荷受台昇降装置
【課題】簡易な構成で荷受台の良好な昇降作動を実現することのできる油圧シリンダを備えた荷受台昇降装置を提供する。
【解決手段】荷台又は車体枠に対して基端部が連結されてその連結部を中心に上下に回動する回動アームと、この回動アームの先端部において支持される荷受台と、前記回動アームを回動させ、シリンダ本体とこのシリンダ本体に対して移動自在なロッドとを有するラム形シリンダと、を備えており、前記シリンダ本体の内方で、前記ロッドのボトム側端部から前記シリンダ本体における前記ロッドの挿通孔までの内方領域にスプリングが配されており、前記内方領域の所定の位置で、前記シリンダ本体と前記ロッドとのそれぞれには前記スプリングが係止される係止部が設けられた構成とする。
【解決手段】荷台又は車体枠に対して基端部が連結されてその連結部を中心に上下に回動する回動アームと、この回動アームの先端部において支持される荷受台と、前記回動アームを回動させ、シリンダ本体とこのシリンダ本体に対して移動自在なロッドとを有するラム形シリンダと、を備えており、前記シリンダ本体の内方で、前記ロッドのボトム側端部から前記シリンダ本体における前記ロッドの挿通孔までの内方領域にスプリングが配されており、前記内方領域の所定の位置で、前記シリンダ本体と前記ロッドとのそれぞれには前記スプリングが係止される係止部が設けられた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面と荷台との間を昇降する荷受台昇降装置、特に荷受台の昇降作動に用いられる油圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
荷受台昇降装置は、平行リンク機構などの昇降装置を介して荷受台が設けられた構成を有している。こうした昇降装置は平行リンクを構成するアームの基端部が荷台又は車体枠に連結され、アームの先端部が荷受台を支持する構成を有している。このアーム部分には油圧シリンダが配されており、油圧シリンダの伸縮によってアームが駆動されて回動し、この回動に伴って荷受台が昇降される。その中でも主に、荷受台を上昇させる際には圧油が供給されて伸長し、荷受台を下降させる際には荷受台の自重等で収縮する単動式の油圧シリンダが配された構成がある。
【0003】
例えば、図7(a)に示す荷受台昇降装置90の場合、油圧シリンダ91の伸縮によって荷受台92は接地位置(実線部分)と荷台高さ位置(一点鎖線部分)との間を回動する(矢印A1)。荷受台92の昇降速度は油圧シリンダ91の伸縮速度の影響を受けるため、所定位置に達する前に油圧シリンダ91の伸縮速度を抑制して、荷受台92が接地位置や荷台高さ位置に達した際の衝撃を和らげることが望ましい。
【0004】
そこで、特許文献1のように、油圧シリンダ内にスプリングを設けて、ロッドが所定長さだけ伸長するとスプリングに反力が生じる構成とし、その反力で油圧シリンダの伸長速度を抑制する技術などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−033746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スプリングによる速度抑制を目的として単にスプリングを配した構成としても、荷受台の良好な昇降作動を行う点で改善の余地がある。
【0007】
昇降途中で荷受台92の速度が急激に変化すると、荷物の荷崩れ等が生じやすくなるので、徐々に速度が抑制される構成が望ましい。その点で特許文献1の油圧シリンダでは、段階的にスプリングを配する圧油供給部とスプリングを配さないエア室との2室を有する構成としている。しかし、エア室には通気孔が必要となり、当該通気孔を介して粉塵が侵入する。粉塵が侵入した状態で油圧シリンダの伸長が繰り返されると、当接部材の磨耗劣化が進行し、油圧シリンダからの油漏れが生じる。特に図7(a)のような荷室内に配された荷受台昇降装置90の場合、こうした油漏れは荷室内の汚染が顕著となる。
【0008】
また、エア室を設けずに、比較的早期からスプリングの弾性力を利用して徐々に速度が抑制される構成とすると、荷物の昇降作業の迅速化が阻害されてしまう。この場合、迅速化を実現するためには、圧油の供給量を調整する制御装置等が別途必要となり、油圧シリンダの内外の構成の肥大化や複雑化を招く。
特にスプリングが速度抑制に大きく寄与する構成の場合、大きな反力が生じるスプリングが必要となり、油圧シリンダの肥大化に加えてコストの増加も招く。
一方で、スプリングが配されていない構成とすると、荷受台92を下降させる際に新たな問題が生じる。
【0009】
図7(b)のように、車両が水平状態で停車した場合には、荷受台92は矢印A2のように下降する。この動きについて詳述すると、拡大図で示すように、荷受台92は回動開始時には水平方向に動く。しかし、車両が前下がりとなる傾斜地に停車した場合、一点鎖線で示すように、荷受台昇降装置90全体も前下がりに傾斜する。そのため、アーム93の作動で回動される荷受台92は矢印A3のように回動する。つまり、回動開始時には斜め上方に移動する。荷受台92の下降は荷受台92の自重等を利用して行なわれるため、斜め上方には移動しにくく、作業者が荷受台92を持ち上げるようなサポートが必要となる。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされており、簡易な構成で荷受台の良好な昇降作動を実現する油圧シリンダを備えた荷受台昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る荷受台昇降装置は、荷台又は車体枠に対して基端部が連結されてその連結部を中心に上下に回動する回動アームと、この回動アームの先端部において支持される荷受台と、前記回動アームを回動させ、シリンダ本体とこのシリンダ本体に対して移動自在なロッドとを有するラム形シリンダと、を備えており、前記シリンダ本体の内方で、前記ロッドのボトム側端部から前記シリンダ本体における前記ロッドの挿通孔までの内方領域にスプリングが配されており、前記内方領域の所定の位置で、前記シリンダ本体と前記ロッドとのそれぞれには前記スプリングが係止される係止部が設けられている構成とする。
前記スプリングは、前記ラム形シリンダの軸方向に沿って、前記係止部のそれぞれの間を移動自在に配されている。
前記スプリングは、前記荷受台が所望の位置に上昇する際に、前記係止部によって移動が規制されるように配されている。
上述した構成において、前記ロッドは前記シリンダ本体の内方部と連通する中空部を有しており、前記スプリングは当該中空部に配されている。
【0011】
このシリンダ本体には、そのボトム部に係合されるとともに前記中空部まで延伸するガイド部が配されており、前記シリンダ本体における前記係止部は、前記ガイド部に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラムシリンダを用いているのでシリンダ本体にエア室を設ける必要がない。そのため、通気孔を設けることもないので、油圧シリンダが伸長を繰り返しても、当接部材が外方の粉塵等によって磨耗劣化することはなく、油圧シリンダの油漏れを防止することができる。
【0013】
また、シリンダ本体の内方にスプリングが配されているので、車両が傾斜地に停車して荷受台が荷台高さ位置で傾斜した状態となっても、スプリングの弾性力によって荷受台を下降させることができる。特に、2つの係止部でスプリングが係止されるので、荷受台が斜め上方に移動する初動作分の弾性力を得ることができるように、係止部の所定の位置を設定すればスプリングに大きな弾性力を求める必要がない。したがって、大きなスプリングを配することを回避でき、油圧シリンダの肥大化やコストの増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本実施形態に係る荷受台昇降装置の作動状態を示す側面図、(b)はその荷受台昇降装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る油圧シリンダの構成を示す部分断面図である。
【図3】本実施形態に係る油圧シリンダの作動を示す部分断面図である。
【図4】本実施形態に係る傾斜状態の荷受台の昇降作動を示す側面図である。
【図5】油圧シリンダの別の構成を示す部分断面図である。
【図6】別の実施形態に係る荷受台昇降装置の側面図である。
【図7】従来の荷受台昇降装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る荷受台昇降装置について、図面を用いて実施形態の一例を説明する。
【0016】
図1(a)は本実施形態の荷受台昇降装置100の側面図である。荷受台昇降装置100は車両前後方向に延びる左右一対の車枠1に設けられた荷室(荷箱)2の内部で車両後方側に設けられている。この荷受台昇降装置100は、昇降装置3を介して設けられた荷受台4を有しており、昇降装置3は荷室2の床面2aに固定されている。昇降装置3は、図示のとおり平行リンクアーム機構を有しており、平行リンクを構成する2本のアーム31、32間には油圧シリンダ5が設けられている。この油圧シリンダ5の伸縮を利用して、荷受台4が地面と格納高さ(一点鎖線部分)4aとの間で昇降される。
【0017】
昇降装置3は、図1(b)のとおり、平行リンクを構成する基端側の基端第1アーム31及び基端第2アーム32と、これらのアーム31、32の先端側に連結された先端アーム33とを左右それぞれに備えている。基端第1アーム31及び基端第2アーム32は、ブラケット301を介してベースプレート30に連結されている。ベースプレート30は床面2aに固定されて荷受台昇降装置100の支持部材として用いられている。基端第1アーム31及び基端第2アーム32はブラケット301にそれぞれ軸支されており、その軸支部31a、32aを回動中心として回動し、先端アーム33を上下動させる。基端第2アーム32は、車両後方に回動したとき、回動する基端第1アーム31の上側に位置する。基端第1アーム31、基端第2アーム32は軸支部31a、32aと、先端アーム33との連結部31b、32bとで平行リンクが構成されており、基端第1アーム31と基端第2アーム32とが回動すると、先端アーム33先端に支持された荷受台4が水平状態を維持したまま昇降される(矢印B)。なお、荷受台4は先端アーム33に回動可能に軸支されており、荷室2内に格納する際には水平状態から起立状態に作業者の手動操作によって姿勢変更される(矢印A)。
【0018】
油圧シリンダ5は、一端が基端第2アーム32の先端部に連結され、他端は基端第1アーム31の途中部に連結されている。基端第1アーム31及び基端第2アーム32が略起立状態のとき、油圧シリンダ5は伸長しており、油圧シリンダ5が収縮すると基端第1アーム31、基端第2アーム32は車両後方に回動して、荷受台4も下降する。一方、荷受台4を上昇させる際には、油圧シリンダ5を伸長させる。油圧シリンダ5が伸長すると、基端第1アーム31、基端第2アーム32が車両前方に回動して略起立状態に戻り、荷受台4も水平状態を維持したまま荷台高さ位置まで上昇する。
【0019】
油圧シリンダ5の構成について図2を用いて説明する。油圧シリンダ5は、押し推力を有効に利用するための単動式シリンダ(ラム形シリンダ)であり、筒状のシリンダ本体51と、シリンダ本体51に嵌挿されて中空部52aを有するロッド52とを備え、その中空部52aにスプリング55が配された構成を有する。
【0020】
シリンダ本体51はボトム部511側に圧油が供給されるポート51aを有し、ボトム部511とは反対側となる端部には、ロッド52が軸方向に沿って出入りするための挿通孔51bを有している。ポート51aを介して圧油がシリンダ本体51の内方に供給されると、ロッド52がシリンダ本体51の軸方向に沿って一点鎖線で示す位置に移動自在な構成となっている。
【0021】
ロッド52は、中空部52aが基端(図中の左側端部)から軸方向に沿ってロッド先端部521まで形成された筒状体となっている。基端側には略環状でスプリング55が当接する当接部材54が嵌入されている。当接部材54は、シリンダ本体51の軸方向に沿った貫通部54aと、ボトム部511側の端面541に溝部54bとが設けられている。溝部54bは、端面541の上縁部から下縁部まで貫通部54a部分を通って直線状に設けられている。なお、当接部材54は拡大図に示すとおり、シリンダ本体51の内周面との間に間隙56を設けた状態で配されており、ポート51aを介して供給された圧油は間隙56に流れるとともに、溝部54bにも流れる。当接部材54の端面541とボトム部511との間に圧油が流れ込むことで、当接部材54の端面541が圧油の受圧部となり、ロッド52が突出方向(図中右側)に移動する。
【0022】
また、シリンダ本体51とロッド52との内方には、棒状のガイド部53が配されている。ガイド部53は、当接部材54の貫通穴54aを通ってボトム部511からロッド52内方まで配されている。ガイド部53の一端533は、ボトム部511に螺合接合によって固定されている。貫通部54aの径はガイド部53の外径よりも大きく設定されており、ガイド部53は、当接部材54に対して非当接な状態である。したがって、圧油が供給された際には貫通部54aからロッド52内方に圧油が流れ込むようになっている。
【0023】
ロッド52の中空部52a、具体的には、ロッド52と当接部材52とで囲まれた内方領域(図2では長さLsで示す範囲)内には、ガイド部53の一部にスプリング55が巻回された状態で配されている。スプリング55は、図示のようなロッド52が移動していない(油圧シリンダが伸長していない)状態のとき、自然長Lの状態であり、スプリング反力(弾性力)は生じていない。また、スプリング55は、図中の左側の一端部55aが非固定状態で当接部材54に当接自在であり、図中の右側の他端部55bも同様に非固定状態である。つまり、スプリング55は、中空部52aの中でガイド部53に沿って移動自在な状態で配されている。また、上述のように配された当接部材54はスプリング55の基端部側(図中左側)への移動を規制する係止部として機能する。
【0024】
ガイド部53の先端側端部にはワッシャ531がナット532を介して配されている。ワッシャ531はガイド部53の径方向に沿って拡がるとともに、ロッド52の内面には接触しない大きさとなっている。スプリング55がガイド部53の先端側に移動すると、他端部55bが係止されることで移動規制される。つまり、ワッシャ531はスプリング55のガイド部53の先端側(図中右側)への移動を規制する係止部として機能する。ワッシャ531は、ナット532を螺進退させることでガイド部53の延伸方向に沿って移動可能であり、シリンダ本体51に対してスプリング55の移動を適宜所定の位置で規制することができる。なお、スプリング55の係止部として利用できるものであればワッシャ531以外の部材を用いても良い。また、ワッシャ531とナット532に一組として構成するものではなく、ワッシャ531をガイド部53に直接係止させた構成、固定させた構成、又はナット532等でスプリング55の移動を直接規制する構成でも構わない。その他、係止部をガイド部53に配する構成だけでなく、ロッド内周面に係合させた構成でも構わない。
次に、荷受台昇降装置100の動作について説明する。
【0025】
車両後方の開閉扉6(図1(a)参照)を開放して、荷室2内で起立した荷受台4を手動で水平状態にし、操作装置7(図1(b)参照)により所定の下降操作を行う。その操作指令を受けて駆動源となる駆動ユニット8が制御を行うことで、油圧シリンダ5が収縮して荷受台4が下降する。荷受台4を格納する際は、上記手順と逆の手順で作業する。
【0026】
この動作において、荷受台4を下降させる際の油圧シリンダ5の収縮は、荷受台4の自重や荷受台4に載置された荷物の荷重を受けて行われる。そして、荷受台4を上昇させる際には、収縮状態の油圧シリンダ5が伸長される。このときの油圧シリンダ5の作動について、図3(a)から図3(c)の順に伸長する作動を代表例として説明する。
【0027】
先ず、荷受台4が接地状態のとき、図3(a)のようにロッド52はシリンダ本体51のボトム側に位置し、当接部材54は図中の左端に位置している。このとき、スプリング55もロッド52と同様、油圧シリンダ5のボトム側(図中左側)に位置し、自然長Lの状態となっている。ロッド52内にはスプリング55が配された部分(長さLの範囲)と、配されていない部分(長さL1の範囲)とが形成されている。この状態で、シリンダ本体51のポート51aから圧油が供給されると、荷受台4の上昇作動が開始される。
【0028】
シリンダ本体51内に供給された圧油によって、ロッド52が移動すると、荷受台4が上昇し始める。荷受台4が荷室の床面高さの近くまで上昇すると、油圧シリンダ5は図3(b)の状態となる。ロッド52の突出移動に伴って、スプリング55の他端部55bがワッシャ531に係止され、スプリング55は移動が規制される。このとき、スプリング55は依然として自然長Lの状態を保っている。さらに、荷受台4の上昇作動が継続されると、スプリング55は自然長Lよりも収縮し始める。このとき、ロッド52の中空部52aには圧油が流れ込んでいるので、スプリング55がシリンダ本体51内で移動や収縮等をしても、スプリング55とロッド52内周面との摩擦を要因とした金属粉の発生を抑制することができる。
【0029】
継続して荷受台4が上昇されて荷室2の床面2a高さまで最上昇すると、図3(c)のとおり、油圧シリンダ5は最伸長した状態となる。このとき、スプリング55は長さL2の状態であり、自然長Lの状態と比較してLcだけ収縮している。したがって、スプリング55はロッド55をシリンダ本体51内に挿入される方向(油圧シリンダ5を収縮させる方向)にスプリング反力Rを有している。この反力Rが生じることで、引き続いて荷受台4を下降させる際に、油圧シリンダ5の収縮作動がスムーズに行われる。また、油圧シリンダ5が最伸長する直前にはスプリング反力Rによって、荷受台4の上昇速度の抑制効果も奏する。
【0030】
本実施形態では、荷受台4が荷室2の床面2a高さの近くまで上昇した状態(油圧シリンダ5は図3(b)の状態)を越えるとスプリング反力Rが発生するように設定されている。この「床面2a高さの近く」は、図4(a)のように車両が前下がりに傾斜する傾斜地で停車した状態の荷受台昇降装置100において、荷受台4が図4(b)で示す水平線Hsを通過する位置(二点鎖線部41)と略一致するように設定されている。この水平線Hsは、昇降装置3を床面2aに支持するベースプレート30の高さ位置を基準とする。
【0031】
スプリング反力Rの大きさに関しては、荷受台4が車両後方に向かって上方傾斜した方向に付勢し、荷受台4の回動開始が可能とする大きさに設定されている。傾斜地では荷受台4は水平方向(X方向)に対して傾斜した状態で矢印A4に沿って昇降される。また、下降する際には反対方向ではあるが軌を一にして回動される。そのため、車両後方に向かって少なくとも荷受台4を斜め上方に移動させることが可能な大きさであれば、その後は荷受台4は自重によって下降することができる。
【0032】
本実施形態において、上記の基準とする水平線Hsからスプリング反力Rが生じる。スプリング55が用いられているのは、傾斜地において荷受台昇降装置100が利用される状態が限定されるためである。作業者は、荷受台4に載置される荷物の安全な昇降等を考慮して、車両を停車させる傾斜地を判断し、傾斜角度が大きな傾斜地では荷受台昇降装置100の使用を回避する。したがって、図4(a)で示すような状態は、作業者が荷物の昇降作業が安全と判断する程度の傾斜地、又は作業者が気付かない程度の傾斜地での作業状態である。したがって、上記の「床面2a高さの近く」で設定することで、荷受台4の昇降作動において、スプリング反力Rを適切なタイミングで発生させることができる。さらに必要な大きさだけのスプリング反力Rを発生させることができるので、油圧シリンダ5の肥大化を防止することもできる。その結果、作業者は、予期せず荷受台4が下降開始時に上方傾斜する方向の作動が必要となっても、通常の操作を行うだけで良く、直接荷受台4を持ち上げるような特別な作業は不要である。
【0033】
なお、スプリング反力Rを発生するタイミングについては、厳密に設定するものではなく、ワッシャ513の配設位置を適宜調整することで、荷受台4の迅速な昇降作業が大きく阻害されない程度に、水平線Hsに達する前からスプリング反力Rが発生するようにしても良い。特に、荷受台4に積まれる荷物が比較的重量の大きいものを対象とする車両においては、荷受台4の下降作動時に比較的大きなスプリング反力Rを得ることができるので好ましい。
必要な大きさだけのスプリング反力Rを発生させる点以外にも、本実施形態では次の点で油圧シリンダ5の肥大化防止の効果がある。
【0034】
スプリング55がロッド52の中空部52aに配されているので、ロッド52とシリンダ本体51との間には圧油が供給される室内51S(図3(b)参照)以外で、当接部材54でシールされたエア室を設ける必要がない。結果、シリンダ本体51に不要な通気孔等の形成を回避することができるので、シリンダ本体51に塵や埃が侵入することを防止することができる。さらに、細小なスプリング55を用いても、ロッド52の中空部53の領域内であれば巻回数を増やすことで適切なスプリング反力Rを得ることができ、ロッド52外方にスプリングが配される場合と比較して、油圧シリンダ5の長尺化や拡径化の防止につながる。その他、スプリング55は固定されておらず、ガイド部53やスプリング55の係止部となるワッシャ531等は螺合されているだけなので、不要な部品点数の増加を防止できる。
【0035】
スプリング反力Rの設定に関しては、傾斜地における荷受台4の下降作動の他に、上昇作動においても効果がある。荷受台4は図4(b)のように傾斜した状態で昇降される。つまり、荷受台4に載置される荷物も傾斜するので、荷受台4が最上昇した際(図中の実線部分)に達した際、荷受台4が水平状態のときと比較して荷物が荷崩れ等を起こしやすくなるが、スプリング55が収縮することで荷受台4の上昇速度を抑制することができ、荷物の荷崩れを防止することもできる。上述のとおり、作業者が安全と判断している状況下での荷物の昇降作業なので、安全面で大きな効果を奏する。
【0036】
以上の効果等を有する油圧シリンダ5であれば、上記構成に限定されない。例えば図5に示すようなスプリング550がロッド520の外周面に沿って巻回された状態の油圧シリンダ500も同様の効果を得ることができる。
【0037】
この油圧シリンダ500は、シリンダ本体510に対して出入り自在なロッド520を有する。ロッド520のボトム側端部(図中左側)にはスプリング550の移動を規制する当接部材540が固着されている。また、シリンダ本体510にはロッド520を挿通する挿通孔580を有するとともにロッド520を嵌挿するロッド支持部510aを有する。このロッド支持部510aは、スプリング550のロッド先端部側(図中右側)への移動を規制する係止部としても機能する。なお、ロッド支持部510aは説明の便宜上、シリンダ本体510と異なる部材として図示されているが、シリンダ本体510の一部として一体成型された構成でも構わない。
【0038】
当接部材540は、拡大図で示すように、シリンダ本体510の軸方向に沿って延びる複数の貫通部540aと、ボトム側の端面に図中の上下方向に沿った延びる溝部540bとが設けられている。なお、当接部材540はシリンダ本体510の内周面を摺動するように構成されており、ポート510aからシリンダ本体510の内方560に供給された圧油が溝部540b及び貫通部540aを通って、シリンダ本体510の内方であって当接部材510aよりもロッド先端部側の領域に送られる。
【0039】
こうした構成を有する油圧シリンダ500であっても、シリンダ本体510の内方領域(図中の長さLpで示す部分)にスプリング550が配され、シリンダ本体510のボトム側端部から先端部にわたって圧油が送られる構成とすれば、同様の効果を得ることができる。つまり、シリンダ本体510に通気孔を設けることがなく、油圧シリンダ500からの油漏れを防止することができる。また、所定の位置でスプリング550の移動が規制されて所望するスプリング反力を得ることができるように設定することで、荷受台が回動開始する際に必要とするだけのスプリング反力を得ることができる。
【0040】
上述したような2種の油圧シリンダ5、500においては、スプリング55、550を移動自在な構成としたが、スプリング55の配設形式やスプリング55の性能などに関しては他の形態を用いても構わない。例えば、図2で示すようなスプリング55において、ロッド52の長手方向に沿った移動や伸縮をスムーズに行うことができる構成であれば、異なる形状のガイド部53を設けても、もしくはガイド部53を設けない構成としても構わない。なお、ガイド部53を設けない場合には、スプリング53の端部を係止するワッシャ531等の係止部を支持する支持部を別途設けることが望ましい。
【0041】
また、スプリング55の端部55a、55bが固定されていて、荷受台4の上昇開始時から又は上昇途中でスプリング反力Rが生じる構成であっても、油漏れの防止や肥大化防止がなされた構成であれば適用可能である。勿論、スプリング55の端部55a、55bの一方のみが固定された構成でも構わない。
【0042】
スプリング55の他端部55bが係止される位置についても、ガイド部53の先端部だけでなく荷受台昇降装置100や車両の種類等によって適宜変更可能である。
【0043】
なお、本実施形態では、荷室2内に配された昇降装置3を用いて説明したが、これに限定されない。例えば、図6(a)で示すように、荷受台201が車両後方で起立した状態で格納される荷受台昇降装置200も適用可能である。この荷受台昇降装置200は、車両前後方向に延びる左右一対の車枠(不図示)に対して連結部材202が架設されており、当該連結部材202を介して昇降装置203が回動自在に連結され、昇降装置203の回動先端に荷受台201が連結された構成を有する。
【0044】
荷受台201は、起立状態から図6(b)のように水平状態(実線部分)まで回動用油圧シリンダ204の伸縮を利用して回動作動され、水平状態のまま昇降用油圧シリンダ205の伸縮を利用して地面との間で昇降作動される。荷受台201の回動作動及び昇降作動のいずれの場合も、上昇作動では油圧が供給されて油圧シリンダ204、205が伸長し、下降作動では荷受台201の自重等を利用して油圧シリンダ204、205が収縮する構成となっている。
【0045】
回動用油圧シリンダ204は、上述した油圧シリンダと同様のスプリング反力Rが生じる構成とされている。この構成を有していることで、車両が傾斜地に停車している場合であっても、上述した実施形態と同様のスプリング反力Rを有するので、荷受台201が回動作動で下降開始時に良好に回動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、油圧シリンダを回動される荷受台を備える荷受台昇降装置に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 車枠
2 荷室
3 リンク装置
4 荷受台
5 油圧シリンダ
51 シリンダ本体
52 ロッド
53 ガイド部
54 当接部材(係止部)
55 スプリング
51a ポート
52a 中空部
531 ワッシャ(係止部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面と荷台との間を昇降する荷受台昇降装置、特に荷受台の昇降作動に用いられる油圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
荷受台昇降装置は、平行リンク機構などの昇降装置を介して荷受台が設けられた構成を有している。こうした昇降装置は平行リンクを構成するアームの基端部が荷台又は車体枠に連結され、アームの先端部が荷受台を支持する構成を有している。このアーム部分には油圧シリンダが配されており、油圧シリンダの伸縮によってアームが駆動されて回動し、この回動に伴って荷受台が昇降される。その中でも主に、荷受台を上昇させる際には圧油が供給されて伸長し、荷受台を下降させる際には荷受台の自重等で収縮する単動式の油圧シリンダが配された構成がある。
【0003】
例えば、図7(a)に示す荷受台昇降装置90の場合、油圧シリンダ91の伸縮によって荷受台92は接地位置(実線部分)と荷台高さ位置(一点鎖線部分)との間を回動する(矢印A1)。荷受台92の昇降速度は油圧シリンダ91の伸縮速度の影響を受けるため、所定位置に達する前に油圧シリンダ91の伸縮速度を抑制して、荷受台92が接地位置や荷台高さ位置に達した際の衝撃を和らげることが望ましい。
【0004】
そこで、特許文献1のように、油圧シリンダ内にスプリングを設けて、ロッドが所定長さだけ伸長するとスプリングに反力が生じる構成とし、その反力で油圧シリンダの伸長速度を抑制する技術などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−033746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スプリングによる速度抑制を目的として単にスプリングを配した構成としても、荷受台の良好な昇降作動を行う点で改善の余地がある。
【0007】
昇降途中で荷受台92の速度が急激に変化すると、荷物の荷崩れ等が生じやすくなるので、徐々に速度が抑制される構成が望ましい。その点で特許文献1の油圧シリンダでは、段階的にスプリングを配する圧油供給部とスプリングを配さないエア室との2室を有する構成としている。しかし、エア室には通気孔が必要となり、当該通気孔を介して粉塵が侵入する。粉塵が侵入した状態で油圧シリンダの伸長が繰り返されると、当接部材の磨耗劣化が進行し、油圧シリンダからの油漏れが生じる。特に図7(a)のような荷室内に配された荷受台昇降装置90の場合、こうした油漏れは荷室内の汚染が顕著となる。
【0008】
また、エア室を設けずに、比較的早期からスプリングの弾性力を利用して徐々に速度が抑制される構成とすると、荷物の昇降作業の迅速化が阻害されてしまう。この場合、迅速化を実現するためには、圧油の供給量を調整する制御装置等が別途必要となり、油圧シリンダの内外の構成の肥大化や複雑化を招く。
特にスプリングが速度抑制に大きく寄与する構成の場合、大きな反力が生じるスプリングが必要となり、油圧シリンダの肥大化に加えてコストの増加も招く。
一方で、スプリングが配されていない構成とすると、荷受台92を下降させる際に新たな問題が生じる。
【0009】
図7(b)のように、車両が水平状態で停車した場合には、荷受台92は矢印A2のように下降する。この動きについて詳述すると、拡大図で示すように、荷受台92は回動開始時には水平方向に動く。しかし、車両が前下がりとなる傾斜地に停車した場合、一点鎖線で示すように、荷受台昇降装置90全体も前下がりに傾斜する。そのため、アーム93の作動で回動される荷受台92は矢印A3のように回動する。つまり、回動開始時には斜め上方に移動する。荷受台92の下降は荷受台92の自重等を利用して行なわれるため、斜め上方には移動しにくく、作業者が荷受台92を持ち上げるようなサポートが必要となる。
本発明は、上記の問題を鑑みてなされており、簡易な構成で荷受台の良好な昇降作動を実現する油圧シリンダを備えた荷受台昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る荷受台昇降装置は、荷台又は車体枠に対して基端部が連結されてその連結部を中心に上下に回動する回動アームと、この回動アームの先端部において支持される荷受台と、前記回動アームを回動させ、シリンダ本体とこのシリンダ本体に対して移動自在なロッドとを有するラム形シリンダと、を備えており、前記シリンダ本体の内方で、前記ロッドのボトム側端部から前記シリンダ本体における前記ロッドの挿通孔までの内方領域にスプリングが配されており、前記内方領域の所定の位置で、前記シリンダ本体と前記ロッドとのそれぞれには前記スプリングが係止される係止部が設けられている構成とする。
前記スプリングは、前記ラム形シリンダの軸方向に沿って、前記係止部のそれぞれの間を移動自在に配されている。
前記スプリングは、前記荷受台が所望の位置に上昇する際に、前記係止部によって移動が規制されるように配されている。
上述した構成において、前記ロッドは前記シリンダ本体の内方部と連通する中空部を有しており、前記スプリングは当該中空部に配されている。
【0011】
このシリンダ本体には、そのボトム部に係合されるとともに前記中空部まで延伸するガイド部が配されており、前記シリンダ本体における前記係止部は、前記ガイド部に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラムシリンダを用いているのでシリンダ本体にエア室を設ける必要がない。そのため、通気孔を設けることもないので、油圧シリンダが伸長を繰り返しても、当接部材が外方の粉塵等によって磨耗劣化することはなく、油圧シリンダの油漏れを防止することができる。
【0013】
また、シリンダ本体の内方にスプリングが配されているので、車両が傾斜地に停車して荷受台が荷台高さ位置で傾斜した状態となっても、スプリングの弾性力によって荷受台を下降させることができる。特に、2つの係止部でスプリングが係止されるので、荷受台が斜め上方に移動する初動作分の弾性力を得ることができるように、係止部の所定の位置を設定すればスプリングに大きな弾性力を求める必要がない。したがって、大きなスプリングを配することを回避でき、油圧シリンダの肥大化やコストの増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本実施形態に係る荷受台昇降装置の作動状態を示す側面図、(b)はその荷受台昇降装置を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る油圧シリンダの構成を示す部分断面図である。
【図3】本実施形態に係る油圧シリンダの作動を示す部分断面図である。
【図4】本実施形態に係る傾斜状態の荷受台の昇降作動を示す側面図である。
【図5】油圧シリンダの別の構成を示す部分断面図である。
【図6】別の実施形態に係る荷受台昇降装置の側面図である。
【図7】従来の荷受台昇降装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る荷受台昇降装置について、図面を用いて実施形態の一例を説明する。
【0016】
図1(a)は本実施形態の荷受台昇降装置100の側面図である。荷受台昇降装置100は車両前後方向に延びる左右一対の車枠1に設けられた荷室(荷箱)2の内部で車両後方側に設けられている。この荷受台昇降装置100は、昇降装置3を介して設けられた荷受台4を有しており、昇降装置3は荷室2の床面2aに固定されている。昇降装置3は、図示のとおり平行リンクアーム機構を有しており、平行リンクを構成する2本のアーム31、32間には油圧シリンダ5が設けられている。この油圧シリンダ5の伸縮を利用して、荷受台4が地面と格納高さ(一点鎖線部分)4aとの間で昇降される。
【0017】
昇降装置3は、図1(b)のとおり、平行リンクを構成する基端側の基端第1アーム31及び基端第2アーム32と、これらのアーム31、32の先端側に連結された先端アーム33とを左右それぞれに備えている。基端第1アーム31及び基端第2アーム32は、ブラケット301を介してベースプレート30に連結されている。ベースプレート30は床面2aに固定されて荷受台昇降装置100の支持部材として用いられている。基端第1アーム31及び基端第2アーム32はブラケット301にそれぞれ軸支されており、その軸支部31a、32aを回動中心として回動し、先端アーム33を上下動させる。基端第2アーム32は、車両後方に回動したとき、回動する基端第1アーム31の上側に位置する。基端第1アーム31、基端第2アーム32は軸支部31a、32aと、先端アーム33との連結部31b、32bとで平行リンクが構成されており、基端第1アーム31と基端第2アーム32とが回動すると、先端アーム33先端に支持された荷受台4が水平状態を維持したまま昇降される(矢印B)。なお、荷受台4は先端アーム33に回動可能に軸支されており、荷室2内に格納する際には水平状態から起立状態に作業者の手動操作によって姿勢変更される(矢印A)。
【0018】
油圧シリンダ5は、一端が基端第2アーム32の先端部に連結され、他端は基端第1アーム31の途中部に連結されている。基端第1アーム31及び基端第2アーム32が略起立状態のとき、油圧シリンダ5は伸長しており、油圧シリンダ5が収縮すると基端第1アーム31、基端第2アーム32は車両後方に回動して、荷受台4も下降する。一方、荷受台4を上昇させる際には、油圧シリンダ5を伸長させる。油圧シリンダ5が伸長すると、基端第1アーム31、基端第2アーム32が車両前方に回動して略起立状態に戻り、荷受台4も水平状態を維持したまま荷台高さ位置まで上昇する。
【0019】
油圧シリンダ5の構成について図2を用いて説明する。油圧シリンダ5は、押し推力を有効に利用するための単動式シリンダ(ラム形シリンダ)であり、筒状のシリンダ本体51と、シリンダ本体51に嵌挿されて中空部52aを有するロッド52とを備え、その中空部52aにスプリング55が配された構成を有する。
【0020】
シリンダ本体51はボトム部511側に圧油が供給されるポート51aを有し、ボトム部511とは反対側となる端部には、ロッド52が軸方向に沿って出入りするための挿通孔51bを有している。ポート51aを介して圧油がシリンダ本体51の内方に供給されると、ロッド52がシリンダ本体51の軸方向に沿って一点鎖線で示す位置に移動自在な構成となっている。
【0021】
ロッド52は、中空部52aが基端(図中の左側端部)から軸方向に沿ってロッド先端部521まで形成された筒状体となっている。基端側には略環状でスプリング55が当接する当接部材54が嵌入されている。当接部材54は、シリンダ本体51の軸方向に沿った貫通部54aと、ボトム部511側の端面541に溝部54bとが設けられている。溝部54bは、端面541の上縁部から下縁部まで貫通部54a部分を通って直線状に設けられている。なお、当接部材54は拡大図に示すとおり、シリンダ本体51の内周面との間に間隙56を設けた状態で配されており、ポート51aを介して供給された圧油は間隙56に流れるとともに、溝部54bにも流れる。当接部材54の端面541とボトム部511との間に圧油が流れ込むことで、当接部材54の端面541が圧油の受圧部となり、ロッド52が突出方向(図中右側)に移動する。
【0022】
また、シリンダ本体51とロッド52との内方には、棒状のガイド部53が配されている。ガイド部53は、当接部材54の貫通穴54aを通ってボトム部511からロッド52内方まで配されている。ガイド部53の一端533は、ボトム部511に螺合接合によって固定されている。貫通部54aの径はガイド部53の外径よりも大きく設定されており、ガイド部53は、当接部材54に対して非当接な状態である。したがって、圧油が供給された際には貫通部54aからロッド52内方に圧油が流れ込むようになっている。
【0023】
ロッド52の中空部52a、具体的には、ロッド52と当接部材52とで囲まれた内方領域(図2では長さLsで示す範囲)内には、ガイド部53の一部にスプリング55が巻回された状態で配されている。スプリング55は、図示のようなロッド52が移動していない(油圧シリンダが伸長していない)状態のとき、自然長Lの状態であり、スプリング反力(弾性力)は生じていない。また、スプリング55は、図中の左側の一端部55aが非固定状態で当接部材54に当接自在であり、図中の右側の他端部55bも同様に非固定状態である。つまり、スプリング55は、中空部52aの中でガイド部53に沿って移動自在な状態で配されている。また、上述のように配された当接部材54はスプリング55の基端部側(図中左側)への移動を規制する係止部として機能する。
【0024】
ガイド部53の先端側端部にはワッシャ531がナット532を介して配されている。ワッシャ531はガイド部53の径方向に沿って拡がるとともに、ロッド52の内面には接触しない大きさとなっている。スプリング55がガイド部53の先端側に移動すると、他端部55bが係止されることで移動規制される。つまり、ワッシャ531はスプリング55のガイド部53の先端側(図中右側)への移動を規制する係止部として機能する。ワッシャ531は、ナット532を螺進退させることでガイド部53の延伸方向に沿って移動可能であり、シリンダ本体51に対してスプリング55の移動を適宜所定の位置で規制することができる。なお、スプリング55の係止部として利用できるものであればワッシャ531以外の部材を用いても良い。また、ワッシャ531とナット532に一組として構成するものではなく、ワッシャ531をガイド部53に直接係止させた構成、固定させた構成、又はナット532等でスプリング55の移動を直接規制する構成でも構わない。その他、係止部をガイド部53に配する構成だけでなく、ロッド内周面に係合させた構成でも構わない。
次に、荷受台昇降装置100の動作について説明する。
【0025】
車両後方の開閉扉6(図1(a)参照)を開放して、荷室2内で起立した荷受台4を手動で水平状態にし、操作装置7(図1(b)参照)により所定の下降操作を行う。その操作指令を受けて駆動源となる駆動ユニット8が制御を行うことで、油圧シリンダ5が収縮して荷受台4が下降する。荷受台4を格納する際は、上記手順と逆の手順で作業する。
【0026】
この動作において、荷受台4を下降させる際の油圧シリンダ5の収縮は、荷受台4の自重や荷受台4に載置された荷物の荷重を受けて行われる。そして、荷受台4を上昇させる際には、収縮状態の油圧シリンダ5が伸長される。このときの油圧シリンダ5の作動について、図3(a)から図3(c)の順に伸長する作動を代表例として説明する。
【0027】
先ず、荷受台4が接地状態のとき、図3(a)のようにロッド52はシリンダ本体51のボトム側に位置し、当接部材54は図中の左端に位置している。このとき、スプリング55もロッド52と同様、油圧シリンダ5のボトム側(図中左側)に位置し、自然長Lの状態となっている。ロッド52内にはスプリング55が配された部分(長さLの範囲)と、配されていない部分(長さL1の範囲)とが形成されている。この状態で、シリンダ本体51のポート51aから圧油が供給されると、荷受台4の上昇作動が開始される。
【0028】
シリンダ本体51内に供給された圧油によって、ロッド52が移動すると、荷受台4が上昇し始める。荷受台4が荷室の床面高さの近くまで上昇すると、油圧シリンダ5は図3(b)の状態となる。ロッド52の突出移動に伴って、スプリング55の他端部55bがワッシャ531に係止され、スプリング55は移動が規制される。このとき、スプリング55は依然として自然長Lの状態を保っている。さらに、荷受台4の上昇作動が継続されると、スプリング55は自然長Lよりも収縮し始める。このとき、ロッド52の中空部52aには圧油が流れ込んでいるので、スプリング55がシリンダ本体51内で移動や収縮等をしても、スプリング55とロッド52内周面との摩擦を要因とした金属粉の発生を抑制することができる。
【0029】
継続して荷受台4が上昇されて荷室2の床面2a高さまで最上昇すると、図3(c)のとおり、油圧シリンダ5は最伸長した状態となる。このとき、スプリング55は長さL2の状態であり、自然長Lの状態と比較してLcだけ収縮している。したがって、スプリング55はロッド55をシリンダ本体51内に挿入される方向(油圧シリンダ5を収縮させる方向)にスプリング反力Rを有している。この反力Rが生じることで、引き続いて荷受台4を下降させる際に、油圧シリンダ5の収縮作動がスムーズに行われる。また、油圧シリンダ5が最伸長する直前にはスプリング反力Rによって、荷受台4の上昇速度の抑制効果も奏する。
【0030】
本実施形態では、荷受台4が荷室2の床面2a高さの近くまで上昇した状態(油圧シリンダ5は図3(b)の状態)を越えるとスプリング反力Rが発生するように設定されている。この「床面2a高さの近く」は、図4(a)のように車両が前下がりに傾斜する傾斜地で停車した状態の荷受台昇降装置100において、荷受台4が図4(b)で示す水平線Hsを通過する位置(二点鎖線部41)と略一致するように設定されている。この水平線Hsは、昇降装置3を床面2aに支持するベースプレート30の高さ位置を基準とする。
【0031】
スプリング反力Rの大きさに関しては、荷受台4が車両後方に向かって上方傾斜した方向に付勢し、荷受台4の回動開始が可能とする大きさに設定されている。傾斜地では荷受台4は水平方向(X方向)に対して傾斜した状態で矢印A4に沿って昇降される。また、下降する際には反対方向ではあるが軌を一にして回動される。そのため、車両後方に向かって少なくとも荷受台4を斜め上方に移動させることが可能な大きさであれば、その後は荷受台4は自重によって下降することができる。
【0032】
本実施形態において、上記の基準とする水平線Hsからスプリング反力Rが生じる。スプリング55が用いられているのは、傾斜地において荷受台昇降装置100が利用される状態が限定されるためである。作業者は、荷受台4に載置される荷物の安全な昇降等を考慮して、車両を停車させる傾斜地を判断し、傾斜角度が大きな傾斜地では荷受台昇降装置100の使用を回避する。したがって、図4(a)で示すような状態は、作業者が荷物の昇降作業が安全と判断する程度の傾斜地、又は作業者が気付かない程度の傾斜地での作業状態である。したがって、上記の「床面2a高さの近く」で設定することで、荷受台4の昇降作動において、スプリング反力Rを適切なタイミングで発生させることができる。さらに必要な大きさだけのスプリング反力Rを発生させることができるので、油圧シリンダ5の肥大化を防止することもできる。その結果、作業者は、予期せず荷受台4が下降開始時に上方傾斜する方向の作動が必要となっても、通常の操作を行うだけで良く、直接荷受台4を持ち上げるような特別な作業は不要である。
【0033】
なお、スプリング反力Rを発生するタイミングについては、厳密に設定するものではなく、ワッシャ513の配設位置を適宜調整することで、荷受台4の迅速な昇降作業が大きく阻害されない程度に、水平線Hsに達する前からスプリング反力Rが発生するようにしても良い。特に、荷受台4に積まれる荷物が比較的重量の大きいものを対象とする車両においては、荷受台4の下降作動時に比較的大きなスプリング反力Rを得ることができるので好ましい。
必要な大きさだけのスプリング反力Rを発生させる点以外にも、本実施形態では次の点で油圧シリンダ5の肥大化防止の効果がある。
【0034】
スプリング55がロッド52の中空部52aに配されているので、ロッド52とシリンダ本体51との間には圧油が供給される室内51S(図3(b)参照)以外で、当接部材54でシールされたエア室を設ける必要がない。結果、シリンダ本体51に不要な通気孔等の形成を回避することができるので、シリンダ本体51に塵や埃が侵入することを防止することができる。さらに、細小なスプリング55を用いても、ロッド52の中空部53の領域内であれば巻回数を増やすことで適切なスプリング反力Rを得ることができ、ロッド52外方にスプリングが配される場合と比較して、油圧シリンダ5の長尺化や拡径化の防止につながる。その他、スプリング55は固定されておらず、ガイド部53やスプリング55の係止部となるワッシャ531等は螺合されているだけなので、不要な部品点数の増加を防止できる。
【0035】
スプリング反力Rの設定に関しては、傾斜地における荷受台4の下降作動の他に、上昇作動においても効果がある。荷受台4は図4(b)のように傾斜した状態で昇降される。つまり、荷受台4に載置される荷物も傾斜するので、荷受台4が最上昇した際(図中の実線部分)に達した際、荷受台4が水平状態のときと比較して荷物が荷崩れ等を起こしやすくなるが、スプリング55が収縮することで荷受台4の上昇速度を抑制することができ、荷物の荷崩れを防止することもできる。上述のとおり、作業者が安全と判断している状況下での荷物の昇降作業なので、安全面で大きな効果を奏する。
【0036】
以上の効果等を有する油圧シリンダ5であれば、上記構成に限定されない。例えば図5に示すようなスプリング550がロッド520の外周面に沿って巻回された状態の油圧シリンダ500も同様の効果を得ることができる。
【0037】
この油圧シリンダ500は、シリンダ本体510に対して出入り自在なロッド520を有する。ロッド520のボトム側端部(図中左側)にはスプリング550の移動を規制する当接部材540が固着されている。また、シリンダ本体510にはロッド520を挿通する挿通孔580を有するとともにロッド520を嵌挿するロッド支持部510aを有する。このロッド支持部510aは、スプリング550のロッド先端部側(図中右側)への移動を規制する係止部としても機能する。なお、ロッド支持部510aは説明の便宜上、シリンダ本体510と異なる部材として図示されているが、シリンダ本体510の一部として一体成型された構成でも構わない。
【0038】
当接部材540は、拡大図で示すように、シリンダ本体510の軸方向に沿って延びる複数の貫通部540aと、ボトム側の端面に図中の上下方向に沿った延びる溝部540bとが設けられている。なお、当接部材540はシリンダ本体510の内周面を摺動するように構成されており、ポート510aからシリンダ本体510の内方560に供給された圧油が溝部540b及び貫通部540aを通って、シリンダ本体510の内方であって当接部材510aよりもロッド先端部側の領域に送られる。
【0039】
こうした構成を有する油圧シリンダ500であっても、シリンダ本体510の内方領域(図中の長さLpで示す部分)にスプリング550が配され、シリンダ本体510のボトム側端部から先端部にわたって圧油が送られる構成とすれば、同様の効果を得ることができる。つまり、シリンダ本体510に通気孔を設けることがなく、油圧シリンダ500からの油漏れを防止することができる。また、所定の位置でスプリング550の移動が規制されて所望するスプリング反力を得ることができるように設定することで、荷受台が回動開始する際に必要とするだけのスプリング反力を得ることができる。
【0040】
上述したような2種の油圧シリンダ5、500においては、スプリング55、550を移動自在な構成としたが、スプリング55の配設形式やスプリング55の性能などに関しては他の形態を用いても構わない。例えば、図2で示すようなスプリング55において、ロッド52の長手方向に沿った移動や伸縮をスムーズに行うことができる構成であれば、異なる形状のガイド部53を設けても、もしくはガイド部53を設けない構成としても構わない。なお、ガイド部53を設けない場合には、スプリング53の端部を係止するワッシャ531等の係止部を支持する支持部を別途設けることが望ましい。
【0041】
また、スプリング55の端部55a、55bが固定されていて、荷受台4の上昇開始時から又は上昇途中でスプリング反力Rが生じる構成であっても、油漏れの防止や肥大化防止がなされた構成であれば適用可能である。勿論、スプリング55の端部55a、55bの一方のみが固定された構成でも構わない。
【0042】
スプリング55の他端部55bが係止される位置についても、ガイド部53の先端部だけでなく荷受台昇降装置100や車両の種類等によって適宜変更可能である。
【0043】
なお、本実施形態では、荷室2内に配された昇降装置3を用いて説明したが、これに限定されない。例えば、図6(a)で示すように、荷受台201が車両後方で起立した状態で格納される荷受台昇降装置200も適用可能である。この荷受台昇降装置200は、車両前後方向に延びる左右一対の車枠(不図示)に対して連結部材202が架設されており、当該連結部材202を介して昇降装置203が回動自在に連結され、昇降装置203の回動先端に荷受台201が連結された構成を有する。
【0044】
荷受台201は、起立状態から図6(b)のように水平状態(実線部分)まで回動用油圧シリンダ204の伸縮を利用して回動作動され、水平状態のまま昇降用油圧シリンダ205の伸縮を利用して地面との間で昇降作動される。荷受台201の回動作動及び昇降作動のいずれの場合も、上昇作動では油圧が供給されて油圧シリンダ204、205が伸長し、下降作動では荷受台201の自重等を利用して油圧シリンダ204、205が収縮する構成となっている。
【0045】
回動用油圧シリンダ204は、上述した油圧シリンダと同様のスプリング反力Rが生じる構成とされている。この構成を有していることで、車両が傾斜地に停車している場合であっても、上述した実施形態と同様のスプリング反力Rを有するので、荷受台201が回動作動で下降開始時に良好に回動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、油圧シリンダを回動される荷受台を備える荷受台昇降装置に有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 車枠
2 荷室
3 リンク装置
4 荷受台
5 油圧シリンダ
51 シリンダ本体
52 ロッド
53 ガイド部
54 当接部材(係止部)
55 スプリング
51a ポート
52a 中空部
531 ワッシャ(係止部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台又は車体枠に対して基端部が連結されてその連結部を中心に上下に回動する回動アームと、
この回動アームの先端部において支持される荷受台と、
前記回動アームを回動させ、シリンダ本体とこのシリンダ本体に対して移動自在なロッドとを有するラム形シリンダと、
を備えており、
前記シリンダ本体の内方で、前記ロッドのボトム側端部から前記シリンダ本体における前記ロッドの挿通孔までの内方領域にスプリングが配されており、
前記内方領域の所定の位置で、前記シリンダ本体と前記ロッドとのそれぞれには前記スプリングが係止される係止部が設けられている
ことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記スプリングは、前記ラム形シリンダの軸方向に沿って、前記係止部のそれぞれの間を移動自在に配されている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記スプリングは、前記荷受台が所望の位置に上昇する際に、前記係止部によって移動が規制される
ことを特徴とする請求項2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記ロッドは前記シリンダ本体の内方部と連通する中空部を有しており、
前記スプリングは当該中空部に配されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記シリンダ本体には、そのボトム部に係合されるとともに前記中空部まで延伸するガイド部が配されており、
前記シリンダ本体における前記係止部は、前記ガイド部に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の荷受台昇降装置。
【請求項1】
荷台又は車体枠に対して基端部が連結されてその連結部を中心に上下に回動する回動アームと、
この回動アームの先端部において支持される荷受台と、
前記回動アームを回動させ、シリンダ本体とこのシリンダ本体に対して移動自在なロッドとを有するラム形シリンダと、
を備えており、
前記シリンダ本体の内方で、前記ロッドのボトム側端部から前記シリンダ本体における前記ロッドの挿通孔までの内方領域にスプリングが配されており、
前記内方領域の所定の位置で、前記シリンダ本体と前記ロッドとのそれぞれには前記スプリングが係止される係止部が設けられている
ことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記スプリングは、前記ラム形シリンダの軸方向に沿って、前記係止部のそれぞれの間を移動自在に配されている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記スプリングは、前記荷受台が所望の位置に上昇する際に、前記係止部によって移動が規制される
ことを特徴とする請求項2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記ロッドは前記シリンダ本体の内方部と連通する中空部を有しており、
前記スプリングは当該中空部に配されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記シリンダ本体には、そのボトム部に係合されるとともに前記中空部まで延伸するガイド部が配されており、
前記シリンダ本体における前記係止部は、前記ガイド部に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の荷受台昇降装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−131445(P2012−131445A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287086(P2010−287086)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
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