説明

蒸気発生装置

【課題】 コンパクトで熱効率の良い蒸気発生装置の提供。
【解決手段】 蒸気発生装置1は、水供給口6と蒸気排出口7を設けた気液室3と、その気液室3の下側に配置した加熱室5と、加熱室5の周囲に伝熱壁を介して配置した水ジャケット4と、水ジャケット4の上部に滞留する気液混合物から蒸気だけを気液室3に導く気液セパレータ19とを備えている。そして、気液室3から水を水ジャケット4に直接供給するための水供給部21が該気液室3の下部に設けられると共に、前記伝熱壁の加熱室5側に伝熱フィン23が配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水を加熱して蒸気を発生する蒸気発生装置に関し、特に構造が簡単でコンパクトに構成できる蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や種々の施設では水蒸気(以下、単に蒸気という。)を熱源とする加熱設備や暖房設備を設置することが多く、これら設備にはボイラや蒸気発生装置から蒸気が供給される。設備の蒸気消費量が大きい場合は通常ボイラが設置されるが、蒸気消費量が比較的少ない場合、例えば燃料電池に水素燃料を供給する改質器に蒸気を供給する場合には、小型の蒸気発生装置が設置される。そのような小型の蒸気発生装置は例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−176934号公報
【0004】
図3は特許文献1に開示されているものと同様な従来の蒸気発生装置の模式的な断面図である。蒸気発生装置1は、筒状のケーシング2と、ケーシング2の内部上方に配置された気液室3と、ケーシング2の内部で且つ気液室3の下側に配置された環状の水ジャケット4と、水ジャケット4の内側下方に配置された加熱室5を備えている。なお気液室3は有底の筒状に形成され、ケーシング2に溶接等により固定される。
【0005】
気液室3上方のケーシング2には水供給口6と蒸気排出口7が開口している。水ジャケット4にはその上部中央から下方に延長する有底で細長い筒状の蒸発室8が設けられ、蒸発室8の内部に気液室3の底部から下方に延長する水供給管9が配置される。
【0006】
加熱室5の下方にバーナ10が設けられ、バーナ10を囲むように内筒11とカップ体12からなる燃焼部13が形成される。バーナ10にはエジェクター等の混合器14から燃料ガスと一次空気の混合物が供給され、燃焼部13には二次空気が供給される。燃焼部13の外側は高温の燃焼ガスからなる加熱ガスが流通するための流路15が形成され、流路15の途中に複数のバッフルプレート16が配置され、その先端はガス排出口17に連通している。
【0007】
水ケーシング4の内部上方の空間に蒸気滞留部18が形成され、気液室3の外周とケーシング2の間に環状の気液セパレータ19が形成される。気液セパレータ19の上端部は気液室3の上方に開口し、その開口部分に環状バッファ20が配置される。
【0008】
次に図3の蒸気発生装置1の作用を説明する。水供給口6から気液室3に供給された水は、水供給管9から蒸発室8を経て水ジャケット4に供給される。バーナ10の燃焼により発生する加熱ガスは燃焼室13から流路15に入り、複数のバッフルプレート16で蛇行しながらガス排出口17から排出する。
【0009】
加熱ガスにより蒸発室8および水ジャケット4の水が加熱されて蒸気が発生する。発生した蒸気は僅かな水が混合した気液混合状態で水ジャケット4上方の蒸気滞留部18に滞留し、そこから気液セパレータ19を経て気液室3の上部空間に流入する。その際、気液セパレータ19および環状バッファ20で蒸気中に含まれている水の大部分が分離されて気液室3の水中へ入り、そこから水ジャケット4に戻る。そして気液室3に流入した蒸気は蒸気排出口7から負荷設備に供給される。
【0010】
蒸発室8と水ジャケット4に供給される水は蒸気発生により消費されて減少するが、その消費量に見合った水が水供給口6から自動的に供給される。水の自動供給方法としては、例えば蒸発室8または水ジャケット4の水位を検出し、その水位が予め設定されたレベルを維持するように水供給口6から供給される水量を制御することによって行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、従来の蒸気発生装置1はケーシング2の内部に蒸気発生部を構成する水ジャケット4と蒸発室8を配置している。蒸発室8を設けることにより時間当たり発生する蒸気量が増加するが、一方、このような蒸発室8を設けると装置全体の構造が複雑になり、部品点数も増加し、製造コストが高くなるという問題がある。
【0012】
さらに、従来の蒸気発生装置1は、加熱室5から蒸発室8への熱伝達効率アップのため、加熱ガスの流路15に複数のバッフルプレート16を設けているが、バッフルプレート16による加熱ガスの蛇行による熱伝達効率アップは期待されるほど高くないという問題もある。
そこで本発明はこれらの種々の問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決する本発明の蒸気発生装置は、水供給口と蒸気排出口を設けた気液室と、その気液室の下側に配置した加熱室と、加熱室の周囲に伝熱壁を介して配置した水ジャケットと、水ジャケットの上部に滞留する気液混合物から蒸気だけを気液室に導く気液セパレータとを備えている。
そして、気液室から水を水ジャケットに直接供給するための水供給部が該気液室の下部に設けられると共に、前記伝熱壁の加熱室側に伝熱フィンが配置されていることを特徴とする(請求項1)。
【0014】
上記蒸気発生装置において、
前記水供給部は気液室の底部から水ジャケットの下部まで延長する水供給管で構成することができる(請求項2)。
【0015】
上記いずれかの蒸気発生装置において、前記気液室と水ジャケットを仕切板で区分された一体構造とし、前記気液セパレータは前記仕切板を貫通して気液室の上部まで延長する蒸気管で構成することができる(請求項3)。
【0016】
さらに上記いずれかの蒸気発生装置において、
前記水ジャケットの下部は加熱室を取り囲む環状体に形成し、前記伝熱フィンはその外周面が前記環状体の内面に接する環状に形成し、前記加熱室の加熱ガスが前記伝熱フィンの軸方向に流通するように構成することができる(請求項4)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蒸気発生装置は、請求項1に記載のように、加熱室の周囲に伝熱壁を介して配置した水ジャケットと、水ジャケットの上部に滞留する気液混合物から蒸気だけを気液室に導く気液セパレータとを備え、気液室から水を水ジャケットに直接供給するための水供給部が該気液室の下部に設けられると共に、前記伝熱壁の加熱室側に伝熱フィンが配置されていることを特徴としている。
【0018】
従来の蒸気発生装置は気液室から蒸発室を経て水ジャケットに水を供給しているが、本発明の蒸気発生装置は蒸発室を設けずに、気液室から水を水ジャケットに直接供給している。そのため装置全体の構造が簡単になり、装置をコンパクトに構成することができる。さらに部品点数が減少し、製造コストも低くなる。
【0019】
一方、水ジャケットと加熱室を隔てる伝熱壁の加熱室側に伝熱フィンを配置しているので、加熱室から水ジャケットへの熱伝達率が著しく高くなり、従来のように蒸発室を設けなくても所定の蒸気発生量を充分に確保することができる。
また、従来のバッフルプレートは伝熱壁に溶接等により固定する必要があったが、伝熱フィンは水ジャケットと加熱室を隔てる伝熱壁にろう付けで簡単に固定することができる。そのため装置の製造工程が簡単になり製造コストも低減できる。
【0020】
上記蒸気発生装置において、請求項2に記載のように、前記水供給部は気液室の底部から水ジャケットの下部まで延長する水供給管で構成することができる。このような水供給管を設けることにより、水ジャケット内における上下方向の水の対流が促進され、水温の不均一性も抑制される。
【0021】
上記いずれかの蒸気発生装置において、請求項3に記載のように、前記気液室と水ジャケットを仕切板で区分された一体構造とし、前記気液セパレータは前記仕切板を貫通して気液室の上部まで延長する蒸気管で構成することができる。
このように構成すると、従来のようにカップ状の気液室を製造し、それをケーシングに溶接等により固定する必要がなく、ケーシングを仕切板で仕切るだけで気液室が形成される。そのため気液室の構造がより簡単になり、装置のコンパクト化や製造コスト低減の効果もさらに大きくなる。
【0022】
さらに上記いずれかの蒸気発生装置において、請求項4に記載のように、前記水ジャケットの下部は加熱室を取り囲む環状体に形成し、前記伝熱フィンはその外周面が前記環状体の内面に接する環状に形成し、前記加熱室の加熱ガスが前記伝熱フィンの軸方向に流通するように構成することができる。
このように構成すると、加熱室のスペース効率を高くできると共に、伝熱フィンによる加熱室から水ジャケットへの熱伝達率を一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に図面に基づいて本発明の最良の実施形態を説明する。図1は本発明の蒸気発生装置を模式的に示す断面図である。
蒸気発生装置1はステンレス等の耐熱性の金属で作られ、上部が蓋体2aで閉鎖された筒状のケーシング2と、ケーシング2の内部上方に配置された気液室3と、ケーシング2の内部で且つ気液室3の下側に配置された水ジャケット4と、水ジャケット4の内側下方に配置された加熱室5を備えている。
【0024】
加熱室5の周壁と天井壁は伝熱壁を構成し、その伝熱壁の外側とケーシング2の側壁により水ジャケット4が形成される。このように形成された水ジャケット4は、上部が筒状で下部が環状の形状になっている。ケーシング2内の中間部分は水平な仕切板2bで区分され、その上側が気液室3を構成し、下側が水ジャケット4を構成する。そして気液室3上方の蓋体2aに水供給口6と蒸気排出口7が開口している。
【0025】
水ジャケット4は気液室3から供給される水を蒸発させる蒸気発生部となり、気液室3の下部には水ジャケット4への水供給部21が設けられる。本実施形態では水供給部21として気液室3の底部(仕切板2b部分)から水ジャケット4の下部まで垂直に延長する細長い水供給管21aが設けられている。なお気液室3の底部に貫通孔を設け、その貫通孔により水供給部21を構成することもできる。
【0026】
水ジャケット4の内部上方の空間に蒸気滞留部18が形成され、蒸気滞留部18と気液室3は気液セパレータ19で連通している。本実施形態では、仕切板2bを貫通して水ジャケット4の上部まで延長する細長い蒸気管22により気液セパレータ19が構成され、その蒸気管22の上端が気液室3の上部に開口している。
【0027】
加熱室5の内部下方にバーナ10が設けられ、バーナ10の周囲に配置された内筒11により燃焼部13が形成される。バーナ10にはエジェクター等の混合器14から燃料ガスと一次空気の混合物が供給され、燃焼部13には二次空気が供給される。なおバーナ10と燃焼部13を省略し、外部から高温の加熱ガスを加熱室5の底部に供給することもできる。燃焼部13の外側は高温の燃焼ガスからなる加熱ガスの流路15が形成され、流路15の途中に環状の伝熱フィン23が配置され、先端はガス排出口17に連通している。
【0028】
図2は環状の伝熱フィン23の1例を示す斜視図である。伝熱フィン23はステンレス等の耐熱性合金で作られ、板材を所定幅で折畳んで環状に形成し、その環状部分の軸方向に沿って加熱ガスが矢印のように流通できるようになっている。
【0029】
図1に示すように、水ジャケット4の下部は加熱室5を取り囲む環状体に形成され、その環状体の加熱室5側に接するように伝熱フィン23が配置されている。加熱室5の加熱ガスは伝熱フィン23の上下の軸方向に流通する際に、加熱ガスの熱が伝熱フィン23を通して水ジャケット4に伝熱される。
【0030】
次に図1の蒸気発生装置1の作用を説明する。
水供給口6から気液室3に供給された純水等の水は、水供給管21により水ジャケット4に直接供給される。バーナ10の燃焼により発生する加熱ガスは燃焼室13から流路15に入り、伝熱フィン23の環状部分を軸方向に沿って流通し、ガス排出口17から排出する。
【0031】
加熱ガスにより水ジャケット4の水が加熱されて蒸気が発生する。発生した蒸気は僅かな水と混合した気液混合状態で水ジャケット4上方の蒸気滞留部18に滞留し、そこから気液セパレータ19を経て気液室3の上部空間に流入する。その際、気液セパレータ19により蒸気に含まれている水の大部分が分離されて蒸気滞留部18に戻る。そして気液室3に流入した蒸気は蒸気排出口7から負荷設備に供給される。
【0032】
水ジャケット4に供給される水は蒸気発生により消費されて減少するが、消費量に見合った水が水供給口6から自動的に供給される。水の自動供給方法としては、例えば蒸発室8または水ジャケット4の水位を検出し、その水位が予め設定されたレベルを維持するように水供給口6から供給される水量を制御することによって行うことができる。
【0033】
本発明の蒸気発生装置は、従来のように蒸発室8を設けず、気液室3から水ジャケット4に水を直接供給し、蒸発室3による蒸気発生分を補完するため、伝熱効率の高い伝熱壁を設けている。そのため前記のように装置をコンパクトに構成することが可能になる。因みに、図1の本発明の蒸気発生装置と図3の従来の蒸気発生装置を比較した結果、発生蒸気量が同じであれば、図1の蒸気発生装置は図3の従来の蒸気発生装置より装置全体の体積を17%〜20%程度低減できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の蒸気発生装置は、改質器等の比較的蒸気消費量の小さい設備に蒸気を供給するために利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の蒸気発生装置を模式的に示す断面図。
【図2】環状の伝熱フィン23の1例を示す斜視図。
【図3】従来の蒸気発生装置の模式的な断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 蒸気発生装置
2 ケーシング
2a 蓋体
2b 仕切板
3 気液室
4 水ジャケット
【0037】
5 加熱室
6 水供給口
7 蒸気排出口
8 蒸発室
9 水供給管
10 バーナ
11 内筒
【0038】
12 カップ体
13 燃焼部
14 混合器
15 流路
16 バッフルプレート
17 ガス排出口
18 蒸気滞留部
【0039】
19 気液セパレータ
20 環状バッファ
21 水供給部
21a 水供給管
22 蒸気管
23 伝熱フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水供給口6と蒸気排出口7を設けた気液室3と、気液室3の下側に配置した加熱室5と、加熱室5の周囲に伝熱壁を介して配置した水ジャケット4と、水ジャケット4の上部に滞留する気液混合物から蒸気だけを気液室3に導く気液セパレータ19とを備え、気液室3から水を水ジャケット4に直接供給するための水供給部21が該気液室3の下部に設けられると共に、前記伝熱壁の加熱室5側に伝熱フィン23が配置されていることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項2】
請求項1において、前記水供給部21は気液室3の底部から水ジャケット4の下部まで延長する水供給管21aで構成されていることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記気液室3と水ジャケット4は仕切板2bで区分された一体構造とされ、前記気液セパレータ19は前記仕切板2bを貫通して気液室3の上部まで延長する蒸気管22で構成されていることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、前記水ジャケット4の下部は加熱室5を取り囲む環状体とされ、前記伝熱フィン23はその外周面が前記環状体の内面に接するような環状に形成され、前記加熱室5の加熱ガスが前記環状の伝熱フィン23の軸方向に流通するように構成されていることを特徴とする蒸気発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−7877(P2010−7877A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164411(P2008−164411)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)