説明

草刈機

【構成】 略水平面に沿って回転する主回転刃31と、略傾斜面に沿って回転する副回転刃35とを左右に備える草刈機において、主回転刃31の前方に副回転刃35を配置して、これら両回転刃31,35を左右方向でオーバラップLさせるとともに、両回転刃31,35の回転方向を平面視でともに、前方側において副回転刃35側から主回転刃31側へ向けて回転r,rするよう構成する。
【効果】 左右の回転刃31,35間の刈り残しをなくせるとともに、先行する副回転刃35で刈り取った草を、後に続く主回転刃31の前方に寄せてから、主回転刃31で刈り取った草とともに、その側方に寄せておける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、畦の上面の草を刈り取るに好適した草刈機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】畦用の草刈機として、畦の上面に沿って回転する主回転刃と、畦の法面に沿って回転する副回転刃とを左右方向でオーバラップさせて並列して、副回転刃の前方に主回転刃を配置するとともに、これら両回転刃の回転方向を平面視でともに、前方側において後方の副回転刃側から前方の主回転刃側へ向けて回転するよう構成したものが、特公昭61−59686号公報により公知となっている。これは、畦の法面で副回転刃により刈り取った草を畦の上面に掻き上げて集積することを狙いとしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の畦用草刈機において、畦の上面での刈り取った草の整列と、その刈り草を集める作業性に関しての考慮はなされていなかった。
【0004】そこで本発明の目的は、左右の回転刃間の草の刈り残しをなくすとともに、左右の回転刃により刈り取った草を畦の上面に整列できて、後の刈り草を集める作業が効率良く行なえるようにした草刈機を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決すべく本発明は、略水平面に沿って回転する主回転刃と、略傾斜面に沿って回転する副回転刃とを左右に備える草刈機において、前記主回転刃の前方に前記副回転刃を配置して、これら両回転刃を左右方向でオーバラップさせるとともに、前記両回転刃の回転方向を平面視でともに、前方側において前記副回転刃側から前記主回転刃側へ向けて回転するよう構成したことを特徴とする。更に本発明は、前記両回転刃を収納して前後方向に開口するハウジングを備え、このハウジングの前記主回転刃側の側壁を前後方向略直線状に伸びる草排出用ガイド壁としたことも特徴とする。
【0006】
【作用】先ず、主回転刃と副回転刃を左右方向でオーバラップさせたので、左右の回転刃間の草の刈り残しがなくなる。そして、主回転刃の前方に副回転刃を配置して、これら両回転刃の回転方向を平面視でともに、前方側において前方の副回転刃側から後方の主回転刃側へ向けて回転するよう構成したので、先行する副回転刃で刈り取った草を、後に続く主回転刃の前方に寄せてから、主回転刃で刈り取った草とともに、その側方に寄せておける。しかも、両回転刃を収納して前後方向に開口するハウジングの主回転刃側の側壁を前後方向略直線状に伸びる草排出用ガイド壁とすることで、そのガイド壁に沿って、刈り取った草を後方に排出して、畦の上面に一列に整列でき、従って、後の刈り草を集める作業が効率良く行なえる。
【0007】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明を適用した草刈機の概略外観を示す図1及び図2において、1は機体、3は車輪、5はハンドル、7は支持フレーム、9は転舵輪、20は刈刃装置である。機体1には、図4のように、エンジン11が搭載され、エンジン11は、クランク軸12を垂直置きとして、このクランク軸12下端に駆動プーリ13を備えており、後述する刈刃装置20の他、左右一対の車輪3,3にも動力伝達可能となっている。
【0008】図1及び図2のように、機体1は、後方に立上がる左右一対のハンドル5,5を備えるとともに、前方へ伸びるパイプによる支持フレーム7を備え、支持フレーム7は、機体1の右側から伸びる分岐部7aを有し、この支持フレーム7前端には、垂直軸6を介して転舵輪支持アーム8が備えられている。この転舵輪支持アーム8には、図示しないが、転舵輪9の上下位置調整機構が設けられている。また、一方のハンドル5の近傍に転舵操作レバー15が備えられて、支持フレーム7前端の垂直軸6上端に転舵アーム16が設けられており、これら転舵操作レバー15と転舵アーム16間にタイロッド17が架設されている。
【0009】そして、機体1の前方で、転舵輪9の後方に刈刃装置20が配設されており、即ち、支持フレーム7の前後中間部に刈刃装置20のハウジングが結合支持されている。実施例において、刈刃装置20のハウジングは、図3にも拡大して示すように、左右に分割された固定側ハウジング21とスイングハウジング25から構成されている。固定側ハウジング21は、その上面部22を後部で、支持フレーム7の機体1右側に伸びる分岐部7aに固定されており、この固定側ハウジング21の上面部22に、スイングハウジング25が上面部26で、前後方向のヒンジ軸29(図3及び図5参照)により後述する如くスイング動可能に枢支されている。
【0010】このヒンジ軸29は、図6にも示すように、支持フレーム7の前後中間部に固設したブラケット18から垂設したプレート19に支持されている。ここで、固定側ハウジング21は、前後方向に開口したもので、その上面部22の前部を上方への傾斜面部23として、側面部を前後方向へ略直線状に伸びる草排出用ガイド壁24としている。また、スイングハウジング25も、前後方向に開口したもので、その上面部26の前部を上方への傾斜面部27として、側面部の後部を尾輪配設用の凹状湾曲部28としている。
【0011】そして、図7及び図8にも示す通り、固定側ハウジング21の後半部内に主回転刃31を収納して、スイングハウジング25の前半部内に副回転刃35を収納している。図9に拡大して示すように、両回転刃31,35は、上面にドラム32,36を一体化して、このドラム32,36の外周面には、草の巻き付きを防いで吹き飛ばす突条部33,37が円周方向等間隔に複数(実施例では3個ずつ)設けられており、34は主回転軸、38は副回転軸である。固定側ハウジング上面22の後半部上に突出する主回転軸34には、被動プーリ41とその上の駆動プーリ43が備えられており、スイングハウジング上面26の前半部上に突出する副回転軸38には被動プーリ45が備えられている。
【0012】そして、図4に示すように、エンジン11のクランク軸12下端の駆動プーリ13と主回転軸34の被動プーリ41とに第1動力伝達ベルト42が掛装されるとともに、主回転軸34の駆動プーリ43と副回転軸38の被動プーリ45とに第2動力伝達ベルト46が掛装されている。また、第1動力伝達ベルト42の外周側に圧接して張力を付与する第1テンションローラ51が設けられ、52はその第1テンションアームである。更に、第2動力伝達ベルト46の外周側に圧接して張力を付与する第2テンションローラ55が設けられており、56はその第2テンションアームである。
【0013】ここで、図3に示すように、第2テンションローラ55を支持した第2テンションアーム56は、傾斜軸57を介して支持フレーム7のブラケット18に突設したステイ58に枢支されており、この第2テンションアーム56とスイングハウジング上面22のヒンジ軸29周り上に起設したステイ39との間に引張コイルスプリング59が張設されている。以上において、図7に示す通り、草刈機の進行方向(矢印F)に対して、左側の副回転刃35を、右側の主回転刃31の前方に配置して、これら両回転刃31,35を左右方向で所定量オーバラップLさせるとともに、両回転刃31,35の回転方向を平面視でともに、前方側において前方の副回転刃35側から後方の主回転刃31側へ向けて回転するよう、即ち、実施例では、時計廻り(矢印r,r)としている。
【0014】また、図3に示すように、スイングハウジング25側面部の後部に形成した凹状湾曲部28には、尾輪61が配設されており、即ち、尾輪61は、尾輪支持アーム62の垂直軸63を、スイングハウジング上面26後部上に固設した前後方向のロッド65後端に固設した縦方向の支持パイプ66に挿通して、ボルト68により高さ調整自在に組み付けられている。69はロックナットである。そして、スイングハウジング上面26のロッド65中間部にも前後方向の支持パイプ67が固設されており、この支持パイプ67には、スイング量調整ロッド71が、その下端のL型屈曲部72の挿通により枢支されている。このスイング量調整ロッド71は、図6R>6に示すように、上端にねじ部73を形成して、このねじ部73にナット74を螺着するとともに、ねじ部73のナット74上方部のピン挿通孔75と、中間部のピン挿通孔76とを形成してなる。
【0015】このスイング量調整ロッド71の上部を、支持フレーム7のブラケット18に突設した係止片78の係止溝79に挿通して、割りピン77を、ピン挿通孔75,76の何れかに挿入係止する。即ち、主回転刃31と同様に、副回転刃35も略水平とする場合には、下側のピン挿通孔76に割りピン77を挿入して、係止片78上面に割りピン77を当接させ、また、副回転刃35を後述する如く、畦上面の側方寄り部に合わせて所定量傾斜させる場合には、ねじ部73のピン挿通孔75に割りピン77を挿入して、係止片78上面にナット74を当接可能とする。尚、スイングハウジング上面26の水平状態以上の回動を阻止すべく、図2に示すように、そのスイングハウジング上面26と当接するストッパ81が、固定側ハウジング上面22に設けられている。
【0016】次に、以上の草刈機による畦上面の草刈作業について説明する。先ず、本発明を適用した草刈機は、図10に示す通り、畦の上面に生えた草を刈り取るもので、具体的には、畦の上面を一往復して、畦上面中央部の略水平面とその左右の略傾斜面上の草を刈り取るものである。尚、畦の左右の法面については、図示せぬ刈り払い機を用いて、その草の刈り取りを行なう。
【0017】畦上面の草刈作業に先立つ移動時は、スイングハウジング上面26に枢支したスイング量調整ロッド71の上部を、支持フレーム7のブラケット18に突設した係止片78の係止溝79に挿通して、下側のピン挿通孔76に割りピン77を挿入し、係止片78上面に割りピン77を当接させて、固定側ハウジング21と同様に、スイングハウジング25も略水平状態にする。この時、固定側ハウジング上面22に設けたストッパ81が、スイングハウジング上面26に当接して、そのスイングハウジング上面26の水平状態以上の回動が阻止される。これにより、主回転刃31と同様に、副回転刃35も略水平となり、この状態で、支持フレーム7前端の転舵輪支持アーム8に対する転舵輪9の位置を下方にすることで、刈刃装置20を地面から持ち上げた状態にして、移動を行なう。この移動時、ハンドル5に設ける図示せぬ操作レバーの操作により、第1動力伝達ベルト42の第1テンションローラ51を保持する第1テンションアーム52を揺動して、第1動力伝達ベルト42から第1テンションローラ51を外周側へ離間させることで、刈刃装置20への動力伝達を遮断状態とする。尚、平坦地の草刈作業の場合には、動力伝達状態にする。
【0018】畦の上面においては、支持フレーム7前端の転舵輪支持アーム8に対する転舵輪9の位置を上方にして、刈刃装置20を畦上面に近接させ、スイング量調整ロッド71のピン挿通孔76から割りピン77を抜いて、係止片78上面にナット74を当接可能とする。この時、割りピン77は、ねじ部73のピン挿通孔75に挿入して、保持させる。これにより、図10に示すように、畦上面中央部の略水平面に臨む固定側ハウジング21及び主回転刃31に対して、ヒンジ軸29廻りの回動(図5及び図6参照)により、スイングハウジング25及び副回転刃35が、畦上面の側方寄り部に合わせた傾斜状態となる。この状態で、スイングハウジング25側面部の後部に形成した凹状湾曲部28に臨む尾輪61が接地状態となる。
【0019】そして、第1動力伝達ベルト42に第1テンションローラ51を圧接させて、刈刃装置20への動力伝達を行ない、草刈機の前進時は、尾輪61の接地により、畦上面の側方寄り部形状に追従して、スイング量調整ロッド71のナット74が係止片78の上面に当接するストローク分だけ、スイングハウジング25及び副回転刃35がスイング動可能となっている。また、スイングハウジング25のスイング動作に追従して、支持フレーム7のブラケット18に突設したステイ58に傾斜軸57を介して枢支した第2テンションアーム56が、スイングハウジング上面22のヒンジ軸29周り上に起設したステイ39との間に張設した引張コイルスプリング59の引張力により、揺動して、第2動力伝達ベルト46に対する第2テンションローラ55の圧接状態が常時適切に得られる。
【0020】しかも、図7に示す通り、草刈機の進行方向(矢印F)に対して、左側の副回転刃35を、右側の主回転刃31の前方に配置して、これら両回転刃31,35を左右方向で所定量オーバラップLさせるとともに、両回転刃31,35の回転方向を平面視でともに、前方側において前方の副回転刃35側から後方の主回転刃31側へ向けて回転するよう時計廻り(矢印r,r)としたことで、先行する副回転刃35で刈り取った畦上面の側方寄り部の草を、その矢印rで示した回転方向により、後に続く主回転刃31の前方に寄せてから、主回転刃31で刈り取った畦上面中央部の草とともに、同じ矢印rで示した回転方向によって、その側方に寄せることができる。続いて、主回転刃31による矢印rで示した回転方向により、固定側ハウジング21の前後方向略直線状に伸びる側壁による草排出用ガイド壁24に沿って、刈り取った草を後方に排出でき、草刈機後方の畦上面の中央部に一列に整列させることができる。
【0021】以上の草刈作業は、畦の上面を一往復して行ない、これにより、畦上面中央部の略水平面とその左右の略傾斜面上の草を刈り取ることができ、往復作業によって、畦上面の中央部に刈り取った草が整列状態となる。従って、後の刈り草を集める作業が、畦正面の中央部において、効率良く行なえるものとなっている。
【0022】また、以上の草刈作業時において、両回転刃31,35は、上面に一体化したドラム32,36を有するとともに、このドラム32,36の外周面に、実施例では3個ずつの突条部33…,37…を有しているので、ともに、刈り取った草が回転軸34,38に巻き付こうとするのを防いで、矢印rで示した回転方向に沿って、効果的に草を吹き飛ばせるものとなっている。尚、具体的な細部構造等については、実施例の他、適宜に変更可能であることは勿論である。例えば、実施例とは逆に、主回転刃に対して、進行方向右側に副回転刃を配置した場合には、その回転方向は平面視でともに反時計廻りとなる。
【0023】
【発明の効果】以上のように本発明の草刈機によれば、主回転刃と副回転刃を左右方向でオーバラップさせたため、左右の回転刃間の草の刈り残しをなくすことができるとともに、主回転刃の前方に副回転刃を配置して、これら両回転刃の回転方向を平面視でともに、前方側において前方の副回転刃側から後方の主回転刃側へ向けて回転するよう構成したため、先行する副回転刃で刈り取った草を、後に続く主回転刃の前方に寄せてから、主回転刃で刈り取った草とともに、その側方に寄せておくことができる。更に、両回転刃を収納して前後方向に開口するハウジングの主回転刃側の側壁を前後方向略直線状に伸びる草排出用ガイド壁とすることにより、そのガイド壁に沿って、刈り取った草を後方に排出して、畦の上面に一列に整列することができ、従って、後の刈り草を集める作業を効率良く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した草刈機の外観を示す概略斜視図
【図2】同じく概略平面図
【図3】動力伝達装置及びハウジング部分の拡大斜視図
【図4】エンジンから回転刃への動力伝達装置を示す透視斜視図
【図5】ハウジングのスイング機能を説明する縦断正面図
【図6】同じく要部縦断後面図
【図7】本発明に係る回転刃の配置を示す平面図
【図8】ハウジング内を下方から示す斜視図
【図9】回転刃部分の拡大斜視図
【図10】本発明を適用した草刈機による畦の上面草刈作業を説明する概略正面図
【符号の説明】
1…機体、3…車輪、5…ハンドル、7…支持フレーム、9…転舵輪、11…エンジン、20…刈刃装置、21…固定側ハウジング、24…草排出用ガイド壁、25…スイングハウジング、29…ヒンジ軸、31…主回転刃、35…副回転刃、L…オーバラップ代、r…刈刃回転方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 略水平面に沿って回転する主回転刃と、略傾斜面に沿って回転する副回転刃とを左右に備える草刈機において、前記主回転刃の前方に前記副回転刃を配置して、これら両回転刃を左右方向でオーバラップさせるとともに、前記両回転刃の回転方向を平面視でともに、前方側において前記副回転刃側から前記主回転刃側へ向けて回転するよう構成したことを特徴とする草刈機。
【請求項2】 前記両回転刃を収納して前後方向に開口するハウジングを備え、このハウジングの前記主回転刃側の側壁を前後方向略直線状に伸びる草排出用ガイド壁としたことを特徴とする請求項1記載の草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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