説明

荷電制御剤、荷電制御剤を含む静電荷像現像用トナー、及び荷電制御方法

【課題】実用レベルの負帯電付与性を有し、無色乃至淡色でカラートナーに使用し得、トナー等の樹脂粉体の帯電による静電荷が環境変化に対し安定で、保存安定性・耐久性に優れ、安全性が高い荷電制御剤、その荷電制御剤を用いる樹脂粉体の荷電制御方法・トナーの提供。
【解決手段】特定構造を有する、酒石酸誘導体を有効成分とする荷電制御剤、その荷電制御剤を用いる樹脂粉体の荷電制御方法、トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電潜像を現像するための静電荷像現像用トナー、そのトナー等の帯電量を制御するための荷電制御剤、及び樹脂粉体の荷電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用した複写機、プリンター等においては、無機又は有機光導電材料を含有する感光層を備えた感光体上に形成された静電潜像を現像するために、着色剤及び定着用の樹脂等からなる種々のトナーが用いられている。
【0003】
このようなトナーの帯電性は、静電潜像を現像するシステムにおいては特に重要な因子である。そこでトナーの帯電量を適切に制御又は安定化するために、トナー中に正電荷又は負電荷付与性の荷電制御剤が加えられることが多い。
【0004】
従来実用化されている荷電制御剤のうち、トナーに負電荷を付与するものとしては、モノアゾ化合物の金属錯塩染料やアルキルサリチル酸等の芳香族オキシカルボン酸の金属錯体若しくは金属塩を挙げることができる。
【0005】
これらのうち、荷電制御剤として提案されているアゾ染料構造の金属錯体の多くは、一般に安定性に乏しく、例えば、機械的摩擦や衝撃、電気的衝撃や光照射、温度や湿度条件の変化等により、分解又は変質して荷電制御性が失われることとなり易い。また、実用レベルの帯電付与性を有するものであっても、電荷の安定性に不十分な点があったり、有色であるためカラートナー用として使用できないものが多い。一方、アルキルサリチル酸等の金属錯体は、一般に淡色乃至無色であるためカラートナー用としても使用されているが、比較的弱い酸性や塩基性条件下でも分解する可能性がある。
【0006】
このような問題を解決し、複写機やプリンター等の性能の更なる向上に寄与し得る負電荷付与性の荷電制御剤の提案が、いくつかなされている。
【0007】
例えば特許文献1には、荷電制御剤として、例えば下記のような化合物が開示されている。
【0008】
【化1】

【0009】
また特許文献2には、荷電制御剤として、例えば下記のような化合物が開示されている。
【0010】
【化2】

【0011】
上記式中、Xは置換基を有していても良い脂肪族残基を表し、R及びRは置換基を有していても良い芳香族残基を示す。nは0又は1を表す。
【0012】
更に特許文献3には、荷電制御剤として、例えば下記のような化合物が開示されている。
【0013】
【化3】

【0014】
上記式中、A、R、R、及びRは、それぞれ芳香族残基であり、水酸基とアミド基は、芳香環A上の相隣る置換位置に位置している。
【0015】
また、特許文献4には、荷電制御剤として、例えば下記のような化合物が開示されている。
【0016】
【化4】

【0017】
上記式中、R及びRは同一又は独立に置換されていても良いアルキル基または置換されても良いフェニル基を示す。
【0018】
特許文献5には、荷電制御剤として次のような化合物が開示されている。
【0019】
【化5】

【0020】
上記式中、A及びAは、それぞれ端部の1個の炭素6員環上の相隣る置換位置に水酸基及びカルボキシル基を有し、且つ該炭素6員環上の別の置換位置で、AとAとをつなぐアルキレン基と結合しているナフチル基又はアントラニル基を表し、これらは任意の置換基を有していても良い。又、nは整数を示す。
【0021】
近時においては、プリンターや複写機の解像度向上等の高性能化に伴い、従来のトナーよりも帯電特性やその安定性において一層優れたトナーが求められるようになり、そのため一層優れた帯電特性を発現させる荷電制御剤が望まれている。
【0022】
しかしながら、特許文献1、2、3、4、5にそれぞれ示された荷電制御剤の特性を検討したところ、何れの場合も無色乃至淡色ではあるが十分な帯電量や環境安定性を与えないことがわかった。
【0023】
【特許文献1】特開平10−239907号公報
【特許文献2】特開平9−179352号公報
【特許文献3】特許第3118921号公報
【特許文献4】特開平7−325431号公報
【特許文献5】特開平5−11505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、
(a)実用レベルの負帯電付与性を有し、
(b)無色乃至淡色であって、カラートナーに使用することができ、
(c)用いたトナー等の樹脂粉体の帯電による静電荷が環境変化に対し安定であり、
(d)保存安定性(荷電制御特性の経時的安定性)に優れ、
(e)耐久性(用いたトナー等が多数回繰返し使用された場合の荷電制御特性の安定性)に優れ、
(f)有害な重金属を含まず安全性が高い
という特性を有する荷電制御剤を提供することにある。
【0025】
また本発明の目的は、その荷電制御剤を用いる樹脂粉体の荷電制御方法、並びに広範な温度域における定着性及び非オフセット性を実現できると共に、耐環境性(温度や湿度の変化に対する帯電特性の安定性)、保存安定性及び耐久性に優れ、安定したトナー画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、酒石酸のジエステル体及びそのモノアミド若しくはジアミド体が良好な帯電特性を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0027】
すなわち上記目的を達成する本発明の請求項1に係る発明の荷電制御剤は、下記式(I)〜(III)で表される化合物を有効成分とする荷電制御剤である。
【0028】
【化6】

式(I)中、R乃至Rは、互いに独立的にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基、多環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。
【0029】
【化7】

式(II)中、R乃至Rは、互いに独立的にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基、多環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。
【0030】
乃至Rは互いに独立的に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基(スルホエステル基)、アリール基、アシルアミノ基、複素環基、多環式炭化水素基、アミノカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。
【0031】
【化8】

式(III)中、R乃至Rは、互いに独立的にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基、多環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。
【0032】
〜R12は互いに独立的に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基(スルホエステル基)、アリール基、アシルアミノ基、複素環基、多環式炭化水素基、アミノカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。
【0033】
同じく請求項2に係る発明の荷電制御剤は、請求項1に係る発明の荷電制御剤であって、前記式(I)〜(III)の置換基R〜R,R〜Rが置換基を有するアリール基、若しくは置換基を有しないアリール基であり、且つ置換基R〜R,R〜R12が置換基を有するアリール基、若しくは置換基を有しないアリール基である。
【0034】
上記目的を達成する本発明の請求項3に係る発明の像現像用トナーは、トナー用樹脂、着色剤、及び、請求項1又は2に係る発明の荷電制御剤を備えてなる。
【0035】
同じく本発明の請求項4に係る発明の荷電制御方法は、樹脂粉体に請求項1又は2に係る発明の記載の荷電制御剤を含有させることによりその樹脂粉体の荷電制御を行うものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明の荷電制御剤は、負電荷付与性及びその安定性に優れると共に、トナー用樹脂に対する分散性が良好であり、トナーに用いられた場合に、帯電量の環境安定性に優れ、保存安定性及び耐久性に優れ、有害な重金属を含まないため安全性が高く、無色乃至淡色であるためトナー等に用いられた場合に色調障害を引き起こし難い。
【0037】
本発明の荷電制御方法によれば、樹脂粉体の負荷電制御を安定的に行い、有害な重金属を含まない無色乃至淡色の荷電制御剤を用いるため、安全性が高く、樹脂粉体の色調障害を引き起こし難い。
【0038】
本発明の静電荷像現像用トナーは、広範な温度域における定着性及び非オフセット性を実現できると共に、耐環境性、保存安定性及び耐久性に優れ、安定した複写画像の形成が可能である。
【0039】
本発明の荷電制御剤が負電荷付与性及びその安定性に優れる理由は必ずしも明らかではないが、次のように推定される。
【0040】
有効成分である上記一般式(I)〜(III)で表される酒石酸誘導体は非常に近い位置にカルボニル基が4個集まっており、これらはお互い共役はしていないものの立体的に近いことから電子雲が重なり合い相互作用しているものと思われ、その結果として荷電制御剤として適当な電子の移動を行うことができるものと思われる。そのため、エステル化されていない酒石酸やメチレン基の数が同じだけであるエチレングリコールのジエステル体やコハク酸誘導体では、カルボニル基の数が足りないので帯電特性が十分でない。
【0041】
また、エステル部もしくはアミド部の置換基に芳香環を持つものが置換している場合、芳香環同士も空間的に近い位置に存在するため、それらの間の相互作用、あるいはカルボニル基と共役することによる電子移動面積の拡大などの効果が期待できるため、より良好な帯電特性を示す。
【発明を実施するための好ましい形態】
【0042】
本発明の荷電制御剤は、上記式(I)〜(III)で表される酒石酸誘導体を有効成分とするものである。
【0043】
上記式(I)〜(III)におけるR〜R、R、Rとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基の更に具体的な例として、次のような例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、n‐ペンチル基、neo‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基、n‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基等の、炭素数1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8の、枝分かれしていてもよいアルキル基を挙げることができ、
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0045】
アルケニル基としては、ビニル基、スチニル基、1,3−ペンタンジエニル基等を挙げることができる。
【0046】
多員環化合物基としてはノルボルニル基、ノルボルネニル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
【0047】
アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0048】
複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、フラニル基、チオフェニル基等を挙げることができる。
【0049】
多環式炭化水素基としては、フルオレニル基、インダニル基等を挙げることができる。
【0050】
このアルケニル基、多環式化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないものであってもよく、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基、多環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有するものであってもよい。従って、同一の置換基を1又は2以上有するものであってもよく、2種以上の置換基をそれぞれ1又は2以上有するものであってもよい。
【0051】
このアルケニル基、多環式化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基に有し得る置換基の更に具体的な例として、次のような例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、n‐ペンチル基、neo‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基、n‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基等の、炭素数1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8の、枝分かれしていてもよいアルキル基を挙げることができる。
【0053】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0054】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0055】
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n‐ペントキシカルボニル基、neo‐ペントキシカルボニル基、n‐ヘキシルオキシカルボニル基、n‐ヘプチルオキシカルボニル基、n‐オクチルオキシカルボニル基等の、アルコキシ基の炭素数が1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8のアルコキシカルボニル基を挙げることができる。
【0056】
アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0057】
複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、フラニル基、チオフェニル基等を挙げることができる。
【0058】
多環式炭化水素基としてはフルオレニル基、インダニル基等を挙げることができる。
【0059】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、i‐プロポキシ基、n‐ブトキシ基、i‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、t‐ブトキシ基、n‐ペントキシ基、neo‐ペントキシ基、n‐ヘキシルオキシ基、n‐ヘプチルオキシ基、n‐オクチルオキシ基等の、アルキル基の炭素数が1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8の枝分かれしていてもよいアルコキシ基を挙げることができる。
【0060】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルオキシ基等を挙げることができる。
【0061】
アシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基等を挙げることができる。
【0062】
アリールカルボニル基としては、フェニルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、ナフチルカルボニル基等を挙げることができる。
【0063】
上記式(II)〜(III)におけるR及びR、R〜R12としての、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基の更に具体的な例として、次のような例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、n‐ペンチル基、neo‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基、n‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基等の、炭素数1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8の、枝分かれしていてもよいアルキル基を挙げることができる。
【0065】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0066】
アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0067】
複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、フラニル基、チオフェニル基等を挙げることができる。
多環式炭化水素基としては、フルオレニル基、インダニル基等を挙げることができる。
【0068】
このアリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないものであってもよく、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基(スルホエステル基)、アリール基、アシルアミノ基、アミノカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有するものであってもよい。従って、同一の置換基を1又は2以上有するものであってもよく、2種以上の置換基をそれぞれ1又は2以上有するものであってもよい。
【0069】
前記カルボキシル基及びスルホン酸基は、それぞれ金属塩を形成していてもよい。このような金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムのようなアルカリ土類金属等が挙げられる。また、第4級アンモニウム塩のようなアンモニウム塩でもよい。
【0070】
このアリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基の各芳香環上に有し得る置換基の更に具体的な例として、次のような例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、n‐ペンチル基、neo‐ペンチル基、n‐ヘキシル基、n‐ヘプチル基、n‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基等の、炭素数1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8の、枝分かれしていてもよいアルキル基を挙げることができる。
【0072】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、4−t−ブチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
【0073】
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n‐ペントキシカルボニル基、neo‐ペントキシカルボニル基、n‐ヘキシルオキシカルボニル基、n‐ヘプチルオキシカルボニル基、n‐オクチルオキシカルボニル基等の、アルコキシ基の炭素数が1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8のアルコキシカルボニル基を挙げることができる。
【0074】
アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等を挙げることができる。
【0075】
スルホン酸エステル基(スルホエステル基)としては、スルホン酸メチルエステル基、スルホン酸エチルエステル基、スルホン酸t−ブチルエステル基、スルホン酸n‐ペンチルエステル基、スルホン酸neo‐ペンチルエステル基、スルホン酸n‐ヘキシルエステル基、スルホン酸n‐ヘプチルエステル基、スルホン酸n‐オクチルエステル基、スルホン酸2‐エチルヘキシルエステル基等の、炭素数が1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8のアルキル基とのスルホン酸エステル基、並びに、スルホン酸フェニルエステル基、スルホン酸ベンジルエステル基、スルホン酸ナフチルエステル基等のアリール基とのスルホン酸エステル基を挙げることができる。
【0076】
アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0077】
アシルアミノ基としては、アセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、t−ブチルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基等を挙げることができる。
【0078】
複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、フラニル基、チオフェニル基等を挙げることができる。
【0079】
多環式炭化水素基としてはフルオレニル基、インダニル基等を挙げることができる。
【0080】
アミノカルボニル基としては、N−メチルアミノカルボニル基、N−t−ブチルアミノカルボニル基、N−フェニルアミノカルボニル基等を挙げることができる。
【0081】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n‐プロポキシ基、i‐プロポキシ基、n‐ブトキシ基、i‐ブトキシ基、sec‐ブトキシ基、t‐ブトキシ基、n‐ペントキシ基、neo‐ペントキシ基、n‐ヘキシルオキシ基、n‐ヘプチルオキシ基、n‐オクチルオキシ基等の、アルキル基の炭素数が1乃至18、好ましくは炭素数1乃至8の枝分かれしていてもよいアルコキシ基を挙げることができる。
【0082】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ナフチルオキシ基等を挙げることができる。
【0083】
アシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基等を挙げることができる。
【0084】
アリールカルボニル基としては、フェニルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、ナフチルカルボニル基等を挙げることができる。
【0085】
上記一般式(I)〜(III)で表される酒石酸の誘導体は、酒石酸から公知の方法を用いて得ることができる。例えば次のような方法によって得ることができるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
【化9】

【0087】
【化10】

【0088】
ジカルボン酸体は酒石酸を対応する酸塩化物と無溶媒もしくはトルエンやキシレンなどの溶媒を用いて加熱することによりエステル化された酸無水物とし、水を含ませた溶媒中でこれを加熱することにより加水分解し、ジカルボン酸体を得ることができる。
【0089】
【化11】

【0090】
モノアミド体は上記の方法で酸無水物としたものに種々の溶媒中でアミンを加えることにより得ることができる。
【0091】
【化12】

【0092】
ジアミド体は上記の方法でジカルボン酸体としたものをDCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)やカルボニルジイミダゾールなどの縮合剤を、THF(テトラヒドロフラン)やジクロロメタン中で反応させ、これにアミンを加えることによっても前記ジアミド体を得ることができる。
【0093】
また、ジカルボン酸体とアミンを、トルエン、クロロベンゼン、ピリジン等の芳香族溶媒と三塩化リンや亜リン酸などのリン化合物と混合して加熱することによっても前記ジアミド体を得ることができる。
【0094】
一般式(I)で表される酒石酸誘導体の好ましい具体例として、式(I)中のRおよびRが下記式に示す置換基の化合物例1〜36を挙げることができる。但し、本発明の範囲がこれらの例に限られるものではない。
【0095】
【化13】

【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
一般式(II)で表される酒石酸誘導体の好ましい具体例として、下記化合物例37乃至87を挙げることができる。但し、好ましい例がこれらに限られるものではない。
[化合物例37乃至87]
【0099】
【化14】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】

【0102】
【表5】

【0103】
一般式(III)で表される酒石酸誘導体の好ましい具体例として、下記化合物例88乃至142を挙げることができる。但し、好ましい例がこれらに限られるものではない。
[化合物例88乃至142]
【0104】
【化15】

【0105】
【表6】

【0106】
【表7】

【0107】
【表8】

【0108】
上記本発明の荷電制御剤は、その平均粒径が10μm以下であることが好ましい。より好ましくは3μm以下、更に好ましくは1μm以下である。粒径の下限は特にないが、例えば0.01μm以上とすることができる。目的の粒径を有する荷電制御剤は、ボールミルやビーズミル等の各種粉砕機による乾式もしくは湿式粉砕または再結晶や再沈などによって得ることができる。
【0109】
また、本発明の荷電制御剤は、純度(荷電制御剤中の式(I)〜(III)で表される酒石酸誘導体の重量百分率)が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0110】
次に、本発明の静電荷像現像用トナーは、トナー用樹脂、着色剤、及び上記本発明の荷電制御剤を備えてなるものである。トナー中における本発明の荷電制御剤の有効成分を構成する一般式(I)〜(III)で表される化合物は、単独種の化合物であってもよく数種の化合物の混合物であってもよい。また本発明の静電荷像現像用トナーは、他の荷電制御剤(例えばアゾ金属錯体やサリチル酸金属錯体等)を含有するものであってもよい。
【0111】
本発明の静電荷像現像用トナーは、上記式(I)〜(III)で表される酒石酸誘導体を有効成分とする化合物(荷電制御剤)が、トナー用樹脂100重量部に対して0.1乃至10重量部配合されたものであることが望ましい。荷電制御剤のより好ましい配合量は、トナー用樹脂100重量部に対して0.5乃至5重量部である。
【0112】
静電荷像現像用トナーに用い得るトナー用樹脂の例としては、次のような公知のトナー用樹脂(結着樹脂)を挙げることができる。すなわち、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂である。これらの樹脂は、単独で或いは数種をブレンドして用いることもできる。なお、本発明の荷電制御剤は、静電粉体塗料に含有させて樹脂粉体の電荷の制御(増強)のために用いることもできる。その場合の塗料用樹脂としては、例えば、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、又はポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂、並びに、フェノール系、又はエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができ、それぞれ単独で或いは数種をブレンドして用いることができる。
【0113】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いる樹脂の酸価としては0.1mgKOH/g乃至100mgKOH/gであることが好ましい。より好ましくは、0.1mgKOH/g乃至70mgKOH/gであり、更に好ましくは、0.1mgKOH/g乃至50mgKOH/gである。
【0114】
本発明の荷電制御剤は、静電荷像現像用トナーを製造する際に、樹脂に対する荷電制御剤の分散性を向上させる目的で、樹脂と荷電制御剤を予め混合溶融し、冷却固化後粉砕することによって得られるマスターバッチとして用いてもよい。
【0115】
本発明のトナーにおいては、着色剤として種々の染料や顔料を、それぞれ単独で又は2種以上配合して使用することができる。用い得る着色剤の具体例は次のとおりである。すなわち、キノフタロンイエロー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、ペリノンオレンジ、ペリノンレッド、ペリレンマルーン、ローダミン6Gレーキ、キナクリドンレッド、アンスアンスロンレッド、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン、ジケトピロロピロール系顔料等の有機顔料;カーボンブラック、チタンホワイト、チタンイエロー、群青、コバルトブルー、べんがら、アルミニウム粉、ブロンズ等の無機顔料及び金属粉;アゾ染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、インドフェノール系染料、インドアニリン系染料等の各種の油溶性染料や分散染料の他、ロジン、ロジン変性フェノール、ロジン変性マレイン酸等の樹脂により変性されたトリアリールメタン系染料及びキサンテン系染料等を例示することができる。
【0116】
本発明の静電荷像現像用トナーは、例えば次のように製造される。
【0117】
上記のようなトナー用樹脂、着色剤、及び本発明の荷電制御剤、並びに必要に応じて磁性材料(例えば、鉄、コバルト、フェライト等の強磁性材料製の微粉体)、流動性改質剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン)、オフセット防止剤(例えば、ワックス、低分子量のオレフィンワックス)等をボールミルその他の混合機により十分混合した後、その混合物を加熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等の熱混練機を用いて溶融混練し、その混練物を冷却固化させた後、その固化物を粉砕及び分級することにより、平均粒径5乃至20μmのトナーを得ることができる。
【0118】
また、結着樹脂溶液中に材料を分散させた後、噴霧乾燥することにより得る方法、或いは、結着樹脂を構成すべき単量体に所定材料を混合して乳化懸濁液とした後に重合させてトナー(所謂重合トナー)を得る重合法によるトナー製造法等を応用することができる。
【0119】
例えば懸濁重合法においては、重合単量体、着色剤及び荷電制御剤、並びに必要に応じて重合開始剤、架橋剤、離型剤、及びその他の添加剤を均一に溶解又は分散させて単量体組成物とした後、この単量体組成物を、分散安定剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な分散機を用いて分散させると共に重合反応を行なわせることにより、所望の粒径を有するトナー粒子を得ることが可能である。
【0120】
重合トナー用の樹脂を形成するための重合性単量体の例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のビニル系単量体が挙げられる。
【0121】
前記分散安定剤としては、各種界面活性剤や有機又は無機分散剤等を使用することができる。界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。有機分散剤の例としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等を挙げることができる。無機分散剤の例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛のようなリン酸多価金属塩微粉体;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩微粉体;メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような無機水酸化物;シリカ、ベントナイト、アルミナ、磁性体、フェライトのような無機酸化物を挙げることができる。
【0122】
前記重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレートのような過酸化物系重合開始剤等を例示することができる。
【0123】
前記架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物を挙げることができる。
【0124】
前記離型剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等天然ワックス及びその誘導体等を挙げることができ、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。更に、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸或いはその化合物、酸アミドワックス、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックス等を挙げることができる。
【0125】
乳化重合においては、例えば重合性単量体中に必要に応じて離型剤、荷電制御剤、重合開始剤等を添加し、これらを溶解もしくは分散させた後ホモミキサーやホモジナイザー等を使用し、水系媒体中に樹脂微粒子としての所望の大きさの油滴に分散させ、その後撹拌翼を備えた反応装置中で加熱することにより重合反応させ、これに着色剤及び臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え、塩析させると同時に形成された重合体のガラス転移点温度以上で加熱融着させ、目的の大きさの粒径にすることでトナーを得ることができる。
【0126】
重合性単量体としては、前記のものに加えエチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン系ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;Nビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体を挙げることができる。
【0127】
重合開始剤としては、前記のものに加え、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などを挙げることができる。
【0128】
前記凝集剤としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属の塩、例えばカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類の金属の塩などの二価の金属の塩、マンガン、銅などの二価の金属の塩、鉄、アルミニウムなどの三価の金属の塩などが挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができる。
【0129】
更にポリエステル系重合体を構成する場合は以下のものが挙げられる。
【0130】
重縮合単量体として使用できる多価カルボン酸は、1分子中にカルボキシル基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジカルボン酸は1分子中にカルボキシル基を2個含有する化合物であり、例えば、シュウ酸、グルタル酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロルフタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレン二酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、o−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を挙げることができる。また、ジカルボン酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸等を挙げるこができる。また、これらカルボン酸のカルボキシル基を、酸無水物、混合酸無水物、酸塩化物、又は、エステル等に誘導したものを用いてもよい。
【0131】
また、重縮合単量体として使用できるポリオールは、1分子中に水酸基を2個以上含有する化合物である。このうち、ジオールは1分子中に水酸基を2個含有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコ−ル、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール等を挙げることができる。また、ジオール以外のポリオールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミン等を挙げることができる。
【0132】
さらに重縮合単量体として使用できるヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸等を挙げることができる。
【0133】
本発明のトナーを2成分現像剤として用いる場合には、本発明のトナーをキャリヤ粉と混合して用いることができ、磁気ブラシ現像法等により現像することができる。
【0134】
キャリヤとしては、特に限定されず、公知のものが全て使用可能である。例示するならば、粒径50乃至200μm程度の鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビーズ等、及びこれらの表面をアクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ化エチレン系樹脂等でコーティングしたものなどを挙げることができる。
【0135】
本発明のトナーを1成分現像剤として用いる場合には、上記のようにしてトナーを製造する際に、例えば鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉等の強磁性材料製の微粉体を適量添加分散させて用いることができる。この場合の現像法としては、例えば接触現像法、ジャンピング現像法等を挙げることができる。
【0136】
このような本発明のトナーを用いた静電荷像の現像においては、トナー中の本発明の荷電制御剤により、樹脂粉体であるトナーの荷電制御が行なわれる。
【実施例】
【0137】
次に実施例を挙げて本発明のトナーをより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述においては、「重量部」を「部」と略す。
【0138】
合成例1(化合物例1の合成)
塩化p−t−ブチル安息香酸16.7g(84.9mmol)にL(+)−酒石酸3.12g(20.7mmol)を加え、130℃で3時間撹拌した。温度を140℃に上げて2時間撹拌後放冷し、これにn−ヘキサンを加えて0.5時間還流した。放冷後、析出した結晶を吸引濾取し、減圧下室温で乾燥することにより、5.98g(収率36.0%)の酸無水物体を得た。
【0139】
得られた酸無水物体2.50g(3.16mmol)をアセトン10mLに溶解し、これに水0.2mLを加えて3時間還流した。放冷後、溶媒を減圧留去し、得られた結晶をトルエン−n−ヘキサンから再結晶することにより、0.244g(収率16.4%)の目的物(化合物例1)を得た。
【0140】
【化16】

【0141】
合成例2(化合物例9の合成)
1−ナフトイルクロライド25.0g(0.131mol)にL(+)−酒石酸4.80g(32.0mmol)を加え、130℃で3時間撹拌した。温度を140℃に上げて2時間撹拌後110℃まで放冷し、これにトルエン50mLを加えて撹拌した。不溶物を濾別後静置し、析出した結晶を吸引濾取後減圧下室温で乾燥することにより、11.6g(収率82.6%)の酸無水物体を得た。
【0142】
得られた酸無水物体3.00g(6.81mmol)をアセトン20mLに溶解し、これに水0.4mLを加えて3時間還流した。放冷後溶媒を減圧留去し、残留物を酢酸エチル−n−ヘキサンから再結晶することにより1.75g(収率55.9%)の目的物(化合物例9)を得た。
【0143】
【化17】

【0144】
合成例3(化合物例10の合成)
キシレン5mLに2−ナフトイルクロライド10.0g(52.5mmol)、L(+)−酒石酸1.92g(12.8mmol)を加え、130℃で3時間撹拌した。温度を140℃に上げて1時間撹拌後放冷し、これにトルエン20mLを加えて結晶を加熱溶解後、不溶物を濾別した。この結晶を乾燥することにより3.69g(収率65.4%)の酸無水物体を得た。
【0145】
得られた酸無水物体2.00g(4.58mmol)をアセトン120mLに分散し、これに水1mLを加えて21時間還流した。放冷後溶媒を減圧留去し、残留物を酢酸エチル−n−ヘキサンから再結晶することにより1.22g(収率58.9%)の目的物化合物例10)を得た。
【0146】
【化18】

【0147】
合成例4(化合物例12の合成)
塩化o−トルイル酸25.0g(0.162mol)にL(+)−酒石酸5.93g(39.5mmol)を加え、130℃で3時間撹拌した。温度を140℃に上げて1時間撹拌後100℃まで放冷し、これにトルエン20mLを加えて70℃まで放冷後、n−ヘキサン20mLを加え室温まで放冷した。析出した結晶を吸引濾取後減圧下室温で乾燥することにより9.98g(収率64.9%)の酸無水物体を得た。
【0148】
得られた酸無水物体3.00g(8.14mmol)をアセトン10mLに溶解し、これに水0.5mLを加えて4時間還流した。放冷後溶媒を減圧留去し、残留物を酢酸エチル−n−ヘキサンから再結晶することにより1.84g(収率58.6%)の目的物(化合物例12)を得た。
【0149】
【化19】

【0150】
合成例5(化合物例13の合成)
塩化m−トルイル酸25.0g(0.162mol)にL(+)−酒石酸5.93g(39.5mmol)を加え、130℃で3時間撹拌した。温度を140℃に上げて1時間撹拌後放冷し、これにトルエン20mL、n−ヘキサン30mLを加え、不溶物を吸引濾取した。濾液にn−ヘキサン25mLを加えて静置し、析出した結晶を吸引濾取後減圧下室温で乾燥することにより7.32g(収率50.2%)の酸無水物体を得た。
【0151】
得られた酸無水物体3.00g(8.14mmol)をアセトン10mLに溶解し、これに水0.5mLを加えて4時間還流した。放冷後溶媒を減圧留去し、残留物にトルエンを加えて加熱溶解後少量のn−ヘキサンを加え、分離した油状物をデカンテーションで分離した。上澄み液にn−ヘキサンを加え、静置後析出した結晶化を吸引濾取後、減圧下室温で乾燥することにより0.274g(収率8.7%)の目的物(化合物例13)を得た。
【0152】
【化20】

【0153】
合成例6(化合物例14の合成)
塩化2,4,6−トリイソプロピル安息香酸10.0g(37.4mmol)にL(+)−酒石酸1.37g(9.14mmol)を加え、130℃で3時間撹拌した。温度を140℃に上げて1時間撹拌した。放冷後、n−ヘキサン15mLを加えて再結晶し、濾液の溶媒を減圧留去した。残留物にアセトン20mLと0.7mLの水を加え、3時間還流した。溶媒を減圧留去後残留物をトルエン−n−ヘキサンから再結晶することにより1.89g(収率34.0%)の目的物(化合物例14)を得た。
【0154】
【化21】

【0155】
合成例7(化合物例16の合成)
塩化o−クロロ安息香酸34.6g(0.198mol)にL(+)−酒石酸7.27g(48.2mmol)を加え、130℃で3時間撹拌した。温度を140℃に上げて1時間撹拌後放冷し、これにトルエン40mLを加えて加熱溶解後放冷し、析出した結晶を減圧下室温で乾燥することにより19.2g(収率97.9%)の酸無水物体を得た。
【0156】
得られた酸無水物体3.00g(7.40mmol)をアセトン20mLに溶解し、これに水0.4mLを加えて4時間還流した。放冷後溶媒を減圧留去し、残留物を酢酸エチルに溶解後不溶物を濾別し、濾液の溶媒を減圧留去した。残留物をクロロホルム−n−ヘキサンから再結晶し1.08g(収率34.3%)の目的物(化合物例16)を得た。
【0157】
【化22】

【0158】
合成例8(化合物例18の合成)
塩化4−メトキシ安息香酸25.0g(0.147mol)にL(+)−酒石酸7.00g(46.7mmol)を加え、130℃で2時間撹拌した。温度を140℃に上げて1時間撹拌後放冷し、これにトルエン35mLを加えて加熱溶解後放冷し、析出した結晶を減圧下室温で乾燥することにより19.8g(収率61.7%)の酸無水物体を得た。
【0159】
得られた酸無水物体3.00g(4.37mmol)をアセトン20mLに溶解し、これに水0.3mLを加えて3時間還流した。放冷後溶媒を減圧留去し、残留物を酢酸エチルに加熱溶解後不溶物を濾別し、濾液の溶媒を減圧留去した。残留物を酢酸エチル−n−ヘキサンから再結晶し1.17g(収率63.2%)の目的物(化合物例18)を得た。
【0160】
【化23】

【0161】
化合物例2乃至8、11、15、17、19乃至36も同様に合成を行った。
【0162】
合成例9(化合物例51の合成)
合成例4で得られた酸無水物体3.00g(8.14mmol)をTHF20mLに溶解し、これにアニリン0.758g(8.14mmol)を加え、室温で3時間還流した。溶媒を減圧留去し、残留物を酢酸エチル−n−ヘキサンから再結晶から再結晶することにより1.56g(収率41.5%)の目的物(化合物例51)を得た。
【0163】
【化24】

【0164】
化合物例37乃至50、52乃至87も同様に合成を行った。
【0165】
合成例10(化合物例89の合成)
ジp−t−ブチル安息香酸−D−酒石酸(化合物例1)0.712g(1.51mmol)をジクロロメタン12mLに加え、氷水で冷却しながらDCC0.623g(3.06mmol)を少量ずつ加え、そのまま15分撹拌した。氷水で冷却しながらアニリン0.282g(3.01mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。少量の水を加え、不溶物を濾別後溶媒を減圧留去した。残留物をトルエンから再結晶し、0.390g(収率41.6%)の目的物(化合物例89)を得た。
【0166】
【化25】

【0167】
合成例11(化合物例90の合成)
ジp−トルオイル−D−酒石酸(化合物例2)25.0g(64.7mmol)をジクロロメタン500mLに加え、氷水で冷却しながらDCC26.6g(0.129mol)を少量ずつ加え、そのまま15分撹拌した。氷水で冷却しながらアニリン12.1g(0.129mol)を加え、室温で3時間撹拌した。少量の水を加え、結晶を吸引濾取し80℃で一晩乾燥後酢酸エチルから精製することにより21.6g(収率60.9%)の目的物(化合物例90)を得た。
【0168】
【化26】

【0169】
合成例12(化合物例91の合成)
ジp−トルオイル−D−酒石酸(化合物例2)2.01g(5.18mmol)をジクロロメタン40mLに溶解し、氷水で冷却しながらDCC2.15g(10.4mmol)を少量ずつ加え、そのまま15分撹拌した。氷水で冷却しながらp−t−ブチルアニリン1.55g(10.1mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。少量の水を加え、不溶物を濾別し溶媒を減圧留去した。残留物を酢酸エチルから再結晶することにより0.982g(収率29.2%)の目的物(化合物例91)を得た。
【0170】
【化27】

【0171】
合成例13(化合物例98の合成)
ジ安息香酸−D−酒石酸(化合物例8)1.86g(5.18mmol)をジクロロメタン40mLに加え、氷水で冷却しながらDCC2.15g(10.4mmol)を少量ずつ加え、そのまま15分撹拌した。氷水で冷却しながらアニリン0.969g(10.4mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。少量の水を加え不溶物を濾別後、これをDMFから再結晶した。析出した結晶を濾別後、濾液を水に加えて結晶を析出させた。これを吸引濾取、乾燥後酢酸エチルから再結晶することにより、0.446g(収率16.9%)の目的物(化合物例98)を得た。
【0172】
【化28】

【0173】
合成例14(化合物例102の合成)
ジ−o−トルオイル−D−酒石酸(化合物例12)1.50g(3.88mmol)をジクロロメタン30mLに加え、氷水で冷却しながらDCC1.60g(7.77mmol)を少量ずつ加え、そのまま15分撹拌した。氷水で冷却しながらアニリン0.727g(7.81mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。少量の水を加え、不溶物を濾別後得られた結晶をDMFから再結晶した。析出した結晶を濾別後、濾液を水に加えて結晶を析出させた。これを吸引濾取、乾燥後酢酸エチルから再結晶することにより、1.38g(収率66.7%)の目的物(化合物例102)を得た。
【0174】
【化29】

【0175】
化合物例88、92乃至97、99乃至101、103乃至142も同様に合成を行った。
【0176】
実施例1
スチレン−アクリル共重合樹脂(三洋化成社製 商品名:CPR−600B) ・・・100部
低重合ポリプロピレン(三洋化成社製 商品名:ビスコール550P) ・・・3部
カーボンブラック(三菱化学社製 商品名:MA−100) ・・・6部
荷電制御剤(化合物例1)・・・1部
【0177】
上記配合物を高速ミルで均一に予備混合してプレミックスを調製した。このプレミックスを加熱ロールで溶融混練し、この混練物を冷却した後、超遠心粉砕機で粗粉砕した。得られた粗砕物を分級機付のエアージェットミルを用いて微粉砕することにより、平均粒径10μmの黒色トナーを得た。
【0178】
得られたトナー5部に対してフェライトキャリヤ(パウダーテック社製 商品名:F−150)95部を混合して現像剤を調製した。
【0179】
本現像剤をポリ瓶中に計量し、回転数100rpmのボールミルにより攪拌して現像剤を帯電させ、標準条件(20℃、相対湿度60%)で経時帯電量を測定した。攪拌時間(分)毎の摩擦帯電量(マイナス)の測定結果を表9に示す。また、低温低湿(5℃、相対湿度30%)及び高温高湿(35℃、相対湿度90%)の各条件下で同様にして初期ブローオフ帯電量(マイナス)を測定(攪拌時間:10分間)した結果、すなわち帯電量環境安定性の測定結果を、標準条件(20℃、相対湿度60%)の測定結果と共に表9に示す。
【0180】
なお、帯電量の測定は、東芝ケミカル社製のブローオフ帯電量測定機(商品名:TB−200)により行なった。
【0181】
本現像剤を用いて市販の複写機(有機感光体OPCドラム使用の機種)にてトナーの画像を形成した。得られたトナー画像について、カブリ及びオフセット現象を目視で観察し、それぞれ3段階又は2段階で評価した。トナー画像の評価結果を表9に示す。
【0182】
なお、カブリについては、カブリが全くないものを◎、カブリが数カ所認められるがほとんど判別できないものを○、カブリが明らかに認められるものを×とした。オフセット現象については、オフセット現象が観察されなかったものを○、観察されたものを×とした。
【0183】
実施例2
スチレン−アクリル共重合樹脂(三洋化成社製 商品名:CPR−600B)・・・100部
低重合ポリプロピレン(三洋化成社製 商品名:ビスコール550P)・・・3部
C.I.ピグメントレッド122・・・5部
荷電制御剤(化合物例38)・・・1部
【0184】
上記配合物を実施例1と同様に処理してマゼンタトナー及び現像剤を調製し、実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。
【0185】
また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0186】
実施例3
スチレン−アクリル共重合樹脂(三洋化成社製 商品名:CPR−600B)・・・100部
低重合ポリプロピレン(三洋化成社製 商品名:ビスコール550P)・・・3部
C.I.ピグメントイエロー180・・・5部
荷電制御剤(化合物例97)・・・1部
【0187】
上記配合物を実施例1と同様に処理してイエロートナー及び現像剤を調製し、実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0188】
実施例4
スチレン・・・80部
n−ブチルメタクリレート・・・20部
C.I.ピグメントイエロー180・・・5部
2,2’−アゾイソブチロニトリル・・・1.8部
荷電制御剤(化合物例47)・・・1部
【0189】
上記配合物を高速ミキサーで均一にプレミキシングして重合性単量体組成物を得た。
【0190】
一方、濃度0.1mol/Lの第三リン酸ナトリウム水溶液100mLを蒸留水600mLにより希釈し、この液を攪拌しながら、この液に対し、濃度1.0mol/Lの塩化カルシウム水溶液18.7mLを徐々に加えた。更に、この混合液を攪拌しながら、この混合液に対し、濃度20重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.15gを加えて分散液を調製した。
【0191】
この分散液を前記重合性単量体組成物に加えてTK式ホモミキサー(特殊機化工社製)により高速攪拌しながら温度65℃に昇温させ、昇温後30分間攪拌した後、更に80℃まで昇温させ、通常の攪拌機により回転数100rpmで攪拌し、温度80℃のまま6時間重合させた。
【0192】
重合終了後、反応混合物を冷却して固形物を濾別し、その濾取物を濃度5重量%の塩酸水溶液中に浸漬させることにより、分散剤として利用したリン酸カルシウムを分解した。得られた固形物を、洗浄液が中性となるまで水洗し、脱水、乾燥させることにより、平均粒径13μmのイエロートナーを得た。
【0193】
得られた重合トナー5部に対して、フェライトキャリヤ(パウダーテック社製、商品名:F−150)95部を混合して現像剤を調製し、実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0194】
実施例5
スチレン・・・80部
n−ブチルメタクリレート・・・20部
カーボンブラック[三菱化学社製 商品名:MA−100]・・・5部
2,2’−アゾイソブチロニトリル・・・1.8部
荷電制御剤(化合物例16)・・・1部
【0195】
上記配合物を実施例4と同様に処理して黒色重合トナー及び現像剤を調製し、実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0196】
実施例6
スチレン−アクリル共重合樹脂[三洋化成社製 商品名:CPR−600B]・・・100部
低重合ポリプロピレン[三洋化成社製 商品名:ビスコール550P]・・・3部
C.I.ピグメントレッド122・・・5部
【0197】
上記配合物を高速ミルで均一に予備混合してプレミックスを調製した。このプレミックスを加熱ロールで溶融混練し、この混練物を冷却した後、超遠心粉砕機で粗粉砕した。得られた粗砕物を分級機付のエアージェットミルを用いて微粉砕することにより、平均粒径10μmのマゼンタトナーの母粒子を得た。
【0198】
得られた母粒子108部に対して、化合物例99(荷電制御剤)からなる子粒子1部を外添することによりトナーを得た。
【0199】
このトナー5部に対して、フェライトキャリヤ(F−150:パウダーテック社製の商品名)95部を混合して現像剤を調整し、実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0200】
実施例7
ポリエステル樹脂(三菱レーヨン社製 商品名:ダイアクロンER−561)・・・100部
カーボンブラック(三菱化学社製 商品名:MA−100)・・・5部
荷電制御剤化合物例(106)・・・1部
【0201】
上記配合物を実施例1と同様に処理して黒色トナー及び現像剤を調製し、実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0202】
実施例8
荷電制御剤を化合物例2に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0203】
実施例9
荷電制御剤を化合物例9に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0204】
実施例10
荷電制御剤を化合物例10に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0205】
実施例11
荷電制御剤を化合物例12に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0206】
実施例12
荷電制御剤を化合物例14に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0207】
実施例13
荷電制御剤を化合物例39に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0208】
実施例14
荷電制御剤を化合物例51に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0209】
実施例15
荷電制御剤を化合物例78に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0210】
実施例16
荷電制御剤を化合物例89に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0211】
実施例17
荷電制御剤を化合物例90に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0212】
実施例18
荷電制御剤を化合物例91に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0213】
実施例19
荷電制御剤を化合物例98に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0214】
実施例20
荷電制御剤を化合物例102に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0215】
比較例1
荷電制御剤を
【0216】
【化30】

に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。なお、荷電制御剤は特開平10−239907号公報に記載の実施例1の化合物である。上記実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、この現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0217】
比較例2
荷電制御剤を特開平10−239907号公報に記載の実施例34の化合物(下記)に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0218】
【化31】

【0219】
比較例3
荷電制御剤を特開平9−173952号公報に記載の化合物No.12の化合物(下記)に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0220】
【化32】

【0221】
比較例4
荷電制御剤を特開平7−3254341号公報に記載の実施例40に示された化合物(下記)に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0222】
【化33】

【0223】
比較例5
荷電制御剤を特開平5−11505号公報に記載の化合物例11に示された化合物(下記)に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0224】
【化34】

【0225】
比較例6
荷電制御剤を酒石酸とアニリンのジアミド体(下記)に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0226】
【化35】

【0227】
比較例7
荷電制御剤をエチレングリコールジ(4−イソプロピル安息香酸)エステル(下記)に変えた以外は実施例1と同様にして黒色トナー及び現像剤を得た。実施例1と同様に測定した経時帯電量(マイナス)及び帯電量環境安定性の測定結果をそれぞれ表9に示す。また、本現像剤を用いて実施例1と同様に形成したトナー画像の評価結果を表9に示す。
【0228】
【化36】

【0229】
【表9】

【0230】
本発明の酒石酸誘導体は比較例の化合物に対しいずれも帯電量が高く、環境安定性にも優れている。さらにカブリ及びオフセットのどちらの特性も良好である。
例えば、実施例1における3分撹拌後の帯電量は-50.4μC/gであり、比較例2の-20.7μC/gと比較して明らかに帯電量が高く、環境安定性も実施例では低温低湿と高温高湿の差が1μC/gほどしか差がないのに対し比較例では7μC/gの差があり、環境安定性にも優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明は、耐熱性、帯電特性、環境安定性に優れた荷電制御剤を提供する。また、本発明の荷電制御剤は有害な重金属を含んでいないため環境に与える負荷も小さい。更に、本発明の荷電制御剤は無色または淡色であるためカラートナーに使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)〜(III)で表される化合物を有効成分とする荷電制御剤。
【化1】

[式(I)中、R乃至Rは、互いに独立的にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基、多環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。]
【化2】

[式(II)中、R乃至Rは、互いに独立的にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基、多環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。
乃至Rは互いに独立的に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アリール基、アシルアミノ基、複素環基、多環式炭化水素基、アミノカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。]
【化3】

[式(III)中、R乃至Rは、互いに独立的にアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アルケニル基、多員環化合物基、アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基、複素環基、多環式炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。
〜R12は互いに独立的に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基、又は多環式炭化水素基を示す。前記アリール基、複素環基、及び多環式炭化水素基は、それぞれ、置換基を有しないか、又は、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、アリール基、アシルアミノ基、複素環基、多環式炭化水素基、アミノカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、及びアリールカルボニル基から選ばれる1種又は2種以上の置換基を1又は2以上有する。]
【請求項2】
前記式(I)〜(III)の置換基R〜R,R〜Rが置換基を有するアリール基、若しくは置換基を有しないアリール基であり、且つ置換基R〜R,R〜R12が置換基を有するアリール基、若しくは置換基を有しないアリール基である請求項1に記載の荷電制御剤。
【請求項3】
トナー用樹脂、着色剤、及び、請求項1又は2に記載の荷電制御剤を備えてなる静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
樹脂粉体に請求項1又は2に記載の荷電制御剤を含有させることによりその樹脂粉体の荷電制御を行う荷電制御方法。

【公開番号】特開2009−282238(P2009−282238A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133359(P2008−133359)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】