説明

落下防止装置

【課題】 落下防止用のロッドが待機位置から落下防止位置まで移動する際に、ロッドを水平な状態で移動させることができるようにする。
【解決手段】水平に配置されたロッド本体31の両端部(図5においては、ロッド本体31の左端部のみ図示)には、歯車部材32をそれぞれ回転不能に設ける。本棚の左右一対の側板には、基板21をそれぞれ設ける。一方の基板21と他方の基板21とには、ガイド溝22を鏡対称に形成する。ガイド溝22には、歯部24を形成する。各ガイド溝22の歯部24には、歯車部材32をそれぞれ噛み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば棚が地震によって振動したときに、棚から物品が落下することを防止するための落下防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の落下防止装置が、下記特許文献1に記載されている。この落下防止装置は、下板、背板及び左右一対の側板からなる棚に採用されたものであり、左右一対の側板には、ガイド溝がそれぞれ形成されている。ガイド溝は、上下方向に延びる主部、及びこの主部の上端部から水平方向に延びる水平部を有している。一対の側板の各ガイド溝には、丸棒状をなすロッドの一端部と他端部とがガイド溝の長手方向へ移動可能に挿入されている。ロッドは、その両端部が水平部に挿入された待機位置と、主部の所定の位置に停止させられた落下防止位置との間を移動可能である。ロッドが待機位置に位置しているときには、書籍等を棚の前面開放部からロッドが邪魔になることなく出し入れすることができる。その一方、ロッドが落下防止位置に位置すると、下板に載置された書籍等が棚の前面開放部から前方へ脱出することがロッドによって防止される。
【0003】
水平部の下側の側面には深さが浅い凹部が形成されており、ロッドが待機位置に位置しているときには、ロッドの両端部が凹部に入り込んでいる。これにより、通常時にはロッドが待機位置に位置させられている。棚が地震等によって振動すると、ロッドが凹部から脱出し、水平部から主部まで移動する。すると、ロッドが自重によって主部内を落下防止位置までが移動する。これにより、書籍等が棚から落下することが防止される。
【0004】
【特許文献1】実開昭55−38946号公報参照
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構成の落下防止装置において、ロッドは、水平な状態で主部を落下するときには円滑に移動する。ところが、ロッドは必ずしも水平な状態で落下することがなく、傾斜した状態で落下することがある。傾斜した状態では、ロッドの下側に位置する端部がガイド溝の底面に突き当たったりするため、円滑な移動が阻害される。この結果、ロッドが落下防止位置に移動するまでに時間がかかり、その間に書籍が本棚から落下してしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の問題を解決するために、ガイド溝を有する一対の支持部材と、両端部が上記一対の支持部材の各ガイド溝にその長手方向へそれぞれ移動可能に挿入され、上記一対の支持部材に対して待機位置と落下防止位置との間を移動可能であるロッドと、このロッドを上記待機位置から上記落下防止位置まで移動させる移動手段と、上記一対の支持部材のうちの少なくとも一方の支持部材に設けられ、通常時には上記ロッドを上記待機位置に係止し、上記支持部材に所定の大きさを越える振動が作用したときには上記ロッドに対する係止状態を解除して上記ロッドが上記待機位置から上記落下防止位置に向って移動することを許容する係止手段とを備えた落下防止装置において、上記一対の支持部材の各ガイド溝の長手方向に沿って延びる一側面には、歯部がそれぞれ設けられ、上記ロッドが、ロッド本体と、このロッド本体の両端部に回動不能に設けられ、上記一対の支持部材の各ガイド溝の歯部と噛み合う歯車部とを有し、上記歯車部が上記待機位置と上記落下防止位置との間において上記歯部と噛み合わされていることを特徴としている。
この場合、上記ガイド溝が、ストレートに延びる主部と、この主部に対しその一端部から斜めに延びる傾斜部とを有し、上記傾斜部に上記待機位置が設定され、上記主部に上記落下防止位置が設定され、上記歯部が上記傾斜部の側面、並びにこの側面に続く上記湾曲部及び上記主部の各側面に形成されていることが望ましい。
上記係止手段が、上記ロッドに形成された係合凹部と、上記一方の支持部材に上記係合凹部に係合した係合位置と上記係合凹部から脱出した解除位置との間を移動可能に設けられた係止部材とを有し、上記係合凹部が、上記ロッドの外周面のうちの上記ロッドが上記待機位置に位置しているときに上方を向く部分に配置され、上記係止部材がその自重によって上記係合凹部に係合することにより、上記ロッドが上記待機位置に係止されていることが望ましい。
上記係合凹部の底面が円弧面によって形成され、上記係止部材が断面円形に形成され、上記係止部材の外径が上記係合凹部の底面を形成する円弧面の曲率半径と等しい大きさに設定されていることが望ましい。
上記ガイド溝の上記主部が上下方向に延び、上記傾斜部が上記主部の上端部から斜め上方に延び、上記移動手段が重力であり、上記係止手段による係止状態が解除すると、上記ロッドがその自重によって上記待機位置から上記落下防止位置まで移動することが望ましい。
上記ガイド溝の主部が上下方向に延び、上記傾斜部が上記主部の下端部から斜め下方に延び、上記移動手段が上記ロッドを上方に付勢する付勢手段であり、上記係止手段による係止状態が解除すると、上記ロッドが付勢手段によって上記待機位置から上記落下防止位置まで移動させられることが望ましい。
上記ガイド溝がストレートに延びるストレート部を有し、上記待機位置と上記落下防止位置とが上記ストレート部の長手方向へ互いに離間した2箇所にそれぞれ設定されていてもよい。その場合には、上記係止手段が、上記ロッドに形成された係合凹部と、上記一方の支持部材に上記係合凹部に係合した係合位置と上記係合凹部から脱出した解除位置との間を移動可能に設けられた係止部材とを有し、上記係合凹部が、上記ロッドの外周面のうちの上記ロッドが上記待機位置に位置しているときに上記係止部材と対向する部分に配置され、上記係止部材が上記係合凹部に係合することにより、上記ロッドが上記待機位置に係止されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、支持部材が地震等によって振動すると、支持部材に設けられた係止手段によるロッドに対する係止状態が解除される。すると、ロッドが移動手段によって待機位置から落下防止位置まで移動させられる。このとき、ロッドの両端部に回動不能に設けられた各歯車部が、一対の支持部材のガイド溝の各歯部とそれぞれ噛み合っているから、ロッドの両端部は、一対の支持部材の各ガイド溝に対して同一位相で移動する。したがって、ロッドは、その長手方向を移動方向と直交する方向に向けた状態で移動し、各ガイド溝に対して斜めになることがない。よって、ロッドは待機位置から落下防止位置まで速やかに移動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図8は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態は、この発明に係る落下防止装置1を本棚Aに用いたものである。まず、本棚Aについて説明すると、本棚Aは、枠体Bを有している。枠体Bは、底板C、一対の側板D1,D2、天板E及び背板Fにより、前面が開放された中空の直方体として形成されている。枠体Bの内部には、複数の棚板Gが上下方向へ互いに離間して配置されている。各棚板Gは水平に配置されており、その両端部が一対の側板D1,D2によって支持されている。棚板Gには、枠体B内にその前面開放部から挿入された書籍等の物品が載置され、あるいは棚板Gに載置された物品が本体部Bの開放部から取り出される。
【0009】
一対の側板D1,D2には、この発明に係る落下防止装置1が設けられている。落下防止装置1は、この実施の形態では、上から二段目の棚板Gに載置された物品が地震等の振動によって落下することを防止するために設けられている。落下防止装置1は、他の棚板Gに載置された物品が落下することを防止するように設けてもよく、あるいは複数の棚板Gに載置された物品が落下することを防止するために複数設けてもよい。
【0010】
落下防止装置1は、第1及び第2本体部2A,2Bとロッド3とを有している。第1本体部2Aは、一対の側板D1,D2のうちの一方(図1において左側)の側板D1の内面(側板D2との対向面)に固定されている。第1本体部2Aは、前後方向には枠体Bの開放部側に位置する側板D1の端部に配置されており、上下方向には最上段の棚板Gと上から2番目の棚板Gとの間に位置するように配置されている。第2本体部2Bは、他方の側板D2の内面に固定されており、前後方向及び上下方向には第1本体部2Aと同一位置に配置されている。したがって、第1本体部2Aと第2本体部2Bとは、左右方向に互いに対向している。第1本体部2Aと第2本体部2Bとの間には、ロッド3が掛け渡されている。ロッド3は、通常時には待機位置に位置している。待機位置は、第1及び第2本体部2A,2Bの上端部の位置に設定されており、最上段の棚板Gに近接している。したがって、ロッド3が待機位置に位置しているときには、二番目の棚板Gに書籍を出し入れするときにロッド3が邪魔になることがない。本棚Aが地震等によって所定の大きさ以上の加速度をもって振動すると、ロッド3が待機位置から所定の落下防止位置まで自動的に移動する。落下防止位置は、例えば二段目の棚板Gと最上段の棚板Gとの間の距離の1/3程度の距離だけ二段目の棚板Gから上方へ離間した位置に設定されている。したがって、ロッド3は、落下防止位置に移動すると、棚板Gに載置された書籍が落下することを防止する。
【0011】
上記の作用をなす落下防止装置1についてさらに詳細に説明する。ただし、落下防止装置1の第2本体部2Bは、第1本体部2Aと鏡対称に構成されている。そこで、以下においては、第1本体部2Aについてのみ説明し、第2本体部2Bについては第1本体部2Aと同様な部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0012】
第1本体部2Aは、図2及び図4〜図6に示すように、上下に長い四角形の板状をなす基板(支持部材)21を有している。この基板21は、側板D1の内面にビス等の固定部材(図示せず)によって固定されている。基板21の第2本体部2Bと対向する面(図5において右側の面)には、ガイド溝22が形成されている。ガイド溝22は、上下方向へストレートに延びる主部22Aと、この主部22Aの上端部に続いて形成され、円弧状に湾曲した湾曲部(傾斜部)22Bと、この湾曲部22Bに続いて形成され、斜め上方に向って延びる勾配部(傾斜部)22Cとを有している。主部22A、湾曲部22B及び勾配部22Cは、同一の幅及び同一の深さを有している。主部22Aの下端部及び勾配部22Cの上端部は、それらの幅を直径とする円弧面により半円状に形成されている。
【0013】
勾配部22Cを区画する二つの側面のうちの図7において下側に位置する側面、この側面に続く湾曲部22Bの側面、当該湾曲部22Bの側面に続く主部22Aの側面(図7において右側の側面)には、前後方向に延びる多数の歯23が所定のピッチで形成されている。この多数の歯23により、主部22Aの下端部から湾曲部22Bを経て勾配部22Cまで続く歯部24が構成されている。歯部24は、ガイド溝22の開放部から所定距離だけ離間した底部側に配置されている。
【0014】
基板21のガイド溝22が形成された面には、収容凹部25が形成されている。この収容凹部25は、上下に長い長円状をなしており、その上下の両端部は収容凹部25のストレートな部分の左右方向の幅と同一の直径を有する円弧面によって半円状に形成されている。収容凹部25の下端部は、勾配部22Cの上側の側面の上端部と交差している。したがって、収容凹部25の下端部は、勾配部22Cの上端部と連通している。ここで、収容凹部25が勾配部22Cと交差しているのは、収容凹部25の下端部を構成する半円のうちの、当該半円の曲率中心より下側の部分である。したがって、収容凹部25の勾配部22Cとの連通部の幅、つまり収容凹部25と傾斜部22Cとの交差部26A,26B間の幅は、収容凹部25のストレートな部分の幅より狭くなっている。
【0015】
図2、図3及び図5に示すように、上記ロッド3は、ロッド本体31と一対の歯車部材32,32とを有している。ロッド本体31は、棒状をなしており、その長手方向を左右方向に向けて水平に配置されている。ロッド本体31の断面形状は任意であるが、円形にすることが望ましい。
【0016】

歯車部材32は、ロッド本体31より大径の短い円柱をなしており、その外径はガイド溝22の幅とほぼ同一に設定され、その長さはガイド溝22の深さとほぼ同一に設定されている。そして、一対の歯車部材32,32は、第1、第2本体部2A,2Bの各ガイド溝22,22にその長手方向へ移動可能に挿入されている。一対の歯車部材32,32の互いに対向する各面の中央部には、ロッド本体31の一端部と他端部とがそれぞれ挿入固定されている。したがって、一対の歯車部材32,32は、ロッド本体31と一体に回転する。各歯車部材32の外側(ロッド本体31から離間する側)の端部には、歯車部32aが形成されている。一方の歯車部材32の歯車部32aは、第1本体部2Aのガイド溝22の歯部24と噛み合っている。他方の歯車部材32の歯車部32aは、第2本体部2Bのガイド溝22の歯部24と噛み合っている。しかも、一対の歯車部材32,32は、同一高さに配置されている。したがって、ロッド3がガイド溝22内をその長手方向へ移動するときには、一対の歯車部材32,32が同一高さを維持する。よって、ロッド31は、水平な状態を維持しつつガイド溝22に沿って移動する。

【0017】
ロッド31は、ガイド溝22内を図6及び図7に示す待機位置と図8に示す落下防止位置との間を移動可能である。ロッド31の待機位置は、歯車部材32が勾配部22Cの上端部に突き当たることによって定められている。ロッド31の落下防止位置は、歯車部材32が主部22Aの下端部に突き当たることによって定められている。ロッド32がその可動範囲である待機位置と落下防止位置との間のいずれの位置に位置しているときにも、一対の歯車部材32,32の各歯車部32a,32aは、ガイド溝22,22の各歯部24,24とそれぞれ噛み合っている。
【0018】
ロッド31は、通常時には係止手段4によって待機位置に位置させられている。すなわち、歯車部材32の外周面の内側の端部(歯車部32aと逆側の端部)には、係合凹部41が形成されている。この係合凹部41は、ロッド31が待機位置に位置すると、傾斜部22Cと収容凹部25との連通部と対向するように配置されている。係合凹部41の底面は、収容凹部25の下端部を構成する円弧面と同一の曲率半径を有する円弧面によって構成されている。しかも、係合凹部41の底面を構成する円弧面の曲率中心は、ロッド31が待機位置に位置すると、収容凹部25の下端部を構成する円弧面の曲率中心と同一位置に位置するように配置されている。
【0019】
収容凹部25には、係止部材42が収容されている。係止部材42は、断面円形の短円柱状に形成されている。係止部材42は、収容凹部25にその長手方向(上下方向)へ移動可能に収容されている。そのために、係止部材42の外径は、収容凹部25の幅、つまり収容凹部25の下端部を構成する円弧面の直径とほぼ同一に設定されている。係止部材42が収容凹部25の下端部に突き当たっているとき(以下、このときの係止部材42の位置を係合位置という。)には、係止部材42の一部、つまり二つの交差部26A,26Bを結ぶ線より下側に位置する部分が勾配部22C内に突出する。係止部材42の傾斜部22C内に突出した部分は、ロッド3が待機位置に位置しているときには、係合凹部41に隙間無く嵌り込む。この状態では、係止部材42の上方への移動がその自重によって阻止されるとともに、勾配部22Cの長手方向への係止部材42の移動が交差部26A,26Bによって阻止されているので、係止部材42が係合凹部41に係合した状態に維持され、それによって歯車部材32の回転が阻止される。この結果、ロッド3が待機位置に係止される。その一方、係止部材42が上方へ移動して収容凹部25の上端部に突き当たっているとき(以下、このときの係止部材42の位置を解除位置という。)には、係止部材42全体が勾配部22Cから上方へ脱出して収容凹部25内に収容される。この結果、係止部材42が係合凹部41から脱出し、係止部材42と歯車部材42との係合が解除する。よって、歯車部材32が回転可能になり、ロッド3がその自重によって待機位置から落下防止位置まで移動する。
【0020】
基板21のガイド溝22が形成された前面には、化粧板27がビス等の固定手段によって固定されている。化粧板27には、ロッド31が待機位置と落下防止位置との間を移動するときに、ロッド本体31が通る長孔27aが形成されている。この長孔27aが形成された部分を除き、化粧板27は基板21の前面を覆っている。これにより、第1本体部2Aの美観の向上が図られている。
【0021】
上記構成の落下防止装置1が本棚Aに設けられており、ロッド3が係止手段4によって待機位置に位置させられているものとする。その状態において、地震により本棚Aが上下方向へ振動すると、その振動によって係止部材42が係合位置から解除位置へ移動し、係止部材42と歯車部材32との係合が解除される。すると、歯車部材32が回転可能になるので、ロッド3がその自重によって待機位置から落下位置まで移動する。このとき、一対の歯車部材32,32が第1、第2本体部2A,2Bのガイド溝22,22の各歯部24,24と噛み合っているので、ロッド3は水平な状態を維持しつつ移動し、ガイド溝22に対して傾斜することがない。したがって、ロッド3は待機位置から落下防止位置まで速やかに移動することができる。よって、棚板Gから書籍が落下するのを防止することができる。
【0022】
特に、この実施の形態においては、係止部材42が係合位置から上方へ移動することによって係止部材42と歯車部材32との係合が解除されるように構成されているので、書籍の落下をより確実に防止することができる。すなわち、地震による振動波には、縦波と横波とがあるが、先ず縦波によって本棚Aが上下に振動させられる。この縦波による振動によって、係止部材42と歯車部材32との係合が解除され、ロッド3が落下防止位置まで移動する。ここで、縦波による振動が小さいので、ロッド3が落下防止位置に達するまでの間に書籍が棚板Gから落下することはほとんどない。その後、本棚Aは地震の横波によって水平方向に振動させられる。横波による振動は大きいが、このときにはロッド3が落下防止位置に位置している。したがって、書籍が棚板Gから落下することを防止することができる。
【0023】
落下防止位置に移動したロッド3は、手動で待機位置まで戻すことができる。ロッド3は、落下防止位置から待機位置まで移動する間、回転し続けるが、待機位置に達したときには、ロッド3の回転位相が当初の回転位相と一致する。歯車部32aが歯部24と常時噛み合っているからである。したがって、ロッド3が待機位置に達すると、係止部材42(43)がロッド3の係合凹部41に自動的に係合する。これによって、ロッド3が待機位置に係止される。
【0024】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態については、上記実施の形態と異なる構成だけを説明することとし、上記実施の形態と同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0025】
図9〜図12は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態の落下防止装置1′においては、第1及び第2本体部2A,2Bが本棚Aの側板D1,D2の前面に設けられている。勿論、第1及び第2本体部2A,2Bは、上下に隣接する棚板G,G又は天板Eと棚板Gとに対して上記実施の形態と同様の高さ関係を持って配置されている。
【0026】
また、落下防止装置1′においては、係止部材42に代えて係止部材43が用いられている。係止部材43は、球体によって構成されている。この係止部材43の外径(最大外径)は、係止部材42の外径と同一に設定されている。したがって、係止部材43が係合位置に位置すると、係止部材43が係合凹部41に係合し、ロッド3が待機位置に係止される。係止部材43が解除位置に位置すると、係止部材43の係合凹部41に対する係合が解除してロッド3が待機位置から下方へ移動可能になる。なお、係合凹部42を区画する底面は、係合部材43の外周面を構成する球面と同一寸法の球面によって構成してもよい。
【0027】
さらに、収容凹部25に代えて収容凹部25′が形成されている。収容凹部25′は、基板21の前方から見たとき、本棚Aの前後方向(図12において左右方向)に長い長方形状をなしており、前後方向の長さが係止部材43の外径より大きい寸法に設定されている。したがって、係止部材43は、係合位置に位置しているときには、交差部26A,26Bによって前後方向への移動が阻止されているが、係合位置から上方へ移動すると、前後方向へ移動可能になる。勿論、収容凹部25′の前後方向の幅を係止部材43の外径と同一にし、係止部材43を収容凹部25′に前後方向へ移動不能に収容してもよい。
【0028】
図13は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態においては、主部22Aの下端部に湾曲部22Bが形成され、この湾曲部22Bの下端部に続いて勾配部22Cが形成されている。歯車部材32が勾配部22Cの下端部に突き当たったときの位置が待機位置とされ、主部22Aの上端部に突き当たったときの位置が落下防止位置とされている。つまり、この実施の形態においては、落下防止位置が待機位置より上側に定められているのである。そこで、この実施の形態においては、基板21とロッド3との間に、ロッド3を待機位置から落下防止位置まで移動させる移動手段として引っ張りコイルばね28等の付勢手段が設けられている。
【0029】
勾配部22Cの上側の側面には、収容凹部25が開口している。収容凹部25は、その長手方向を鉛直方向に対して若干傾斜させているが、鉛直方向に向けてもよい。収容凹部25が傾斜している分だけ係止部材42の自重によるロッド3に対する係止力が弱くなる。係止部材42の自重だけではロッド3に対する係止力が弱い場合には、圧縮コイルばね29等の付勢手段によって係止部材42を係合凹部41に嵌り込むように付勢してもよい。
【0030】
図14は、この発明の第4実施の形態を示す。この実施の形態においては、ガイド溝22が上下に延びるストレート部22Dだけで構成されている。歯車部材32がストレート部22Dの上端部に突き当たったときのロッド3の位置が待機位置であり、歯車部材32がストレート部22Dの下端部に突き当たったときのロッド3の位置が落下防止位置になっている。これとは、逆にストレート部22Dの上端部に落下防止位置を設定し、下端部に待機位置を設定してもよい。待機位置及び落下防止位置は、ストレート部22Dの両端部に設定することなく、ストレート部22Dの両端部から中央側へ離間し、かつストレート部22Dの長手方向へ互いに離間した2箇所にそれぞれ設定してもよい。
【0031】
歯車部材32の外周面には、係合凹部41が形成されている。係合凹部41は、歯車部材32の外周面のうち、ロッド3が待機位置に位置したときに斜め左上方を向く部分に配置されている。
【0032】
主部22Aの上端部には、収容凹部25の下端部が開口している。収容凹部25の下端部は、ロッド3が待機位置に位置しているときに係合凹部41と対向するように配置されている。収容凹部25の上端部は、係合凹部41が向く方向に沿って斜め上方に延びている。したがって、収容凹部25は、ストレート部22Dに対して斜めに交差している。収容凹部25は、主部22Aに対して直交させてもよい。そのようにする場合には、ロッド3が待機位置に位置したときに、係合凹部41が収容凹部25と対向するよう、係合凹部41を主部22Aの長手方向と直交する方向(例えば、左水平方向)に向かせることになる。
【0033】
収容凹部25には、係止部材42(又は43)が収容凹部25の長手方向へは係合位置と解除位置との間を移動可能に、収容凹部25の幅方向へは移動不能に設けられている。係止部材42(43)は、コイルばね29により解除位置側から係合位置側へ向かって付勢されている。したがって、ロッド3が待機位置に位置すると、係止部材42(43)が係合凹部41に自動的に係合する。これによって、ロッド3が待機位置に維持される。係止部材42(43)の自重だけでロッド3を待機位置に維持することができるのであれば、コイルばね29は不要である。
【0034】
この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、この発明に係る落下防止装置1,1′が本棚Aに用いられているが、商品棚、他の各種の棚に採用することが可能である。また、本棚Aの側板D1,D2の互いに対向する面にガイド溝22を形成してもよい。その場合には、側板D1,D2が落下防止装置の支持部材を兼ねることになる。
図13に示す実施の形態のように、ロッド3をコイルばね28等の付勢手段によって待機位置から落下防止位置まで移動させる場合には、ロッド3を上下方向に向けて配置し、水平方向へ移動させることも可能である。勿論、その場合には、主部22Aがその長手方向を水平方向に向けて形成される。
傾斜部は、湾曲部22Bと勾配部22Cとによって構成することなく、いずれか一方だけで構成してもよい。ただし、傾斜部を勾配部22Cだけで構成する場合には、勾配部22Cと主部22Aとが屈曲状態で交差し、その交差部においてロッド3の待機位置から落下防止位置への移動が阻害されるおそれがある。そこで、勾配部22Cを形成する場合には、勾配部22Cと主部22Aとの間に湾曲部22Bを形成することが望ましい。
また、上記実施の形態においては、係止手段4を第1、第2本体部2A,2Bの両者に設けているが、いずれか一方にのみ設けてもよい。
さらに、上記の実施の形態においては、主部22Aの勾配部22C側と逆側の端部を落下防止位置としているが、主部22Aにストッパを主部22Aの長手方向へ位置調節可能に設け、このストッパに歯車部材32が突き当たった位置を落下防止位置としてもよい。
さらにまた、上記の実施の形態においては、地震の振動によって係止部材42,43を係合位置から解除位置まで移動させているが、地震の振動を検知する検知手段と、この検知手段の検知信号に基づいて係止部材42,43を係合位置から解除位置まで移動させる係止部材移動手段とを設け、係止部材移動手段によって係止部材42,43を係合位置から解除位置まで移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の第1実施の形態に係る落下防止装置が用いられた本棚を示す斜視図である。
【図2】同落下防止装置を分解した状態で示す本棚の斜視図である。
【図3】同落下防止装置の要部を示す分解斜視図である。
【図4】同落下防止装置の第1本体部の正面図である。
【図5】図4のX−X線に沿う断面図である。
【図6】図5のX−X線に沿う断面図である。
【図7】ロッドを待機位置に位置させた状態で示す図5のY−Y線に沿う断面図である。
【図8】ロッドを落下防止位置に位置させた状態で示す図5のY−Y線に沿う断面図である。
【図9】この発明の第2実施の形態に係る落下防止装置が用いられた本棚を示す斜視図である。
【図10】同落下防止装置の要部を示す分解斜視図である。
【図11】同落下防止装置の図5と同様の断面図である。
【図12】図11のX−X線に沿う断面図である。
【図13】この発明の第3実施の形態に係る落下防止装置の要部を示す図である。
【図14】この発明の第4実施の形態に係る落下防止装置の図12と同様の断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 落下防止装置
1′ 落下防止装置
3 ロッド
4 係止手段
21 基板(支持部材)
22 ガイド溝
22A 主部
22B 湾曲部(傾斜部)
22C 勾配部(傾斜部)
22D ストレート部
24 歯部
25 収容凹部
25′ 収容凹部
28 引っ張りコイルばね(付勢手段)
31 ロッド本体
32a 歯車部
41 係合凹部
42 係止部材
43 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド溝を有する一対の支持部材と、両端部が上記一対の支持部材の各ガイド溝にその長手方向へそれぞれ移動可能に挿入され、上記一対の支持部材に対して待機位置と落下防止位置との間を移動可能であるロッドと、このロッドを上記待機位置から上記落下防止位置まで移動させる移動手段と、上記一対の支持部材のうちの少なくとも一方の支持部材に設けられ、通常時には上記ロッドを上記待機位置に係止し、上記支持部材に所定の大きさを越える振動が作用したときには上記ロッドに対する係止状態を解除して上記ロッドが上記待機位置から上記落下防止位置に向って移動することを許容する係止手段とを備えた落下防止装置において、
上記一対の支持部材の各ガイド溝の長手方向に沿って延びる一側面には、歯部がそれぞれ設けられ、
上記ロッドが、ロッド本体と、このロッド本体の両端部に回動不能に設けられ、上記一対の支持部材の各ガイド溝の歯部と噛み合う歯車部とを有し、上記歯車部が上記待機位置と上記落下防止位置との間において上記歯部と噛み合わされていることを特徴とする落下防止装置。
【請求項2】
上記ガイド溝が、ストレートに延びる主部と、この主部に対しその一端部から斜めに延びる傾斜部とを有し、上記傾斜部に上記待機位置が設定され、上記主部に上記落下防止位置が設定され、上記歯部が上記傾斜部の側面、並びにこの側面に続く上記湾曲部及び上記主部の各側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項3】
上記係止手段が、上記ロッドに形成された係合凹部と、上記一方の支持部材に上記係合凹部に係合した係合位置と上記係合凹部から脱出した解除位置との間を移動可能に設けられた係止部材とを有し、上記係合凹部が、上記ロッドの外周面のうちの上記ロッドが上記待機位置に位置しているときに上方を向く部分に配置され、上記係止部材がその自重によって上記係合凹部に係合することにより、上記ロッドが上記待機位置に係止されていることを特徴とする請求項2に記載の落下防止装置。
【請求項4】
上記係合凹部の底面が円弧面によって形成され、上記係止部材が断面円形に形成され、上記係止部材の外径が上記係合凹部の底面を形成する円弧面の曲率半径と等しい大きさに設定されていることを特徴とする請求項3に記載の落下防止装置。
【請求項5】
上記ガイド溝の上記主部が上下方向に延び、上記傾斜部が上記主部の上端部から斜め上方に延び、上記移動手段が重力であり、上記係止手段による係止状態が解除すると、上記ロッドがその自重によって上記待機位置から上記落下防止位置まで移動することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の落下防止装置。
【請求項6】
上記ガイド溝の主部が上下方向に延び、上記傾斜部が上記主部の下端部から斜め下方に延び、上記移動手段が上記ロッドを上方に付勢する付勢手段であり、上記係止手段による係止状態が解除すると、上記ロッドが付勢手段によって上記待機位置から上記落下防止位置まで移動させられることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の落下防止装置。
【請求項7】
上記ガイド溝がストレートに延びるストレート部を有し、上記待機位置と上記落下防止位置とが上記ストレート部の長手方向へ互いに離間した2箇所にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1に記載の落下防止装置。
【請求項8】
上記係止手段が、上記ロッドに形成された係合凹部と、上記一方の支持部材に上記係合凹部に係合した係合位置と上記係合凹部から脱出した解除位置との間を移動可能に設けられた係止部材とを有し、上記係合凹部が、上記ロッドの外周面のうちの上記ロッドが上記待機位置に位置しているときに上記係止部材と対向する部分に配置され、上記係止部材が上記係合凹部に係合することにより、上記ロッドが上記待機位置に係止されていることを特徴とする請求項7に記載の落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−12083(P2010−12083A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175547(P2008−175547)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000107572)スガツネ工業株式会社 (153)