説明

蒸気タービン発電プラントの長期保管システム

【課題】
設備コストを低減可能な蒸気タービンと復水器の長期保管システムを提供する。
【解決手段】
既設の発電プラントに設けられている、制御用空気圧縮機10a、除湿機10b、空気だめ10cから構成された制御用圧縮空気供給設備からの乾燥圧縮空気を、制御用空気配管9から仮設制御用空気配管11bに分岐し、減圧弁15を介して、圧縮乾燥空気配管11aに供給し、調節弁13を介して高中圧タービン1に供給し、その後、低圧タービン2、復水器3を通過させ、真空破壊弁4より排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン発電プラントの長期保管システムに係り、特に、停止させた蒸気タービンと復水器の長期保管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントが長時間にわたり運転を停止する場合、錆びなどの発生を防止しながら運転開始に備えることを一般に「プラントの長期保管」と称している。発電プラントのボイラおよびプレボイラである高圧給水加熱器,脱気器,低圧給水加熱器,給水ポンプ,復水ポンプ,さらにこれらの機器をつなぐ配管等の保管方法に関しては、一般に、1)満水保管方法,2)蒸気シール方法,3)窒素シール方法,4)自然乾燥保管方法が知られている。実際には、停止期間と機器使用材質により、上記1),2),3),4)を適宜組合せて行われている。一方、蒸気タービン本体に関しては、自然乾燥保管を行っているのが一般である。保管方法としては、窒素シール法は防錆効果が高いが、タービングランド部から窒素ガスが漏洩するため、窒素シールは採用されていない。しかし、自然乾燥保管の場合、蒸気タービン内の湿度は大気条件に左右され、高湿度の場合、タービン内部にて結露が生じる可能性が高い。
【0003】
蒸気タービン本体の防錆効果が高く、しかも、運用の容易な蒸気タービンの乾燥保管方法および装置として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1では、蒸気を導入する蒸気導入部と、導入された蒸気を排出する蒸気排出部を有し、この蒸気導入部から導入した蒸気によって駆動されるとともに、低圧タービンを含む蒸気タービンの乾燥保管方法について、蒸気導入部から空気を吸引し、乾燥した外気を蒸気排気部側から吸入し、最初に低圧タービンに乾燥した空気を供給して、蒸気タービンを乾燥保管するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3961407号公報(特開2004-169618号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乾燥空気による蒸気タービンの乾燥保管方法では、乾燥空気を生成するために、空気乾燥機(除湿機)が必要となる。蒸気タービンの長期停止は、例えば、2年に1度程度のようにそれほど頻繁に行われないため、空気乾燥機(除湿機)は仮設の設備となり、設備コストが生じる。例えば、高中圧タービンと低圧タービンの除湿容量は、それぞれ約15m/h、1000m/h程度である。従って、この除湿容量に対応する除湿機を不要とすることができれば、設備コストを大幅に低減することができる。
【0006】
本発明の目的は、設備コストを低減可能な蒸気タービンと復水器の長期保管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、発電プラントにおける既設の制御用圧縮空気供給設備を用い、この制御用圧縮空気供給設備からの乾燥空気を用いて蒸気タービンと復水器とを乾燥保管するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、改めて除湿機を準備する必要がないので、蒸気タービンと復水器の長期保管システムの設備コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、発電プラントにおける既設の制御用圧縮空気供給設備を用いた乾燥空気によるタービンと復水器の長期保管方法を示すシステム図。
【図2】本発明の他の実施例であるタービンと復水器の長期保管方法を示すシステム図。
【図3】本発明の他の実施例であるタービンと復水器の長期保管方法を示すシステム図。
【図4】発電プラントにおける既設の制御用圧縮空気供給設備とその圧縮空気の供給先の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0011】
既設の発電プラントには、制御用圧縮空気供給設備が設けられている。即ち、発電プラントでは、発電プラントの各所に設置された空気作動弁の駆動源として圧縮空気を供給するようになっている。図4に示すように、制御用空気圧縮機10aで圧縮された空気は除湿機10bで除湿され、空気だめ10cを介して、発電プラント各所(タービン建屋、ボイラ設備、水処理設備)へ供給され、例えば、タービンバイパススプレー調節弁、HPヒータ(高圧給水加熱器)レベル調節弁、BFP(ボイラ給水ポンプ)起動用給水流量調節弁、C(コールド)起動用BFP給水流量調節弁などの駆動源として用いられる。
【0012】
蒸気タービン発電プラント設備の長期保管が要求される、発電所長期停止時においては、上述の空気作動弁を作動させる必要がないため、制御用空気圧縮機10aは供給力過多となる。但し、制御用空気圧縮機10aは空気作動弁の駆動源のみでなく、発電所作業用空気供給源としての役割も有しているため、停止する事はできない。本発明はこの点に着目し、制御用空気圧縮機10aからの空気を蒸気タービン発電プラント設備の長期保管用として用いることで、発電所長期停止に伴う余剰圧縮空気を効率よく活用するようにしたものである。
【実施例1】
【0013】
次に図1を用いて本発明の一実施例(実施例1)を説明する。図1は発電プラントにおける既設の制御用圧縮空気供給設備を用いた乾燥空気によるタービンと復水器の長期保管方法を示す。なお、ボイラ、主蒸気管、低温再熱管、復水ポンプ、給水加熱器や給水ポンプ等の給水系等は図示を省略している。
【0014】
制御用圧縮空気供給設備は、制御用空気圧縮機10aと除湿器10bと空気だめ10cから構成されている。即ち、制御用空気圧縮機10aによって圧縮された空気は、除湿機10bで水分を除去され、空気だめ12aへ送られ、圧力と流量の変動が緩和される。制御用圧縮空気供給設備からの乾燥圧縮空気は、制御用空気配管9と止め弁12を介して発電所各所に供給されている。制御用圧縮空気供給設備からの乾燥圧縮空気は例えば湿度40%以下の乾燥空気になっている。
【0015】
本実施例では、制御用圧縮空気供給設備からの乾燥圧縮空気を、制御用空気配管9から仮設制御用空気配管11bに分岐し、減圧弁15を介して、圧縮乾燥空気配管11aに供給し、調節弁13を介して高中圧タービン1に供給するようにしている。即ち、吐出部において相対湿度を十分低下させた空気が、仮設乾燥空気供給配管10bを通して、減圧弁15より系統内へ送りこまれるようになっている。乾燥空気は高中圧タービン1を通過した後、クロスオーバー管11cを介して低圧タービン2に導入され、復水器3を経由して真空破壊弁4を通り、外部へ排出される。本実施例において乾燥保管される機器は、高中圧タービン1、低圧タービン2、復水器3である。他の小系統との間の密閉は適切な止め弁の閉止または仮設の冶具により遮断を行う。ここでは、図示を省略した再熱蒸気弁と主蒸気弁を閉止することにとり、他の小系統から隔離されるようになっている。
【0016】
このように、本実施例では、既設の制御用圧縮空気供給設備から仮設制御用空気配管11bを分岐し、タービンに乾燥空気を供給するようにしている。乾燥空気は高中圧タービン1、低圧タービン2、復水器3を通り、最終の復水器3から真空破壊弁4より排出され、以降、このサイクルが保管期間繰り返される。
【0017】
本実施例では、制御用圧縮空気供給設備を蒸気タービンの乾燥保管用の乾燥空気供給源として兼用し、蒸気タービン及び復水器に乾燥空気の供給を行なうようにしているので、蒸気タービンの乾燥保管用の乾燥空気供給源として改めて除湿機を準備する必要がなく、蒸気タービンと復水器の長期保管システムの設備コストを低減でき、また、従来と同等の防錆効果を発揮することができる。また、窒素を用いた保管に比べて、安全かつメンテナンス性に優れている。
【実施例2】
【0018】
次に、図2を用いて本発明の他の実施例(実施例2)を説明する。本実施例は、実施例1に記載した乾燥保管方法において、相対湿度計を適宜の箇所に設置して湿度測定し、湿度が所定値以下となった場合のみ制御用圧縮空気供給設備から乾燥空気を供給する運転を行うものである。
【0019】
図2において、図1と同じ符号のものは図1と同じであり、説明を省略する。本実施例では、例えば、高中圧タービン1を通過後の湿度を測定するため、クロスオーバー管11cに相対湿度計17aを設置し、低圧タービン2と復水器3を通過した後の湿度を測定するために、真空破壊弁4の前に相対湿度計17bを設置している。
【0020】
鋼は一般的に、相対湿度が60〜100%の場合の腐食速度は、30〜50%のときの100〜2000倍になる。従って、相対湿度計17aと相対湿度計17bにより相対湿度を測定し、相対湿度が50%以上となった場合のみ制御用圧縮空気供給設備から乾燥空気を供給する運転を行う。発電所各所に圧縮空気を供給する必要がないときには、制御用圧縮空気供給設備の運転は、相対湿度が50%以上となった場合のみ運転する。これによって、実施例1の効果に加えて、運転コストを抑えて蒸気タービンと復水器を長期乾燥保管することができる。
【0021】
また、本実施例では、実施例1に示す減圧弁を省略している。発電所各所に圧縮空気を供給する必要がない場合には、制御用空気圧縮機10aの吐出圧力をコントロールすることで減圧弁を不要とすることができ、設備コストを更に抑えることができる。
【実施例3】
【0022】
次に、図3を用いて本発明の他の実施例(実施例3)を説明する。本実施例は、実施例1に記載した乾燥保管方法において、高中圧タービンと低圧タービンそれぞれを独立して温度管理ができるようにしたものである。
【0023】
図3において、図1と同じ符号のものは図1と同じであり、説明を省略する。本実施例では、圧縮乾燥空気配管11a(又は仮設制御用空気配管11b)とクロスオーバー管11cとを結ぶバイパス管11dを設け、バイパス管11dに調節弁13を設けている。実施例2と同様に、クロスオーバー管11cに相対湿度計17aを設置し、真空破壊弁4の前に相対湿度計17bを設置しても良い。適宜の箇所に設置された調節弁により、高中圧タービン1、低圧タービン2を、それぞれ独立して温度管理を実施することができる。
【符号の説明】
【0024】
1・・・高中圧タービン、2・・・低圧タービン、3・・・復水器、4・・・真空破壊弁、9・・・制御用空気配管、10a・・・制御用空気圧縮機、10b・・・除湿機、10c・・・空気だめ、11a・・・圧縮乾燥空気配管、11b・・・仮設制御用空気配管、11c・・・クロスオーバー管、11d・・・バイパス管、12・・・止め弁、13・・・調節弁、14・・・調節弁、15・・・減圧弁、17a,17b・・・相対湿度計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントの運転を停止し、停止させた蒸気タービンと復水器の長期保管する蒸気タービン発電プラントの長期保管システムにおいて、
前記発電プラントにおける既設の制御用圧縮空気供給設備を用い、この制御用圧縮空気供給設備からの乾燥空気を用いて前記蒸気タービンと前記復水器とを乾燥保管することを特徴とする蒸気タービン発電プラントの長期保管システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御用圧縮空気供給設備からの乾燥空気を、減圧弁を介して前記蒸気タービンと前記復水器に供給することを特徴とする蒸気タービン発電プラントの長期保管システム。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御用圧縮空気供給設備における空気圧縮機の吐出圧力をコントロールし、前記制御用圧縮空気供給設備からの乾燥空気を前記蒸気タービンと前記復水器に供給することを特徴とする蒸気タービン発電プラントの長期保管システム。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記乾燥空気が通過する箇所に相対湿度計を設け、該相対湿度計にて測定した湿度が所定値以下となった場合に前記制御用圧縮空気供給設備を運転することを特徴とする蒸気タービン発電プラントの長期保管システム。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかにおいて、
前記蒸気タービンは高圧タービンと低圧タービンとから構成され、前記制御用圧縮空気供給設備からの乾燥空気を、前記高圧タービン、前記低圧タービン、前記復水器の順に供給するラインを設けるとともに、前記高圧タービンをバイパスして前記低圧タービンに前記制御用圧縮空気供給設備からの乾燥空気を供給するラインを設けたことを特徴とする蒸気タービン発電プラントの長期保管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76356(P2013−76356A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216176(P2011−216176)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)