説明

蓄冷アキュムレータおよびその製造方法

【課題】蓄冷材に、タンク接合時の熱が伝達されるおそれがない蓄冷アキュムレータを提供すること。
【解決手段】冷凍サイクルの途中に設置され、冷凍サイクルを循環される冷媒を貯留する貯留部73と、貯留部73に貯留された冷媒を冷却する蓄冷材72と、を備えた蓄冷アキュムレータであって、複数の部材を結合して筒状に形成されたタンク本体70と、タンク本体70の外周に取り付けられ、タンク本体70との間に蓄冷材72が充填される充填空間78を形成する外周カバー71とを備えている蓄冷アキュムレータとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置の冷凍サイクルに用いられ、冷媒を冷却するための蓄冷材を備えた蓄冷アキュムレータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の停車時にエンジンを自動的に停止するいわゆるアイドリングストップ制御を行うことが提案されており、また、このようなエンジン停止時にも冷房を継続可能とする車両用空調装置が提案されている。
【0003】
そして、このような車両用空調装置に蓄冷材を備えた蓄冷アキュムレータが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
この従来の蓄冷アキュムレータは、冷媒を貯留する貯留部を備えたタンク部材と、貯留部の上部に設けられ、蓄冷材を備えた蓄冷熱交換器と、タンク部材の下部に設けられ、貯留部の下部に貯留された液状冷媒を蒸発器へ送出する電動ポンプとを備えている。また、蓄冷熱交換器は、蓄冷材を封入した蓄冷材容器をタンク部材内に設けた保持板の間に配置して構成されている。
【0004】
この従来の蓄冷アキュムレータによれば、車両用空調装置の圧縮機がエンジンにより駆動している間、蒸発器から蒸発冷媒がタンク部材に供給され、この蒸発冷媒で蓄冷熱交換器の蓄冷材を冷却する。その後、エンジンが停止し圧縮機が停止したときには、電動ポンプにより貯留部の液状冷媒を蒸発器に送り、蒸発器で蒸発した気相冷媒が再びタンク部材に送られ、蓄冷熱交換器により冷却されて凝縮されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−51077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような従来技術では、タンク部材の貯留部の内部に蓄冷熱交換器を設置した構造であるため、タンク部材はある程度の容積を有する。したがって、このようなタンク部材を形成する場合は、例えば、円筒の部材とその上下を塞ぐカバーなどのような複数の部材を結合させて形成する。この結合方法としては、溶接などの熱の発生を伴う接合方法が一般的である。
【0007】
しかしながら、上述の従来技術では、蓄冷材を備えた蓄冷熱交換器がタンク部材の内部に設けられた構造であるため、タンク部材を製造する場合、タンク部材の構成部材の接合前の内部が開放された状態で、タンク内部に蓄冷熱交換器を設置し、その後、タンク部材の構成部品どうしを接合するという手順になる。
このため、溶接などに伴う高温の熱が内部の蓄冷材に伝達される可能性が高く、熱が伝達されると蓄冷材の性能低下を招くという問題があった。
【0008】
本発明は、上述の従来の問題に着目して成されたもので、アキュムレータ(タンク)製造時に、蓄冷材にタンク接合時の熱が伝達されるおそれがない蓄冷アキュムレータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために請求項1に係る発明は、
冷凍サイクルの途中に設置され、前記冷凍サイクルを循環される冷媒を貯留する貯留部と、この貯留部に貯留された前記冷媒を冷却する蓄冷材と、を備えた蓄冷アキュムレータであって、
前記貯留部を形成し、複数の部材を結合して筒状に形成されたタンク本体と、
このタンク本体の外周に取り付けられ、前記タンク本体との間に前記蓄冷材が充填される充填空間を形成する外周カバーと、
を備えていることを特徴とする蓄冷アキュムレータとした。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の蓄冷アキュムレータにおいて、
前記タンク本体は、その外周から前記充填空間に突出された熱交換用のフィンが複数形成されていることを特徴とする蓄冷アキュムレータとした。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の蓄冷アキュムレータにおいて、
前記外周カバーは、その内周から前記充填空間に突出されて周方向で前記フィンとフィンとの間に配置された突出部を備えていることを特徴とする蓄冷アキュムレータとした。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の蓄冷アキュムレータにおいて、
前記突出部は、前記フィンを含む前記タンク本体外周と、前記外周カバー内周との周方向の間隔が広い位置ほど突出量が大きく、狭い位置ほど突出量が少ない形状に形成されていることを特徴とする蓄冷アキュムレータとした。
請求項5に係る発明は、請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の蓄冷アキュムレータにおいて、
前記フィンと前記突出部との少なくとも一方は、前記蓄冷材を周方向に流す流路を備えていることを特徴とする蓄冷アキュムレータとした。
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の蓄冷アキュムレータの製造方法であって、
前記複数の部材を結合させてタンク本体を形成する結合工程と、
前記タンク本体の外周に前記外周カバーを取り付けて、前記タンク本体の外周に前記充填空間を形成する外周カバー取付工程と、
前記充填空間に前記蓄冷材を充填する充填工程と、
を備えていることを特徴とする蓄冷アキュムレータの製造方法とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蓄冷アキュムレータでは、タンク本体の外側に外周カバーを取り付け、蓄冷材を充填する充填空間をタンク本体の外周に設けた。
このため、溶接などで複数の部材を結合させてタンク本体を形成する工程後に、その外周にカバーを取り付けて充填空間を形成し、この充填空間に蓄冷材を充填するという製造方法が実施可能となる。
したがって、タンク本体の結合時の熱が、蓄冷材に伝達しないようにできる。
【0012】
さらに、請求項2に係る発明は、貯留部に貯留された冷媒の熱が、タンク本体の外周から突出された複数のフィンから、蓄冷材に伝達される。
したがって、フィンを設けないものと比較して、タンク本体と蓄冷材との接触面積が大きくなり、冷媒と蓄冷材との熱交換が促進される。
また、請求項3に係る発明では、周方向でフィンとフィンとの間に、外周カバーの内周から突出された突出部が配置されている。
したがって、突出部を形成しないものと比較して、充填空間の容積を小さくし、蓄冷材の必要量を抑えることができ、コスト的に有利となる。
加えて、請求項4に係る発明は、タンク本体にフィンを形成した形状に関わらず、突出部により、タンク本体外周と外周カバー内周との間隔の均一化を図ることができる。
したがって、充填空間に充填された蓄冷材は、軸直交方向の厚みの均一化を図ることができ、効率的な蓄冷を行うことができる。すなわち、蓄冷材は、タンク本体からの冷却によりいったん冷却されると、タンク本体から遠い側への熱の伝達が抑制される。よって、蓄冷材の厚みが異なると、厚みが厚い部分では、蓄冷できない無駄な部分が生じるおそれが生じる。本請求項4に係る発明は、このような蓄冷材の無駄となる部分を減らすことができる。
また、請求項5に係る発明では、充填空間への蓄冷材の充填時に、蓄冷材は、フィンと突出部との少なくとも一方に形成された流路を通って周方向に流動する。
したがって、流路を設けない場合と比較して、蓄冷材の流動をスムーズにでき、蓄冷材の充填作業性を向上できる。
【0013】
また、請求項6に係る発明では、複数の部材を溶接などにより結合させてタンク本体を形成する結合工程の後に、タンク本体の外周に外周カバーを取り付けて、タンク本体の外周に充填空間を形成する外周カバー取付工程を実施し、その後に、充填空間に蓄冷材を充填する充填工程を実施する。
したがって、タンク本体の結合時の熱が、蓄冷材に伝達しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は実施例1の蓄冷アキュムレータACを備えた冷凍サイクル装置RCを示す回路図である。
【図2】図2は実施例1の蓄冷アキュムレータACを示す断面図であって、図3のS2−S2線による断面を示している。
【図3】図3は実施例1の蓄冷アキュムレータACを示す断面図であって、図2のS3−S3線による断面を示している。
【図4】図4は実施例1の蓄冷アキュムレータACの製造工程の説明図である。
【図5】図5は実施例1の蓄冷アキュムレータACの製造工程の説明図である。
【図6】図6は実施例1の蓄冷アキュムレータACの製造工程の説明図である。
【図7】図7は実施例2の蓄冷アキュムレータを示す断面図であり、図3と同様の位置での切断状態を示す。
【図8】図8は実施例3の蓄冷アキュムレータを示す断面図であり、図3と同様の位置での切断状態を示す。
【図9】図9は実施例4の蓄冷アキュムレータを示す断面図であり、図3と同様の位置での切断状態を示す。
【図10】図10は実施例5の蓄冷アキュムレータを示す断面図であり、図3と同様の位置での切断状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施の形態の蓄冷アキュムレータ(AC)は、冷凍サイクル(RC)の途中に設置され、冷凍サイクル(RC)を循環される冷媒を貯留する貯留部(73)と、この貯留部(73)に貯留された冷媒を冷却する蓄冷材(72)と、を備えた蓄冷アキュムレータであって、前記貯留部(73)を形成し、複数の部材を結合して筒状に形成されたタンク本体(70)と、このタンク本体(70)の外周に取り付けられ、前記タンク本体(70)との間に前記蓄冷材(72)が充填される充填空間(78)を形成する外周カバー(71)と、を備えていることを特徴とする蓄冷アキュムレータである。
【実施例1】
【0016】
以下に、図1〜図6に基づいて、実施例1の蓄冷アキュムレータACについて説明する。
(構成)
まず、実施例1の蓄冷アキュムレータACを適用した冷凍サイクル装置RCの構成について説明する。
図1に示す冷凍サイクル装置RCは、車両の空調装置に用いられており、圧縮機10、凝縮器20、膨張器30、蒸発器40が冷媒流路50により順次環状に接続されている。
【0017】
なお、冷媒流路50は、圧縮機10の出口と凝縮器20の入口とを接続する第1流路51と、凝縮器20の出口と膨張器30の入口とを接続する第2流路52と、膨張器30の出口と蒸発器40の入口とを接続する第3流路53と、蒸発器40の出口と圧縮機10の入口とを接続する第4流路54とを備えている。
【0018】
圧縮機10は、エンジンルーム(図示省略)に配置されてエンジンEngにより駆動され、冷凍サイクル装置RC内の冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する。
凝縮器20は、エンジンルーム(図示省略)に配置されて、圧縮機10により高温高圧に圧縮された冷媒を、外気との熱交換により冷却して液化する。
膨張器30は、高圧の液状冷媒を、膨張弁やオリフィスをくぐらすことにより、減圧と流量制御を行い、低温・低圧の液状冷媒にする。
蒸発器40は、車室内に配置された空調ユニット(図示省略)内に配置され、空調ユニット内を流れる車室内の空気と熱交換を行うことで、低温・低圧の液状冷媒を蒸発させて、低温・低圧のガス冷媒とするものであり、これにより車室空気を冷却して車室の冷房を行う。
【0019】
さらに、蒸発器40と圧縮機10とを接続する第4流路54の途中には、冷媒を貯留可能な実施例1の蓄冷アキュムレータACが設けられている。
この蓄冷アキュムレータACは、図2および図3に示すように、タンク本体70、外周カバー71、蓄冷材72を備えている。
【0020】
タンク本体70は、冷媒を貯留する貯留部73を形成するもので、円筒状のボディ74と、このボディ74の軸方向の一端である上端を塞ぐアッパカバー75と、前記ボディ74の軸方向の他端である下端を塞ぐロアカバー76とを備えている。また、ボディ74、アッパカバー75、ロアカバー76は、それぞれ金属製で、ボディ74の上端部および下端部と各カバー75,76とは、溶接により結合されている。
【0021】
アッパカバー75は、ボディ74の一端である上端部を塞ぐ円盤状に形成されているとともに、図2に示すように、ボディの上端に溶接により接合される小径部75aと、この小径部75aよりも大径に形成されて小径部75aから外径方向へ突出した大径部75bとを備えている。
【0022】
さらに、アッパカバー75を貫通して、流入管77a、流出管77b、吐出管77cが設けられている。
流入管77aは、図1に示す第4流路54の上流側を構成する管54aに接続され、蒸発器40を通過した気相冷媒を貯留部73に導入するのに用いられ、その先端は、貯留部の上端部に配置されている。
【0023】
流出管77bは、図1に示す第4流路54の下流側を構成する管54bに接続され、貯留部73内の冷媒を圧縮機10へ送るのに用いられる。この流出管77bは、図示のようにU字状に下端が湾曲され、先端の開口端77dが、貯留部73の上部に配置され、中間の湾曲部77eが貯留部73の下部に配置されている。また、湾曲部77eには、図示は省略するが微小の内径の吸入孔が開口されている。
【0024】
吐出管77cは、貯留部73の下部に溜まった液状の冷媒を蒸発器40の上流へ吐出するのに使用され、下端が、貯留部73の底部に設けられた冷媒ポンプ80に接続され、上端部は、吐出路81に接続されている。この吐出路81は、図1に示すように、蒸発器40の上流の第3流路53の途中に接続されている。したがって、冷媒ポンプ80により吸引した蓄冷アキュムレータACに貯留された液状の冷媒は、第3流路53に吐出される。
【0025】
また、膨張器30と蒸発器40との間の第3流路53において、吐出路81の接続位置よりも上流に、この第3流路53を開閉する冷媒流路開閉弁60が設けられている。この冷媒流路開閉弁60の開閉および冷媒ポンプ80の駆動は空調制御回路100により制御される。
【0026】
また、吐出路81の途中には、冷媒の流れる方向を冷媒ポンプ80から第3流路53の方向のみに制限する逆止弁82が設けられている。さらに、第4流路54の下流側の管54bの途中にも、冷媒の流れる方向を蓄冷アキュムレータACから圧縮機10の方向のみに制限する逆止弁55が設けられている。
【0027】
図2に戻り、ロアカバー76は、アッパカバー75と上下対称の形状に形成され、ボディ74の他端である下端部を塞ぐ円盤状に形成されているとともに、ボディ74の下端に溶接により接合される小径部76aと、この小径部76aよりも大径に形成されて小径部76aから外径方向へ突出した大径部76bとを備えている。また、小径部76aには、前述した冷媒ポンプ80を収容する収容凹部76cが形成され、かつ、収容凹部76cに連続する貫通穴76dに、冷媒ポンプ80のモータ80mが、貫通状態で支持されている。
【0028】
アッパカバー75の大径部75bとロアカバー76の大径部76bとには、外周カバー71が装着され、タンク本体70の外周に、充填空間78が形成されている。
外周カバー71は、熱伝導性の低い合成樹脂などにより形成され、図示のように、タンク本体70を内部に収容可能であるとともに、両カバー75,76の大径部75b,76bの外周に装着可能な内径寸法の円筒形状に形成されている。そして、外周カバー71下端部には、ロアカバー76の下面を受け止めるフランジ71fが、内周方向に折り曲げられて形成されている。なお、両カバー75,76の大径部75b,76bの外周端面にはOリング79,79が装着され、このOリング79が外周カバー71の内周に接して充填空間78をシールしている。
【0029】
さらに、アッパカバー75の大径部75bを貫通して、充填空間78に連通された充填孔75cが穿設されている。
【0030】
図3の断面図に示すように、ボディ74の外周には複数のフィン74fが放射状に突出され、これらのフィン74fが充填空間78内に配置されている。また、フィン74fには、ボディ74の軸方向である上下方向に所定の高さで一部を切り欠いた切欠部(流路)74gが設けられている(図2参照)。
この切欠部74gは、充填空間78内の蓄冷材72を周方向に流動させるためのものであり、少なくとも、充填孔75cが形成されている付近のフィン74fに形成するのが好ましい。この切欠部74gは、少なくとも1枚のフィン74fに設けられていればよいが、本実施例1では、複数あるいは全てのフィン74fに設けられているものとする。また、複数枚のフィン74fに切欠部74gを設ける場合、上下方向で同じ高さに設けてもよいが、高さ方向の位置を異ならせて配置してもよい。
【0031】
さらに、外周カバー71には、周方向でフィン74fとフィン74fとの間に配置されて、内径方向に突出部71tが形成されている。
本実施例1では、突出部71tは、突出部71tとフィン74fとの水平方向の間隔が一定になるように形成されている。すなわち、図3に示すように、突出部71tは、フィン74fを含むボディ74の外周と、外周カバー71の内周との周方向の間隔が広い位置ほど突出量が大きく、狭い位置ほど突出量が少ない断面山形形状に形成され、これにより、周方向の間隔t1、外径方向の間隔t2、内径方向の間隔t3が略均一となるように形成されている。
【0032】
充填空間78には、蓄冷材72が充填されている。この蓄冷材72としては、水と高吸水性樹脂(ポリアクリル酸ナトリウム)を含むものや、パラフィンなど周知の流動性を有したものが用いられている。本実施例1の場合、蓄冷材72は、切欠部74gを除いて、フィン74fと突出部71tとの間に、略一定の厚みで配置されている。
【0033】
最後に、空調制御回路100による制御について簡単に説明する。
空調制御回路100は、いわゆるアイドリングストップ制御に伴って圧縮機10が停止した際に、蒸発器40による冷却作動を継続させるための冷却継続制御を行う。なお、アイドリングストップ制御は、走行中の一時的な停車を検出した際に、エンジンEngの駆動を停止させ、発進操作を検出した際にはエンジンEngを始動させる制御である。
上述の冷却継続制御にあっては、空調制御回路100は、通常は開弁している冷媒流路開閉弁60を閉弁させるとともに、通常は停止している冷媒ポンプ80を駆動させる。また、この冷却継続制御は、アイドリングストップ制御の終了あるいは、あらかじめ設定された時間の経過時に終了する。
【0034】
(作用)
次に、実施例1の作用を説明する。
<製造手順>
本実施例1の、蓄冷アキュムレータACの製造手順を説明する。
まず、図示は省略するが、ボディ74、アッパカバー75、ロアカバー76をそれぞれ製造する。
そして、図4に示すように、アッパカバー75に、このアッパカバー75を貫通して、 流入管77a、流出管77b、吐出管77cを取り付ける。
また、ロアカバー76には、収容凹部76cおよび貫通穴76dを形成した後、冷媒ポンプ80を取り付ける。
【0035】
さらに、図示のように、アッパカバー75に取り付けた流入管77a、流出管77b、吐出管77cをボディ74に挿入するとともに、アッパカバー75とボディ74との周方向の相対位置を充填孔75cが切欠部74gを有したフィン74fの位置に軸方向で重なるように配置する。
また、ロアカバー76についても、冷媒ポンプ80と吐出管77cとの位置を調節した上で、ボディ74の下端に当接させる。
【0036】
そして、ボディ74の下端部とロアカバー76の小径部76aとを、図5に示すように、溶接により結合し、かつ、アッパカバー75の小径部75aとボディ74の上端部とを溶接により結合してタンク本体70を形成する。なお、図においてYが溶接部を示す。
【0037】
次に、図6に示すように、両カバー75,76の大径部75b,76bの外周にOリング79を装着した上で、タンク本体70を、外周カバー71にフランジ71fに突き当たるまで挿入する。このとき、外周カバー71の内周に設けた突出部71tが、周方向でボディ74の外周に設けたフィン74fとフィン74fとの間の中央に配置されるように位置決めした上で挿入する。
これにより、タンク本体70と外周カバー71との間に、充填空間78が形成される。
【0038】
その後、蓄冷材充填機90により、アッパカバー75の充填孔75cから粘性を有した流動体状の蓄冷材72を充填空間78へ充填する。このとき、フィン74fには切欠部74gを設けているため、充填孔75cから充填された蓄冷材72は、切欠部74gを通って周方向への流動がスムーズに行われる。
【0039】
以上のように、溶接を用いてボディ74と両カバー75,76とを結合させる工程の後に蓄冷材72を充填するため、蓄冷材72に溶接の熱による悪影響を与えることがない。
【0040】
<走行時(非アイドリングストップ時)>
次に、実施例1の蓄冷アキュムレータACを用いた冷凍サイクル装置RCの作動を説明する。
エンジンEngを駆動させている走行時には、圧縮機10が駆動しており、圧縮機10は、冷媒を高温高圧に圧縮して吐出する。この高温高圧の冷媒は、凝縮器20において外気と熱交換(冷却)されて液化して、膨張器30に送られる。膨張器30では、冷媒が減圧されて低温・低圧の液状となり、さらに、冷媒は、蒸発器40において、車室内の空気と熱交換され、車室内空気を冷却するとともに、蒸発して低温・低圧のガス冷媒となり、蓄冷アキュムレータACの貯留部を通って圧縮機10に吸引される。
【0041】
また、蓄冷アキュムレータACでは、冷媒が蓄冷材72から吸熱し、蓄冷材72が冷却される。そして、車室内の空調が安定してくると、蒸発器40の負荷が下がるため、冷媒は蓄冷アキュムレータACの貯留部内に液化して蓄えられる。
【0042】
すなわち、蓄冷アキュムレータACにあっては、第4流路54の上流側の管54aからタンク本体70に流入した冷媒は、液化した冷媒が貯留部の下部に溜まり、気化した冷媒は貯留部の上部に溜まる。そして、上部の気化した冷媒は、下流側の管の開口端から吸入され、湾曲部77eの吸入孔(図示省略)からタンク本体70の下部の液状冷媒を僅かに吸い込んで混合されながら圧縮機10に吸入される。なお、冷媒には潤滑油が含まれており、この潤滑油成分を圧縮機10に供給するために吸入孔(図示省略)から液状冷媒を吸い込むようにしている。
【0043】
<アイドリングストップ時>
車両の停車時に、図示を省略した総合コントローラの制御に基づいて、アイドリングストップ制御が実行された際には、エンジンEngの駆動を停止するのに伴い圧縮機10の駆動が停止され、圧縮機10からの高圧冷媒の吐出が停止される。
【0044】
このとき、空調制御回路100は、アイドリングストップ制御の実行に応じて、冷媒ポンプ80の駆動を開始するとともに、冷媒流路開閉弁60を閉弁させる。
【0045】
したがって、蓄冷アキュムレータACに貯留された低圧の液状冷媒が冷媒ポンプ80に吸入されて吐出路81から第3流路53を介して蒸発器40に供給される。これにより、蒸発器40では、液状冷媒の蒸発が継続され、蒸発器40による冷却を維持することができる。
しかも、このとき、冷媒流路開閉弁60が閉弁されており、かつ、圧縮機10の上流の第4流路54に逆止弁55が設けられているため、圧縮機10および凝縮器20側の高圧の冷媒と、蒸発器40および蓄冷アキュムレータAC側の低圧の冷媒とは、圧力差による冷媒の移動が規制され、蒸発器40側では低圧に維持される。
加えて、蓄冷アキュムレータACでは、蒸発器40で気化した冷媒が流入するが、蓄冷材72により吸熱して凝縮させるため、低圧冷媒の圧力上昇を抑えることができ、これによっても、蒸発器40における冷却力を、より長く維持することができる。
【0046】
(実施例1の効果)
以上説明した実施例1の蓄冷アキュムレータACは、以下に列挙する効果を奏する。
a)蓄冷材72を充填する充填空間78をタンク本体70の外周に設けた。このため、タンク本体70の製造においてボディ74と両カバー75,76とを溶接により結合してタンク本体70を形成した後に、タンク本体70と外周カバー71との間に充填空間78を形成し、この充填空間78に蓄冷材72を充填するという製造手順となる。
したがって、蓄冷材72に、タンク本体70の製造時の溶接による熱が伝達しないようにでき、この熱で蓄冷材72の性能低下が生じるのを防止できる。
【0047】
b)ボディ74には、充填空間78に突出する複数のフィン74fを形成した構造とした。このため、フィン74fを形成しないものと比較して、貯留部73の冷媒温度の伝達効率が高くなる。
【0048】
c)フィン74fには、流路としての切欠部74gを形成したため、蓄冷材72の充填時に、蓄冷材72がこの切欠部74gを通って周方向に流動するのが容易となる。
したがって、切欠部74gを形成しないものと比較して、充填作業がスムーズとなり、作業能率を向上できるとともに、充填空間78における蓄冷材72の充填不足などの不具合が生じるのを抑制できる。
【0049】
d)外周カバー71には、充填空間78に突出する突出部71tを形成した。このため、突出部71tを形成しない場合と比較して、充填空間78に充填する蓄冷材72の必要量を抑えることができる。
特に、本実施例1では、ボディ74に形成したフィン74fとの間隔が、周方向の間隔t1、外径方向の間隔t2、内径方向の間隔t3が略一致するようにした。蓄冷材72は、蓄冷されると硬化し、その硬化部分よりも遠い部分は、蓄冷されにくく、十分な蓄冷作用を発揮できなくなる場合がある。このように、蓄冷材72を一定の厚みに形成することで、蓄冷材72を、実質的に固化して蓄冷できる範囲の一定の厚みとすることができ、無駄な蓄冷材72を省いて、コスト低減を図ることが可能となる。
【0050】
e)第3流路53において吐出路81の接続位置よりも上流に冷媒流路開閉弁60を設け、圧縮機10の停止時には、冷媒流路開閉弁60を閉弁させるようにした。
したがって、圧縮機10の停止時に、冷媒流路開閉弁60の閉弁により蒸発器40側を低圧に保ち、冷房継続時間の確保、蓄冷材72の容量削減を図ることが可能となる。
【0051】
(他の実施例)
以下に、他の実施例について説明するが、これら他の実施例は、実施例1の変形例であるため、その相違点についてのみ説明し、実施例1あるいは他の実施例と共通する構成については同じ符号を付けることで説明を省略するとともに、作用効果についても実施例1と共通する説明は省略する。
【実施例2】
【0052】
図7に基づいて実施例2の蓄冷アキュムレータについて説明する。
この実施例2の蓄冷アキュムレータは、充填空間78への蓄冷材72の充填時に、蓄冷材72を周方向に流動させる流路271gを、外周カバー271の突起部271tに形成した例である。
この流路271gは、実施例1の場合と同様に、周方向に複数設けられた突起部271tの一部あるいは全てに形成してもよい。あるいは、複数の突起部271tのうち、充填孔75cと軸方向で一致する位置に設けられた突起部271tについてその全て無くしてこれを流路271gとして、充填孔75cからの蓄冷材72の充填を促進させるようにしてもよい。
なお、この実施例2にあっても、上記a)b)d)e)の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0053】
図8に基づいて実施例3の蓄冷アキュムレータについて説明する。
この実施例3の蓄冷アキュムレータは、突出部71tおよびフィン74fのいずれにも流路を形成しない例である。この場合も、フィン74fの先端部と外周カバー71の内周との間に間隔が空けられており、また、図2に示すように、フィン74fの上端と、アッパカバー75の大径部75bとの間に、十分な間隔が確保されているため、蓄冷材72は周方向に移動することができる。
【0054】
また、流路を設けない場合、走行時に、蓄冷材72が周方向に移動するのを抑えることが可能となる。
なお、実施例3では、図示は省略するが、突出部71tおよびフィン74fの両方あるいはいずれか一方に前述した切欠部74gあるいは流路271gが形成されているものとする。したがって、この実施例3にあっても、上記a)b)d)e)の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0055】
図9に基づいて実施例4の蓄冷アキュムレータについて説明する。
この実施例4の蓄冷アキュムレータは、突出部71tを形成しない外周カバー471を用いた例である。
なお、実施例4では、図示は省略するが、フィン74fに切欠部74gが形成されているものとする。したがって、この実施例4にあっても、上記a)b)c)e)の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0056】
図10に基づいて実施例5の蓄冷アキュムレータについて説明する。
この実施例5の蓄冷アキュムレータは、ボディ574のフィン574fの先端を外周カバー471の内周に当接させた例である。なお、実施例5では、フィン574fには、切欠部74gを設けない構成としている。
【0057】
この実施例5では、充填空間78が、フィン574fで周方向に仕切られるため、走行時に、蓄冷材72が周方向に移動することが無く、周方向の場所により蓄冷材72の量(高さ)が異なることが無く、安定した蓄冷性能を得ることができる。
【0058】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1〜実施例5について詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1〜実施例5に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0059】
例えば、実施例1〜5では、本発明の冷媒サイクル装置を車両の空調装置に適用した例を示したが、流体を貯留し、かつ、貯留部の内部に流体流路を形成するものであれば、その適用範囲は、車両に限定されるものではなく、家庭用、産業用の空調装置などにも適用できる。
【0060】
また、実施例1,2では、蓄冷材を周方向に移動させる流路をフィン74fと突出部271tのいずれか一方に設けた例を示したが、その両方に設けてもよい。
【0061】
また、実施例1〜5では、蓄冷材72の充填時に、蓄冷材72が周方向へ流動を促進させるために、フィン74fあるいは突出部71tに切欠部74gや流路271gを形成した例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、外周カバーの一部に、充填空間78を外径方向に拡げるための膨らみを形成してもよい。
【0062】
また、実施例1〜5では、ボディ74にフィン74fを形成した例を示したが、ボディには、フィンを形成しなくても、所期の効果は得ることができる。
【0063】
また、実施例1〜5では、蓄冷アキュムレータに貯留した冷媒を蒸発器40に戻す冷媒ポンプ80を設けた例を示したが、このような冷媒ポンプを有しない蓄冷アキュムレータにも適用できる。
【符号の説明】
【0064】
AC 蓄冷アキュムレータ
RC 冷凍サイクル装置
70 タンク本体
71 外周カバー
71t 突出部
72 蓄冷材
73 貯留部
74 ボディ(複数の部材)
74f フィン
74g 切欠部(流路)
75 アッパカバー(複数の部材)
76 ロアカバー(複数の部材)
78 充填空間
271 外周カバー
271g 流路
271t 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルの途中に設置され、前記冷凍サイクルを循環される冷媒を貯留する貯留部と、この貯留部に貯留された前記冷媒を冷却する蓄冷材と、を備えた蓄冷アキュムレータであって、
前記貯留部を形成し、複数の部材を結合して筒状に形成されたタンク本体と、
このタンク本体の外周に取り付けられ、前記タンク本体との間に前記蓄冷材が充填される充填空間を形成する外周カバーと、
を備えていることを特徴とする蓄冷アキュムレータ。
【請求項2】
前記タンク本体は、その外周から前記充填空間に突出された熱交換用のフィンが複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄冷アキュムレータ。
【請求項3】
前記外周カバーは、その内周から前記充填空間に突出されて周方向で前記フィンとフィンとの間に配置された突出部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の蓄冷アキュムレータ。
【請求項4】
前記突出部は、前記フィンを含む前記タンク本体外周と、前記外周カバー内周との周方向の間隔が広い位置ほど突出量が大きく、狭い位置ほど突出量が少ない形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蓄冷アキュムレータ。
【請求項5】
前記フィンと前記突出部との少なくとも一方は、前記蓄冷材を周方向に流す流路を備えていることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか1項に記載の蓄冷アキュムレータ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の蓄冷アキュムレータの製造方法であって、
前記複数の部材を結合させてタンク本体を形成する結合工程と、
前記タンク本体の外周に前記外周カバーを取り付けて、前記タンク本体の外周に前記充填空間を形成する外周カバー取付工程と、
前記充填空間に前記蓄冷材を充填する充填工程と、
を備えていることを特徴とする蓄冷アキュムレータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−180054(P2012−180054A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45372(P2011−45372)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】