説明

蒸気タービンケーシングシステム

【課題】内側ケーシング支持領域の局所的な加熱の問題を解決する。
【解決手段】外側ケーシング30が、第1の材料から形成された鋳造部35と、支持領域5とを有しており、動翼10を収容するための、外側ケーシングによって包囲された内側ケーシング20が、支持領域5と接触している接触面24を有し、支持領域5に、第1の材料よりも高い高温強度を有する第2の材料から形成された金属挿入体40が、鋳造部35に収容された収容された面41を有し、収容された面41が、半径方向外方RODに関して、軸方向及び/又は周方向に拡開した部分42を有し、接触面24と接触している支持面44が、内側ケーシング30と鋳造部35との間の分離を維持するために、接触面24に関連して構成されており、接触面24を支持面44上で案内するための案内手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、軸流蒸気タービンケーシング、特に、蒸気タービンの外側ケーシングの一部を形成する温度弾性支持領域に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な高温蒸気タービンは、外側ケーシング及び内側ケーシングを有する。外側ケーシングは、通常、容易に鋳造される比較的低い高温強度を有する材料から形成されているのに対し、内側ケーシングは、通常、より高い温度に耐えることができるようにより高い高温強度を有する材料から形成されている。外側ケーシングの機能の1つは、構成された支持領域による、内側ケーシングの軸方向、周方向及び/又は半径方向の支持を提供することである。広範囲の公知の内側ケーシング設計が存在するので、それぞれ特定の内側ケーシング構成に適応させられた、広範囲の支持領域構成も存在する。しかしながら、それぞれの場合に、少なくとも幾つかの支持領域は、軸方向及び/又は周方向の支持を提供する。
【0003】
特に蒸気タービンの入口領域の近傍において、内側ケーシングの支持接触点は、好適には外側ケーシングを鋳造するために使用される低い高温強度材料の安全作動限界よりも高い温度に達する恐れがある。例えば欧州特許出願公開第1586394号明細書に記載されているように、挿入体によって局所的な熱保護を提供することが知られているが、このような挿入体は多数の欠点を有する。例えば、一般的に支持領域に加えられる荷重に曝されると、挿入体は、鋳造部から分離する傾向が高まる。その結果、挿入体は、通常、支持領域としての使用には不適切である。
【0004】
外側ケーシングの支持領域における局所的な加熱の問題を克服するために用いられる典型的な解決手段は、外側ケーシング全体をより高い高温強度を有する材料から鋳造することである。これは、一般的に、鋳造をより困難にするとともに、不良率を高め、ひいては一般的に製造コストを増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1586394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内側ケーシング支持領域の局所的な加熱の問題及び/又は挿入体を高温の内側ケーシング支持領域としての使用に不適切にする挿入体設計の問題を克服する蒸気タービンケーシングシステムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、この問題を独立請求項の主体によって解決しようとしている。有利な実施形態は従属請求項に示されている。
【0008】
1つの態様は、内側ケーシングを包囲する外側ケーシングを有する蒸気タービンケーシングシステムを提供し、内側ケーシング自体はさらに動翼を包囲している。外側ケーシングは、支持領域を有する、第1の材料から形成された鋳造部を有しているのに対し、内側ケーシングは、支持領域と接触した接触面を有している。支持領域は、第1の材料よりも高い高温強度を有する第2の材料から形成された金属挿入体を有しているので、鋳造部よりも高い温度に耐えることができる。金属挿入体は、鋳造部に収容された収容された面を有している。この収容された面は、半径方向外方に関して、金属挿入体を鋳造部に固定する軸方向及び/又は周方向に拡開した部分を有しており、金属挿入体の"緩み"を阻止し、これにより、金属挿入体が、横方向荷重を含む加えられた荷重に耐えることを可能にしている。金属挿入体は、接触面と接触した支持面も有しており、この支持面は、接触面と関連して、内側ケーシングと鋳造部との間の分離を維持するように構成されている。この分離は、鋳造部の過熱を回避するための手段を提供する。金属挿入体はさらに、内側ケーシングと外側ケーシングとの相対移動を可能にしながら、接触面を支持面上で案内するための案内手段を有している。このような相対移動は、ケーシングの熱膨張又は熱収縮の間に生じることがある。
【0009】
金属挿入体の形状は、この金属挿入体が支持している内側ケーシングによって金属挿入体に加えられる力が金属挿入体を外側ケーシングから分離させないようになっている。このように、外側ケーシングをより高い高温強度を有するより高価な材料から鋳造する必要なく、局所的な加熱、及びベース材料と挿入体との間の結合強度の問題を克服するより高い高温強度を有する金属挿入体が提供される。
【0010】
本発明の別の態様及び利点は、例示及び例として発明の実施形態が開示されている添付の図面に関連した以下の説明から明らかになるであろう。
【0011】
例えば、本発明の実施形態を添付の図面に関連して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】典型的な支持システムを有する外側ケーシング及び内側ケーシングを示す蒸気タービンの断面図であり、図1a及び図1bは図1の一部の拡大図である。
【図2】典型的な金属挿入体を示す、図1の支持領域の拡大図である。
【図3】別の典型的な金属挿入体を示す、図1の支持領域の拡大図である。
【図4】さらに別の典型的な金属挿入体を示す、図1の支持領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
ここで本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。図面において、同一の符号は全図を通じて同じ部材を指すために使用されている。以下の説明において、説明の目的で、発明の十分な理解を提供するために多数の特定の詳細が示される。発明は、これらの特定の詳細なしに実施されてよいことが明らかである。
【0014】
この開示において、軸方向は、蒸気タービンの長手方向軸線の方向として規定され、この長手方向軸線を中心に蒸気タービンの動翼10が回転する。この長手方向軸線は、さらに、別の方向、例えば軸線に対して垂直な半径方向、及び軸線を中心とする方向の基準を提供する。
【0015】
さらに、"収容"の一般的な意味において、この開示における"収容"は、第1の特徴が、第1の特徴と接触した第2の特徴のあらゆる2つの表面箇所の間に引かれた直線内に仕切られているならば、第1の特徴が第2の特徴によって収容されているという特定の意味を有するように解釈される。
【0016】
図1は、典型的な蒸気タービンの断面図を示している。蒸気タービンは、鋳造部35を備えた外側ケーシング30を有している。ケーシング30は、内側ケーシング20の周囲に外側シェルを形成しているのに対し、内側ケーシング20はさらに動翼10を収容(encase)している。鋳造部35は、典型的な実施形態において、鋳造されるための能力のために選択された材料、例えばノジュラー鋳鉄から形成されている。このような材料の特性は、比較的低い高温強度を有するということである。この特性は、この材料を鋳造するのに適したものにしているが、高温蒸気タービンの幾つかの箇所において見られるような高温に曝されるには不適切にしている。
【0017】
鋳造部35は、内側ケーシング20を支持するための手段である支持領域5を有している。支持領域5は金属挿入体40を有しており、この金属挿入体40は、表面相互作用によって、内側ケーシング20の支持を提供し、鋳造部35と内側ケーシング20との接触を阻止している。接触を阻止することにより、鋳造部35の可能な過熱が回避される。金属挿入体が内側ケーシングに接触している時の金属挿入体40の熱損傷を回避するために、金属挿入体40は、鋳造部35よりも高い高温強度を有する材料から形成されている。典型的な実施形態において、この材料は、St460TS又はSt12Tのうちから選択された1つである。
【0018】
金属挿入体40は、収容された面41を規定するために鋳造部35によって収容された面を有している。図1a及び図2〜図4に示したように、収容された面41は、半径方向外方RODに関して、軸方向及び/又は周方向に拡開した部分42を有している。この拡開は、金属挿入体40を鋳造部35に保持する手段を提供する。
【0019】
図2から図4までは、それぞれ異なる配置の拡開部分を有する典型的な金属挿入体40を示している。例えば、図2が示す実施形態では、拡開部分42は、半径方向に沿ってウエスト領域を有する収容された面41によって形成されている。図3が示す択一的な実施形態では、拡開部分42は、金属挿入体40の半径方向遠位端部において、収容された面に設けられた軸方向及び/又は周方向突出部を形成している。図3に示された実施形態の変化態様として、図4は、収容された面41の半径方向に沿って途中に配置された、収容された面41に設けられた拡開部分42を示しており、この場合、金属挿入体40は概して三角形である。このような形状の金属挿入体40は、拡開部分42によってのみ支持領域5としての使用に適している。
【0020】
図1a〜図1bに示したように、金属挿入体40は、内側ケーシング20の接触面24と接触した支持面44を有している。この接触によって、内側ケーシング20は外側ケーシング30によって支持されている。接触面24に関連して、支持面44は、内側ケーシング20と外側ケーシング30の鋳造部35との間の分離距離を維持するように構成されている。これは、鋳造部35が過熱されないことを保証する。この文脈での"関連して"は、支持面44の特定の構成が、前記目的を達成するために接触面24の配置を考慮することを意味する。多くの接触面24の構成及び配置が可能であるので、いずれか1つの支持面44の構成が全般に適用可能であるわけではない。幾つかの可能な配置の典型的な実施形態が図1a及び図1bに示されている。
【0021】
図1aに示された典型的な実施形態では、接触面24及び支持面44はほぼ平坦である。支持面44の近くでは鋳造部35が金属挿入体40から半径方向に後退しているので、内側ケーシング20と鋳造部35との接触が回避されている。
【0022】
図1bに示された典型的な実施形態では、支持面44は、金属挿入体40に形成された溝46のベース47である。溝46によって、支持面44はボス25を収容するように構成されており、ボス25自体は、内側ケーシング20の接触面24の一部であるように構成されている。溝46の半径方向深さに関する、接触面ボス25の半径方向長さは、内側ケーシング20と鋳造部35との間の分離を維持する手段を提供している。図4は、接触面ボス25を収容することができる同様の溝46を備える典型的な実施形態も示している。
【0023】
各図に示したように、金属挿入体40の典型的な実施形態は、外側ケーシング30に対する内側ケーシング20の相対移動を可能にしながら接触面24を支持面44上で案内するための案内手段も有している。内側ケーシング20と外側ケーシング30との典型的な温度差により、案内手段は相対移動を完全に阻止しないことが重要である。さもないと、互いに異なる熱膨張率がケーシングに付加的な応力を生ぜしめる。さらに、移動を制限することによって、外側ケーシング30に対する内側ケーシング20の大体の位置を維持することができる。
【0024】
図1b及び図4に示された典型的な実施形態では、案内手段は、図1bに示したように溝46に収容された接触面ボス25を案内する溝46の側壁48である。典型的な実施形態において、制限された移動が、軸方向に延びた溝46によって可能にされている。これは、収容された接触面ボス25が、溝46内で軸方向に制限された範囲で移動することを可能にする。
【0025】
図1a、図2及び図3にそれぞれ示された典型的な実施形態では、案内手段は、金属挿入体40の半径方向内方に延びた部分を形成するボス45である。図1aに示したように、内側ケーシング20に形成された角と相補的に、これらの典型的な実施形態の案内手段は、支持面44上での接触面24の移動方向ベクトルのうちの1つを制限する。
【0026】
このような典型的な案内手段は、金属挿入体40に付加的な横方向荷重を加え、その結果、半径方向内向きのベクトル荷重成分を金属挿入体40に加える。これらの荷重の結果、金属挿入体40が鋳造部35から解離するリスクを回避又は少なくとも低減するために、案内手段を有する典型的な金属挿入体40は、本明細書において説明されかつ図示されたような典型的な拡開部分42を有していてよい。
【0027】
発明は、最も実用的な典型的実施形態であると考えられるものについて本明細書において示されかつ説明されたが、本発明はその他の特定の形態で実施できることが当業者によって認められるであろう。したがって、本明細書に開示された実施形態は、全ての観点から例示的でありかつ限定されないと考えられる。発明の範囲は、前記説明ではなく、添付の請求項によって示されており、請求項の意味及び範囲及び均等物に含まれる全ての変更が発明の包含されることが意図されている。
【符号の説明】
【0028】
5,5a,5b 支持領域、 10 動翼、 20 内側ケーシング、 24 接触面、 25 ボス、 30 外側ケーシング、 35 鋳造部、 40 金属挿入体、 41 収容された面、 42 拡開部、 44 支持面、 45 ボス、 46 溝、 47 ベース、 48 壁部、 ROD 半径方向外方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンケーシングシステムにおいて、
外側ケーシング(30)が設けられており、該外側ケーシング(30)が、第1の材料から形成された鋳造部(35)と、支持領域(5)とを有しており、
動翼(10)を収容するための、前記外側ケーシングによって包囲された、内側ケーシング(20)が設けられており、該内側ケーシング(20)が、支持領域(5)と接触している接触面(24)を有する形式ものにおいて、前記支持領域(5)に、
第1の材料よりも高い高温強度を有する第2の材料から形成された金属挿入体(40)が設けられており、該金属挿入体(40)が、鋳造部(35)に収容された収容された面(41)を有しており、該収容された面(41)が、半径方向外方(ROD)に関して、軸方向及び/又は周方向に拡開した部分(42)を有しており、さらに金属挿入体(40)が、
前記接触面(24)と接触する支持面(44)を有しており、該支持面(44)が、内側ケーシング(30)と鋳造部(35)との間の分離を維持するために、前記接触面(24)に関連して構成されており、
前記接触面(24)を支持面(44)上で案内するための案内手段を有していることを特徴とする、蒸気タービンケーシングシステム。
【請求項2】
前記接触面(24)が、ボス(25)を有している、請求項1記載のケーシングシステム。
【請求項3】
前記金属挿入体(40)が、接触面のボス(25)を収容するための溝(46)を有しており、該溝(46)が、支持面(44)として構成されたベース(47)と、案内手段として構成された2つの側壁(48)とを有している、請求項2記載のケーシングシステム。
【請求項4】
前記溝(46)が、軸方向に延びており、これにより、接触面のボス(25)が溝(46)に収容されている時に前記接触面のボス(25)の軸方向の移動を可能にしている、請求項3記載のケーシングシステム。
【請求項5】
前記溝(46)の半径方向深さに対する接触面のボス(25)の半径方向長さが、内側ケーシング(20)とケーシング(35)との間の分離を維持する手段を提供している、請求項3又は4記載のケーシングシステム。
【請求項6】
前記案内手段が、半径方向内方に延びたボス(45)である、請求項1記載のケーシングシステム。
【請求項7】
前記第1の材料が、ノジュラー鋳鉄である、請求項1から6までのいずれか1項記載のケーシングシステム。
【請求項8】
前記第2の材料が、St460TS又はST12Tのうちの1つである、請求項1から7までのいずれか1項記載のケーシングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94622(P2011−94622A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−241306(P2010−241306)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland