説明

蓄電装置

【課題】簡単な構成で省エネルギー化を図ることができる蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電装置は、直列接続された複数の蓄電ユニット(U〜U)を備える。各蓄電ユニット(U)は、EDLCセル(C)と、LED(D)と、電流制限抵抗(R)とを備える。LED(D)と電流制限抵抗(R)は直列に接続されかつEDLCセル(C)と並列に接続される。EDLCセル(C〜C)の電圧がアンバランスになってある特定のEDLCセル(C)の電圧が上昇しLEDのオン電圧(約2V)以上になると、当該EDLCセル(C)に並列接続されたLED(D)に電流が流れて当該EDLCセル(C)の電圧上昇が抑制される。EDLCセル(C)の電圧が発光ダイオードのオン電圧よりも小さいときは、当該EDLCセル(C)に並列接続されたLED(D)に電流は流れないので当該EDLCセル(C)から放電されることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ(EDLC:Electric Double Layer Capacitor)を用いた蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のEDLCセルを直列接続して使う場合、漏れ電流(自己放電)のばらつきによってセル間の電圧がアンバランスになる。セル間の電圧がアンバランスな状態で充電を行うと、電圧の高いセルから過充電状態になり定格電圧以上の電圧が印加された状態になる。セルに定格電圧以上の電圧が印加されると電解液や構成部材の分解が加速され、内部抵抗上昇や容量低下、ガス発生による漏液等、耐久性に大きな悪影響を与える。したがって、漏れ電流のばらつきによってセルの電圧がアンバランスになっても、これを均等化するような回路(セルバランス回路)が必要となる。
【0003】
セルバランス回路の従来技術として、固定抵抗を全EDLCセルに並列に挿入するパッシブバランス回路がある(特許文献1)。パッシブバランス回路では、EDLCセルの最大漏れ電流の10倍程度の電流を流すことのできる抵抗を並列に接続することで、漏れ電流がばらついているEDLCセルを直列接続しても、バランス抵抗の分圧値でEDLCセルの電圧が規定されるためEDLCセル間の電圧ばらつきは一定に保たれる(非特許文献1)。
【0004】
また、セルバランス回路の別の従来技術としては、コンパレータによる電圧比較回路とバイパス放電用のスイッチを持つアクティブバランス回路がある(特許文献2)。
【特許文献1】国際公開第WO2005/025029号パンフレット
【特許文献2】実開平5-23527号公報
【非特許文献1】岡村廸夫 著,「電気二重層キャパシタと蓄電システム」,日刊工業新聞社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のパッシブバランス回路は抵抗のみで構成され、単純な回路のため信頼性が高く、多くの用途で幅広く使われている。しかしながら、EDLCセルに並列に抵抗が常時挿入された形になるため、直列接続モジュールが満充電状態で充電回路が切り離されておりかつ無負荷(負荷もオープン状態)であっても、並列抵抗によってEDLCセルが少しずつ放電される状態になる。すなわち、パッシブバランス回路は、EDLCセル間の電圧アンバランスを補正することはできるが、同時に常時無駄なエネルギーを消費していることになり省エネルギーの観点からは好ましくない。
【0006】
また、上述のアクティブバランス回路は、回路が複雑で部品数が増えるため、パッシブバランス回路に比較して故障率も高くなりコストアップも大きい。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で省エネルギー化を図ることができる蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による蓄電装置は、直列接続された複数の蓄電ユニット(U〜U)を備え、前記複数の蓄電ユニットの各々(U)[i=1〜n]は、1つの電気二重層キャパシタ(C)と、前記電気二重層キャパシタ(C)に並列接続された1つの発光ダイオード(D)とを備える、ことを特徴とする。
【0009】
また、前記複数の蓄電ユニットの各々(U)[i=1〜n]は、前記発光ダイオード(D)に直列接続された電流制限抵抗(R)をさらに備える、ことを特徴とする。
【0010】
本発明による蓄電ユニット(U)は、1つの電気二重層キャパシタ(C)と、前記電気二重層キャパシタ(C)に並列接続された1つの発光ダイオード(D)とを備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による蓄電装置では、直列接続された複数の電気二重層キャパシタの各々(C)[i=1〜n]にバランス回路として発光ダイオード(D)を並列接続している。上記複数の電気二重層キャパシタ(C〜C)の電圧がアンバランスになってある特定の電気二重層キャパシタ(C)の電圧が上昇し発光ダイオードのオン電圧(約2V)以上になると、当該電気二重層キャパシタ(C)に並列接続された発光ダイオード(D)に電流が流れて当該電気二重層キャパシタ(C)の電圧上昇が抑制される。一方、電気二重層キャパシタ(C)の電圧が発光ダイオードのオン電圧よりも小さいときは、当該電気二重層キャパシタ(C)に並列接続された発光ダイオード(D)に電流は流れないので当該電気二重層キャパシタ(C)から放電されることがない。したがって、固定抵抗を用いた従来のパッシブバランス回路と比較して大幅な省エネルギー化が図れる。
【0012】
また、回路構成は、固定抵抗を用いた従来のパッシブバランス回路における固定抵抗を発光ダイオード(D)(および電流制限抵抗(R))に置き換えるだけの非常に簡単な構成である。
【0013】
さらに、発光ダイオード(D)を用いることでバランス回路の動作状態を目視でき、多数の電気二重層キャパシタ(C〜C)が直列接続されている場合、バランス回路の発光ダイオード(D〜D)の点灯状態を比較することで電気二重層キャパシタ(C〜C)の電圧ばらつきを把握することができる。例えば、ばらつきが小さければバランス回路の発光ダイオードはどれも同じ明るさで点灯するが、ばらつきが大きいときには点灯する発光ダイオードと点灯しない発光ダイオードがでてくること等により、電気二重層キャパシタ電圧のばらつきを把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0015】
本発明の実施形態による蓄電装置の全体構成を図1(a)に示す。この蓄電装置は、直列接続された複数の蓄電ユニット(U〜U)を備える。各蓄電ユニット(U)[i=1〜n]は、図1(b)に示すように、電気二重層キャパシタ(以下、EDLC)セル(C)と、発光ダイオード(以下、LED)(D)と、電流制限抵抗(R)とを備える。LED(D)と電流制限抵抗(R)は直列に接続されかつEDLCセル(C)と並列に接続されている。
【0016】
このように、本実施形態による蓄電装置では、直列接続された複数のEDLCセルの各々(C)[i=1〜n]にバランス回路としてLED(D)および電流制限抵抗(R)を並列接続している。EDLCセル(C〜C)の電圧がアンバランスになってある特定のEDLCセル(C)の電圧が上昇しLEDのオン電圧(約2V)以上になると、当該EDLCセル(C)に並列接続されたLED(D)に電流が流れて当該EDLCセル(C)の電圧上昇が抑制される。一方、EDLCセル(C)の電圧が発光ダイオードのオン電圧よりも小さいときは、当該EDLCセル(C)に並列接続されたLED(D)に電流は流れないので当該EDLCセル(C)から放電されることがない。したがって、固定抵抗を用いた従来のパッシブバランス回路と比較して大幅な省エネルギー化が図れる。この点について、以下、具体例を挙げて説明する。
【0017】
図2(a)は、固定抵抗を用いたパッシブバランス回路を有する従来の蓄電装置の全体構成の一例を示す図である。この蓄電装置は、直列接続された複数の蓄電ユニット(U11〜U1n)を備える。各蓄電ユニット(U1i)[i=1〜n]は、図2(b)に示すように、EDLCセル(C1i)と、固定抵抗(R1i)とを備える。EDLCセル(C1i)と固定抵抗(R1i)は並列に接続されている。ここで、EDLCセル(C1i)の仕様を定格電圧2.5V,最大漏れ電流100μAとする。このとき、EDLCセル(C1i)に並列接続する抵抗(R1i)には100μA×10=1mAの電流を流さないといけないので、抵抗(R1i)の抵抗値は、2.5V/1mA=2.5kΩにすればよい。
【0018】
一方、本実施形態の蓄電装置(図1)においても、同様にEDLCセル(C)の仕様を定格電圧2.5V,最大漏れ電流100μAとする。このとき、LED(D)には、1mA以上の電流が流せるもの(LEDのほとんどが該当する)を使う。LED(D)の電流制限抵抗(R)については、LED(D)はオンしたときに2Vの定電圧特性となるので、このときに1mAの電流が流れるように電流制限抵抗(R)の抵抗値を計算すると、(2.5−2.0)/1mA=500Ωとなる。
【0019】
以上の条件の下で、従来の蓄電装置(図2)におけるEDLCセル(C1i)の端子電圧Vが図3(a)のように変化した場合、図3(b)に示すようにEDLCセル(C1i)の端子電圧Vにかかわらずバランス回路(R1i)において損失が発生する。
【0020】
これに対して、本実施形態の蓄電装置(図1)では、図3(c)に示すようにLED(D)がオンしない電圧条件(約2V以下)ではLED(D)に電流は流れないのでバランス回路(D,R)において損失は発生しない。
【0021】
このように本実施形態によれば、固定抵抗を用いた従来のパッシブバランス回路と比較して大幅な省エネルギー化が図れる。
【0022】
また、回路構成は、固定抵抗を用いた従来のパッシブバランス回路(図2)における固定抵抗(R1i)をLED(D)および電流制限抵抗(R)に置き換えるだけの非常に簡単な構成である。
【0023】
さらに、LED(D)を用いることでバランス回路の動作状態を目視でき、多数のEDLCセル(C〜C)が直列接続されている場合、バランス回路のLED(D〜D)の点灯状態を比較することでEDLCセル(C〜C)の電圧ばらつきを把握することができる。例えば、ばらつきが小さければバランス回路のLED(D〜D)はどれも同じ明るさで点灯するが、ばらつきが大きいときには点灯するLEDと点灯しないLEDがでてくること等により、EDLCセル(C〜C)の電圧ばらつきを把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、簡単な構成で省エネルギー化を図ることができる蓄電装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、本発明の実施形態による蓄電装置の全体構成を示す図である。(b)は、各蓄電ユニット(U)の構成を示す図である。
【図2】(a)は、固定抵抗によるパッシブバランス回路を備えた従来の蓄電装置の全体構成を示す図である。(b)は、各蓄電ユニット(U)の構成を示す図である。
【図3】EDLCセルの端子電圧とバランス回路における損失との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
〜U…蓄電ユニット
〜C…EDLCセル
〜D…LED
〜R…電流制限抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の蓄電ユニット(U〜U)を備え、
前記複数の蓄電ユニットの各々(U)[i=1〜n]は、
1つの電気二重層キャパシタ(C)と、
前記電気二重層キャパシタ(C)に並列接続された1つの発光ダイオード(D)とを備える、
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の蓄電ユニットの各々(U)[i=1〜n]は、
前記発光ダイオード(D)に直列接続された電流制限抵抗(R)をさらに備える、
ことを特徴とする蓄電装置。
【請求項3】
1つの電気二重層キャパシタ(C)と、
前記電気二重層キャパシタ(C)に並列接続された1つの発光ダイオード(D)とを備える、
ことを特徴とする蓄電ユニット(U)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−194122(P2009−194122A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32727(P2008−32727)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】