説明

蓄冷材およびこの蓄冷材を用いた蓄冷冷凍機

【課題】 鉛球より大きな熱交換効率を得る。
【解決手段】 蓄冷材21を構成する鉛毛22は、鉛を例えは0.5mm厚みに展延した鉛シートを例えば0.5mmの幅で裁断して形成する。こうすることによって、蓄冷材21の体積当たりの表面積が大きくなって熱交換効率が高められる。上記構成の蓄冷材21は、蓄冷冷凍機のディスプレーサに充填されて冷媒ガスとの熱交換効率を高める。その結果、従来と同じ容積のディスプレーサに充填した場合には熱交換容量(蓄冷熱量)を大きでき、従来と同じ熱交換容量(蓄冷熱量)を得る場合にはディスプレーサを小型にできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、蓄冷材、および、この蓄冷材を用いた蓄冷冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、蓄冷冷凍機としてギフォードマクマホン冷凍機やスターリング冷凍機等がある。以下、ギフォードマクマホン冷凍機について、図2に示すような2段ギフォードマクマホン冷凍機を例に簡単に説明する。この冷凍機では、圧縮機1からの高圧ヘリウムガスを第1膨張シリンダ2および第2膨張シリンダ3内に導入排出するためのバルブディスク4を有している。そして、吸気時には、バルブディスク4を図2(a)に示すように位置させて、ヘリウムガスの吸入口5と第1膨張シリンダ2とを連通させる。そうすると、第1膨張シリンダ2に供給されたヘリウムガスは第1ディスプレーサ6内の蓄冷材7によって冷却されながら第2膨張シリンダ3に供給され、第2ディスプレーサ8内の蓄冷材9によって冷却されながら先端部の膨張室10に至る。その場合、中間圧力に保持されている中間圧室11側の圧力と高圧の膨張室10側の圧力との圧力差によって、両ディスプレーサ6,8がバルブディスク4側に移動し、膨張室10の体積が増加する。
【0003】一方、排気時においては、上記バルブディスク4を図2(b)に示すように位置させて、ヘリウムガスの排気口12と第1膨張シリンダ2とを連通させる。そうすると、膨張室10内が一気に減圧され、発生した冷熱で冷却されたヘリウムガスが両蓄冷材9,7を冷却しながら排気口12より排気される。その場合、中間圧力に保持されている中間圧室11の圧力と低圧の膨張室10の圧力との圧力差によって、両ディスプレーサ6,8が膨張室10側に移動し、膨張室10の体積が減少する。
【0004】こうして、上記バルブモータ13によってバルブディスク4を回転駆動することによって第1ヒートステーション14および第2ヒートステーション15が極低温に冷却される。また、得られた冷熱が蓄冷材7,9に蓄えられて、吸入口5から吸気されたヘリウムガスを冷却する。尚、通常、第1ディスプレーサ6内の蓄冷材は銅やステンレスの金属メッシュ7および鉛球(図示せず)で構成される一方、第2ディスプレーサ8内の蓄冷材は鉛球9で構成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述のごとく、上記従来のギフォードマクマホン冷凍機においては、ディスプレーサ用の蓄冷材として鉛球が使用されている。こうして、ディスプレーサへの蓄冷材の充填率を大きくして熱交換効率を高めるようにしている。ところが、同じ体積を有する物体であれば球は最も表面積が小さく、鉛球の蓄冷材は同体積の他の形状の鉛よりも冷媒との熱交換面積が小さいことになる。したがって、ディスプレーサに充填される蓄冷材の体積が同じであれば鉛球の蓄冷材の熱交換効率は低いという問題がある。
【0006】そこで、この発明の目的は、鉛球より大きな熱交換効率を得ることができる蓄冷材、および、この蓄冷材を用いた蓄冷冷凍機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に係る発明の蓄冷材は、鉛を糸状に形成して成る鉛毛で構成したことを特徴としている。
【0008】上記構成によれば、鉛を糸状に形成した鉛毛を蓄冷材としている。そのため、同体積、つまりは同重量の鉛球に比べて上記蓄冷材の表面積が大きくなる。したがって、従来の鉛球の蓄冷材よりも大きな熱交換面積が得られ、蓄冷材の熱交換効率が高められる。
【0009】また、請求項2に係る発明の蓄冷冷凍機は、請求項1に係る発明の蓄冷材をディスプレーサ内に充填したことを特徴としている。
【0010】上記構成によれば、ディスプレーサ内に充填された鉛毛で成る蓄冷材は大きな熱交換面積を有している。したがって、従来の鉛球の蓄冷材を充填した場合に比較して、冷媒ガスとの熱交換効率が高められる。その結果、上記ディスプレーサの容積が従来と同じ容積である場合には、熱交換容量(蓄冷熱量)が大きくなる。また、従来と同じ熱交換容量(蓄冷熱量)を得る場合には、上記ディスプレーサの容積が小さくなる。
【0011】また、請求項3に係る発明の蓄冷冷凍機は、請求項1に係る発明の蓄冷材を螺旋状に積層してディスプレーサ内に充填したことを特徴としている。
【0012】上記構成によれば、ディスプレーサ内に螺旋状に積層して充填された鉛毛で成る蓄冷材は、大きな充填率と大きな熱交換面積を有している。したがって、従来の鉛球の蓄冷材を充填した場合に比較して、冷媒ガスとの熱交換効率が高められる。その結果、上記ディスプレーサの容積が従来と同じである場合には、熱交換容量(蓄冷熱量)が大きくなる。また、従来と同じ熱交換容量(蓄冷熱量)を得る場合には、上記蓄冷材の容積が小さくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態の蓄冷材における拡大外観を示す模式図である。この蓄冷材21は、細い糸状に形成された鉛毛22で構成することによって、蓄冷材の体積当たりの表面積を大きくして、熱交換効率をより高めたものである。
【0014】ここで、上述のような鉛毛22の形成は、例えば、鉛の展延性を利用して次のようにして行う。すなわち、鉛を例えば略0.5mm厚みのシート状に展延する。そして、この鉛シートを例えば0.5mmの幅で裁断して糸状の鉛毛22を形成するのである。尚、その場合の鉛毛22の長さは、1mm〜3mm,10mm,100mm等であるが特に限定するものではなく、長短混合しても差し支えない。また、鉛毛22の形成方法は、上述の方法に限定するものではない。
【0015】上記構成を有する蓄冷材21は、例えば、図2に示すようなギフォードマクマホン冷凍機やスターリング冷凍機等のフエノール樹脂等で円筒形に形成されたディスプレーサ内に充填される。そして、このディスプレーサ内を通過するヘリウムガス等の冷媒ガスとの熱交換によって上記冷媒ガスを冷却したり、上記冷媒ガスから受けた冷熱を蓄積する。その場合に、蓄冷材21を構成する鉛毛22は、細い糸状に形成されているために同じ体積(つまり、重量)の鉛球よりも表面積が大きく、大きな熱交換面積を得ることができる。したがって、従来の鉛球に代えて鉛毛22をディスプレーサ内に充填することによって、蓄冷材の冷媒ガスとの熱交換効率を高めることができる。その結果、従来と同じ容積のディスプレーサに充填した場合には熱交換容量(蓄冷熱量)を大きくできる。また、従来と同じ熱交換容量(蓄冷熱量)を得る場合にはディスプレーサを小型にでき、コストダウンを図ることができるのである。
【0016】尚、上記蓄冷冷凍機のディスプレーサに対する鉛毛22の充填は、鉛毛22を単独で充填してもよいし、鉛や希土類金属の金属球と組み合わせて充填しても差し支えない。要は、従来使用していた鉛球の部分に代えて同じ重量(体積)の鉛毛22を使用することによって熱交換効率を向上できるのである。また、鉛毛22をディスプレーサ内に螺旋状に配列し、且つ、積層して充填率の向上を図ってもよい。また、上記実施の形態においては、この発明の蓄冷材をギフォードマクマホン冷凍機に用いているが、スターリング冷凍機等の他の蓄冷冷凍機に用いることができることは言うまでもない。
【0017】
【発明の効果】以上より明らかなように、請求項1に係る発明の蓄冷材は、鉛を糸状に形成した鉛毛で構成したので、同体積(同重量)の鉛球に比べて表面積を大きくできる。したがって、従来の鉛球の蓄冷材よりも大きな熱交換面積を得ることができ、蓄冷材の熱交換効率を高めることができる。
【0018】また、請求項2に係る発明の蓄冷冷凍機は、請求項1に係る発明の蓄冷材をディスプレーサ内に充填したので、上記ディスプレーサ内に充填されている蓄冷材は大きな熱交換面積を有している。したがって、従来の鉛球の蓄冷材を充填した場合に比べて、冷媒ガスとの熱交換効率を高めることができる。その結果、上記ディスプレーサの容積が従来と同じ容積である場合には、熱交換容量(蓄冷熱量)を大きくできる。また、従来と同じ熱交換容量(蓄冷熱量)を得る場合には、上記ディスプレーサを小型にしてコストダンを図ることができる。
【0019】また、請求項3に係る発明の蓄冷冷凍機は、請求項1に係る発明の蓄冷材を螺旋状に積層してディスプレーサ内に充填したので、上記ディスプレーサに充填されている蓄冷材は大きな充填率と大きな熱交換面積を有している。したがって、従来の鉛球の蓄冷材を充填した場合に比べて冷媒ガスとの熱交換効率を更に高めることができる。その結果、上記ディスプレーサの容積が従来と同じである場合には、熱交換容量(蓄冷熱量)を大きくできる。また、従来と同じ熱交換容量(蓄冷熱量)を得る場合には、上記ディスプレーサを小型にしてコストダンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の蓄冷材における拡大外観を示す模式図である。
【図2】2段ギフォードマクマホン冷凍機の動作説明図である。
【符号の説明】
21…蓄冷材、 22…鉛毛。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉛を糸状に形成して成る鉛毛で構成したことを特徴とする蓄冷材。
【請求項2】 請求項1に記載の蓄冷材をディスプレーサ内に充填したことを特徴とする蓄冷冷凍機。
【請求項3】 請求項1に記載の蓄冷材を螺旋状に積層してディスプレーサ内に充填したことを特徴とする蓄冷冷凍機。

【図1】
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【図2】
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