説明

落下防止装置付き杭打機

【課題】吊りワイヤが切れた場合にでも作業装置が落下しないようにした落下防止装置付き杭打機を提供すること。
【解決手段】本体前方に立設されたリーダ5に対して装着された作業装置20を吊りワイヤ8によって吊設し、ウインチ4による吊りワイヤ8の巻上げ及び巻下げによって作業装置20を昇降させる杭打機であって、作業装置20と一体になってリーダ5に対して摺動可能に装着され、作業装置20が任意の高さで昇降できなくなるように、リーダ5との間に昇降制限機構10,12,16が設けられた落下防止装置19と、吊りワイヤ8が切れたことを検出する切断検出手段9と、切断検出手段9からの信号を受けて、落下防止装置19を動作させることにより昇降制限機構によってリーダ5に対して所定の高さで作業装置20の下降を停止させるコントローラとを有する落下防止装置付き杭打機1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置をリーダに摺動可能に装着し、ウインチからの吊りワイヤによってその作業装置を昇降させるようにした杭打機に関し、特に吊りワイヤの切断によっても作業装置が落下しないようにした落下防止装置付き杭打機に関する。
【背景技術】
【0002】
支持杭を建てる基礎工事などでは、例えばケーシングを地盤に回転圧入させたり、スクリュウロッドで地盤を掘削作業する場合、杭打機のリーダにオーガなどの作業装置が昇降可能に装着される。そうしたオーガに取り付けられたケーシングやスクリュウロッドなどは、オーガによって回転が与えられて地盤の掘削を行い、更に回転とともにオーガがリーダに沿って下降することによって地盤に押し付けられた回転圧入が行われる。
【0003】
図9は、従来の杭打機を概念的に示した側面図である。杭打機100は、本体101に2機のウインチ102,103が設けられ、一方のウインチ102から送り出された吊りワイヤ111がトップシーブ104を介してオーガ150の吊りシーブ151に掛けまわされている。もう一方のウインチ103から送り出された圧入ワイヤ112は、圧入シーブ105を介してオーガ150の絞込みシーブ152に掛けまわされている。杭打機100では、リーダ106に装着された作業装置であるオーガ150は、ウインチ102の巻下げと同時にウインチ103を巻上げることにより、ウインチ103による下方への引張り力によって圧入力が発生し、スクリュウロッド130を強制的に地盤へ圧入することができる。
【特許文献1】特開2001−182061号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした従来の杭打機1は、リーダ106の前方にガイドパイプ113がほぼ全長にわたって形成され、オーガ150のガイドギブ155が摺動可能に把持し、吊りワイヤ111によって吊設されオーガ150がリーダ106に対して摺動可能に装着されている。従って、オーガ150は吊りワイヤ111のみによって支えられているため、オーガ150を吊り上げた状態で吊りワイヤ111が万が一にでも切れてしまうと、オーガ150は支えを失って落下してしまう危険性があった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、吊りワイヤが切れた場合にでも作業装置が落下しないようにした落下防止装置付き杭打機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の落下防止装置付き杭打機は、本体前方に立設されたリーダに対して摺動可能に装着された作業装置を吊りワイヤによって吊設し、ウインチによる吊りワイヤの巻上げ及び巻下げによって作業装置を昇降させる杭打機であって、前記作業装置と一体になって前記リーダに対して摺動可能に装着され、前記作業装置が任意の高さで昇降できなくなるように、前記リーダとの間に昇降制限機構が設けられた落下防止装置と、前記吊りワイヤが切れたことを検出する切断検出手段と、前記切断検出手段からの信号を受けて、前記落下防止装置を動作させることにより前記昇降制限機構によって前記リーダに対して所定の高さで前記作業装置の下降を停止させるコントローラとを有するものであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の落下防止装置付き杭打機は、前記昇降制限機構が、前記リーダにラックが形成され、前記落下防止装置が、そのラックに対して噛み合うピニオンギヤの回転軸にロック用ディスクが設けられ、そのロック用ディスクがスプリングの付勢力と油圧とによって当接・離間する回転止プレートを有するものであることが好ましい。
また、本発明の落下防止装置付き杭打機は、前記昇降制限機構が、前記リーダにディスクプレートが形成され、前記落下防止装置が、そのディスクプレートを油圧シリンダの力で把持するチャックを有するものであることが好ましい。
【0008】
また、本発明の落下防止装置付き杭打機は、前記切断検出手段が、前記吊りワイヤに連結されたロードセル、または前記ウインチの油圧モータに対して作動油を供給する油圧回路の巻上げラインに接続された圧力センサであることが好ましい。
また、本発明の落下防止装置付き杭打機は、前記落下防止装置と油圧ポンプとの間に配管されたソレノイド弁と、そのソレノイド弁と電源との間に接続されたリレーとを備え、前記コントローラは、前記切断検出手段からの切断検出信号を受けて前記リレーの開閉を制御するようにしたものであることが好ましい。
また、本発明の落下防止装置付き杭打機は、前記ウインチを巻上げ方向に回転させる状態を検出する巻上げ検出手段を有し、前記コントローラは、その巻上げ検出手段からの検出信号を受け、更に前記切断検出手段からの切断検出信号を受けた場合に前記リレーの開閉を制御するようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明によれば、万が一吊りワイヤ8が切断してしまった場合でも、切断検出手段からの信号を受けたコントローラが落下防止装置を動作させ、その落下防止装置とリーダとの間に設けられた昇降制限機構によって作業装置の落下を止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明に係る落下防止装置付き杭打機の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、第1実施形態の落下防止装置付き杭打機を概念的に示した側面図である。また、図2は、その落下防止装置付き杭打機の正面部分を示した図である。
本実施形態の落下防止装置付き杭打機(以下、単に「杭打機」とする)1は、クローラを備えた走行部2上に旋回可能な本体3が設けられたベースマシンによって構成されている。本体3は、メインフレーム上に運転台や油圧ポンプなどを備える動力部などが配置され、そうした本体3の前部にはリーダ5が支持されている。そして、この杭打機1は、リーダ5に対して作業装置であるオーガ20が装着されたものであって、本実施形態では作業に合わせてオーガ20の回転軸にスクリュウロッド80が連結されている。
【0011】
リーダ5は、機体の左右側面側にガイドパイプ6がほぼ全長にわたって設けられ、オーガ20には、そのガイドパイプ6を左右から把持して摺動するガイドギブ11が設けられている。また杭打機1は、リーダ5の前面にラック10が設けられ、オーガ20は、このラック10に噛み合うピニオンギヤ12を有する位置決め装置19が一体に設けられている。この位置決め装置19もガイドパイプ6を左右から把持するガイドギブ13が設けられており、オーガ20と位置決め装置19とは、共にガイドギブ11,13によってガイドパイプ6を摺動し、リーダ5に沿って昇降可能に装着されている。なお、この位置決め装置19が、オーガ20の落下を防止するように機能するものであり、特許請求の範囲に記載する落下防止装置に相当する。
【0012】
杭打機1は、その本体3に設けられたウインチ4から吊りワイヤ8が送り出され、リーダ5の先端にあるトップシーブ7を介して位置決め装置19の吊りシーブ14に掛けまわされている。そして、その吊りワイヤ8は、その先端がトップシーブ7に取り付けられたロードセル9に連結されている。このロードセル9は、リーダ5にかかる引抜き荷重を検出し、その値が運転席内の荷重計に表示されるようになっており、リーダ5に過荷重がかからないような運転を行わせることができるようになっている。
また、本実施形態の杭打機1では、オーガ20が吊りワイヤ8によって吊り下げられ、ウインチ4の巻上げによってオーガ20及び位置決め装置19が引き上げられるように構成されたものである。そして、ラック10及びピニオンギヤ12は、所定の高さでオーガ20の昇降を止めるための昇降制限機構を構成するためのものである。
【0013】
こうした位置決め装置19を設けたのは、本実施形態の杭打機1がこの位置決め装置19を支えにして圧入力をスクリュウロッド80に伝えるようにしたためである。具体的には、リーダ5に沿って上下に配置されたオーガ20と位置決め装置19が左右一対の圧入シリンダ15によって連結され、その上下方向の間隔が変位するように構成されている。つまり、リーダ5の所定高さに位置決めされた位置決め装置19に対して圧入シリンダ15が伸縮することで、オーガ20を介してスクリュウロッド80に圧入力或いは引抜き力を与えるようになっている。こうした圧入シリンダ15は、復動の油圧シリンダであり、スクリュウロッド80を挟んだ位置に平行に取り付けられている。
【0014】
また、位置決め装置19は、一対のピニオンギヤ12を有し、リーダ5に固定された両歯のラック10に噛み合っている。そして、そのピニオンギヤ12,12は、それぞれにロックユニット16に軸支されている。ロックユニット16は、図3に示すように、ピニオンギヤ12の回転軸21にロック用ディスク22が固定され、そのロック用ディスク22に対して回転止プレート23が設けられている。回転止プレート23は、スプリング24の付勢力によってロック用ディスク22に押し当てて回転を止め、加圧室に供給される作動油の油圧によってスプリング24の付勢に抗してロック用ディスク22から離してロックを解除するようになっている。なお、図3は、ロックユニット16の駆動回路を示した図である。
【0015】
杭打機1は油圧ポンプ31を有し、それがロックユニット16の加圧室25にロック用ソレノイド弁32を介して接続されている。また、油圧ポンプ31は、リリーフ弁33を介してタンク34に接続されている。ロック用ソレノイド弁32は、図示するAポートブロックとBポートブロックとが構成され、ソレノイドへの通電によってAポートブロックからBポートブロックへ切り換えられ、油圧ポンプ31と加圧室25が連通するようになっている。また、そのロック用ソレノイド弁32には、継手35を介して制御線36が接続され、その制御線36には後述するコントローラ60(図3参照)からの制御信号によって開くB接点のリレー37が設けられている。
【0016】
次に、図4は、杭打機1のウインチ4を回転させる油圧回路を示した図である。ウインチ4は、運転室内の操作レバー42によって操作できるようになっている。リモコンバルブ41は、その操作レバー42の傾きによって一対の切換弁43,44の切り換え操作を行うようにしたものである。切換弁43,44は、パイロット圧を供給する不図示のパイロット圧用油圧ポンプとタンク45とに接続され、コントロールバルブ46の切り換えを行うようにしたものである。切換弁43,44は、コントロールバルブ46のパイロット室に巻上げ側パイロットライン47又は巻下げ側パイロットライン48を介して接続されている。
【0017】
コントロールバルブ46は、油圧ポンプ49からの作動油を巻上げライン51及び巻出しライン52を介してウインチ4の油圧モータ53に切り換えて供給するようにしたものである。コントロールバルブ46とモータ53の間にはカウンタバランスバルブ55が設けられている。また、コントロールバルブ46には、油圧ポンプ48とタンク45とを接続するセンターバイパスライン56が設けられ、リリーフ弁57の設けられたタンクライン58が接続されている。そして、本実施形態では、巻上げ側パイロットライン47に圧力スイッチ61が接続され、パイロット圧を検出することによって巻上げ動作であることを確認できるようになっている。
【0018】
続いて、本実施形態では、この杭打機1によって、次のようにスクリュウロッド80を利用した地盤の掘削が行われる。作業開始時は、ウインチ4の巻上げによってオーガ20と位置決め装置19とがリーダ5に沿って引き上げられ、スクリュウロッド80がオーガ20の回転軸に連結される。そして、オーガ20と位置決め装置19は、圧入シリンダ15が収縮状態にあって両者が接近した状態で掘削が行われる。スクリュウロッド80による掘削は、ウインチ4によって吊りワイヤ8が巻下げられ、オーガ20からの出力よってスクリュウロッド80が回転することで、オーガ20や位置決め装置19の重さと地盤に入り込む螺旋羽の推進力によって掘削が行われる。
【0019】
スムーズに掘削が進行している場合の位置決め装置19は、図3に示すように、油圧によって回転止プレート23がロックユニット16から離れ、ピニオンギヤ12の回転がフリーの状態になっている。従って、掘削に伴ってオーガ20がリーダ5に沿って下降すると位置決め装置19も下降するため、それにならってフリーのピニオンギヤ12はラック10を転動することになる。
【0020】
一方、スクリュウロッド80が硬い地盤に突き当たり、それ以上入っていかないような場合には、位置決め装置19の加圧室25へ作用している油圧を解除し、スプリング24の付勢力によって回転止プレート23をロック用ディスク22へと押し当てて回転をロックさせる。これによりピニオンギヤ12の回転が制限されるため、ラック10に噛み合った状態で位置決め装置19がリーダ5に対して所定の高さで位置決めされる。そして、収縮状態の圧入シリンダ15に作動油が供給され、オーガ20を介してスクリュウロッド80が硬い地盤への強制圧入される。
【0021】
また、スクリュウロッド80を引き抜く場合には、位置決め装置19のロックを解除した状態でウインチ4を巻上げし、吊りワイヤ8によってオーガ20及び位置決め装置19を引き上げる。引抜き時には、ウインチ4の巻上げ力によってスクリュウロッド80を引き上げることになるが、それでは十分でない場合には、圧入シリンダ15を伸ばした状態でロックユニット16によってピニオンギヤ12の回転を制限して位置決め装置19を位置決めし、圧入シリンダ15を収縮させてオーガ20及びスクリュウロッド80を強制的に引き上げるようにする。
【0022】
ところで、上述したようなオーガ20の昇降は、杭打機1の次のような動作によって実行される。操作レバー42が図4に示すように中立状態にある場合は、油圧ポンプ49からの作動油がコントロールバルブ46を通ってタンク45へと流れる。そこで、オーガ20を上昇させるため操作レバー42が巻上げ側に倒されると、操作レバー42によって切換弁43が切り換えられ、パイロット圧がコントロールバルブ46をAポートブロックに切り換える。そのため、油圧ポンプ49からの作動油は、巻上ライン51を流れて油圧モータ53を巻上げ方向に回転させる。
【0023】
逆に、操作レバー42が巻下げ方向に倒されると、切換弁44が切り換えられてパイロット圧がコントロールバルブ46をBポートブロックに切り換える。そのため、油圧ポンプ49からの作動油は、巻下ライン52を流れて油圧モータ53を逆回転させる。このとき、巻下ライン52を流れる油圧によってカウンタバランスバルブ55が開弁し、戻りの作動油がこのカウンタバランスバルブ55を通って巻上ライン51を流れる。
【0024】
ところで、オーガ20を昇降させる場合は、位置決め装置19のロックを解除しているため、吊りワイヤ8が万が一にでも切れてしまうとオーガ20が落下して危険である。しかし、本実施形態の杭打機1では、位置決め装置19が落下防止装置として機能することで落下の危険を回避している。図5は、そうした杭打機において落下防止を実行するためのシステム図である。すなわち、杭打機1に備えられたコントローラ60が、ロードセル9や圧力スイッチ61からの信号を受け、リレー37を操作するように構成されている。
【0025】
吊りワイヤ8は、特に巻上げ時に引張り荷重が作用して切断の危険が生じる。そこで、本実施形態では、図4に示すように巻上げ側パイロットライン47に圧力スイッチ61が接続され、ウインチ4の巻上げ動作を検出している。すなわち、操作レバー42を巻上げ側に傾けることで巻上げ側パイロットライン47にパイロット圧がかかり、その圧力を検出した圧力スイッチ61からの信号がコントローラ60に送られる。コントローラ60では、圧力スイッチ61からの信号を受けることで(S1:YES)巻上げ動作中であることが確認できる。
【0026】
その後、コントローラ60は、ロードセル9からの荷重信号を受けて吊りワイヤ8の切断状態を判断する(S2)。具体的には、ロードセル9にかかる引張り荷重が1tonより小さい値を示した場合に切断したと判断するようにしている。従って、通常状態ではオーガ20などを引き上げることにより吊りワイヤ8には1ton以上の引張り荷重がかかるため、その荷重値Pが1ton以上の場合には(S2:NO)、コントローラ60では巻上げ動作確認(S1)と荷重確認(S2)が繰り返される。一方、吊りワイヤ8が切れた場合には、ロードセル9にかかる荷重が1tonを下回り(S2:YES)、その荷重信号Pを受けたコントローラ60からリレー37に開信号が送られる。
【0027】
そこで、図3に示すB接点のリレー37が開信号によってOFF状態になり、ロック用ソレノイド弁32は、非通電となってBポートブロックから図示するAポートブロックに切り換えられる。すると、ロックユニット16の加圧室25がタンク34と連通し、スプリング24の付勢力によって回転止プレート23がロック用ディスク22に押し付けられる。そのため、ラック10を転動するピニオンギヤ12の回転が制限され、ブレーキがかかってオーガ20の落下が止められる。
【0028】
ところで杭打機1には、落下防止後にその後の安全が確保された段階でロックを解除する解除スイッチが設けられている。従って、吊りワイヤ8が切れた場合には(S2:YES)、解除スイッチの状態が確認され(S3)、解除スイッチが押されていなければ落下防止状態が継続される(S3:NO)。そして、安全が確保されて解除スイッチが押されると(S3:YES)、リレー37が通常状態に戻され、位置決め装置19の昇降が可能になる。
【0029】
よって、本実施形態の杭打機1によれば、万が一吊りワイヤ8が切断してしまった場合でも、位置決め装置19が落下防止装置となってオーガ20の落下を止めることができるようになった。また、本実施形態では位置決め装置19を使用し、圧入シリンダ15によって強制圧入や引抜きを可能にするとともに、その位置決め装置19を落下防止装置として利用することで、効果を上げながらコストを抑えて安全性を増した杭打機とすることができた。
【0030】
次に、杭打機の第2実施形態について説明する。図6は、杭打機のウインチを回転させる油圧回路を示した図である。これは、前記第1実施形態で用いたロードセル9の代わりに圧力センサ62を用いたものである。従って、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明する。
圧力センサ62は、ウインチ4の油圧モータ4へ作動油を供給するラインであって、特に巻上げライン51に接続され、巻上げ時の油圧を検出するためのものである。そして、この圧力センサ62によって検出された圧力値の圧力信号が、図5に示すロードセル9に代えてコントローラ60へと送信されるようになっている。
【0031】
よって、前記第1実施形態と同様に、操作レバー42を巻上げ側に傾けた巻上げ動作時には、巻上げ側パイロットライン47にパイロット圧がかかり、それを検出した圧力スイッチ61からの信号がコントローラ60に送られる(図5参照)。コントローラ60では、圧力スイッチ61からの信号が入ったことで(S1:YES)巻上げ動作中であることが確認できる。その後、コントローラ60は、圧力センサ62からの圧力信号を受けて吊りワイヤ8の切断状態を判断する(S2)。すなわち、巻上げ時に吊りワイヤ8が切れた場合には油圧モータ53の負荷が小さくなって巻上げライン51内の圧力が低下するため、設定値より小さくなったときに切れたと判断するようにしている。
【0032】
従って、通常状態では、吊りワイヤ8の巻上げには油圧モータ53の負荷が大きく、圧力センサ62は巻上げライン51内の油圧も高い値を検出する。その検出信号により(S2:NO)、コントローラ60は巻上げ動作確認(S1)と油圧確認(S2)とを繰り返す。そして、吊りワイヤ8が切れてしまった場合には、圧力センサ62の値が急に落ちて設定値を下回るため、コントローラ60がその圧力信号を受けてリレー37に開信号が送られ(S2:YES)、解除スイッチが押されるまで落下防止状態が継続される(S3:NO)。
よって、本実施形態の杭打機でも、万が一吊りワイヤ8が切断してしまった場合でも、位置決め装置19が落下防止装置となってオーガ20の落下を止めることができ、位置決め装置19を落下防止装置として利用することで、その効果とともにコストを抑えて安全性を増した杭打機とすることができた。
【0033】
次に、杭打機の第3実施形態について説明する。本実施形態の落下防止装置付き杭打機は、第1実施形態の杭打機の位置決め装置19を別の構成にしたものである。ここで、図7は、第3実施形態の杭打機を概念的に示す側面図であって、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付している。また、図8は、本実施形態の位置決め装置とその駆動回路を示した図である。
この杭打機70は、第1実施形態とは異なる位置決め装置71によって構成されている。位置決め装置71は、一対の屈曲した把持爪72a,72aが軸支されたチャック72が設けられ、それが油圧シリンダ(チャックシリンダ)73によって開閉するようになっている。一方、リーダ5には、その全面にラックではなくディスクプレート74が取り付けられており、位置決め装置71は、そのチャック72先端がこのディスクプレート74を挟み込むようになっている。
【0034】
チャックシリンダ73は、ロック用ソレノイド弁32を介して油圧ポンプ31と接続され、その油圧ポンプ31は、更にリリーフ弁33を介してタンク34に接続されている。ロック用ソレノイド弁32は、ソレノイドへの通電によってAポートブロックからBポートブロックへ切り換えられ、油圧ポンプ31とチャックシリンダ73が連通するようになっている。また、ロック用ソレノイド弁32には継手35を介して制御線75,76が接続され、制御線75を介してコントローラ60(図3参照)の制御によって通電が行われ、制御線76にはコントローラ60からの信号によって閉じるA接点のリレー77を介して電源に接続されている。
【0035】
この杭打機70では、オーガ20と位置決め装置71とが圧入シリンダ15によって連結され、その圧入シリンダ15が収縮した状態で掘削が行われる。その際、ウインチ4によって吊りワイヤ8は巻き出される。スムーズに掘削が進行している場合の位置決め装置71は、チャックシリンダ62は油圧が抜けた状態でチャック72の先端がディスクプレート74と摺接するだけの状態になっている。一方、強制圧入を行う場合には位置決め装置60のチャックシリンダ62に伸び方向の油圧が作用し、チャック61先端がディスクプレート74を両側から強く把持し、その摩擦力によってロックする。そして、圧入シリンダ15が伸びると、その伸び力がオーガ20を介してスクリュウロッド80に伝えられ、硬い地盤への強制圧入が行われる。
【0036】
一方、スクリュウロッド80を引き抜く場合には、位置決め装置71のロックを解除した状態でウインチ4を巻上げ、吊りワイヤ8によってオーガ20及び位置決め装置60を引き上げる。引抜き時には、ウインチ4の巻上げ力によってスクリュウロッド80を引き上げることになるが、それでは十分でない場合には、圧入シリンダ15を伸ばした状態でチャック72によってディスクプレート74を把持して位置決め装置71を固定し、圧入シリンダ15を収縮させてオーガ20及びスクリュウロッド80を強制的に引き上げる。
【0037】
ところで、オーガ20を昇降させる場合は、位置決め装置71のロックを解除しているため、吊りワイヤ8が万が一にでも切れてしまうとオーガ20が落下して危険である。そのため、本実施形態では、第1実施形態と同様に、吊りワイヤ8が切れた場合には、コントローラ60がロードセル9や圧力スイッチ61(図4参照)からの信号を受けてリレー77を操作し、オーガ20の落下を防止するようにしている。すなわち、コントローラ60は、図5に示すように、巻上げ動作中であることを確認し(S1:YES)、ロードセル9からの信号により吊りワイヤ8が切れたことを確認すると、リレー77に閉信号が送られ(S2:YES)、解除スイッチが押されるまで落下防止状態が継続される(S3:NO)。
【0038】
それにより、ロック用ソレノイド弁32は、通電によってAポートブロックからBポートブロックに切り換えられ、チャックシリンダ73に作動油によってチャック72がディスクプレート74を把持し、その摩擦力によってオーガ20の落下が止められる。
よって、本実施形態の杭打機70によれば、万が一吊りワイヤ8が切断してしまった場合でも、位置決め装置71が落下防止装置となってオーガ20の落下を止めることができるようになった。また、本実施形態でも位置決め装置71を使用し、圧入シリンダ15によって強制圧入や引抜きを可能にするとともに、その位置決め装置71を落下防止装置として利用することで、効果を上げながらコストを抑えて安全性を増した杭打機とすることができた。
【0039】
以上、本発明に係る落下防止装置付き杭打機の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、昇降制限機構としてラック10とピニオンギヤ12や、チャック72とディスクプレート74による構成としたが、それ以外の構成によるものであってもよい。
また、杭打機のリーダに装着する作業装置はオーガ20に限ったものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】落下防止装置付き杭打機の第1実施形態を概念的に示した側面図である。
【図2】落下防止装置付き杭打機の正面部分を示した図である。
【図3】ロックユニットの駆動回路を示した図である。
【図4】落下防止装置付き杭打機のウインチを回転させるための油圧回路を示した図である。
【図5】落下防止装置付き杭打機における落下防止のためのシステム図である。
【図6】第2実施形態の落下防止装置付き杭打機におけるウインチを回転させる油圧回路を示した図である。
【図7】落下防止装置付き杭打機の第3実施形態を概念的に示した側面図である。
【図8】第3実施形態の落下防止装置付き杭打機における位置決め装置とその駆動回路を示した図である。
【図9】ウインチを利用した強制押込み機構を備えた従来の杭打機示した概念図である。
【符号の説明】
【0041】
1 落下防止装置付き杭打機
2 走行部
3 本体
4 ウインチ
5 リーダ
8 吊りワイヤ
9 ロードセル
10 ラック
12 ピニオンギヤ
15 圧入シリンダ
19 位置決め装置
20 オーガ
22 ロック用ディスク
23 回転止プレート
24 スプリング
31 油圧ポンプ
32 ロック用ソレノイド
37 リレー
41 リモコンバルブ
42 操作レバー
43,44 切換弁
46 コントロールバルブ
53 油圧モータ
80 スクリュウロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体前方に立設されたリーダに対して摺動可能に装着された作業装置を吊りワイヤによって吊設し、ウインチによる吊りワイヤの巻上げ及び巻下げによって作業装置を昇降させる杭打機であって、
前記作業装置と一体になって前記リーダに対して摺動可能に装着され、前記作業装置が任意の高さで昇降できなくなるように、前記リーダとの間に昇降制限機構が設けられた落下防止装置と、
前記吊りワイヤが切れたことを検出する切断検出手段と、
前記切断検出手段からの信号を受けて、前記落下防止装置を動作させることにより前記昇降制限機構によって前記リーダに対して所定の高さで前記作業装置の下降を停止させるコントローラとを有するものであることを特徴とする落下防止装置付き杭打機。
【請求項2】
請求項1に記載する落下防止装置付き杭打機において、
前記昇降制限機構は、前記リーダにラックが形成され、前記落下防止装置が、そのラックに対して噛み合うピニオンギヤの回転軸にロック用ディスクが設けられ、そのロック用ディスクがスプリングの付勢力と油圧とによって当接・離間する回転止プレートを有するものであることを特徴とする落下防止装置付き杭打機。
【請求項3】
請求項1に記載する落下防止装置付き杭打機において、
前記昇降制限機構は、前記リーダにディスクプレートが形成され、前記落下防止装置が、そのディスクプレートを油圧シリンダの力で把持するチャックを有するものであることを特徴とする落下防止装置付き杭打機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する落下防止装置付き杭打機において、
前記切断検出手段は、前記吊りワイヤに連結されたロードセル、または前記ウインチの油圧モータに対して作動油を供給する油圧回路の巻上げラインに接続された圧力センサであることを特徴とする落下防止装置付き杭打機。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載する落下防止装置付き杭打機において、
前記落下防止装置と油圧ポンプとの間に配管されたソレノイド弁と、そのソレノイド弁と電源との間に接続されたリレーとを備え、
前記コントローラは、前記切断検出手段からの切断検出信号を受けて前記リレーの開閉を制御するようにしたものであることを特徴とする落下防止装置付き杭打機。
【請求項6】
請求項5に記載する落下防止装置付き杭打機において、
前記ウインチを巻上げ方向に回転させる状態を検出する巻上げ検出手段を有し、前記コントローラは、その巻上げ検出手段からの検出信号を受け、更に前記切断検出手段からの切断検出信号を受けた場合に前記リレーの開閉を制御するようにしたものであることを特徴とする落下防止装置付き杭打機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−261172(P2008−261172A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105597(P2007−105597)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【出願人】(000172961)あおみ建設株式会社 (21)
【Fターム(参考)】