説明

荷電粒子ビーム装置

【課題】 光軸上に沿って放出された荷電粒子も検出出来る様にする。
【解決手段】 電子銃からの一次電子ビーム1を加速する加速管電極30、一次電子ビームを試料3上に集束させる磁界レンズ2、一次電子ビームを減速する減速電極6、一次電子ビームで試料3上を走査させる走査コイル4、試料3から発生する二次電子を検出する検出系、及び、検出された二次電子に基づいて試料3の二次電子像を表示する表示装置13を備え、電子銃と加速管電極30との間に、負電圧が印加されるドーナツ形状の反射電極34を,加速管電極30の管内に試料3からの二次電子を反射電極34の手前の管内光軸上に集束させるアインツェルレンズ32をそれぞれ配置し、検出系を、電子銃からの一次電子ビームを通過させる開口を有し、試料3からの二次電子を検出する第1検出器と、電子銃からの一次電子ビームを通過させる開口を有し、反射電極34によって試料方向に追い返された二電子を検出する第2検出器とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料からの荷電粒子を検出する検出器を備えた荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路における回路パターンの検査等に走査型電子顕微鏡が用いられている。
【0003】
この様な走査型電子顕微鏡の中には、例えば、一次電子ビームを加速場でエネルギーを高く維持することにより色収差の影響を低減した状態で合焦点制御し、減速場で試料に入射する一次電子ビームのエネルギーを小さなものにして、低加速電圧で高分解能の試料観察を行うものがある。
【0004】
図1はこの様な走査型電子顕微鏡の一概略例を示す。
【0005】
図中1は電子銃(図示せず)から放出された電子ビーム(一次電子ビーム)、2は該一次電子ビームを試料3上に集束させるための磁界を形成する磁界レンズ、4は前記一次電子ビーム1で前記試料3上をそれぞれX方向,Y方向に走査するための偏向場を形成する走査コイル、5は前記一次電子ビーム1を前記試料方向に加速させる電界を形成する円筒型の加速管電極で、前記走査コイル4と前記磁界レンズ2に沿って設けられている。
【0006】
6は該加速された前記一次電子ビーム1を試料直前で減速させる減速場を形成する円錐形状の減速電極、7は前記試料3を載置する試料ステージである。
【0007】
8は各種指令及び演算等を行う制御装置、9は該制御装置の指令に基づいて走査信号を作成し、該走査信号を前記走査コイル4に送る走査制御装置、10は前記制御装置8の指令に基づいて前記磁界レンズ2に励磁電流を送る磁界レンズ制御装置である。
【0008】
11a,11bは前記一次電子ビーム1による走査により前記試料3から放出された二次電子12a,12bをそれぞれ検出する二次電子検出器で、光軸Oに沿って設けられている。尚、該各二次電子検出器は増幅器(図示せず)、AD変換器(図示せず)を介して前記制御装置8に繋がっている。
【0009】
13は前記制御装置8に送られて来た二次電子信号に基づいて前記試料3上の観察領域に関する二次電子像等を表示する表示装置である。
【0010】
14は前記制御装置8の指令に基づいて前記加速管電極5に正の電圧を印加する可変電源、15は前記制御装置8の指令に基づいて前記減速電極6に正の電圧を印加する可変電源である。尚、Oは光軸(電子光学の中心軸)である。
【0011】
この様な構成の走査型電子顕微鏡において、例えば+1KVの加速電圧でエネルギー付勢された電子銃(図示せず)からの一次電子ビーム1は、例えば+5KVが印加された加速管電極5の加速場で+6KVでエネルギー付勢されることになり、例えば、+5KVが印加された減速電極6を同一エネルギー付勢状態で通過する。そして、この様な一次電子ビームは該減速電極とアース電位にある試料との間に形成された減速場の減速レンズLにより減速され、+1KVの加速電圧でエネルギー付勢された状態で前記試料3に入射することになる。この際、前記一次電子ビーム1は前記磁界レンズ2により前記試料3上に集束し、前記走査コイル4により該試料上の所定領域を走査する。
【0012】
この様な走査により前記試料3から放出された二次電子は、前記試料3と減速電極6との間に形成される加速場の加速レンズL(前記一次電子ビーム1に対して減速場として作用する前記減速レンズLは試料からの二次電子から見ると加速レンズとして作用する)により加速されて、該減速電極の開口部を介して前記加速管電極5内に入る。
【0013】
そして、前記磁界レンズ2の磁場により一旦集束されてから、発散して行き、発散角の大きい二次電子12aは前記二次電子検出器11aに、発散角の小さい二次電子12bは前記二次電子検出器11bにそれぞれ検出される。
【0014】
そして、前記各二次電子検出器11a,11bからの出力信号は、それぞれ、増幅器(図示せず)、AD変換器(図示せず)を介して制御装置8に送られる。そして、該制御装置の指令により、前記表示装置12の表示画面に、前記各二次電子信号に基づく試料の二次電子像がそれぞれ表示される。尚、前記両二次電子信号を加算し、該加算信号に基づく像を表示する様にしても良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−221089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
さて、前記試料3から放出される二次電子の量は方向依存性を持つ。
図2は試料3の表面に対して一次電子ビーム1を垂直に入射させた場合の各放出角度θ(一次電子ビーム上を0度とし、時計方向に角度を増した時の試料表面上を+90度とし、逆に反時計方向に角度を増した時の試料表面上を−90度とする)に対する二次電子の放出量を示したもので、放出角度θの絶対値が小さい程二次電子放出量は大きく、放出角度の絶対値が大きくなるに従って二次電子放出量は小さくなる。
【0017】
この様な二次電子放出量の方向依存性を考慮して、前記図1に示す走査型電子顕微鏡では、光軸Oに沿って上下に二次電子検出器11a,11bを配置し、前記試料3から放出された二次電子の内、放出角度の比較的大きいもの(発散角度の比較的大きいもの)12aを下段の二次電子検出器11aで、放出角度の比較的小さいもの(発散角度の比較的小さいもの)12bを上段の二次電子検出器11bでそれぞれ検出している。
【0018】
しかし乍ら、光軸Oの極近傍に沿って放出される二次電子(光軸Oの極近傍に沿って発散される二次電子)、即ち、放出角度の絶対値が極めて小さい(発散角度の極めて小さい)二次電子については、前記何れの二次電子検出器11a,11bでも検出することが出来ない。
【0019】
所で、この様な放出角度の絶対値が極めて小さい二次電子は、図2に示す通り、極めてその量が多い。
【0020】
その為、前記表示装置13の二次電子像表示に寄与する二次電子信号量は十分ではなく、画質が劣化に繋がってしまう。
【0021】
本発明は、この様な問題点を解決する為になされたもので、新規な荷電粒子ビーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビーム発生源、該荷電粒子ビーム源からの荷電粒子ビームを加速するための管状の加速レンズ系、該荷電粒子ビーム源から荷電粒子ビームを試料上に集束する集束レンズ系、該加速及び集束された荷電粒子ビームを減速する減速レンズ系、該荷電粒子ビームで前記試料上を走査させるための走査レンズ系、該走査により試料から発生する二次荷電粒子を検出する検出系、及び、該検出された二次荷電粒子に基づいて前記試料の二次荷電粒子像を表示する表示手段を備えた荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム源と加速レンズ系との間に、前記試料からの二次荷電粒子を該試料方向に追い返すための電圧が印加されるドーナツ形状の反射電極を,前記加速レンズ系の管内に前記試料からの二次荷電粒子を前記反射電極の手前の該管内光軸上に集束させる第2の集束レンズ系をそれぞれ配置し、前記検出系を、前記荷電粒子ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させる開口を有し、前記試料からの二次荷電粒子を検出する第1検出器と、前記荷電粒子ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させる開口を有し、前記反射電極によって前記試料方向に追い返された二次荷電粒子を検出する第2検出器とから成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、放出量が多い光軸Oの極近傍に沿って放出される二次電子(光軸Oの極近傍に沿って発散される二次電子)、即ち、放出角度の絶対値が極めて小さい(発散角度の極めて小さい)二次電子についても効率的に検出することが出来る。従って、高画質の試料像を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の走査型電子顕微鏡の一構成例を示す図である。
【図2】二次電子放出量の方向依存性を示した分布の一例を示す図である。
【図3】本発明の荷電粒子ビーム装置の一例である走査型電子顕微鏡の一構成例を示す図である。
【図4】本発明の荷電粒子ビーム装置の一例である走査型電子顕微鏡の他の構成例を示す図である。
【図5】本発明の荷電粒子ビーム装置の一例である走査型電子顕微鏡の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図3は本発明の荷電粒子ビーム装置の一例である走査型電子顕微鏡の一概略例を示している。図中、前記図1にて使用した記号と同一記号の付されたものは同一構成要素を示す。
【0027】
図中30は円筒形状の加速管電極で、電子銃(図示せず)に対向する上端には、ドーナツ形状の電極31が取り付けられ、該加速管電極内の側壁部中央付近には、共にドーナツ形状の三枚の電極から成るアインツェルレンズ32の両外側の電極が取り付けられている。該アインツェルレンズの中央電極32cには、制御装置8からの指令に基づいて作動する可変電源33から制御電圧が印加されている。
【0028】
34はドーナッ形状の反射電極で、前記制御装置8からの指令に基づいて作動する可変電源35から負の電圧が印加されている。
【0029】
図中40は二次電子検出ユニットで、ライトガイド36a,36b、両面(上面と下面)が反射面を成すドーナツ形状の反射板37、ドーナツ形状のシンチレーター38a,38b、貫通管39、及び、光電子増倍管40a,40bから成る。以下に、その構成を詳細に説明する。
【0030】
前記ライトガイド36a(以後、第1ライドガイドと称す)と36b(以後、第2ライドガイドと称す)は、共に先端が斜め45度にカットされ、該両カット面が前記光反射板37を挟んで突き合わされ、それぞれの他端部が、前記加速電極管30壁を貫通する様に該加速電極管壁に取り付けられている。尚、前記光反射板37を挟んで突き合わされたライトガイド36a,36bの先端部の中央には孔が形成されている。
【0031】
前記第1ライトガイド36aの先端部の下側の面には電子検出面を試料側に向けたシンチレータ38a(以後、第1シンチレーターと称す)が、前記第2ライトガイド36bの先端部の上側の面に電子検出面を電子銃(図示せず)側に向けたシンチレータ38b(以後、第2シンチレーターと称す)が取り付けられている。尚、該各シンチレーターの中央には孔が形成されている。
【0032】
又、前記第1シンチレータ38aの中央部の孔,前記第1ライトガイド36aと第2ライトガイド36bの突き合わせ面の中央部の孔,及び、前記第2シンチレータ38bの中央部の孔に沿う様に前記貫通管39が該孔内に嵌入されている。
【0033】
又、前記第1,第2ライトガイド36a,36bの他端にはそれぞれ前記光電子増倍管40a,40bが設けられている。尚、該各光電子増倍管は増幅器(図示せず)、AD変換(図示せず)を介して前記制御装置8に繋がっている。
【0034】
この様に構成された走査型電子顕微鏡において、例えば、+1KVの加速電圧でエネルギー付勢された電子銃(図示せず)からの一次電子ビーム1は、例えば+5KVが印加された加速管電極30の加速場で+6KVでエネルギー付勢されることになり、例えば、+5KVが印加された減速電極6を同一エネルギー付勢状態で通過する。そして、この様な一次電子ビームは該減速電極とアース電位にある試料との間に形成された減速場の減速レンズLにより減速され、+1KVの加速電圧でエネルギー付勢された状態で前記試料3に入射することになる。この際、前記一次電子ビーム1は前記磁界レンズ2により前記試料3上に集束し、前記走査コイル4により該試料上の所定領域を走査する。
【0035】
この様な走査により前記試料3から放出された、例えば、数eV〜数10eVの二次電子は、前記試料3と減速電極6との間に形成される加速場の加速レンズLにより加速されて、該減速電極の開口部を介して前記加速管電極5内に入る。この時、前記二次電子は前記減速電極6と加速管電極30の加速場で+5KVでエネルギー付勢され、前記磁界レンズ2の磁場により一旦集束されてから、発散して行く。
【0036】
さて、該発散された二次電子の内、比較的発散角の大きい(放出角の比較的大きい)二次電子60aは前記第1シンチレータ38aに当たり、該シンチレーターは該二次電子量に対応する量の光を発生する。該光は前記反射板37で反射し、前記第1ライトガイド36aを通って前記第1光電子増倍管40aに検出される。該光電子増倍管は検出された光を電気信号に変換し、増幅器(図示せず)、AD変換器(図示せず)を介して前記制御装置8に送る。該制御装置は前記表示装置13に指令を送り、前記表示装置13の表示画面には、前記二次電子信号に基づく試料の二次電子像が表示される。
【0037】
一方、前記発散された二次電子の内、比較的発散角の小さい(放出角の小さい)二次電子や光軸Oを含む該光軸の極近傍に沿って発散する二次電子60bは前記貫通管39内を通過し、前記アインツェルレンズ32に差し掛かる。尚、前記比較的発散角の小さい二次電子の中で、相対的に発散角の大きなものの中には、前記貫通管39内に入らないものがある。その様なものも前記貫通管39内に入れるために、前記減速電極6に印加される電圧を変化させて、二次電子の軌道を変える様にしても良い。
【0038】
さて、前記アインツェルレンズ32の中央電極32cには、前記制御装置8の指令に従って前記可変電源33から正又は負の電圧が印加されている。その為、前記アインツェルレンズ32に差し掛かった二次電子は該アインツェルレンズのレンズ作用によって、前記加速管電極30内の光軸O上に集束する。
【0039】
この様に一旦集束した二次電子は、その後、発散して上昇し、前記加速管電極先端に取り付けられた電極31の孔を通過する。
【0040】
この時、前記反射電極34には、前記制御装置8の指令に基づいて前記可変電源35から、試料放出時の二次電子のエネルギー値(数eV〜数10eV)の最大エネルギー値を考慮したマイナス数10Vが印加されている。
【0041】
すると、前記電極31の孔を通過した二次電子は、該電極と反射電極34との間に形成されている減速レンズWの作用を受けて減速し、前記試料放出時の二次電子のエネルギー値(数eV〜数10eV)近くまで減速され、前記反射電極34に接近する。
【0042】
この様に反射電極34に接近した二次電子は、今度は、該反射電極により前記試料3方向に追い返されると同時に、該反射電極と前記電極31との間に形成されている加速レンズW(前記二次電子に対して減速場として作用する前記減速レンズWは前記反射電極34で追い返される二次電子から見ると加速レンズとして作用する)により加速されて、前記電極31の孔を通過して前記加速管電極30内に入り、該加速管電極の加速場により+5KVでエネルギー付勢される。
【0043】
そして、該二次電子は前記第1シンチレータ38bに当たり、該シンチレーターは該二次電子量に対応する量の光を発生する。該光は前記反射板37で反射し、前記第2ライトガイド36bを通って前記第2光電子増倍管40bに検出される。該光電子増倍管は検出された光を電気信号に変換し、増幅器(図示せず)、AD変換器(図示せず)を介して前記制御装置8に送る。該制御装置は前記表示装置13に指令を送り、前記表示装置13の表示画面には、前記二次電子信号に基づく試料の二次電子像が表示される。
【0044】
この様に本実施形態においては、光軸Oの極近傍に沿って放出される二次電子(光軸Oの極近傍に沿って発散される二次電子)についても、二次電子検出器により検出することが出来きるので、高画質の二次電子像を得ることが出来る。
【0045】
尚、前記光電子増倍管40aからの二次電子信号(比較的発散角の大きい(放出角の大きい)二次電子に基づく信号)に基づく二次電子像と前記光電子増倍管40bからの二次電子信号(比較的発散角の小さい(放出角の小さい)二次電子や光軸Oを含む該光軸の極近傍に沿って発散する二次電子)に基づく二次電子像を別々表示する様にしたが、両二次電子信号を加算し、該加算信号に基づく二次電子像を表示させる様にしても良い。
【0046】
又、前記反射電極34には試料放出時の二次電子のエネルギー値(数eV〜数10eV)の最大エネルギー値を考慮したマイナス数10Vを印加し、該反射電極に向かってくる種々のエネルギーを有する二次電子を全て該反射電極により追い返す様にしたが、該反射電極に印加される負の電圧値を、得たいエネルギー値域の二次電子を考慮して可変する様にしても良い。例えば、AeVからBeVの範囲のエネルギー値を有する二次電子が得たければ、前記反射電極34にマイナスA′Vを印加してAeV以下のエネルギー値を有する二次電子を得、次に、前記反射電極34にマイナスB′Vを印加してBeV以下のエネルギー値を有する二次電子を得た後、後者の二次電子と前者の二次電子の差分を求めればよい。
【0047】
又、図3に示す例では、第1ライトガイド36aと第2ライトガイド36bそれぞれの斜めカット状の先端面を、両面反射面を成す光反射板37を介して突き合わし、前記第1シンチレータ38aの中央部の孔,前記第1ライトガイド36aと第2ライトガイド36bの突き合わせ面の中央部の孔,及び、前記第2シンチレータ38bの中央部の孔に沿う様に貫通管39を該孔内に嵌入する様に成したが、図4(図中、前記図3にて使用した記号と同一記号の付されたものは同一構成要素を示す)に示す様に、前記第1ライトガイド36aと第2ライトガイド36bの各先端面を突き合わさずに、前記アインツェルレンズ32を挟んで、下方に第1ライトガイド36a′を、上方に第2ライトガイド36b′を配置する様にしても良い。尚、この場合、前記試料3に対向する側が反射面を成す光反射板37a,電子銃(図示せず)に対向する側が反射面を成す反射板37bが、それぞれ、前記第1,第2ライトガイドの斜めカット状の先端面に設けられ、見かけ上、分割された形の貫通管39a,39bが、図に示す様に、該第1,第2ライトガイドの先端部に設けられる。
【0048】
この様な構成の装置では、比較的発散角の大きい(放出角の大きい)二次電子60aに基づく信号は、前記第1シンチレータ38a,反射板37a,及び前記第1ライトガイド36a´を通じて前記第1光電子増倍管40aにて得られ、光軸Oを含む該光軸の極近傍に沿って発散する二次電子を含む比較的発散角の小さい(放出角の小さい)二次電子60bに基づく信号は、前記貫通管39a,39b,反射電極34,第2シンチレータ38b,反射板37b,及び前記第2ライトガイド36b´を通じて前記第2光電子増倍管40bにて得られる。
【0049】
又、シンチレータ38a,38b、ライトガイド36a,36b、光反射板37、光電子増倍管40a,40bを使用せず、その代わりに、図5に示す様に(図中、前記図3にて使用した記号と同一記号の付されたものは同一構成要素を示す)、マイクロチャンネルプレートの如き環状の電子検出増幅器200a(第1電子検出増幅器と称す),200b(第2電子検出増幅器と称す)を用い、中央の空間部に貫通管201を嵌入させて、前記アインツェルレンズ32下の光軸O上に上下に配置しても良い。尚、この場合、前記電子検出増幅器200a,200bは増幅器(図示せず)、電流電圧変換器(図示せず)、AD変換器(図示せず)を介して前記制御装置8に繋がれている。
【0050】
この様な構成の装置では、比較的発散角の大きい(放出角の大きい)二次電子60aに基づく信号は、前記第1電子検出増幅器200aで得られ、光軸Oを含む該光軸の極近傍に沿って発散する二次電子を含む比較的発散角の小さい(放出角の小さい)二次電子60bに基づく信号は、前記貫通管201及び反射電極34を通じて前記第2電子検出増幅器200bにて得られる。
【0051】
尚、前記例におけるアインツェルレンズ32の代わりに、回転対称レンズである磁界コイルを設けても良い。
【0052】
又、前記例では前記ステージ7を大地に接地して前記試料3をアース電位にするものを示したが、該ステージに電圧を印加して、前記加速管電極30と試料との間に減速レンズ(加速レンズ)を形成する様にしても良い。
【0053】
又、前記例では二次電子を検出して試料の二次電子像を表示するものを示したが、反射電子を検出して試料の反射電子像を表示する様にしても良い。
【0054】
又、前記例では、本発明の荷電粒子ビーム装置の一例として走査型電子顕微鏡を示したが、本発明は、他の荷電粒子ビーム装置、例えば、集束イオンビーム等にも応用可能である。
【0055】
尚、集束イオンビーム装置に応用した場合には、試料からの二次イオンを検出して試料の二次イオン像を表示する様に成しても良い。この場合には、前記反射電極34には試料からの二次イオン(通常、正の二次イオン)を試料方向に追い返すために、正の電圧が印加される。又、当然のことながら、検出系には二次電子検出器或いは反射電子検出器に代わって二次イオン検出器が用いられる。
【符号の説明】
【0056】
1 一次電子ビーム
2 磁界レンズ
3 試料
4 走査コイル
5、30 加速管電極
6 減速電極
7 ステージ
8 制御装置
9 走査制御装置
10 磁界レンズ制御装置
11a,11b 二次電子検出器
12a,12b 二次電子
13 表示装置
14、15 可変電源
31 電極
32 アインツェルレンズ
33 可変電源
34 反射電極
35 二次電子検出ユニット
36a,36b,36a′,36b′ ライトガイド
37,37a,37b 反射板
38a,38b シンチレータ
39,39a,39b 貫通管
40a,40b 光電子増倍管
60a,60b 二次電子
200a,200b 電子検出増幅器
201 貫通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム発生源、該荷電粒子ビーム源からの荷電粒子ビームを加速するための管状の加速レンズ系、該荷電粒子ビーム源から荷電粒子ビームを試料上に集束する集束レンズ系、該加速及び集束された荷電粒子ビームを減速する減速レンズ系、該荷電粒子ビームで前記試料上を走査させるための走査レンズ系、該走査により試料から発生する二次荷電粒子を検出する検出系、及び、該検出された二次荷電粒子に基づいて前記試料の二次荷電粒子像を表示する表示手段を備えた荷電粒子ビーム装置において、前記荷電粒子ビーム源と加速レンズ系との間に、前記試料からの二次荷電粒子を該試料方向に追い返すための電圧が印加されるドーナツ形状の反射電極を,前記加速レンズ系の管内に前記試料からの二次荷電粒子を前記反射電極の手前の該管内光軸上に集束させる第2の集束レンズ系をそれぞれ配置し、前記検出系を、前記荷電粒子ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させる開口を有し、前記試料からの二次荷電粒子を検出する第1検出器と、前記荷電粒子ビーム源からの荷電粒子ビームを通過させる開口を有し、前記反射電極によって前記試料方向に追い返された二次荷電粒子を検出する第2検出器とから成した荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記第1検出器を、先端が斜めにカットされ、先端部下面にドーナッ状のシンチレーターが取り付けられた第1ライトガイドと該ライトガイドからの光信号を電気信号に変換する光電子増倍管から成し、前記第2検出器を、先端が斜めにカットされ、先端部上面にドーナッ状のシンチレーターが取り付けられた第2ライトガイドと該ライトガイドからの光信号を電気信号に変換する光電子増倍管から成し、前記各ライトガイドの先端面をドーナツ形状の光反射板を介して突き合わせた請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記第1検出器は、先端が斜めにカットされ、先端部下面にドーナッ状のシンチレーターが取り付けられ、前記カット面にドーナツ形状の光反射板が取り付けられた第1ライトガイドと該ライトガイドからの光信号を電気信号に変換する光電子増倍管から成し、前記第2検出器は、先端が斜めにカットされ、先端部上面にドーナッ状のシンチレーターが取り付けられ、前記カット面にドーナツ形状の光反射板が取り付けられた第2ライトガイドと該ライトガイドからの光信号を電気信号に変換する光電子増倍管から成し、前記第2集束レンズ系を挟んで、前者は前記試料側の前記加速系の管内に、後者は前記反射電極側の前記加速系の管内にそれぞれ配置した請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記第1検出器と第2検出器を共に電子増幅器から成し、前者の電子増幅器を前記試料側の前記加速系の管内に、後者の電子増幅器を前記反射電極側の前記加速系の管内にそれぞれ配置したことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置
【請求項5】
前記第2集束レンズ系はアインツェルレンズから成る請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記電子増幅器はマイクロチャンネルプレートである請求項4記載の荷電粒子ビーム装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−182596(P2010−182596A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26833(P2009−26833)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】