。
【0018】
乗用型茶葉摘採機Aの走行速度を上げるためには、作業者が操作する必要があり、徐々に走行速度が上がっていくと危険であるため、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度を上げることは好ましくない。そこで、寒冷紗の巻取り径が大きくなり、かつ寒冷紗の巻取り速度が乗用型茶葉摘採機Aの走行速度より速いときには、寒冷紗32の張り具合が強くなるため、寒冷紗32の上のテンションアーム24が上方へ押し上げられ、このテンションアーム24を軸支している部分の回転をポテンショメータ26にて計測し、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を下げ、巻取り速度を遅くし、張り具合を弱める。逆に、寒冷紗の巻取り速度が乗用型茶葉摘採機Aの走行速度より遅く、張り具合が弱い場合は、寒冷紗32の張り具合(たるみ)にテンションアーム24が追従し、テンションアーム24が下がることにより、このテンションアーム24をポテンショメータ26にて計測し、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を上げ、巻取り速度を速くする。この動作を行なうことにより、寒冷紗32は一定のテンションを維持することになる。よって、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度が一定な状態で、良好な巻取りをすることが可能となる。つまり、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度と寒冷紗の巻取り速度が同じになるように、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を調整する。
【0019】
約50メートルの寒冷紗32を1枚巻き取ると、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの左の扉29を開き、寒冷紗32を茶園用寒冷紗巻取り装置Bから取り外す。そして、次の寒冷紗32の一端へ移動し、同様に、巻取り作業を行なう。
【0020】
寒冷紗32を茶樹D上に被覆する場合には、巻いてある寒冷紗32を茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21にセットし、寒冷紗32を被覆する茶樹Dへ乗用型茶葉摘採機Aを移動し、寒冷紗32の一端を茶樹Dへ固定し、乗用型茶葉摘採機Aを前方へ走行させる。回転軸21をモータ22によって駆動させなくても、回転軸21が回転し、寒冷紗32を広げ、茶樹D上に被覆することができる。また、巻取り時と同様に、被覆時にもテンションアーム24により寒冷紗32の張り具合を見て、回転軸21の回転数を調整することで、寒冷紗32をたるみない状態で被覆することができる。
【0021】
茶園用寒冷紗巻取り装置Bを乗用型茶葉摘採機Aに搭載し、乗用型茶葉摘採機Aを走行させることにより、寒冷紗32を巻取ることと、被覆することの両方をすることができる。
【0022】
他の実施例として、乗用型茶園管理機Cについて説明する。機体41は茶樹を跨ぐ門型の形状となっており、茶樹の両脇に走行装置42を備えて機体41を走行させる。この走行装置42はエンジン43、油圧ポンプ44などの駆動源により駆動され、走行する。ステップ51は作業者が乗り、シート52は作業者が座る部分であり、作業者は操作部53を操作して、乗用型茶園管理機Cを走行させ、作業を行なう。ブロア54はアタッチメントによる作業を行うときに送風が必要となる場合があるため、機体41に固着してあるが、本発明の作業には使用しない。よって、ブロア54を固着していない乗用型茶園管理機Cでもよい。
【0023】
機体41の後部に、アタッチメント取付部48を上下可動に設ける。アタッチメント取付部48はアタッチメント上下レール49に沿って、アタッチメント上下モータ(図示しない)により上下する。本実施例ではアタッチメント上下モータとアタッチメント上下レール49によってアタッチメント取付部48を上下動するが、上下可動とするための機構は他の機構でもよく、シリンダとアームにより上下動してもよい。
【0024】
茶園用寒冷紗巻取り装置Bを乗用型茶園管理機Cに取付ける。茶園用寒冷紗巻取り装置Bのフレームに備えられた取付部31を、乗用型茶園管理機Cのアタッチメント取付部48に引っ掛けて取付ける。このようにすると、乗用型茶葉摘採機Aへ取り付けた実施例と同様に、寒冷紗32を巻き取り、被覆することができる。
【符号の説明】
【0025】
A 乗用型茶葉摘採機
B 茶園用寒冷紗巻取り装置
C 乗用型茶園管理機
D 茶樹
1 機体
2 走行装置
3 エンジン
4 油圧ポンプ
5 刈刃
6 送風管
8 ブロア
9 茶袋保持板
10 アタッチメント取付部
11 ステップ
12 シート
13 操作部
21 回転軸
22 モータ
23 巻取りガイド
24 テンションアーム
25 軸
26 ポテンショメータ
27 フレーム
28 ヒンジ
29 扉
30 固定具
31 取付部
32 寒冷紗
41 機体
42 走行装置
43 エンジン
44 油圧ポンプ
48 アタッチメント取付部
49 アタッチメント上下レール
51 ステップ
52 シート
53 操作部
54 ブロア
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉を摘採する前に、茶樹の上に被覆した寒冷紗を巻き取る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶樹の新芽は、成長中に遮光することによって葉緑素が増え、葉色が鮮緑色になると同時に、テアニンなどのアミノ酸類が増加し、苦渋味の成分であるタンニンは減少する。このため、昔から、てん茶、玉露、かぶせ茶などが製造されてきたが、近年では、一般的な煎茶の場合でも、品質向上のために簡易被覆(低い遮光率で、短期間)を行うことが増加傾向にある。この簡易的な被覆材として寒冷紗を用い、その被覆方法としては、寒冷紗を被覆する棚を作る方法や、茶樹の上に直接被覆する方法などがあるが、茶樹の上に直接被覆することが多い。
【0003】
茶園用の寒冷紗は、茶畝にあわせた約180〜230センチメートルの幅で、約50メートルの長さである。保管時は、約180〜230センチメートルの幅で巻いてある状態で保管してあり、被覆時には、茶畝の一端で茶樹と寒冷紗を固定し、巻いてある寒冷紗を作業者が手で広げ、茶樹の上に被覆していた。そして、茶葉を摘採する直前に、この茶樹の上に張ってある寒冷紗を巻き取る必要があり、被覆する時同様、作業者が手作業で寒冷紗を巻き取っていた。巻き取った寒冷紗は約15キログラムあり、重く、巻取り作業には茶畝の両側に作業員が一人ずつ必要だった。そして、巻き取った寒冷紗を茶樹の上に載せると、茶樹の新芽が傷つき、摘採後の茶製品の品質が低下してしまうため、茶樹の上に荷重がかからないように、保持する必要があった。重い寒冷紗を持って茶園内を移動し、茶園全体で何十回もこの作業を繰り返す必要があり、大変な重労働だった。
【0004】
そこで、近年では、この寒冷紗を巻き取る作業を機械化しようとしており、特許文献1、2が発明されていた。
【0005】
茶園では、以前は、作業者が手ではさみを持って、茶園内を移動しながら茶葉を摘採していたが、近年では、特許文献3のような乗用型茶葉摘採機や、特許文献4のような乗用型茶園管理機が発明され、普及してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−171844号公報
【特許文献2】特開2004−298141号公報
【特許文献3】特開2001−258361号公報
【特許文献4】特開2009−106170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1のような装置は、巻き取る作業は機械化され、作業者の負担は減ったが、巻き取った寒冷紗が重く、重労働には変わりない。上記の特許文献2のような装置は、巻き取った寒冷紗を持つ必要はないが、作業台車を含めて専用機となり、導入コストが高くなり、保管スペースも必要となる。
【0008】
巻き取った寒冷紗の巻取り径は約40センチメートルになり(寒冷紗の厚みによって異なる)、巻取りはじめと巻取り完了間際では巻取り径が異なり、巻取り効率が異なる。特許文献1のように作業者自身が巻き取る場合や、特許文献2のように作業者が台車の移動をさせたり、巻取りを操作したりする場合は、人為的に調整をすることができるが、これを機械化する場合は、これを調整する必要がある。
【0009】
本発明は、作業者を重労働から解放するため、茶樹上に被覆した寒冷紗を巻き取る装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の茶園用寒冷紗巻取り装置の第1手段は、寒冷紗を巻取るために横架した回転軸と、該回転軸の駆動手段とより構成するとともに、乗用型茶園作業機に着脱自在とする。第2手段は、上記第1手段において、テンションアームを、回動自在に軸支し、巻取る手前の寒冷紗の上にのせ、テンションアームの位置を計測して、巻取る手前の寒冷紗の張り具合を計測し、張り具合が一定となるように前記回転軸の回転数を調整する。第3手段は、上記第1または2手段において、前記テンションアームをポテンショメータで計測する。第4手段は、上記1、2または3手段において、前記乗用型茶園作業機を巻取り時とは逆に走行し、前記回転軸に巻取ってある寒冷紗を送り出して、茶樹に被覆する。第5手段は、上記1、2、3または4手段において、前記乗用型茶園作業機は乗用型茶葉摘採機または乗用型茶園管理機であり、アタッチメント取付部に装着する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、作業者は茶樹上に張られた寒冷紗を巻き取るという重労働から解放される。また、請求項2により、乗用型茶園作業機が一定速度で走行するため、地形、圃場条件にあわせた安全な走行、作業ができる。つまり、テンションアームにより寒冷紗の張り具合を計測することで、寒冷紗の巻取り速度を計測し、回転軸の回転数により巻取り速度を調整することで、乗用型茶園作業機が一定速度で走行することができる。請求項3により、正確に寒冷紗の張り具合を計測することができる。請求項4により、本発明の装置によって、寒冷紗の被覆も行なうことができる。請求項5により、作業者が保有している乗用型茶葉摘採機または乗用型茶園管理機に取付けることができ、汎用的に利用ができる。更に、乗用型茶葉摘採機を用いれば、寒冷紗を巻き取った後、そのまま茶葉の摘採を行うこともでき、便利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は乗用型茶葉摘採機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付けた説明図である。(前方から見た図)
【図2】図2は乗用型茶葉摘採機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付けた説明図である。(後方から見た図)
【図3】図3は乗用型茶葉摘採機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付ける説明図である。(側面から見た一部断面図)
【図4】図4は茶園用寒冷紗巻取り装置の説明図である。(後方から見た図)
【図5】図5はテンションアームを計測する部分の説明図である。
【図6】図6はテンションアームの動きを示した説明図である。
【図7】図7は寒冷紗の張り具合と茶園用寒冷紗巻取り装置の回転軸の回転数、乗用型茶葉摘採機の走行速度の関係を示した図である。
【図8】図8は乗用型茶園管理機に茶園用寒冷紗巻取り装置を取り付けた説明図である。(前方から見た図)
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、乗用型茶葉摘採機Aについて説明する。機体1は茶樹Dを跨ぐ門型の形状となっており、茶樹の両脇に走行装置2を備えて機体1を走行させる。この走行装置2はエンジン3、油圧ポンプ4などの駆動源により駆動され、走行する。本実施例ではバリカン型の刈刃5を備えており、この刈刃5の少し手前には、摘採した茶葉を吹き飛ばす送風管6を設け、フレキシブルホース(寒冷紗を巻き取るときには不要であり、図示しない)によって接続したブロア8から風を送る。刈刃5の後方には摘採した茶葉を収容する茶袋を保持するための茶袋保持板9が接続されている。この茶袋保持板9の後部には、アタッチメント取付部10を設けてある。これらの刈刃5、送風管6、茶袋保持板7、アタッチメント取付部10は一体となっており、茶樹Dの高さに合わせて、上下に昇降可動となっている。ステップ11は作業者が乗り、シート12は作業者が座る部分であり、作業者は走行ハンドルや刈刃スイッチなどの操作部13を操作して、乗用型茶葉摘採機Aを走行させながら、摘採を行なう。
【0014】
次に、茶園用寒冷紗巻取り装置Bについて説明する。回転軸は駆動手段21であるモータ22によって回転する。モータ22の電源スイッチは、遠隔操作が可能としてある。回転軸21の両端には巻取りガイド23を備え、寒冷紗32をキレイに巻き取るようになっている。回転軸21に巻き取る手前の寒冷紗32の上にのるように、テンションアーム24を回転軸21の上方に軸支する。テンションアーム24を軸支する位置は、本実施例では上方であるが、後方でもよく、巻き取る手前の寒冷紗の張り具合を計測することができればよい。テンションアーム24を寒冷紗32の上にのせ、寒冷紗32が上がってくると、寒冷紗32の上のテンションアーム24が持ち上がってくるように設置し、このテンションアーム24がどれくらい持ち上げられたかをポテンショメータ26で計測する。テンションアーム24が持ち上げられてくるのをポテンショメータ26で計測すると、モータ22の回転数を変更して、回転軸21の回転を遅くする。
【0015】
茶園用寒冷紗巻取り装置Bの左側のフレーム27をヒンジ28により開閉自在の扉29とする。巻取り時には扉29を閉鎖して、固定具30で固定し、巻き取った寒冷紗32を取外すときには、固定具30の固定を解除し、扉29を開き、寒冷紗32を抜き取る。この時、寒冷紗32は回転軸21ごと抜くことが可能である。(回転軸21のみ残して、寒冷紗32のみ抜くことも可能である)
【0016】
次に、茶園用寒冷紗巻取り装置Bを乗用型茶葉摘採機Aに取付ける。茶園用寒冷紗巻取り装置Bのフレーム27には取付部31を備えており、乗用型茶葉摘採機Aのアタッチメント取付部10に引っ掛けて取付ける形状となっている。これにより、工具不要で着脱自在である。
【0017】
上記のような装置により、茶樹Dの上に被覆してある寒冷紗32を巻き取る作業を説明する。まず、作業者が巻き取る寒冷紗32の一端を回転軸21に固定する。そして、作業者はシート12に座り、茶園用寒冷紗巻取り装置Bのモータ22の電源スイッチを入れ、乗用型茶葉摘採機Aを後方へ走行させる。すると、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21に寒冷紗32を巻き取りながら、乗用型茶葉摘採機Aは後方へ走行していく。寒冷紗32の巻取りが進むと、巻き取った寒冷紗の巻取り径が徐々に増加していき、回転軸21の1回転あたりの寒冷紗32の巻取り長さが長く、つまり巻取り速度が速くなり、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度より巻取り速度が速くなり、寒冷紗32の張り具合が強くなる。更に、寒冷紗32が強く引かれるようになると、寒冷紗32が茶樹Dの上を引きずられるようになるため、それを防ぐため、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度を上げる、または、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を下げて、巻取り速度を下げる必要がある。
【0018】
乗用型茶葉摘採機Aの走行速度を上げるためには、作業者が操作する必要があり、徐々に走行速度が上がっていくと危険であるため、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度を上げることは好ましくない。そこで、寒冷紗の巻取り径が大きくなり、かつ寒冷紗の巻取り速度が乗用型茶葉摘採機Aの走行速度より速いときには、寒冷紗32の張り具合が強くなるため、寒冷紗32の上のテンションアーム24が上方へ押し上げられ、このテンションアーム24を軸支している部分の回転をポテンショメータ26にて計測し、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を下げ、巻取り速度を遅くし、張り具合を弱める。逆に、寒冷紗の巻取り速度が乗用型茶葉摘採機Aの走行速度より遅く、張り具合が弱い場合は、寒冷紗32の張り具合(たるみ)にテンションアーム24が追従し、テンションアーム24が下がることにより、このテンションアーム24をポテンショメータ26にて計測し、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を上げ、巻取り速度を速くする。この動作を行なうことにより、寒冷紗32は一定のテンションを維持することになる。よって、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度が一定な状態で、良好な巻取りをすることが可能となる。つまり、乗用型茶葉摘採機Aの走行速度と寒冷紗の巻取り速度が同じになるように、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21の回転数を調整する。
【0019】
約50メートルの寒冷紗32を1枚巻き取ると、茶園用寒冷紗巻取り装置Bの左の扉29を開き、寒冷紗32を茶園用寒冷紗巻取り装置Bから取り外す。そして、次の寒冷紗32の一端へ移動し、同様に、巻取り作業を行なう。
【0020】
寒冷紗32を茶樹D上に被覆する場合には、巻いてある寒冷紗32を茶園用寒冷紗巻取り装置Bの回転軸21にセットし、寒冷紗32を被覆する茶樹Dへ乗用型茶葉摘採機Aを移動し、寒冷紗32の一端を茶樹Dへ固定し、乗用型茶葉摘採機Aを前方へ走行させる。回転軸21をモータ22によって駆動させなくても、回転軸21が回転し、寒冷紗32を広げ、茶樹D上に被覆することができる。また、巻取り時と同様に、被覆時にもテンションアーム24により寒冷紗32の張り具合を見て、回転軸21の回転数を調整することで、寒冷紗32をたるみない状態で被覆することができる。
【0021】
茶園用寒冷紗巻取り装置Bを乗用型茶葉摘採機Aに搭載し、乗用型茶葉摘採機Aを走行させることにより、寒冷紗32を巻取ることと、被覆することの両方をすることができる。
【0022】
他の実施例として、乗用型茶園管理機Cについて説明する。機体41は茶樹を跨ぐ門型の形状となっており、茶樹の両脇に走行装置42を備えて機体41を走行させる。この走行装置42はエンジン43、油圧ポンプ44などの駆動源により駆動され、走行する。ステップ51は作業者が乗り、シート52は作業者が座る部分であり、作業者は操作部53を操作して、乗用型茶園管理機Cを走行させ、作業を行なう。ブロア54はアタッチメントによる作業を行うときに送風が必要となる場合があるため、機体41に固着してあるが、本発明の作業には使用しない。よって、ブロア54を固着していない乗用型茶園管理機Cでもよい。
【0023】
機体41の後部に、アタッチメント取付部48を上下可動に設ける。アタッチメント取付部48はアタッチメント上下レール49に沿って、アタッチメント上下モータ(図示しない)により上下する。本実施例ではアタッチメント上下モータとアタッチメント上下レール49によってアタッチメント取付部48を上下動するが、上下可動とするための機構は他の機構でもよく、シリンダとアームにより上下動してもよい。
【0024】
茶園用寒冷紗巻取り装置Bを乗用型茶園管理機Cに取付ける。茶園用寒冷紗巻取り装置Bのフレームに備えられた取付部31を、乗用型茶園管理機Cのアタッチメント取付部48に引っ掛けて取付ける。このようにすると、乗用型茶葉摘採機Aへ取り付けた実施例と同様に、寒冷紗32を巻き取り、被覆することができる。
【符号の説明】
【0025】
A 乗用型茶葉摘採機
B 茶園用寒冷紗巻取り装置
C 乗用型茶園管理機
D 茶樹
1 機体
2 走行装置
3 エンジン
4 油圧ポンプ
5 刈刃
6 送風管
8 ブロア
9 茶袋保持板
10 アタッチメント取付部
11 ステップ
12 シート
13 操作部
21 回転軸
22 モータ
23 巻取りガイド
24 テンションアーム
25 軸
26 ポテンショメータ
27 フレーム
28 ヒンジ
29 扉
30 固定具
31 取付部
32 寒冷紗
41 機体
42 走行装置
43 エンジン
44 油圧ポンプ
48 アタッチメント取付部
49 アタッチメント上下レール
51 ステップ
52 シート
53 操作部
54 ブロア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒冷紗を巻取るために横架した回転軸と、該回転軸の駆動手段とより構成するとともに、乗用型茶園作業機に着脱自在とすることを特徴とする茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項2】
テンションアームを、回動自在に軸支し、巻取る手前の寒冷紗の上にのせ、テンションアームの位置を計測して、巻取る手前の寒冷紗の張り具合を計測し、張り具合が一定となるように前記回転軸の回転数を調整することを特徴とする請求項1記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項3】
前記テンションアームをポテンショメータで計測することを特徴とする請求項1または2記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項4】
前記乗用型茶園作業機を巻取り時とは逆に走行し、前記回転軸に巻取ってある寒冷紗を送り出して、茶樹に被覆することを特徴とする請求項1、2または3記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項5】
前記乗用型茶園作業機は乗用型茶葉摘採機または乗用型茶園管理機であり、アタッチメント取付部に装着することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項1】
寒冷紗を巻取るために横架した回転軸と、該回転軸の駆動手段とより構成するとともに、乗用型茶園作業機に着脱自在とすることを特徴とする茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項2】
テンションアームを、回動自在に軸支し、巻取る手前の寒冷紗の上にのせ、テンションアームの位置を計測して、巻取る手前の寒冷紗の張り具合を計測し、張り具合が一定となるように前記回転軸の回転数を調整することを特徴とする請求項1記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項3】
前記テンションアームをポテンショメータで計測することを特徴とする請求項1または2記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項4】
前記乗用型茶園作業機を巻取り時とは逆に走行し、前記回転軸に巻取ってある寒冷紗を送り出して、茶樹に被覆することを特徴とする請求項1、2または3記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【請求項5】
前記乗用型茶園作業機は乗用型茶葉摘採機または乗用型茶園管理機であり、アタッチメント取付部に装着することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の茶園用寒冷紗巻取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−90611(P2013−90611A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236155(P2011−236155)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
[ Back to top ]