説明

蒸気発生器の補助給水弁制御装置

【課題】補助給水系の補助給水弁による水位制御を自動で行うこと。
【解決手段】蒸気発生器に二次冷却水を供給する主給水系の保護として設けられた補助給水系において、当該補助給水系の補助給水弁123を作動させる蒸気発生器の補助給水弁制御装置であって、蒸気発生器内の二次冷却水の水位を検出する水位検出手段125と、予め設定された目標水位と、水位検出手段125で検出された水位との偏差を算出する水位偏差算出手段3と、水位の偏差に応じて補助給水弁123の開度を設定する弁動作設定手段4と、弁動作設定手段4の設定に応じて補助給水弁123を駆動するための信号を出力する弁駆動手段5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)において、蒸気発生器に二次冷却水を供給する主給水系の保護として設けられた補助給水系に係り、当該補助給水系における補助給水弁を作動させて給水の流量を制御する蒸気発生器の補助給水弁制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載の蒸気発生器への給水流量制御方法では、蒸気発生器の二次冷却水の水位を維持するため、プログラムに従って制御される主給水系を有している。この主給水系は、補助給水系によってバックアップされ主給水系が最低水位を維持できなくなった場合、自動的に補助給水系に切り換えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−96405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、補助給水系は、上述した特許文献1に記載されているように、最小限度の制御装置しか備えていない保護系であるため、プログラムされた手順に従い水位を維持すべく蒸気発生器に対する給水の流量を自動的に調整することはしない。ここで、最小限度の制御装置しか備えていない保護系とは、補助給水弁の制御において、開/閉の信号しか出力せず、開の信号がONのときだけ開方向に所定速度で制御し、閉の信号がONのときだけ閉方向に所定速度で制御するもので、補助給水弁の開度を水位などによってフィードバック制御しないものである。
【0005】
このため、補助給水弁は、オペレータによる手動操作で蒸気発生器の水位がある変動幅内に収まるよう制御している。この補助給水弁による蒸気発生器の水位制御は、プラント出力状態から事故発生時のプラント停止操作時に行うため、並行して他の機器の操作や計器の監視も頻繁に行う必要があり、オペレータの負担が大きい。そのため、補助給水弁による蒸気発生器の水位制御を自動で行う要望がある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、補助給水系の補助給水弁による水位制御を自動で行うことのできる蒸気発生器の補助給水弁制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、蒸気発生器に二次冷却水を供給する主給水系の保護として設けられた補助給水系において、当該補助給水系の補助給水弁を作動させる蒸気発生器の補助給水弁制御装置であって、前記蒸気発生器内の二次冷却水の水位を検出する水位検出手段と、予め設定された目標水位と、前記水位検出手段で検出された水位との偏差を算出する水位偏差算出手段と、前記水位の偏差に応じて前記補助給水弁の開度を設定する弁動作設定手段と、前記弁動作設定手段の設定に応じて前記補助給水弁を駆動するための信号を出力する弁駆動手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、補助給水弁をオペレータの操作によらず作動させ、蒸気発生器内の二次冷却水の水位制御を自動で行うことができる。
【0009】
また、本発明の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、前記弁動作設定手段は、予め計測された前記補助給水弁の開閉作動速度に基づき、設定された前記補助給水弁の開度に応じて前記補助給水弁の駆動時間を設定することを特徴とする。
【0010】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、補助給水弁の開閉作動速度に基づいて、設定された補助給水弁の開度とするための補助給水弁の駆動時間を設定するため、補助給水弁の性能に応じて補助給水弁の開度制御を行うことができる。
【0011】
また、本発明の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、前記補助給水弁が、単位時間あたりの開閉作動回数を規定されており、前記弁動作設定手段は、予め計測された前記補助給水弁の開閉作動速度に基づき、設定された前記補助給水弁の開度に応じて前記補助給水弁の駆動時間を設定し、この設定された前記補助給水弁の駆動時間、および前記補助給水弁の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて前記補助給水弁の駆動周期を設定することを特徴とする。
【0012】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、例えば、設定された補助給水弁の駆動時間が比較的短い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的小さい場合)、補助給水弁の駆動周期を長く(駆動回数を少なく)する。このため、より速く目標水位に達するように水位制御ができる。一方、例えば、設定された補助給水弁の駆動時間が比較的長い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的大きい場合)、補助給水弁の駆動周期を短く(駆動回数を多く)する。このため、より開度調整を細かくして、水位を安定させながら目標水位に達するように水位制御ができる。このように、設定された補助給水弁の駆動時間、および補助給水弁の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁の駆動周期を設定することで、目標水位に達するまでに適した水位制御を行うことができる。
【0013】
また、本発明の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、前記補助給水弁が、単位時間あたりの開閉作動回数、および単位時間内での延べ作動時間を規定されており、前記弁動作設定手段は、予め計測された前記補助給水弁の開閉作動速度に基づき、設定された前記補助給水弁の開度に応じて前記補助給水弁の駆動時間を設定し、この設定された前記補助給水弁の駆動時間、および前記補助給水弁の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて前記補助給水弁の駆動周期を設定し、この設定された前記補助給水弁の駆動周期、および前記補助給水弁の単位時間内での延べ作動時間に応じて1駆動周期あたりの最長駆動時間を設定することを特徴とする。
【0014】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、例えば、設定された補助給水弁の駆動時間が比較的短い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的小さい場合)、補助給水弁の駆動周期を長く(駆動回数を少なく)し、1駆動周期あたりの最長駆動時間を比較的長くする。このため、より速く目標水位に達するように水位制御ができる。一方、例えば、設定された補助給水弁の駆動時間が比較的長い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的大きい場合)、補助給水弁の駆動周期を短く(駆動回数を多く)し、1駆動周期あたりの最長駆動時間を比較的短くする。このため、より開度調整を細かくして、水位を安定させながら目標水位に達するように水位制御ができる。このように、設定された補助給水弁の駆動時間、および補助給水弁の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁の駆動周期を設定し、この設定された補助給水弁の駆動周期、および補助給水弁の単位時間内での延べ作動時間に応じて1駆動周期あたりの最長駆動時間を設定することで、目標水位に達するまでに適した水位制御を行うことができる。
【0015】
また、本発明の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、前記弁動作設定手段は、前記補助給水弁の開度に応じた水位時間応答情報を予め取得し、設定された前記補助給水弁の開度から逆応答による前記水位への応答を近似した非最小位相系伝達関数内のパラメータを、前記水位時間応答情報に基づいて決定し、パラメータが決定された前記非最小位相系伝達関数の周波数特性のゲイン余裕および位相余裕を勘案して、前記補助給水弁の開度を設定することを特徴とする。
【0016】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、逆応答に応じた補助給水弁の開度を設定することで、逆応答時の水位の変動を抑えることができる。
【0017】
また、本発明の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、前記弁動作設定手段は、前記水位時間応答情報に含まれる前記蒸気発生器内の二次冷却水の異なる温度条件において、前記補助給水弁の開度をそれぞれ求め、その最小量を選択することを特徴とする。
【0018】
蒸気発生器内の二次冷却水の温度が高い場合は、補助冷却水との温度差が大きく最大逆応答量が大きくなり、かつ補助冷却水の供給量が多いと最大逆応答量はさらに大きくなる。したがって、この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、温度条件を伴う逆応答に応じた補助給水弁の開度を最小量に設定することで、温度差が大きい場合であっても逆応答時の水位の変動を抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、補助給水系の補助給水弁による水位制御を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、原子力発電プラントの一例を示す概略構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る補助給水弁制御装置のブロック図である。
【図3】図3は、逆応答概念図である。
【図4】図4は、補助給水弁制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0022】
図1は、原子力発電プラントの概略構成図である。図1に示すように、原子力発電プラントは、原子炉格納容器100内において、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)101、加圧器102、蒸気発生器103および一次冷却水ポンプ104が、一次冷却水管105により順次接続されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。
【0023】
蒸気発生器103は、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。そして、入口側水室103aは、入口側の一次冷却水管105が接続され、出口側水室103bは、出口側の一次冷却水管105が接続されている。また、蒸気発生器103は、管板103dによって区画された上部側の上端に、出口側の二次冷却水管106aが接続され、上部側の側部に、入口側の二次冷却水管106bが接続されている。
【0024】
また、原子力発電プラントは、蒸気発生器103が、原子炉格納容器100外で二次冷却水管106a,106bを介して蒸気タービン107に接続されて、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0025】
蒸気タービン107は、高圧タービン108および低圧タービン109を有すると共に、発電機110が接続されている。また、高圧タービン108および低圧タービン109は、湿分分離加熱器111が、二次冷却水管106aから分岐して接続されている。また、低圧タービン109は、復水器112に接続されている。この復水器112は、二次冷却水管106bに接続されている。二次冷却水管106bは、上述したように蒸気発生器103に接続され、復水器112から蒸気発生器103に至り、復水ポンプ113、低圧給水加熱器114、脱気器115、主給水ポンプ116、高圧給水加熱器117および主給水弁118が設けられている。
【0026】
従って、原子力発電プラントでは、一次冷却水が加圧水型原子炉101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換後の冷却した一次冷却水は、一次冷却水管105を介して一次冷却水ポンプ104側に回収され、加圧水型原子炉101に戻される。一方、熱交換により蒸気となった二次冷却水は、蒸気タービン107に供給される。蒸気タービン107に係り、湿分分離加熱器111は、高圧タービン108からの排気から湿分を除去し、さらに加熱して過熱状態とした後に低圧タービン109に送る。蒸気タービン107は、二次冷却水の蒸気により駆動され、その動力が発電機110に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、復水器112に排出される。復水器112は、取水管112aを介してポンプ112bにより取水した冷却水(例えば、海水)と、低圧タービン109から排出された蒸気とを熱交換し、当該蒸気を凝縮させて低圧の飽和液に戻す。熱交換に用いられた冷却水は、排水管112cから排出される。また、凝縮された飽和液は、二次冷却水となり、復水ポンプ113によって二次冷却水管106bを介して復水器112の外部に送り出される。さらに、二次冷却水管106bを経る二次冷却水は、低圧給水加熱器114で、例えば、低圧タービン109から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器115で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、主給水ポンプ116により送水され、高圧給水加熱器117で、例えば、高圧タービン108から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器103に戻される。ここで、二次冷却水を蒸気発生器103に給水する系統を主給水系という。主給水系は、蒸気発生器103の二次冷却水の水位を維持するため、主給水ポンプ116や主給水弁118などが制御される。
【0027】
このような原子力発電プラントでは、主給水系において蒸気発生器103における二次冷却水の水位が維持できない場合、当該水位を維持するために補助給水系が設けられている。補助給水系は、二次冷却水管106bにおける主給水弁118の後段に接続された補助給水管120と、補助給水ピット121に貯留された補助冷却水(例えば、復水器112で凝縮された飽和液)を補助給水管120に供給する補助給水ポンプ122と、補助給水管120を経て蒸気発生器103に至る補助冷却水の流量を調整する補助給水弁123とを有している。なお、補助給水系は、プラントの通常運転時に補助給水弁123が開放され、補助給水ポンプ122の駆動によって補助冷却水を蒸気発生器103に供給できるような安全側に設定されており、プラントの通常運転時において二次冷却水管106bから補助給水管120に二次冷却水が流入することを防ぐため、補助給水管120における補助給水弁123の前段に逆止弁124が設けられている。すなわち、補助給水系では、主給水系において蒸気発生器103における二次冷却水の水位が維持できない場合、補助給水ポンプ122を駆動することによって補助冷却水を蒸気発生器103に供給する。
【0028】
そして、本実施の形態では、上述した補助給水系において補助給水弁123を制御する補助給水弁制御装置を備えている。図2は、本実施の形態に係る補助給水弁制御装置のブロック図である。補助給水弁制御装置は、蒸気発生器103内の二次冷却水の水位を検出する水位検出手段125を有している。また、補助給水弁制御装置は、水位検出手段125で検出された水位に基づいて補助給水弁123を制御する制御手段1を有している。
【0029】
制御手段1は、マイコンなどで構成され、記憶手段2、水位偏差算出手段3、弁動作設定手段4、および弁駆動手段5を有している。
【0030】
記憶手段2は、RAMやROMなどから構成され、プログラムやデータが格納されている。記憶手段2は、予め設定されている維持すべき水位の目標値(目標水位)の情報(水位目標情報)が格納されている。また、記憶手段2は、補助給水弁123の固有の情報(弁固有情報)が格納されている。弁固有情報としては、補助給水弁123の開閉作動速度、補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数、および補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間がある。なお、補助給水弁123の開閉作動速度は、使用される補助給水弁123において予め計測されたものであり、補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数、および補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間は、使用される補助給水弁123の構造による機械的な制約である。また、記憶手段2は、補助給水弁123の開度に応じた水位の時間応答の情報(水位時間応答情報)が格納されている。水位時間応答情報は、上述した原子力発電プラントを模擬したシミュレーション(例えば、特開平6−231109号公報や特開平8−6483号公報参照)によって得られたものである。また、記憶手段2は、非最小位相系伝達関数(下記の数式1参照)が格納されている。この数式1において、sはラプラス演算子であり、a,b,kは水位の時間応答を決定するためのパラメータである。
【0031】
【数1】

【0032】
水位偏差算出手段3は、記憶手段2に格納された目標水位と、水位検出手段125で検出された水位との偏差を算出する。
【0033】
弁動作設定手段4は、弁開度設定手段4a、弁駆動時間設定手段4b、弁制御周期設定手段4c、1周期制御時間設定手段4d、および逆応答付加設定手段4eを有している。
【0034】
弁開度設定手段4aは、水位偏差算出手段3で算出された水位の偏差に応じて補助給水弁123の開度を設定する。補助給水弁123の開度は、補助給水ポンプ122による補助冷却水の送り量を一定として補助給水弁123を通過する補助冷却水の供給量(流量)に相当する。
【0035】
弁駆動時間設定手段4bは、記憶手段2に格納されている補助給水弁123の開閉作動速度に基づき、弁開度設定手段4aで設定された補助給水弁123の開度に応じて補助給水弁123の駆動時間を設定する。すなわち、補助給水弁123の駆動時間は、補助給水弁123が設定された開度となるまで補助給水弁123を駆動させる時間である。具体的には、目標水位と検出された水位との偏差が大きい場合は、補助給水弁123の駆動時間が長くなり、目標水位と検出された水位との偏差が小さい場合は、補助給水弁123の駆動時間が短くなる。
【0036】
弁制御周期設定手段4cは、補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数が規定されている場合、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間、および記憶手段2に格納されている補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁123の駆動周期を設定する。このように、弁制御周期設定手段4cは、補助給水弁123を作動させる回数が制約されたなかで、目標水位に達するまでの補助給水弁123の駆動周期、すなわち駆動回数を設定する。
【0037】
1周期制御時間設定手段4dは、補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数、および補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間が規定されている場合、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間、および記憶手段2に格納されている補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁123の駆動周期を設定し、この設定された補助給水弁123の駆動周期、および記憶手段2に格納されている補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間に応じて1駆動周期あたりの最長駆動時間を設定する。このように、1周期制御時間設定手段4dは、補助給水弁123を作動させる回数が制約されたなかで、目標水位に達するまでの補助給水弁123の駆動周期、すなわち駆動回数を設定し、かつ補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間が制約されたなかで、1駆動周期あたりでの最長駆動時間、すなわち1駆動周期において補助給水弁123を駆動できる最長時間を設定する。
【0038】
逆応答付加設定手段4eは、上述した弁開度設定手段4aにおける設定に対し、逆応答を付加した設定をする。図3は、逆応答概念図である。蒸気発生器103内の二次冷却水と、補助給水弁123から供給される補助冷却水とは温度差があり、蒸気発生器103内の二次冷却水の方が比較的高い温度である。このため、図3に示すように、蒸気発生器103に補助冷却水が供給され始めたとき(図3におけるA点)、上記温度差によって蒸気発生器103内の二次冷却水が凝縮することで、水位が一旦下がる逆応答が生じる。図3において、Xpは最大逆応答量であり、Tpは最大逆応答時間であり、Trは逆応答時間であり、Vは定常水位変化速度である。
【0039】
そこで、逆応答付加設定手段4eは、記憶手段2に格納された水位時間応答情報と非最小位相系伝達関数とを取得し、弁開度設定手段4aで設定された補助給水弁123の開度から逆応答によって水位への応答を近似した非最小位相系伝達関数内のパラメータを、水位時間応答情報に基づいて決定し、パラメータが決定された非最小位相系伝達関数の周波数特性のゲイン余裕および位相余裕を勘案して、補助給水弁123の開度を設定する。
【0040】
ここで、補助給水弁123の開度から水位への応答の近似は、補助給水弁123の時間変動をラプラス変換したものをH(s)とし、蒸気発生器103の水位の時間変動をラプラス変換したものをL(s)とし、その間を下記数式2により近似する。
【0041】
【数2】

【0042】
また、逆応答は、蒸気発生器103内の二次冷却水の温度に応じ、温度が高いほどXp、Tp、Trが大きくなる。
【0043】
そこで、逆応答付加設定手段4eは、水位時間応答情報に含まれている蒸気発生器103内の二次冷却水の異なる温度条件において、水位の偏差に応じた補助給水弁123の開度をそれぞれ求め、その最小量を選択する。
【0044】
弁駆動手段5は、弁動作設定手段4の設定に応じて補助給水弁123を駆動するための信号を出力する。
【0045】
以下、制御手段1による補助給水弁123の動作について説明する。図4は、補助給水弁制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0046】
主給水系において蒸気発生器103における二次冷却水の水位が維持できない場合、補助給水系が自動的に切り換えられる。この場合、まず、水位検出手段125によって蒸気発生器103内の二次冷却水の水位を検出する(ステップS1)。次に、水位偏差算出手段3によって目標水位と検出された水位との偏差を算出する(ステップS2)。次に、弁開度設定手段4aによって水位の偏差に応じて補助給水弁123の開度を設定する(ステップS3)。
【0047】
また、逆応答の付加を考慮するため、ステップS3の次に、逆応答付加設定手段4eによって逆応答に応じた補助給水弁123の開度を設定する(ステップS4)。
【0048】
また、蒸気発生器103内の二次冷却水の温度による逆応答の影響を考慮するため、ステップS4の次に、逆応答付加設定手段4eによって蒸気発生器103内の二次冷却水の異なる温度条件に基づいて補助給水弁123の開度の最小量を選択する(ステップS5)。
【0049】
次に、弁駆動時間設定手段4bによって、補助給水弁123の開閉作動速度に基づき、補助給水弁123の開度に応じて補助給水弁123の駆動時間を設定する(ステップS6)。
【0050】
また、補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数が規定されている場合では、ステップS6の次に、弁制御周期設定手段4cによって補助給水弁123の駆動時間および補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁123の駆動周期を設定する(ステップS7)。ここでは、例えば、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間が比較的短い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的小さい場合)、補助給水弁123の駆動周期を長く(駆動回数を少なく)することで、より速く目標水位に達することになる。一方、例えば、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間が比較的長い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的大きい場合)、補助給水弁123の駆動周期を短く(駆動回数を多く)することで、より開度調整を細かくして、水位を安定させながら目標水位に達することになる。
【0051】
さらに、補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間が規定されている場合では、ステップS7の次に、1周期制御時間設定手段4dによって補助給水弁123の駆動周期および補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間に応じて1駆動周期あたりの最長駆動時間を設定する(ステップS8)。ここでは、例えば、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間が比較的短い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的小さい場合)、補助給水弁123の駆動周期を長く(駆動回数を少なく)し、1駆動周期あたりの最長駆動時間を比較的長くすることで、より速く目標水位に達することになる。一方、例えば、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間が比較的長い場合(目標水位と検出された水位との偏差が比較的大きい場合)、補助給水弁123の駆動周期を短く(駆動回数を多く)し、1駆動周期あたりの最長駆動時間を比較的短くすることで、より開度調整を細かくして、水位を安定させながら目標水位に達することになる。
【0052】
そして、ステップS8の後、弁駆動手段5によって補助給水弁123を駆動するための信号を出力し、本制御を終了する。
【0053】
なお、逆応答の付加を考慮しなければ、ステップS3の次に、ステップS6に至る。また、逆応答において蒸気発生器103内の二次冷却水の温度による影響がなければ、ステップS4の次に、ステップS6に至る。また、補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数や、補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間が規定されなければ、ステップS6の次に、弁駆動手段5によって補助給水弁123を駆動するための信号を出力し、本制御を終了する。また、補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間が規定されなければ、ステップS7の次に、弁駆動手段5によって補助給水弁123を駆動するための信号を出力し、本制御を終了する。
【0054】
なお、本制御は、弁駆動手段5によって補助給水弁123を駆動するための信号を出力した後、フィードバック制御を行うことで、蒸気発生器103内の水位に乱れを生じさせることなく水位制御ができるため好ましい。
【0055】
このように、本実施の形態の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、蒸気発生器103内の二次冷却水の水位を検出する水位検出手段125と、予め設定された目標水位と、水位検出手段125で検出された水位との偏差を算出する水位偏差算出手段3と、水位の偏差に応じて補助給水弁123の開度を設定する弁動作設定手段4(弁開度設定手段4a)と、弁動作設定手段4の設定に応じて前記補助給水弁123を駆動するための信号を出力する弁駆動手段5と、を備える。
【0056】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、補助給水弁123をオペレータの操作によらず作動させ、蒸気発生器103内の二次冷却水の水位制御を自動で行うことが可能になる。
【0057】
また、本実施の形態の蒸気発生器の補助給水弁制御装置では、弁動作設定手段4は、予め計測された補助給水弁123の開閉作動速度に基づき、弁開度設定手段4aまたは逆応答付加設定手段4eによって設定された補助給水弁123の開度に応じて補助給水弁123の駆動時間を設定する弁駆動時間設定手段4bを備える。
【0058】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、補助給水弁123の開閉作動速度に基づいて、設定された補助給水弁123の開度とするための補助給水弁123の駆動時間を設定するため、補助給水弁123の性能に応じて補助給水弁123の開度制御を行うことが可能になる。
【0059】
また、本実施の形態の蒸気発生器の補助給水弁制御装置では、補助給水弁123が、単位時間あたりの開閉作動回数を規定されており、弁動作設定手段4は、予め計測された補助給水弁123の開閉作動速度に基づき、弁開度設定手段4aまたは逆応答付加設定手段4eによって設定された補助給水弁123の開度に応じて補助給水弁123の駆動時間を設定する弁駆動時間設定手段4bと、この設定された補助給水弁123の駆動時間、および補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁123の駆動周期を設定する弁制御周期設定手段4cとを備える。
【0060】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間、および補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁123の駆動周期を設定することで、目標水位に達するまでに適した水位制御を行うことが可能になる。
【0061】
また、本実施の形態の蒸気発生器の補助給水弁制御装置は、補助給水弁123が、単位時間あたりの開閉作動回数、および単位時間内での延べ作動時間を規定されており、弁動作設定手段4は、予め計測された補助給水弁123の開閉作動速度に基づき、弁開度設定手段4aまたは逆応答付加設定手段4eによって設定された補助給水弁123の開度に応じて補助給水弁123の駆動時間を設定する弁駆動時間設定手段4bと、この設定された補助給水弁123の駆動時間、および補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁123の駆動周期を設定する弁制御周期設定手段4cと、この設定された補助給水弁123の駆動周期、および補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間に応じて1駆動周期あたりの最長駆動時間を設定する1周期制御時間設定手段4dとを備える。
【0062】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、弁駆動時間設定手段4bで設定された補助給水弁123の駆動時間、および補助給水弁123の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて補助給水弁123の駆動周期を設定し、この設定された補助給水弁123の駆動周期、および補助給水弁123の単位時間内での延べ作動時間に応じて1駆動周期あたりの最長駆動時間を設定することで、目標水位に達するまでに適した水位制御を行うことが可能になる。
【0063】
また、本実施の形態の蒸気発生器の補助給水弁制御装置では、弁動作設定手段4は、補助給水弁123の開度に応じた水位時間応答情報を予め取得し、弁開度設定手段4aによって設定された前記補助給水弁123の開度から逆応答による水位への応答を近似した非最小位相系伝達関数内のパラメータを、水位時間応答情報に基づいて決定し、パラメータが決定された非最小位相系伝達関数の周波数特性のゲイン余裕および位相余裕を勘案して、補助給水弁123の開度を設定する逆応答付加設定手段4eを備える。
【0064】
この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、逆応答に応じた補助給水弁123の開度を設定することで、逆応答時の水位の変動を抑えることが可能になる。
【0065】
また、本実施の形態の蒸気発生器の補助給水弁制御装置では、弁動作設定手段4は、逆応答付加設定手段4eにおいて、水位時間応答情報に含まれる蒸気発生器103内の二次冷却水の異なる温度条件において、補助給水弁123の開度をそれぞれ求め、その最小量を選択する。
【0066】
蒸気発生器103内の二次冷却水の温度が高い場合は、補助冷却水との温度差が大きく最大逆応答量(Xp)が大きくなり、かつ補助冷却水の供給量が多いと最大逆応答量(Xp)はさらに大きくなる。したがって、この蒸気発生器の補助給水弁制御装置によれば、温度条件を伴う逆応答に応じた補助給水弁123の開度を最小量に設定することで、温度差が大きい場合であっても逆応答時の水位の変動を抑えることが可能になる。なお、蒸気発生器103内の二次冷却水の温度を検出する温度検出手段(図示せず)を備え、当該温度検出手段で検出された温度と、上記温度条件とを合わせることで、補助給水弁123の開度を設定してもよく、これにより、どのような温度に対しても逆応答時の水位の変動を抑えることが可能になる。
【符号の説明】
【0067】
1 制御手段
2 記憶手段
3 水位偏差算出手段
4 弁動作設定手段
4a 弁開度設定手段
4b 弁駆動時間設定手段
4c 弁制御周期設定手段
4d 1周期制御時間設定手段
4e 逆応答付加設定手段
5 弁駆動手段
103 蒸気発生器
123 補助給水弁
125 水位検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生器に二次冷却水を供給する主給水系の保護として設けられた補助給水系において、当該補助給水系の補助給水弁を作動させる蒸気発生器の補助給水弁制御装置であって、
前記蒸気発生器内の二次冷却水の水位を検出する水位検出手段と、
予め設定された目標水位と、前記水位検出手段で検出された水位との偏差を算出する水位偏差算出手段と、
前記水位の偏差に応じて前記補助給水弁の開度を設定する弁動作設定手段と、
前記弁動作設定手段の設定に応じて前記補助給水弁を駆動するための信号を出力する弁駆動手段と、
を備えることを特徴とする蒸気発生器の補助給水弁制御装置。
【請求項2】
前記弁動作設定手段は、予め計測された前記補助給水弁の開閉作動速度に基づき、設定された前記補助給水弁の開度に応じて前記補助給水弁の駆動時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生器の補助給水弁制御装置。
【請求項3】
前記補助給水弁が、単位時間あたりの開閉作動回数を規定されており、
前記弁動作設定手段は、予め計測された前記補助給水弁の開閉作動速度に基づき、設定された前記補助給水弁の開度に応じて前記補助給水弁の駆動時間を設定し、この設定された前記補助給水弁の駆動時間、および前記補助給水弁の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて前記補助給水弁の駆動周期を設定することを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生器の補助給水弁制御装置。
【請求項4】
前記補助給水弁が、単位時間あたりの開閉作動回数、および単位時間内での延べ作動時間を規定されており、
前記弁動作設定手段は、予め計測された前記補助給水弁の開閉作動速度に基づき、設定された前記補助給水弁の開度に応じて前記補助給水弁の駆動時間を設定し、この設定された前記補助給水弁の駆動時間、および前記補助給水弁の単位時間あたりの開閉作動回数に応じて前記補助給水弁の駆動周期を設定し、この設定された前記補助給水弁の駆動周期、および前記補助給水弁の単位時間内での延べ作動時間に応じて1駆動周期あたりの最長駆動時間を設定することを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生器の補助給水弁制御装置。
【請求項5】
前記弁動作設定手段は、前記補助給水弁の開度に応じた水位時間応答情報を予め取得し、設定された前記補助給水弁の開度から逆応答による前記水位への応答を近似した非最小位相系伝達関数内のパラメータを、前記水位時間応答情報に基づいて決定し、パラメータが決定された前記非最小位相系伝達関数の周波数特性のゲイン余裕および位相余裕を勘案して、前記補助給水弁の開度を設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の蒸気発生器の補助給水弁制御装置。
【請求項6】
前記弁動作設定手段は、前記水位時間応答情報に含まれる前記蒸気発生器内の二次冷却水の異なる温度条件において、前記補助給水弁の開度をそれぞれ求め、その最小量を選択することを特徴とする請求項5に記載の蒸気発生器の補助給水弁制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−92476(P2013−92476A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235475(P2011−235475)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)