説明

蓄熱装置およびこれを用いた空気調和機

【課題】蓄熱装置の内部の熱交換器の腐蝕を抑え、耐久性を向上させることができる蓄熱装置を提供すること。
【解決手段】本発明の蓄熱装置32は、蓄熱溶液36と、蓄熱溶液36に浸漬した熱交換器34と、蓄熱溶液36の上部に積層した油層104と、蓄熱溶液36と熱交換器34と油層104とを内部に配置する蓄熱容器103とを備え、蓄熱溶液36をNaCl水溶液としたことにより、高温時であっても熱交換器を腐蝕させる酸が発生しないため、熱交換器の腐蝕を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱材に蓄熱して冷媒に熱を放熱する蓄熱装置と、この蓄熱装置を用いた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内部に熱交換器を有する蓄熱装置には、低温時の凍結防止のためにエチレングリコールなどの不凍性を有するニ価アルコールを混合した混合液からなる蓄熱溶液が用いられることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−288359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から蓄熱溶液として用いられているエチレングリコールは、高温で使用され続けると、グリコール酸や蟻酸に分解し、内部にある熱交換器を腐蝕させてしまうという課題を有していた。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、蓄熱装置の内部の熱交換器の腐蝕を抑え、耐久性を向上させることができる蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の蓄熱装置は、蓄熱溶液と、蓄熱溶液に浸漬した熱交換器と、蓄熱溶液の上部に積層した油層と、蓄熱溶液と熱交換器と油層とを内部に配置する蓄熱容器とを備え、蓄熱溶液をNaCl水溶液としたことにより、高温時であっても熱交換器を腐蝕させる酸が発生しないため、熱交換器の腐蝕を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、蓄熱装置の内部の熱交換器の腐蝕を抑え、耐久性を向上させることができる蓄熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における蓄熱装置の構成図
【図2】同実施の形態1における蓄熱装置の構成図
【図3】同実施の形態1における空気調和機の構成図
【図4】同実施の形態1における空気調和機の構成図
【図5】同実施の形態1における空気調和機の構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明の蓄熱装置は、蓄熱溶液と、蓄熱溶液に浸漬した熱交換器と、蓄熱溶液の上部に積層した油層と、蓄熱溶液と熱交換器と油層とを内部に配置する蓄熱容器とを備え、蓄熱溶液をNaCl水溶液としたことにより、高温時であっても熱交換器を腐蝕させる酸が発生しないため、熱交換器の腐蝕を防ぐことができる。特に、水にNaClを15%以上混合したNaCl水溶液を主成分とすることで、外気温度が−20℃といった冬場の屋外環境に曝されても凍結しない様にすることができる。
【0010】
第2の発明の蓄熱装置は、特に第1の発明において、油層には沸点が蓄熱溶液の沸点よりも大きく、かつ、炭化水素系オイルを主成分としたことにより、油層が蓄熱溶液に溶け難いうえに蒸発し難く、蓄熱溶液の蒸発を抑制し、蓄熱溶液の補充を不要とする。
【0011】
第3の発明の蓄熱装置は、特に第2の発明において、油層は分子量の異なる2種類以上の油層で構成されることにより、融点が異なるために蓄熱溶液の揮発、蒸発を抑制する効果が向上する。
【0012】
第4の発明の蓄熱装置は、特に第3の発明において、油層は、常温で液体の油層と、常温では固体かつ高温では液体となる油層とで構成されることにより、蓄熱溶液揮発の抑制能力、油の蓄熱溶液への溶解性、有機酸生成の抑制能力のいずれも良好な油層となり、蓄熱溶液の補充の必要がなくなる。
【0013】
第5の発明の空気調和機は、第1〜第4の発明の蓄熱装置と、冷媒を圧縮する圧縮機とを少なくとも備え、圧縮機の周りに蓄熱装置を配置したことにより、圧縮機からの廃熱を有効的に蓄熱溶液36に貯えることができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1である蓄熱装置の断面図である。まず図1(a)を用いて蓄熱装置の構成について説明する。
【0016】
本実施の形態における蓄熱装置32は、胴体部101と蓋部102とで構成される蓄熱容器103を有しており、蓄熱容器103の内部は蓄熱溶液36で満たされている。そして蓄熱溶液36には内部に冷媒が流れる熱交換器34が浸漬されている。なお蓄熱容器103は、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)を成型して得ているため、金属材料で構成するのに比べてコストを低減させることができる。
【0017】
また、蓄熱溶液36はNaCl水溶液を主成分とし、その質量パーセント濃度は15%〜26%とし、氷点下であっても凍結しないようにしている。なお、目的に応じて酸化防止剤や酸捕捉剤を添加してもよい。
【0018】
また、蓄熱溶液36の表面には油層104が積層されている。この油層104は炭化水素系オイルを主成分とし、油層の沸点が蓄熱溶液の沸点よりも大きいものを使用しているので、油層が蓄熱溶液に溶け難いうえに蒸発し難く、蓄熱溶液の蒸発を抑制し、蓄熱溶液の補充を不要とする。
【0019】
また、蓋部102には、大気と連通する通気穴105が設けられており、この通気穴105は、蓄熱溶液36および油層104の温度上昇に伴う内部圧力上昇を防止するために設けられている。よって、通気穴105を通して蓄熱容器103内の圧力上昇を適度に大気へ放出することができ、また、圧力を過度に放出して蓄熱溶液36や油層104の充填量が減少しない程度の開口面積となっている。
【0020】
また、油層104と蓋部102との間には空気層106を設けており、ある程度の蓄熱溶液36の温度変化に伴う加減を吸収することができる。
【0021】
以上のような構成の蓄熱装置32は、蓄熱溶液36への熱の回収方法としては2通りの用途がある。
【0022】
1つ目は、熱交換器34を放熱として利用する方法であり、熱交換器34の内部に暖かい温水や冷媒を流通させることで、その液体が有する熱を蓄熱溶液36に放出させて蓄熱溶液36に蓄熱する場合である。
【0023】
2つ目は、熱交換器34を吸熱として利用する方法であり、蓄熱装置32の外部の熱源から蓄熱溶液36に蓄熱させて、熱交換器34の内部に水や冷媒を流すことによって、蓄熱溶液36が有する熱を水や冷媒に放出する場合である。
【0024】
次に、油層104について説明する。油層104に用いる油としては、蓄熱溶液36よりも沸点が高いもので、かつ、炭化水素系オイルを主成分としている。ここで蓄熱溶液36の蒸発性について検討する。
【0025】
一般的な液体は、室温では液体であったとしてもその一部は蒸気となって揮発しており、温度が高いほど蒸発性が高くなっていく。そして揮発した蒸気には、それぞれの温度において液体と平衡状態となる圧力があり、一般的に蒸気圧と呼ばれている。例えば、水の蒸気圧は、20℃では23hPa、80℃では575hPa、100℃では1013hPaであり、温度が高いほど蒸気圧は高くなる。
【0026】
そして、液体の沸点とは、液体状態での蒸気圧が周囲の気体の圧力と等しくなる温度であり、水の場合は1気圧(1013hPa)における沸点は100℃となっている。
【0027】
これらのことは油層104に用いられる炭化水素系オイルを主成分とする油においても同様であり、温度が高いほど炭化水素が多く蒸発して蒸気圧は高くなるが、その一方で蒸発量が多いと引火してしまうという新たな課題が発生する。引火とは、液体の炭化水素を一定の昇温度で加熱し、これに火炎を近づけたときに瞬間的に炭化水素が燃えてしまう現象のことであり、この引火に必要な濃度の蒸気を発生する最低温度を引火点という。
【0028】
この引火点の高低は、蒸発性の大小や蒸気圧の大小の目安として一般的に用いられ、引火点の温度が高いほど、蒸発しにくく、同一温度における蒸気圧が低い傾向にある。
【0029】
ここで、炭素数が15の飽和炭化水素のパラフィンを例にとって、引火点、蒸気圧、沸点の関係について説明する。炭素数15のパラフィンはペンタデカン(C15H32)であり、融点(流動開始温度)が10℃、引火点が132℃、沸点が268℃である。蒸気圧は92℃で1hPaとなり、引火点の132℃で10hPa、沸点の268℃で1013hPaであり、温度が高くなるにつれて蒸気圧が大きくなり、炭化水素が蒸発しやすくなることが分かる。
【0030】
このように、引火点という指標は、炭化水素の蒸発しにくさに大きく関与するものであり、その温度が高いほど、炭化水素が蒸発しにくいことを意味し、炭化水素の炭素数が大きいほど、引火点が高温となる。また、沸点も同様の傾向があり、炭化水素の炭素数が大きいほど、沸点が高温となり蒸発しにくくなる。
【0031】
そこで、本実施の形態1では、蓄熱溶液36の蒸発性を沸点で考え、油層104で私用する飽和炭化水素の蒸発性を引火点で考え、両者の関係を検討した。その結果、油層104に用いる材質の引火点が、蓄熱溶液36の沸点よりも高い方が、油層104で蓄熱溶液36の蒸発を防ぐことができる。特に、NaClを用いた蓄熱溶液36の最高沸点が130℃程度となるため、少なくとも油層104の引火点は130℃以上が望ましい。
【0032】
さらに、油層104を、分子量の異なる2種類以上の油層104(a)と油層104(
b)とを組み合わせて構成することによって、単体の油層としたときよりも、蓄熱溶液36の揮発量が減少させることができる。図2は2種類以上の油層を用いた蓄熱装置の図である。
【0033】
さらに、油層104(a)を常温では固体かつ高温では液体となる油層(例えば、パラフィンや低融点ポリエチレン)とし、油層104(b)を常温で液体の油層(例えば、ポリアルファオレフィン)とすることで、蓄熱溶液揮発の抑制能力、油の蓄熱溶液への溶解性、有機酸生成の抑制能力のいずれも良好な油層となり、蓄熱溶液の補充の必要がなくなる。
【0034】
以上のように構成された蓄熱装置32を用いた冷凍サイクルを搭載した空気調和機について説明する。
【0035】
図3は、本発明に係る冷凍サイクル装置である空気調和機の構成を示しており、空気調和機は、冷媒配管で互いに接続された室外機2と室内機4とで構成されている。
【0036】
図3に示されるように、室外機2の内部には、圧縮機6と四方弁8とストレーナ10と膨張弁12と室外熱交換器14とが設けられ、室内機4の内部には、室内熱交換器16が設けられ、これらは冷媒配管を介して互いに接続されることで冷凍サイクルを構成している。
【0037】
さらに詳述すると、圧縮機6と室内熱交換器16は、四方弁8が設けられた冷媒配管18を介して接続され、室内熱交換器16と膨張弁12は、ストレーナ10が設けられた冷媒配管20を介して接続されている。また、膨張弁12と室外熱交換器14は冷媒配管22を介して接続され、室外熱交換器14と圧縮機6は冷媒配管24を介して接続されている。
【0038】
冷媒配管24の中間部には四方弁8が配置されており、圧縮機6の冷媒吸入側における冷媒配管24には、液相冷媒と気相冷媒を分離するためのアキュームレータ26が設けられている。また、圧縮機6と冷媒配管22は、冷媒配管28を介して接続されており、冷媒配管28には除霜二方弁(例えば、電磁弁)30が設けられている。
【0039】
さらに、圧縮機6の周囲には蓄熱装置32が設けられ、蓄熱装置32の内部には、熱交換器34が設けられるとともに、熱交換器34と熱交換するための蓄熱溶液36が充填されており、蓄熱装置32と熱交換器34と蓄熱溶液36とで蓄熱装置を構成している。
【0040】
また、冷媒配管20と熱交換器34は冷媒配管38を介して接続され、熱交換器34と冷媒配管24は冷媒配管40を介して接続されており、冷媒配管38には蓄熱二方弁(例えば、電磁弁)42が設けられている。
【0041】
室内機4の内部には、室内熱交換器16に加えて、室内送風ファン16aと上下羽根(図示せず)と左右羽根(図示せず)とが設けられており、室内熱交換器16は、送風ファンにより室内機4の内部に吸込まれた室内空気と、室内熱交換器16の内部を流れる冷媒との熱交換を行い、暖房時には熱交換により暖められた空気を室内に吹き出す一方、冷房時には熱交換により冷却された空気を室内に吹き出す。上下羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて上下に変更し、左右羽根は、室内機4から吹き出される空気の方向を必要に応じて左右に変更する。
【0042】
また、室外熱交換器14には、暖房運転時の冷媒入口温度及び冷媒出口温度をそれぞれ検出する室外熱交換器入口温度検出手段44と室外熱交換器出口温度検出手段46が設け
られ、室内熱交換器16には、室内熱交換器16の温度を検出する室内熱交換器温度検出手段48が設けられている。さらに、蓄熱装置32には、蓄熱装置32の温度を検出する蓄熱槽温度検出手段50が設けられており、室外機2には、外気温度を検出する外気温度検出手段52が設けられている。
【0043】
なお、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁12、除霜二方弁30、蓄熱二方弁42、室外熱交換器入口温度検出手段44、室外熱交換器出口温度検出手段46、室内熱交換器温度検出手段48、蓄熱槽温度検出手段50、外気温度検出手段52等はコントローラ54(例えば、マイコン)に電気的に接続され、圧縮機6、送風ファン、上下羽根、左右羽根、四方弁8、膨張弁12の運転あるいは動作は、コントローラ54からの制御信号に基づいて制御されるとともに、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42はコントローラ54からの制御信号に基づいて開閉制御される。
【0044】
上記構成の本発明に係る冷凍サイクル装置において、各部品の相互の接続関係と機能とを、暖房運転時の場合を例にとり冷媒の流れとともに説明する。
【0045】
圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、冷媒配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16へと至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て冷媒配管20を通り、膨張弁12への異物侵入を防止するストレーナ10を通って、膨張弁12に至る。膨張弁12で減圧した冷媒は、冷媒配管22を通って室外熱交換器14に至り、室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、冷媒配管24と四方弁8とアキュームレータ26を通って圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0046】
また、冷媒配管18の圧縮機6吐出口と四方弁8の間から分岐した冷媒配管28は、除霜二方弁30を介して冷媒配管22の膨張弁12と室外熱交換器14の間に合流している。
【0047】
さらに、内部に蓄熱溶液36と熱交換器34を収納した蓄熱装置32は、圧縮機6に接して取り囲むように配置され、圧縮機6で発生した熱を蓄熱溶液36に蓄積し、冷媒配管20から室内熱交換器16とストレーナ10の間で分岐した冷媒配管38は、蓄熱二方弁42を経て熱交換器34の入口へと至り、熱交換器34の出口から出た冷媒配管40は、冷媒配管24における四方弁8とアキュームレータ26の間に合流する。
【0048】
次に、図3に示される空気調和機の通常暖房時の動作及び冷媒の流れを模式的に示す図4を参照しながら通常暖房時の動作を説明する。
【0049】
通常暖房運転時、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42は閉弁しており、上述したように圧縮機6の吐出口から吐出された冷媒は、冷媒配管18を通って四方弁8から室内熱交換器16に至る。室内熱交換器16で室内空気と熱交換して凝縮した冷媒は、室内熱交換器16を出て、冷媒配管20を通り膨張弁12に至り、膨張弁12で減圧した冷媒は、冷媒配管22を通って室外熱交換器14に至る。室外熱交換器14で室外空気と熱交換して蒸発した冷媒は、冷媒配管24を通って四方弁8から圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0050】
また、圧縮機6で発生した熱は、圧縮機6の外壁から蓄熱装置32の外壁を介して蓄熱装置32の内部に収容された蓄熱溶液36に蓄積される。
【0051】
次に、図3に示される空気調和機の除霜・暖房時の動作及び冷媒の流れを示す模式的に示す図5を参照しながら除霜・暖房時の動作を説明する。図中、実線矢印は暖房に供する冷媒の流れを示しており、破線矢印は除霜に供する冷媒の流れを示している。
【0052】
上述した通常暖房運転中に室外熱交換器14に着霜し、着霜した霜が成長すると、室外熱交換器14の通風抵抗が増加して風量が減少し、室外熱交換器14内の蒸発温度が低下する。本発明に係る冷凍サイクル装置である空気調和機には、図3に示されるように、暖房運転時における室外熱交換器14の冷媒入口温度を検出する室外熱交換器入口温度検出手段44が設けられており、非着霜時に比べて、蒸発温度が低下したことを室外熱交換器入口温度検出手段44で検出すると、コントローラ54から通常暖房運転から除霜・暖房運転への指示が出力される。
【0053】
通常暖房運転から除霜・暖房運転に移行すると、除霜二方弁30と蓄熱二方弁42は開制御され、上述した通常暖房運転時の冷媒の流れに加え、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒の一部は冷媒配管28と除霜二方弁30を通り、冷媒配管22を通る冷媒に合流して、室外熱交換器14を加熱し、凝縮して液相化した後、冷媒配管24を通って四方弁8とアキュームレータ26を介して圧縮機6の吸入口へと戻る。除霜・暖房運転時における二方弁を開くタイミングは、まず除霜二方弁30を開いた後に、所定時間経過し、蓄熱二方弁42を開くようにしている。これは、蓄熱溶液36に貯えられている熱量を有効的に使用するためであり、先に、蓄熱二方弁42を開いてしまうと、除霜運転を行っていないにもかかわらず、蓄熱溶液36の熱量が奪われてしまうからである。
【0054】
なお、膨張弁12と室外熱交換器14との間と、圧縮機6の吐出口と四方弁8との間を接続する冷媒配管28は、室外熱交換器14を加熱して除霜を行うための気相冷媒が通過することから、除霜バイパス回路ということもできる。
【0055】
また、冷媒配管20における室内熱交換器16とストレーナ10の間で分流した液相冷媒の一部は、冷媒配管38と蓄熱二方弁42を経て、熱交換器34で蓄熱溶液36から吸熱し蒸発、気相化して、冷媒配管40を通って冷媒配管24を通る冷媒に合流し、アキュームレータ26から圧縮機6の吸入口へと戻る。
【0056】
なお、室内熱交換器16と膨張弁12との間と、四方弁8と圧縮機6の吸入口との間を接続する冷媒配管38及び冷媒配管40は、熱交換器34を通過して蓄熱溶液36から吸熱することから、これら二つの冷媒配管38,40を蓄熱バイパス回路ということもできる。
【0057】
アキュームレータ26に戻る冷媒には、室外熱交換器14から戻ってくる液相冷媒が含まれているが、これに熱交換器34から戻ってくる高温の気相冷媒を混合することで、液相冷媒の蒸発が促され、アキュームレータ26を通過して液相冷媒が圧縮機6に戻ることがなくなり、圧縮機6の信頼性の向上を図ることができる。
【0058】
除霜・暖房開始時に霜の付着により氷点下となった室外熱交換器14の温度は、圧縮機6の吐出口から出た気相冷媒によって加熱されて、零度付近で霜が融解し、霜の融解が終わると、室外熱交換器14の温度は再び上昇し始める。この室外熱交換器14の温度上昇を室外熱交換器出口温度検出手段46で検出すると、除霜が完了したと判断し、コントローラ54から除霜・暖房運転から通常暖房運転への指示が出力される。
【0059】
このように、暖房運転を継続させながら除霜運転を行うことができるので、室内の快適性を損なうことなく、除霜運転を継続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の蓄熱装置は、いつでも快適で省エネなエアコンとしてヒートポンプ式の空気調和装置や、風呂水を保温する省エネな給湯機器、低価格な深夜電力による発熱を蓄熱して朝の暖房に使用する省エネな暖房機器などに、用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
32 蓄熱装置
34 熱交換器
36 蓄熱溶液
101 胴体部
102 蓋部
103 蓄熱容器
104 油層
105 通気穴
106 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱溶液と、前記蓄熱溶液に浸漬した熱交換器と、前記蓄熱溶液の上部に積層した油層と、前記蓄熱溶液と前記熱交換器と前記油層とを内部に配置する蓄熱容器とを備え、前記蓄熱溶液をNaCl水溶液としたことを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】
前記油層には沸点が前記蓄熱溶液の沸点よりも大きく、かつ、炭化水素系オイルを主成分としたことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記油層は分子量の異なる2種類以上の油層で構成されることを特徴とする請求項2に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記油層は、常温で液体の油層と、常温では固体かつ高温では液体となる油層とで構成されることを特徴とする請求項3に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に記載の蓄熱装置と、冷媒を圧縮する圧縮機とを少なくとも備え、前記圧縮機の周りに前記蓄熱装置を配置したことを特徴とする空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−72931(P2012−72931A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216444(P2010−216444)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)