説明

蒸気式吸入器

【課題】 息づきや噴霧の停止がなく、電源投入後から噴霧開始までの時間を短くすると共に、最後まで安定した噴霧状態を確保し、しかも湯滴がノズルから直接噴出しないようにした蒸気式吸入器を提供する。
【解決手段】 蒸気式吸入器は、給水タンク10、加熱室12、ヒータ11、ノズル17を備える蒸気発生装置を配備してなる。給水タンク10の底部と加熱室12の下部が1個の給水口15で連通し、給水タンク10の上部と加熱室12の上部が2個の蒸気連通口16で連通する。給水口15はヒータ側から見て加熱室12の下部の中央に位置し、2個の蒸気連通口16はヒータ側から見て加熱室12の上部の両側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気圧を利用して液体を吸い上げ噴霧する蒸気式吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蒸気式吸入器として、例えば図12に示すように、給水タンク70と、この給水タンク70の側方に配置されたヒータ71と、給水タンク70とヒータ71との間に設けられ、下部が給水タンク70の底部に給水路72で連通し、上部が給水タンク70の上部に蒸気連通路73で連通する加熱室74と、この加熱室74で発生した蒸気を外部に噴出するノズル75とを備える蒸気発生装置を配備してなり、この蒸気発生装置のノズル75から噴出される蒸気により吸入液を吸い上げて噴霧するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような蒸気式吸入器では、電源投入後から噴霧が開始されるまでの時間を短くするために、給水タンク70をタンク室76と加熱室74に距離を置いて分離した構造になっている。即ち、タンク室76内の水をヒータにより加熱するのではなく、タンク室76内の水を加熱室74に導入し、加熱室74でヒータにより加熱するようになっている。
【特許文献1】特開平7−39585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような蒸気式吸入器では、噴霧の効率を良くするためには加熱室74の容量を多くして沸騰量を増やす必要があるが、この場合は噴霧開始までの時間が長くなるという問題点がある。また、加熱室74の容量を多くした場合、加熱室74で沸騰させる水量が多くなるため、例えば途中で通電パワーを半減すると水が沸き難くなり、息づきを起こし易くなる。更に、沸騰量を増やすと、蒸気に熱湯(湯滴)が混ざる可能性が高くなるが、上記のような蒸気式吸入器では、蒸気連通路73が1つであり、この1つの蒸気連通路73とノズル75との位置関係から、湯滴がノズル75から直接噴出し易くなる。
【0005】
従って、本発明は、そのような問題点に着目してなされたもので、息づきや噴霧の停止がなく、電源投入後から噴霧開始までの時間を短くすると共に、最後まで安定した噴霧状態を確保し、しかも湯滴がノズルから直接噴出しないようにした蒸気式吸入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の蒸気式吸入器は、給水タンクと、下部が給水タンクの底部に連通し、上部が給水タンクの上部に連通する加熱室と、この加熱室内の水を加熱するために加熱室に付設されたヒータと、加熱室で発生した蒸気を外部に噴出するノズルとを備える蒸気発生装置を配備してなるものにおいて、給水タンクの底部と加熱室の下部が1個の給水口で連通し、この給水口がヒータ側から見て加熱室の下部の中央に位置し、給水タンクの上部と加熱室の上部が2個の蒸気連通口で連通し、この2個の蒸気連通口がヒータ側から見て加熱室の上部の両側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2個の蒸気連通口がヒータ側から見て加熱室の上部の両側に位置するため、2個の蒸気連通口とノズルとの位置関係により、蒸気連通口から給水タンク内に進入した蒸気がノズルに直接向かわずに、給水タンクの内壁に一旦当たるようになるので、蒸気連通口からの蒸気に混じった熱湯(湯滴)がノズルから直接噴出することを防止できる。
また、息づきや噴霧の停止がなく、電源投入後から噴霧開始までの時間を短くすると共に、最後まで安定した噴霧状態を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の蒸気式吸入器を実施形態に基づいて説明する。但し、本発明は蒸気式吸入器に配備される蒸気発生装置に特徴があるため、蒸気発生装置を中心に説明する。
【0009】
まず、蒸気発生装置の要部断面図を図1に示す。この蒸気発生装置は、給水タンク10と、この給水タンク10の側部10aに配置されたヒータ11と、給水タンク10とヒータ11との間に設けられ、下部が給水タンク10の底部に連通し、上部が給水タンク10の上部に連通する加熱室12と、この加熱室12で発生した蒸気を外部に噴出するノズル(図1では図示せず)とを備える。
【0010】
特徴的な構成は、給水タンク10の側部10aに上下方向に延びる凹部13を形成し、この凹部13にヒータ11を上下方向に配置し、側部10aとヒータ11との間に形成される空間を加熱室12としたことである。即ち、加熱室12は側部10aとヒータ11で包囲された空間であり、この加熱室12が側部10aによりタンク室14と仕切られ、ヒータ11が側部10aに沿って付設された様態である。給水タンク10のタンク室14と加熱室12とは、側部10aの底部に形成された給水口15で連通すると共に、側部10aの上部に形成された蒸気連通口16で連通する。
【0011】
このような蒸気発生装置では、タンク室14内の水Wは、給水口15を通じて加熱室12に流入し、ヒータ11で加熱・沸騰され、発生した蒸気は、蒸気連通口16を通じてタンク室14に入り、更に給水タンク10の上部適所に設けられたノズル(図3の符号17参照)から装置外部に噴出される。
【0012】
このような蒸気発生装置は、加熱室12とヒータ11が省スペース的に設けられた構造であるため、図2の(a)に示すように小型化することができる。これに対し、図12に示すような従来の装置は、図2の(b)の如く加熱室とヒータ11が給水タンク10から離れて配置されているため、小型化の点で不利である。なお、図2中の符号17はノズルである。
【0013】
又、給水口15と蒸気連通口16は、共に側部10a(即ち給水タンク10の側壁)に孔を開けただけのものであるため、図12に示す従来の装置における給水路72や蒸気連通路73に比べて、それぞれ距離a,bが相当短い。従って、水が最後まで効率良く蒸発する。しかも、噴霧後に給水口15に水は残り難く、給水口15が水垢等で詰まることもない。又、蒸気連通口16での熱的損失も少なく、熱効率が良い。更に、この実施例では、加熱室12の奥行き(ヒータ11と給水タンク10の側部10aとの間隔)は、上下方向に変化しており、下部から中央部付近までの間隔C1が中央部付近から上部までの間隔C2より大きく設定されているが、この点については次に説明する。
【0014】
加熱室12の奥行きを上下方向に変化させる種々の具体例を図3〜図6に示す。まず、図3の(a)はヒータ付きの蒸気発生装置の要部断面図を示し、図3の(b)はヒータを外した状態の蒸気発生装置をヒータ側から見た側面図を示す。図3の例は、加熱室12の奥行きを階段状に変化させたものであり、図1と同様に、給水口15から中央部付近までの奥行きより中央部付近から蒸気連通口16までの奥行きが狭く、加熱室12の断面形状は2段構造になっている。ここでは、給水口15は側部10aの底部のほぼ中央に形成され、蒸気連通口16は側部10aの上部の両側に2つ形成されている。又、給水タンク10のタンク室14の底部は、加熱室12(即ち給水口15)に向かって下方に緩やかに傾斜している。
【0015】
図4に示す例は、加熱室12の奥行きをテーパ状に変化させたものである。即ち、加熱室12は底部から上部に向かって連続的に狭くなっている。図5に示す例では、加熱室12の断面形状は2段構造になっているが、中央部付近から蒸気連通口16より内側部分10a−1のみがその他の部分10a−2より狭くなっている。更に、図6に示す例では、加熱室12の断面形状は3段構造になっているが、真中に最も奥行きの狭い部分が設けられている。
【0016】
上記図3〜図6の例は、いずれも加熱室12の少なくとも給水口15付近の奥行きより、それよりも上方の部分の奥行きが狭くなっていると共に、タンク室14の底部が加熱室12に向かって下方に傾斜している。加熱室12の上部より下部が広くなっているため、加熱室12の下部で沸き始めた水は上部で加速的に再加熱されて蒸気が発生し、効率が良い。又、タンク室14内の水位が低下しても、息づき等の霧化不安定な状態にならない程度の水量を最後まで確保できる。
【0017】
ヒータ11は、図7に示すように、給水タンク10の側部10aに沿って上下に配置された2枚の発熱素子21,22を有し、発熱素子21が加熱室12の上部に、発熱素子22が加熱室12の下部に対応する。このヒータ11は、その周囲に形成された8つの取付孔23a,24aに例えばネジを通し、給水タンク10に形成された対応孔23b,24bに螺合することで、側部10aに固定される。図8において、ヒータ11に対する通電切替に利用されるサーモスタット30は、断熱シート31を介してヒータ11にネジ32で固定された伝熱板33上に取付けてもよいし、或いはヒータ11上に直接取付けても構わない。なお、断熱シート31としては、熱を少し伝え難くしてサーモスタット30への熱供給を調整するものであればよく、準断熱シート、軽断熱シート、少断熱シート等を含む。
【0018】
ヒータ11、サーモスタット30等からなる回路構成例を図9に示す。この回路では、AC100V35の一方側において、ヒータ11の下部の発熱素子22が直接接続され、上部の発熱素子21がサーモスタット30を介して接続され、他方側において、ヒューズ36を介して2回路・3接点の通電切替スイッチ37が接続されている。通電切替スイッチ37の接点P1は喉吸入時用であり、接点P2は鼻吸入時用である。この回路によると、スイッチ37を喉吸入時用の接点P1にしておき、電源を投入すると、サーモスタット30のON/OFFにかかわらず、発熱素子21,22が通電される。一方、スイッチ37を鼻吸入時用の接点P2にしておき、電源を投入すると、最初はサーモスタット30のON状態で発熱素子21,22に通電されるが、ヒータ11の温度が上昇してサーモスタット30がOFF状態になると、上部の発熱素子21がOFFになり、ヒータ11への通電パワーが半減する。
【0019】
この図9のような回路でヒータ11に通電した場合のヒータ表面温度と通電時間との関係を図10に示す。喉吸入時には、噴霧量の多い勢いのよい霧で短時間の吸入が可能であり、鼻吸入時には、噴霧量の少ない柔らかい霧で長時間の吸入が可能となる。
【0020】
次に、上記の如き蒸気発生装置を組み込んだ蒸気式吸入器全体の構造を図11(要部断面図)に示す。ここでは、吸入器の本体ケース40の所定箇所に、蒸気発生装置1が固定され、給水タンク10には、タンク室14の蒸気圧が異常に高くなった場合に蒸気圧を逃すためのコイルバネ46と安全弁47を有するキャップ41が嵌着されている。蒸気発生装置1(即ち給水タンク10)から突出するノズル(蒸気ノズル)17は、本体ケース40に着脱可能に配置された吸入液カップ42内に延びるチューブ43の端部に取付けられた吸入ノズル44と隣接対向しており、吸入液カップ42内には吸入液が収容される。両ノズル17,44は、噴霧ガイド45内に位置決めされている。
【0021】
蒸気発生装置1で発生した蒸気は、その蒸気圧により蒸気ノズル17から噴出する。この時、吸入ノズル44の先端は負圧になるため、吸入液カップ42内の吸入液は、チューブ43を通じて吸い上げられ、蒸気ノズル17からの蒸気圧により霧状になり、噴霧ガイド45から噴霧される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施例に係る蒸気発生装置の要部断面図である。
【図2】同実施例の蒸気発生装置の上面図(a)、及び比較としての従来の蒸気発生装置の上面図(b)である。
【図3】蒸気発生装置における給水タンク側部の断面形状の第1の例を示す要部断面図(a)、及びヒータを外した状態の蒸気発生装置をヒータ側から見た側面図(b)である。
【図4】同じく給水タンク側部の断面形状の第2の例を示す要部断面図(a)、及びヒータを外した状態での側面図(b)である。
【図5】同じく給水タンク側部の断面形状の第3の例を示す要部断面図(a)、及びヒータを外した状態での側面図(b)である。
【図6】同じく給水タンク側部の断面形状の第4の例を示す要部断面図(a)、及びヒータを外した状態での側面図(b)である。
【図7】蒸気発生装置におけるヒータの正面図である。
【図8】ヒータへのサーモスタットの取付例を示す側面図である。
【図9】ヒータやサーモスタット等からなる回路図である。
【図10】図9に示す回路によって得られる喉吸入時と鼻吸入時における通電時間とヒータ表面温度との関係を示す図である。
【図11】蒸気発生装置を組み込んだ蒸気式吸入器の一例を示す要部断面図である。
【図12】従来例に係る蒸気発生装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 給水タンク
10a 側部
11 ヒータ
12 加熱室
13 凹部
15 給水口
16 蒸気連通口
21,22 発熱素子
30 サーモスタット
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水タンクと、下部が給水タンクの底部に連通し、上部が給水タンクの上部に連通する加熱室と、この加熱室内の水を加熱するために加熱室に付設されたヒータと、加熱室で発生した蒸気を外部に噴出するノズルとを備える蒸気発生装置を配備してなる蒸気式吸入器において、
前記給水タンクの底部と加熱室の下部は1個の給水口で連通し、この給水口はヒータ側から見て加熱室の下部の中央に位置し、前記給水タンクの上部と加熱室の上部は2個の蒸気連通口で連通し、この2個の蒸気連通口はヒータ側から見て加熱室の上部の両側に位置することを特徴とする蒸気式吸入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−236993(P2007−236993A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169913(P2007−169913)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【分割の表示】特願2003−386213(P2003−386213)の分割
【原出願日】平成7年6月2日(1995.6.2)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)