説明

蓄冷器式冷凍機及び仕切り部材

【課題】蓄冷器に収容された蓄冷材を仕切るためのものであって、蓄冷器の内周面との間に隙間を形成しないように高い寸法精度を有するとともに、製造コストを低減できる仕切り部材を有する蓄冷器式冷凍機を提供する。
【解決手段】シリンダ12で発生した冷熱を、内部に収容された蓄冷材18a、18bに蓄冷する蓄冷器14と、蓄冷材18a、18bを仕切る仕切り部材40とを有する。仕切り部材40は、中央に開口部51が形成されたとともに、外周面が蓄冷器14の内周面に嵌合するように形成されたリング部材50と、開口部51を塞ぐように設けられた、蓄冷材18a、18bが通過不能でかつ冷媒ガスが通過可能なフィルタ部材61、62と、補強部材63とが積層されてなる積層体60とを含む。積層体60の周縁部60aは、リング部材50により積層体60の積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリウムガス等の冷媒ガスを用い、蓄冷材を収容した蓄冷器を有する蓄冷器式冷凍機、及び、蓄冷器式冷凍機に備えられる、蓄冷材を仕切る仕切り部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば4K程度の極低温を得るために、ヘリウムガス等の冷媒ガスを用い、蓄冷材を収容した蓄冷器を有する蓄冷器式冷凍機が用いられている。また、蓄冷器式冷凍機として、例えばギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機が用いられている。
【0003】
GM冷凍機は、圧縮機からの例えばヘリウムガスよりなる冷媒ガスをシリンダ内に形成された膨張空間に供給し、供給した冷媒ガスを膨張空間で膨張させることによって、冷熱を発生する。発生した冷熱により極低温を得るために、GM冷凍機は、通常、複数段により構成される。
【0004】
GM冷凍機の各段は、シリンダと、シリンダ内に設けられたディスプレーサを有する。ディスプレーサは、シリンダ内に、シリンダに沿って往復動可能に設けられており、ディスプレーサの一端とシリンダとの間に膨張空間を形成する。また、ディスプレーサの内部は、膨張空間に冷媒ガスを供給及び排出するための冷媒ガス流路となっている。また、ディスプレーサの内部には、冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷するための蓄冷材が収容されている。
【0005】
このようなディスプレーサの内部には、蓄冷材を所定の空間に充填するために、また、複数の種類の蓄冷材を用いるときに蓄冷材が混合しないように、蓄冷材を仕切る仕切り部材が設けられている。仕切り部材は、蓄冷材が通過不能でかつ冷媒ガスが通過可能に設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−293924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記したGM冷凍機のディスプレーサ内部に設けられた仕切り部材には、次のような問題がある。
【0008】
仕切り部材の外周面の寸法精度が高くないと、仕切り部材の外周面とディスプレーサの内周面との間に隙間が形成され、形成された隙間を介して蓄冷材が移動したり混合したりするおそれがある。従って、仕切り部材の外周面とディスプレーサの内周面との間に隙間を形成しないように、仕切り部材の外周の形状を寸法精度良く作成する必要がある。
【0009】
しかし、特許文献1に記載されているように、従来の仕切り部材は、2枚の金属円板の間に金網を挟んだ状態で、2枚の金属円板を溶接により固定することによって、形成されている。そのため、2枚の金属円板それぞれの外周の寸法精度、及び、金網の外周の寸法精度の全てを向上させないと、仕切り部材の外周の形状を寸法精度良く作成できないという問題がある。また、従来の仕切り部材は、2枚の金属円板を含み、フィルタ機能を有する金網を除いた部品の数が多い上、2枚の金属円板を、それらの軸心を極めて高い精度で一致させた状態で相互に固定する必要がある。そのため、製造コストが増大するという問題がある。
【0010】
また、上記した問題は、GM冷凍機のディスプレーサ内に設けられた仕切り部材に限られず、パルス管冷凍機の蓄冷管等、各種の蓄冷器式冷凍機の蓄冷器又は蓄冷管の内部に設けられた仕切り部材にも共通する課題である。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、蓄冷器式冷凍機の蓄冷器に収容された蓄冷材を仕切るためのものであって、蓄冷器の内周面との間に隙間を形成しないように高い寸法精度を有するとともに、製造コストを低減できる仕切り部材、及びその仕切り部材を有する蓄冷器式冷凍機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる手段を講じたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、冷媒ガスを膨張させるためのシリンダと、内部に収容された蓄冷材を含み、前記冷媒ガスの膨張に伴って前記シリンダで発生した冷熱を、前記蓄冷材に蓄冷する蓄冷器と、前記蓄冷器に設けられており、前記蓄冷材を仕切る仕切り部材とを有し、前記仕切り部材は、中央に開口部が形成されているとともに、外周面が前記蓄冷器の内周面に嵌合するように形成されているリング部材と、前記開口部を塞ぐように設けられており、前記蓄冷材が通過不能でかつ前記冷媒ガスが通過可能なフィルタ部材と、前記フィルタ部材を補強する補強部材とが積層されてなる積層体とを含み、前記積層体の周縁部は、前記リング部材により前記積層体の積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられている、蓄冷器式冷凍機である。
【0014】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記リング部材は、中央に前記開口部が形成された本体部と、前記積層方向に沿って前記本体部の一方の側に設けられた爪部とを有し、前記積層体の周縁部は、前記爪部と前記本体部とにより前記積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられており、前記積層体は、前記爪部側の最表層に一の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである。
【0015】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記積層体は、前記本体部側の最表層に他の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである。
【0016】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記補強部材は、パンチングメタルである。
【0017】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記フィルタ部材は、金網である。
【0018】
また、本発明は、冷媒ガスを膨張させるためのシリンダと、内部に収容された蓄冷材を含み、前記冷媒ガスの膨張に伴って前記シリンダで発生した冷熱を、前記蓄冷材に蓄冷する蓄冷器とを有する蓄冷器式冷凍機に備えられる、前記蓄冷材を仕切る仕切り部材において、中央に開口部が形成されているとともに、外周面が前記蓄冷器の内周面に嵌合するように形成されているリング部材と、前記開口部を塞ぐように設けられており、前記蓄冷材が通過不能でかつ前記冷媒ガスが通過可能なフィルタ部材と、前記フィルタ部材を補強する補強部材とが積層されてなる積層体とを有し、前記積層体の周縁部は、前記リング部材により前記積層体の積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられている。
【0019】
また、本発明は、上述の仕切り部材において、前記リング部材は、中央に前記開口部が形成された本体部と、前記積層方向に沿って前記本体部の一方の側に設けられた爪部とを有し、前記積層体の周縁部は、前記爪部と前記本体部とにより前記積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられており、前記積層体は、前記爪部側の最表層に一の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである。
【0020】
また、本発明は、上述の仕切り部材において、前記積層体は、前記本体部側の最表層に他の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである。
【0021】
また、本発明は、上述の仕切り部材において、前記補強部材は、パンチングメタルである。
【0022】
また、本発明は、上述の仕切り部材において、前記フィルタ部材は、金網である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄冷器式冷凍機の蓄冷器に収容された蓄冷材を仕切る仕切り部材において、蓄冷器の内周面との間に隙間を形成しないように高い寸法精度を有するとともに、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係るGM冷凍機の構成を示す概略断面図である。
【図2】実施の形態に係るGM冷凍機における第2段目ディスプレーサの構成を示す概略断面図である。
【図3】実施の形態に係る仕切り部材の構成を示す概略断面図である。
【図4】仕切り部材の構成を示す上面図である。
【図5】仕切り部材の構成を示す下面図である。
【図6】補強部材の構成を示す平面図である。
【図7】仕切り部材の別の例の構成を示す概略断面図である。
【図8】補強部材の別の例の構成を示す平面図である。
【図9】仕切り部材の別の例の構成を示す概略断面図である。
【図10】仕切り部材が筒部材の中心軸に直角な軸の周りに回転しないようにするための寸法の関係を説明するための図である。
【図11】比較例に係るGM冷凍機における第2段目ディスプレーサの構成を示す概略断面図である。
【図12】比較例に係る仕切り部材の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
【0026】
図1を参照し、実施の形態に係るGM冷凍機について説明する。このGM冷凍機は、本発明に係る仕切り部材を有する蓄冷器式冷凍機をGM冷凍機に適用した例であり、数K〜20K程度の極低温を得るのに適した2段構成を有する。
【0027】
図1は、本実施の形態に係るGM冷凍機の構成を示す概略断面図である。
【0028】
GM冷凍機は、圧縮機10、第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12、第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14、クランク機構15、冷媒ガス流路16、蓄冷材17、18、ステージ19、20、膨張空間21、22、中空空間(冷媒ガス流路)23、24を有する。
【0029】
なお、図1に示す配置において、第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12、第1段目ディスプレーサ13及び第2段目ディスプレーサ14の上端は高温端であり、下端は低温端である(図2においても同様)。
【0030】
圧縮機10は、ヘリウムガス(冷媒ガス)を約20Kgf/cmに圧縮し、高圧ヘリウムガスを生成する。生成された高圧ヘリウムガスは、吸気弁V1、冷媒ガス流路16を介して第1段目シリンダ11内に供給される。また、第1段目シリンダ11から排出された低圧ヘリウムガスは、冷媒ガス流路16、排気弁V2を介して圧縮機10に回収される。
【0031】
第1段目シリンダ11には、第2段目シリンダ12が結合されている。第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12内には、相互に連結された第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14がそれぞれ収容されている。
【0032】
第1段目シリンダ11からは、駆動軸Shが上方に延在し、駆動用モータMに結合したクランク機構15と結合している。
【0033】
第1段目ディスプレーサ13は、第1段目シリンダ11内に、第1段目シリンダ11に沿って往復動可能に設けられている。第1段目ディスプレーサ13は、第1段目シリンダ11の一端に、膨張空間21を形成する。第1段目ディスプレーサ13は、例えば円筒形状を有している。
【0034】
また、第1段目ディスプレーサ13の内部には、膨張空間21に冷媒ガスを供給及び排出するための中空空間(冷媒ガス流路)23が形成されている。第1段目ディスプレーサ13が第1段目シリンダ11に沿って往復動する際に、膨張空間21における冷媒ガスの膨張に伴って冷熱が発生する。
【0035】
なお、第1段目ディスプレーサ13は、本発明における蓄冷器に相当する。
【0036】
中空空間23内には、蓄冷材17が収容されている。蓄冷材17は、膨張空間21から冷媒ガスを排出する際に、排出した冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷する。すなわち、蓄冷材17は、膨張空間21における冷媒ガスの膨張に伴って発生した冷熱を蓄冷する。
【0037】
第2段目ディスプレーサ14は、第2段目シリンダ12内に、第2段目シリンダ12に沿って往復動可能に設けられている。第2段目ディスプレーサ14は、第2段目シリンダ12の一端に、膨張空間22を形成する。第2段目ディスプレーサ14は、例えば円筒形状を有している。
【0038】
また、第2段目ディスプレーサ14の内部には、膨張空間22に冷媒ガスを供給及び排出するための中空空間(冷媒ガス流路)24が形成されている。第2段目ディスプレーサ14が第2段目シリンダ12に沿って往復動する際に、膨張空間22における冷媒ガスの膨張に伴って冷熱が発生する。
【0039】
なお、第2段目ディスプレーサ14は、本発明における蓄冷器に相当する。
【0040】
中空空間24内には、蓄冷材18が収容されている。蓄冷材18は、膨張空間22から冷媒ガスを排出する際に、排出した冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷する。すなわち、蓄冷材18は、膨張空間22における冷媒ガスの膨張に伴って発生した冷熱を蓄冷する。
【0041】
第1段目シリンダ11の下端(低温端)を囲むように、第1段目のステージ19が熱的に結合されており、第2段目シリンダ12の下端(低温端)を囲むように、第2段目のステージ20が熱的に結合している。
【0042】
第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12は、例えばステンレス綱(例えばSUS304)等によって形成されていることが好ましい。これにより、第1段目シリンダ11、第2段目シリンダ12に、高い強度、低い熱伝導率、及び高いヘリウムガス遮蔽能を持たせることができる。
【0043】
第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14は、例えば布入りフェノール(ベークライト)等によって形成されていることが好ましい。これにより、第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14について、軽量化するとともに、耐摩耗性及び強度を向上させ、高温側から低温側への侵入熱量を低減することができる。
【0044】
第1段目の蓄冷材17は、例えば金網等により構成されることが好ましく、第2段目の蓄冷材18は、例えば鉛球又は磁性蓄冷材等により構成されることが好ましい。これにより、低温領域において、十分高い熱容量を確保することができる。
【0045】
このように構成されているGM冷凍機では、以下のようにして冷熱を発生する。
【0046】
圧縮機10から吸気弁V1を介して供給された、冷媒ガスである高圧ヘリウムガスは、冷媒ガス流路16を介して第1段目シリンダ11内に供給される。そして、開口(冷媒ガス流路)23a、蓄冷材17が収容された中空空間(冷媒ガス流路)23、開口(冷媒ガス流路)23bを通って、第1段目の膨張空間21に供給される。
【0047】
第1段目の膨張空間21に供給された高圧ヘリウムガスは、更に開口(冷媒ガス流路)24a、蓄冷材18が収容された中空空間(冷媒ガス流路)24、開口(冷媒ガス流路)24bを通って第2段目の膨張空間22に供給される。
【0048】
なお、冷媒ガス流路23a、23b、24a、24bは、冷媒ガスの流れを説明するために機能的に記載したものであり、図2を用いて説明する実際の構造とは異なる。
【0049】
吸気弁V1が閉じ、排気弁V2が開く際には、第2段目シリンダ12、第1段目シリンダ11内の高圧ヘリウムガスは、吸気の場合とは逆の経路をたどって冷媒ガス流路16、排気弁V2を介して圧縮機10に回収される。
【0050】
GM冷凍機の作動時においては、クランク機構15によって駆動用モータMの回転駆動力が駆動軸Shの往復駆動力に変換される。そして、駆動軸Shによって、第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14が、図1中の矢印で示すように、上下に(それぞれ第1段目シリンダ11及び第2段目シリンダ12に沿って)往復駆動される。
【0051】
駆動軸Shによって第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14が駆動軸Shと反対側(図1の下方)に駆動される際には、吸気弁V1が開き、排気弁V2が閉じる。そして、第1段目シリンダ11内の膨張空間21、及び第2段目シリンダ12内の膨張空間22に高圧ヘリウムガスが供給される(供給工程)。
【0052】
また、駆動軸Shによって第1段目ディスプレーサ13、第2段目ディスプレーサ14が駆動軸Sh側(図1の上方)に駆動される際には、吸気弁V1が閉じ、排気弁V2が開く。そして、第1段目シリンダ11内の膨張空間21、及び第2段目シリンダ12内の膨張空間22が低圧になるとともに、膨張空間21及び膨張空間22からヘリウムガスは排出され、圧縮機10に回収される(排出工程)。
【0053】
このとき、膨張空間21、22において、ヘリウムガスが膨張することによって、冷熱が発生する。冷熱を発生し、冷却されたヘリウムガスは、膨張空間21、22から排出される際に、蓄冷材17、18と接触し、熱交換することによって、蓄冷材17、18を冷却する。すなわち、蓄冷材17、18に、発生した冷熱が蓄冷される。
【0054】
次の供給工程で供給される高圧ヘリウムガスは、蓄冷材17、18を通って供給されることにより冷却される。冷却されたヘリウムガスが膨張空間21、22で膨張することにより、さらに冷却が進む。
【0055】
以上のようにして、供給工程と排出工程とを繰り返すことにより、第1段目シリンダ11内の膨張空間21が、例えば40K〜70K程度の温度に冷却され、第2段目シリンダ12内の膨張空間22が、例えば数K〜20K程度の温度に冷却される。
【0056】
次に、図2を参照し、第2段目ディスプレーサ14の詳細な構成について説明する。図2は、本実施の形態に係るGM冷凍機における第2段目ディスプレーサ14の構成を示す概略断面図である。
【0057】
第2段目ディスプレーサ14は、筒部材30、蓋部材31、32を有する。筒部材30の内部には、冷媒ガスが流れるための冷媒ガス流路である中空空間24が形成されている。
【0058】
筒部材30の上端(高温端)には、蓋部材31が挿入接着されている。蓋部材31の上端(高温端)には、開口33(図1に示す24a)が設けられている。開口33には、中空空間(冷媒ガス流路)24の高温端が連通している。なお、蓋部材31は、第1段目ディスプレーサ13に、連結機構25(図1参照)を介して連結されている。
【0059】
筒部材30の下端(低温端)には、蓋部材32が挿入接着されている。蓋部材32の外周面には、冷媒ガス流路24を形成する開口34が設けられている。開口34には、中空空間(冷媒ガス流路)24の低温端が連通している。
【0060】
前述したように、筒部材30、蓋部材31、32は、例えば布入りフェノール(ベークライト)等によって形成されていることが好ましい。
【0061】
図2に示すように、中空空間(冷媒ガス流路)24には、前述した蓄冷材18に相当する、複数種(図では2種類)の蓄冷材18a、18bが充填されている。そして、中空空間(冷媒ガス流路)24の中を冷媒ガスが流れることによって、流れる冷媒ガスと蓄冷材18a、18bが熱交換し、蓄冷材18a、18bが冷熱を蓄冷するように構成されている。前述したように、蓄冷材18aとして、鉛球やビスマス球を用いることができ、蓄冷材18bとして、磁性蓄冷材を用いることができる。磁性蓄冷材は、15K以下の低温で、鉛よりも大きな比熱を有する。このため、蓄冷材18として、高温側の蓄冷材18(18a)を鉛球とし、低温側の蓄冷材18(18b)を磁性蓄冷材とすることによって、蓄冷材18の高温端から低温端までの熱容量を最適化することができる。
【0062】
第2段目ディスプレーサ14は、中空空間(冷媒ガス流路)24に設けられた、仕切り部材40(40a、40b、40c)を有する。仕切り部材40は、蓄冷材18a、18bを中空空間24内に充填するために、また、蓄冷材18a、18bが相互に混合しないように、蓄冷材18a、18bを仕切るためのものである。仕切り部材40aは、蓋部材31と蓄冷材18aとの間に設けられている。仕切り部材40bは、蓄冷材18aと蓄冷材18bとの間に設けられている。仕切り部材40cは、蓄冷材18bと蓋部材32との間に設けられている。
【0063】
次に、図3から図6を参照し、仕切り部材40の構成について説明する。
【0064】
図3は、本実施の形態に係る仕切り部材40の構成を示す概略断面図である。図4及び図5は、それぞれ仕切り部材40の構成を示す上面図及び下面図である。図6は、補強部材63の構成を示す平面図である。
【0065】
なお、図4の上面図及び図5の下面図において、それぞれフィルタ部材61、62にハッチングを付して表示している。
【0066】
仕切り部材40は、リング部材50と、積層体60とを有する。
【0067】
リング部材50は、中央に開口部51が形成されているとともに、外周面が第2段目ディスプレーサ14の筒部材30の内周面に嵌合するように形成されている。リング部材50は、例えば真鍮よりなる。
【0068】
積層体60は、フィルタ部材61、62と、補強部材63とが、第2段目ディスプレーサ14の軸方向に沿って積層されてなるものであり、リング部材50の開口部51を塞ぐように設けられている。積層体60の周縁部60aは、リング部材50により積層体60の積層方向に沿って前後両側から、すなわち図3における上下両側から挟んで締め付けられている。
【0069】
フィルタ部材61、62は、蓄冷材が通過不能でかつ冷媒ガスが通過可能に設けられている。フィルタ部材61、62として、フェルト等の繊維状物質、焼結金属等の多孔質体を含め、各種の部材を用いることができる。そのうち、フィルタ部材61、62として、例えば金網を1枚で、又は複数枚重ねた状態で用いることが好ましい。金網を用いると、積層体60の厚さを薄くすることができるとともに、金網の隙間の寸法精度を高くすることができる。従って、冷媒ガスが仕切り部材40を通過する際に発生する圧力損失を低減することができ、また、第2段目ディスプレーサ14の軸方向に垂直な断面の面内における圧力損失のばらつきも低減することができる。蓄冷材の粒径が例えば150〜500μmであるとき、金網として、例えばSUS304よりなる、メッシュサイズ300(隙間の幅寸法が約80μm)のものを用いることができる。
【0070】
補強部材63は、穴部63aが形成されており、冷媒ガスが通過可能であるとともに、フィルタ部材61、62を補強するためのものである。補強部材63として、パンチングメタルを用いることができる。パンチングメタルとして、例えばSUS304よりなり、穴部63aの穴径Dが1.0mm、穴部63aのピッチPが1.5mm、厚さが0.5mmである、60°千鳥タイプのものを用いることができる。
【0071】
仕切り部材40の外周面と筒部材30の内周面との間に隙間が形成されると、形成された隙間を介して蓄冷材が移動する。そのため、仕切り部材40の外周面と筒部材30の内周面との間に隙間が形成されないことが好ましい。一方、本実施の形態に係る仕切り部材40は、冷媒ガスを通過させるフィルタ部材61、62を含む積層体60の周縁部60aは筒部材30の内周面と嵌合せず、リング部材50の外周面が筒部材30の内周面と嵌合するように形成されている。これにより、仕切り部材40全体の外周面の寸法精度を、リング部材50の外周面の寸法精度により調整することができる。従って、仕切り部材40を、外周面の寸法精度良く製造することができる。
【0072】
リング部材50は、中央に開口部51が形成された本体部52と、第2段目ディスプレーサ14の軸方向に沿って本体部52の一方の側に設けられた爪部53を有していてもよい。爪部53は、本体部52と一体に形成されていてもよい。そして、積層体60の周縁部60aが、爪部53と本体部52とにより、積層体60の積層方向に沿って前後両側から、すなわち図3における上下両側から挟んで締め付けられていてもよい。換言すれば、積層体60の周縁部60aが、爪部53によりかしめられることによって、固定されていてもよい。
【0073】
本体部52と爪部53とは、積層体60の周縁部60aを外側から取り囲むように形成されていてもよい。例えば、図3の点線で示すように、爪部53を、本体部52の周縁を取り囲むとともに、本体部52から上方に向かって延びるように、形成しておく。そして、本体部52上に積層体60を搭載した状態で、例えば爪部53を図示しない治具等によりリング部材50の内側中央に向かって折り曲げることによって、積層体60の周縁部60aを、変形した爪部53と本体部52とにより挟んで締め付けることができる。あるいは、リング部材50に上下両側から圧縮応力を加え、爪部53を押し潰すことによって、積層体60の周縁部60aを、変形した爪部53と本体部52とにより挟んで締め付けることができる。
【0074】
なお、図3に示す例では、本体部52は、積層体60が載置される載置部54と、載置部54に載置されている積層体60の周縁部60aの周囲を囲む囲み部55とを有する。これにより、リング部材50は、積層体60の周縁部60aが仕切り部材40の外周面に露出しないように積層体60を保持することができる。
【0075】
また、積層体60は、爪部53側の最表層にフィルタ部材61が位置するとともに、本体部52側の最表層にフィルタ部材62が位置するように、積層されたものであってもよい。すなわち、積層体60は、爪部53側から本体部52側、すなわち上側から下側に向かって、フィルタ部材61、補強部材63、フィルタ部材62の順に、計3層が積層されたものであってもよい。これにより、積層体60の爪部53側の表面に、補強部材63に形成された穴部63aに起因した凹凸が形成されることを防止できる。そして、変形した爪部53により積層体60の周縁部60aを挟む際に、爪部53と積層体60の表面との間に隙間が発生し、発生した隙間を介して蓄冷材が仕切り部材40を超えて移動することを防止できる。
【0076】
なお、積層体が、爪部53側の最表層にフィルタ部材が位置するように、積層されたものであってもよい。すなわち、積層体が、爪部53側から本体部52側、すなわち上側から下側に向かって、フィルタ部材61、補強部材63の順に、計2層のみが積層されたものであってもよい。このような積層体60Aを有する仕切り部材の例40Aの構成を、図7の概略断面図に示す。図7に示す例でも、爪部53と積層体60Aの表面との間に隙間が発生し、蓄冷材が仕切り部材40Aを超えて移動することを防止できる。
【0077】
あるいは、図8に示すように、補強部材として、穴部63aが形成されている中央部63bと、穴部63aが形成されていない周縁部63cとを有するパンチングメタルよりなる補強部材の別の例63Bを用いてもよい。図8は、補強部材の別の例63Bの構成を示す平面図である。このようなときは、積層体が、爪部53側から本体部52側、すなわち上側から下側に向かって、補強部材63B、フィルタ部材61の順に、計2層のみが積層されたものであってもよい。このような積層体60Bを有する仕切り部材の例40Bの構成を、図9の概略断面図に示す。図9に示す例でも、積層体60Bの爪部53側の表面に、補強部材63Bに設けられた穴部63aに起因した凹凸が形成されることを防止できる。そして、変形した爪部53により積層体60Bの周縁部60aを挟む際に、爪部53と積層体60Bの表面との間に隙間が発生し、発生した隙間を介して蓄冷材が仕切り部材40Bを超えて移動することを防止できる。
【0078】
また、図3及び図5に示すように、リング部材50の本体部52に形成された開口部51は、本体部52を中心として爪部53側から爪部53と反対側に向かって開口径が増大するように、テーパ形状を有するテーパ部56が設けられていてもよい。これにより、冷媒ガスが流れる際の圧力損失を低減させることができる。
【0079】
図10は、仕切り部材40が筒部材30の中心軸に直角な軸の周りに回転しないようにするための寸法の関係を説明するための図である。
【0080】
また、仕切り部材40が、筒部材30の中心軸に直角な軸の周りに回転すると、蓄冷材が仕切り部材40を超えて移動するおそれがある。従って、仕切り部材40の厚みtは、図10に示すように、仕切り部材40横断面の対角線の長さLが、筒部材30の内径DIよりも十分大きくなるように設定する。例えば、仕切り部材40の厚さtを、筒部材30の内径DIに対して15%以上とすることができる。
【0081】
次に、本実施の形態に係るGM冷凍機に備えられた仕切り部材によれば、GM冷凍機の第2段目ディスプレーサの内周面との間に隙間を形成しないように高い寸法精度を有するとともに、製造コストを低減できることを、比較例と対比しながら説明する。
【0082】
図11は、比較例に係るGM冷凍機における第2段目ディスプレーサ14の構成を示す概略断面図である。図12は、比較例に係る仕切り部材140の構成を示す概略断面図である。
【0083】
比較例に係るGM冷凍機は、第2段目ディスプレーサ14が、仕切り部材40(40a、40b、40c)に代え、仕切り部材140を有する点で、本実施の形態に係るGM冷凍機と相違する。
【0084】
仕切り部材140は、金網141、金属製プレート142、143を有する。
【0085】
金網141は、蓄冷材が通過不能でかつ冷媒ガスが通過可能な金網が複数枚積層されたものである。金網141は、金属製プレート142、143の形状に対応して、中央がくり抜かれた形状を有している。金属製プレート142、143は、それらの間に金網141を挟んだ状態で、例えば溶接により固定されている。金属製プレート142、143は、それぞれ開口部144、145が形成されている。従って、仕切り部材140は、開口部144、145に露出している金網141の部分により、蓄冷材が通過不能でかつ冷媒ガスが通過可能に構成されている。
【0086】
仕切り部材の外周面の寸法精度が高くないと、仕切り部材の外周面と第2段目ディスプレーサの内周面との間に隙間が形成され、形成された隙間を介して蓄冷材が移動したり混合したりするおそれがある。従って、仕切り部材の外周面と第2段目ディスプレーサの内周面との間に隙間を形成しないように、仕切り部材の外周の形状を寸法精度良く作成する必要がある。
【0087】
比較例に係る仕切り部材140は、金属製プレート142、143の間に金網141を挟んだ状態で、金属製プレート142、143を溶接により固定することによって、形成されている。そのため、金属製プレート142、143それぞれの外周の寸法精度、及び、金網141の外周の寸法精度の全てを向上させないと、仕切り部材140の外周の形状を寸法精度良く作成できない。また、比較例に係る仕切り部材140は、金属製プレート142、143を含み、フィルタ機能を有する金網141を除いた部品の数が多い上、2枚の金属製プレート142、143を、それらの軸心を極めて高い精度で一致させた状態で相互に固定する必要がある。そのため、製造コストが増大するという問題がある。
【0088】
一方、本実施の形態に係る仕切り部材40(40A、40Bを含む。)は、フィルタ機能を有する積層体60(60A、60Bを含む。)の周縁部60aが、リング部材50により上下両側から挟んで締め付けられている。外周の寸法精度を向上させる必要のある部品は、リング部材50のみであるため、仕切り部材40の外周の形状を容易に寸法精度良く製造できる。また、本実施の形態に係る仕切り部材40(40A、40Bを含む。)は、リング部材50が一体に設けられているため、例えば2枚の金属製プレートを、それらの軸心を極めて高い精度で一致させた状態で相互に固定する必要がない。そのため、GM冷凍機の第2段目ディスプレーサの内周面との間に隙間を形成しないように高い寸法精度を有するとともに、製造コストを低減できる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0090】
例えば、実施の形態では、本発明に係る仕切り部材40(40A、40Bを含む。)が第2段目ディスプレーサ14に設けられている例について説明した。しかし、本発明に係る仕切り部材は、第1段目ディスプレーサ13に設けられていてもよく、第2段目ディスプレーサ14に設けられたときと同様の効果を示す。
【0091】
また、実施の形態では、本発明に係る仕切り部材を有する蓄冷器式冷凍機をGM冷凍機に適用した例について説明した。しかし、本発明に係る仕切り部材は、GM冷凍機に収容された蓄冷材を仕切る仕切り部材に限定されず、パルス管冷凍機の蓄冷管(本発明における蓄冷器に相当する。)に収容された蓄冷材等、各種の冷凍機の蓄冷器又は蓄冷管に収容された蓄冷材を仕切る仕切り部材に適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
10 圧縮機
11 第1段目シリンダ
12 第2段目シリンダ
13 第1段目ディスプレーサ
14 第2段目ディスプレーサ
17、18、18a、18b 蓄冷材
21、22 膨張空間
23、24 中空空間(冷媒ガス流路)
30 筒部材
31、32 蓋部材
40、40A、40B 仕切り部材
50 リング部材
51 開口部
52 本体部
53 爪部
60、60A、60B 積層体
61、62 フィルタ部材
63、63B 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスを膨張させるためのシリンダと、
内部に収容された蓄冷材を含み、前記冷媒ガスの膨張に伴って前記シリンダで発生した冷熱を、前記蓄冷材に蓄冷する蓄冷器と、
前記蓄冷器に設けられており、前記蓄冷材を仕切る仕切り部材と
を有し、
前記仕切り部材は、
中央に開口部が形成されているとともに、外周面が前記蓄冷器の内周面に嵌合するように形成されているリング部材と、
前記開口部を塞ぐように設けられており、前記蓄冷材が通過不能でかつ前記冷媒ガスが通過可能なフィルタ部材と、前記フィルタ部材を補強する補強部材とが積層されてなる積層体と
を含み、
前記積層体の周縁部は、前記リング部材により前記積層体の積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられている、蓄冷器式冷凍機。
【請求項2】
前記リング部材は、中央に前記開口部が形成された本体部と、前記積層方向に沿って前記本体部の一方の側に設けられた爪部とを有し、
前記積層体の周縁部は、前記爪部と前記本体部とにより前記積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられており、
前記積層体は、前記爪部側の最表層に一の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである、請求項1に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項3】
前記積層体は、前記本体部側の最表層に他の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである、請求項2に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項4】
前記補強部材は、パンチングメタルである、請求項1から請求項3のいずれかに記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項5】
前記フィルタ部材は、金網である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項6】
冷媒ガスを膨張させるためのシリンダと、内部に収容された蓄冷材を含み、前記冷媒ガスの膨張に伴って前記シリンダで発生した冷熱を、前記蓄冷材に蓄冷する蓄冷器とを有する蓄冷器式冷凍機に備えられる、前記蓄冷材を仕切る仕切り部材において、
中央に開口部が形成されているとともに、外周面が前記蓄冷器の内周面に嵌合するように形成されているリング部材と、
前記開口部を塞ぐように設けられており、前記蓄冷材が通過不能でかつ前記冷媒ガスが通過可能なフィルタ部材と、前記フィルタ部材を補強する補強部材とが積層されてなる積層体と
を有し、
前記積層体の周縁部は、前記リング部材により前記積層体の積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられている、仕切り部材。
【請求項7】
前記リング部材は、中央に前記開口部が形成された本体部と、前記積層方向に沿って前記本体部の一方の側に設けられた爪部とを有し、
前記積層体の周縁部は、前記爪部と前記本体部とにより前記積層方向に沿って前後から挟んで締め付けられており、
前記積層体は、前記爪部側の最表層に一の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである、請求項6に記載の仕切り部材。
【請求項8】
前記積層体は、前記本体部側の最表層に他の前記フィルタ部材が位置するように、積層されてなるものである、請求項7に記載の仕切り部材。
【請求項9】
前記補強部材は、パンチングメタルである、請求項6から請求項8のいずれかに記載の仕切り部材。
【請求項10】
前記フィルタ部材は、金網である、請求項6から請求項9のいずれかに記載の仕切り部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−220044(P2012−220044A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83192(P2011−83192)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)