説明

葉分け器

【課題】軟らかな地面にも適用できる葉分け器を提供することを課題とする。
【解決手段】(a)に示す比較例では、爪105に加わる力は、爪105と車軸101とを結んだ線111に沿って、車軸101に作用する。線111が地面107となす角度θ1は、大きいため、地面107が軟弱であると、爪105が地面107に突き刺さる。角度θ1は前輪112の径によって決まるため、変更は難しい。(b)に示す実施例では、爪24に加わる力は、フレーム22の軸線26に沿ってブラケット21に作用する。軸線26が地面34となす角度θ2は、小さくなる。角度θ2が小さい程、地面34に突き刺さりにくくなる。この実施例によれば、地面34が軟弱であっても爪24が地面34に深く刺さる心配はなく、農作業を円滑に進めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畑の地面に這っている葉や茎を起こすために、前輪の前に配置される葉分け器に関する。
【背景技術】
【0002】
玉葱の葉や茎が畑の地面に這っているときに、畑に作業機を入れると、作業機の車輪で葉や茎を踏みつける心配がある。この不都合を避けるために、葉などを分ける道具を前輪に設ける。この道具は葉分け器と呼ばれる。
また、玉葱では、地面に埋まっている実の部分と、地上に出ている葉や茎とを、収穫の際に切り分ける。しかし、葉や茎は地面に這っているため、一度起こし、実から茎や葉が切断できるようにする必要がある。葉や茎を地面から起こすには葉分け器を使用する。
【0003】
葉分け器として、車輪の前に配置されるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実公平8−4827号公報(図4)
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図5は従来の葉分け器の基本構造を説明する図であり、(a)に示すように、この葉分け器100は、車軸101に回転可能に取付けられているブラケット102と、このブラケット102から延ばされたフレーム103と、このフレーム103に取付けられている半割円錐筒104と、この半割円錐筒104の先端に設けられている爪105と、半割円錐筒104に設けられているそり106とからなる。
【0005】
地面107を這っている葉や茎は、爪105で掻き上げられ、半割円錐筒104で徐々に起こされる。
地面107が、ある程度硬いときには、順調に葉や茎を起立させることができる。しかし、雨上がりなどで地面107が軟らかくなると、爪105が地面107に深く刺さり、作業機の前進に支障がでることが判明した。そのたびに、作業機を後退させて地面107から爪105を抜かなければならないので、作業能率が著しく低下する。
【0006】
また、フレーム103が半割円錐筒104の上辺108にほぼ平行であることが構造的な特徴となる。この結果、地面107から爪105に矢印(1)の力が加わると、半割円錐筒104にモーメントが作用し、半割円錐筒104とフレーム103との接合部109に応力が集中し、この接合部109が変形し、破断するというトラブルが発生した。
【0007】
そこで、軟らかな地面にも適用できる葉分け器が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、軟らかな地面にも適用できる葉分け器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、畑の地面に這っている葉や茎を起こすために、前輪の前に配置される葉分け器であって、この葉分け器は、前輪車軸を揺動中心にして揺動可能に車体側に支持されているブラケットと、前記揺動中心より下の位置にてブラケットに支持され前方へ延びているフレームと、このフレームの前部に設けられ葉を分ける半割円錐筒と、この半割円錐筒の先端に設けられている爪とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、フレームは、爪に向かって延ばされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、フレームの軸線は、前輪車軸と地面との間を通る。そのため、フレームの軸線が地面となす角度は小さくなる。この角度が小さくなると、先端の爪は地面に浅く刺さる。地面からの抵抗が小さくなるので、作業機を後退させる必要が無くなり、作業能率が高まる。
【0012】
請求項2に係る発明では、フレームの軸線上に爪を配置した。地面から爪に加わった力は、フレームに圧縮力となって作用する。すなわち、半割円錐筒とフレームとの継ぎ目にモーメントが掛かる心配はない。フレームに曲げが殆ど加わらないため、フレームを細くすることができ、草分け器の軽量化が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明の草分け器を装着した乗用管理機の側面図であり、トラクター等の乗用管理機10は、機体11に前輪12、後輪13、ステアリング14及びシート15を備えている。そして、前輪車軸16に揺動可能に草分け器20が取付けられている。この草分け器20は、運転者の操作によって上昇させることができる。
【0014】
図2は本発明に係る草分け器の側面図であり、草分け器20は、前輪車軸16を揺動中心にして揺動可能に支持されているブラケット21と、揺動中心(前輪車軸16)より下の位置にてブラケット21に支持され前方へ延びているフレーム22と、このフレーム22の前部に設けられ葉を分ける半割円錐筒23と、この半割円錐筒23の先端に設けられている爪24と、半割円錐筒23に沿って後方へ延ばされたガイドロッド25、25とからなる。
【0015】
図3は本発明に係る草分け器の断面図であり、フレーム22の軸線26は、爪24を通ると共に前輪車軸16と地面27との間を通る。また、半割円錐筒23は、下部にシュー機構30を備えている。このシュー機構30は、軟らかい地面に半割円錐筒23が沈まないようにするスキー板の役割を果たす。
【0016】
シュー機構30は、半割円錐筒23の底にヒンジピン31で上下動可能に取付けられたスキー板32と、このスキー板32の自由端(後端)を支持する高さ調整ボルト33とからなる。
ヒンジピン31を低位置に設けたので、半割円錐筒23は細長形状にすることができた。
【0017】
以上の構成からなる草分け器の作用を次に述べる。
図4は従来の草分け器と本発明による草分け器との比較図である。
(a)に示す比較例では、爪105に加わる力は、爪105と車軸101とを結んだ線111に沿って、車軸101に作用する。線111が地面107となす角度θ1は、大きいため、地面107が軟弱であると、爪105が地面107に突き刺さる。角度θ1は前輪112の径によって決まるため、変更は難しい。
【0018】
爪105が深く刺さる程、地中浅いところにある玉葱が浮き上がり、農作物に害を及ぼす。
【0019】
(b)に示す実施例では、爪24に加わる力は、フレーム22の軸線26に沿ってブラケット21に作用する。軸線26が地面27となす角度θ2は、小さくなる。角度θ2が小さい程、地面34に突き刺さりにくくなる。この実施例によれば、地面34が軟弱であっても爪24が地面34に深く刺さる心配はなく、農作業を円滑に進めることができる。
【0020】
爪24が浅く刺さるため、地中浅いところにある玉葱が浮き上がる心配はなく、農作物に害は及ばない。
そして、角度θ2はブラケット21の寸法を調節することで、自由に設定できる。前輪12の径の影響は受けない。すなわち、前輪12の径を自由に選ぶことができる。
【0021】
また、(a)では半割円錐筒104とフレーム103との接合部109に応力が集中するため、この接合部109で変形し、破断する心配がある。
この点、(b)では、地面34から爪24に加わった力は、フレーム22に圧縮力となって作用する。すなわち、半割円錐筒23とフレーム22との継ぎ目にモーメントが掛かる心配はない。フレーム22に曲げが殆ど加わらないため、フレーム22を細くすることができ、草分け器20の軽量化が達成できる。
【0022】
尚、本発明は、玉葱の草分け作業に好適であるが、他の作物の草分け作業に供することは差し支えない。また、草分け器は、乗用管理機の他、歩行型管理機に取付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、玉葱の草分け作業に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の草分け器を装着した乗用管理機の側面図である。
【図2】本発明に係る草分け器の側面図である。
【図3】本発明に係る草分け器の断面図である。
【図4】従来の草分け器と本発明による草分け器との比較図である。
【図5】従来の葉分け器の基本構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
10…乗用管理機、12…前輪、16…前輪車軸、20…草分け器、21…ブラケット、22…フレーム、23…半割円錐筒、24…爪、27…地面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畑の地面に這っている葉や茎を起こすために、前輪の前に配置される葉分け器であって、この葉分け器は、前輪車軸を揺動中心にして揺動可能に車体側に支持されているブラケットと、前記揺動中心より下の位置にてブラケットに支持され前方へ延びているフレームと、このフレームの前部に設けられ葉を分ける半割円錐筒と、この半割円錐筒の先端に設けられている爪とからなることを特徴とする葉分け器。
【請求項2】
前記フレームは、前記爪に向かって延ばされていることを特徴とする請求項1記載の葉分け器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−253177(P2008−253177A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97707(P2007−97707)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(391004470)北海道ホンダ販売株式会社 (4)
【Fターム(参考)】