説明

蓄熱槽群の熱流動の解析方法

【課題】蓄熱槽群の熱流動の解析を少ない計算資源で効率的に行うことを可能にする。
【解決手段】複数の蓄熱槽が連通管で順次接続されて流体が通過可能とされた蓄熱槽群を対象として、前記蓄熱槽群内の前記流体の流れに関して上流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果得られる連通管部の流体温度及び流量並びに圧力損失を解析条件として与えた前記上流側の蓄熱槽と連通管で連結している下流側の蓄熱槽についての蓄熱槽単体の熱流動解析を行い、該下流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果を新たな上流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果とし該下流側の蓄熱槽と連通管で連結している更に下流側の蓄熱槽についての蓄熱槽単体の熱流動解析を行うことを最も上流側の蓄熱槽から最も下流側の蓄熱槽に順に逐次行うことにより蓄熱槽群全体の熱流動解析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱槽群の熱流動の解析方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、蓄熱槽単体の熱流動解析を逐次行うことにより蓄熱槽群全体の熱流動解析を行う蓄熱槽群の熱流動の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の複数の蓄熱槽が連通管で連結されている蓄熱槽群(蓄熱システムとも呼ばれる)を対象とした数値解析手法として、蓄熱槽群全体を一体として同時に解析する手法が知られている(非特許文献1)。この手法は、蓄熱槽群を構成する全ての蓄熱槽及び蓄熱槽間の連通管を対象として解析格子を生成して数値解析を行うものである。
【0003】
また、非特許文献1のような従来の蓄熱槽群の数値解析手法では、蓄熱槽間の連通管を解析格子を構成する格子子として組み込むに際し、連通管の物理特性等が必要とされる。そこで、複数の蓄熱槽を模擬した模型を用いた実験を行い、実験により得られた評価式若しくは実験結果に基づく蓄熱槽群全体を対象とした数値解析で得られた連通管部の解析結果を利用して、連通管を解析格子の格子子として組み込んでいる。
【0004】
【非特許文献1】殷耀晨,伊藤幸広:「水蓄熱槽設計における数値解析手法の応用」,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.1051-1052,1998年9月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の数値解析手法によると、蓄熱槽群を構成する全ての蓄熱槽及び蓄熱槽間の連通管を対象として解析格子を生成して数値解析を行うため、蓄熱槽群を構成する蓄熱槽の数が増えるに従って格子子の数が多くなると共に複雑な配置となり、解析格子の生成に多くのノウハウが必要となる。このため、汎用性があるとは言い難い。
【0006】
また、蓄熱槽群を構成する各蓄熱槽毎の熱流動解析及び隣接する蓄熱槽に対して連通管を通してなされる連通管部毎の作用の解析を蓄熱槽群全体を一体として同時に行うため、解析格子の格子子の数に対応した自由度の行列を解くことが必要となる。そのため、蓄熱槽群を構成する蓄熱槽の数が増えるに従って解くべき行列の自由度が増加し、それに伴って、電子計算機を用いて解析する場合の計算時間及び電子計算機の性能や記憶容量等の必要とされる計算資源が増大する。
【0007】
さらに、複数の蓄熱槽を模擬した模型を用いた実験により得られた評価式若しくは実験結果に基づく蓄熱槽群全体を対象とした数値解析で得られた連通管部の解析結果を利用して、連通管を解析格子の格子子として組み込むため、模型実験が必要であり、コストアップの一因となっている。
【0008】
さらにまた、複数の蓄熱槽が連結されている蓄熱槽群内の熱流動挙動には未だ不明な点が多く残されており、現象を適確に表現し得るモデルが完成しているとは言えない。また、従来のモデル化は、現象をより細かく捉えるようにしたり、多くの実験結果を活用するようにしたり等することで精緻化を図ることに主眼が置かれたものであり、結果としてモデルを複雑にすると共に解析に手間がかかるものとなっている。
【0009】
そこで、本発明は、汎用性があり、蓄熱槽群内の熱流動挙動の詳細を少ない計算資源でも短時間に把握することが可能な蓄熱槽群の熱流動の解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本願発明者らは解析モデルの簡略化と計算負荷の軽減について鋭意検討を重ねた結果、これまでの実験や解析の結果に基づいて、蓄熱槽群内の熱流動が放物型方程式の特性を有し、下流方向への空間発展と時間進行により熱流動現象が再現できることを知見するに至った。本発明の蓄熱槽群の熱流動の解析方法は係る知見に基づくものであって、複数の蓄熱槽が連通管で順次接続されて流体が通過可能とされた蓄熱槽群を対象として、蓄熱槽群内の流体の流れに関して上流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果得られる連通管部の流体温度及び流量並びに圧力損失を解析条件として与えた上流側の蓄熱槽と連通管で連結している下流側の蓄熱槽についての蓄熱槽単体の熱流動解析を行い、下流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果を新たな上流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果とし下流側の蓄熱槽と連通管で連結している更に下流側の蓄熱槽についての蓄熱槽単体の熱流動解析を行うことを最も上流側の蓄熱槽から最も下流側の蓄熱槽に順に逐次行うことにより蓄熱槽群全体の熱流動解析を行うようにしている。
【0011】
この蓄熱槽群の熱流動の解析方法は、複数連なる蓄熱槽及び連通管の全てを一体として同時に解析するのではなく、流体温度及び流量等の物理量はほぼ一方向に伝播することを利用し、蓄熱槽群を構成する各蓄熱槽を単体として解析する。また、蓄熱槽間の連通管自体は解析格子の対象とならない。したがって、蓄熱槽及び蓄熱槽間の連通管の全てを一体とした解析格子を生成することなく各蓄熱槽単体を対象とした解析を行うため、蓄熱槽群全体を対象とした複雑な解析格子生成のノウハウが必要とされず汎用性が高い。ここで、複数の蓄熱槽が連通管で連結されている蓄熱槽群において、連通管に対し、流体が蓄熱槽群の流入口から流入して蓄熱槽群の流出口から流出するまでの蓄熱槽群内の流体の流れの上流側にある蓄熱槽を上流側の蓄熱槽と呼び、流体の流れの下流側にある蓄熱槽を下流側の蓄熱槽と呼ぶ。
【0012】
また、隣接する上流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果を用いて下流側の蓄熱槽についての熱流動の解析を蓄熱槽単体として行い、この解析結果を新たな上流側の蓄熱槽についての熱流動の解析結果として更に下流側の蓄熱槽についての熱流動の解析を蓄熱槽単体として行うというように、蓄熱槽単体の解析を上流側の蓄熱槽から下流側の蓄熱槽に対して逐次的に行う。このように、各蓄熱槽毎に蓄熱槽単体の解析を逐次行うようにすることで、蓄熱槽群全体を一体として同時に解析する場合と比べ、解くべき行列の自由度を小さくすることができる。これにより、蓄熱槽群内の熱流動挙動の解析を、電子計算機の性能や記憶容量等について少ない計算資源でも短時間に処理することが可能である。さらにまた、熱流動が定常化するまでステップを積み重ねて各蓄熱槽毎の熱流動解析を繰り返し行う場合には、隣接する上流側の蓄熱槽についての解析結果を用い、各蓄熱槽毎の解析は独立したものとして処理することができる。そのため、各蓄熱槽毎の解析を並列に処理することが可能で、計算時間を短縮することができる。
【0013】
また、蓄熱槽間の連通管自体は解析格子の対象とならないため、従来必要とされていた連通管部についての、複数の蓄熱槽を模擬した模型を用いた実験により得られる評価式若しくは実験結果に基づいた蓄熱槽群全体を対象とした数値解析で得られる解析結果は必要とされない。そのため、模型実験を行うコストを抑えると共に蓄熱槽群の熱流動解析とは別に解析を行う手間を省くことができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の蓄熱槽群の熱流動の解析方法によれば、蓄熱槽群を構成する蓄熱槽及び蓄熱槽間の連通管の全てを一体とした解析格子を生成することなく各蓄熱槽単体を対象とした解析を行うため、蓄熱槽群全体を対象とした複雑な解析格子生成のノウハウが必要とされず汎用性が高い。また、各蓄熱槽毎に蓄熱槽単体の解析を逐次行うようにすることで、蓄熱槽群全体を一体として同時に解析する場合と比べ、解くべき行列の自由度を小さくすることができ、蓄熱槽群内の熱流動挙動の解析を、電子計算機の性能や記憶容量等について少ない計算資源でも短時間に処理することが可能である。さらにまた、各蓄熱槽毎の解析を並列に処理することが可能で、計算時間を短縮することができる。
【0015】
また、本発明の蓄熱槽群の熱流動の解析方法によれば、蓄熱槽間の連通管自体は解析格子の対象とならないため、従来必要とされていた連通管部についての、複数の蓄熱槽を模擬した模型を用いた実験により得られる評価式若しくは実験結果に基づいた蓄熱槽群全体を対象とした数値解析で得られる解析結果は必要とされない。そのため、模型実験を行うコストを抑えると共に蓄熱槽群の熱流動解析とは別に解析を行う手間を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態では、熱流動解析を行う蓄熱槽群として、図3に示すように、第1槽から第N槽(N≧2)までのN個の蓄熱槽12が連通管14で連結された水を蓄積する蓄熱槽群10を例に挙げて説明する。また、連通管14に対し、蓄熱槽群10の流入口13から流入して流出口15から流出するまでの流体の流れ16の上流側にある蓄熱槽12を上流側の蓄熱槽12と呼び、下流側にある蓄熱槽12を下流側の蓄熱槽12と呼ぶ。具体的には例えば、第1槽と第2槽との関係では、第1槽が上流側の蓄熱槽12となり、第2槽が下流側の蓄熱槽12となる。なお、最も上流側にあって蓄熱槽群10の流入口13を有する蓄熱槽12を第1槽とし、この第1槽から下流側に向かって順番に蓄熱槽12に番号を付与している。
【0017】
図1に、本発明の蓄熱槽群10の熱流動の解析方法の一実施形態のフローチャートを示す。本実施形態の蓄熱槽群10の熱流動の解析方法は、蓄熱槽群10内の流体の流れ16に関して上流側の蓄熱槽12についての熱流動解析の結果得られる連通管14での流体温度及び流量並びに圧力損失を解析条件として与えた上流側の蓄熱槽12と連通管14で連結している下流側の蓄熱槽12についての蓄熱槽12単体の熱流動解析を行い、下流側の蓄熱槽12についての熱流動解析の結果を新たな上流側の蓄熱槽12についての熱流動解析の結果とし下流側の蓄熱槽12と連通管14で連結している更に下流側の蓄熱槽12についての蓄熱槽12単体の熱流動解析を行うことを最も上流側の蓄熱槽12である第1槽から最も下流側の蓄熱槽12である第N槽に順に逐次行うことにより蓄熱槽群10全体の熱流動解析を行うようにしている。
【0018】
ここで、本発明の蓄熱槽群10の熱流動の解析方法は、上流側の蓄熱槽12から流出する流体の温度及び流量と、この上流側の蓄熱槽12と連通管14で連結している下流側の蓄熱槽12に流入する流体の温度及び流量は等しいことを前提としている(図2参照)。
【0019】
本実施形態の蓄熱槽群10の熱流動の解析方法は、時刻tを0(ゼロ)とした上で(S1)、まず、初期状態として各蓄熱槽12に蓄えられている水の温度及び水量を各蓄熱槽12毎の初期条件として設定する(S2)。各蓄熱槽12毎の水温は、各蓄熱槽12毎に測定されている水温を用いる。また、部分的に水温が測定されていない蓄熱槽12がある場合には、例えば、水温が測定されている蓄熱槽12については測定温度を用い、水温が測定されていない蓄熱槽12については水温が測定されている蓄熱槽12の測定温度を用いて直線補完等することにより設定する。
【0020】
各蓄熱槽12毎の水量は、各蓄熱槽12毎の内部寸法(仕様値)と水位から算出する。なお、蓄熱槽群10の運転を開始する前の状態では、全ての蓄熱槽12の水位は一様である。
【0021】
次に、蓄熱槽群10の運転の開始に伴って形成される各蓄熱槽12毎の水位を計算する(S3)。各蓄熱槽12毎の水位は、蓄熱槽群10の運転パターンにより設定される流入口13から供給される水の温度及び流量、並びにS2で求めた各蓄熱槽12毎の水の温度及び水量、更に上流側の蓄熱槽12との間の連通管14での圧力損失と下流側の蓄熱槽12との間の連通管14での圧力損失を基に計算する。この連通管14での圧力損失等を基に水位を計算する方法自体は一般的であるので、詳細についてはここでは省略する。なお、連通管14での圧力損失は、設計用のハンドブック(例えば、日本流体力学会(編) 流体力学ハンドブック等)に整理されている抵抗係数及び連通管14の内径(仕様値)に基づき、圧力損失評価式を用いて算出可能である。また、最も下流側の第N槽の水位の計算においては下流側の連通管14での圧力損失の代わりに流出口15での圧力損失を用いる。
【0022】
S2とS3の処理は、一つの蓄熱槽群10の一つの運転パターンに対して1回だけ行い、運転パターンが途中で変更される場合にはその都度行う。一方、時刻tに1を加えて単位時間だけ経過させる処理(S4)及びS5以降の処理については、蓄熱槽群10全体の熱流動解析が終了するまで、必要な処理を必要な回数だけ繰り返して行う。ここで、蓄熱槽群10の運転パターンが変更されない間は、一定の温度及び流量の水が蓄熱槽群10の流入口13から継続して供給される。
【0023】
なお、単位時間は、解析対象の蓄熱槽群10を構成する蓄熱槽12の大きさや蓄熱槽群10の運転パターン等に基づいて設定する。例えば、蓄熱槽12が小さく且つ蓄熱槽群10の運転パターンの切り替えのスパンが短い場合には短時間とし、蓄熱槽12が大きく且つ蓄熱槽群10の運転パターンの切り替えのスパンが長い場合には長時間とする。具体的には例えば、1分から10分程度の範囲で設定可能であるが、特にこれに限定されるものではなく、これより短くても、またこれより長くても良い。
【0024】
続いて、蓄熱槽群10全体の熱流動解析が終了するまで繰り返し行う処理について説明する。まず、時刻tに1を加え、即ち前記の単位時間分だけ推移させ、その時刻を新たな時刻tとする(S4)。
【0025】
蓄熱槽群10の流入口13から第1槽に流入させる水の温度及び流量を設定する(S5)。これは、蓄熱槽群10の運転パターンに基づいて設定する。
【0026】
次に、第1槽が既に定常状態であるか否かを判断し(S6)、未だ定常状態でなければ(S6;NO)、第1槽を対象とした蓄熱槽12内の熱流動解析を行う(S7)。一方、既に定常状態であれば(S6;YES)、第2槽以降の熱流動解析のステップ(S10〜S18)に移る。
【0027】
第1槽を対象とした蓄熱槽12内の熱流動解析(S7)は、時刻t=1又は運転パターンが変更された場合においては、S2及びS3で求めた蓄熱槽12内の水の温度及び水量並びに水位に対し、S5で設定した第1槽に流入させる水の温度及び流量、更に第2槽との間の連通管14での圧力損失を解析条件として行う。また、時刻t≧2(即ち、t=1から一単位時間分若しくはそれ以上の単位時間が経過した時刻。また、運転パターンが変更されない場合)においては、時刻t=t−1(即ち、現在時刻から一単位時間分だけ前の時刻)の蓄熱槽12内の水の温度及び水量並びに水位に対し、S5で設定した時刻t=tに第1槽に流入させる水の温度及び流量、更に第2槽との間の連通管14での圧力損失を解析条件として行う。
【0028】
S7の熱流動解析の結果を基に、第1槽が定常状態になっているか否かを判断し(S8)、定常状態になっていれば(S8;YES)、第1槽の計算を終了し(S9)、第2槽以降の熱流動解析のステップ(S10〜S18)に移る。一方、定常状態になっていなければ(S8;NO)、そのまま第2槽以降の熱流動解析のステップ(S10〜S18)に移る。
【0029】
なお、定常状態になっているか否かは、例えば、時刻t=tの解析の結果と時刻t=t−1の解析結果に差違が無いか否かにより判断する。例えば、時刻t=t−1で第1槽の連通管14から流出した水の温度と時刻t=tで流出する水の温度の変化量が0.1%以下である場合には定常状態になっていると判断する。しかしながら、定常状態になっているか否かの判断指標及びその判断水準はこれに限定されるものではなく、例えば、水の温度の変化量の判断水準を0.1%より大きくしたり小さくしたりしても良い。
【0030】
続いて、第2槽以降の熱流動解析について説明する。第n槽(n≧2)の熱流動解析については、まず、第n槽が既に定常状態であるか否かを判断し(S12)、未だ定常状態でなければ(S12;NO)、第n槽に流入する水の温度及び流量を設定する(S13)。一方、既に定常状態であれば(S12;YES)、n=n+1とした上で(S11)、即ち隣接する下流側の蓄熱槽12に対象を移した上でS12以降の手順を繰り返す。
【0031】
時刻t=tの第n槽の熱流動解析を行う際の解析条件としての、時刻t=tに連通管14から第n槽に流入する水の温度及び流量として、第n槽に隣接する上流側の蓄熱槽12である第n−1槽の時刻t=tの熱流動解析の結果得られる連通管14から流出する水の温度及び流量を与える(S13)。
【0032】
第n槽を対象とした蓄熱槽12内の熱流動解析は(S14)、時刻t=t−1の蓄熱槽12内の水の温度及び水量並びに水位に対し、S13で設定した時刻t=tに連通管14から第n槽に流入する水の温度及び流量、更に第n+1槽との間の連通管14での圧力損失を解析条件として行う。なお、最も下流側の蓄熱槽12である第N槽の熱流動解析においては、第n+1槽との間の連通管14での圧力損失の代わりに流出口15での圧力損失を用いる。
【0033】
S14の熱流動解析の結果を基に、第n槽が定常状態になっているか否かを判断し(S15)、定常状態になっていれば(S15;YES)、第n槽の計算を終了し(S17)、第n+1槽があるか否かの判断のステップ(S18)に移る。
【0034】
一方、第n槽が定常状態になっていなければ(S15;NO)、第n+1槽があるか否かを判断し(S16)、第n+1槽がある場合には(S16;YES)、n=n+1とした(S11)上でS12以降の手順を繰り返す。一方、第n+1槽がない場合には(S16;NO)、t=t+1とした(S4)上でS5以降の手順を繰り返す。
【0035】
また、第n槽の計算が終了後(S17)、第n+1槽があるか否かを判断し(S18)、第n+1槽がある場合には(S18;YES)、n=n+1とした(S11)上でS12以降の手順を繰り返す。一方、第n+1槽がない場合には(S18;NO)、蓄熱槽群10全体の熱流動解析を終了する(S19)。
【0036】
以上のように、時刻tでの第n槽の計算結果を使って、時刻tでの第n+1槽の計算をするようにすることにより、時刻tの第n+1槽の計算中に時刻t+1の第n槽の計算を並行して行うことができるため(図2参照)、計算時間を短縮することができる。
【0037】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0038】
例えば、本実施形態では蓄熱槽群10を構成する蓄熱槽12全てが定常状態になるまで蓄熱槽12単体の熱流動解析を繰り返し行うようにしたが、一定時間経過後の蓄熱槽群10の状態を評価したい場合には、一定時間の経過に対応する分だけ時刻tを推移させて熱流動解析を行えば良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の蓄熱槽群の熱流動の解析方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図2】分割逐次処理の概念図である。
【図3】本実施形態の蓄熱槽群の熱流動の解析方法が対象とする蓄熱槽群の概要図である。
【符号の説明】
【0040】
10 蓄熱槽群
12 蓄熱槽
14 連通管
16 流体の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄熱槽が連通管で順次接続されて流体が通過可能とされた蓄熱槽群を対象として、前記蓄熱槽群内の前記流体の流れに関して上流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果得られる連通管部の流体温度及び流量並びに圧力損失を解析条件として与えた前記上流側の蓄熱槽と連通管で連結している下流側の蓄熱槽についての蓄熱槽単体の熱流動解析を行い、該下流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果を新たな上流側の蓄熱槽についての熱流動解析の結果とし該下流側の蓄熱槽と連通管で連結している更に下流側の蓄熱槽についての蓄熱槽単体の熱流動解析を行うことを最も上流側の蓄熱槽から最も下流側の蓄熱槽に順に逐次行うことにより前記蓄熱槽群全体の熱流動解析を行うことを特徴とする蓄熱槽群の熱流動の解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−293849(P2006−293849A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116074(P2005−116074)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)