説明

荷電付与組成物およびそれを用いた荷電付与部材

【課題】静電写真用トナーに負の電荷を付与して優れた帯電特性や帯電安定性を発現させる電荷付与部材の原材料となる荷電付与組成物を提供する。
【解決手段】荷電付与組成物は、下記化学式(I)他


で表されるケイ素錯体化合物を有効成分とする正帯電性荷電制御剤と、溶媒および/または分散剤とが、含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電写真用トナーに負電荷を付与して帯電させるために用いられる荷電付与部材の原材料となる荷電付与組成物、およびそれを用いた荷電付与部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター、ファクシミリなどに利用されている電子写真は、摩擦帯電させたトナーにより感光体上の静電荷像を現像し、記録紙上に転写して定着させて、複写や印刷をするものである。
【0003】
トナーには、二成分トナーと一成分トナーとがある。二成分トナーを用いた現像方式は、例えばトナーとそれに電荷を付与する磁性粒子であるキャリアとを混合した現像剤を用いるものであり、トナーとキャリアとが摩擦することによりトナーが帯電し、トナーをキャリアにより搬送して感光体に静電的に付着させ現像するというものである。一方、一成分トナーを用いた現像方式は、例えば金属ブレードと現像スリーブとの隙間でトナーを摩擦帯電させた後、潜像電界によりトナーを感光体に飛行させて現像するというものである。
【0004】
何れの場合も、トナーを十分に帯電させることは、電子写真の現像スピードを高め、鮮明な画像を形成する上で重要な因子である。
【0005】
トナーの帯電量を適切に制御して安定化し、帯電の立ち上がり速度を速めたりするために、トナーには、トナー用樹脂と共に荷電制御剤が添加される。特許文献1に、中心原子である半金属のケイ素に有機配位子が配位したもので、トナーを負に帯電させる荷電制御剤が、開示されている。荷電制御剤が添加されたトナーは、摩擦帯電の際、トナー粒子同士の摩擦、キャリアとの衝突、感光体との摩擦等により、表面に露出している荷電制御剤が脱落してしまい、キャリア等を汚染してしまったり、十分な帯電性を発現できなくなったり、画像濃度の低下やカブリによる画像品質の低下を起こしたりし易い。
【0006】
トナーに荷電制御剤を添加してトナーを帯電させる方法の代替として、特許文献2には、現像のために必要な電荷をトナーに付与するために、トナーに接触して帯電させる荷電制御剤が露出したキャリア等の電荷付与部材が開示されている。
【0007】
複写や印刷の速度を高速化しつつ高画質化するために、トナーに十分な電荷を付与して、従来よりも一層優れた帯電特性や帯電安定性を発現させ、しかも環境に対して安全で長期間使用できる電荷付与部材が望まれている。
【0008】
【特許文献1】特開平4−293057号公報
【特許文献2】特開2004−341456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、静電写真用トナーに負の電荷を付与して優れた帯電特性や帯電安定性を発現させる電荷付与部材の原材料となる荷電付与組成物を提供することを目的とする。また荷電付与組成物を用いて形成され、十分な電荷付与性と耐摩擦強度と耐久性とを有し、環境に対して安全な電荷付与部材を提供することを目的とする。さらにこの荷電付与部材を使用した静電写真用トナーの荷電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた本発明の荷電付与組成物は、下記化学式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
および/または、下記化学式(II)
【0013】
【化2】

【0014】
(化学式(I)および(II)中、[D−(SO)]2−はスルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸の2価アニオン、p=0または1、Bはp=0のとき結合線を示しp=1のとき炭素原子または窒素原子、Jは炭素原子または窒素原子、Aは(B)およびJと共に環状を形成する有機基、二つのRは同一または異なる有機基であって複素環を形成してもよい基)で表されるケイ素錯体化合物を有効成分とする正帯電性荷電制御剤と、溶媒および/または分散剤とが、含まれている。
【0015】
荷電付与組成物は、前記化学式(I)中、
【0016】
【化3】

【0017】
基は、下記式(III)
【0018】
【化4】

【0019】
(式(III)中、R〜RおよびR10〜R14は水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基、または隣接基同士により飽和または不飽和で縮合した炭素数3〜7の環を形成している基;RおよびR15は酸素原子、カルボニル基、イミノ基;Rは水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基を示す。)で表され、
前記化学式(II)中、
【0020】
【化5】

【0021】
基は、下記式(IV)
【0022】
【化6】

【0023】
(式(IV)中、R16〜R17およびR23〜R25は水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基;R18はメチンまたは窒素原子;R19〜R22は水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基、または隣接基同士により飽和または不飽和で縮合した炭素数3〜7の環を形成している基;R26は窒素原子、または置換基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜8のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜8のアルコキシ基、Cl、Br、I、Fであるハロゲン、フェニル基、トルイル基、ナフチル基などのアリール基、水素原子など)を有していてもよい炭素原子を示す。)で表されるものであることが好ましい。
【0024】
荷電付与組成物は、前記化学式(I)のケイ素錯体化合物が、下記化学式(V)
【0025】
【化7】

【0026】
(式(V)中、Xはハロゲン原子、p,B,J,およびAは、前記と同じ。)
で表されるケイ素錯塩と、前記有機酸またはその塩とを、イオン交換反応させて得られた化合物であり、
【0027】
前記化学式(II)のケイ素錯体化合物が、下記化学式(VI)
【0028】
【化8】

【0029】
(式(VI)中、Xはハロゲン原子、p,B,J,およびRは、前記と同じ。)
で表されるケイ素錯塩と、前記有機酸またはその塩とを、イオン交換反応させて得られた化合物であると、一層好ましい。
【0030】
本発明の荷電付与部材は、静電写真用トナーに接触して荷電を付与するキャリア粉末、現像スリーブ、およびブレードのいずれかが、前記の荷電付与組成物で、コーティングされ、または成形されており、前記ケイ素錯体化合物を露出させている。
【0031】
記載の静電写真用トナーの荷電制御方法は、前記の荷電付与部材と、静電写真用トナーとを接触させて摩擦させることにより、該トナーを帯電させるというものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の正帯電性荷電制御剤が含まれている荷電付与組成物は、静電写真用トナーに、負電荷を付与して、良好な帯電特性や帯電安定性を発現させるものである。この荷電付与組成物は、耐熱性、保存安定性、環境に対する安全性の面で特に優れている。
【0033】
この荷電付与組成物でコーティングされたり成形されたりして形成された荷電付与部材は、速い立上がり速度でトナーに電荷を付与する。この荷電付与部材は、モノクロのトナーのみならず、幅広く種々の有彩色のトナーに電荷を付与するのに用いられる。この荷電付与部材は、耐久性に優れているから、交換しなくても長期間連続して使用できる。
【0034】
この荷電付与部材を用いた静電写真用トナーの荷電制御方法は、無機、有機を問わずあらゆる種類の感光体上の静電荷像を現像するのに適している。また、普通紙のみならず加工紙、加工フィルム等の転写記録媒体への現像に適している。現像されたトナー像は、広範な温度域における定着性を有している。定着された画像は、明瞭であり地かぶりを生じることなく、非オフセット性を有し、長時間劣化しない。
【0035】
この静電写真用トナーの荷電制御方法によれば、トナーに荷電制御剤を含有させなくてもよいから、キャリア粉末、現像スリーブ、金属ブレードや磁性体ブレード等の荷電付与部材が、汚染されない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
本発明の荷電付与組成物は、ケイ素錯体化合物を有効成分とする正帯電性荷電制御剤と、溶媒および/または分散剤とが含まれたものである。前記ケイ素錯体化合物は化学式(I)または(II)のケイ素錯体化合物を単独で用いてもよいし、2種以上のものを併用してもよい。溶媒または/及び分散剤100重量部に対して、ケイ素錯体化合物が0.5〜200重量部含まれていることが好適であり、更に2〜100重量部となるような割合で用いる事が好ましい。
【0038】
正帯電性荷電制御剤は、ケイ素錯体カチオンと、スルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸の2価アニオンとの塩からなり前記化学式(I)または(II)で表されるケイ素錯体化合物を有効成分とするものである。このケイ素錯体化合物は、前記式(III)または(IV)で表される基を有していることが好ましい。
【0039】
前記化学式(I)または(II)のケイ素錯体化合物は、前記化学式(V)または(VI)で表されるケイ素錯塩と、前記有機酸またはその塩とを、イオン交換反応させて、得られるものである。
【0040】
前記式(III)または(IV)中のR〜R26は、前記のとおりの基である。より具体的には、R〜R、R〜R14、R16〜R25は、以下のものが挙げられる。
【0041】
ハロゲン原子としては、例えばCl、Br、I、Fが挙げられる。
【0042】
アルキル基としては、ニトロ基、Cl、Br、I、Fで例示されるハロゲン原子、炭素数1〜18のアルコキシ基のような置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基のような炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0043】
アルコキシ基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、Cl、Br、I、Fで例示されるハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基のような置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよく、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基のような炭素数1〜18のアルコキシ基が挙げられる。
【0044】
アシル基としては、例えばホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバレロイル基、ベンゾイル基が挙げられる。
【0045】
ヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
【0046】
アルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基が挙げられる。
【0047】
アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0048】
アリール基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、Cl、Br、I、Fで例示されるハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基のような置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよく、例えばフェニル基、トルイル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0049】
アリサイクリック基としては、ヒドロキシ基、ニトロ基、Cl、Br、I、Fで例示されるハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基のような置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよく、例えばシクロプロペニル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基のような炭素数3〜7のシクロアルキル基が挙げられる。
【0050】
置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよいアラルキル基としては、例えばベンジル基、α,α'‐ジメチルベンジル基が挙げられる。
【0051】
また、隣接基同士により、飽和または不飽和で縮合した炭素数3〜7の環を形成している基としては、置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよく、例えばシクロプロペン環、シクロプロパン環、シクロブタジエン環、シクロブタン環、シクロペンタジエン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタトリエン環、ベンゼン環が挙げられる。中でもベンゼン環が好ましい。前記の縮合した環が有していてもよい置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アラルキル基、アリサイクリック基、アルケニル基が挙げられる。
【0052】
前記化学式(I)または(II)中、[D−(SO)]2−は、スルホン酸基(−SOM M:水素、アルカリ金属、アンモニウム)を少なくとも2個有するポリスルホン酸である有機酸から得られる2価アニオンである。この有機酸は、置換基としてスルホン酸基を少なくとも2個有する芳香族系または脂肪族系の有機酸が挙げられる。好ましくは、ベンゼン環上やナフタレン環上に、少なくともスルホン酸基を2個有する芳香族系の有機酸である。
【0053】
この有機酸は、下記式(VII)で表されるナフタレンジスルホン酸誘導体が好ましい。
【0054】
【化9】

【0055】
(式(VII)中、Mは水素、アルカリ金属、アンモニウム、R27〜R29は水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基〔例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基等が挙げられる。〕、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ニトロ基、アルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基のような炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。〕、アルコキシ基〔例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基のような炭素数1〜18のアルコキシ基が挙げられる。〕、アセチルオキシ基、ハロゲン原子〔例えば、Cl、Br、I、Fが挙げられる。〕、フェニルオキシ基、カルボキシル基、アシル基〔例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバレロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。〕である。)
【0056】
前記有機酸のさらに具体的な例は、置換基として少なくともスルホン酸基を2個有する下記式(VIII)で表され表1に記載されたナフタレン誘導体が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
【表1】

【0059】
前記有機酸の別の具体的な例は、置換基として少なくともスルホン酸基を2個有する下記式(IX)で表され表2に記載されたベンゼン誘導体が挙げられる。
【0060】
【化11】

【0061】
【表2】

【0062】
なお、前記化学式(I)で示した構造式において、Jが炭素原子を選択した場合には、下記化学式(X)
【0063】
【化12】

【0064】
で表記される場合があり、前記化学式(II)で示した構造式において、Jが炭素原子を選択した場合には、下記化学式(XI)
【0065】
【化13】

で表記される場合がある。
【0066】
この正帯電性荷電制御剤は、ケイ素錯体カチオンと、スルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸アニオンとの塩を形成させた前記化学式(I)または(II)のケイ素錯体化合物を、有効成分として含有させることにより、調製したものである。
【0067】
前記ケイ素錯体化合物は、公知の方法を組合せて調製することができる。
【0068】
例えば、前記化学式(I)のケイ素錯体化合物は、下記の方法で調製される。先ず第1工程において、四塩化ケイ素で例示されるハロゲン化ケイ素やテトラエトキシシランのようなケイ素化剤に、ヒドロキシル基とカルボニル基を有する下記式(XII)
【0069】
【化14】

【0070】
(式(XII)中、p、B、J、およびAは、前記化学式(I)に同じ。)で表される化合物を、反応させる。すると、ケイ素化剤に由来するケイ素が中心原子となり、それに、ヒドロキシル基由来の酸素が共有結合し、かつカルボニル基が配位結合し、下記式(XIII)
【0071】
【化15】

【0072】
(式(XIII)中、p、B、J、およびAは、前記化学式(I)に同じ。[E]はアニオンを示す。)で表されるケイ素錯体中間体が得られる。なお、この[E]は、一般にケイ素化剤に由来するアニオンである。
【0073】
高収率、高純度でケイ素錯体中間体を得るには、ケイ素化剤として、四塩化ケイ素で例示されるハロゲン化ケイ素を用いることが好ましい。例えば、前記化学式(XII)で表される化合物と、四塩化ケイ素とを反応させた場合、化学式(XIII)中の[E]は、前記化学式(V)で示すように、ハロゲンアニオン[X](例えばCl:クロルイオン)となる。
【0074】
引き続く第2工程において、このケイ素錯体中間体に、スルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸またはその塩D−(SOM)を反応させ、前記式(XIII)で表されるケイ素錯体中間体中の[E](例えば、前記[X])と、スルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸のアニオン[D−(SO)]2−とをイオン変換させることにより、前記化学式(I)で表されたケイ素錯体化合物が得られる。
【0075】
前記化学式(I)で表されたケイ素錯体化合物の例を示したが、前記化学式(II)で表されたケイ素錯体化合物についても同様である。
【0076】
本発明の重要な特徴は、ケイ素錯体化合物中の対イオンが、スルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸である点である。ケイ素錯体化合物を含む正帯電性荷電制御剤は、対イオンが、スルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸以外の各種アニオン、例えばクロルイオンである本発明適用外のケイ素錯体化合物からなる荷電制御剤よりも、帯電特性、熱安定性、環境安定性が向上するという優位な効果を有する。
【0077】
また、前記のイオン交換反応の際に、前記化学式(V)または(VI)に由来して残存するハロゲン含有量が0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下にすることが、正帯電性荷電制御剤の帯電特性を向上させるのに重要な因子となる。このような残存ハロゲン含有量が少ないという好ましい実施様態により、さらに帯電安定性、保存安定性、耐環境性が一層向上する。
【0078】
上記化学式(I)または(II)のケイ素錯体化合物のより具体的な例として、下記の化合物が挙げられる。勿論、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
【化16】

【0080】
【化17】

【0081】
【化18】

【0082】
【化19】

【0083】
【化20】

【0084】
【化21】

【0085】
【化22】

【0086】
【化23】

【0087】
【化24】

【0088】
【化25】

【0089】
【化26】

【0090】
【化27】

【0091】
【化28】

【0092】
【化29】

【0093】
【化30】

【0094】
【化31】

【0095】
【化32】

【0096】
【化33】

【0097】
【化34】

【0098】
【化35】

【0099】
【化36】

【0100】
【化37】

【0101】
【化38】

【0102】
【化39】

【0103】
【化40】

【0104】
【化41】

【0105】
【化42】

【0106】
【化43】

【0107】
【化44】

【0108】
【化45】

【0109】
正帯電性荷電制御剤は、これらのケイ素錯体化合物の内、単一化合物を含んでいてもよく、異なる構造の化合物の複数を含んでいてもよい。異なる複数のケイ素錯体や異なる複数の有機酸2価アニオンの高次化合物からなるケイ素錯体化合物を含んでいてもよい。さらに、従来の荷電制御剤と共存させたものであってもよい。
【0110】
正帯電性荷電制御剤中の前記化学式(I)または(II)のケイ素錯体化合物は、1価であるケイ素錯体カチオンからなる二つのイオンが2価である有機酸アニオンからなる一つのイオンに結合している構造をとっている。このケイ素錯体化合物は、対イオンであるアニオンの種類により、荷電付与部材中での熱安定性や環境安定性を大きく変化させる。このケイ素錯体化合物が前記の構造をとっていると、トナーに電荷を付与する荷電付与部材として必要不可欠である熱安定性や環境安定性といった特性は、スルホン酸基以外からなるアニオン成分を有するケイ素錯体化合物よりも、大きく向上する。
【0111】
さらに、前記化学式(I)または(II)のケイ素錯体化合物は、前記の構造に起因して、高温下に長時間晒されても、ほとんど分解せず、ほとんど重量減少が認められないという特長を有する。そのため、ケイ素錯体化合物を主要成分とする荷電制御剤を含む荷電付与部材は、印刷時の排気ガス中に、人体に有害な荷電制御剤由来化学物質の発生の可能性が非常に低く、環境への負荷や安全性に優れたものとなっている。
【0112】
前記化学式(I)のケイ素錯体化合物の体積抵抗率は、1.0×1013〜5.0×1015Ω・cmであることが好ましく、1.0×1014〜5.0×1015Ω・cmであると一層好ましい。この荷電制御剤を含む荷電付与部材は、トナーの電荷付与性が安定し、トナーの帯電量または帯電速度を所要の適切なレベルに調整できる。
【0113】
荷電付与組成物に含まれる溶媒または分散剤は、例えば親水性溶剤や、疎水性有機溶剤である。親水性有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シキロヘキサノンのようなケトン類;N,N−ジメチルホルムアルデヒド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドのような非プロトン性極性溶剤が挙げられる。疎水性有機溶剤は、キシレン、トルエンのような芳香族系溶剤;ヘキサンのような炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いられてもよく、複数混合して用いられてもよい。
【0114】
分散剤は、分散用樹脂であってもよい。このような樹脂として、ポリメチルアクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアクリロニトリル樹脂;イソプレンユニットやブタジエンユニットを有する合成ゴム;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂;ロジン樹脂;ポリカーボネート樹脂;フェノール樹脂;塩素化パラフィン;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂;シリコーン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いられてもよく、複数混合して用いられてもよい。これらの樹脂と前記の溶媒との混合物であってもよい。
【0115】
本発明の荷電付与部材は、静電写真用トナーに接触して荷電を付与するキャリア粉末、現像スリーブ、およびブレードのいずれかであって、前記の荷電付与組成物で、コーティングされ、または成形されたものである。具体的には、キャリア粉末に対し、0.1〜10重量%の量、一層好ましくは0.5〜2重量%の量の荷電制御剤が付される。また現像スリーブやブレードに対し、0.01〜10mg/cmの量、一層好ましくは0.1〜2mg/cmの量の荷電制御剤が付される。
【0116】
荷電付与部材は、荷電制御剤が溶剤に分散したり、樹脂のような分散剤に分散したりした荷電付与組成物に、キャリア粉末原体や現像スリーブやブレードを浸漬させた後、乾燥させたものであってもよく、またキャリア粉末原体等に荷電付与組成物を噴霧した後、乾燥させたものであってもよい。更にキャリア粉末原体等に荷電付与組成物を刷毛塗りなど塗布した後、乾燥させたものであってもよい。
【0117】
荷電付与部材は、荷電付与組成物を、基材上に押出しラミネート加工したり、成型加工したりした現像スリーブやブレードであってもよい。
【0118】
このようにして形成された荷電付与部材の表面から、ケイ素錯体化合物が露出している。
【0119】
キャリア粉末は、特に限定されないが、例えば、粒径50〜200μm程度の鉄粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、銅粉のような金属粉;合金からなる粉末;マグネタイト粉、フェライト粉のような金属酸化物の粉末;ガラスビーズ、ガラス粉末;セラミックス粉末;これらの表面をアクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、またはフッ化エチレン系樹脂でコーティングした粉末;樹脂粉末、磁性物質含有樹脂粉末が挙げられる。
【0120】
現像スリーブの材質は、鉄、アルミニウム、ニッケルのような金属;ステンレスのような合金;セラミックス;プラスチックが挙げられる。
【0121】
静電写真用トナーは、鉄粉キャリアでトナーを搬送するという磁気ブラシ現像法や、ビーズキャリアでトナーを搬送するというカスケード現像法に用いられる二成分トナーであってもよい。二成分現像剤は、このトナーとキャリアとを混合し調製したものである。
【0122】
また、静電写真用トナーは、トナーを噴霧状態にするパウダークラウド現像法や、潜像電界によりトナーを飛行させるジャンピング現像法、接触現像法に用いられる一成分トナーであってもよい。一成分現像剤は、このトナーの調製の際に、例えば鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉のような強磁性材料の微粉体を適量添加分散させたものである。
【0123】
静電写真用トナーは、トナー用樹脂と、必要に応じて着色剤や、別な荷電制御剤を含んでいてもよい。
【0124】
本発明の静電写真用トナーの荷電制御方法は、荷電付与部材と、静電写真用トナーとを接触させて摩擦させることにより、該トナーを帯電させるというものである。
【0125】
この正帯電性荷電制御剤を含む荷電付与部材は、保存安定性、耐環境性、耐久性に優れている。そのため、キャリア粉末や現像スリーブやブレード等の荷電付与部材は、長期間交換する必要がない。
【0126】
荷電付与部材により電荷が付与されたトナーは、帯電安定性に優れているから、それを用いて現像された画像は、品質が優れている。
【0127】
なお、静電写真用トナーは、トナー用樹脂、着色剤、および、トナーの品質を向上させるために必要に応じて適宜使用される磁性材料や流動性改質剤やオフセット防止剤を含むものである。
【0128】
トナー用樹脂は、市販の結着樹脂、例えばスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂のような熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂を単独で用いてもよく、複数種ブレンドして用いてもよい。
【0129】
このトナー用樹脂を、減法混色によるフルカラー用トナー、またはオーバーヘッドプロジェクタ(OHP)用トナーに混合して用いてもよい。そのためには、トナー用樹脂は、透明性を有すること、トナー像に色調障害を生じない程度のほぼ無色であること、適当な熱または圧力下で流動性を有すること、微粒化が可能であることが必要である。そのようなトナー用樹脂として、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0130】
カラー用トナーの着色剤として、染料、顔料を、単独で用いてもよく、複数種配合して用いてもよい。
【0131】
カラー用トナーの着色剤として、例えばキノフタロンイエロー、ハンザイエロー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、ペリノンオレジン、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料のような有機顔料;カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズのような、無機顔料や金属粉;アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料のような、油溶性染料や分散染料;ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸のような樹脂により変性されたトリアリールメタン系染料;高級脂肪酸や樹脂などで加工された、染料や顔料が挙げられる。カラー用トナーには、これら着色剤を、単独で配合していてもよく、複数種配合していてもよい。フルカラー用の三原色トナーの調整に好適に使用できるのは、分光特性が良好な染料や顔料である。
【0132】
また、有彩色のモノカラー用トナーのための着色剤として、同色系の顔料と染料、例えばローダミン系の顔料と染料、キノフタロン系の顔料と染料、フタロシアニン系の顔料と染料を適宜配合して用いることができる。
【0133】
磁性材料として、例えば鉄、コバルト、フェライトで例示される強磁性材料製微粉体が挙げられる。流動性改質剤として例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタンが挙げられる。オフセット防止剤として例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックスが挙げられる。
【0134】
静電写真用トナーは、以下のようにして製造される。トナー用樹脂、着色剤、および必要に応じ磁性材料や流動性改質剤やオフセット防止剤を、ボールミルのような混合機により十分混合した後、その混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練する。その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕および分級することにより、粉砕法トナー粒子である平均粒径5〜20μmの一成分トナーが得られる。
【0135】
この他、各成分の溶液を噴霧乾燥してトナー粒子を得る方法や、懸濁重合法、乳化重合法なども採用できる。懸濁重合法は、トナー用樹脂の単量体、着色剤、および必要に応じ磁性材料や流動性改質剤やオフセット防止剤と重合開始剤や架橋剤や離型剤のような添加剤とを均一に溶解または分散させて、単量体組成物とした後、この単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続層中、例えば水相中に、適当な分散機を用いて分散させながら重合反応を行わせることにより、所望の粒径を有するトナーの粒子を得る。
【0136】
このような重合性単量体として、例えばスチレン、メチルスチレンのようなスチレン誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチルのような(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドのようなビニル系単量体が挙げられる。
【0137】
分散安定剤として、界面活性剤例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;有機分散剤例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース;無機分散剤例えば、リン酸カルシウムやリン酸マグネシウムやリン酸アルミニウムのようなリン酸多価金属塩微粉体、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムのような炭酸塩微粉体、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0138】
重合開始剤として例えば、2,2’−アゾイソブチロニトリルやアゾビスブチロニトリルのようなアゾ系またはジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシドのような過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0140】
以下の合成例1〜6は、本発明を適用する荷電付与組成物に使用される荷電制御剤中の有効成分であるケイ素錯体化合物の合成例を示すものである。
【0141】
(合成例1)
(1-1)ケイ素錯体中間体の合成
1−(4’−t−ブチルフェニル)−4,4−ジメチルペンタン−1,3−ジオン 160.0g(0.614mol)を酢酸エチル800mlに溶解した。これに、四塩化ケイ素34.8g(0.204mol)を室温で滴下した。2時間加熱還流後、放冷し、析出した白色結晶を濾過した。酢酸エチル600mlで洗浄後、水2000mlで水洗し、80℃で24時間乾燥すると、下記化学式で表される化合物例aのケイ素錯体中間体の107.4g(0.128mol)が得られた。
【0142】
【化46】

【0143】
化合物例aのケイ素錯体中間体についてM−8000形 LC/3DQMSシステム(株式会社 日立製作所の商品名)を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行ったデータを図1に示す。図1のとおり、実測値m/zが806.13であり、理論値841.6から塩素イオンが脱離した理論値806.2とほぼ一致している事より、所望の化合物例aであると同定された。
【0144】
(1-2)アニオン交換
化合物例aのケイ素錯体中間体28g(33.7mmol)を水−メタノール混合溶液に分散し、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩5.72g(17.2mmol)を添加して24時間室温で分散処理した。得られた反応液を濾過し、濾液の電導度が低下するまで水洗した。80℃で乾燥して、前記化合物例1で表されるケイ素錯体化合物が30.9g(16.3mmol)得られた。
【0145】
(1-3)同定
化合物例1のケイ素錯体化合物について、M−8000形 LC/3DQMSシステム(株式会社 日立製作所の商品名)を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行ったデータを図2に示す。図2のとおり、液体クロマトグラフィーのピークの一つの実測値m/zが805.60であり、理論値1898.6から1,5−ナフタレンジスルホン酸が脱離した理論値1612.3の2分の1の806.15とほぼ一致している。また、図3のとおり、別なピークの実測値m/zが143.20であり、2価のアニオンとなった1,5−ナフタレンジスルホン酸の理論値286.3の2分の1の値である143.15とほぼ一致している。また、CHNS元素分析では、C:70.54%(理論値:70.85%)、H:7.91%(理論値:7.64%)、S:3.40%(理論値:3.38%)であり、理論値とほぼ一致している事より、所望の化合物例1であると同定された。
【0146】
(1-4)塩素分析
得られたケイ素錯体化合物の残存塩素量につき、塩素硫黄測定装置 TOX−10Σ(三菱化成株式会社製;商品名)を用いてクーロメトリー方式により測定した。ケイ素錯体化合物中の残存塩素量は770ppmであった。
【0147】
(1-5)熱分析
得られたケイ素錯体化合物の熱分析に関し、180℃で2時間加熱処理後の重量減少率につき、示差熱熱重量同時測定装置 TG/DTA6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製;商品名)を用いて等温質量変化法により測定した。その重量減少率は、4.9%であった。
【0148】
(1-6)体積抵抗率測定
得られたケイ素錯体化合物の体積抵抗率について、以下の条件で測定した。
試験雰囲気:23±2℃、50±5%RH
試験機:デジタル超高抵抗/微少電流計R8340A型(株) アドバンテスト製
印加電圧、時間:500V(DC)、1分間
電極:主電極 径38mm
試験数:n=1
荷重:2000kgに試料を圧縮
その体積固有抵抗率は、4.37×1014Ω・cmであった。
【0149】
(合成例2)
(2-1)ケイ素錯体中間体の合成
ジベンゾイルメタン50.0g(0.223mol)をトルエン250mlに溶解した。これに、四塩化ケイ素12.6g(0.074mol)を室温で滴下した。50℃で5時間反応後、放冷し、析出した淡黄色結晶を濾過した。トルエン500mlで洗浄後、水500mlで水洗し、80℃で24時間乾燥すると、下記化学式で表される化合物例bのケイ素錯体中間体の44.8g(0.061mol)が得られた。
【0150】
【化47】

【0151】
化合物例bのケイ素錯体中間体についてM−8000形 LC/3DQMSシステム(株式会社 日立製作所の商品名)を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行ったデータを図4に示す。図4のとおり、実測値m/zが697.47であり、理論値733.28から塩素イオンが脱離した理論値697.78とほぼ一致している事より、所望の化合物例bであると同定された。
【0152】
(2-2)アニオン交換
化合物例bのケイ素錯体中間体20g(27.3mmol)を水とメタノール混合溶液に分散し、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩4.62g(13.9mmol)を添加して24時間室温で分散処理した。得られた反応液を濾過し、濾液の電導度が低下するまで水洗した。80℃で乾燥して、前記化合物例27が21.5g(12.8mmol)得られた。
【0153】
(2-3)同定
化合物例27のケイ素錯体化合物について、M−8000形 LC/3DQMSシステム(株式会社 日立製作所の商品名)を用いて、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を行ったデータを図5に示す。図5のとおり、実測値m/zが696.73であり、理論値1681.9から1,5−ナフタレンジスルホン酸が脱離した理論値1395.6の2分の1の697.8とほぼ一致している。また、図6のとおり、実測値m/zが143.33であり、2価のアニオンとなった1,5−ナフタレンジスルホン酸の理論値286.3の2分の1の値である143.15とほぼ一致している。また、CHNS元素分析では、C:71.15%(理論値:71.41%)、H:4.35%(理論値:4.31%)、S:3.85%(理論値:3.81%)であり、理論値とほぼ一致している事より、所望の化合物例27であると同定された。
【0154】
(2-4)塩素分析、(2-5)熱分析および(2-6)体積抵抗率測定
得られたケイ素錯体化合物は、前記と同様にして測定したところ、残存塩素量が336ppm、180℃で2時間加熱処理後の重量減少率が4.4%、体積固有抵抗率が2.8×1015Ω・cmを示した。
【0155】
(合成例3:化合物例4の合成)
4−t−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン25g(80.5mmol)をトルエン250mlに溶解した。これに四塩化ケイ素4.56g(26.8mmol)を注入した。50℃で4時間反応後、放冷し、析出した黄色結晶を濾過し、トルエン200mlで洗浄後、さらに水400mlで水洗を行った後、80℃で24時間乾燥する事によりケイ素錯体中間体を得た。得られたケイ素錯体中間体10g(10.1mmol)を水とメタノール混合溶液に分散し、4−アミノ−2,7−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩 1.76g(5.07mmol)を添加して24時間室温で分散処理することにより、化合物例4が11.0g(4.97mmol)得られた。
【0156】
(合成例4:化合物例5の合成)
ジベンゾイルメタン20g(89.2mmol)をトルエン80mlに溶解した。これに、四塩化ケイ素5.05g(29.7mmol)をトルエン20mlに溶解させた溶液を滴下した。50℃で4時間反応後、放冷し、析出した淡黄色結晶を濾過し、トルエン200mlで洗浄後、テトラヒドロフラン100mlで洗浄し、さらに水100mlで水洗を行った後、80℃で24時間乾燥する事によりケイ素錯体中間体を得た。得られたケイ素錯体中間体10g(13.6mmol)を水とメタノール混合溶液に分散し、4,5−ジヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩2.48g(6.8mmol)を添加して24時間室温で分散処理することにより、化合物例5が10.3g(6.01mmol)得られた。
【0157】
(合成例5:化合物例13の合成)
ヒノキチオール5.00g(30.5mmol)をヘキサン300mlに溶解した。これに、四塩化ケイ素1.72g(10.2mmol)をヘキサン50mlに溶解させた溶液を滴下した。1時間加熱還流後、放冷し、析出した白色結晶を濾過し、ヘキサン300mlで洗浄後、70℃で24時間減圧乾燥する事によりケイ素錯体中間体を得た。得られたケイ素錯体中間体5.00g(9.04mmol)を水とメタノール混合溶液に分散し、1,4−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩1.50g(4.52mmol)を添加して24時間室温で分散処理することにより、化合物例13が5.10g(3.86mmol)得られた。
【0158】
(合成例6:化合物例17の合成)
N−ベンゾイル−N−フェニルヒドロキシアミン4.00g(18.8mmol)をトルエン20mlに溶解した。これに、四塩化ケイ素1.06g(6.25mmol)をトルエン20mlに溶解させた溶液を室温で滴下した。2時間加熱還流後、放冷し、析出した白色結晶を濾過し、トルエン300mlで洗浄後、70℃で24時間減圧乾燥することによりケイ素錯体中間体を得た。得られたケイ素錯体中間体3.87g(5.53mmol)を水とメタノール混合溶液に分散し、4−(ベンゾイルアミノ)−5−ヒドロキシ−1,7−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム塩1.29g(2.77mmol)を添加して24時間室温で分散処理することにより、化合物例17が4.05g(2.31mmol)得られた。
【0159】
なお、これらと同様な合成方法により、荷電制御剤に用いられる種々のケイ素錯体化合物を得ることができる。
【0160】
上記で得られたケイ素錯体化合物を荷電制御剤として含む荷電付与組成物の調製、この荷電付与組成物を用いた荷電付与部材の作製、およびそれを用いた静電写真用トナーの荷電制御方法の例について、以下の実施例に示す。
【0161】
(実施例1)
キシレン1000mlにポリメチルメタアクリレート樹脂100gを溶解し、これに、化合物例1の50gを混合して、荷電付与組成物1を得た。
得られた荷電付与組成物1を用い、フェライトキャリア(F−150:パウダーテック社製)1000gに流動床型コーティング装置でコートして、荷電付与部材1(キャリア)を得た。
一方で、スチレン−アクリル共重合樹脂(CPR−600B:三井化学社製の商品名)の100重量部と、低分子量ポリプロピレン(ビスコール550−P:三洋化成社製の商品名)の3重量部と、マゼンタ色顔料(C.I. Pigment Red 57:1)の5重量部とを、高速ミキサーで均一にプレミキシングした。次いで、エクストルーダーで溶融混練し、冷却後振動ミルで粗粉砕した。得られた粗砕物を分級機付きのエアージェットミルを用いて微粉砕して、粒径10μmのマゼンタトナーを得た。
【0162】
得られたトナー5重量部に対して、前記荷電付与部材1(キャリア)95重量部を混合して現像剤を調製した。得られた現像剤を下記の評価方法で評価し、それらの結果を表3に示す。
【0163】
(1)初期帯電量と帯電安定性の評価
得られた現像剤をポリ瓶中で秤量し、回転数100rpmのボールミルにより攪拌して現像剤を帯電させ、大気条件下での初期帯電量(3分値)、および、攪拌時間(分)毎の摩擦帯電量を測定し、帯電の安定性を評価した。帯電の安定性については、安定性のあるものを○、ないものを×とする2段階で評価した。
【0164】
(2)環境安定性の評価
また、25℃、相対湿度50%の標準条件下で24時間以上調湿させた現像剤について同様に帯電量(10分値)を測定し、これに対して、低温低湿(5℃、相対湿度30%)および高温高湿(35℃、相対湿度90%)の各条件下に24時間以上調湿させた現像剤について同様にして帯電量を測定する事で、帯電量環境安定性も同時に評価した。
【0165】
帯電量環境安定性については、標準条件での帯電量の値に対して、低温低湿条件、および、高温高湿条件での帯電量値の変化率で評価し、その変化率の絶対値が0.0〜5.0%であったものを○、5.0〜10.0%であったものを△、10.0%以上のものを×とする3段階で評価した。
【0166】
なお、帯電量の測定は、ブローオフ帯電量測定機TB−200(東芝ケミカル社製の商品名)により、行った。
【0167】
(3)トナー画像の特性
この現像剤を用いて市販の複写機にてトナーの画像を形成した。得られたトナー画像について、カブリ、細線再現性、帯電安定性および持続性、オフセット現象について目視で観察した。
【0168】
カブリについては、カブリがないものを○、あるものを×として、細線再現性については、細線再現性が良好なものを○、悪いものを×として、帯電安定性および持続性については、帯電安定性および持続性が良いものを○、悪いものを×として、オフセット現象について、オフセット現象が観測されなかったものを○、観測されたものを×として、それぞれ2段階で評価した。
【0169】
(実施例2)
トルエン1000mlにスチレン−メチルメタアクリレート共重合樹脂100gを溶解し、これに、化合物例13の50gを混合して、荷電付与組成物2を得た。
得られた荷電付与組成物2を用い、フェライトキャリア(F−150:パウダーテック社製)1000gに流動床型コーティング装置でコートして、荷電付与部材2(キャリア)を得た。
【0170】
実施例1と同様にして得られたトナー5部に対して、前記荷電付与部材2(キャリア)95重量部を混合して現像剤を調製した。得られた現像剤を実施例1と同様に評価し、それらの結果を表3に示す。
【0171】
(実施例3)
トルエン500mlとアセトン500mlの混合溶媒にシリコーン樹脂100gを溶解し、これに、化合物例4の50gを混合して、荷電付与組成物3を得た。
得られた荷電付与組成物3を用い、フェライトキャリア(F−150:パウダーテック社製)1000gに流動床型コーティング装置でコートして、荷電付与部材3(キャリア)を得た。
【0172】
一方でポリエステル樹脂(HP313:日本合成化学社製の商品名)の100重量部と、低重合ポリプロピレン(ビスコール550−P:三洋化成社製の商品名)の3重量部と、カーボンブラック(MA100:三菱化学社製の商品名)の6重量部とを、実施例1と同様に処理して平均粒径10μmの黒色トナーを得た。
このトナー5部に対して、前記荷電付与部材3(キャリア)95重量部を混合して現像剤を調製した。
得られた現像剤を実施例1と同様に評価し、それらの結果を表3に示す。
【0173】
(比較例1)
実施例1の樹脂を溶解した溶媒中に化合物例1を混合していない以外は実施例1と同様に比較荷電付与部材1を調製した。
実施例1と同様にして得られたトナー5部に対して、前記比較荷電付与部材1(キャリア)95重量部を混合して現像剤を調製した。
実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。
【0174】
【表3】

【0175】
表3から明らかな通り、実施例1〜3の現像剤は、帯電安定性や持続性が優れ、さらに環境安定性が優れていた。また、それを用いて形成したトナー画像は、カブリがなく、再線再現性、帯電安定性および持続性に優れ、オフセット現象が認められなかった。一方、比較例1の現像剤は、環境安定性が悪く、夏場のような高温多湿条件下や、温湿度が変動する条件下での使用に向かないものであった。
【0176】
(実施例4)
メチルエチルケトン1000mlにフェノール樹脂100gを溶解し、これに、化合物例1の50gを混合して、荷電付与組成物4を得た。
前記の荷電付与組成物4を用いディピング塗布方法にて、現像スリーブ(ステンレス製)表面に塗布して被覆層を形成させて、荷電付与部材4(現像スリーブ)を得た。
【0177】
一方でポリエステル樹脂(ER−561:三菱レーヨン社製の商品名)の100重量部とマゼンタ色顔料(C.I. Pigment Red 57:1)の5重量部とを、実施例1と同様に処理して平均粒径10μmのマゼンタトナーを得た。このトナー100部に対して、疎水性コロイダルシリカ0.2部を外添し、トナー1を得た。
前記荷電付与部材4(現像スリーブ)を装着した市販のプリンターを用い、前記トナー1を使用し、各条件下にて画像を形成し、それらの結果を表4に示す。
【0178】
(1)帯電安定性並びに環境安定性の評価
25℃、相対湿度50%の標準条件下、低温低湿(5℃、相対湿度30%)、および、高温高湿(35℃、相対湿度90%)の各条件下にて画像を形成した。
【0179】
トナー帯電量の測定においては、現像スリーブ上に担持されたトナーを吸引して吸引法比電荷量測定装置により測定した。
5,000枚までの耐久試験前後のトナー帯電量を測定する事で帯電の安定性を評価した。帯電の安定性については、安定性のあるものを○、ないものを×とする2段階で評価した。
また、帯電量環境安定性については、標準条件での5,000枚までの耐久試験後のトナー帯電量の値に対して、低温低湿条件、および、高温高湿条件での5,000枚までの耐久試験後のトナー帯電量値の変化率で評価し、その変化率の絶対値が0.0〜5.0%であったものを○、5.0〜10.0%であったものを△、10.0%以上のものを×とする3段階で評価した。
【0180】
(2)トナー画像の特性
得られたトナー画像について、カブリ、細線再現性、帯電安定性および持続性、オフセット現象について目視で観察した。
カブリについては、カブリがないものを○、あるものを×として、細線再現性については、細線再現性が良好なものを○、悪いものを×として、帯電安定性および持続性については、帯電安定性および持続性が良いものを○、悪いものを×として、オフセット現象について、オフセット現象が観測されなかったものを○、観測されたものを×として、それぞれ2段階で評価した。
【0181】
(実施例5)
メチルエチルケトン1000mlにフェノール樹脂100gを溶解し、これに、化合物例6の50gを混合して、荷電付与組成物5を得た。
前記の荷電付与組成物5をディピング塗布方法にて現像スリーブ(ステンレス製)表面に塗布して被覆層を形成させて、荷電付与部材5(現像スリーブ)を得た。
【0182】
前記荷電付与部材5(現像スリーブ)を装着した市販のプリンターを用い、実施例4で調製したトナー1を用いて、実施例4と同様に画像を形成し、評価して、それらの結果を表4に示す。
【0183】
(実施例6)
トルエン500mlとアセトン500mlの混合溶媒にシリコーン樹脂100gを溶解し、これに、化合物例27の50gを混合して、荷電付与組成物6を得た。
前記の荷電付与組成物6をディピング塗布方法にて現像スリーブ(ステンレス製)表面に塗布して被覆層を形成させて、荷電付与部材6(現像スリーブ)を得た。
【0184】
一方でスチレン−アクリル共重合樹脂(CPR−600B:三井化学社製の商品名)の100重量部と、低分子量ポリプロピレン(ビスコール550−P:三洋化成社製の商品名)の3重量部と、磁性酸化鉄の90重量部とを、実施例1と同様に処理して平均粒径10μmの黒色トナーを得た。このトナー100部に対して、疎水性コロイダルシリカ0.2部を外添し、トナー2を得た。
前記荷電付与部材6(現像スリーブ)を装着した市販のプリンターを用い、調製したトナー2を用いて、実施例4と同様に画像を形成し、評価して、それらの結果を表4に示す。
【0185】
(実施例7)
トルエン1000mlにスチレン−アクリル樹脂100gを溶解し、これに、化合物例1の50gを混合して、荷電付与組成物7を得た。
前記の荷電付与組成物7をスプレー法にて弾性ブレード(ステンレス製)表面に塗布して被覆層を形成させて、荷電付与部材7(弾性ブレード)を得た。
【0186】
一方でポリエステル樹脂(ER−561:三菱レーヨン社製の商品名)の100重量部と低重合ポリプロピレン(ビスコール550−P:三洋化成社製の商品名)の3重量部とカーボンブラック(MA100:三菱化学社製の商品名)の6重量部とを、実施例1と同様に処理して平均粒径10μmの黒色トナーを得た。このトナー100部に対して、疎水性コロイダルシリカ0.2部を外添し、トナー3を得た。
前記荷電付与部材7(弾性ブレード)を装着した市販のプリンターを用い、調製したトナー3を用いて、実施例4と同様に画像を形成し、評価して、それらの結果を表4に示す。
【0187】
(実施例8)
トルエン1000mlにスチレン−アクリル樹脂100gを溶解し、これに、化合物例2の50gを混合して、荷電付与組成物8を得た。
前記の荷電付与組成物8をスプレー法にて弾性ブレード(ステンレス製)表面に塗布して被覆層を形成させて、荷電付与部材8(弾性ブレード)を得た。
【0188】
前記荷電付与部材8(弾性ブレード)を装着した市販のプリンターを用い、調製したトナー3を用いて、実施例4と同様に画像を形成し、評価して、それらの結果を表4に示す。
【0189】
(比較例2)
実施例4の樹脂を溶解した溶媒中に化合物例1を混合していない以外は実施例4と同様に現像スリーブを調製して、比較荷電付与部材2(現像スリーブ)を得た。
前記比較荷電付与部材2を装着した市販のプリンターを用い、調製したトナー1を用いて、実施例4と同様に画像を形成し、評価して、それらの結果を表4に示す。
【0190】
(比較例3)
実施例7の樹脂を溶解した溶媒中に化合物例1を混合していない以外は実施例7と同様に弾性ブレードを調製して、比較荷電付与部材3(弾性ブレード)を得た。
前記比較荷電付与部材3を装着した市販のプリンターを用い、調製したトナー3を用いて、実施例4と同様に画像を形成し、評価して、それらの結果を表4に示す。
【0191】
【表4】

【0192】
表4から明らかな通り、実施例の荷電付与部材(現像スリーブや弾性ブレード)を装着したプリンターで帯電したトナーは、帯電安定性や持続性が優れ、さらに環境安定性が優れていた。また、それを用いて形成したトナー画像は、カブリがなく、再線再現性、帯電安定性および持続性に優れ、オフセット現象が認められなかった。一方、比較例の比較荷電付与部材(現像スリーブや弾性ブレード)を装着したプリンターで帯電したトナーは、環境安定性が悪く、夏場のような高温多湿条件下や、温湿度が変動する条件下での使用に向かないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0193】
本発明の荷電付与組成物は、複写機やプリンターやファクシミリなどの電子写真による複写や印刷の際に使用されるキャリア粉末や現像スリーブやブレード等の電荷付与部材の原材料として、用いられる。この荷電付与組成物で形成された電荷付与部材を用いた静電写真用トナーの荷電制御方法は、静電写真用トナーに負の電荷を付与して優れた帯電特性や帯電安定性を発現して、紙やフィルム等の転写記録媒体上にトナーを定着させて明瞭でカブリのない画像を得るのに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0194】
【図1】本発明を適用する荷電付与組成物に含まれる正帯電性荷電制御剤の化合物例1のケイ素錯体化合物の中間体の液体クロマトグラフィー質量分析の結果を示す図である。
【0195】
【図2】本発明を適用する荷電付与組成物に含まれる正帯電性荷電制御剤の化合物例1のケイ素錯体化合物の液体クロマトグラフィー質量分析によるピークの一つの結果を示す図である。
【0196】
【図3】本発明を適用する荷電付与組成物に含まれる正帯電性荷電制御剤に含まれる化合物例1のケイ素錯体化合物の液体クロマトグラフィー質量分析による別なピークの結果を示す図である。
【0197】
【図4】本発明を適用する荷電付与組成物に含まれる正帯電性荷電制御剤の化合物例27のケイ素錯体化合物の中間体の液体クロマトグラフィー質量分析の結果を示す図である。
【0198】
【図5】本発明を適用する荷電付与組成物に含まれる正帯電性荷電制御剤の化合物例27のケイ素錯体化合物の液体クロマトグラフィー質量分析によるピークの一つの結果を示す図である。
【0199】
【図6】本発明を適用する荷電付与組成物に含まれる正帯電性荷電制御剤に含まれる化合物例27のケイ素錯体化合物の液体クロマトグラフィー質量分析による別なピークの結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I)
【化1】

および/または、下記化学式(II)
【化2】

(化学式(I)および(II)中、[D−(SO)]2−はスルホン酸基を少なくとも2個有する有機酸の2価アニオン、p=0または1、Bはp=0のとき結合線を示しp=1のとき炭素原子または窒素原子、Jは炭素原子または窒素原子、Aは(B)およびJと共に環状を形成する有機基、二つのRは同一または異なる有機基であって複素環を形成してもよい基)
で表されるケイ素錯体化合物を有効成分とする正帯電性荷電制御剤と、溶媒および/または分散剤とが、含まれていることを特徴とする荷電付与組成物。
【請求項2】
前記化学式(I)中、
【化3】

基は、下記式(III)
【化4】

(式(III)中、R〜RおよびR10〜R14は水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基、または隣接基同士により飽和または不飽和で縮合した炭素数3〜7の環を形成している基;RおよびR15は酸素原子、カルボニル基、イミノ基;Rは水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基を示す。)で表され、
前記化学式(II)中、
【化5】

基は、下記式(IV)
【化6】

(式(IV)中、R16〜R17およびR23〜R25は水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基;R18はメチンまたは窒素原子;R19〜R22は水素原子、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アリサイクリック基、アラルキル基、アリール基から選ばれる同一または異なる基、または隣接基同士により飽和または不飽和で縮合した炭素数3〜7の環を形成している基;R26は窒素原子、または置換基を有していてもよい炭素原子を示す。)
で表されることを特徴とする請求項1に記載の荷電付与組成物。
【請求項3】
前記化学式(I)のケイ素錯体化合物が、下記化学式(V)
【化7】

(式(V)中、Xはハロゲン原子、p,B,J,およびAは、前記と同じ。)
で表されるケイ素錯塩と、前記有機酸またはその塩とを、イオン交換反応させて得られた化合物であり、
前記化学式(II)のケイ素錯体化合物が、下記化学式(VI)
【化8】

(式(VI)中、Xはハロゲン原子、p,B,J,およびRは、前記と同じ。)
で表されるケイ素錯塩と、前記有機酸またはその塩とを、イオン交換反応させて得られた化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の荷電付与組成物。
【請求項4】
静電写真用トナーに接触して荷電を付与するキャリア粉末、現像スリーブ、およびブレードのいずれかが、請求項1〜3のいずれかに記載の荷電付与組成物で、コーティングされ、または成形されており、前記ケイ素錯体化合物を露出させていることを特徴とする荷電付与部材。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電付与部材と、静電写真用トナーとを接触させて摩擦させることにより、該トナーを帯電させることを特徴とする静電写真用トナーの荷電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−298966(P2007−298966A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88702(P2007−88702)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】