説明

蒸気の乾き度測定装置

【課題】 動圧を検出することなく、蒸気の乾き度を正確に算出することのできる蒸気の乾き度測定装置を提供する。
【解決手段】 蒸気配管1に加熱冷却手段3を接続する。加熱冷却手段3を、電熱ヒータ7と冷却パイプ8で構成する。加熱冷却手段3の上流側の蒸気配管に温度検出手段4を貼り付け、また、加熱冷却手段3の下流側にも温度検出手段5,6を貼り付ける。加熱冷却手段3の下流側には、蒸気配管圧力検出手段2を取り付ける。
加熱冷却手段3へ供給される蒸気の流量が、電熱ヒータ7へ供給される熱量に基づいて算出され、更に、この蒸気流量に基づいて蒸気の乾き度が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気中の水分の含有量、即ち蒸気の単位体積当りの全質量に対する乾き飽和蒸気の占める質量の割合を示す、所謂乾き度:Xを測定する蒸気の乾き度測定装置に関する。蒸気の乾き度がXの場合、湿り度は(1−X)で表される。各種ボイラや蒸気動力を利用する機器、乾燥設備などでは、熱管理のために蒸気の乾き度を測定する必要がある。これは蒸気中の水分の含有量によって例えば乾燥状態が変化してしまうためである。
【背景技術】
【0002】
蒸気の乾き度測定装置は、蒸気配管2に、流速センサ6と圧力センサ5とピトー管1を順次取り付け、ピトー管1で被測定蒸気の動圧を検知して、この動圧と流速から蒸気の比重量又は比容積を求め、求めた比重量又は比容積と、乾き度又は湿り度の関係式から、被測定蒸気の乾き度又は湿り度を算出することができるものである。
【0003】
この蒸気の乾き度測定装置においては、ピトー管で被測定蒸気の動圧を検出して蒸気の乾き度を算出するものであるが、動圧をピトー管で正確に検出することがむずかしく、従って、算出される蒸気の乾き度も不正確な値となってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−243611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、動圧を検出することなく、蒸気の乾き度を正確に算出することのできる蒸気の乾き度測定装置を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、蒸気配管を流下する蒸気の乾き度を測定するものにおいて、蒸気配管の蒸気圧力を検出する蒸気配管圧力検出手段と、蒸気配管の蒸気を加熱及び冷却する加熱冷却手段と、当該加熱冷却手段の上流側と下流側の蒸気配管表面の温度を検出する温度検出手段と、上記加熱冷却手段から供給される熱量に基づいて蒸気配管を流下する蒸気の流量及び蒸気の乾き度を演算する演算制御部を具備するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の蒸気の乾き度測定装置は、加熱冷却手段から蒸気へ供給される熱量に基づいて蒸気の乾き度を演算することによって、蒸気の乾き度を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の蒸気の乾き度測定装置の実施例を示す構成図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、加熱冷却手段から蒸気へ熱量を供給するものであるが、この加熱冷却手段は、蒸気へ供給する熱量を制御したり測定することが容易な電熱ヒータが好適である。
【実施例1】
【0010】
図1において、蒸気の流下する蒸気配管1と、蒸気配管1の蒸気圧力を検出する蒸気配管圧力検出手段2と、蒸気に所定の熱量を供給する加熱冷却手段3、及び、蒸気配管表面の温度を検出する温度検出手段4,5,6とで蒸気の乾き度測定装置を構成する。
【0011】
加熱冷却手段3の上流側で、蒸気配管1の上面に、蒸気配管の表面温度を検出する温度検出手段としての温度センサ4を貼り付ける。また、加熱冷却手段3の下流側で、蒸気配管の上面と下面にそれぞれ温度センサ5,6を貼り付ける。
【0012】
加熱冷却手段3として、本実施例においては、加熱源として電熱ヒータ7を、また、冷却源として冷却パイプ8をそれぞれ用いた例を示す。電熱ヒータ7には図示しない電源を接続する。冷却パイプ8は、電熱ヒータ7内部をコイル状に配置して、入口側に冷却水供給管9を接続し、出口側に冷却水排出管10を接続する。冷却水供給管9から供給される冷却水によって、電熱ヒータ7を介して蒸気配管1を冷却することができるものである。
【0013】
加熱冷却手段3の下流側の蒸気配管1に、蒸気配管圧力検出手段としての圧力センサ2を取り付ける。圧力センサ2と温度センサ4,5,6は、それぞれ演算制御部11と接続する。
【0014】
蒸気配管1を流下してくる蒸気が、加熱冷却手段3の電熱ヒータ7に至り、電熱ヒータ7から供給される二段階の熱量に応じて二種類の過熱蒸気となり、圧力センサ2と温度センサ4,5,6からの検出値、及び、二種類の過熱蒸気となるために電熱ヒータ7から供給されるそれぞれの熱量から、加熱冷却手段3を流下する蒸気の流量を算出し、更に、この流量値から蒸気の乾き度を算出することができるものである。
【0015】
加熱冷却手段3での蒸気の乾き度検出値に応じて、蒸気配管1を流下する蒸気の乾き度を、更に、電熱ヒータ7により加熱することにより、あるいは、冷却パイプ8により冷却することにより、任意に調節することができ、蒸気配管1右端部19から図示しない蒸気使用箇所へ供給される蒸気の乾き度を任意にコントロールすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、各種蒸気使用装置で使用される蒸気の乾き度によって、蒸気使用装置の性能が変化してしまうものに利用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 蒸気配管
2 蒸気配管圧力検出手段
3 加熱冷却手段
4,5,6 温度検出手段
7 電熱ヒータ
8 冷却パイプ
11 演算制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気配管を流下する蒸気の乾き度を測定するものにおいて、蒸気配管の蒸気圧力を検出する蒸気配管圧力検出手段と、蒸気配管の蒸気を加熱及び冷却する加熱冷却手段と、当該加熱冷却手段の上流側と下流側の蒸気配管表面の温度を検出する温度検出手段と、上記加熱冷却手段から供給される熱量に基づいて蒸気配管を流下する蒸気の流量及び蒸気の乾き度を演算する演算制御部を具備することを特徴とする蒸気の乾き度測定装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−63233(P2012−63233A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207410(P2010−207410)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)