説明

蓄冷器式冷凍機

【課題】極低温用の蓄冷材としてガス蓄冷材を用いることにより製造コストを低減できるとともに、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる蓄冷器式冷凍機を提供する。
【解決手段】冷媒ガスを断熱膨張させるためのシリンダと、シリンダと接続されており、内部に、冷媒ガスが流れる第1の空間S1と、ガスよりなる蓄冷材が充填される第2の空間S2とを画成する画成部材35を含み、冷媒ガスの断熱膨張に伴ってシリンダで発生した冷熱を、第2の空間S2に充填された蓄冷材に蓄冷する蓄冷管32とを有する。画成部材35が第2の空間S2に露出している面積は、画成部材35が第1の空間S1に露出している面積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリウムガス等の冷媒ガスを用い、蓄冷材を収容した蓄冷器を有する蓄冷器式冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば4K程度の極低温を得るために、ヘリウムガス等の冷媒ガスを用い、蓄冷材を収容した蓄冷器を有する蓄冷器式冷凍機が用いられている。また、蓄冷器式冷凍機として、例えばギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機、パルス管冷凍機等の冷凍機が用いられている。
【0003】
蓄冷器式冷凍機は、冷媒ガスを断熱膨張させ、その際に発生する冷熱を蓄冷材に蓄冷することによって冷凍冷却を行う。そのため、蓄冷器式冷凍機は、シリンダと、シリンダと接続された蓄冷管を有し、蓄冷管の内部に、冷熱を蓄冷するための蓄冷材を備える。
【0004】
蓄冷材は、使用温度である極低温で大きな比熱を有する必要がある。しかしながら、一般に鉛等の金属の比熱は、15K以下の極低温において、温度の低下とともに急激に減少する。そこで、15K以下の温度で鉛よりも大きな比熱を有する、例えばHoCu等の磁性蓄冷材が蓄冷材として用いられる。しかし、磁性蓄冷材は、15K以下で大きな磁化率を有し、磁気ノイズを発生させるおそれがあるため、蓄冷管の周囲に磁気シールド部材を設ける必要があり、製造コストが増加する。
【0005】
一方、冷媒ガスとして用いられるヘリウムは、使用温度である極低温で大きな比熱を有する。そのため、15K以下の極低温用の蓄冷材として、ヘリウムガスよりなるガス蓄冷材を用いることがある。(例えば、特許文献1参照。)。ヘリウムガスよりなるガス蓄冷材を用いることによって、蓄冷管の周囲に磁気シールド材を設ける必要がないため、製造コストを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−524307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記した極低温用蓄冷材としてガス蓄冷材を用いる蓄冷器式冷凍機には、次のような問題がある。
【0008】
蓄冷管の内部に、ヘリウムガスよりなるガス蓄冷材が気密に充填された中空体を入れてなる場合、蓄冷管の内部であって中空体の外部を流れるヘリウムガスよりなる冷媒ガスと、中空体の内部のヘリウムガスよりなるガス蓄冷材とが、中空体の壁を介して熱交換する。
【0009】
このとき、ガスの熱伝達係数はガスの流速が速い方が大きい。そのため、中空体に充填され、流速を有しないヘリウムガスよりなるガス蓄冷材の熱伝達係数は、流速を有するヘリウムガスよりなる冷媒ガスの熱伝達係数よりも小さい。従って、ガス蓄冷材と冷媒ガスとの熱交換の効率が低い。
【0010】
また、中空体の内周面の面積は、中空体の外周面の面積よりも小さい。従って、ヘリウムガスよりなるガス蓄冷材が中空体と接触する接触面積は、ヘリウムガスよりなる冷媒ガスが中空体と接触する接触面積よりも小さい。そのため、ガス蓄冷材と冷媒ガスとの熱交換の効率が低い。
【0011】
また、上記した課題は、ヘリウムガス以外のガスよりなるガス蓄冷材を用いる場合にも共通する課題である。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、極低温用の蓄冷材としてガス蓄冷材を用いることにより製造コストを低減できるとともに、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる蓄冷器式冷凍機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる手段を講じたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、冷媒ガスを断熱膨張させるためのシリンダと、前記シリンダと接続されており、内部に、前記冷媒ガスが流れる第1の空間と、ガスよりなる蓄冷材が充填される第2の空間とを画成する画成部材を含み、前記冷媒ガスの断熱膨張に伴って前記シリンダで発生した冷熱を、前記第2の空間に充填された前記蓄冷材に蓄冷する蓄冷管とを有し、前記画成部材が前記第2の空間に露出している面積は、前記画成部材が前記第1の空間に露出している面積よりも大きい、蓄冷器式冷凍機である。
【0015】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記画成部材は、前記蓄冷管の高温側と前記蓄冷管の低温側とを連通させる配管を含み、前記第1の空間は、前記配管の内部の空間であり、前記第2の空間は、前記配管の外部の空間であって、かつ、前記蓄冷管の高温側及び前記蓄冷管の低温側のいずれとも連通していないものである。
【0016】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記画成部材は、前記蓄冷管の高温側と前記蓄冷管の低温側とを連通させるように第1のスリット空間が形成されているとともに、前記蓄冷管の高温側及び前記蓄冷管の低温側のいずれとも連通しないように第2のスリット空間が形成されており、前記第1の空間は、前記第1のスリット空間を含み、前記第2の空間は、前記第2のスリット空間を含み、前記画成部材が前記第2のスリット空間に露出している面積は、前記画成部材が前記第1のスリット空間に露出している面積よりも大きい。
【0017】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記配管は、前記配管の外側の表面積を増やすための部材を有する。
【0018】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記部材はフィンである。
【0019】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記蓄冷管は、前記第2の空間に充填された、金属よりなる充填材を含む。
【0020】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記充填材は、前記配管と一体化されたものである。
【0021】
また、本発明は、上述の蓄冷器式冷凍機において、前記充填材は、拡散接合により前記配管と一体化されたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、蓄冷器式冷凍機において、極低温用の蓄冷材としてガス蓄冷材を用いることにより製造コストを低減できるとともに、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機の構成を模式的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機の第2段目蓄冷管の周辺の構成を模式的に示す図である。
【図3】低温側第2段目蓄冷管の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
【図4】各圧力でのヘリウムガスの比熱の温度依存性を、磁性蓄冷材の比熱の温度依存性と対比して示すグラフである
【図5】内部配管の管壁を介して熱交換される際の様子を模式的に示す図である。
【図6】低温側第2段目蓄冷管の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
【図7】低温側第2段目蓄冷管の構成を拡大して模式的に示す断面図である。
【図8】低温側第2段目蓄冷管の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。
【図9】画成部材を一部切断して示す斜視図である。
【図10】第3の実施の形態に係るGM冷凍機の構成を示す概略断面図である。
【図11】低温側第2段目蓄冷管の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態について図面と共に説明する。
(第1の実施の形態)
図1を参照し、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機について説明する。本実施の形態に係るパルス管冷凍機は、本発明に係る蓄冷器式冷凍機をパルス管冷凍機に適用した例であり、数K〜20K程度の極低温を得るのに適した2段構成を有する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係るパルス管冷凍機の構成を模式的に示す図である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態に係るパルス管冷凍機10は、圧縮機11、バルブユニット12、膨張機20を有する。膨張機20は、第1段目蓄冷管21、第2段目蓄冷管22、第1段目パルス管23、第2段目パルス管24、第1段目冷却ステージ25、第2段目冷却ステージ26、第1のオリフィス27、第2のオリフィス28を有する。
【0027】
なお、図1では、図示を容易にするため、第1段目冷却ステージ25、第2段目冷却ステージ26を破線により示す。
【0028】
圧縮機11は、吐出側に高圧配管13、吸入側に低圧配管14を有する。圧縮機11は、低圧配管14を介して冷媒ガスを吸入することによって、膨張機20から冷媒ガスを回収する。また、吸入した冷媒ガスを圧縮し、圧縮した冷媒ガスを高圧配管13に吐出することによって、膨張機20へ冷媒ガスを供給する。
【0029】
また、本実施の形態では、一端が圧縮機11の吐出側である高圧配管13から分岐するとともに、他端が第2段目蓄冷管22の後述する低温側第2段目蓄冷管32に接続されており、ガス蓄冷材を低温側第2段目蓄冷管32の内部空間に導入するための導入配管15を有する。
【0030】
バルブユニット12は、バルブV1〜V6を有する。バルブユニット12は、圧縮機11と膨張機20との間に接続されており、圧縮機11の吐出側である高圧配管13、圧縮機11の吸入側である低圧配管14を交互に膨張機20に連通させる。バルブV1は、高圧配管13と第1段目蓄冷管21とを連通又は遮断する。バルブV2は、低圧配管14と第1段目蓄冷管21とを連通又は遮断する。バルブV3は、高圧配管13と第1段目パルス管23とを連通又は遮断する。バルブV4は、低圧配管14と第1段目パルス管23とを連通又は遮断する。バルブV5は、高圧配管13と第2段目パルス管24とを連通又は遮断する。バルブV6は、低圧配管14と第2段目パルス管24とを連通又は遮断する。
【0031】
第1段目蓄冷管21は、冷媒ガスであるヘリウムガスが断熱膨張を繰り返して発生する冷熱を蓄冷する。第1段目蓄冷管21は、高温端がバルブユニット12に接続されており、低温端が第2段目蓄冷管22の高温端と、第1段目パルス管23の低温端とに接続されている。
【0032】
第1段目蓄冷管21の内部には、第1段目蓄冷材29が充填される。第1段目蓄冷材29としては、例えば銅網(網状の形状に加工された銅線)を用いることができる。また、第1段目蓄冷管21は、軸方向の伝導損失を最小に抑えるため、肉薄のSUS材を用いることができる。SUS材として、例えばSUS304等の材質を用いることができる。
【0033】
第2段目蓄冷管22は、第1段目蓄冷管21と同様に、冷媒ガスであるヘリウムガスが断熱膨張を繰り返して発生する冷熱を蓄冷する。第2段目蓄冷管22は、高温端が第1段目蓄冷管21の低温端に接続されており、低温端が第2段目パルス管24の低温端に接続されている。
【0034】
第2段目蓄冷管22の詳細な構造の例は、図2を用いて後述する。
【0035】
第1段目パルス管23は、高温端がバルブユニット12に接続されており、低温端が第1段目蓄冷管21の低温端側に接続されている。第1段目パルス管23は、第1段目蓄冷管21を通して供給される冷媒ガスであるヘリウムガスが断熱膨張を繰り返して冷熱を発生する。
【0036】
第2段目パルス管24は、高温端がバルブユニット12に接続されており、低温端が第2段目蓄冷管22の低温端に接続されている。第2段目パルス管24は、第1段目パルス管23と同様に、第2段目蓄冷管22を通して供給される冷媒ガスであるヘリウムガスが断熱膨張を繰り返して冷熱を発生する。なお、第2段目パルス管24は、本発明におけるシリンダに相当する。
【0037】
第1段目パルス管23は、高温端、低温端に各々整流器23a、23bを有する。第2段目パルス管24は、高温端、低温端に各々整流器24a、24bを有する。整流器23a、23b、24a、24bは、第1段目パルス管23、第2段目パルス管24における冷媒ガスの供給又は回収に伴う冷媒ガスの流れを安定化させるためのものである。
【0038】
第1段目冷却ステージ25は、第1段目蓄冷管21の低温端及び第1段目パルス管23の低温端が固定される部分である。第1段目冷却ステージ25は、第1段目パルス管23から冷熱が伝導され、低温に維持される。また、第1段目冷却ステージ25は、第2段目蓄冷管22の高温端が固定される部分でもある。
【0039】
第2段目冷却ステージ26は、第2段目蓄冷管22の低温端及び第2段目パルス管24の低温端が固定される部分である。第2段目冷却ステージ26は、第2段目パルス管24から冷熱が伝導され、極低温に維持される。
【0040】
第1のオリフィス27は、第1段目パルス管23とバルブユニット12との間に設けられる。また、第2のオリフィス28は、第2段目パルス管24とバルブユニット12との間に設けられる。従って、バルブユニット12から第1段目パルス管23の高温端へ流入出する冷媒ガスは、第1のオリフィス27で流量を制限される。また、バルブユニット12から第2段目パルス管24の高温端へ流入出する冷媒ガスは、第2のオリフィス28で流量を制限される。
【0041】
上記構成を有するパルス管冷凍機10では、バルブユニット12に収容されたバルブV1及びV2を連通させる動作及び遮断させる動作を、互いに逆の動作になるように繰り返す。すると、第1段目蓄冷管21の高温端は、高圧配管13又は低圧配管14と切換え連通される。その結果、第1段目蓄冷管21の低温端と連通された第1段目パルス管23に冷媒ガスが周期的に供給/回収されるため、第1段目パルス管23内で冷媒ガスが圧縮と膨張とを繰返し、その際に断熱膨張により冷熱が発生する。そして、発生した冷熱を第1段目蓄冷管21に蓄冷することにより、第1段目蓄冷管21の低温端側は冷却される。
【0042】
また、第1段目蓄冷管21の低温端と接続された第2段目蓄冷管22も、高圧配管13又は低圧配管14と切換え連通される。その結果、第2段目蓄冷管22の低温端と連通された第1段目パルス管23に冷媒ガスが周期的に供給/回収されるため、第2段目パルス管24内で冷媒ガスが圧縮と膨張とを繰返し、その際に断熱膨張により冷熱が発生する。そして、発生した冷熱を第2段目蓄冷管22に蓄冷することにより、第2段目蓄冷管22の低温端側は冷却される。
【0043】
このとき、バルブV3、V4を用いて、第1段目パルス管23の高温端からの冷媒ガスの流入出を抑制する。この結果、第1段目パルス管23内の圧力変化と流速変化のタイミングが第1段目蓄冷管21の圧力変化と流速変化のタイミングとずれて位相差が大きくなる。そのため、冷媒ガスの圧縮/膨張が繰返されるときに冷凍機が冷熱を発生する仕事量が大きくなり、冷凍能力が向上する。
【0044】
また、バルブV5、V6を用いて、第2段目パルス管24の高温端からの冷媒ガスの流入出を抑制する。この結果、第2段目パルス管24内の圧力変化と流速変化のタイミングが第2段目蓄冷管22の圧力変化と流速変化のタイミングとずれて位相差が大きくなる。そのため、冷媒ガスの圧縮/膨張が繰返されるときに冷凍機が冷熱を発生する仕事量が大きくなり、冷凍能力が向上する。
【0045】
本実施の形態に係るパルス管冷凍機10において、冷媒ガスとして、例えば0.5〜2.5MPaの圧力を有するヘリウム(He)ガスが用いられ、例えば2Hz程度の繰返し速度で冷媒ガスの圧縮・膨張を繰返す。これにより、第1段目蓄冷管21の低温端で例えば50K程度の低温を得ることができ、第2段目蓄冷管22の低温端で、例えば4K程度の低温を得ることができる。
【0046】
図2は、本実施の形態に係るパルス管冷凍機の第2段目蓄冷管22の周辺の構成を模式的に示す図である。また、図3は、低温側第2段目蓄冷管32の構成を拡大して模式的に示す断面図である。図3(a)は、縦断面図であり、図3(b)は、横断面図である。図4は、各圧力でのヘリウムガスの比熱の温度依存性を、磁性蓄冷材の比熱の温度依存性と対比して示すグラフである。
【0047】
第2段目蓄冷管22は、高温側から低温側に向かって順に、高温側第2段目蓄冷管31、低温側第2段目蓄冷管32を有する。低温側第2段目蓄冷管32は、本発明における蓄冷管に相当する。
【0048】
高温側第2段目蓄冷管31は、高温端が第1段目蓄冷管21の低温端と接続されており、低温端が低温側第2段目蓄冷管32の高温端と接続されている。また、高温側第2段目蓄冷管31は、高温端が第1段目冷却ステージ25に固定されている。
【0049】
高温側第2段目蓄冷管31の内部には、高温側第2段目蓄冷材30が充填される。高温側第2段目蓄冷管31は、軸方向の伝導損失を最小に抑えるため、肉薄のSUS材を用いることができる。SUS材として、例えばSUS304等の材質を用いることができる。また、高温側第2段目蓄冷材30としては、例えば鉛球を用いることができる。鉛は15〜40Kの温度領域では、金属の中では大きな比熱を有するためである。
【0050】
低温側第2段目蓄冷管32は、高温端が高温側第2段目蓄冷管31の低温端と接続されており、低温端が第2段目パルス管24の低温端と接続されている。また、低温側第2段目蓄冷管32は、低温端が第2段目冷却ステージ26に固定されている。
【0051】
低温側第2段目蓄冷管32は、高温側画成部材33、低温側画成部材34、内部配管35、導入口36を有する。高温側画成部材33は、低温側第2段目蓄冷管32の内部空間SIと低温側第2段目蓄冷管32の高温側とを画成する。低温側画成部材34は、低温側第2段目蓄冷管32の内部空間SIと低温側第2段目蓄冷管32の低温側とを画成する。内部配管35は、高温側画成部材33と低温側画成部材34とを貫通するとともに、一端が高温側画成部材33の高温側に開口し、他端が低温側画成部材34の低温側に開口している。すなわち、内部配管35は、低温側第2段目蓄冷管32の高温側と低温側第2段目蓄冷管32の低温側とを連通させる。このように、低温側第2段目蓄冷管32は、内部に内部配管35が収容された、いわゆるチューブインチューブ構造を有する。また、導入口36は、前述した導入配管15を介し、圧縮機11の吐出側の高圧配管13からヘリウムガスをガス蓄冷材として低温側第2段目蓄冷管32の内部に導入するためのものである。
【0052】
なお、内部配管35は、本発明における配管に相当する。
【0053】
また、チューブインチューブ構造を有する低温側第2段目蓄冷管32は、図2に示すように長尺の配管を複数回折り曲げた構造を有していてもよく、その他、長尺の配管をスパイラル状に曲げた構造を有していてもよい。これにより、第1段目冷却ステージ25と第2段目冷却ステージ26との限られた距離の間に、長尺の低温側第2段目蓄冷管32を設けることができる。
【0054】
あるいは、第1段目冷却ステージ25と第2段目冷却ステージ26との距離を長くすること等により、低温側第2段目蓄冷管32を途中で折り曲げず、上下方向に延在する円筒形状としてもよい。
【0055】
図3(a)及び図3(b)に示すように、内部配管35は、低温側第2段目蓄冷管32の内部空間SIを、第1の空間S1と第2の空間S2とに画成する。第1の空間S1は、内部配管35の内部の空間である。第2の空間S2は、低温側第2段目蓄冷管32の内部の空間であって、内部配管35の外部の空間である。前述したように、内部配管35は、高温側画成部材33と低温側画成部材34とを貫通するため、第1の空間S1は、低温側第2段目蓄冷管32の高温側と低温側第2段目蓄冷管32の低温側とを連通させるものである。また、第1の空間S1には、冷媒ガスが流れる。
【0056】
第2の空間S2には、低温側第2段目蓄冷材が充填される。低温側第2段目蓄冷材として、例えばヘリウムガス等のガスよりなるガス蓄冷材を用いることができる。図4に示すように、ヘリウムガスは、例えば1.5MPaの圧力、5〜15Kの温度領域で、低温で大きな比熱を有する磁性蓄冷材であるHoCuに比べ、更に大きな比熱を有する。
【0057】
低温側第2段目蓄冷管32の軸方向に垂直な断面の形状として、例えば外径を12mm、内径を10mmとすることができる。また、内部配管35の軸方向に垂直な断面の形状として、例えば外径を1.0mm、内径を0.8mmとすることができる。
【0058】
次に、本実施の形態において、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる作用効果について説明する。
【0059】
図5は、内部配管35の管壁38を介して熱交換される際の様子を模式的に示す図である。
【0060】
一般的に、流れるガスの熱伝達係数をαとし、流れるガスのレイノルズ数をReとすると、下記式(1)
α∝Re0.8 (1)
の関係を満たす。また、ガスが流速vで流れているとすると、レイノルズ数Reは、下記式(2)
α∝v (2)
の関係を満たす。
【0061】
ここで、管壁38の左側に、冷媒ガスが流速viで流れており、管壁38の右側にガス蓄冷材が流速vo(0に等しい)で充填されているとする。そして、冷媒ガスの温度をTi、冷媒ガスの熱伝達係数をαi、冷媒ガスの管壁38との接触面積をAiとする。また、ガス蓄冷材の温度をTo、ガス蓄冷材の熱伝達係数をαo、ガス蓄冷材の管壁38との接触面積をAoとする。更に、管壁38の厚さをδとし、管壁38の熱伝導率をλとする。冷媒ガスの管壁38との接触面積Aiは、内部配管35が第1の空間S1に露出している面積に相当し、ガス蓄冷材の管壁38との接触面積Aoは、内部配管35が第2の空間S2に露出している面積に相当する。
【0062】
このとき、管壁38を介して冷媒ガスからガス蓄冷材に熱交換される際の熱抵抗率Rtは、下記式(3)
Rt=(1/αiAi)+(δ/λ)+(1/αoAo) (3)
により表される。
【0063】
式(1)及び式(2)により、流速voが0に等しいガス蓄冷材の熱伝達係数αoは、流速viで流れる冷媒ガスの熱伝達係数αiよりも小さい。従って、式(3)の右辺の第3項(1/αoAo)が大きくなるため、熱抵抗Rtが大きくなり、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できない。
【0064】
一方、本実施の形態では、内部配管35の内径をr、外径をR(>r)とするとき、
Ai/Ao=r/R<1
となり、ガス蓄冷材の管壁38との接触面積Aoは、冷媒ガスの管壁38との接触面積Aiよりも大きい。そのため、式(3)の右辺の第3項(1/αoAo)がより小さくなるため、熱抵抗Rtを小さくすることができ、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる。
(第1の実施の形態の第1の変形例)
次に、図6を参照し、第1の実施の形態の第1の変形例に係るパルス管冷凍機について説明する。本変形例に係るパルス管冷凍機では、内部配管は、内部配管の外側の表面積を増やすための部材を有する。
【0065】
なお、本変形例に係るパルス管冷凍機は、低温側第2段目蓄冷管32a以外の部分は、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機と同一にすることができ、低温側第2段目蓄冷管32a以外の部分についての説明を省略する。
【0066】
図6は、低温側第2段目蓄冷管32aの構成を拡大して模式的に示す断面図である。図6(a)は、縦断面図であり、図6(b)は、横断面図である。
【0067】
低温側第2段目蓄冷管32aは、第1の実施の形態と同様に、高温側画成部材33、低温側画成部材34、内部配管35a、導入口36を有する。内部配管35a以外の構造は、第1の実施の形態における構造と同一にすることができる。また、内部配管35aが、低温側第2段目蓄冷管32aの内部空間SIを、第1の空間S1と第2の空間S2とに画成する構造も、第1の実施の形態における構造と同一にすることができる。
【0068】
本変形例では、内部配管35aが、内部配管35aの外側の表面積を増やすための部材として、フィン39を有する。図6(b)に示すように、内部配管35aに垂直な断面視において、例えば8枚等の複数枚のフィン39が放射状に設けられていてもよい。これにより、ガス蓄冷材の内部配管との接触面積を更に増大させることができ、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる。
【0069】
なお、フィンに代え、内部配管の外周面に波状の表面加工を施した部材を設ける等、内部配管の外側の表面積を増やすための各種の部材を用いることができる。
(第1の実施の形態の第2の変形例)
次に、図7を参照し、第1の実施の形態の第2の変形例に係るパルス管冷凍機について説明する。本変形例に係るパルス管冷凍機では、低温側第2段目蓄冷管は、第2の空間に充填された、金属よりなる充填材を含む。
【0070】
なお、本変形例に係るパルス管冷凍機も、低温側第2段目蓄冷管32b以外の部分は、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機と同一にすることができ、低温側第2段目蓄冷管32b以外の部分についての説明を省略する。
【0071】
図7は、低温側第2段目蓄冷管32bの構成を拡大して模式的に示す断面図である。図7(a)は、縦断面図であり、図7(b)は、横断面図である。
【0072】
低温側第2段目蓄冷管32bは、第1の実施の形態と同様に、高温側画成部材33、低温側画成部材34、内部配管35、導入口36を有する。これらの構造は、第1の実施の形態における構造と同一にすることができる。また、内部配管35が、低温側第2段目蓄冷管32bの内部空間SIを、第1の空間S1と第2の空間S2とに画成する構造も、第1の実施の形態における構造と同一にすることができる。
【0073】
本変形例では、低温側第2段目蓄冷管32bは、第2の空間S2に充填された、金属よりなる充填材40を含む。図7(a)及び図7(b)に示すように、金属よりなる充填材40は、金属粉の集合体であってもよい。充填材40と内部配管35とは、部分的に接触している。そのため、ガス蓄冷材と、充填材40を含めた内部配管35との接触面積を増大させることができ、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる。
【0074】
また、本変形例では、例えば拡散接合、超音波接合等の各種の接合方法により、充填材が内部配管と一体化されていてもよい。これにより、充填材と内部配管とがより確実に熱的に接触できるため、ガス蓄冷材と、充填材を含めた内部配管との接触面積を更に増大させることができ、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を更に向上できる。
(第2の実施の形態)
次に、図8及び図9を参照し、第2の実施の形態に係るパルス管冷凍機について説明する。本実施の形態に係るパルス管冷凍機では、低温側第2段目蓄冷管は、チューブインチューブ構造に代え、スリット構造を有する。
【0075】
なお、本実施の形態に係るパルス管冷凍機は、低温側第2段目蓄冷管32c以外の部分は、第1の実施の形態に係るパルス管冷凍機と同一にすることができ、低温側第2段目蓄冷管32c以外の部分についての説明を省略する。
【0076】
図8は、低温側第2段目蓄冷管32cの構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。図9は、画成部材43を一部切断して示す斜視図である。なお、図9では、破線で囲まれた部分Iを切断して示している。また、図9では、シール部材の図示を省略している。
【0077】
本実施の形態では、低温側第2段目蓄冷管32cを、上下方向に延在する円筒形状とすることができる。
【0078】
低温側第2段目蓄冷管32cは、高温側シール部材41、低温側シール部材42、画成部材43、導入口36を有する。画成部材43は、円筒形状を有しており、画成部材43の外径は、低温側第2段目蓄冷管32cの内径よりも小さい。画成部材43と高温側シール部材41とは、低温側第2段目蓄冷管32cの内部であって、画成部材43との間に形成される内部空間SIと、低温側第2段目蓄冷管32cの高温側とを画成する。画成部材43と低温側シール部材42とは、低温側第2段目蓄冷管32cと画成部材43との間に形成される内部空間SIと、低温側第2段目蓄冷管32cの低温側とを画成する。
【0079】
画成部材43は、第1のスリット空間S1が形成されるとともに、第2のスリット空間S2が形成されている。
【0080】
第1のスリット空間S1は、画成部材43の高温端の端面及び画成部材43の低温端の端面のいずれにも開口するように形成されている。すなわち、第1のスリット空間S1は、低温側第2段目蓄冷管32cの高温側と低温側第2段目蓄冷管32cの低温側とを連通させるように形成されている。また、第1のスリット空間S1は、画成部材43の外周面には開口していない。すなわち、第1のスリット空間S1は、低温側第2段目蓄冷管32cの内周面と画成部材43の外周面とに囲まれた空間とは連通しないように形成されている。
【0081】
なお、図9に示すように、画成部材43には、画成部材43の高温端の端面と低温端の端面との間を貫通する貫通孔44が形成されていてもよい。このとき、第1のスリット空間は、貫通孔44の側周面に開口していてもよい。
【0082】
一方、第2のスリット空間S2は、画成部材43の高温端の端面及び画成部材43の低温端の端面のいずれにも開口していない。すなわち、第2のスリット空間S2は、低温側第2段目蓄冷管32cの高温側及び低温側第2段目蓄冷管32cの低温側のいずれとも連通しないように形成されている。その代わり、第2のスリット空間S2は、画成部材43の外周面に開口している。すなわち、第2のスリット空間S2は、低温側第2段目蓄冷管32cの内周面と画成部材43の外周面とに囲まれた空間に連通するように形成されている。
【0083】
このように、低温側第2段目蓄冷管32cは、内部にスリット空間が形成された、いわゆるスリット構造を有する。また、導入口36は、前述した導入配管15を介し、圧縮機11の吐出側の高圧配管13からヘリウムガスをガス蓄冷材として内部に導入するためのものである。
【0084】
図8及び図9に示すように、画成部材43は、低温側第2段目蓄冷管32cの内部空間SIを、第1の空間S1と第2の空間S2とに画成する。第1の空間S1は、第1のスリット空間S1を含む空間である。第2の空間S2は、低温側第2段目蓄冷管32cの内周面、画成部材43の外周面、高温側シール部材41及び低温側シール部材42に囲まれた空間と、第2のスリット空間S2を含む空間である。また、第1の空間S1には、冷媒ガスが流れる。
【0085】
低温側第2段目蓄冷管32cの軸方向に垂直な断面の形状として、例えば外径を32mm、内径を30mmとすることができる。また、画成部材43の軸方向に垂直な断面の形状として、例えば外径を29.5mmとすることができる。
【0086】
本実施の形態では、画成部材43が第2のスリット空間S2に露出している面積は、画成部材43が第1のスリット空間S1に露出している面積よりも大きくする。これにより、ガス蓄冷材と画成部材43との接触面積を、冷媒ガスと画成部材43との接触面積よりも大きくすることができ、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる。
【0087】
図9に示す例では、画成部材43の径方向に沿った長さの異なる2種類の第2のスリット空間S2が形成されており、そのうち、短い方の第2のスリット空間S2−1は、長い方の第2のスリット空間S2−2の2倍の個数形成されている。そして、1つの第1のスリット空間S1、長い方の1つの第2のスリット空間S2−2、短い方の2つの第2のスリット空間S2−1よりなるスリット空間の組が、放射状に配置されるように、画成部材43の周方向に沿って繰り返し形成されている。このときは、画成部材43が第1のスリット空間S1に露出している面積は、第1のスリット空間S1における画成部材43の径方向の長さL1により表すことができる。また、画成部材43が第2のスリット空間S2に露出している面積は、長い方の第2のスリット空間S2−2の径方向の長さLL2と、短い方の第2のスリット空間S2−1の径方向の長さLS2の2倍との和(LL2+LS2×2)により表すことができる。そして、この例では、LL2+LS2×2をL1よりも大きくすればよい。
【0088】
なお、画成部材43が第2のスリット空間S2に露出している面積が、画成部材43が第1のスリット空間S1に露出している面積よりも大きくなればよく、第1のスリット空間S1及び第2のスリット空間S2は、図9に示す例以外の各種の形状をとることができる。
(第3の実施の形態)
次に、図10及び図11を参照し、第3の実施の形態に係るGM冷凍機について説明する。このGM冷凍機は、本発明に係る蓄冷器式冷凍機をGM冷凍機に適用した例であり、数K〜20K程度の極低温を得るのに適した2段構成を有する。
【0089】
図10は、本実施の形態に係るGM冷凍機50の構成を示す概略断面図である。図11は、低温側第2段目蓄冷管の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。
【0090】
GM冷凍機50は、圧縮機51、冷媒ガス流路52、第1段目シリンダ61、第2段目シリンダ62、第1段目ディスプレーサ63、第2段目ディスプレーサ64、クランク機構65、蓄冷材67、68、ヒートステーション69、70、膨張空間71、72、中空空間(冷媒ガス流路)73、74を有する。
【0091】
圧縮機51は、ヘリウムガス(冷媒ガス)を約20Kgf/cmに圧縮し、高圧ヘリウムガスを生成する。生成された高圧ヘリウムガスは、吸気弁V11、冷媒ガス流路52を介して第1段目シリンダ61内に供給される。また、第1段目シリンダ61から排出された低圧ヘリウムガスは、冷媒ガス流路52、排気弁V12を介して圧縮機51に回収される。
【0092】
また、本実施の形態では、一端が圧縮機51の吐出側から分岐するとともに、他端が後述する第2段目ディスプレーサ64の低温側第2段目蓄冷管32dに接続されており、ガス蓄冷材を第2段目ディスプレーサ64の内部空間に導入するための導入配管53を有する。
【0093】
第1段目シリンダ61には、第2段目シリンダ62が結合されている。第1段目シリンダ61、第2段目シリンダ62内には、相互に連結された第1段目ディスプレーサ63、第2段目ディスプレーサ64がそれぞれ収容されている。
【0094】
第1段目シリンダ61からは、駆動軸Shが上方に延在し、駆動用モータMに結合したクランク機構65と結合している。
【0095】
第1段目ディスプレーサ63は、第1段目シリンダ61内に、第1段目シリンダ61に沿って往復動可能に設けられている。第1段目ディスプレーサ63は、第1段目シリンダ61の一端に、膨張空間71を形成する。第1段目ディスプレーサ63は、回転体形状を有している。
【0096】
また、第1段目ディスプレーサ63の内部には、膨張空間71に冷媒ガスを供給及び排出するための中空空間(冷媒ガス流路)73が形成されている。第1段目ディスプレーサ63の外周面と第1段目シリンダ61の内周面との間には、例えばピストンリング等のシール部材75が設けられている。第1段目ディスプレーサ63は、第1段目シリンダ61に沿って往復動する際に、膨張空間71に供給した冷媒ガスを膨張させることによって冷熱を発生させる。
【0097】
中空空間73内には、蓄冷材67が収容されている。蓄冷材67は、膨張空間71から冷媒ガスを排出する際に、排出した冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷する。すなわち、蓄冷材67は、第1段目ディスプレーサ63が第1段目シリンダ61に沿って往復動する際に、膨張空間71に供給した冷媒ガスを膨張させることによって発生した冷熱を蓄冷する。
【0098】
第2段目ディスプレーサ64は、第2段目シリンダ62内に、第2段目シリンダ62に沿って往復動可能に設けられている。第2段目ディスプレーサ64は、第2段目シリンダ62の一端に、膨張空間72を形成する。第2段目ディスプレーサ64は、回転体形状を有している。
【0099】
また、第2段目ディスプレーサ64の内部には、膨張空間72に冷媒ガスを供給及び排出するための中空空間(冷媒ガス流路)74が形成されている。第2段目ディスプレーサ64の外周面と第2段目シリンダ62の内周面との間には、例えばピストンリング等のシール部材76が設けられている。第2段目ディスプレーサ64は、第2段目シリンダ62に沿って往復動する際に、膨張空間72に供給した冷媒ガスを膨張させることによって冷熱を発生させる。
【0100】
なお、第2段目ディスプレーサ64の後述する低温側第2段目蓄冷管32dの外周面と第2段目シリンダ62の内周面との間にも、例えばピストンリング等のシール部材77、78が設けられている。シール部材77、78は、導入配管53が接続される導入口36を中心として高温側及び低温側に設けられている。
【0101】
中空空間74内には、蓄冷材68が収容されている。蓄冷材68は、膨張空間72から冷媒ガスを排出する際に、排出した冷媒ガスと接触して冷熱を蓄冷する。すなわち、蓄冷材68は、第2段目ディスプレーサ64が第2段目シリンダ62に沿って往復動する際に、膨張空間72に供給した冷媒ガスを膨張させることによって発生した冷熱を蓄冷する。
【0102】
第1段目シリンダ61の下端(低温端)を囲むように、第1段目のヒートステーション69が熱的に結合されており、第2段目シリンダ62の下端(低温端)を囲むように、第2段目のヒートステーション70が熱的に結合している。
【0103】
第1段目シリンダ61、第2段目シリンダ62は、例えばステンレス綱(例えばSUS304)等によって形成されていることが好ましい。これにより、第1段目シリンダ61、第2段目シリンダ62に、高い強度、低い熱伝導率、及び高いヘリウムガス遮蔽能を持たせることができる。
【0104】
第1段目ディスプレーサ63、第2段目ディスプレーサ64は、例えば布入りフェノール(ベークライト)等によって形成されていることが好ましい。これにより、第1段目ディスプレーサ63、第2段目ディスプレーサ64について、軽量化するとともに、耐摩耗性及び強度を向上させ、高温側から低温側への侵入熱量を低減することができる。
【0105】
第1段目の蓄冷材67は、例えば金網等により構成されることが好ましく、第2段目の蓄冷材68は、後述するように、例えば鉛球等により構成されることが好ましい。これにより、低温領域において、十分高い熱容量を確保することができる。
【0106】
このように構成されているGM冷凍機では、以下のようにして冷熱を発生する。
【0107】
圧縮機51から吸気弁V11を介して供給された、冷媒ガスである高圧ヘリウムガスは、冷媒ガス流路52を介して第1段目シリンダ61内に供給される。そして、開口(冷媒ガス流路)73a、蓄冷材67が収容された中空空間(冷媒ガス流路)73、開口(冷媒ガス流路)73bを通って、第1段目の膨張空間71に供給される。
【0108】
第1段目の膨張空間71に供給された高圧ヘリウムガスは、更に開口(冷媒ガス流路)74a、蓄冷材68が収容された中空空間(冷媒ガス流路)74、開口(冷媒ガス流路)74bを通って第2段目の膨張空間72に供給される。
【0109】
吸気弁V11が閉じ、排気弁V12が開く際には、第2段目シリンダ62、第1段目シリンダ61内の高圧ヘリウムガスは、吸気の場合とは逆の経路をたどって冷媒ガス流路52、排気弁V12を介して圧縮機51に回収される。
【0110】
GM冷凍機の作動時においては、クランク機構65によって駆動用モータMの回転駆動力が駆動軸Shの往復駆動力に変換される。そして、駆動軸Shによって、第1段目ディスプレーサ63、第2段目ディスプレーサ64が、図10中の矢印で示すように、上下に(それぞれ第1段目シリンダ61及び第2段目シリンダ62に沿って)往復駆動される。
【0111】
駆動軸Shによって第1段目ディスプレーサ63、第2段目ディスプレーサ64が駆動軸Shと反対側(図10の下方)に駆動される際には、吸気弁V11が開き、排気弁V12が閉じる。そして、第1段目シリンダ61内の膨張空間71、及び第2段目シリンダ62内の膨張空間72に高圧ヘリウムガスが供給される(供給工程)。
【0112】
また、駆動軸Shによって第1段目ディスプレーサ63、第2段目ディスプレーサ64が駆動軸Sh側(図10の上方)に駆動される際には、吸気弁V11が閉じ、排気弁V12が開く。そして、第1段目シリンダ61内の膨張空間71、及び第2段目シリンダ62内の膨張空間72が低圧になるとともに、膨張空間71及び膨張空間72からヘリウムガスは排出され、圧縮機51に回収される(排出工程)。
【0113】
このとき、膨張空間71、72において、ヘリウムガスが膨張することによって、冷熱が発生する。冷熱を発生し、冷却されたヘリウムガスは、膨張空間71、72から排出される際に、蓄冷材67、68と接触し、熱交換することによって、蓄冷材67、68を冷却する。すなわち、蓄冷材67、68に、発生した冷熱が蓄冷される。
【0114】
次の供給工程で供給される高圧ヘリウムガスは、蓄冷材67、68を通って供給されることにより冷却される。冷却されたヘリウムガスが膨張空間71、72で膨張することにより、さらに冷却が進む。
【0115】
以上のようにして、供給工程と排出工程とを繰り返すことにより、第1段目シリンダ61内の膨張空間71が、例えば40K〜70K程度の温度に冷却され、第2段目シリンダ62内の膨張空間72が、例えば数K〜20K程度の温度に冷却される。
【0116】
次に、第2段目ディスプレーサ64について説明する。
【0117】
第2段目ディスプレーサ64は、高温側から低温側に向かって順に、高温側第2段目蓄冷管31d、低温側第2段目蓄冷管32dを有する。低温側第2段目蓄冷管32dは、本発明における蓄冷管に相当する。
【0118】
高温側第2段目蓄冷管31dは、高温端が第1段目ディスプレーサ63の低温端と接続されており、低温端が低温側第2段目蓄冷管32dの高温端と接続されている。
【0119】
高温側第2段目蓄冷管31dの内部には、前述したように、蓄冷材68が充填されている。高温側第2段目蓄冷管31dは、軸方向の伝導損失を最小に抑えるため、肉薄のSUS材を用いることができる。SUS材として、例えばSUS304等の材質を用いることができる。また、蓄冷材68としては、例えば鉛球を用いることができる。
【0120】
低温側第2段目蓄冷管32dは、高温端が高温側第2段目蓄冷管31dの低温端と接続されている。
【0121】
低温側第2段目蓄冷管32dは、第1の実施の形態における低温側第2段目蓄冷管32と同様にすることができる。すなわち、低温側第2段目蓄冷管32dは、高温側画成部材33、低温側画成部材34、内部配管35、導入口36を有する。高温側画成部材33は、低温側第2段目蓄冷管32dの内部空間SIと低温側第2段目蓄冷管32dの高温側とを画成する。低温側画成部材34は、低温側第2段目蓄冷管32dの内部空間SIと低温側第2段目蓄冷管32dの低温側とを画成する。内部配管35は、高温側画成部材33と低温側画成部材34とを貫通するとともに、一端が高温側画成部材33の高温側に開口し、他端が低温側画成部材34の低温側に開口している。すなわち、内部配管35は、低温側第2段目蓄冷管32dの高温側と低温側第2段目蓄冷管32dの低温側とを連通させる。このように、低温側第2段目蓄冷管32dは、内部に内部配管35が収容された、いわゆるチューブインチューブ構造を有する。また、導入口36は、第2段目シリンダ62及び低温側第2段目蓄冷管32dの管壁を貫通して設けられており、前述した導入配管53を介し、圧縮機51の吐出側からヘリウムガスをガス蓄冷材として、低温側第2段目蓄冷管32dの内部に導入するためのものである。
【0122】
本実施の形態でも、図10及び図11に示すように、低温側第2段目蓄冷管32dを途中で折り曲げず、上下方向に延在する円筒形状としてもよく、第1の実施の形態で図2を用いて説明したように、長尺の配管を複数回折り曲げた構造を有していてもよい。
【0123】
本実施の形態でも、内部配管35は、低温側第2段目蓄冷管32dの内部空間SIを、第1の空間S1と第2の空間S2とに画成する。第1の空間S1は、内部配管35の内部の空間である。第2の空間S2は、低温側第2段目蓄冷管32dの内部の空間であって、内部配管35の外部の空間である。前述したように、内部配管35は、高温側画成部材33と低温側画成部材34とを貫通するものであるため、第1の空間S1は、低温側第2段目蓄冷管32dの高温側と低温側第2段目蓄冷管32dの低温側とを連通させるものである。また、第1の空間S1には、冷媒ガスが流れる。
【0124】
第2の空間S2には、低温側第2段目蓄冷材が充填される。低温側第2段目蓄冷材として、例えばヘリウムガス等のガスよりなるガス蓄冷材を用いることができる。ヘリウムガスは、例えば1.5MPaの圧力、5〜15Kの温度領域で、低温で大きな比熱を有する磁性蓄冷材であるHoCuに比べ、更に大きな比熱を有する。
【0125】
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、ガス蓄冷材の内部配管の管壁との接触面積は、冷媒ガスの内部配管の管壁との接触面積よりも大きい。これにより、冷媒ガスとガス蓄冷材とが熱交換される際の熱抵抗を小さくすることができ、冷媒ガスとガス蓄冷材との熱交換の効率を向上できる。
【0126】
なお、本実施の形態でも、第1の実施の形態の第1の変形例と同様に、内部配管は、内部配管の外側の表面積を増やすための部材を有してもよい。また、第1の実施の形態の第2の変形例と同様に、低温側第2段目蓄冷管は、第2の空間に充填された、金属よりなる充填材を含んでもよい。また、第2の実施の形態と同様に、チューブインチューブ構造に代え、スリット構造を有してもよい。
【0127】
以上、本発明の好ましい実施の形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
10 パルス管冷凍機
21 第1段目蓄冷管
22 第2段目蓄冷管
23 第1段目パルス管
24 第2段目パルス管
29 第1段目蓄冷材
30 高温側第2段目蓄冷材
31、31d 高温側第2段目蓄冷管
32、32a、32b、32c、32d 低温側第2段目蓄冷管
35、35a 内部配管
39 フィン
40 充填材
43 画成部材
50 GM冷凍機
61 第1段目シリンダ
62 第2段目シリンダ
63 第1段目ディスプレーサ
64 第2段目ディスプレーサ
67、68 蓄冷材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒ガスを断熱膨張させるためのシリンダと、
前記シリンダと接続されており、内部に、前記冷媒ガスが流れる第1の空間と、ガスよりなる蓄冷材が充填される第2の空間とを画成する画成部材を含み、前記冷媒ガスの断熱膨張に伴って前記シリンダで発生した冷熱を、前記第2の空間に充填された前記蓄冷材に蓄冷する蓄冷管と
を有し、
前記画成部材が前記第2の空間に露出している面積は、前記画成部材が前記第1の空間に露出している面積よりも大きい、蓄冷器式冷凍機。
【請求項2】
前記画成部材は、前記蓄冷管の高温側と前記蓄冷管の低温側とを連通させる配管を含み、
前記第1の空間は、前記配管の内部の空間であり、
前記第2の空間は、前記配管の外部の空間であって、かつ、前記蓄冷管の高温側及び前記蓄冷管の低温側のいずれとも連通していないものである、請求項1に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項3】
前記画成部材は、前記蓄冷管の高温側と前記蓄冷管の低温側とを連通させるように第1のスリット空間が形成されているとともに、前記蓄冷管の高温側及び前記蓄冷管の低温側のいずれとも連通しないように第2のスリット空間が形成されており、
前記第1の空間は、前記第1のスリット空間を含み、
前記第2の空間は、前記第2のスリット空間を含み、
前記画成部材が前記第2のスリット空間に露出している面積は、前記画成部材が前記第1のスリット空間に露出している面積よりも大きい、請求項1に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項4】
前記配管は、前記配管の外側の表面積を増やすための部材を有する、請求項2に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項5】
前記部材はフィンである、請求項4に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項6】
前記蓄冷管は、前記第2の空間に充填された、金属よりなる充填材を含む、請求項2、請求項4又は請求項5に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項7】
前記充填材は、前記配管と一体化されたものである、請求項6に記載の蓄冷器式冷凍機。
【請求項8】
前記充填材は、拡散接合により前記配管と一体化されたものである、請求項7に記載の蓄冷器式冷凍機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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