説明

蓄光剤含有樹脂組成物

【課題】暗所において、様々な色に発色させることが可能な蓄光剤含有樹脂組成物を提供すること。また、樹脂中の蓄光剤以外の部分に照射された光も蓄光に利用することが可能であり、蓄光の効率のよい蓄光剤含有樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブレンドポリマーに、蓄光剤と、蛍光剤とが含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂に蓄光剤が含まれた蓄光剤含有樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線等を照射した後、長期間に渡って光を発する蓄光剤が知られている。特に近年、長時間の残光特性を有し、化学的にも安定で耐光性に優れた蓄光剤も開発されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−11250号公報
【0003】
こうした蓄光剤は、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS、ポリスチレン、ポリカーボネート等、様々な樹脂に添加され、暗所で発光する樹脂組成物として、例えば、時計、インテリア、標識、防災機器、家電製品、照明機器、釣具等、幅広い産業分野で利用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の蓄光剤含有樹脂組成物は、含有している蓄光剤の暗所での発光色が淡い黄緑色や淡い青色等、極めて限られた色しかなく、多様性に欠けていた。また、蓄光に利用される光は、樹脂中の蓄光剤部分に照射された光のみであり、それ以外の部分に照射された光を蓄光に利用することができなかった。このため、蓄光の効率が悪いものであった。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、暗所において、様々な色に発色させることが可能な蓄光剤含有樹脂組成物を提供することを解決すべき課題としている。また、樹脂中の蓄光剤以外の部分に照射された光も蓄光に利用することが可能であり、蓄光の効率のよい蓄光剤含有樹脂組成物を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の蓄光剤含有樹脂組成物は、樹脂中に蓄光剤と蛍光剤とが含まれており、該蓄光剤の暗所での発光スペクトルと、該蛍光剤の光吸収スペクトルとは、重なり部分を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、蓄光剤とは、明所において光のエネルギーを蓄え、暗所においてその蓄えたエネルギーを発光という形態で比較的長期間の間放出する物質をいう。また、蛍光剤とは、照射された光と異なる波長の光を放出する物質をいう。
【0008】
第1発明の蓄光剤含有樹脂組成物では、樹脂中に含まれる蓄光剤の暗所での発光スペクトルが、樹脂中に含まれる蛍光剤の光吸収スペクトルと重なり部分を有している。このため、暗所において蓄光剤から照射される光によって蛍光剤が励起され、蓄光剤から照射される光とは異なる波長の光が蛍光剤から照射される。このため、蓄光剤含有樹脂組成物は、暗所において蓄光剤から照射される光の色とは異なる発光色となる。この発光色は、蓄光剤及び蛍光剤の組み合わせによって決まるため、暗所において様々な色の光を発することができる。さらには、複数種類の蓄光剤や蛍光剤を用いることにより、それらから発せられる蛍光が混ざりあって、さらに多様な発光色とすることができる。
【0009】
第2発明の蓄光剤含有樹脂組成物は、樹脂中に蓄光剤と蛍光剤とが含まれており、該蛍光剤の蛍光スペクトルと、該蓄光剤の励起スペクトルとは、重なり部分を有することを特徴とする。
【0010】
第2発明の蓄光剤含有樹脂組成物では、樹脂中に含まれる蛍光剤の蛍光スペクトルが、樹脂中に含まれる蓄光剤の励起スペクトルと重なり部分を有している。このため、明所において蛍光剤から照射される光によって蓄光剤が蓄光することができる。このため、樹脂中の蓄光剤部分に照射された光以外に、蛍光剤に照射された光を蓄光に利用することができ、蓄光の効率が良くなる。
【0011】
第1発明及び第2発明の蓄光剤含有樹脂組成物中に含有される蛍光剤は、樹脂と相溶する有機系の蛍光物質であることが望ましい。こうであれば、蛍光剤を透明な樹脂に練り込んで含有させた場合、透明性を維持することができる。このため、外部からの照射された光がより内部まで減衰せずに到達することができ、蛍光剤から発せられる蛍光や、蓄光剤から発せられる光の減衰をより小さくすることができる。
【0012】
また、第1発明及び第2発明の蓄光剤含有樹脂組成物を構成する樹脂は、生分解性プラスチックとすることができる。こうであれば、暗所において発光する生分解性樹脂となり、その光を検出することができる光センサーを用いたり、目視によってその光を確認したりすることにより、生分解性樹脂をそれ以外の廃棄物から分別して収集することができる。こうして分別された生分解性樹脂は、そのまま埋め立て処分とすることが可能であるため、焼却処分の必要な廃棄物の量を減らすことが可能となる。特に、生分解性樹脂がカーボンニュートラルな天然然由来のものである場合には、大気中の二酸化炭素量を増加させないため、地球温暖化を抑制することもできる。なお、ここで生分解性樹脂とは、土壌中で微生物により生分解可能な樹脂の総称であり、例えば、澱粉、酢酸セルロース、(キトサン/セルロース/澱粉)重合系等の天然高分子由来のものや、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)ポリビニルアルコール等の合成高分子、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリデート)等の微生物産生系高分子、並びにそれらの混合物(コンパウンド)等が挙げられる。具体的には化学合成系グリーンプラ(登録商標)であるCargill-DOW社製のNature Works(登録商標)、UCC社製のTONE(登録商標)、(株)島津製作所製のラクティ(登録商標)、ユニチカ(株)製のテラマック(登録商標)、昭和高分子(株)のビオノーレ(登録商標)、三菱ガス化学(株)のユーペック(登録商標)、三井化学(株)製のレイシア(登録商標)、(株)日本触媒製のルナーレ(登録商標)、Du Pont社製のBiomax(登録商標)、BASF社製のEcoflex(登録商標)、クラレ社製のポバール(商標)、Eastman Chemicals社製のEaster Bio(登録商標)、日本合成化学工業(株)製のゴーセノール(登録商標)、アイセロ化学(株)製のドロン(登録商標)VA、IRe CHEMICAL社製のエンポル(商標)、ダイセル化学工業(株)製のセルグリーン(登録商標)等を使用することができる。さらに、これから研究されるであろう全ての生分解性樹脂が使用可能であると期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1発明及び第2発明の蓄光剤含有樹脂組成物に用いられる蓄光材料としては特に限定はなく、公知の様々なものを用いることができる。例えば、MAl24 で表わされる化合物(Mは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の金属元素)を母結晶にすると共に、賦活剤としてユウロピウムと、さらに共賦活剤としてセリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムからなる群の少なくとも1つ以上の元素を添加した蓄光剤を用いることができる。この蓄光剤は発光強度が高く、長時間持続し、化学的にも安定であるため、好適に用いることができる。このほか、CaS:Bi,CaSrS:Bi,ZnS:Cu,ZnCdS:Cu等の硫化物系の蓄光剤を用いることもできる。
【0014】
また、第1発明及び第2発明の蓄光剤含有樹脂組成物に用いられる蛍光剤は、公知の様々なものを用いることができる。例えば、9,10-ジアニリノアントラセン、2-ヒドロキシ-1-ナフタルダジン、2-アニリノ-4-(2,5-ジクロロベンゾイルアミノ)-1,9-ピリミドアントロン、1,4-ビス(β-シアノ-β-カルボエトキシ-ビニル)ベンゼン、リボフラビン、高分子蛍光物質等の有機系の蛍光物質や、「C.I.Disperse Yellow 82」、「C.I.Disperse Yellow 124」、「C.I.Solvent Yellow 94」、「C.I.Disperse Red 60」、「C.I.Solvent Red 43」、「C.I.Solvent Red 44」、「C.I.Solvent Red 45」、「C.I.Solvent Red 49」「BASF Lumogen Red , Yellow, Violet」等の有機溶剤に溶解可能な蛍光物質と合成樹脂との固溶体を粉末化した蛍光剤等が挙げられる。また、タングステン酸カルシウムや塩化カリウム・タリウム等の無機系の蛍光顔料を用いることもできる。これらのうちでも、有機系の蛍光物質や有機溶剤に溶解可能な蛍光物質と合成樹脂との固溶体を粉末化した蛍光剤は、樹脂と相溶させることが可能であり、透明な樹脂に練り込んで含有させた場合、透明性を維持することができる。このため、外部からの光がより内部まで減衰せずに到達することができ、蛍光剤から発せられる蛍光や、蓄光剤から発せられる光の減衰をより小さくすることができ、好適である。
【0015】
以下本発明を具体化した実施例を比較例と比較しつつ詳細に述べる。
(実施例1)
実施例1は、ポリ乳酸(MFR 14g/10min)とポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製 ビオノーレ1020)とのブレンドポリマーに、蓄光剤(根本特殊化学(株)製 GLL−300M)と、蛍光剤(BASF製 Lumogen F Orange 240)とが含まれた蓄光剤含有樹脂組成物である。これらの物質を以下に示す割合で秤取り、混練押出機を用い、設定温度は180°Cとし、押出された樹脂を切断してペレット状に造粒した。
ポリ乳酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76重量%
ポリブチレンサクシネート・・・・・・・・・・・・・・18.99重量%
蓄光剤(GLL−300M)・・・・・・・・・・・・・・・・・5重量%
蛍光剤(Lumogen F Orange 240)・・0.01重量%
【0016】
(比較例1)
比較例1は、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートと蓄光剤とを下記割合で実施例1と同様の条件で混練したものであり、蛍光剤は含有していない。
ポリ乳酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76重量%
ポリブチレンサクシネート・・・・・・・・・・・・・・・・・19重量%
蓄光剤(GLL−300M)・・・・・・・・・・・・・・・・・5重量%
【0017】
(比較例2)
比較例1は、ポリ乳酸と蛍光剤とを下記割合で実施例1と同様の条件で混練したものであり、蓄光剤は含有していない。
ポリ乳酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99.6重量%
蓄光剤(GLL−300M)・・・・・・・・・・・・・・・0.4重量%
【0018】
<評価>
こうして得られた実施例1及び比較例1、2のペレットについて、分光蛍光光度計を用いて364nmの紫外線を励起側より1分間照射し、その後励起側のシャッターを閉じ、蛍光側からペレットからの蛍光スペクトルを測定した。こうして得られた、蛍光スペクトルを図1及び図2に示す。その結果、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブレンドポリマーに蓄光剤のみが含有されている比較例1では、510nmにピークを示す蓄光剤からの光のスペクトルが観測され(図2参照)、肉眼観察による発光色は黄緑色であった。
【0019】
これに対し、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブレンドポリマーに蓄光剤と蛍光剤とが含有されている実施例1の試料では、励起側のシャッターを閉じてあるにもかかわらず、蓄光剤からの光の波長よりも長波長側の540nm及び570nm付近に、蛍光剤からの蛍光に基づくピークが観測され、肉眼観察による発光色は黄色であり、蓄光剤本来の蛍光色とは異なっていた。
【0020】
また、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブレンドポリマーに蛍光剤のみを含有させた比較例2では、励起側のシャッターを閉じた場合、蛍光スペクトルは観測されなかった。このため、励起側のシャッターを開けた状態で、比較例2の蛍光スペクトルを測定した(図3参照)。その結果、図2で示された540nm及び570nm付近と同じ波長にピークが観測された。
【0021】
以上の結果は次のように説明することができる。すなわ比較例1では、励起側のシャッターを閉じた状態において、蓄光剤からの蛍光スペクトルが観測される(図1参照)。これに対し実施例1では、励起側のシャッターを閉じた状態において、蓄光剤から蛍光が発せられ、その蛍光によってさらに蛍光剤が発光する。このため、蓄光剤自身から発せられる蛍光と、蛍光剤から発せられる蛍光が混ざった光となり、発光色が変化するのである。なお、蛍光剤(Lumogen F Orange 240)の光吸収スペクトルを測定したところ、蓄光剤からの蛍光波長である510nm付近に大きな吸収を示す(図4参照)ことが分かった。このことから、蓄光剤から蛍光が発せられ、その蛍光によってさらに蛍光剤が発光することが、理論的にも裏付けられる。
【0022】
また、実施例1及び比較例1のペレットについて、残光輝度特性の試験を行った。すなわち、光源としてD65常用光源(スガ試験機製 F65D−A)を用い、400lx、20分間の紫外線照射を行った後、色彩輝度計(BM−5A TOPCON製)及びラジオグラフアナライザー(NIM−1000 根本特殊化学製)を用いて測定を行った。その結果、図5に示すように、実施例1の方が比較例1よりも残光時間が長くなった。これは、実施例1で用いた蛍光剤が、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとのブレンドポリマーと相溶する有機系の蛍光物質であるため、外部からの照射された光がより内部まで減衰せずに到達することができ、蛍光剤から発せられる蛍光や、蓄光剤から発せられる光の減衰をより小さくすることができためであると推測される。
【0023】
(実施例2)
実施例2は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に、蓄光剤(根本特殊化学(株)製 GLL−300M)と、蛍光剤(BASF製 Lumogen F Orange 240)とが含まれた蓄光剤含有樹脂組成物である。これらの物質を以下に示す割合で秤取り、混練押出機を用い、設定温度は180°Cとし、押出された樹脂を切断してペレット状に造粒した。
PMMA・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94.95重量%
蓄光剤(GLL−300M)・・・・・・・・・・・・・・・・・5重量%
蛍光剤(Lumogen F Orange 240)・・0.05重量%
【0024】
<評価>
こうして得られた実施例2のペレットについて、暗所における発光色を肉眼で観察したところ、淡黄色となり、蓄光剤独自の発光色である淡黄緑色とは明らかに異なっていた。
【0025】
(実施例3)
実施例3は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に、蓄光剤(根本特殊化学(株)製 GLL−300M)と、下記化学式(1)で示されるフェナザシリン重合物とが含まれた蓄光剤含有樹脂組成物である。これらの物質を以下に示す割合で秤取り、混練押出機を用い、設定温度は180°Cとし、押出された樹脂を切断してペレット状に造粒した。
PMMA・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・94.99重量%
蓄光剤(GLL−300M)・・・・・・・・・・・・・・・・・5重量%
蛍光剤(フェナザシリン重合物(1))・・・・・・・・・・0.01重量%
【0026】
【化1】

【0027】
(比較例3)
比較例3は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)に、上記化学式(1)で示されるフェナザシリン重合物を含有させた樹脂組成物であり、これらの物質を以下に示す割合で秤取り、実施例3と同様の方法でペレット状に造粒した。
PMMA・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99.99重量%
蛍光剤(フェナザシリン重合物(1))・・・・・・・・・・0.01重量%
【0028】
<評価>
こうして得られた実施例3及び比較例3のペレットについて、分光蛍光光度計を用い、364nmの紫外線を照射しながら蛍光スペクトルを測定した。その結果、PMMAに蛍光剤のみが含有されている比較例3では、図7に示すように、400nm付近にショルダーピークが認められるのに対し、PMMAに蛍光剤と蓄光剤が含有されている実施例3では、図8に示すように、400nm付近のショルダーピークが消失した。また、蓄光剤(GLL−300M)の励起スペクトルの波長範囲は、図9に示すように、450nmと重なる部分を有している。以上のことから、実施例3のペレットは、蛍光剤(フェナザシリン重合物)から発せられる450nm付近の蛍光(図6参照)によって、蓄光剤が励起され蓄光されることが分かる。また、これにより、樹脂中の蓄光剤以外の部分に照射された光も蓄光に利用することが可能となり、蓄光の効率が良好となることがわかる。
【0029】
なお、上記実施例3における蛍光剤の替わりに、下記化学式(2)のフェナザシリン重合物を使用することもできる。
【0030】
【化2】

【0031】
この化合物(2)の蛍光スペクトルは図10に示すように、400nm付近に蛍光が観測された。この波長範囲は化学式(1)のフェナザシリン化合物よりも蓄光剤(GLL−300M)の励起スペクトル(図9参照)との重なりが大きいため、より効率よくエネルギー移動をすることができるため、蓄光剤の蓄光効率を挙げることができる。
【0032】
また、上記以外のフェナザシリン重合物として、一般式(3)又は一般式(4)で表されるフェナザシリン重合物を蛍光剤として用いることもできる。
【化3】

【化4】

一般式(3)及び一般式(4)において、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリーロキシ基であり、また、R3 は水素原子、置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリーロキシ基である。
【0033】
上記のR1〜R3におけるアルキル基としては、メチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−またはtert−ブチル、n−、iso−またはneo−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等の直鎖、分岐、環状の炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルキル基が挙げられる。また、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−またはiso−プロポキシ、n−、iso−またはtert−ブトキシ、n−、iso−またはneo−ペントキシ、n−ヘキソキシ、シクロヘキシソキシ、n−ヘプトキシ、n−オクトキシ等の直鎖、分岐、環状の炭素数1〜20、好ましくは1〜10のアルコキシ基が挙げられる。また、アリール基としては、フェニル基、o−、m−、p−トリル基、1−および2−ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜20、好ましくは6〜14のアリール基が挙げられる。アリーロキシ基としては、フェノキシ基、o−、m−、p−トリロキシ基、1−および2−ナフトキシ基、アントロキシ基等の炭素数6〜20、好ましくは6〜14のアリーロキシ基が挙げられる。
【0034】
次に、前記一般式(4)において、Arで表される置換されていてもよい二価の芳香族基としては、o−、p−フェニレン、チオフェン−2,5−ジイル、チオフェン−2,3−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,3−ジイル、ピリジン−4,5−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,2−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、アントラセン−9,10−ジイル、アントラセン−9,10−ジイル、アントラセン−1,4−ジイル、、アントラセン−2,6−ジイル、アントラセン−1,7−ジイル、ビフェニレン−4,4’−ジイルが挙げられ、これらの芳香族化合物の芳香環上が置換された化合物も含まれる。
【0035】
また、前記一般式(4)におけるArとして、芳香環上が置換された化合物としては、アルコキシベンゼン−1,4−ジイル、アルキルベンゼン−1,4−ジイル、アリールベンゼン−1,4−ジイル、アリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアルコキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアルコキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアルコキシベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアルキルベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアルキルベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアルキルベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアリールベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアリールベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアリールベンゼン−1,4−ジイル、2,5−、2,3−、2,6−ジアリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5−トリアリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、2,3,5,6−テトラアリーロキシベンゼン−1,4−ジイル、アルコキシチオフェン−2,5−ジイル、アルキルチオフェン−2,5−ジイル、アリールチオフェン−2,5−ジイル、アリーロキシチオフェン−2,5−ジイル、ジアルコキシチオフェン−2,5−ジイル、ジアルキルチオフェン−2,5−ジイル、ジアリールチオフェン−2,5−ジイル、ジアリーロキシチオフェン−2,5−ジイルが挙げられる。
【0036】
さらに、一般式(3)及び一般式(4)において、R1〜R3における「置換されていてもよい」の置換基としては、後記する重合反応に関与しないものであればよく、例えば、前記したアルコキシ基、アルキル基、アリール基、アリーロキシ基が挙げられる。また、一般式(1)中のnは、数平均重合度であって、3〜30,000の範囲の整数である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の蓄光剤含有樹脂組成物は、暗所で発光する樹脂組成物として、例えば、時計、インテリア、標識、防災機器、家電製品、照明機器、釣具等、幅広い産業分野で利用されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1に係る励起側シャッターを閉じた状態における蛍光スペクトルである。
【図2】比較例1に係る励起側シャッターを閉じた状態における蛍光スペクトルである。
【図3】比較例2に係る励起側シャッターを開けた状態における蛍光スペクトルである。
【図4】蛍光剤(Lumogen F Orange 240)の光吸収スペクトルである。
【図5】実施例1及び比較例1の残光輝度特性を示すグラフである。
【図6】ポリスチレンにフェナザシリン重合物(1)を含有させた樹脂の蛍光スペクトルである。
【図7】比較例3に係る励起側シャッターを開けた状態における蛍光スペクトルである。
【図8】実施例3に係る励起側シャッターを開けた状態における蛍光スペクトルである。
【図9】蓄光剤(GLL−300M)の励起スペクトル及び蛍光スペクトルである。
【図10】。ポリスチレンにフェナザシリン重合物(2)を含有させた樹脂の蛍光スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中に蓄光剤と蛍光剤とが含まれており、該蓄光剤の暗所での蛍光スペクトルと、該蛍光剤の光吸収スペクトルとは、重なり部分を有することを特徴とする蓄光剤含有樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂中に蓄光剤と蛍光剤とが含まれており、該蛍光剤の蛍光スペクトルと、該蓄光剤の励起スペクトルとは、重なり部分を有することを特徴とする蓄光剤含有樹脂組成物。
【請求項3】
蛍光剤は樹脂と相溶する有機系の蛍光物質であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の蓄光剤含有樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂は生分解性プラスチックであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の蓄光剤含有樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−328209(P2006−328209A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153287(P2005−153287)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(593227132)ダイトーエムイー株式会社 (12)
【出願人】(505195627)株式会社光洋 (1)
【Fターム(参考)】